JP3815113B2 - 誘導電動機の制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘導電動機の速度制御方法に関し、特に電動機取り付けの速度センサが不要で零速度域から高トルクが得られ、高精度な速度制御が可能な速度センサレスベクトル制御法に関する。
【0002】
【従来の技術】
誘導電動機のベクトル制御においては、電動機の回転速度とすべり周波数演算値の加算値に応じて変換器の出力周波数を制御する方法が一般的である。一方、速度センサレスベクトル制御においては、実回転速度の代わりに速度推定値を用いて出力周波数を制御する。ところが、速度推定値には誤差が含まれるため、実すべり周波数は適正基準値から変動するようになる。このとき、電動機磁束はトルクに応じて変動(減少)するようになり、この結果、電動機発生トルクはトルク電流に比例しなくなり、極度の場合は、トルク不足を来たす場合がある。
【0003】
速度推定の誤差原因としては、速度推定演算に用いる電動機定数(1次および2次抵抗)の設定誤差、並びにこれを1次原因として2次的に発生する電動機磁束の変動が挙げられる。従来はこれらの変動を補償する十分な方法がなく、このため、特に零速度近傍においてトルク不足を生じる場合があった。なお、関係の文献としては、奥山、他「速度,電圧センサレスベクトル制御における制御定数設定誤差の影響とその補償」電学論D,110,447(平2−5)がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、電動機定数の変動等による速度推定誤差の影響を受けることなく、零速度域からトルク不足を生じない高精度,高効率な誘導電動機の制御法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、速度指令値が所定値以下の場合、電力変換器の出力電流を通常運転時の無負荷電流値より大きな所定値に制御し、または、周波数指令値を速度推定値に代えて速度指令値に基づいて演算する。これにより、速度推定誤差による零速度近傍の低速域におけるトルク不足を防止できる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例について図を用いて説明する。
【0007】
図1は、本発明の一実施例の速度センサレスベクトル制御装置の構成例を示す。1は誘導電動機、2は電圧指令値V1*に比例した出力電圧を出力する電力変換器、3は変換器出力電流iu ,iw を座標変換し、d軸およびq軸電流Id,Iqを演算する座標変換器、4はq軸電圧指令値Vq**およびIq に基づいて、速度推定値ωr^を演算する速度推定器、5は速度指令値ωr*と速度推定値ωr^の偏差に応じて、q軸電流指令値Iq*を出力する速度制御器で、Id に応じてIq*を制限する制限器を備えている。6はIq*とIq に応じてΔqを出力するq軸電流制御器、7はすべり周波数演算器であり、7を構成する71はIq*に基づいてすべり周波数演算値ωs*を演算するすべり周波数演算器、8はωr^とωr*を回転速度の大小に応じて切り替えてωr^^ を出力する切り替え器で、ωr^と関数器81の出力Ga1を乗算する乗算器82,ωr*と関数器83の出力Ga2を乗算する乗算器84、および両乗算器の出力を加算する加算器85により構成される。9は切り替え器8からの出力信号ωr^^とωs*を加算して信号ω1* を得る加算器、10は加算器9からの出力周波数指令値ω1*を積分して位相基準値θを出力する位相発生器、11はd軸電流指令器で、添加電流値ΔId と関数器111の出力Ga3を乗算する乗算器112、および基準電流値Id*と乗算器出力を加算して、d軸電流指令値を演算する加算器113で構成される。12はId** とId の偏差に応じた信号Δdを出力するd軸電流制御器、13はId**,Iq* 、およびω1*に基づいてd軸およびq軸電圧基準値Vd*,Vq*を演算する電圧演算器、14はVd*とΔdの加算値Vd**を出力する加算器、15はVq*とΔqの加算値Vq**を出力する加算器、16はVd**とVq**を座標変換し、変換器出力電圧指令値V1*(3相)を出力する座標変換器である。
【0008】
以上において、8,11が本実施例に特徴的なところである。8,11内の関数器の特性は次のようである。関数器81の出力Ga1はωr*が零近傍では0、大では1の値をとり、関数器83の出力Ga2はその逆の値をとる。すなわち、Ga1,Ga2は互いに相補の(数1)の関係にある。
【0009】
Ga1+Ga2=1 …(数1)
したがって、切り替え器8の出力ωr^^は(数2)で与えられる。これより、 ωr^^は零速域ではωr*に、中高速域ではωr^に一致する。Ga1,Ga2 の漸増/漸減領域は切り替えを円滑に行うためのもので、この領域ではωr^^としてωr*とωr^の中間値が出力される。
【0010】
ωr^^=ωr^・Ga1+ωr*・Ga2 …(数2)
また、関数器111の出力Ga3は、ωr*が零近傍では1、大では0の値をとる。これにより、Id**およびId は零速度域において基準値Id*からΔIdだけ強められる。Ga3の漸増/漸減領域は切り替えを円滑に行うためのもので、この領域ではId**としてId*+ΔId の中間値が出力される。
【0011】
次にシステム全体の動作について述べる。構成要素の1〜7,9,10,12〜16については、従来の速度センサレスベクトル制御システムと同様であるが、先ず概要について述べる。
【0012】
速度センサレスベクトル制御においては、変換器出力電圧および出力電流に基づいて回転速度を推定し、これを速度制御器5にフィードバックして速度制御を行うと共に、速度推定値ωr^とすべり周波数演算値ωs*の加算値に従い変換器の出力周波数を制御する。周知の速度センサ付きベクトル制御との違いは、電動機取り付けの速度センサからの速度検出値を用いる代わりに速度推定値を用いる点にあるが、基本動作は同様である。
【0013】
d軸電流指令Id**並びに速度制御器5からのq軸電流指令値Iq* に従い電動機電流Id ,Iq を制御するには、このために必要な電動機電圧を変換器より供給する必要がある。そこで、電圧演算器13において、電流指令値Id**,Iq*および出力周波数指令値ω1*に基づいてd軸およびq軸電圧基準値Vd*,Vq*を演算し、これを用いて変換器出力電圧を制御する。しかし、これだけでは制御誤差により電流Id ,Iq が各指令値に一致しないため、d軸およびq軸電流制御器12,6からのΔd,Δqにより電圧Vd*,Vq*を修正し、Id ,Iq を指令値に一致するように制御する。このようにしてすべり周波数制御型ベクトル制御の動作が行われ、電動機トルクはIq*に比例して制御される。
【0014】
次に、各構成要素の詳細な動作について述べる。
【0015】
速度推定器4において(数3)に従い速度推定値ωr^を演算する。
【0016】
ωr^={1/(1+T0s)}{L2*/(M*・φ2d*}{Vq** −ω1*・Lσ*・Id**−(Rσ*+Lσ*・s)Iq} …(数3)
ここに、T0 :オブザーバ時定数
L2*,M*:2次および励磁インダクタンス(基準値)
φ2d* :2次d軸磁束(基準値)
Rσ* :1次および2次抵抗の和(基準値)
Lσ* :1次および2次漏れインダクタンスの和(基準値)
ω1* :変換器出力周波数(指令値)
図2に、速度推定器4の(数3)に基づく演算内容を示す。41は電動機モデルであり、電動機q軸電圧Vq(=Vq**)と誘導起電力Eq および電流Iq の関係を示す。推定原理は、Eq を逆モデル42により推定し、基準磁束量で割算することにより速度推定値ωr^を演算するものである。
【0017】
ωr^は速度制御器5へのフィードバック信号に用いると共に、ω1*の演算に用いられる。この演算式を(数4)に示す。従来制御ではωr^がそのまま出力周波数指令値ω1*に使用され、変換器出力周波数が制御される。
【0018】
ω1*=ωr^+ωs* …(数4)
一方、速度制御器5において、速度偏差ωr*−ωr^に応じて、q軸電流指令値Iq*が演算される。電動機トルクは基本的にはIq*に比例するため、ωr^がωr*に一致するように速度制御が行われる。電動機トルクがIq*に正しく比例するためには、電動機電流Iq がIq*に一致し、また電動機磁束が基準値に保たれることが条件である。これには電動機電流Id ,Iq を各指令値Id**,Iq* に一致するように制御することが必要であり、このために、d軸およびq軸電流制御器12,6が設けてある。各運転条件における電動機電圧は(数5)で示されるが、これに相当の電圧Vd*,Vq*はId**,Iq*,ω1* および電動機定数に基づいて(数6)を用い、予め演算により求めることができる。電圧演算器13においてこの演算を行う。
【0019】
Vd=r1・Id−ω1・Lσ・Iq
Vq=r1・Iq+ω1・Lσ・Id+ω1(M/L2)φ2d …(数5)
ここに、r1 :1次抵抗(実際値)
Lσ :1次および2次漏れインダクタンスの和(実際値)
L2,M :2次および励磁インダクタンス(実際値)
φ2d :2次d軸磁束(実際値)
Vd*=r1*・Id**−ω1*・Lσ*・Iq*
Vq*=r1*・Iq*+ω1*・Lσ*・Id**+ω1*(M*/L2*)φ2d*…(数6)
ここに、*および**は、基準値/指令値を示す。
【0020】
変換器出力電圧(電動機電圧)は、基本的にはこのVd*およびVq*に従い制御される。しかし、制御誤差があると、これだけでは実電流Id ,Iq が各指令値に一致しないため、d軸およびq軸電流制御器12,6により電流偏差に応じた信号Δd,Δqを求め、これにより出力電圧を修正し、Id ,Iq を指令値に一致するように制御している。以上が従来からのものと共通な動作である。
【0021】
図3に、従来の零速度近傍における電動機トルクτmと回転速度ωrの関係を示す。図中に示す斜線部は、トルク低下が発生し易い不安定領域である。
【0022】
この斜線部は、力行域(τm とωr が同符号)では、ωr =0.5〜1Hz以下、回生域(τm とωr が異符号)では、数Hz以下の範囲であり、速度推定器4で求めたωr^に含まれる推定誤差が増大すると、斜線部が拡大し、低速での負荷運転が不能に陥る場合がある。
【0023】
推定誤差の原因は、1次,2次抵抗の温度変化並びに電動機の鉄心飽和による漏れインダクタンスの変動などがあり、特に零速度域では種々の原因からトルク低下が生じ易い。
【0024】
本実施例は、零速度域のトルク低下の防止を目的に、零速度域では前述と異なる原理により速度制御を行う。以下、この内容について述べる。
【0025】
トルク低下は前述のように速度推定誤差が原因であるが、更にこれを分析すると次の2つに大別できる。
【0026】
(1)速度推定値を基に周波数を制御することから、推定誤差により実すべり周波数が適正値から変動する。
【0027】
(2)速度推定値を用いて速度制御するため、推定誤差によりトルク電流を適 正値に制御できない。
【0028】
そこで本実施例においては、それぞれを次のようにして解決する。
【0029】
「1」零速度域では、推定値ωr^に代えて速度指令値ωr*を用い出力周波数指令値ω1*を演算する。
【0030】
すなわち、零速度域では、切り替え器8により通常時のωr^に代えてωr*を選択し出力させ、変換器の出力周波数を速度指令値ωr*に応じて制御する。
【0031】
「2」零速度域では、電力変換器の出力電流を通常時の無負荷電流値より大きな所定値に制御する。
【0032】
例えば、q軸電流Iq を零に固定し、代わりにd軸電流Id を通常時の無負荷電流値より大きな所定値に制御する。この場合、d軸電流指令器11において、通常時の基準値Id*にΔId を加算し、Id を強め制御する。
【0033】
「1」「2」を適用した場合の、電動機発生トルクτm と電流I1 の関係を (数7)に示す。
【0034】
τm=K(ωs・T2)/(1+(ωs・T2)2)I1 2 …(数7)
ここに、K :比例定数
ωs :すべり周波数
T2:2次時定数
I1 :電動機一次電流の大きさ
I1 が一定の場合、電動機トルクτm は、ωs・T2=±1において最大値をとるが、ωs =0からこの間は、τm はすべり周波数ωs に応じて変化する。この場合、ωs は、実速度ωr が変換器出力周波数ω1(=ωr*)に対して変動することにより受動的に発生する。すなわち、負荷トルクの増/減に応じてωs が増/減することにより、τm は負荷トルクに追従して発生する。この結果、電動機速度ωr はωr*の近傍(すべり分だけ変動)に保たれる様になり、速度指令値に応じて速度制御が行われる。
【0035】
ここで、電動機の最大トルクは負荷最大トルク以上であることが必要なため、I1 を負荷最大トルクに見合う値以上に予め制御する必要がある。このために
Id あるいはIq を所定値に制御する。
【0036】
この方法としては、Iq*を速度偏差とは無関係に所定値に設定する方法もあるが、零速度域では負荷トルクの方向をωr^などから検知することが精度上難しいので、Iq*の極性の設定が行えない。このため、極性の設定が不要なId** を所定値に設定する方法を図1の実施例では適用している。このとき、前記「2」でも記述したように、Iq* を零に、Id**を、通常時の基準値Id*にΔId を加算した値とし、Id(=I1 相当)を最大負荷トルクに見合う値に制御する。
【0037】
零速度域においては、以上のように変換器の出力周波数と出力電流を制御するため、前記(1)(2)の問題が解決され、トルク不足も解消する。
【0038】
図4に、本実施例における電動機トルクと回転速度の関係を示す。図3に示す不安定領域(斜線部)は無くなり、回転速度は、すべり周波数分だけ変動するが、0Hzを挟む運転においても連続した高トルクを実現することができる。
【0039】
出力周波数が数Hz以上の範囲では、図1中の切り替え器8の出力はωr*からωr^に切り替えられ、従来方式と同様に速度推定値ωr^を用いて周波数制御を行う。また、切り替えを円滑にするため、切り替えに伴うω1*の急激な変化を抑制するように、ωr*とωr^を漸次切り替える。関数器81,83の出力Ga1,Ga2の漸増/漸減特性はこのために設けてある。またd軸電流指令器11においても、Id の急変を抑えるため、Ga3の漸増/漸減特性を設けており、Id を強めた状態(零速度域)では、電動機電流I1 が定格値を超えないようにするため、
Iq*を制限する必要があること、また、この期間では、ωr^の精度低下により、Iq*は適正値から離れるため、Iq*を所定値または略零に制限することが必要である。本実施例では、(数8)に従いId に応じてIq*の制限値Iq MAXを可変する方法を用いている。
【0040】
Iq MAX=√(I1*2−Id2) …(数8)
ここに、I1*:電動機電流設定値
図5は、本発明の他の実施例を示す。本実施例は、速度推定値ωr^をq軸電流制御器6aの出力より得る方式の速度センサレスベクトル制御装置への適用例である。図において、1〜3,5,7〜14,16は図1のものと同一物である。6aはIq*とIq の偏差に応じてωr^を出力するq軸電流制御器、切り替え器8は前記実施例と同様にωr*の大小に応じてωr*とωr^を選択し出力する。従来制御の状態では、切り替え器8よりωr^が出力され、また、電流制御器6aの出力がωr^相当となることを考慮すれば、前記実施例と同様に動作し、同様の効果が得られることは明らかである。
【0041】
図6は、本発明の他の実施例を示す。信号ω1*′をq軸電流制御器6bの出力より得る方式の速度センサレスベクトル制御装置への適用例である。図において、1〜3,5,7〜14,16は図1のものと同一物である。6bはIq*とIq の偏差に応じてω1*を出力するq軸電流制御、9aはω1*′からωs*を減算し、速度推定値ωr^を求め速度制御器5にフィードバックする減算器であり、切り替え器8は前記実施例と同様にωr*の大小に応じてωr*とωr^を選択し出力する。従来制御の状態では、切り替え器8よりωr^が出力され、また、電流制御器6bの出力がω1*相当となることを考慮すれば、前記実施例と同様に動作し、同様の効果が得られることは明らかである。
【0042】
前記実施例では、零速度域においてId を所定値に強め制御しているが、零速度域でのトルクが正負両方向あり、一定していない場合は、Iq を零に制御し、Id を強めるこの方法が適している。一方、トルクが片方向のみの場合は、Iq*の極性はトルク方向に応じて設定すればよいので、前記実施例のようにId を所定値に設定する代わりに、零速度域においてIq*を所定値(負荷最大トルクに見合う値)に設定する方法も可能である。
【0043】
図7に、この実施例の構成を示す。図において、構成要素の1〜10,12〜16は図1のものと同一物であり、動作も同じである。17は回転速度の大小に応じて速度制御器5の出力Iq*と設定電流値Iq0を加算して出力するq軸電流指令器で、漸増/漸減特性をもつ関数発生器171の出力Ga4(0≦Ga4≦1)とIq0を乗算する乗算器172,乗算器172の出力とIq*とを加算し、Iq** を出力する加算器173から構成される。
【0044】
q軸電流指令器17の動作は、以下である。Ga4は、零速度域においては「1」それ以外では、「0≦Ga4≦1」の漸増/漸減特性をもっているため、零速度域では、q軸電流指令器17からはIq0が出力される。従って、零速度近傍では、Iq0に従いIq が制御され、十分なトルクが得られる(Iq0は負荷最大トルクに見合う値に設定される)。なお、零速度域以外では、これとは逆にIq*に従い
Iq が制御され、動作は従来のものと同一となる。
【0045】
以上のようにして、零速度域では、ωr*に応じて変換器出力周波数を、また、所定値Iq0に従い電動機電流を制御することから、このものにおいても前記実施例と同様の効果が得られる。
【0046】
前記実施例までは、速度制御器5を備え、その出力信号Iq*あるいはIq**に応じてトルクを制御する速度制御方式への適用例であったが、速度制御器を備えない方式にも本発明を適用し同様の効果が得られる。
【0047】
図8は、この実施例の構成を示す。図において、構成要素の1〜3,10〜
14,16は図1のものと同一物である。7a1はq軸電流値Iq に基づいてすべり周波数演算値ωs*を求めるすべり演算器、9bは速度指令値ωr*と信号ωs*を加算して信号ω1*を得る加算器である。
【0048】
次にシステム全体の動作について述べる。零速度域以外の状態ではωr*+ωs*の周波数指令値ω1*が、また、d軸電流指令器11からは基準値Id*が出力される。このとき全体の動作は従来の速度センサレスベクトル制御システムと同一となる。すなわち、略ωr*に応じて変換器出力周波数を制御すると共に、電圧演算器13においてId*,Iq およびω1*に基づいて所要の電動機電圧を演算し、これにより変換器出力電圧を制御する。
【0049】
以上のようにして、変換器の出力電圧と周波数が制御されることから、V/f制御に類似の動作が行われる。しかし、電圧演算器13により、電動機の内部電圧降下を補償して誘導起電力(電動機磁束)が所定値となるように制御しているため、低速度域まで十分なトルクが得られるものである。
【0050】
このものにおいては、d軸電流指令器11は、Id*にΔId を加算した指令値Id** を出力し、Id を強め制御する。これにより、前記実施例と同様に、速度指令値ωr*に応じて周波数指令値ω1*を制御し、d軸電流を通常時より大きめの所定値に制御することが行われるため、零速度域のトルク不足は解消される。
【0051】
前記実施例までは、零速度域において、Iq*を零に制御するため、ωs*が零となることから、変換器の出力周波数ω1は速度指令値ωr* に一致する。このため、負荷トルクが作用すると、電動機の回転速度ωr はすべり周波数ωs 分だけωr*から変動する。この補償は、図1の実施例における電圧指令値Vd**,Vq**または、電流制御器出力Δd,Δqなど、電力変換器の出力電圧値を用いて、零速度域のすべり周波数を推定し、このすべり推定値ωs^を周波数指令値に加算することにより行うことができる。
【0052】
更に、この出力電圧値を用いて演算した零速度域のすべり周波数推定値ωs^と、電流指令値Iq*を用いて演算したにすべり周波数演算値ωs*の加算値を、新たな、すべり周波数演算値ωs** とし周波数指令値を修正することにより、零速度から全速度範囲において、トルクに応じた回転速度の変動を補償できる。
【0053】
図9は、この実施例の構成を示す。図1の速度センサレスベクトル制御装置に本発明を適用した例である。
【0054】
図において、1〜6,8〜16は図1のものと同一物である。7bはすべり周波数演算値ωs*とすべり周波数推定値ωs^の加算値、ωs** を演算するすべり周波数演算器、7b1は電流指令値Iq*を用いて、前記ωs*を求めるすべり演算器、7b2は電流制御器出力Δd,Δqと、出力周波数指令値ω1*を用いて、前記ωs^を求めるすべり推定器、7b3はωs*とωs^を加算する加算器である。
【0055】
ここで、加算器9の出力ω1*は、零速度域では、ωr*+ωs^に、それ以外では(ωr^・Ga1+ωr*・Ga2+ωs^+ωs*)に一致する。
【0056】
次に、すべり推定器7b2について説明する。まず、7b2の構成を、図10を用いて説明する。
【0057】
7b2に入力されたω1*は、係数(M*/L2*)を乗じた後、d軸磁束基準値φ2d*が乗算され、Δqと共に、加算器7b22に入力される。更に、Δdと加算器7b22の出力信号は、除算器7b23に入力される。7b23の出力信号に電動機の二次時定数の逆数(1/T2*)を乗算し、すべり周波数推定値ωs^を出力する。
【0058】
次に、このすべり推定器7b2のもたらす効果について説明する。
【0059】
図9に示す電圧指令値Vd**,Vq**、電流制御器出力Δd,Δqおよび、電動機電圧Vd,Vqは、それぞれ(数9),(数10)で示される。
【0060】
Vd**=r1*・Id**−ω1*・Lσ*・Iq*+Δd
Vq**=r1*・Iq*+ω1*・Lσ*・Id**+ω1*(M*/L2*)φ2d*+Δq…(数9)
Vd=r1・Id−ω1・Lσ・Iq−ω1(M/L2)φ2q
Vq=r1・Iq+ω1・Lσ・Id+ω1(M/L2)φ2d …(数10)
ここで、(9式)=(10式)の関係より、電流制御器出力Δd,Δqは、 (数11)で示される。
【0061】
但し、ω1*=ω1,Id*=Id ,Iq*=Iq
先ず、零速度域では、q軸電流値Iq を0に制御していることから、(数11)における、Iq =0、また、Lσ*≒Lσ であれば、同式の第2項は、第3項に比べて、小さく無視できる。
【0062】
すると、(数12)のΔd,Δqは(数12)で示される。
【0063】
Δd≒(r1−r1*)Id−ω1(M/L2)φ2q
Δq≒ω1{(M/L2)φ2d−(M*/L2*)φ2d*} …(数12)
よって、Δdは、q軸磁束φ2qに関係した誘導起電力
Ed{=−ω1(M/L2)φ2q}
にほぼ一致する。
【0064】
一方、Δqに誘導起電力基準値{ω1*(M*/L2*)φ2d*}を加算すると、(数13)で示すように、d軸磁束φ2dに関係した誘導起電力
Eq{=ω1(M/L2)φ2d}
が得られる。
【0065】
Δq+ω1*(M*/L2*)φ2d*=ω1(M/L2)φ2d …(数13)
ところで、このような方法を用いて、Id :所定値,Iq =0に制御した場合は、磁束φ2d,φ2qと電動機のすべり周波数ωs の関係は(数14)で示される。
【0066】
そこで、(数15)で示す演算を行うことにより、すべり周波数推定値ωs^を求めることができる。
【0067】
ωs^=(1/T2*){Δd/(Δq+ω1*(M*/L2*)φ2d*)} …(数15)
一方、零速度域以上では速度制御器5により電流指令値Iq*が発生する。この時は、(数16)のようにIq*を用いて、すべり周波数演算値ωs*を演算する。
ωs*=Iq*・M*/(T2*・φ2d*) …(数16)
ここで、(数15)で求めたωs^と(数16)で求めたωs*の加算値ωs**を 、切り替え器8の信号ωr^^に加算して、(数17)に示すように出力周波数指令値ω1*を演算する。
【0068】
ω1*=ωr^^+ωs*+ωs^ …(数17)
図11に、本発明によるすべり周波数補償を用いた場合の電動機トルクと回転速度の関係を示す。本すべり周波数補償を用いると、ωr ≒0からトルクに応じた回転速度の変動を補償でき、高精度な速度制御を行うことができる。
【0069】
また、本実施例(図9)では、Δd,Δqを用いて、ωs^を演算したが、電圧指令値(Vd**,Vq**)から誘導起電力値(ed^,eq^)を演算して、ωs^を求めることもできる。
【0070】
Vd**から、抵抗電圧降下演算値(r1・Id)を、Vq**から、漏れインダクタンス電圧降下演算値(ω1・Lσ・Id)を差し引くと、(数18)に示すように、ed^,eq^を求めることができる。
【0071】
なお、零速度域ではIq =0である。
【0072】
ωs は、(数14)に示される関係にあるので、ωs^は、これら、ed^,eq^あるいは、φ2d^,φ2q^を用いて、(数19)に従い演算することができる。
【0073】
このωs^とωs*を用いて、ω1*を(数17)に従い制御すれば、(数15)を用いた場合と同様に動作し、同様の効果がある。
【0074】
更に、前記実施例(図9)では、図1の制御装置に、本発明を適用した例であるが、図5,図6,図8の制御装置に適用する場合は、ωs^を、電圧指令基準値Vq*と電流制御器出力Δdより演算する。
【0075】
すなわち、Vq*=Vqの関係から、(数6の2行目=数10の2行目)であり、前述したように、零速度域では、Iq =0、また、漏れインダクタンス電圧降下の影響が小さい(例え、Lσ*≠Lσであっても無視できる)ことから、Vq*は、(数20)で示される。
【0076】
Vq*≒ω1(M/L2)φ2d …(数20)
また、Δdは(数12)であり、ΔdとVq*を用いて、(数21)に従い、
ωs^を演算することができる。
【0077】
ωs^=(1/T2*)(Δd/Vq*) …(数21)
このωs^とωs*を用いて、ω1*を(数17)に従い制御すれば、(数15)を用いた、前記実施例(図9)と同様に動作し、同様の効果がある。
【0078】
これまでは、図9のすべり周波数演算器7bについて説明してきたが、7bの代わりに、図12の実施例に示す7cを用いても、同様の効果がある。
【0079】
7cは、ωs*とωs^の加算値ωs**を演算する、すべり周波数演算器であり、構成を説明すると、7c1はIq*とφ2d^を用いて、前記ωs*を求めるすべり演算器、7c2はφ2d^とφ2q^を用いて、ωs^を求めるすべり推定器、7c3はωs*とωs^を加算する加算器、7c4はΔqとω1*を用いてφ2d^を演算するd軸磁束推定器、7c5はΔdとω1*を用いてφ2q^を演算するq軸磁束推定器である。
【0080】
最初に、7cの構成要素のd軸磁束推定器7c4について、図13を用いて説明する。
【0081】
7c4に入力されたω1*は、係数(M*/L2*)を乗じた後、d軸磁束基準値φ2d* が乗算され、Δqと共に加算器7c42に入力される。更に、加算器7c42の出力信号と、ω1*(M*/L2*)が除算器7c43に入力され、磁束推定値φ2d^を出力する。
【0082】
次に、q軸磁束推定器7c5について、図14を用いて説明する。
【0083】
7c5に入力されたω1*は、係数(M*/L2*)を乗じた後、Δdと共に、除算器7c52に入力され、磁束推定値φ2q^を出力する。
【0084】
更に、これら演算したφ2d^とφ2q^を用いて、ωs^を演算する、すべり推定器7c2の構成を、図15に示す。
【0085】
7c2に入力されたφ2d^とφ2q^は除算器7c21に入力される。
【0086】
除算器7c21の出力信号に電動機二次時定数の逆数(1/T2*)を乗算して、すべり周波数推定値ωs^を出力する。このωs^と前述のωs*を用いて周波数指令値を修正する。
【0087】
この方法では、出力電圧値から、磁束推定値φ2d^,φ2q^を(数22)より求め、その値を用いて、ωs^とωs*を、(数23)に示すように演算し、ω1*を(数17)に従い制御する。
【0088】
φ2d^=[{Δq+ω1*(M*/L2*)φ2d*}/(ω1*・M*/L2*)]
φ2q^={Δd/(ω1*・M*/L2*)} …(数22)
ωs^=(1/T2*)(−φ2q^/φ2d^)
ωs*=(Iq*・M*)/(T2*・φ2d^) …(数23)
この方法でも、(数14)を用いた、前記実施例(図9)と同様に動作し、同様の効果が得られる。
【0089】
更に、図9のすべり周波数演算器7bの代わりに、図16の実施例に示す7dを用いても同様の効果がある。
【0090】
7dはωs*とωs^の加算値ωs** を演算するすべり周波数演算器であり、構成を説明すると、
7d1はIq*とφ2d^を用いて、前記ωs*を求めるすべり演算器、7d2は φ2d^とφ2q^を用いて、前記ωs^を求めるすべり推定器、7d3はωs*とωs^を加算する加算器、7d4はVd**,Vq**とω1*を用いて、φ2d^,φ2q^ を演算する磁束推定器である。
【0091】
次に、7dの構成要素である磁束推定器7d4の構成を、図17に示す。
【0092】
7d4の減算器7d41には、Vd**と、抵抗電圧演算値(r1*・Id**)および漏れインダクタンス電圧演算値(−ω1*・Lσ*・Iq*)が入力される。また、ω1*に、係数(M*/L2*)を乗じた後、φ2q^を乗算し、d軸の誘導起電力値ed^を求める。ed^は、減算器7d41の出力信号と共に減算器7d43に入力される。減算器7d43の出力信号は積分器7d44に入力され、磁束推定値φ2d^を出力する。
【0093】
一方、Vq** と、抵抗電圧演算値(r1*・Iq*)と漏れインダクタンス電圧演算値(ω1*・Lσ*・Id**)が減算器7d45に入力される。
【0094】
また、ω1*に、係数(M*/L2*)を乗じた後、φ2d^を乗算し、q軸の誘導起電力値eq^を求める。eq^は、減算器7d45の出力信号と共に加算器7d46に入力される。加算器7d46の出力信号は積分器7d47に入力され磁束推定値φ2q^を出力する。
【0095】
この方法では、出力電圧値より、φ2d^,φ2q^を(数24)より求めて、ωs^を演算する。
【0096】
φ2d^=∫[Vd**−r1・Id**+ω1*・Lσ*・Iq*
−ω1*(M*/L2*)φ2q^]dt
φ2q^=∫[Vq**−r1・Iq*+ω1*・Lσ*・Id*
+ω1*(M*/L2*)φ2d^]dt …(数24)
すなわち、電圧指令値(Vd**,Vd**)を利用した磁束推定器を用いて、φ2d^,φ2q^を求め、(数23)に従い、図16の7d1,7d2において、ωs* とωs^を演算する。7d3では、ωs*とωs^を加算し、この値を用いて、周波数指令値を修正する。
【0097】
この方法でも、図9と同様に動作し、同様の効果が得られる。
【0098】
なお、7d1,7d2は、7c1,7c2と演算内容は同一である。
【0099】
前記実施例までは、d軸電流値Idを負荷トルクに関係なく一定に制御する方式であったが、軽負荷時には運転効率が低下する。そこで、トルク推定値τm^により電流指令値Id** を修正することにより、軽負荷時の運転効率を高くすることができる。
【0100】
図18は、この実施例の構成を示す。本実施例は、図1の制御装置に、本発明のd軸電流の修正補償を適用した例である。
【0101】
図において、1〜10,12〜16は図1のものと同一物である。18は電圧指令値Vd**,Vq**と、電流検出値Id,Iqおよび周波数指令値ω1*により誘導電動機の出力トルクを演算するトルク推定器である。
【0102】
18の出力信号τm^はd軸電流指令器11a内の関数発生器11a1に入力される。11a1では、18の出力信号τm^により、修正ゲインGa5(0≦Ga5≦1)を演算する。
【0103】
乗算器11a2では、電流指令値の増加分ΔId*と、前述のGa5が乗算される。その乗算値とId*が加算されて、Id**が演算され、11aより出力される。 次に、トルク推定器18について説明する。18では、Vd**,Vq**と、Id,Iqおよびω1*に基づいて、(数25)に示す演算を行う。
【0104】
τm^=(Vd**・Id+Vq**・Iq)/ω1* …(数25)
このτm^を用いて、(数26)に従い、負荷トルクに見合ったId**を演算する。
【0105】
Id**=Id*+F(τm^)・ΔId* …(数26)
但し、F(τm^)は、
|τm^|=0のとき、 Ga5=0
|τm^|≠0のとき、0< Ga5≦1
となるような関数。
【0106】
(数26)で求めた、Id**を用いれば、
無負荷(|τm^|=0)では、Id**=Id*
負荷時(|τm^|>0)では、Id**≧Id*
となり、負荷トルク(トルク推定値τm^)に応じて、Id** が修正されるため、軽負荷時の運転効率を高くすることができる。
【0107】
前記実施例は、図1の制御装置への適用例であるが、図5,図6,図8の制御装置に適用する場合は、電圧指令値Vq**に代わりに電圧指令基準値Vq* を用いて、τm^を(数27)で演算する。
【0108】
τm^=(Vd**・Id+Vq*・Iq)/ω1* …(数27)
このτm^を用いて、負荷トルクに応じて変化するId**を演算することより、前記実施例と同様に動作し、同様の効果が得られる。
【0109】
また、本実施例では、Vd**,Vq**と、Id,Iqを用いてトルク推定値を演算したが、電圧指令値の代わりに、前述した磁束推定値(φ2d^,φ2q^)を用いて、(数28)に示す演算を行うことにより、τm^を求めることもできる。
【0110】
τm^=K1(φ2d^・Iq−φ2q^・Id) …(数28)
ここに、K1:トルク係数
このτm^を用いて、負荷トルクに応じて変化するId** を演算することより、前記実施例と同様に動作し、同様の効果が得られる。
【0111】
また、前記実施例では、τm^に応じて、Id を修正することにより軽負荷時の運転効率を向上させたが、τm^の代わりにすべり周波数演算値ωs** を用いても同様の効果が得られる。
【0112】
図19は、この実施例を示す。本実施例は、図1の制御装置に、ωs** によるId**の修正制御を適用した例である。
【0113】
図において、1〜10,12〜16は図7のものと同一物である。11bは
ωs**を用いて、修正ゲインGa6を演算するd軸電流指令器である。
【0114】
ωs**は、11b内の関数発生器11b1に入力される。11b1では、ωs**に基づいて、修正ゲインGa6(0≦Ga6≦1)を演算する。
【0115】
乗算器11b2では、電流指令値の増加分ΔId*と、前述のGa6が乗算される。その乗算値とId*が加算されて、Id** が演算され、11bより出力される。
【0116】
次に、本発明の特徴であるd軸電流指令器11bのもたらす効果について説明する。すべり周波数演算値ωs**と、トルクには比例関係がある。
【0117】
よって、ωs**を用いて(数29)に関係したIdを制御すれば、前記実施例と同等の動作を行うことができる。
【0118】
Id**=Id*+F(ωs**)・ΔId* …(数29)
但し、F(ωs**)は、
|ωs**|=0のとき、 Ga6=0
|ωs**|>0のとき、0<Ga6≦1
となるような関数。
【0119】
(数29)で求めた、Id**を用いれば、
無負荷(|ωs**|=0)では、Id**=Id*
負荷時(|ωs**|>0)では、Id**>Id*
となり、負荷トルク(ωs**)に応じてId**が修正されるため、前記実施例と同様に動作し、同様の効果が得られることは明らかである。
【0120】
前記実施例は、図1の制御装置への適用例であるが、図5,図6,図8の制御装置に適用する場合は、(数21)に従い、ΔdとVq*の比により、ωs^を演算し、このωs^とωs*の加算値ωs**に応じて、Id**を修正すれば、前記実施例と同様に動作し、同様の効果が得られる。
【0121】
【発明の効果】
本発明によれば、零速度においてもトルク不足を生じない誘導電動機の速度制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す、誘導電動機の速度制御装置の制御回路構成図である。
【図2】図1の装置における速度推定器の演算内容の説明図である。
【図3】従来方式による誘導電動機の発生トルクと回転速度の特性である。
【図4】本発明による誘導電動機の発生トルクと回転速度の特性である。
【図5】本発明の他の実施例を示す誘導電動機の速度制御装置の制御回路構成図である。
【図6】本発明の他の実施例を示す誘導電動機の速度制御装置の制御回路構成図である。
【図7】本発明の他の実施例を示す誘導電動機の速度制御装置の制御回路構成図である。
【図8】本発明の他の実施例を示す誘導電動機の速度制御装置の制御回路構成図である。
【図9】本発明の他の実施例を示す誘導電動機の速度制御装置の制御回路構成図である。
【図10】図9の装置における、すべり推定器の演算内容の説明図である。
【図11】本発明のすべり推定器とすべり周波数演算器を用いた場合の誘導電動機の発生トルクと回転速度の特性である。
【図12】図9における、他のすべり周波数演算器の内容の説明図である。
【図13】図12の演算器における、d軸磁束推定器の演算内容の説明図である。
【図14】図12の演算器における、q軸磁束推定器の演算内容の説明図である。
【図15】図12の演算器における、すべり推定器の演算内容の説明図である。
【図16】図9における、他のすべり周波数演算器の内容の説明図である。
【図17】図16の演算器における、磁束推定器の演算内容の説明図である。
【図18】本発明の他の実施例を示す、誘導電動機の速度制御装置の制御回路構成図である。
【図19】本発明の他の実施例を示す、誘導電動機の速度制御装置の制御回路構成図である。
【符号の説明】
1…誘導電動機、2…電力変換器、3…座標変換器、4…速度推定器、5…速度制御器、6…q軸電流制御器、7…すべり周波数演算器、8…切り替え器、9…加算器、10…位相発生器、11…d軸電流指令器、12…d軸電流制御器、13…電圧演算器、16…座標変換器、18…トルク推定器。
Claims (22)
- 電力変換器と、速度指令値に従い前記変換器の出力周波数値と出力電圧値を制御する速度制御装置により誘導電動機を駆動するための誘導電動機の制御方法において、
前記変換器の出力電圧指令値を用いて演算したすべり周波数推定値と、前記変換器の出力電流値を用いて演算したすべり周波数演算値を、前記速度指令値に加算し、該加算値に応じて前記変換器の出力周波数を制御することを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 電力変換器と、回転座標系のd軸およびq軸の電流検出値あるいは指令値および前記変換器の出力周波数指令値に基づいて変換器の出力電圧基準値を演算する演算器を備え、速度指令値に従い前記変換器の出力周波数値を制御する速度制御装置により誘導電動機を駆動するための誘導電動機の制御方法において、
前記変換器の出力電圧指令値を用いて演算したすべり周波数推定値と、前記変換器の出力電流値を用いて演算したすべり周波数演算値を、前記速度指令値に加算し、該加算値に応じて前記変換器の出力周波数を制御することを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 電力変換器と、電流指令値に従い前記変換器の出力電流を制御する電流制御器を備え、速度指令値あるいは速度推定値に従い前記変換器の出力周波数値を制御する速度制御装置により誘導電動機を駆動するための誘導電動機の制御方法において、
前記変換器の出力電圧指令値を用いて演算したすべり周波数推定値と、前記変換器の出力電流値を用いて演算したすべり周波数演算値を、前記周波数指令値に加算し、該加算値に応じて前記変換器の出力周波数を制御することを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 請求項1〜3のいずれか1項において、
前記すべり周波数推定値は、d軸の誘導起電力値と、q軸の誘導起電力値との比に基づいて演算することを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 請求項1〜3のいずれか1項において、
前記すべり周波数推定値は、各々、d軸の電圧指令値あるいは検出値と、q軸の電圧指令値あるいは検出値を用いて演算により求めることを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 請求項1〜3のいずれか1項において、
前記すべり周波数推定値は、q軸の磁束値と、d軸の磁束値の比に基づいて演算により求めることを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 請求項1〜3のいずれか1項において、
前記すべり周波数推定値は、各々、d軸の電圧指令値あるいは検出値と前記変換器の出力周波数値を用いて演算したq軸の磁束値と、q軸の電圧指令値あるいは検出値と前記変換器の出力周波数値を用いて演算したd軸の磁束値との比に基づいて、演算により求めることを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 請求項6において、
前記磁束値は、回転座標系のd軸およびq軸の電圧指令値あるいは検出値と、d軸およびq軸の抵抗電圧降下演算値と、d軸およびq軸の漏れリアクタンス電圧降下演算値の和(差)を求め、該加算(減算)値と前記変換器の出力周波数値の比に基づいて、演算により求めることを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 請求項6において、前記磁束値は、d軸およびq軸の電圧指令値あるいは検出値と、d軸およびq軸の抵抗電圧降下演算値と、d軸およびq軸の漏れリアクタンス電圧降下演算値と、d軸およびq軸の誘導起電力値との和(差)を積分することにより求めることを特徴とする誘導電動機の制御方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項において、前記すべり周波数演算値は、前記q軸電流の指令値あるいは検出値と、請求項17〜19記述のd軸の磁束値との比に基づいて演算により求めることを特徴とする誘導電動機の制御方法。
- 電力変換器と、速度指令値に従い前記変換器の出力周波数値と出力電圧値を制御する速度制御装置により誘導電動機を駆動するための誘導電動機の制御方法において、
速度指令値が所定値以下の場合は、前記電力変換器の出力電流を通常運転時の無負荷電流値より大きな所定値に制御すると共に、前記誘導電動機の出力トルク値に応じて、該出力電流値を修正するようにしたことを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 電力変換器と、回転座標系のd軸およびq軸の電流検出値あるいは指令値、および前記変換器の出力周波数に基づいて変換器の出力電圧基準値を演算する電圧演算器を用い、速度指令値に従い前記変換器の出力周波数を制御する誘導電動機の制御方法において、
速度指令値が所定値以下の場合は、前記電力変換器の出力電流を通常運転時の無負荷電流値より大きな所定値に制御すると共に、前記誘導電動機の出力トルク値に応じて、該出力電流値を修正するようにしたことを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 電力変換器と、電流指令値に従い該変換器の出力電流を制御する電流制御器を用い、速度指令値あるいは速度推定値に従い前記変換器の出力周波数値を制御する誘導電動機の制御方法において、
速度指令値あるいは速度推定値が所定値以下の場合は、前記電力変換器の出力電流を通常運転時の無負荷電流値より大きな所定値に制御すると共に、前記誘導電動機の出力トルク値に応じて、該出力電流値を修正するようにしたことを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 請求項11〜13のいずれか1項において、
前記誘導電動機の出力トルク値に応じて修正する前記出力電流を、d軸電流値成分とすることを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 請求項11〜13のいずれか1項において、
前記出力トルク値に応じて修正する前記出力電流を、q軸電流値成分とすることを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 請求項11〜13のいずれか1項において、
前記出力トルク値は、回転座標系のd軸およびq軸の電圧指令値あるいは検出値と、d軸およびq軸の電流指令値あるいは検出値に基づいて求めることを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 請求項11〜13のいずれか1項において、
前記出力トルク値は、回転座標系のd軸およびq軸の電圧指令値あるいは検出値と、前記変換器の出力周波数値を用いて演算したd軸およびq軸の磁束値と、d軸およびq軸の電流検出値あるいは電流指令値を用いて求めることを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 電力変換器と、速度指令値に従い前記変換器の出力周波数値と出力電圧値を制御する速度制御装置により誘導電動機を駆動するための誘導電動機の制御方法において、
速度指令値が所定値以下の場合は、前記電力変換器の出力電流を通常運転時の無負荷電流値より大きな所定値に制御すると共に、前記変換器の出力電圧指令値を用いて演算したすべり周波数推定値と、前記変換器の出力電流値を用いて演算したすべり周波数演算値の加算値に応じて、該出力電流値を修正するようにしたことを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 電力変換器と、回転座標系のd軸およびq軸の電流検出値あるいは指令値と、前記変換器の出力周波数に基づいて変換器の出力電圧基準値を演算する電圧演算器を用い、速度指令値に従い前記変換器の出力周波数を制御する誘導電動機の制御方法において、
速度指令値が所定値以下の場合は、前記電力変換器の出力電流を通常運転時の無負荷電流値より大きな所定値に制御すると共に、前記変換器の出力電圧値を用いて演算したすべり周波数推定値と、前記変換器の出力電流指令値を用いて演算したすべり周波数演算値の加算値に応じて、該出力電流値を修正するようにしたことを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 誘導電動機を駆動する電力変換器と、電流指令値に従い該変換器の出力電流を制御する電流制御器を用い、速度指令値あるいは速度推定値に従い前記変換器の出力周波数値を制御する誘導電動機の制御方法において、
速度指令値あるいは速度推定値が所定値以下の場合は、前記電力変換器の出力電流を通常運転時の無負荷電流値より大きな所定値に制御すると共に、前記変換器の出力電圧指令値を用いて演算したすべり周波数推定値と、前記変換器の出力電流値を用いて演算したすべり周波数演算値の加算値に応じて、該出力電流値を修正するようにしたことを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 請求項18〜20のいずれか1項において、
前記すべり周波数推定値と前記すべり周波数演算値の加算値に応じて修正する前記出力電流を、d軸電流値成分とすることを特徴とする誘導電動機の制御方法。 - 請求項18〜20のいずれか1項において、
前記すべり周波数推定値と前記すべり周波数演算値の加算値に応じて修正する前記出力電流を、q軸電流値成分とすることを特徴とする誘導電動機の制御方法。
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