JP3816021B2 - 射出成形装置及び射出成形方法 - Google Patents

射出成形装置及び射出成形方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高精度な転写面を有する射出成形品を得るための射出成形装置及び射出成形方法に関し、特に、金型の部分に冷却手段を適用することにより、外周面に転写部を備えた円筒形等の成形品を高精度に転写成形可能な射出成形装置及び射出成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック歯車は、金属歯車等に比べ、低騒音性、耐腐蝕性、及び量産性に優れる他、軽量である等の種々の利点を有することから、精密機械、例えば複写機、カメラ等の動力伝達部等に使用されるケースが増えている。
このようなプラスチック歯車は、一般に複数のピンゲートより成形キャビティ内に溶融樹脂を射出充填し、その後冷却工程を経て固化して成形品を得るが、ピンゲートの場合、樹脂充填時に流動分布が生じ易い。
プラスチック歯車を高精度に成形する手段としては、例えば特開2001−79876号公報(動力伝達用成形品とその成形法及び成形装置)において、成形加工時に歯面以外の部分を選択的にひけさせる方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、歯面以外の部分をひけさせることによって確かに歯面転写性の改善効果はみられるが、流動分布、あるいは温度分布の影響によって、ひけの発生度合いが異なり、ゲート放射方向部(A:ゲート部ライン)と、ゲート間放射方向部(B:ウェルド部ライン)とでは、ひけの深さが異なるため、ゲート放射方向部とゲート間放射方向部における歯面の転写性の差を低減するには限界がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、特に外周面に転写部である歯部又は平担部を備えた円筒形等の成形品の高転写性を確保しつつ、歯筋の傾き等変形の少ない高精度な成形品を得ることができる射出成形装置及び射出成形方法を提供することを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであって、請求項1の発明は、金型内に形成された複数のゲートから溶融樹脂を射出充填し、外周面に転写部を備えたリム及びウェブが一体に形成された成形品を成形する射出成形装置において、前記リムの内周面と隣接する面にひけ誘導手段と、前記複数のゲートのそれぞれから前記外周面に向かう複数のゲート放射方向部上にそれぞれ冷却手段を設けたことを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の射出成形装置において、前記冷却手段は、気体冷却用の通気路と、該通気路と接続された排気制御手段とからなることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2の射出成形装置において、前記気体冷却用の通気路は、多孔質部材から形成されることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1〜3の射出成形装置において、前記冷却手段は、前記複数のゲートから前記外周面に向かうゲート放射方向部上に複数設けられることを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1〜4の射出成形装置において、前記冷却手段をそれぞれ個別に制御する制御手段を有することを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明は、金型内に形成された複数のゲートのそれぞれから外周面に向かう複数のゲート放射方向部上にそれぞれ冷却手段を設け、前記複数のゲートから溶融樹脂を射出充填し、前記外周面に転写部を備えたリム及びウェブが一体に形成された成形品を成形する際、前記リムの内周面と隣接する面に選択的に気体を導入してひけ誘導を行う射出成形方法において、前記ひけ誘導後、前記複数のゲートのそれぞれから前記外周面に向かう複数のゲート放射方向の部分をそれぞれ冷却することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図7に示す実施例に基づいて説明する。
まず、成形金型について説明する。
図1は、本発明の実施例による射出成形装置を示す断面図である。
本実施例における射出成形装置は、歯車成形金型として実施したもので、歯車成形金型10は固定金型と可動金型とからなる分割型であって、油圧駆動の横型の射出成形機を例示している。
図2は、図1に示す歯車成形金型によって成形されるプラスチック歯車を示す図で、図2(A)は断面図、図2(B)は平面図である。
このプラスチック歯車1は、歯形部2、リム3、ウェブ4及びボス5で構成され、ポリアセタール等の結晶性樹脂を射出成形することにより一体成形されるものである。なお、6は後述するキャビティプレート11に形成されたピンゲート28…に対応する位置を示している。
歯車成形金型10の固定金型であるキャビティプレート11の内部には、キャビティ入れ子13が設けられており、可動金型であるコアプレート12の内部には、成形品(プラスチック歯車1)に歯形部2を形成するための転写面(ギヤ駒15)を備えたコア入れ子14が設けられている。これらのキャビティ入れ子13、コア入れ子14によって所定容積の歯車成形キャビティを画成している。また、コア入れ子14には、プラスチック歯車1の軸穴を形成するためのセンタコアピン16が備えられている。
【0012】
キャビティ入れ子13、コア入れ子14には、プラスチック歯車1の非転写面であるリム3の内周面と隣接する面に所定面積で開口するリング状の通気口17,17がそれぞれ形成され、通気口17,17は圧縮空気供給手段18,18に接続されている。
図3は、圧縮空気供給手段の構成を示す回路図である。
圧縮空気供給手段18は、空気圧源19、エアフィルタ20、減圧弁21、圧力計22、電磁弁23、電磁弁23のON/OFFを切替えるリレー24等から構成されている。空気圧源19は、例えばエアコンプレッサあるいは工場内に設けられた圧縮空気配管等である。また、リレー24は、射出成形機からの制御信号に基づいて動作し、電磁弁23のON/OFFを切替える。そして、射出成形機からの制御信号によりリレー24が電磁弁23をONに切替えると、圧縮空気が通気口17を介して歯車成形キャビティに供給される。
また、上記キャビティプレート11とコアプレート12には、第一次温調手段25、第二次温調手段26が備えられており、成形品のリム3及びウェブ4の近傍には温度センサ及びヒータからなる温度調整手段27…が設けられ、またキャビティ入れ子13とコア入れ子14中の適宜の複数個所にも同様の温度センサとヒータからなる温度調整手段27…が設けられている。
【0013】
図4は、第1実施例のキャビティ入れ子を示す、図1のA−A断面図である。
図4に示すように、成形キャビティの一方の内壁面となるキャビティ入れ子13には、射出成形機の射出部からの溶融樹脂を成形キャビティ内へ射出充填する複数のピンゲート28…、及びプラスチック歯車1のリム3の内周面と隣接する位置にはリング状の通気口17が形成されている。
プラスチック歯車1のウェブ部分に充填された溶融樹脂は、複数のピンゲート28…を中心に成形キャビティ内を放射状に広がり、成形キャビティの外周部(歯形部2)に到達する。その結果、ゲート放射方向部(A:ゲート部ライン)と、ゲート間の放射方向ウェルド部(B:ウェルド部ライン)で外周部への樹脂の流動分布、温度分布が発生し、これによってA部とB部ではひけの発生度合いが異なり、成形品であるプラスチック歯車1外周のギヤピッチ円は、図2(B)に模式的に示すように、目的とした実線で示されているような円形状ではなく、点線で示されるようなピンゲート28…位置に対応した凹凸形状の花びら状となり、外周面を均一に転写した高精度な成形品としてのプラスチック歯車1を得ることはできない。
【0014】
本発明では、複数のピンゲート28…から外周部に向かうそれぞれのゲート放射方向部上に冷却手段29…が設けられる。
冷却手段29…は、気体冷却用の多孔質部材等からなる通気路30と、通気路30と連結された真空ポンプなどからなる排気制御手段31から構成され、ひけ誘導後に気体を通気させることにより、ひけ誘導部の樹脂冷却を促進する。なお、気体の排気条件として、気体の排気時間及び排気量を調整することにより、広範囲かつ微細な条件設定が可能である。
【0015】
次に、本射出成形装置を用いた成形方法について説明する。
図5は、6点ピンゲート金型を用いて、リムの内周面と隣接する面に圧縮気体を導入することによってひけ誘導を実施した場合の、ひけの発生状況を示す図で、図5(A)は本発明の成形方法によって形成した成形品を示し、図5(B)は従来の成形方法によって形成した成形品を示す。
図5(B)に示す従来の成形方法によって形成した成形品では、樹脂温度が高いゲート放射方向部(A:ゲート部ライン)上のひけが、ゲート間の放射方向部(B:ウェルド部ライン)より大きくなっている。これにより、歯筋の周期的な傾きが生じ、精度低下の原因となっている。
【0016】
これに対し、図5(A)に示す本発明の成形方法によって形成した成形品では、ゲート放射方向部(A:ゲート部ライン)上に設けられた冷却手段29…を用い、ひけ誘導後に気体を通気させることにより、ゲート間の放射方向部(B:ウェルド部ライン)との温度差が低減し、周方向に均一な温度分布が形成され、結果として、歯筋の傾きのない高精度な成形品を得ることができる。
なお、ピンゲートの場合、ゲート点数が多い方が、ゲート放射方向部(A:ゲート部ライン)とゲート間の放射方向部(B:ウェルド部ライン)との流動分布、温度分布は少なくなるが、その分、ゲート穴加工、ゲートランナー部の樹脂量が増え成形品のコストアップにつながる。
【0017】
図6は、第2実施例のキャビティ入れ子を示す、図1のA−A断面図である。
図6に示す第2の実施例は、キャビティ入れ子13に形成されるピンゲート28の点数が3点と少なく、ゲート放射方向部(A:ゲート部ライン)とゲート間の放射方向部(B:ウェルド部ライン)との流動分布、温度分布が大きくなる場合においても、確実に周方向に均一な温度分布が形成されるように、ゲート放射方向部(A:ゲート部ライン)上に冷却手段29を複数(図6の場合2個)設けた例である。
【0018】
図7は、第3実施例のキャビティ入れ子を示す、図1のA−A断面図である。
図7に示す第3の実施例は、ゲート放射方向部(A:ゲート部ライン)上に設けられた冷却手段29…を、それぞれ個別に制御可能とした例である。これにより、各ゲートバランス不良や、金型の上下に温度差がある等に対しても、微細な条件設定が可能となる。
なお、前記第1〜3の実施例では、樹脂成形品としてプラスチック歯車を成形する場合について説明したが、歯車に限らず外周面が平面である円筒形状の樹脂成形品を優れた転写性をもって、しかも高精度に成形することができる。
【0019】
また、ひけ誘導のためキャビティの通気口に対応する成形材料の通気口に圧縮空気を付与する構成について説明したが、付与する気体は圧縮空気に限らず、例えば高圧窒素ガスボンベを設けて圧縮窒素ガスを通気口に供給することもできる。
さらに、油圧で作動する横型の射出成形機に適用した例について説明したが、これに限られるものではなく、電動で作動するものや、縦型の射出成形機に適用できるのはもちろんである。
【0020】
以上に述べた本発明の射出成形装置及び射出成形方法を用いることにより、外周面に転写部である歯部または平担部を備えた円筒形等の成形品の高転写性を確保しつつ、変形(歯筋の傾き)の少ない高精度な成形品を得ることができる。
【0021】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば次のような効果を奏する。
請求項1の発明によれば、金型内に形成された複数のゲートから溶融樹脂を射出充填し、外周面に転写部である歯部又は平担部を備えたリムと、ウェブ及びボスが一体に形成された成形品を成形する射出成形装置において、前記リムの内周面と隣接する面に設けられたひけ誘導手段と、前記複数のゲート部のそれぞれから前記外周面に向かう複数のゲート放射方向部上にそれぞれ冷却手段を設けたことにより、樹脂温度が高く、ひけ量が大きいゲート部の冷却を促進させることができる。その結果、ひけ誘導部の樹脂温度分布が低減され、歯筋の傾き等変形の少ない高精度な成形品が得られる。
【0022】
請求項2の発明によれば、ゲート部から外周部に向かうゲート放射方向部上に設けられた冷却手段が、気体冷却用の通気路と、該通気路と連結された排気制御手段とから構成されたことにより、ひけ誘導部の樹脂温度分布を容易に低減させることができる。その結果、歯筋の傾き等変形の少ない高精度な成形品が得られる。
【0023】
請求項3の発明によれば、ゲート部から外周部に向かうゲート放射方向部上に設けられた冷却手段である気体冷却用の通気路が、多孔質部材から構成されたことにより、簡単な構造で効率的な排気が可能となる。その結果、ひけ誘導部の樹脂温度分布が低減され、歯筋の傾き等変形の少ない高精度な成形品が得られる。
【0024】
請求項4の発明によれば、ゲート部から外周部に向かうゲート放射方向部上に、少なくとも2つ以上の冷却手段を有することにより、ゲート数が少ない等により、ゲート放射方向部とゲート間放射方向部(ウェルド部)との温度差がより大きな場合についても確実にひけ誘導部の樹脂温度分布を低減させることができる。その結果、歯筋の傾き等変形の少ない高精度な成形品が得られる。
【0025】
請求項5の発明によれば、ゲート部から外周部に向かうゲート放射方向部上に設けられた冷却手段を、それぞれ個別に制御する制御手段を有することにより、広範囲かつ微細な制御が可能となる。その結果、ひけ誘導部の樹脂温度分布が低減され、歯筋の傾き等変形の少ない高精度な成形品が得られる。
【0026】
請求項6の発明によれば、金型内に形成された複数のゲートから溶融樹脂を射出充填し、外周面に転写部である歯部又は平担部を備えたリムと、ウェブ部及びボスが一体に形成された成形品を成形するにあたり、リムの内周面と隣接する面に選択的に気体を導入することにより、ひけ誘導を行う射出成形方法において、前記ゲート部のそれぞれから外周部に向かう複数のゲート放射方向部上にそれぞれ冷却手段を設けたことにより、樹脂温度が高く、ひけ量が大きいゲート部の冷却を促進させることができる。その結果、ひけ誘導部の樹脂温度分布が低減され、歯筋の傾き等変形の少ない高精度な成形品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例の射出成形装置を示す断面図である。
【図2】 図1に示す歯車成形金型によって成形されるプラスチック歯車を示す図で、図2(A)は断面図、図2(B)は平面図である。
【図3】 圧縮空気供給手段の構成を示す回路図である。
【図4】 第1実施例のキャビティ入れ子を示す、図1のA−A断面図である。
【図5】 6点ピンゲート金型を用いて、リムの内周面と隣接する面に圧縮気体を導入することによってひけ誘導を実施した場合の、ひけの発生状況を示す図で、図5(A)は本発明の成形方法によって形成した成形品を示す図、図5(B)は従来の成形方法によって形成した成形品を示す図である。
【図6】 第2実施例のキャビティ入れ子を示す、図1のA−A断面図である。
【図7】 第3実施例のキャビティ入れ子を示す、図1のA−A断面図である。
【符号の説明】
1…プラスチック歯車(成形品)、2…歯形部、3…リム、4…ウェブ、5…ボス、10…歯車成形金型、11…キャビティプレート、12…コアプレート、13…キャビティ入れ子、14…コア入れ子、15…ギヤ駒、16…センタコアピン、17…通気口、18…圧縮空気供給手段、19…空気圧源、20…エアフィルタ、21…減圧弁、22…圧力計、23…電磁弁、24…リレー、25…第1次温調手段、26…第2次温調手段、27…温度調整手段、28…ピンゲート、29…冷却手段、30…通気路、31…排気制御手段。

Claims (6)

  1. 金型内に形成された複数のゲートから溶融樹脂を射出充填し、外周面に転写部を備えたリム及びウェブが一体に形成された成形品を成形する射出成形装置において、前記リムの内周面と隣接する面に設けられたひけ誘導手段と、前記複数のゲートのそれぞれから前記外周面に向かう複数のゲート放射方向部上にそれぞれ冷却手段を設けたことを特徴とする射出成形装置。
  2. 請求項1記載の射出成形装置において、前記冷却手段は、気体冷却用の通気路と、該通気路と接続された排気制御手段とからなることを特徴とする射出成形装置。
  3. 請求項2記載の射出成形装置において、前記気体冷却用の通気路は、多孔質部材から形成されることを特徴とする射出成形装置。
  4. 請求項1乃至3いずれかに記載の射出成形装置において、前記冷却手段は、前記複数のゲートから前記外周面に向かうゲート放射方向部上に複数設けられることを特徴とする射出成形装置。
  5. 請求項1乃至4いずれかに記載の射出成形装置において、前記冷却手段をそれぞれ個別に制御する制御手段を有することを特徴とする射出成形装置。
  6. 金型内に形成された複数のゲートのそれぞれから外周面に向かう複数のゲート放射方向部上にそれぞれ冷却手段を設け、前記複数のゲートから溶融樹脂を射出充填し、前記外周面に転写部を備えたリム及びウェブが一体に形成された成形品を成形する際、前記リムの内周面と隣接する面に選択的に気体を導入してひけ誘導を行う射出成形方法において、前記ひけ誘導後、前記複数のゲートのそれぞれから前記外周面に向かう複数のゲート放射方向の部分をそれぞれ冷却することを特徴とする射出成形方法。
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