JP3816267B2 - 現像装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、現像剤担持体表面の現像領域部分に現像剤を穂立ちさせて現像処理するための現像主磁極を備えた現像装置、及び当該現像装置を装着した画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの電子写真式や静電記録式などによる各種画像形成装置においては、感光体ドラムや感光体ベルトなどからなる潜像担持体上に画像情報に対応した静電潜像が形成され、現像装置によって現像動作が実行されて、可視像を得る。このように現像動作を実行するにあたり、転写性、ハーフトーンの再現性、温度・湿度に対する現像特性の安定性などの観点から、トナーとキャリアからなる2成分現像剤を用いた磁気ブラシ現像方式が主流になってきている。このような方式の現像装置では、現像剤担持体上に2成分現像剤がブラシチェーン状に穂立ちされて保持されながら、潜像担持体に対向する現像領域に搬送されて、現像剤中のトナーを潜像担持体上の静電潜像部分に供給するのである。
【0003】
上記現像剤担持体は、通常円筒状に形成されたスリーブ(現像スリーブ)を備えて構成されると共に、当該スリーブ表面に現像剤を穂立ちさせるように磁界を形成する磁石体(磁石ローラ)をスリーブ内部に有している。穂立ちの際、キャリアが磁石体で生じる磁力線に沿うようにスリーブ上に穂立ちされると共に、この穂立ちされたキャリアに対して帯電トナーが付着する。上記磁石体は、複数の磁極を備え、棒状などに形成されており、特に現像剤担持体表面の現像領域部分に現像剤を穂立ちさせる現像主磁極が備えられている。上記スリーブと磁石体の少なくとも一方が動くことでスリーブ表面に穂立ちされた現像剤が移動するようになっている。現像領域に搬送された現像剤は上記現像主磁極から発せられる磁力線に沿って穂立ちし、この現像剤のチェーン穂は撓むように潜像担持体表面に接触し、接触した現像剤のチェーン穂が潜像担持体との相対線速差に基づいて静電潜像と擦れ合いながら、トナー供給を行うのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような現像装置においては、画像濃度を高くするための現像条件と低コントラスト画像を良好に得るための現像条件とが両立せず、高濃度部と低濃度部との双方を同時に改善することが困難である。即ち、画像濃度を高くするための現像条件としては、(i)潜像担持体と現像剤担持体との間隔である現像ギャップを狭くすること、あるいは(ii)現像領域幅を広くすることなどが挙げられる。一方、低コントラスト画像を良好に得るための現像条件としては、(i')現像ギャップを広くすること、あるいは(ii')現像領域幅を狭くすることなどがある。つまり、双方の現像条件は相反するものであって両立せず、全濃度域にわたって双方の条件を満たして良質な画像を得ることは一般に困難とされている。
【0005】
例えば低コントラスト画像を重視する場合には、ベタラインのクロス部や黒ベタ、ハーフトーンベタ画像の後端部に白抜けを生じる「後端白抜け」と称される異常画像が発生しやすい。また同じ幅で形成した格子画像の横線が縦線よりも細くなってしまったり、1ドットなどの小さい点画像が現像されないなどの現象も発生している。
【0006】
このような現象のメカニズムを考えると、図13に示されるように、現像スリーブ上に形成される磁気ブラシが潜像担持体と摺擦する部分で発生する接触部(現像ニップ)において、潜像担持体と現像スリーブの線速差(対潜像担持体線速比)がある場合に、上記現象は生じる。対潜像担持体線速比を2.5とする場合、現像スリーブ上の磁気ブラシは潜像担持体よりも2.5倍速く動く。また現像スリーブの現像主磁極半値中央角が48°の磁石を用いる時の現像ニップの幅は約4mm(実験値)であり、また現像ギャップは0.4mmであった。なおここで、半値中央角とは、法線方向の磁力分布曲線の最高法線磁力(頂点)或いはピーク磁束密度の半分の値(例えばN極によって作製されている磁石の最高法線磁力が120mT(ミリテスラ)であった場合、半値というと60mTである。)を指す部分の角度幅のことである。半値中央角度幅、半値幅と称することもある。
【0007】
図14に従来の磁石ローラ(磁石体)による法線磁力パターンを示す。実線は現像スリーブ表面上の法線方向の磁束密度を測定した円チャートグラフである。一方、破線は現像スリーブ表面から1mm離れたところでの法線方向の磁束密度を測定した円チャートグラフである。図14中の円チャートの目盛りは20mT毎で記してある。使用した計測装置はADS社製ガウスメーター(HGM-8300)並びにADS社製A1型アキシャルプローブであり、これらで測定し円チャートレコーダにて記録した。従来使用されていた磁石ローラでは、主磁極P1の磁束密度の変化量は26.1mTの磁力差を観測した。磁石ローラ上に発生した磁力線に沿って現像剤で形成された磁気ブラシは、主磁極P1に形成されるブラシ部分のみが潜像担持体に接し、潜像担持体上の静電潜像を顕像化する。この際、潜像担持体が接しない状態とすると当該箇所での磁気ブラシの長さは約2mmであった。この時の現像スリーブ上を観察すると従来の磁石ローラで形成される磁気ブラシは穂立ちが長く、疎になっている。また、この穂立ち状態で潜像担持体を設置して磁気ブラシを潜像担持体に摺擦させると、主磁極P1によって形成された磁気ブラシによる潜像担持体と接する部分での現像ニップ幅は約4mmであった。
【0008】
潜像担持体上の潜像は磁気ブラシによってトナー像とされるが、特に画像の後端部を作像する磁気ブラシは図15aに示されるように、非画像部を摺擦した後にトナーの付着した画像部に接することになる。ネガポジ現像法の場合、潜像担持体の非画像部にはマイナス電荷が存在し、磁気ブラシのキャリアはプラス電荷、トナーはマイナス電荷を有している。非画像部に接触する磁気ブラシにおいては、まず潜像担持体上のマイナス電荷により磁気ブラシキャリア上のマイナストナーが反発して潜像担持体近接より離れる。キャリアは磁石ローラによって磁気で束縛されているので現像スリーブの回転で下流方向に搬送される。この際、キャリアと潜像担持体とが摩擦帯電を起こし、キャリアにプラス電荷が発生する。余分に発生したプラス電荷をもった磁気ブラシは線速差を有した現像スリーブの駆動により画像部にすすみ、トナーを画像部に付着させる(図15b)。更に、現像スリーブが駆動し、画像の後端部に差し掛かる際に(図15c)余分に発生したプラス電荷により画像後端部のトナーを静電吸着することで、画像後端部が白く抜ける異常画像現象や、細線や点状の画像を細くする現象が発生する。このような現象は、潜像担持体と現像スリーブの回転方向が逆である逆現像においても発生し、この場合には現像後半部が画像先端に当たるため、画像先端部で白抜けの現象が起きる。これらの現象は画像濃度が低い場合に顕著に表れ、磁気ブラシが潜像担持体上の非画像部の電荷によりカウンターチャージされることで潜像担持体のトナー像からトナーを静電吸着することを意味している。
【0009】
また上で述べるように現像ニップ幅が約4mmである場合に、現像されたトナー像が後続の磁気ブラシ部分のために、カウンターチャージ以外に、トナーの入れ替わりや、トナーを潜像担持体に付着する際にキャリア側に逆電荷が残り、この逆電荷により潜像担持体のトナー像からトナーを静電吸着することでも、上記異常画像が発生すると考えられる。
【0010】
カウンターチャージなどによる後端白抜けや、細線画像、点画像の細らせ現象を低減するための対策として、対潜像担持体線速比(対感光体線速比)を小さくすることや、外径の小さな現像スリーブを用いることが考えられる。これらによってニップ幅を狭くできるからである。けれども、対潜像担持体線速比を小さくすると、現像ニップ領域に供給される現像剤の単位時間当たりの量が減少し、現像能力が低下してしまい、十分な画像濃度が得られないという不具合が生じる。また小径すぎる現像スリーブを用いると、スリーブ内に配置された磁石も小サイズ化するために必要な磁力をスリーブ上で形成することができなくなる。つまり、磁力が小さいと現像スリーブ上の潜像担持体に近い側のキャリア先端に作用する磁力作用が弱くなり、潜像担持体からかかる電気的な力にキャリア先端が引き付けられ、キャリアが潜像担持体に付いてしまい「キャリア付着」なる異常画像が発生してしまうことになるので、キャリア付着を起こさないための必要磁力が求められることになるわけであるが、小径すぎるスリーブでは過小な磁力しか生じ得ず、そのような小径スリーブを用いることは不適である。仮に所定磁力を確保しながらも一層の小径スリーブが作成できたとしても、外径が小さくなることで対潜像担持体線速比を同等とする場合に現像スリーブの回転数が増加してしまい、その回転数増加によって現像スリーブから熱や振動が生じ、更には異音を伴うことにもなり、耐久性の点でも不具合である。
【0011】
また別の方法として、複数の現像剤担持体を多段にわたって設置するようにした現像装置も提案されている。しかしながら、このような多段現像装置では、現像能力を高めることはできるものの、装置の大型化・複雑化を招くという問題がある。
【0012】
そこで本発明は、簡易な構成で、画像濃度を高くするための現像条件と、画像後端白抜けがなく横細線再現性も良い画像を得るための現像条件とを効率的に得ることを可能にすることを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、本発明にしたがって、非磁性体のスリーブと当該スリーブ内に固定配置され複数の磁極を備えた磁石ローラとを備えて構成され、前記スリーブを回転させ、その外周面に2成分現像剤を磁気吸着させて磁気ブラシを形成し、対向する潜像担持体に当該磁気ブラシを摺擦させ、その摺擦領域で潜像担持体上の潜像を可視化する現像装置において、上記摺擦領域に位置する現像主磁極の法線方向磁束密度の減衰率(スリーブ表面上の法線方向磁束密度のピーク値とスリーブ表面から1mm離れたところでの法線方向磁束密度のピーク値の差をスリーブ表面上の法線方向磁束密度のピーク値で割った比率)が40%以上であることによって、解決される。
【0014】
また、上記現像主磁極と隣り合う磁極の法線方向磁束密度の減衰率が40%以上であれば、好適である。上記現像主磁極と隣り合う磁極との角度間隔が30度以内であれば、一層好都合である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の詳細を、図に示す例に基づいて説明する。
先ず本発明に係る現像装置を含む感光体ユニット全体について説明する。図1において、静電潜像担持体である感光体ドラム1の周囲には、当該ドラム表面を帯電するための帯電装置2、一様帯電処理面に潜像を形成するためのレーザー光線でなる露光3、ドラム表面の潜像に帯電トナーを付着することでトナー像を形成する現像装置4、形成されたドラム上のトナー像を記録紙へ転写するための転写装置5、ドラム上の残留トナーを除去するためのクリーニング装置7、ドラム上の残留電位を除去するための除電装置8が順に配設されている。このような構成において、帯電装置2の帯電ローラによって表面を一様に帯電された感光体1は、露光3によって静電潜像を形成され、現像装置4によってトナー像を形成される。当該トナー像は、転写ベルトなどでなる転写装置5によって、感光体ドラム1表面から、不図示の給紙トレイから搬送された記録紙へ転写される。この転写の際に感光体ドラムに静電的に付着した記録紙は、分離爪によって感光体ドラム1から分離される。そして未定着の記録紙上のトナー像は定着器によって記録紙に定着される。一方、転写されずに感光体ドラム上に残留したトナーは、クリーニング装置7によって除去され回収される。残留トナーを除去された感光体ドラム1は除電ランプ8で初期化され、次回の画像形成プロセスに供される。
【0016】
上記現像装置4の構成を図2に基づいて説明する。現像装置4内には、現像剤担持体である現像ローラ41が感光体ドラム1に近接するように配置されていて、双方の対向部分に現像領域が形成される。現像ローラ41では、アルミニウム、真鍮、ステンレス、導電性樹脂などの非磁性体を円筒形に形成してなる現像スリーブ43が不図示の回転駆動機構によって時計回り方向に回転されるようになっている。本例においては、感光体ドラム1のドラム径が60mmで、ドラム線速が240mm/秒に設定され、現像スリーブ43のスリーブ径が20mmで、スリーブ線速が600mm/秒に設定されている。したがって、ドラム線速に対するスリーブ線速の比は2.5である。また感光体ドラム1と現像スリーブ43との間隔である現像ギャップは0.4mmに設定されている。現像ギャップは、従来ではキャリア粒径が50μmであれば0.65mmから0.8mm程度、言い換えれば、現像剤粒径の10倍前後に設定されていたが、本発明では現像剤粒径の30倍程度に設定することすら可能である。これより広くすると望ましいとされる画像濃度が出にくくなる。スリーブ線速のドラム線速に対する比は最低1.1にまで下げてもなお必要な画像濃度を得ることができる。
【0017】
現像剤の搬送方向(図で見て時計回り方向)における現像領域の上流側部分には、現像剤チェーン穂の穂高さ、即ち、現像スリーブ上の現像剤量を規制するドクタブレード45が設置されている。このドクタブレード45と現像スリーブ43との間隔であるドクタギャップは0.4mmに設定されている。更に現像ローラの感光体ドラムとは反対側領域には、現像ケーシング46内の現像剤を攪拌しながら現像ローラ41へ汲み上げるためのスクリュー47が設置されている。
【0018】
上記現像スリーブ43内には、当該現像スリーブ43の周表面に現像剤を穂立ちさせるように磁界を形成する磁石ローラ体44が固定状態で備えられている。この磁石ローラ体から発せられる法線方向磁力線に沿うように、現像剤のキャリアが現像スリーブ43上にチェーン状に穂立ちされ、このチェーン状に穂立ちされたキャリアに帯電トナーが付着されて、磁気ブラシが構成される。当該磁気ブラシは現像スリーブ43の回転によって現像スリーブ43と同方向(図で見て時計回り方向)に移送されることとなる。上記磁石ローラ体44は、複数の磁極(磁石)を備えている。具体的には、現像領域部分に現像剤を穂立ちさせる現像主磁石P1b、現像主磁極磁力の形成を補助する主磁極磁力形成補助磁石P1a,P1c、現像スリーブ43上に現像剤を汲み上げるための磁石P4、汲み上げられた現像剤を現像領域まで搬送する磁石P5,P6、現像後の領域で現像剤を搬送する磁極P2,P3を備えている。これら各磁石P1b,P1a,P1c,P4,P5,P2及びP3は、現像スリーブ43の半径方向に向けて配置されている。本例では、磁石ローラ体44を8極の磁石によって構成しているが、汲み上げ性、黒ベタ画像追従性を向上させるためにP3極からドクタブレード45の間に磁石(磁極)を更に増やして10極や12極で構成してもよい。
【0019】
特に図2に示されるように、上記現像主極群P1は、P1a,P1b,P1cの順で上流側から並ぶ横断面の小さな磁石から構成されている。横断面の小さいこれら磁石は希土類金属合金により作製されているが、サマリウム合金磁石、特にサマリウムコバルト合金磁石などを用いることもできる。希土類金属合金磁石のうち代表的な鉄ネオジウムボロン合金磁石では最大エネルギー積が358kJ/m3であり、鉄ネオジウムボロン合金ボンド磁石では最大エネルギー積が80kJ/m3前後である。このような磁石によって従来の磁石と異なり、相当に小サイズ化しても必要な現像ローラ表面磁力を確保できる。従来の通常フェライト磁石やフェライトボンド磁石などでは最大エネルギー積が36kJ/m3前後、20kJ/m3前後である。スリーブ径を大きくすることが許容される場合には、フェライト磁石やフェライトボンド磁石を用いて形状を大きくとり、あるいはスリーブ側に向いた磁石先端を細く形成することで半値中央角を狭くすることが可能である。
【0020】
本例では、現像主磁石P1bと、現像スリーブ43上に現像剤を汲み上げるための磁石P4と、汲み上げられた現像剤を現像領域まで搬送する磁石P6と、現像後の領域で現像剤を搬送する磁極P2,P3がN極をなし、現像主磁極磁力の形成を補助する主磁極磁力形成補助磁石P1a,P1cと、汲み上げられた現像剤を搬送する磁石P5がS極をなしている。磁力詳細を示す図3で理解できるように、主磁石P1bとして、現像ローラ上で85mT以上の法線方向磁力を有する磁石が用いられた。当該主磁石P1bより回転下流側の主磁極磁力形成補助磁石P1cと共に例えば60mT以上の磁力を有すれば、キャリア付着などの異常画像の発生が無いことが確認されている。これよりも小さい磁力の場合にはキャリア付着が発生した。キャリア付着に関係する磁力は接線磁力であり、この接線磁力を大きくするためにはP1b,P1cの磁力を大きくする必要があるが、どちらかを十分に大きくすることでキャリア付着の発生を抑えることができる。磁石P1a,P1b,P1cの磁石幅は2mmであった。この時のP1bの半値中央角は16°であった。この場合、主磁極磁力形成補助磁石P1a,P1cを有して現像主極群P1を形成しても(図3の構成)、主磁石P1bの下流側のみに主磁極磁力形成補助磁石P1cを配置しても(図4の構成)、主磁石P1bでの半値中央角は変わりなく、主磁極(P1b部分)の磁力が数%低下するだけである。上流側に主磁極磁力形成補助磁石(P1a)が無いためにP1a部分の磁力は低下し、30mT程度になったことが確認されたが、この箇所は入口シールによって覆われるべき部分であり、作像部に露出しないので、画像に影響せず、主磁極に現像剤を提供することが可能である。更に磁石の幅を狭くすることで、半値中央角は更に細くなることが確認された。1.6mm幅を用いた際の主磁極の半値中央角は12°であった。主磁極の半値中央角は25°を境に、それより大きくすると異常画像の発生があることが確認された。対照のため、図5に従来の磁石ローラでの磁力詳細を概略的に示す。
【0021】
主磁極磁力形成補助磁石P1a,P1cの半値中央角は35°以下に形成する。この部分での半値中央角は外側に位置するP2やP6の半値中央角が大きいために主磁極(P1b)でのように半値中央角を相対的に狭く設定することができない。
【0022】
また主磁石P1bと主磁極磁力形成補助磁石P1a,P1cの位置関係を図6に示す。主磁石P1bの両側にある主磁極磁力形成補助磁石P1a,P1cによる挟角を30°以下に形成する。上記の例では、主磁極での半値中央角を16°に設定するために当該挟角は25°とした。更に主磁極磁力形成補助磁石P1a,P1cと当該補助磁石の外側にある磁石P2,P6とによる変極点(0mT:磁力がN極からS極、S極からN極に変わる点)の挟角を120°以下にする。
【0023】
以上の条件を満たすことにより、主磁極での磁気ブラシが感光体に接触して現像するやり方では、現像ニップが現像剤粒径以上で2mm以下となり、後端白抜けがなく、横細線や1ドットのように小さい画像であっても十分に形成することができる。そのイメージを図7に示し、図13と比較する。
【0024】
主磁石P1bの磁力によって形成されるスリーブ表面の磁気ブラシは、穂立ちし始める部分(根元部分の幅)を2mm以下にすることによって、感光体と磁気ブラシが接触する部分の現像ニップ幅を2mm以下に形成することが可能である。
【0025】
このような構成での現像にあっては、現像ローラ41に対して、現像ケーシング46内に蓄えられた現像剤が攪拌・帯電された上で磁極P4によって汲み上げられる。現像スリーブ43上に現像剤を汲み上げられた現像剤は磁極P5及びP6によって現像領域まで搬送され、現像主極P1bによって現像領域部分に現像剤が穂立ちされるようになる。
【0026】
その際のメカニズムは図15に示されたと類似の流れで説明可能である。即ち、画像濃度の低い感光体上のトナー像(付着量の少ないトナー像)を、本例の磁気ブラシを使用して現像する場合、現像ニップ幅が小さいため、感光体上を摺擦する磁気ブラシの接触量(時間)が少なくなり、磁気ブラシ先端部に発生するカウンターチャージの発生量が低下する。結果として、カウンターチャージをもったキャリアがトナー像を引き付けることで画像後端部が白く抜ける現象を抑えることが可能となる。したがって、画像濃度の低い感光体上のトナー像(付着量の少ないトナー像)の再現性を向上することが可能となった。また画像濃度が高くなる理由としては、本例の磁石ローラを使用することにより、P1bの磁気ブラシの長さが小さくなり、現像ニップ幅を小さくすることが可能となり、したがって、現像スリーブが回転移動し、P1bを通過する際の短くなった磁気ブラシが立ち始め現像ニップ間を通過する時間が早くなり(対感光体線速比がこの部分だけ早くなる現象が起こっている)、感光体に摺擦する現像剤の量が増加するために画像濃度が高くなるのである。更に現像ニップ幅が小さいので現像ニップ領域前の現像剤滞留部の現像剤量が少なく、カウンターチャージの発生を抑えることが可能となったために画像濃度の低下を抑えることができ、結果として、後端白抜けの無い画像能力の向上した現像装置を提供することができる。
【0027】
改めて図3に示された本発明での磁石ローラによる法線磁力パターンに戻り、図14と比較する。実線は現像スリーブ表面上の法線方向の磁束密度を測定した円チャートグラフであり、図6で表したものに一致する。破線は現像スリーブ表面から1mm離れたところでの法線方向の磁束密度を測定した円チャートグラフであり、本図での目盛りは図14と同じく20mT毎になっている。使用した計測装置も図14の場合と同じで、ADS社製ガウスメーター(HGM-8300)、ADS社製A1型アキシャルプローブである。本例での磁石ローラでは、主磁極P1bのスリーブ表面上の法線方向の磁束密度は117mTを示し、スリーブ表面から1mm離れた部分での法線方向磁束密度は54.4mTであり、磁束密度の変化量は62.5mTの磁力差を観測した。この時の法線方向磁束密度の減衰率(スリーブ表面上の法線方向磁束密度のピーク値とスリーブ表面から1mm離れたところでの法線方向磁束密度のピーク値の差をスリーブ表面上の法線方向磁束密度のピーク値で割った比率)は53.5%である。主磁極P1bの上流側に位置する主磁極磁力形成補助磁石P1aのスリーブ表面上の法線方向磁束密度は106.2mTを示し、スリーブ表面上から1mm離れた部分での法線方向磁束密度は56.6mTであり、磁束密度の変化量は49.6mTの磁力差を測定した。この時の法線方向磁束密度の減衰率は46.7%である。主磁極P1bの下流側に位置する主磁極磁力形成補助磁石P1cのスリーブ表面上の法線方向磁束密度は55.9mTを示し、スリーブ表面上から1mm離れた部分での法線方向磁束密度は55.9mTであり、磁束密度の変化量は43.5mTの磁力差を測定した。この時の法線方向磁束密度の減衰率は43.8%である。本例では、磁石ローラ上に発生した磁力線に沿って現像剤で形成された磁気ブラシは、主磁極P1bに形成されるブラシ部分のみが感光体に接し、感光体上の静電潜像を顕像化する。この際、感光体が接しない状態とすると当該箇所での磁気ブラシの長さは約1mmで、従来の磁石ローラで形成される磁気ブラシよりも穂立ちが短く、密になった状態を作り出すことが可能となった。現像剤規制部材と現像スリーブの間の距離が従来と同じである場合には、現像剤規制部材を通過する現像剤量が同じであるので、現像領域にある磁気ブラシは短く、密になっていることが確認できた。この現象は図3の法線磁力パターンからも理解でき、現像スリーブ表面から1mm離れたところでの法線磁束密度が大きく減少しているので、磁気ブラシは現像スリーブより離れたところではブラシチェーンを形成することができず、磁気ブラシが短く現像スリーブ表面に密に形成することとなる。ちなみに従来の磁石ローラでは主磁極のスリーブ表面上の法線方向磁束密度は90mTを示し、スリーブ表面上から1mm離れた部分での法線方向磁束密度は63.9mTであり、磁束密度の変化量は26.1mTの磁力差を測定した。この時の法線方向磁束密度の減衰率は29%である。
【0028】
上記のような法線磁力を構成することによって現像ニップ幅の狭い状態を形成でき、現像ニップ上流側の現像剤溜りの発生を抑え、安定した現像ニップを形成することが可能となり、画像後端白抜けや横細線画像の細りのない画像が得られ、ひいてはドット均一性の高い美しい画像を提供することができるようになった。
【0029】
図8に本例で使用した磁石ローラによる実験値を示す。この図は上記画像後端白抜けと主磁極(P1b)の法線方向磁束密度の減衰率との関係を表している。縦軸のランクは後端白抜け具合を表すランク付けであり、ランクが低い(数字が小さい)ものほど画像程度が悪い。後端白抜けを認識し始めるランクを4(80%)とした。従来の磁石ローラではランク3を示し、画像後端白抜けがはっきりと認識された。本発明での磁石ローラではランクが5若しくは5に近いランクを示し、画像後端白抜けのない高画質が得られた。
【0030】
図9は1dot縦横ラインの線幅の比率と主磁極(P1b)の法線方向磁束密度の減衰率との関係を示している。縦軸の1dot縦横ラインの線幅の比率が1であれば縦線と横線の各幅は同等である。80%のラインはこれ以下だと横線細りが目立つボーダーラインである。言い換えれば、上記ラインより上であれば実用上問題ない。このグラフから、本例で使用した磁石ローラでは横線細りがなくなっていることが分かる。したがって法線方向磁束密度の減衰率が40%以上であれば、画像後端白抜け並びに横細線細りが解消される。また主磁極と隣り合う磁極に関しても、40%以上の法線方向磁束密度の減衰率によって画像後端白抜け並びに横細線細りがなくなっていることが確認された。
【0031】
上記磁束密度を測定した測定方法を示す。図10に示された実験装置を用いて測定を行った。ADS社製ガウスメーター(HGM-8300)及びADS社製A1型アキシャルプローブで測定し、円チャートレコーダにて記録した。現像スリーブ表面上の法線方向磁束密度を測定する際には、現像スリーブ上に接触する様にアキシャルプローブを取り付け、磁石ローラを回転させ、360度を0.1度のステップで測定し、円チャートレコーダに記録する。次にアキシャルプローブの先端を現像スリーブ表面より1mm上げて固定し、上記と同じように磁石ローラを360度回転させて磁束密度を測定した。
【0032】
図11は画像後端白抜けと本例での主磁極(P1b)の半値中央角(角度幅)との関係を表している。縦軸のランクは図8と同じく後端白抜け具合を表すランク付けである。また図12は1dot縦横ラインの線幅の比率と主磁極(P1b)の半値中央角との関係を示している。これまた図9と同じく縦軸の1dot縦横ラインの線幅の比率が1であれば縦線と横線の各幅は同等で、80%のラインはこれ以下だと横線細りが目立つボーダーラインである。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、非磁性体のスリーブと当該スリーブ内に固定配置され複数の磁極を備えた磁石ローラとを備えて構成され、前記スリーブを回転させ、その外周面に2成分現像剤を磁気吸着させて磁気ブラシを形成し、対向する潜像担持体に当該磁気ブラシを摺擦させ、その摺擦領域で潜像担持体上の潜像を可視化する現像装置において、上記摺擦領域に位置する現像主磁極の法線方向磁束密度の減衰率(スリーブ表面上の法線方向磁束密度のピーク値とスリーブ表面から1mm離れたところでの法線方向磁束密度のピーク値の差をスリーブ表面上の法線方向磁束密度のピーク値で割った比率)を40%以上とすることで、主磁極に磁力線に沿って形成される磁気ブラシが短く、密に形成され、潜像担持体に接する磁気ブラシ幅を狭く形成することが可能となるので、カウンターチャージの影響を受け難く、潜像担持体上に現像されたトナーが再び磁気ブラシ、即ち、現像剤に戻ることがなく、画像後端白抜けがなく、細線再現性の良い画像を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る現像装置を含む感光体ユニットの概略構成図である。
【図2】図1における現像装置の詳細構成図である。
【図3】本発明に係る現像装置での磁石ローラの法線磁力分布とその大きさ程度を示す図である。
【図4】磁石P1aが欠けた場合の磁力分布を示す図である。
【図5】比較のために従来公知の磁石ローラの磁力分布を示す図である。
【図6】主磁石と主磁極磁力形成補助磁石の位置関係を表す図である。
【図7】現像領域での現像ギャップやニップの大きさを示すイメージ図である。
【図8】画像後端白抜けと本発明での磁石ローラの主磁極法線方向磁束密度の減衰率との関係を示すグラフである。
【図9】1ドット縦横ラインの線幅の比率と本発明での磁石ローラの主磁極法線方向磁束密度の減衰率との関係を示すグラフである。
【図10】磁束密度を測定するための装置を示す概略図である。
【図11】画像後端白抜けと本発明での磁石ローラの主磁極の半値中央角との関係を示すグラフである。
【図12】1ドット縦横ラインの線幅の比率と本発明での磁石ローラの主磁極の半値中央角との関係を示すグラフである。
【図13】比較のために従来公知の現像ギャップやニップの大きさを示すイメージ図である。
【図14】従来の現像装置での磁石ローラによる法線磁力パターンを示す図である。
【図15】潜像担持体上を現像ローラが摺擦する際の白抜けを説明する図で、aからcに摺擦が進んで白抜けが発生する。
【符号の説明】
1 感光体ドラム
4 現像装置
41 現像ローラ
43 現像スリーブ
44 磁石ローラ体
45 ドクタブレード
47 スクリュー
Claims (4)
- 非磁性体のスリーブと当該スリーブ内に固定配置され複数の磁極を備えた磁石ローラとを備えて構成され、前記スリーブを回転させ、その外周面に2成分現像剤を磁気吸着させて磁気ブラシを形成し、対向する潜像担持体に当該磁気ブラシを摺擦させ、その摺擦領域で潜像担持体上の潜像を可視化する現像装置において、
上記摺擦領域に位置する現像主磁極の法線方向磁束密度の減衰率(スリーブ表面上の法線方向磁束密度のピーク値とスリーブ表面から1mm離れたところでの法線方向磁束密度のピーク値の差をスリーブ表面上の法線方向磁束密度のピーク値で割った比率)が40%以上であることを特徴とする現像装置。 - 上記現像主磁極と隣り合う磁極の法線方向磁束密度の減衰率が40%以上であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
- 上記現像主磁極と隣り合う磁極との角度間隔が30度以内であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
- 上記請求項1〜3のいずれか一項に係る現像装置を備えた画像形成装置。
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