JP3813839B2 - フレキシブル配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気、電子、通信などの分野で用いられる配線基板に係り、特に、ベースフィルムと金属配線の密着性に優れ、屈曲寿命、薄い構成等の信頼性に優れ、かつ配線の高密度化に対応したフレキシブル配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体をはじめ各種電気電子部品の高集積化や小型化が進んでおり、今後もその傾向はなお一層強まることは確実である。これに伴なって、プリント配線基板においても、屈曲性を有するベースフィルム上に金属配線を施したフレキシブルタイプの配線基板を民生用途へ展開することが積極的に図られている。フレキシブル配線基板は、特に省スペース性が要求されるノート型パーソナルコンピューター、携帯電話などの電気電子機器などに広く使用されるようになりつつある。
【0003】
これら機器の軽薄短小化の流れも留まることなく、今後もますます進むことから多種多様な機能が求められて、フレキシブル配線基板の需要は拡大する。その一方で、基板の信頼性や高密度化といった性能も、より一層高いものが求められることは疑いない。
【0004】
一般的なフレキシブル配線基板においては、基本的にカプトンなどのポリイミドフィルム上に接着剤を介して金属配線を配置し、カバーフィルムが設けられている。しかしながら、上述したように電子機器の軽薄短小化が進む中、フレキシブル基板に対する薄膜化の要求はますます強まっているに関わらず、接着剤タイプ銅貼積層板は、接着剤層の厚みの制約により限界に達している。接着剤層を薄くすると、配線上端部とカバーレイヤー間が極端に薄くなり、繰り返し屈曲によって剥離を生じやすくなるためである。そこで、接着剤を用いずにベースフィルム上に配線を形成する試みが以前からなされており、近年になって、無接着タイプの銅貼積層板が開発され商品化されてきた。
【0005】
無接着タイプの銅貼積層板の製造方法は、大きく2種類に分けられる。その1つはキャスティング法と呼ばれる方法であり、銅箔上にポリイミドワニスを塗布し、乾燥・イミド化してベースフィルムを形成させる。このとき、ベースフィルムとしてのポリイミドと銅箔との密着性が悪いという問題があり、ワニスを塗布するに先立って接着性の良好なポリイミドを薄くコーティングしてから、ワニスを上塗りするといった工夫もなされている。この手法においては、ベースフィルムを薄くすることが容易という利点があるものの、銅箔に貼り合わせた後にイミド化するというプロセスを踏む。このため、イミド化時の縮合によって生成される水が銅箔との層間に残留するおそれがあり、剥離の促進や電気特性の劣化を生じてしまう欠点がある。
【0006】
2つめの方法は蒸着法であり、ポリイミドフィルム上にメッキによって金属層が形成される。配線となる金属の厚みは、電解メッキによって確保され、そのためのシードを無電解メッキ、真空蒸着やスパッタリング等により形成している。これらのうち、無電解メッキや真空蒸着によるシードは、ポリイミドフィルムの表面処理を施したところで、繰り返し屈曲を要求される環境に耐え得るだけの密着性は確保できない。比較的密着性の良好なシードを形成可能なスパッタリング法においても、ピンホールを生じやすいという欠点を有している。したがって、電解メッキにおけるレベリング性を考慮に入れると、精度のよい銅箔を得ることが困難となってしまう。
【0007】
このように、無接着剤タイプの銅貼積層板においても、繰り返し屈曲を伴うような環境においては十分な信頼性が得られない。しかも、その基本構成が従来型の接着剤タイプ銅貼積層板と変わりなく、配線の突出によって凹凸を有する形状となっている。したがって、屈曲に対する応力が配線に掛かりやすく、構造上密着性に対して厳しいという本質的な問題も有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、基板全体の平坦性が良好であるとともに、ベースフィルムと金属配線との密着性に優れ、屈曲寿命等の信頼性が高い薄型のフレキシブル配線基板を提供することを目的とする。
【0009】
また本発明は、微細な配線が高密度に形成されたフレキシブル配線基板を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、可撓性のベースフィルムと、前記可撓性のベースフィルム上に形成された金属配線層と、前記金属配線層上に形成された可撓性のカバーレイヤーとを具備し、前記金属配線層は、多孔質絶縁体と、この多孔質絶縁体に金属を選択的に充填して形成された金属配線とを有する複合部材からなり、前記金属配線層における金属配線は、その横断面において、前記ベースフイルムもしくは前記カバーレイヤーに接する、もしくは近接する領域の幅より、内側の領域の幅が大となる形状を有していることを特徴とするフレキシブル配線基板を提供する。
また本発明は、可撓性のベースフィルムと、前記可撓性のベースフィルム上に形成された金属配線層と、前記金属配線層上に形成された可撓性のカバーレイヤーとを具備し、前記金属配線層は、多孔質絶縁体と、この多孔質絶縁体に金属を選択的に充填して形成された金属配線と、この金属配線以外の多孔質絶縁体に含浸された樹脂成分とを有する複合部材からなり、前記樹脂成分は、前記ベースフィルム側および前記カバーレイヤー側である表面層に含浸された遅硬化性の樹脂成分と、前記表面層の間の内部層に含浸された速硬化性の樹脂成分を含むことを特徴とするフレキシブル配線基板を提供する。
【0011】
また本発明は、多孔質絶縁体に金属を選択的に充填して形成された金属配線を有する複合部材からなる金属配線層と、
前記金属配線層を覆って、前記金属配線層の露出表面および露出裏面に配置されたカバーレイヤーを具備し、
前記カバーレイヤーは、互いに離間して配置された複数の領域を備えることを特徴とするフレキシブル配線基板を提供する。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明にかかるフレキシブル配線基板の一例の構成を表わす断面図を、図1に示す。図1に示されるように、本発明のフレキシブル配線基板1においては、ベースフィルム2上に、金属配線層3およびカバーレイヤー4がラミネートされている。金属配線層3は、多孔質の絶縁体5中に選択的に金属を充填することにより形成された金属配線6を有する複合部材である。図1においては、金属配線は多孔質絶縁体5の表裏に貫通して形成されているが、非貫通に形成することもできる。このように金属配線層3として、多孔質絶縁体に選択的に金属を含浸してなる複合部材を用いているので、金属配線層3の表面には金属配線に起因した突出部は存在しない。その結果、配線基板の平坦性を高めて、屈曲寿命を向上させることが可能となった。
【0014】
金属配線層3の横断面における金属配線の領域長は、図2に示されるように、その横断面において、ベースフイルム2もしくはカバーレイヤー4に接する領域の幅より、内側の領域の幅が大となる形状を有していることが好ましい。また、該金属配線がベースフイルム2もしくはカバーレイヤー4に接することなく、全て多孔質絶縁体3内に内包されていても構わない。図2のように厚み中央部の幅が最大となるよう、側面が滑らかに変化している形状を、本明細書においては楕円状と称する。断面が楕円状の金属配線7を形成することによって、ベースフィルム2およびカバーレイヤー4と金属配線層3における絶縁体5との接着面積が増大する。その結果、各層の間の密着性を十分に確保して、各層間の剥離の発生を抑えることができる。
【0015】
また、金属配線層を構成する多孔質絶縁体には、樹脂を含浸することによって、複合部材の電気絶縁性や機械的強度を向上させることができる。特に、硬化速度の異なる樹脂を、厚み方向で少なくとも2種類含浸させることが好ましい。具体的には、図3に示されるように、金属配線層3を構成する多孔質絶縁体5の内部には速硬化性の樹脂8aを含浸し、表層側には遅硬化性の樹脂8bを含浸する。このように硬化速度の異なる樹脂が充填されている場合には、基板製造時の圧着工程においては内側の樹脂が迅速に硬化する。したがって、金属配線の潰れは防止され、配線の高密度化に有効である。
【0016】
さらに、本発明のフレキシブル配線基板におけるカバーレイヤーは、金属配線の表面を覆い、金属配線層上に離間して配置される複数の領域から構成される。このとき、パターン化された可撓性のカバーレイヤーの間の領域の合計は、前記カバーレイヤーの複数の領域の基板面方向の面積の合計をc、前記金属配線の基板面方向の面積の合計をb、前記配線基板の面積をaとすると、(c−b)/(a−b)≦0.5の関係を満たすことが好ましい。すなわち、金属配線の露出面をカバーレイヤーで保護し、さらにデバイスとの接合に関わる部分を残して、カバーレイヤーを離間して配置する。ここで定義している金属配線とは、多孔質体表面から見て、その内部を含めた最大面積を意味している。この最大領域は、X線顕微検査装置等の投影画像から容易に得られる。さらに重要なのは、前記カバーレイヤーの複数の領域の基板面方向の面積の合計をc、前記金属配線の基板面方向の面積の合計をb、前記金属配線の基板面方向の面積をaとすると、(c−b)/(a−b)≦0.5の関係を満たす。すなわち、隣接する金属配線間の少なくとも50%以上の領域においては、カバーレイヤーが除去された構成とすることである。これによって、フレキシブル配線の耐屈曲性を著しく高めることができる。しかも、高密度な配線を形成した薄型のフレキシブル配線基板を低コストで提供できる。このような複数の領域を有するカバーレイヤーは、感光性材料を用いることにより形成可能である。
【0017】
複数の領域からなるカバーレイヤーを用いる場合には、図4に示されるようにベースフィルムを兼ねてもよい。すなわち、カバーレイヤーは、金属配線の表面を覆ってパターン化されて離間して配置される。前述と同様の理由から、金属配線層の一方の面におけるパターン化された感光性カバーレイヤーの間の領域の合計は、金属配線層の表面における絶縁体の領域の50%以上であることが好ましい。この場合には、ベースフィルムが存在しないことに起因して、可撓性をより向上させるとともにフレキシブル配線基板全体の厚さを低減できるという利点もあり、製造プロセスも容易になる。
【0018】
本発明に関わるフレキシブル配線基板を構成する各層について、以下に詳細に説明する。
【0019】
本発明において使用されるベースフィルムの材料は、特に限定されない。耐熱性や材料強度の観点からは、ポリイミドが多用されているが、この他にもポリエステル系、ポリフッ化エチレン系、フッ化エチレン−プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル、ポリスルフォン系、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリメチルペンテンやポリフェニレンオキサイド等のエンジニアリングプラスチック系などが挙げられる。また、これらベースフィルムは、金属配線層との接着性を高めるために、プラズマ処理、コロナ処理、スパッタエッチング処理等の表面処理を行なってもよい。
【0020】
こうした材料からなるベースフィルムの厚さは、基板の使用される環境や耐熱性、柔軟性等要求される特性等に応じて適宜決定することができるが、通常5〜200μm程度である。
【0021】
本発明に使用される金属配線層は、多孔質絶縁体に選択的に貫通あるいは非貫通の金属領域で形成された複合部材が使用される。金属配線層の厚さは、ベースフィルムと同様に基板の使用される環境や要求性能等に応じて適宜決定することができるが、通常1〜100μm程度である。
【0022】
ここで複合部材の構成および製造方法を詳述する。なお、以下に示すのは一例であって、本発明に使用される金属配線層としての条件を満たしていれば、いかなる方法で製造されても何等差し支えない。
【0023】
多孔質絶縁体としては、任意の絶縁体材料を用いることができるが、具体的には樹脂やセラミックスなどが挙げられる。
【0024】
前記樹脂としては、例えばガラスエポキシ樹脂や、ビスマレイミド−トリアジン樹脂およびPPE樹脂、また、ベースフィルムに多用されるポリイミド樹脂や、その他ポリフッ化エチレン系、フッ化エチレン−プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル等のフッ素含有ポリマー、ポリオレフィン、アクリル系ポリマー、ポリアリルエーテル系などのポリエーテル、ポリアリレート系などのポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルスルホン等の一般にエンジニアリングプラスチックと呼ばれている樹脂が挙げられる。
【0025】
また前記セラミックスとしては、ガラス、アルミナ、窒化アルミ等の不織布が挙げられる。
【0026】
配線形成用の基板として多孔質体を用いる場合には、上述したように、特にポリイミド、ポリアミド、ポリアリルエーテル、ポリアリレート、およびポリエーテルスルホンなどの耐熱性ポリマーであることが好ましい。また、1、2−結合型あるいは1、4−結合型のポリブタジエンなどの共役ジエンモノマーを重合した側鎖中あるいは主鎖中に二重結合を有するポリマーを架橋したものでもよい。
【0027】
樹脂からなる多孔質体は、湿式法または乾式法などの手法によって容易に作製できる。
【0028】
例えば、湿式法により多孔質樹脂シートを作製する場合には、まず、孔形成剤である無機微粉末および有機溶剤を樹脂に添加し、練り合わせて混合物を調製する。次いで、これを成膜した後、溶剤で無機微粉末および有機溶剤を抽出する。その後、必要に応じて延伸する。
【0029】
また、例えば乾式法により多孔質樹脂シートを作製する際には、湿式法の場合と同様に調製した混合物を、シート状に押出し成形する。次いで、必要に応じて熱処理後、これを一軸もしくは二軸延伸する。
【0030】
これら湿式法および乾式法のいずれの手法により多孔質樹脂シートを作製する場合も、必要であれば寸法安定性のために、延伸後の樹脂シートに対して熱処理を行なってもよい。また、前述の添加物等を加えずに、樹脂シート成形後、この樹脂シートを延伸多孔質化することによっても、所望の多孔質樹脂シートを容易に作製できる。
【0031】
一方、本発明にかかる複合部材の製造方法において、表裏に貫通した金属配線を形成する場合には、多孔質体の金属形成領域は紫外・可視光の露光領域によって反映される。そのため、光が多孔質絶縁体の裏面まで到達する必要があり、多孔質体の空孔径は露光波長に対して十分に小さいことが好ましい。しかしながら、空孔径が余り小さすぎると、感光性組成物が含浸しにくくなったり、露光光が透過しにくくなったりするおそれがある。特に配線を形成する場合には、充填された金属は空孔内で良好に連続している必要があるが、空孔径が小さすぎると、金属が空孔内で互いに分離した微粒子状態になるおそれがある。こうした不都合を避けるため、多孔質体の空孔径は30〜2000nmであることが好ましく、50〜1000nmであることがより好ましく、100〜500nmの範囲に設定されることが最も好ましい。
【0032】
空孔径が上述した範囲を逸脱し、露光波長よりもかなり大きな場合でも、多孔質体と近いか同じ屈折率を有する液体、あるいは低融点のアモルファス固体などを散乱防止用として空孔内に充填すれば、露光時の散乱などを防止して光の透過性を高めることは可能である。しかしながら、空孔径が余り大きくなると、やはりめっきなどによって空孔内に十分に金属を充填することが難しくなるうえ、金属配線の幅を数十μm以下と十分に小さくすることが困難になる。これらを考慮にいれると、露光時に散乱防止用の液体などを用いる場合にも、多孔質体の空孔径は5μm以下に設定されるのが望まれる。
【0033】
また多孔質体は、膜厚方向にパターン状、特に二次元方向に連続して導通したライン形の部位を形成した複合部材を作製するために、三次元的に連続した空孔を有する多孔質体であることが望ましい。
【0034】
さらに、多孔質体に存在する連続した空孔は、露光光の過度の散乱を防ぐために、規則的に均質に形成されていることが好ましい。これは、前記導電ラインの微細化のためにも有効である。
【0035】
また多孔質体における連続した空孔は、多孔質体外部に開放されていることが必要であり、外部に開放端のない独立気泡はできるだけ少ないことが望まれる。また、配線の誘電率などを向上させるために、空孔率は、多孔質体の機械的強度が保たれる範囲において高い方が望まれる。具体的には、空孔率は40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
【0036】
上述したような三次元的に連続した空孔を有する多孔質体は、種々の手法によって作製することができる。例えば、ビーズを積層したものや、グリーンシート、ビーズの積層構造を鋳型として作製した多孔質体、気泡や液泡の積層体を鋳型として形成した多孔質体、シリカゾルを超臨界乾燥して得られるシリカエアロゲル、ポリマーのミクロ相分離構造から形成した多孔質体、ポリマーやシリカなどの混合物のスピノーダル分解によって生じた共連続構造などの相分離構造から適切な相を除去することによって作製した多孔質体、エマルジョンテンプレーティング法などによって作製した多孔質体、B.H.Cumpstonら(Nature,vol.398,51,1999)やM.Campbellら(Nature,vol.404,53,2000)が報告しているような三次元光造形法を用いて作製した多孔質体などを用いることができる。
【0037】
次に、本発明に係る複合部材における金属配線の形成方法を、各工程毎に図5を用いて説明する。
【0038】
<工程1>
工程(1):まず、露光によりイオン交換性基を生成するかあるいは消失する化合物を含有する感光性組成物層12を、図5(a)に示すように多孔質絶縁体11に形成する。感光性組成物層12の形成には多孔質絶縁体11に感光性組成物を含浸及び乾燥するなどの手段を用いればよい。なお、図5においては、露光によりイオン交換性基を生成する化合物を含有する感光性組成物を使用した例を示している。
【0039】
本発明に係る複合部材の製造方法において用いられる感光性組成物は、光照射によりイオン交換性基を生成する化合物、または光照射によりイオン交換性基を消失する化合物を含有する。ただし、露光によりイオン交換性基を生成する化合物は、露光による化学反応をきっかけにする多段階反応によりイオン交換性基を生じるものであってもよい。こうした化合物は、まず、露光により化学反応を生じて何らかのイオン交換性基の前駆体を生じ、この前駆体がさらに化学反応を生じることによりイオン交換性基を生成する。
【0040】
露光によりイオン交換性基を生成する化合物は、(i)露光によりイオン交換能を有する官能基を発生する化合物が挙げられる。
【0041】
また、露光によりイオン交換性基を消失する化合物としては、(ii)露光前には、イオン交換能を有する官能基を有し、露光後に水に溶解あるいは膨潤しにくい疎水的な性質を有する官能基を発生する化合物が挙げられる。
【0042】
前述の(i)、(ii)においてイオン交換性を有する官能基としては、親水性の官能基が挙げられ、−COOX基、−SO3X基、−PO3X2基(Xは水素原子、アルカリ金属やアルカリ土類金属および周期律表1、2族に属する典型金属、およびアンモニウム基から選択される)および−NH2OH等が挙げられる。
【0043】
特に(i)、(ii)において、イオン交換能を有する官能基としては、陽イオン交換性基であるものが、金属イオンとイオン交換を行ないやすいため望ましい。こうした陽イオン交換性基としては、−COOX基、−SO3X基あるいは−PO3X2基等の酸性基(ただし、Xは水素原子、アルカリ金属やアルカリ土類金属及び周期律表I、II族に属する典型金属、アンモニウム基)が特に好ましい。これらが含まれていると、後工程である金属イオン交換後、還元生成した金属あるいは金属微粒子との安定した吸着が得られる。
【0044】
また、前述の陽イオン交換性基のうちでも、水中でのイオン解離特性から求めたpKa値が7.2以下を呈するものがより好ましい。pKa値が7.2を越えたイオン交換性基は、引き続いて行なわれる金属イオンまたは金属を結合させる工程(工程(3))において、単位面積当たりの結合が少ない。したがって、その後に形成させる金属配線に、所望される十分な導電性が得られないおそれがある。
【0045】
本発明においては、光照射によりイオン交換性基を生成あるいは消失する化合物として、280nm以上の波長の光照射によりイオン交換性基を生成あるいは消失する化合物を使用することが好ましい。これは、有機高分子材料系を多孔質絶縁体として用いた場合、その構造によっては、280nm以下の波長の光照射で、強度の劣化を招くおそれが生ずるためである。
【0046】
280nm以上の波長の光照射によりイオン交換性基を生成する化合物の具体例としては、ナフトキノンジアジド誘導体およびo−ニトロベンジルエステル誘導体、p−ニトロベンジルエステルスルフォネート誘導体およびナフチルもしくはフタルイミドトリフルオロスルフォネート誘導体等が挙げられる。
【0047】
特にナフトキノンジアジド誘導体を用いた場合、エネルギーの低い280nm以上の波長の光で、しかも短時間に十分に微細なパターニングが可能である。また、ナフトキノンジアジド誘導体は露光時に光ブリーチングを起こし、およそ300nm以上の波長域で透明化する。そのため、膜厚方向に深くまで露光することが可能であり、多孔質シートの膜厚方向に貫通して露光する際などに非常に適している。
【0048】
なお、感光性組成物層は、後工程において金属イオン含有水溶液やアルカリまたは酸性水溶液中に曝される。イオン交換反応によりイオン化した感光性組成物は水溶液に溶解しやすいため、基材としての絶縁体から剥離しやすくなる。そこで、基材からの剥離を防ぐために、イオン交換性基生成反応を生じる基がポリマーや高分子化合物等に担持、あるいは結合されているものが好ましい。そのような観点から、280nm以上の波長の光照射によりイオン交換性基を生成する化合物としては、1,2−ナフトキノンジアジドスルホニル置換フェノール樹脂誘導体、1,2−ナフトキノンジアジドスルホニル置換ポリスチレン誘導体等が好適である。
【0049】
また、280nm以上の波長の光照射によりイオン交換性基を生成する化合物の他の例としては、ポリマーの構造中に含有されるカルボキシル基などのイオン交換性基に保護基を導入した化合物が挙げられる。この化合物を用いる場合には、280nm以上の波長の光を照射することによって酸を発生する光酸発生剤を感光性組成物に添加する。後工程の露光によって光酸発生剤から酸が発生し、その発生した酸で保護基が分解することによりイオン交換性基が生成する。なお、前述のポリマーとしては、フェノールノボラック樹脂、キシレノールノボラック樹脂、ビニルフェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール系樹脂やポリアミド酸やポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のカルボキシル基含有ポリマー等が挙げられる。
【0050】
フェノール系樹脂の保護基としては、tert−ブトキシカルボニルメチル基やtert−ブトキシカルボニルエチル基などのtert−ブチルエステル誘導体置換基が挙げられる。
【0051】
一方、ポリアミド酸やポリアクリル酸等においては、構造中のカルボキシル基の保護基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ベンジルアルコキシ基、2−アセトキシエチル基、2−メトキシエチル基、メトキシメチル基、2−エトキシエチル基、3−メトキシ−1−プロピル基等のアルコキシ基やトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基等のアルキルシリル基が挙げられる。
【0052】
こうした保護基の脱保護のために好適な光酸発生剤としては、CF3SO3 -、p−CH3PhSO3 -、p−NO2PhSO3 -等を対アニオンとするオニウム塩、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩等の塩、有機ハロゲン化合物、およびオルトキノン−ジアジドスルホン酸エステルなどを用いることができる。
【0053】
また、光酸発生剤を用いずとも光照射だけでカルボン酸などのイオン交換性基を生成する保護基としては、o−ニトロベンジルエステル基が挙げられる。
【0054】
一方、280nm以上の波長の光照射によりイオン交換性基を消失する、すなわち露光前にはイオン交換能を有し、露光後に水に溶解あるいは膨潤しにくい疎水的な性質を有する官能基を発生する化合物としては、次のような化合物を用いることができる。すなわち、イオン交換性基である−COOX基、−SO3X基あるいは−PO3X2基などの酸性基(ただし、Xは水素原子、アルカリ金属やアルカリ土類金属及び周期律表I、II族の属する典型金属、アンモニウム基)を、その組成物骨格中に有し、光照射によりイオン交換能が消失する化合物である。
【0055】
露光前にはイオン交換能を有し、露光後に水に溶解あるいは膨潤しにくい疎水的な性質を有する官能基を発生する化合物としては、塩基性物質の存在下での光照射により脱炭酸反応を起こして分解することのできるカルボキシル基含有化合物が挙げられる。この場合には、前述のカルボキシル基含有化合物に加えて、光酸発生剤と塩基性化合物とを感光性組成物中に添加する。こうした組成物においては、露光により発生した酸が、脱炭酸反応に関わる塩基性化合物を中和してしまう。このため、露光部ではカルボキシル基がそのまま残り、未露光部においては脱炭酸反応が進行するというメカニズムによって、露光部のイオン交換能が消失する。
【0056】
脱炭酸反応を起こして分解することのできるカルボキシル基含有化合物としては、任意の化合物を選択できるが、塩基性化合物により脱炭酸反応が進行しやすい化合物が好ましい。そのような化合物としては、カルボキシル基のα位またはβ位に電子吸引性基または不飽和結合を有するものが挙げられる。ここで、電子吸引性基は、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、カルボニル基、またはハロゲンであることが好ましい。
【0057】
このようなカルボキシル基含有化合物の具体例としては、α−シアノカルボン酸誘導体、α−ニトロカルボン酸誘導体、α−フェニルカルボン酸誘導体、β,γ−オレフィンカルボン酸などが挙げられる。
【0058】
添加する光酸発生剤としては、上述した光酸発生剤が挙げられ、280nm以上の波長で酸を発生するものが特に好ましい。
【0059】
添加する塩基性化合物としては、光酸発生剤から放出される酸によって中和され、カルボキシル基含有化合物の脱炭酸反応の触媒として作用するものであれば任意のものを用いることができる。この塩基性化合物は有機化合物、無機化合物いずれでも構わないが、好ましいのは含窒素化合物である。具体的には、アンモニア、1級アミン類、2級アミン類、および3級アミン類等が挙げられる。これら塩基性化合物の含有量は、感光性組成物中0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜15重量%である。0.1重量%未満の場合には、脱炭酸反応が充分に進まなくなり、30重量%を越えると、未露光部に残存するカルボキシル基含有化合物の劣化を促すおそれがある。
【0060】
<工程(2)>
次に、工程(1)によって多孔質絶縁体11に形成された感光性組成物層12に対して、図5(b)に示すように所望の導電パターンにパターン露光して、感光性組成物層12の露光部15にイオン交換性基を生成あるいは消失させる。
【0061】
図5(b)においては、導電パターンが形成されたマスク13を介して光14を照射することによりパターン露光しているが、これに限定されるものではない。導電パターンのネガ像を形成したマスクを用いて、導電パターン部以外の部分のイオン交換性基を生成あるいは消失させてもよい。
【0062】
露光に際しては、必ずしもマスクを用いる必要はなく、例えば、レーザービームなどを用いて導電パターンどおりに描画して露光してもよい。また、光の干渉によって生じる干渉縞などの周期的な光強度パターンを用いて周期的なパターンを露光してもよい。
【0063】
イオン交換性基を生成あるいは消失させるために照射される露光光としては、波長が280nm以上のものが用いられる。なお、露光による絶縁体の劣化を低く抑えるためには、露光光の波長は300nm以上であることが好ましく、350nm以上であることがより好ましい。
【0064】
特に、芳香族化合物から構成される多孔質体に対して、その厚み方向に内部に露光する場合には、長波長の露光光を用いることが肝要である。多孔質体が芳香族ポリイミドなどで構成される場合には、ポリイミドの吸収の吸収端が450nm以上になるものも少なくない。こうした場合には、さらに長波長の500nm以上の波長でパターン露光を行なうことが好ましい。
【0065】
工程(2)で用いる露光光源としては、紫外光源、可視光源のほか、β線(電子線)、X線など光源のなかから所定の波長の露光光を生じるものを選択して使用することができる。紫外光源、あるいは可視光源は、具体的には水素放電管、希ガス放電管、タングステンランプ、ハロゲンランプのような連続スペクトル光源、各種レーザー、水銀灯のような不連続スペクトル光源などのなかから選択して用いる。
【0066】
工程(2)においては、感光性組成物層のイオン交換性基に対して、後工程の工程(3)で金属イオンの結合量を増量するために、イオン交換性基の中和、あるいはそのイオン交換性基を形成した部分の膨潤を行なってもよい。そのためには、絶縁体を酸またはアルカリ溶液に吹き付けや浸漬などの手法によって接触させる。特に、アルカリ溶液として水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水酸化物、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属塩、ナトリウムメトキサイドやカリウムエトキサイド等の金属アルコキサイドや水素化ホウ素ナトリウム等の水溶液の少なくとも1種を用い、これらの溶液に浸漬するのがよい。こうした溶液は、単独であるいは混合して用いることができる。
【0067】
<工程(3)>
次に、露光により露光部に形成されたイオン交換性基に、選択的に金属イオンまたは金属微粒子を結合させて、図5(c)に示すように金属配線を形成する。図5(c)においては、露光部15が金属配線16となる。
【0068】
イオン交換性基と金属イオンとの交換反応を生じさせるには、例えば金属塩を含有する水溶液などに、パターン露光後の絶縁体を浸漬させるだけで容易に行なうことができる。
【0069】
金属イオンとして用いられる金属元素としては、銅、銀、パラジウム、ニッケル、コバルト、錫、チタン、鉛、白金、金、クロミウム、モリブデン、鉄、イリジウム、タングステン、およびロジウム等が挙げられる。
【0070】
これらの金属元素は、硫酸塩、酢酸塩、硝酸塩、塩化物、および炭酸塩等のような金属塩として溶液中に含有させる。特に、硫酸銅が好ましい。こうした金属塩は、溶液における金属イオンの濃度が0.001〜10M、好ましくは0.01〜1Mとなるよう配合するのが適切である。なお、金属塩を溶解させる溶媒は、水あるいは有機溶媒系、例えばメタノールやイソプロパノール等であってもよい。
【0071】
本発明においては、金属微粒子が分散した溶液を用いることもできる。イオン交換性基とコロイド状態の金属微粒子とは、静電的な相互作用などによって選択的に結合を生じる。したがって、イオン交換性基と金属微粒子との結合は、金属微粒子が分散した溶液に絶縁体を浸漬させるだけで容易に生じさせることができる。
【0072】
例えば、塩酸酸性水溶液中に塩化パラジウムと塩化スズを混合して作製する無電解メッキの触媒として使用されるパラジウム−スズコロイド、またパラジウムのハロゲン化物、酸化物、アセチル化錯体の分散溶液中に絶縁体を浸漬させる。それによって、イオン交換性基上に位置選択的に金属微粒子が容易に結合を生じる。
【0073】
以上のようにして、本発明の方法により絶縁体に金属配線を形成して、複合部材を得ることができる。複合部材の金属配線の導電性をさらに向上させるためには、以下の工程(4)、工程(5)のいずれか、あるいはその両方を行なうことが望ましい。
【0074】
<工程(4)>
イオン交換により形成された金属配線16の導電性を向上させるために、図5(d)に示すように、イオン交換性基に結合した金属イオンを還元剤と接触させて金属化させてもよい。
【0075】
用いられる還元剤は特に限定されないが、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、ヒドラジン、ホルマリン、水素化ホウ素ナトリウムや、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸塩等が挙げられる。こうした還元剤を含有する溶液に、前述の工程(3)までを経た絶縁体を浸漬することによって、金属配線16を金属化させることができる。
【0076】
<工程(5)>
金属配線16に対し導電性を向上させるために、図5(e)に示すように無電解めっき17を施すことが望ましい。これにより、金属配線16の空孔内を金属である程度充填することができる。
【0077】
金属としては、電気抵抗が少なく、比較的腐食しにくい銅が最も好ましい。具体的には、前工程で得られた金属配線を触媒核として、無電解メッキ液と接触させる。
【0078】
無電解メッキ液としては、例えば、銅、銀、パラジウム、ニッケル、コバルト、白金、金、ロジウム等の金属イオンを含有するものが挙げられる。
【0079】
この無電解メッキ液には、前述の金属塩水溶液の他にホルムアルデヒド、ヒドラジン、次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、アスコルビン酸、グリオキシル酸等の還元剤、酢酸ナトリウム、EDTA、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリシン等の錯化剤や析出制御剤等が含まれており、これらの多くは市販されており簡単に入手することができる。そこで、前記部材をこれらの無電解メッキ液の所望される導電膜厚、若しくは多孔質内部への充填が完了するまで浸漬しておけばよい。
【0080】
以上説明したように、本発明の複合部材を製造するに当たっては、膜厚方向に貫通する露光光を多孔質の絶縁体に照射することによって金属配線が決定される。媒体が多孔質であると、照射された光は空隙部分と基材部分という2つの屈折率の異なる空間を何回も通過しなければならない。この場合、空隙部分の屈折率と基材部分の屈折率が異なることから、光はかなり散乱される。特に、多孔体の空隙や基材の大きさが光の波長に近いと、大きく散乱を起こす。さらに、多孔体の場合、散乱した光が再び散乱体にぶつかり何度も散乱するという、多重散乱が発生する。
【0081】
こうした散乱は、多孔質体に照射される露光量を厳密に調整することによって防止することができる。膜厚方向の表裏に貫通した金属配線を、より効率よく容易に形成するためには、すでに説明したように、多孔質体と近いか同じ屈折率を有する液体を露光に先立って空孔内に充填することが望ましい。あるいは、低融点のアモルファス固体などを充填してもよい。パターン露光を行なって潜像を形成した後には、充填されていた液体や固体は除去される。
【0082】
一方、この多重散乱を積極的に利用した場合には、複合部材に形成される金属配線の断面形状を楕円状とすることができる。具体的には、金属配線の横断面から観察される領域長が、層内部になるにしたがって長くなる。この場合には、ベースフィルム上に金属配線層およびカバーレイヤーを順次積層してなる本発明のフレキシブル配線基板において、ベースフィルムおよびカバーレイヤーに接する金属配線は、マスクに形成された配線幅よりも小さくなる。
【0083】
絶縁体に金属配線が形成された複合部材においても、金属配線の表面は一般に使用されている金属箔と同様の状態といえるため、ベースフィルムとの接着性が十分でないという問題が従来から存在している。これに対して本発明では、多孔質の絶縁体を用い、その内部に金属を充填させることによって、複合部材中の金属配線と絶縁体領域とが一体化されている。このため、各層間の密着性を向上させて屈曲寿命を高めることが可能となった。さらに、金属配線の断面を楕円状とすることによって、多孔質体の空隙に充填された含浸樹脂の複合部材表層への接着性が高められ、金属部とベースフィルムとの間の剥離を抑えることができる。また、ベースフィルムと複合部材との密着性もさらに向上することから、配線の高密度化にも非常に有効である。
【0084】
こうした効果は、複合部材の表面もしくは表面近傍における金属配線の長さAよりも、部材の厚み中央部における最大金属領域の長さBを長くすることによって、すなわち、複合部材の横断面における金属配線の形状を楕円状とすることによって得られる。特に、B/A≧1.1の場合には、より効果的である。表面近傍の金属配線の長さAとは、複合部材表面に金属配線が露出しておらず、全て内包されていることを意味し、ベースフィルムと複合部材との密着性は言うまでもなく最高である。
【0085】
このような形状の金属配線を形成するための多重散乱の積極的利用について、以下に説明する。
【0086】
所定のパターンを有するマスクを介して媒体に照射された光は、媒体内部で散乱し、マスクのパターン径より広がりを有して媒体の膜厚方向に進行する。このとき、媒体に吸収される光もまた、媒体内を進行するにしたがって増加する。媒体の中央部付近までは多重散乱によって広がりが生じるが、媒体の膜厚中央部を過ぎた辺りから媒体への吸収も無視できなくなる。すなわち、パターン周辺部の感光剤から反応に要する露光量が十分には得られなくなってくる。こうして、単位面積当たりの露光率は膜内部付近が最も多重散乱によって広がり、結果的に楕円状の潜像、ひいては金属パターンが形成されやすくなる。
【0087】
しかしながら、媒体に露光光が吸収されて露光量が不充分な膜表層のパターン周辺分部においても、露光後のイオン交換によるメッキ核が若干ながら吸着している。よって、それらを核としてメッキが進行して金属が析出することもあり、同様の条件で作製した場合でもサンプルによるムラを生じやすい。
【0088】
こうした不都合は、イオン交換工程後(工程(3))の絶縁体を、感光剤が溶解する有機溶剤で洗浄することによって回避することができる。有機溶媒としては、感光剤の反応前後の化合物双方を溶解するものが使用される。イオン交換によって金属イオンが配位した感光剤は、こうした有機溶剤に不溶化するので多孔質基材表面にそのまま残存する。一方、単位面積当たりの露光量が少ない領域においては、イオン交換性基が十分に生成されていないので金属イオンが十分に配位されていない。このため、有機溶剤の作用により溶解しやすくなり、膜表層のパターン周辺部分の感光剤は容易に除去できる。したがって、安定して楕円状の配線を形成するためには、有機溶剤による洗浄が必須とされる。このとき、さらに超音波をかけながら洗浄を行なうことによって、楕円状の断面を有する金属配線を、絶縁体内により安定して形成することができる。1分以内の洗浄時間で、望みの楕円状の断面を有する金属配線が得られる。さらにこれ以上洗浄を行なうと、表層部に付着した感光剤も除去され、多孔質絶縁体に完全に内包した金属配線を形成することができる。洗浄のための有機溶剤は、使用する感光剤に応じて適宜選択すればよく、例えば、ナフトキノンジアジド含有フェノールノボラック樹脂の場合には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、およびTHF等を用いることができる。
【0089】
有機溶剤での洗浄の後、必要に応じて前述の工程(4)および工程(5)が行なわれる。さらに、複合部材の電気絶縁性や機械的強度を向上させるために、複合部材中の多孔質体の空孔を含浸樹脂で充填することが好ましい。含浸樹脂としては、エポキシ樹脂やポリイミド、BT樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、架橋ポリブタジエン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等などの熱硬化性樹脂、あるいはポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスルフォン樹脂等のホットメルトタイプの熱可塑性樹脂を用いることができる。これらの樹脂は、ベースフィルムやカバーレイヤーの接着剤としても機能する。
【0090】
絶縁体に空孔が存在している場合には、空孔内表面などが吸湿するなどして電気的絶縁性が損なわれるおそれがある。ただし、空孔が金属配線の寸法、すなわちビアならビア径、配線なら配線幅および配線ピッチよりも充分に小さな独立気泡の場合は、絶縁性をある程度保つことが可能である。
【0091】
含浸樹脂には、場合によってナノメートルオーダーの無機フィラーなどを混合することができる。
【0092】
無機フィラーとしては、シリカ、アルミナなどの金属酸化物や、窒化ケイ素や窒化アルミニウムなどの金属窒化物などが用いられる。無機フィラーは、予め含浸樹脂に混合して、その混合物を含浸させることができる。あるいは、無機フィラー前駆体と含浸樹脂との混合物を含浸した後、無機フィラーを空孔内で生成させてもよい。こうした無機フィラー前駆体としては、シルセスキオキサンやポリシラザンなどが良好に用いられる。
【0093】
なお、本発明の製造方法において、金属配線を形成する目的の部位以外の感光性組成物層内にイオン交換性基含有の有機化合物が生成することは、極力避けなければならない。このため、めっきまでの操作は、短波長の光を遮断したイエロールーム内で行なうことが好ましい。
【0094】
また、本発明にかかる複合部材を製造するに当たっては、熱分解性などの容易に除去可能な絶縁体を用いることもできる。この場合は、まず絶縁体の所定の領域に金属領域からなる金属配線を形成する。次いで、上述したような手法により含浸樹脂を含浸させて硬化する前に、多孔質体を加熱などの手段によって除去する。このような手法によって、含浸樹脂の硬化物中にビアや配線が形成された配線基板を形成してもよい。この場合には、金属配線の形成に用いた絶縁体とは異なる材料中に、金属配線が最終的に形成されることになる。
【0095】
上述したような方法により得られた複合部材からなる金属配線層をベースフィルム上に配置し、さらにその上にカバーレイヤーをラミネートして加熱圧着することにより、本発明のフレキシブル配線基板が製造される。
【0096】
本発明に使用されるカバーレイヤーは特に限定されず、現在上市されているポリイミドベース、ポリエステルベース、エポキシベース、およびアクリルベース等の任意のものを用いることできる。それらは、フィルムベース、液状ベースの2種類があり、いずれのタイプを用いても構わない。
【0097】
こうした材料からなるカバーレイヤーの厚さは、フレキシブル配線基板の反りを防止するためにベースフィルムと同等とすることが望まれ、通常は5〜200μm程度である。
【0098】
カバーレイヤーを金属配線層に接着するに当たっては、接着剤を用いることができる。この場合には、カバーレイヤーの片面に金属配線層と接着させるための接着剤を予め塗布しておき、ドリルやカッターで窓穴用に穴あけ加工を行なう。その後、回路上に位置を合わせて熱圧着することにより容易に接着することができる。レイヤーの片面に塗布された接着剤は、そのまま複合部材の含浸樹脂としての役割を兼ね備えることができる。また、予め樹脂を含浸した複合部材を使用する場合には、カバーレイヤーのみを熱圧着させて接着してもよい。
【0099】
回路の高密度化に対応して、感光性のカバーレイヤーを使用する場合は、回路以外の領域も除去する。感光性カバーレイヤーの領域を低減することによって、感光性カバーレイヤーの欠点である脆性に起因した耐屈曲性の悪さを改善することができ、配線基板の信頼性が向上される。液状ベースの感光性カバーレイヤーは、複合部材に含浸される含浸樹脂の作用も有するため、耐屈曲性をより向上させることができる。感光性カバーレイヤー、すなわちこの場合においては、含浸樹脂が除去された多孔質部分に、改めて樹脂を含浸してもよい。
【0100】
場合によっては、ベースフィルムを省略して、図4に示したようにパターン化された感光性のカバーレイヤー9を、金属配線層3の金属配線7の両面に配置することもできる。このようなカバーレイヤーは、金属配線が形成された多孔質絶縁体に感光性材料を含浸し、両面からパターン露光を行なった後、現像処理を施すことによって形成することができる。
【0101】
いずれの場合も、表面から観察したカバーレイヤーが配置されていない回路部以外の領域は、全未回路部領域中、すなわち複合部材の絶縁体領域中の50%〜80%、あるいは最大配線長の1.1倍以上にすることが望ましい。この領域が50%以下の場合、すなわちカバーレイヤーの領域が多すぎる場合には耐屈曲性の効果を十分に得ることができない。一方、80%を超える場合あるいは最大配線長の1.1倍未満の場合には、複合部材との密着性が十分に確保するのが困難になる。
【0102】
以上説明したように、本発明のフレキシブル配線基板は、ベースフィルム、金属配線層、およびカバーレイヤーをラミネートして加熱圧縮することにより製造される。各層をラミネートする際に加圧して圧縮すると、金属配線中の多孔質体が除去されて形成された空隙がつぶれて、金属材料同士が密着し、金属配線の導電率を向上させることができるため望ましい。しかしながら、この場合には金属配線の横方向への潰れも考慮に入れなければならない。回路が高密度化すると、隣接する配線同士で短絡するおそれがある。複合部材の内部に充填された樹脂が、表層部の樹脂よりも速く硬化すれば、配線同士の短絡を避けることができ、このためには、複合部材に充填される樹脂の硬化性に傾斜(グラデーション)を与えることが望ましい。具体的には、複合部材の内部には速硬化性の樹脂を含浸し、表層部、すなわち接着に関わる部分においては遅硬化性の樹脂を含浸する。樹脂としては上述のような熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれを用いても構わず、ここでは、熱可塑性樹脂の「固化」も敢えて「硬化」と表現する。
【0103】
含浸樹脂の硬化性にグラデーションを設ける方法は特に限定されず、少なくとも2種類以上の異なる樹脂を使用することによって達成することができる。熱硬化性樹脂の場合には、例えば硬化剤や触媒などを調整して、硬化速度に差を生じさせる。また、熱可塑性樹脂の場合には、融点の異なる少なくとも2種類の樹脂を選択して用いればよい。本発明のフレキシブル配線基板は、耐熱性が要求されることが多く、含浸樹脂としてはハンドリングの点から熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。
【0104】
熱硬化性樹脂を使用する場合には、上述した硬化速度の異なる2種類の樹脂組成物を使用する方法や、硬化速度の異なる触媒を用いる方法等の任意の方法を用いることができる。ただし、含浸後のボイドの問題等を考慮すると、後者の方法を採用することが望ましい。その場合の硬化速度は、潜在性触媒を配合することによって容易に調整することができる。ここで、潜在性触媒とは、所定の条件下で触媒活性を示す硬化促進剤または硬化触媒と称されるものの範疇に属するものをさす。
【0105】
具体的には、イミダゾール類、有機ホスフィン類、尿素誘導体等のルイス塩基、ルイス塩基塩、有機金属、ルイス酸、およびその他の類型に属する潜在性硬化触媒であれば、いずれの触媒を用いてもよい。また、これらの潜在性触媒を2種以上混合して使用することもできる。潜在性を示す形としては、高融点分散型や高温解離型の触媒自身で潜在性を有するもの、ポリマー等のシェルに内包したマイクロカプセル型や、モレキュラーシーブやゼオライトのような空孔を有する化合物に吸着させた吸着型等様々なものが挙げられる。これら触媒の種類、潜在性形成能等は使用する樹脂によって適宜調整すればよい。
【0106】
こうした樹脂を複合部材に含浸して硬化性にグラデーションを設けるに当たっては、まず速硬化性の樹脂(一次樹脂)を複合部材に含浸する。速硬化性の樹脂は、アプリケーター法、バーコーター法、スプレー法、およびディップ法など任意の方法で含浸することができる。
【0107】
引き続いて、複合部材の内部および表面から過分な一次樹脂を除去する。過分な一次樹脂は、樹脂が含浸された複合部材表面の両方からエアブローにより除去することができる。あるいは、不織布等の吸収材が巻かれた2本ロールの間に複合部材を通すことによって、過分な樹脂を機械的に吸い取っても良く、公知のいかなる手段を用いても構わない。
【0108】
その後、遅硬化性の樹脂(二次樹脂)を、前述と同様の方法により複合部材に含浸すればよい。
【0109】
以上のように作製した複合部材にベースフィルムとカバーレイヤーとを貼り合わせ、熱圧着を行なうことによって本発明のフレキシブル配線基板が得られる。複合部材の中心部に充填された樹脂は、圧着時に迅速に硬化するので、金属配線の横方向への流れを防止できる。
【0110】
なお、フレキシブル配線基板は、小型電子機器の登場によりますます形態が多種多様化され、その加工技術の進歩はめざましいものがある。ベースフィルム、金属配線およびカバーレイヤーという基本構成を例に挙げて本発明のフレキシブル配線基板の各要素を説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のフレキシブル配線基板は、実用上必要とされる両面露出構造(フライングリード構造)、TAB、および多層リジットフレキ構造等にも好適に用いることができる。
【0111】
例えば、フライングリード構造は、ベースフィルムに銅箔を貼り付け、銅箔を所定構造にエッチング後、その上からレジストを塗布し、プラズマエッチングや化学エッチング、レーザー等により銅表面を露出させるという手法により作製される。しかしながら、エッチング後の構造は、外力に対し非常に弱い状態であり、ハンドリングにはかなりの注意を要する。そこで、フライングリード部の片側端末をベース層、あるいはカバーレイヤーで保持しておくというような処置が採られている。また、作製後においても、フライングリード部は脆弱であることから、大部分の不良がこの部分から生じている。こうしたフライングリード配線として、本発明で金属配線層として用いた複合部材を使用することができる。本発明における複合部材は、多孔質絶縁体内に一体化されて金属配線部が補強されているため、加工時のハンドリング性に優れ、フライングリード部の脆弱性も解消される。
【0112】
また、フライングリード部およびアウター部とLCD,PWB等との接合において、従来は、金属配線上にはんだメッキを施して、熱圧着により接続している。金属配線上にはんだを形成するためには、クリームはんだをスクリーン印刷により配線上に塗布する方法と、予め端子上にめっきしておく方法とがある。前者の方法では、配線の高密度による狭ピッチでの接続や端子数増加に対応することが難しい。後者においても、はんだ融着前にフラックスを塗布しなければならないにも関わらず、融着後の接合部における洗浄が困難であり問題となっている。さらには、はんだを用いるための本質的な問題として、融着のために高熱を要し、部材の耐熱性への要求が厳しくなる。はんだの代替として異方性導電ペーストや異方性導電フィルムが使用されている場合もあるが、これらも配線が高密度するにしたがって、隣接配線間での短絡のおそれをはらんでいる。
【0113】
しかしながら、本発明の金属配線層に使用される複合部材においては、多孔質フィルムの含浸樹脂をそのまま対抗部品との接着剤として適用することができる。この場合、例えば、複合部材への含浸樹脂は、Bステージ状態で留めておき、薄く接着剤層を設けたベースフィルムおよびカバーレイヤーと複合部材を接着し基板を構成する。その後、金属部が剥き出しとなったフライングリード部およびアウター部を対抗する端子に熱圧着させれば良い。
【0114】
回路の高密度化が急速に進む一方で、信号の高速化に対応した回路設計を有するフレキシブル基板も求められている。すなわち、信号ライン間の漏話やノイズを防止するために、何らかのシールドを設けるような回路構成が必要となる。これらの対策として、裏面に銅箔やスパッタ等によって形成したグランド層を設けたベースフィルム上に、信号ラインとグランドラインとを交互に配置し、銅箔とグランドラインとをスルーホール等により接続したマイクロストリップ構造を有するフレキシブル配線基板が開発されている。
【0115】
本発明に関わるフレキシブル配線基板は、このようなマイクロストリップ構造に好適に用いることができる。具体的には、まず複合部材として銅箔(グランド層)とグランドラインをと電気的に接続するビア構造を有するビア層と信号ラインとグランドラインを構成する金属配線層を用意する。このとき、ビアがグランドラインと接続するように配置しておく。その後、それぞれに含浸樹脂を含浸後、銅箔とカバーレイヤーフィルムをそれら両面からラミネートすることで容易に作製される。これらにおいても、本発明の特徴である基板の平坦性や薄型構造化により、耐屈曲性に優れたフレキシブル配線基板を提供することができる。
【0116】
また、シールド層間の金属接続に関わらず、同様の方法で金属配線の多層化が可能である。この時、層間接続にスルーホールでは無くビア接続を用いるため、ランドレス構造を実現し、パットオンビアでの部品実装が可能となり、実装密度を大幅に向上させることもできる。
【0117】
以上説明したように、本発明のフレキシブル配線基板は、多孔質の絶縁体中に金属を充填して形成された金属配線層が、ベースフィルムとカバーレイヤーとの間に配置されているので、基板全体の平坦性が良好であるとともにベースフィルムと金属配線との密着性に優れる。しかも、屈曲寿命等の信頼性が高く、微細な配線を高密度に形成し、薄型化が可能である。
【0118】
特に、絶縁体に充填される金属配線の断面を楕円状とした場合には、金属配線層とベースフィルムおよびカバーレイヤーとの密着性をよりいっそう高めることが可能となり、各層間の剥離の発生はほぼ完全に抑えられる。
【0119】
また、速硬化性の樹脂および遅硬化性の樹脂を、金属配線層の絶縁体の内部および表層側にそれぞれ含浸することによって、圧着工程における金属配線の潰れを防止することができ、配線の高密度化を図ることができる。
【0120】
また、微細な配線を高密度に形成するためには、パターン化された感光性材料でカバーレイヤーを構成するのも有効である。感光性材料のカバーレイヤーをパターン化することによって、その脆性に起因した耐屈曲性の悪さも改善することができる。
【0121】
このようなパターン化された感光性材料からなるカバーレイヤーは、ベースフィルムを兼ねることもできる。この場合には、可撓性がより向上するとともにフレキシブル配線基板全体の厚さも低減でき、さらに製造プロセスも容易になるという利点が得られる。
【0122】
本発明は、小さなスペース内への三次元配線、長時間屈曲性等、一般的にフレキシブル配線基板が採用される条件において使用され得る配線基板に好適に使用することができる。
【0123】
【発明の実施の形態】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0124】
(参考例1)複合部材1の作製
絶縁体として、親水性化処理されたPTFE多孔質フィルム(空孔径200nm,膜厚60μm)を用意した。一方、ナフトキノンジアジド含有フェノール樹脂(ナフトキノンジアジド含有率;46当量mol%)をアセトンに溶解して、1wt%の感光性組成物溶液を調製した。得られた溶液を、前述の多孔質フィルムの全表面にディップ法にてコーティングした。この操作により、多孔質の穴の中も含め内部空孔表面が感光性組成物で被覆された。
【0125】
このフィルムに対して、蒸留水を含浸し透湿させた後、CANON PLA501で、ライン幅30μm、スペース幅60μmのマスクを介して露光をパターン露光を施した。露光条件は、露光量1000mJ/cm2(波長436nm換算)とした。このパターン露光によって、フィルムの露光部にイオン交換性基を生成させた。
【0126】
パターン潜像が形成されたシートを、0.5Mに調整した硫酸銅水溶液に5分間浸漬後、蒸留水による洗浄を3回繰り返した。続いて、水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に30分間浸漬後、蒸留水で洗浄してパターン形成シートを作製した。得られたパターン形成シートには、Cu微粒子が選択的に吸着されていた。
【0127】
このようにして得られたパターン形成シートを、さらに無電解銅メッキ液に30分間浸漬して、銅メッキを施すことによりCu配線部を有する複合部材を作製した。
【0128】
得られた複合部材の断面形状を観察したところ、図1に示したような貫通した金属領域6からなる金属配線が形成されていた。
【0129】
(参考例2)複合部材2の作製
露光時に透湿操作を行なわず、露光量を2倍とした以外は前述の参考例1と同様の手法により、多孔質シートにパターン潜像を形成した。
【0130】
パターン潜像が形成されたシートを、0.5Mに調整した硫酸銅水溶液に5分間浸漬後、蒸留水による洗浄を3回繰り返した。続いて、アセトン溶液に2分間浸漬し超音波洗浄を行なって、シートの表面から感光性組成物を除去した。このシートを蒸留水で洗浄し、水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に30分間浸漬した。これ以降は、参考例1と同様の方法によりCu配線部を有する複合部材を作製した。
【0131】
得られた複合部材の断面形状を観察したところ、図2に示したような楕円状の金属領域7からなる金属配線が形成されていた。
【0132】
(参考例3)複合部材3の作製
ユーピレックス構造を有し、空孔径200nm、膜厚20μmのポリイミド多孔質体シート(宇部興産社製)を用意した。
【0133】
一方、OH基をtert−ブトキシカルボニルメチル基でキャップしたフェノールノボラック樹脂誘導体10gと、酸発生剤として、DTBPI−TF(ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート)0.5gおよびアクリジンオレンジ(C.I.46005)0.08gとをメチルセロソルブ200gに溶解して、有機感光性組成物溶液を調製した。
【0134】
得られた有機感光性組成物溶液に前述のポリイミド多孔質体シートを含浸した後、80℃で10分間乾燥させて、有機感光性組成物被覆ポリイミド多孔質体シートを作製した。
【0135】
このシートに対して、ライン幅30μm、スペース幅60μmのマスクを介して、CANON PLA501で、光量500mJ/cm2(波長546nm)の条件で長波長露光した。その後、100℃で5分間の条件で加熱処理を施すことにより、シートの露光部にカルボキシル基含有フェノールノボラック樹脂からなる潜像を形成させた。
【0136】
露光後のシートに対し、前述の参考例2と同様の操作によりポリイミド製複合部材を作製した。この複合部材の断面形状を観察したところ、参考例2と同様に楕円状の金属領域からなる金属配線が形成されていた。
【0137】
(実施例1)
ベースフィルムとしてカプトンポリイミドフィルム(フィルム厚25μm)、カバーレイヤーとしてフィルムベースのポリイミドシート(フィルム厚25μm)を用意した。また、金属配線層としては、参考例1で作製された複合部材1を用いた。
【0138】
まず、複合部材1にビスマレイミド・トリアジン樹脂組成物を含浸し、120℃、10分間熱風乾燥を施した。
【0139】
ベースフィルム上に、樹脂が含浸された複合部材およびカバーレイヤーをラミネートした後、温度200℃、圧力10kg/cm2の条件下で1時間加熱圧着させることにより、本実施例のフレキシブル配線基板を作製した。
【0140】
(実施例2)
参考例2で作製された複合部材2を用いた以外は、前述の実施例1と同様の方法でフレキシブル配線基板を得た。
【0141】
(実施例3)
参考例3で作製された複合部材3を用いた以外は、前述の実施例1と同様の方法でフレキシブル配線基板を得た。
【0142】
(実施例4)
速硬化性の樹脂(一次樹脂)として、エポキシ樹脂組成物I(主剤:ビスフェノールA型エポキシ樹脂エピコート828/硬化剤:メチルテトラヒドロ酸無水物/TPP系)を用意し、遅硬化性の樹脂(二次樹脂)としては、エポキシ樹脂組成物II主剤:ビスフェノールA型エポキシ樹脂エピコート807/硬化剤:メチルテトラヒドロ酸無水物/マイクロカプセル型イミダゾール系触媒)を用意した。
【0143】
まず、参考例2で得られた複合部材2に、60℃に加熱した一次樹脂をディップ法により含浸し、シートの表裏にエアブローを施すことにより過分な一次樹脂を除去した。
【0144】
このシートに対して、二次樹脂を室温でさらにディップコーティングした。
【0145】
2種類の樹脂が含浸された複合部材を、実施例1と同様のベースフィルムおよびカバーレイヤーで挟み、温度100℃、圧力1kg/cm2で15分間保持した。その後、温度150℃、圧力10kg/cm2の条件下で1時間加熱圧着させることにより、本実施例のフレキシブル配線基板を作製した。
【0146】
(実施例5)
参考例3で作製された複合部材3に対して、液状ポリイミドベースの感光性カバーレイヤーを含浸させた。その後、100℃で10分、150℃で10分、および200℃で10分と段階的に昇温して熱風乾燥を施した。
【0147】
その後、配線×1.3となるように設計したマスクを複合部材の上下に配置して、両面露光を行なった。さらに、現像処理を施して、未回路部領域に残存する感光性組成物残渣を除去した。その結果、図4に示すようなフレキシブル配線基板が作製された。
【0148】
この複合部材表面を、X線顕微検査装置((株)東研社製 TUX−3000W)により観察したところ、全未回路部領域中の感光性組成物が除去された領域は約70%であった。
【0149】
(実施例6)
金属配線層として参考例3の複合部材を用い、ベースフィルムおよびカバーレイヤーは実施例1と同様のポリイミドシートを用意した。この時、リード部として金属配線層の先端を残すため、ベースフィルムおよびカバーレイヤーは、複合部材より金属配線方向に対して5cm短いものを使用し、実施例1と同様の操作でラミネートした。
【0150】
続いて、リード部として未処理のまま残しておいた金属配線部に対し1μmの厚みで金メッキを施し、両面露出の端子部を備えたフライングリードを有するフレキシブル配線基板を得た。前記金属配線層をなす複合部材と同様のラインアンドスペースを有するプリント基板を用意し、両者の端子部が対向するように超音波接合を行なった。この時の、配線部の接触抵抗は1.0×10-3Ωであり、良好な接合状態を保持した。
【0151】
(実施例7)
実施例6と同様の方法で、フライングリードを有するフレキシブル配線基板を作製した。この後、フライングリード部の多孔質絶縁部に対して、実施例3で使用した速硬化性の含浸樹脂をスクリーン印刷法を用いて充填し、100℃、5分間の条件で熱風乾燥しBステージ化を行なった。この基板を、実施例6でも使用した対向基板とポリイミドシートで互いの金属配線が接するように挟み、120℃、1時間の熱圧着で両基板を接合した。
【0152】
得られた基板の接触抵抗は、8.0×10-3Ωであった。
【0153】
(比較例1)
実施例1で使用したポリイミドベースフィルム上に、ビスマレイミド・トリアジン樹脂組成物をアプリケーターを用いて乾燥後10μm厚になるよう塗布した。ここに表面粗化を施した圧延銅箔(35μm厚)を粗化面から貼り合わせ、温度200℃、圧力10kg/cm2の条件下で1時間加熱圧着させた。その後、フォトレジストを用い、参考例で使用したマスクを用いて配線パターンを形成した。
【0154】
さらに、その上からビスマレイミド・トリアジン樹脂組成物をキャスト後、実施例1で使用したフィルムベースのポリイミドシートを加熱圧着して、フレキシブル配線基板を作製した。
【0155】
以上の実施例1〜7および比較例1のフレキシブル配線基板について、膜厚および屈曲耐性の評価を行なった。それぞれの試験方法は以下の通りである。
【0156】
膜厚:100μm厚のガラスではさみ、膜厚計を用いて測定した。
【0157】
屈曲耐性:10mm×100mmに裁断した配線基板を、260℃の半田浴に20秒間浸漬した。その後、配線方向と直角にR=1mmとなるようU字型に屈曲させて一端を固定し、他端を縦方向に揺動する装置に固定した。振れ幅10mm、2秒/cycleの条件で5000回揺動させた後、屈曲部における配線の密着性を観察した。この際、剥離を起こしているものをNGとみなした。得られた結果を下記表1に示す。
【0158】
【表1】
【0159】
表1に示されるように、本発明のフレキシブル配線基板は、ベースフィルムと金属配線層との密着性が非常に優れており、耐屈曲性が著しく改善されていることがわかる。
【0160】
配線形状を楕円断面にすることによって、さらに密着性が向上することが、実施例2の結果に示されている。また、実施例4の膜厚は最も大きいことから、複合部材の内部に充填する樹脂の硬化性に傾斜を設けて、内側の樹脂を速硬化性とし表層側を遅硬化性としたことによって、熱圧着による複合部材の潰れが改善されていることがわかる。
【0161】
実施例5の配線基板においても、密着性が十分に確保されていることが認められる。このことから、微細加工に有利な感光性カバーレイヤーの使用を容易にし、かつ配線基板の薄膜化にも有効であることがわかる。
【0162】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、基板全体の平坦性が良好であるとともに、ベースフィルムと金属配線との密着性に優れ、屈曲寿命等の信頼性が高い薄型のフレキシブル配線基板が提供される。また本発明によれば、微細な配線が高密度に形成されたフレキシブル配線基板が提供される。
【0163】
本発明は、繰り返し屈曲耐性の要求される過酷な環境においても好適に使用でき、今後もますます進む電子機器の軽薄短小化に対応した薄型のフレキシブル基板として有効に用いられ、その工業的価値は絶大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるフレキシブル配線基板の一例の構成を表わす断面図。
【図2】本発明にかかるフレキシブル配線基板の他の例の構成を表わす断面図。
【図3】本発明にかかるフレキシブル配線基板の他の例の構成を表わす断面図。
【図4】本発明にかかるフレキシブル配線基板の他の例の構成を表わす断面図。
【図5】本発明のフレキシブル配線基板における複合部材の製造方法を表わす断面概略図。
【符号の説明】
1…フレキシブル配線基板
2…ベースフィルム
3…金属配線層
4…カバーレイヤー
5…多孔質絶縁体
6…金属配線
7…楕円状金属配線
8…傾斜含浸樹脂
9…感光性カバーレイヤー
11…多孔質絶縁体
12…感光性組成物層
13…マスク
14…露光光
15…露光部
16…金属配線
17…無電解めっき
Claims (5)
- 可撓性のベースフィルムと、
前記可撓性のベースフィルム上に形成された金属配線層と、
前記金属配線層上に形成された可撓性のカバーレイヤーとを具備し、
前記金属配線層は、多孔質絶縁体と、この多孔質絶縁体に金属を選択的に充填して形成された金属配線とを有する複合部材からなり、前記金属配線層における金属配線は、その横断面において、前記ベースフイルムもしくは前記カバーレイヤーに接する、もしくは近接する領域の幅より、内側の領域の幅が大となる形状を有していることを特徴とするフレキシブル配線基板。 - 前記金属配線層を構成する前記複合部材は、前記金属配線以外の前記多孔質絶縁体に含浸された樹脂成分をさらに有し、前記樹脂成分は、前記ベースフィルム側および前記カバーレイヤー側である表面層に含浸された遅硬化性の樹脂成分と、前記表面層の間の内部層に含浸された速硬化性の樹脂成分を含むことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル配線基板。
- 可撓性のベースフィルムと、
前記可撓性のベースフィルム上に形成された金属配線層と、
前記金属配線層上に形成された可撓性のカバーレイヤーとを具備し、
前記金属配線層は、多孔質絶縁体と、この多孔質絶縁体に金属を選択的に充填して形成された金属配線と、この金属配線以外の多孔質絶縁体に含浸された樹脂成分とを有する複合部材からなり、前記樹脂成分は、前記ベースフィルム側および前記カバーレイヤー側である表面層に含浸された遅硬化性の樹脂成分と、前記表面層の間の内部層に含浸された速硬化性の樹脂成分を含むことを特徴とするフレキシブル配線基板。 - 前記可撓性のカバーレイヤーは、前記金属配線の表面を覆い且つ互いに離間して配置された複数の領域を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフレキシブル配線基板。
- 多孔質絶縁体に金属を選択的に充填して、前記多孔質絶縁体の表面および裏面に達して形成された金属配線を有する複合部材からなる金属配線層と、
前記金属配線を覆って、前記金属配線層の露出表面および露出裏面に配置されたカバーレイヤーとを具備し、
前記カバーレイヤーは、互いに離間して配置された複数の領域を備えることを特徴とするフレキシブル配線基板。
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