JP3813494B2 - 給紙装置・画像形成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、用紙を1枚ずつ分離して給紙する給紙装置、該給紙装置を有する印刷装置等の画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の予備捌き方式では、一般に、給紙ローラと分離ローラ等で構成される主分離部の上流側において、摩擦面を有する捌き板が給紙ローラの外周面に対して用紙の裏側から接触するようにバネで常時付勢されており、捌き板は給紙ローラの外周面から離れる方向にスライド可能に支持された構成となっている。
予備分離方式では、通常の用紙においては主分離部しか有さない方式に比べて分離性が向上する。
【0003】
特開2001−31271号公報には、送り出しローラで送り出された用紙を、その下流側に配置された分離ローラとこれに用紙の下面側から接する摩擦ローラからなる主分離部により分離する給紙装置が記載されている。さらに、主分離部の上流には用紙の先端が当接する傾斜面を有する摩擦パッドが設けられており、この摩擦パッドにより主分離部の手前で予備的に用紙を捌くようになっている。摩擦パッドは、用紙の種類に対する捌き効果の範囲を広げるために、その角度を変化させることができるようになっている。
予備捌き構成を有する構成としては上記の他に、例えば特開平7−48045公報、特開平7−215521号公報、特開平11−71036号公報に記載のものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
予備捌き方式では、用紙が主分離部と捌き板の2段階で付勢力を受けるので、薄紙のような腰が弱い用紙においてはシワが発生しやすい。また、封筒のような極厚紙に相当するような用紙の場合には、捌き板の付勢力をかなり弱く調整しても用紙先端が捌き板の斜面に衝突したり、用紙が捌き板を押し下げて下流側の主分離部の分離ローラの表面に衝突した際の衝撃で不送りになりやすい。
【0005】
また、不送りになった封筒を取り出すときに、封筒の重ね合わせの糊付け部分が捌き板のエッジに引っ掛かって剥がれたり、逆に捌き板が破損したりする不具合があった。
用紙に重送が発生して複数枚が分離部に進入した場合には、主分離部のニップ部まで用紙先端をガイドする必要上、ニップ部寸前まで延長されている捌き板が複数枚の用紙の厚みによって所定量以上に下げられ、用紙先端が分離ローラに接触する。このため、分離ローラが下方に押し下げられ、主分離圧が弱くなってそのまま重送するケースもあった。
【0006】
そこで、本発明は、通常用紙における重送等の不具合を抑制できるとともに、薄紙におけるシワの発生を防止でき、且つ、封筒や私製ハガキのような極厚紙の場合の不送りを防止できる給紙装置、該給紙装置を有する画像形成装置の提供を、その目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、給紙台に積載された用紙を最上のものから順に送り出す給紙ローラと、該給紙ローラに向けて付勢される主分離部材を有する主分離手段と、該主分離手段の上流側に設けられ用紙を予備的に分離する捌き手段を有する給紙装置において、上記捌き手段が、少なくとも表面に摩擦面を有する捌き板と、該捌き板を上記給紙ローラに向けて付勢する付勢手段を有し、該捌き板の付勢方向の可動範囲に亘って該捌き板と上記主分離手段との間に用紙搬送方向における所定の隙間が設けられ、該捌き板と該主分離手段との間には用紙の先端を上記主分離部材へ案内する斜面形状の用紙先端ガイド面が設けられ、上記捌き板を上記給紙ローラから離間した位置に固定する手段を有している、という構成を採っている。
【0008】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の給紙装置において、上記捌き手段が、支持部材と、該支持部材にスライド自在に支持され上記付勢手段による付勢力を伝達されるベース部材を有し、該ベース部材に上記捌き板がその用紙搬送方向下流側が所定の角度立ち上がった状態で保持されている、という構成を採っている。
【0009】
請求項3記載の発明では、請求項2記載の給紙装置において、上記給紙台に積載された用紙の先端を揃える前板を有し、上記支持部材が該前板に一体に形成されている、という構成を採っている。
【0010】
請求項4記載の発明では、請求項2又は3記載の給紙装置において、上記給紙ローラに対する上記捌き板の接触圧を調整するためのアジャスタを有し、該アジャスタは、上記付勢手段の付勢力を調整する方向に移動可能に設けられ且つ任意の位置で上記支持部材に固定可能であり、上記捌き板を上記給紙ローラから離間した位置に固定する手段を兼ねる、という構成を採っている。
【0011】
請求項5記載の発明では、請求項4記載の給紙装置において、上記アジャスタが上記ベース部材に係合する係合片を一体に有し、該係合片は該アジャスタが上記捌き板の可動範囲内における上記接触圧の調整範囲を超えて下方に下げられたときに該ベース部材と干渉するように設けられ、上記捌き板が上記給紙ローラから離間した状態で該アジャスタを固定できる、という構成を採っている。
【0012】
請求項6記載の発明では、請求項2乃至5の何れかに記載の給紙装置において、上記ベース部材が樹脂等の軽量部材で形成されている、という構成を採っている。
【0013】
請求項7記載の発明では、請求項1乃至6の何れかに記載の給紙装置において、上記捌き板の上記給紙ローラの軸方向における幅を該給紙ローラの同方向の幅よりも大きくした、という構成を採っている。
【0014】
請求項8記載の発明では、請求項1乃至7の何れかに記載の給紙装置において、上記主分離手段が上記主分離部材を保持する主分離ベース部材を有し、該主分離ベース部材が上記用紙先端ガイド面を一体に有している、という構成を採っている。
【0015】
請求項9記載の発明では、請求項1乃至8の何れかに記載の給紙装置において、上記主分離部材が、少なくとも表面に摩擦面を有する板状に形成されている、という構成を採っている。
【0016】
請求項10記載の発明では、給紙装置により用紙を1枚ずつ分離して給紙し、該給紙された用紙に画像を転写する画像形成装置において、上記給紙装置が請求項1乃至9の何れかに記載のものである、という構成を採っている。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図1乃至図6に基づいて説明する。
まず、図1に基づいて、本実施形態における画像形成装置としての孔版印刷装置の全体構成及び孔版印刷プロセスの概要を説明する。
装置本体50の上部には原稿読取部80が設けられており、その下方中央部には多孔性の印刷ドラム101を有する印刷ドラム部100が設けられている。印刷ドラム部100の上方右側には製版装置90が設けられ、印刷ドラム部100の上方左側には排版部70が設けられている。また、製版装置90の下方には給紙装置110が(請求項10)、印刷ドラム部100の下方には印圧部150が、排版部70の下方には排紙部130が、それぞれ設けられている。
【0018】
次に、上記構成に係る孔版印刷装置の印刷動作を説明する。
先ず、原稿読取部80の上部に配置された図示しない原稿載置台に、印刷すべき画像を持った原稿60を載置し、図示しない操作パネル上の製版スタートキーを押す。この製版スタートキーの押下に伴い、先ず排版工程が実行される。すなわち、この状態においては、印刷ドラム部100の印刷ドラム101の外周面に前回の印刷で使用された使用済み感熱性孔版マスタ61bが装着されたまま残っている。
【0019】
印刷ドラム101が反時計回りに回転し、印刷ドラム101の外周面の使用済み感熱性孔版マスタ61bの後端部が排版剥離ローラ対71a,71bに近づくと、この排版剥離ローラ対71a,71bは回転しつつ一方の排版剥離ローラ対71aで使用済み感熱性孔版マスタ61bの後端部をすくい上げる。
使用済み感熱性孔版マスタ61bは、排版剥離ローラ対71a,71bの左側に配設された排版コロ対73a,73bと排版剥離ローラ対71a,71bとの間に掛け回された排版搬送ベルト対72a,72bで矢印Y1方向へ搬送されつつ排版ボックス74内へ排出され、印刷ドラム101の外周面から引き剥がされて排版工程が終了する。このとき、印刷ドラム101は反時計回り方向への回転を続けている。剥離・排出された使用済み感熱性孔版マスタ61bは、その後、圧縮板75により排版ボックス74の内部で圧縮される。
【0020】
排版工程と並行して、原稿読取部80で原稿読み取りが行われる。すなわち、図示しない原稿載置台に載置された原稿60は、分離ローラ81、前方原稿搬送ローラ対82a,82b及び後方原稿搬送ローラ対83a,83bのそれぞれの回転により矢印Y2からY3方向に搬送されつつ露光読み取りに供される。このとき、原稿60が多数あるときは、分離ブレード84の作用でその最下部の原稿のみが搬送される。原稿60の画像読み取りは、コンタクトガラス85上を搬送されつつ、蛍光灯86により照明された原稿60の表面からの反射光を、ミラー87で反射させ、レンズ88を通してCCD(電荷結合素子)から成る画像センサ89に入射させることにより行われる。
すなわち、原稿60の読み取りは、周知である縮小式の原稿読取方式で行われ、その画像が読み取られた原稿60は原稿トレイ80A上に排出される。画像センサ89で光電変換された電気信号は、装置本体50内の図示しないアナログ/デジタル(A/D)変換基板に入力され、デジタル画像信号に変換される。
【0021】
一方、この画像読み取り動作と並行して、デジタル信号化された画像情報に基づき製版及び給版工程が行われる。すなわち、製版装置90の所定部位にセットされたロール状の感熱性孔版マスタ61は、ロール状態から引き出され、サーマルヘッド91に感熱性孔版マスタ61を介して押圧されているプラテンローラ92、及びテンションローラ対93a,93bの回転により搬送路の下流側に搬送される。
このように搬送される感熱性孔版マスタ61に対して、サーマルヘッド91にライン状に並んだ複数個の微小な発熱部が、図示しないA/D変換基板から送られてくるデジタル画像信号に応じて各々選択的に発熱し、発熱した発熱部に接触している感熱性孔版マスタ61の熱可塑性樹脂フィルム(後述)が溶融穿孔される。このように、画像情報に応じた感熱性孔版マスタ61の位置選択的な溶融穿孔により、画像情報が穿孔パターンとして書き込まれる。
【0022】
画像情報が書き込まれた製版済感熱性孔版マスタ61aの先端は、給版ローラ対94a,94bにより印刷ドラム101の外周部側へ向かって送り出され、図示しないガイド部材により進行方向を下方へ変えられ、図示する給版位置状態にある印刷ドラム101の拡開したマスタークランパ102(仮想線で示す)へ向かって垂れ下がる。このとき印刷ドラム101は、排版工程により使用済感熱性孔版マスタ61bを既に除去されている。
【0023】
製版済感熱性孔版マスタ61aの先端が、一定のタイミングでマスタークランパ102によりクランプされると、印刷ドラム101は図中A方向(時計回り方向)に回転しつつ外周面に製版済感熱性孔版マスタ61aを徐々に巻き付けていく。製版済感熱性孔版マスタ61aの後端部はカッタ95により一定の長さに切断される。
【0024】
一版の製版済感熱性孔版マスタ61aが印刷ドラム101の外周面に巻装されると製版及び給版工程が終了し、印刷工程が開始される。先ず、給紙台51上に積載された印刷用紙62の内の最上位の1枚が、給紙ローラ120及びピックアップローラ121によりフィードローラ対113a,113bに向けて矢印Y4方向に送り出され、さらにフィードローラ対113a,113bによりドラム部100の回転と同期した所定のタイミングで印圧部150に送られる。送り出された印刷用紙62が、印刷ドラム101とプレスローラ103との間にくると、印刷ドラム101の外周面下方に離間していたプレスローラ103が上方に移動されることにより、印刷ドラム101の外周面に巻装された製版済感熱性孔版マスタ61aに押圧される。こうして、印刷ドラム101の多孔部及び製版済感熱性孔版マスタ61aの穿孔パターン部(共に図示せず)からインキが滲み出し、この滲み出たインキが印刷用紙62の表面に転移されて、印刷画像が形成される。
【0025】
このとき、印刷ドラム101の内周側では、インキ供給管104からインキローラ105とドクターローラ106との間に形成されたインキ溜り107にインキが供給され、印刷ドラム101の回転方向と同一方向に、かつ、印刷ドラム101の回転速度と同期して回転しながら内周面に転接するインキローラ105により、インキが印刷ドラム101の内周側に供給される。
【0026】
印圧部150において印刷画像が形成された印刷用紙62は、排紙剥離爪114により印刷ドラム101から剥がされ、吸着用ファン118に吸着されつつ、吸着排紙入口ローラ115及び吸着排紙出口ローラ116に掛け渡された搬送ベルト117の反時計回り方向の回転により、矢印Y5のように排紙部130へ向かって搬送され、排紙台52上に順次排出積載される。このようにして所謂試し刷りが終了する。
【0027】
次に、図示しないテンキーで印刷枚数をセットし、図示しない印刷スタートキーを押下すると上記試し刷りと同様の工程で、給紙、印刷及び排紙の各工程がセットした印刷枚数分繰り返して行なわれ、孔版印刷の全工程が終了する。
【0028】
給紙装置110は、図2に示すように、昇降可能に支持され印刷用紙62が積載される給紙台51と、給紙適正高さで給紙台51の停止制御を行う図示しない検知・制御部と、給紙適正高さにて給紙台51に積載された印刷用紙62を最上のものから順に下流側へ送り出す給紙ローラ120と、印刷用紙62を給紙ローラ120へ向けて搬送するピックアップローラ121と、主分離手段(主分離部)122と、該主分離手段122の上流側に設けられた捌き手段123と、給紙台51に積載された印刷用紙62の搬送方向先端を揃える前板124と、フィードローラ対113a,113bを有している。
主分離手段122は、主分離ベース部材125と、該主分離ベース部材125の上面に固定された主分離部材126と、該主分離部材126を給紙ローラ120の外周面に所定の圧力で押圧するバネ127を有している。バネ127は、前板124に固定されたL字形のブラケット128に設けられたバネ座129と主分離ベース部材125の底面との間に設定されている。主分離部材126は少なくともその表面がウレタンゴム等の摩擦材で形成され、全体として板状に形成されている(請求項9)。
【0029】
捌き手段123は、ブラケット128に立ち上げられた支持部材としてのブラケット131と(請求項3)、該ブラケット131にスライド自在に支持されたベース部材132と、該ベース部材132の上面に保持され給紙ローラ120の外周面に所定の圧力で押圧される捌き板130と、該ベース部材132を介して捌き板130を給紙ローラ120へ押圧する付勢手段としてのバネ133等を有している。ベース部材132は、給紙ローラ120に対する捌き板130の接触圧を給紙ローラ120の軸方向に亘って均一にするために、樹脂等の軽量部材で形成されている(請求項6)。
ピックアップローラ121はタイミングベルト134により給紙ローラ120と同期回転する。
【0030】
次に、図3及び図4に基づいて捌き手段123を詳細に説明する。
図3に示すように、ベース部材132の上半部には段差を有する開口部132Aが形成され、該開口部132Aを介してブラケット131にネジ固定された段付ネジ135により上下方向のストロークを制限されている。
開口部132Aの小径部132Aaの径D1から段付ネジ135の軸部135aの径D2を引いた値が、ベース部材132のストローク量、すなわち、捌き板130の可動範囲量となる。
ベース部材132の下方には、印刷用紙62の種類に応じて給紙ローラ120に対する捌き板130の接触圧を調整するためのアジャスタ136(捌き板を給紙ローラから離間した位置に固定する手段)が設けられている(請求項4)。
アジャスタ136は、ブラケット131の裏面側(用紙搬送方向上流側)に位置するアジャスタ本体部137と、該アジャスタ本体部137と一体に形成されブラケット131の表面側(用紙搬送方向下流側)に位置するネジ固定部138と、アジャスタ本体部137と一体に形成され上方向に延びる係合片としての係合フック139と、任意の位置でブラケット131に固定するためのネジ140を有している。
図示しないブラケット131の長孔を介してアジャスタ本体部137と係合フック139とが一体に形成されている。
【0031】
図4に示すように、アジャスタ本体部137の上面には、バネ133の受座141が設けられている。
ブラケット131にはネジ140の移動用溝131aが形成されており、ネジ140はこの移動用溝131aを通してネジ固定部138のネジ孔138aに螺合されている。移動用溝131aの上下方向の長さはベース部材132のストロークと同じかそれ以上に設定されている。
図3に示すように、ブラケット131には係合フック139のカギ部139aが移動するための移動用開口部131bが形成されている。また、ベース部材132にはカギ部139aが係合する係合凹部132Bが形成されている。
【0032】
捌き板130は少なくとも表面にウレタンゴム等の摩擦面を有しており、ベース部材132にその用紙搬送方向下流側が所定の角度立ち上がった状態で保持されている(請求項2)。また、捌き板130の給紙ローラ120の軸方向における幅は、給紙ローラ120の同方向の幅よりも大きく設定されている(請求項7)。
捌き板130の付勢方向(上下方向)の可動範囲に亘って、捌き板130と主分離手段122との間には、用紙搬送方向における所定の隙間Gが設けられている。また、捌き板130と該主分離手段122との間には印刷用紙62の先端を主分離部材126へ案内する斜面形状の用紙先端ガイド面142が設けられている(請求項1)。該用紙先端ガイド面142は、主分離ベース部材125に一体に形成されている(請求項8)。
【0033】
次に、給紙装置110による給紙動作を説明する。
図示しない給紙スタートボタンが押されると、印刷用紙62が積載された給紙台51が給紙適正高さに向けて上昇を開始する。給紙適正高さに達したことが検知手段によって検知されると、図示しない制御手段によって給紙台51の上昇が停止制御され、次に給紙ローラ120とピックアップローラ121が図示しない駆動手段により所定のタイミングで駆動される。
給紙ローラ120及びピックアップローラ121にて搬送された印刷用紙62の先端部は、先ず、用紙搬送面に対して所定の角度を有して給紙ローラ120の外周面に接触している捌き板130の斜面(摩擦面)を進行し、図3に示す給紙ローラ120と捌き板130の接触点143にて所定の摩擦力を受けながら主分離手段122に向けて搬送される。
主分離手段122に進入した印刷用紙62は、主分離部材126と捌き板130の両方の摩擦力を受けながら更に下流側のフィードローラ対113a,113bに向けて搬送される。
【0034】
ここまでは給紙台51に積載された印刷用紙62のうち最上位の1枚が給紙される動作を説明したが、次に2枚の用紙が同時に分離部へ進入した場合の分離動作を説明する。
給紙ローラ120及びピックアップローラ121にて搬送された2枚の印刷用紙62a、62bの先端部は、先ず捌き板130の斜面に当たることによって2枚目の印刷用紙62bは1枚目の印刷用紙62aに対して相対的に上流側(給紙台51側)へずらされる。その状態で捌き板130と給紙ローラ120の接触点143に進入する。捌き圧(給紙ローラ120に対する捌き板130の接触圧)によって発生した1枚目/2枚目間の摩擦力をF1、2枚目/捌き板130間の摩擦力をF2とすると、F1<F2の関係により、更に1枚目と2枚目の印刷用紙62の予備分離動作が行われる。
【0035】
図5は、2枚の印刷用紙62a、62bが捌き板130部(予備分離部)に進入し、2枚目の印刷用紙62bが捌き板130部で止められ、1枚目の印刷用紙62aが主分離手段122に進入する様子を示している。その際に捌き板130が進入した2枚の印刷用紙62の厚さ分だけ下方に移動している様子も合わせて示した。
捌き板130を設ける主な目的は、複数枚がまとまって分離部に進入してきた場合の用紙先端部に対してずらし捌き機能を発現させることであるので、主分離圧(給紙ローラ120に対する主分離部材126の接触圧)によって発生した主分離部材126/2枚目間の摩擦力をF3とすると、F1とF2の差はF1とF3の差よりも小さく設定してある。
その理由としては、捌き板130の下流側先端部が給紙ローラ120の外周面に押し当てられているため、通紙条件(周囲の環境や用紙の種類等)によっては、稀に用紙先端部に傷が発生したりスキューが発生する場合があるのでF1に対してF2をあまり大きくできないということが挙げられる。
【0036】
このことより、捌き板130部で印刷用紙62が十分にずらし分離されずに主分離手段122に進入してしまう場合がある。しかしながら、捌き板130部にてある程度分離されているため、主分離手段122での分離は圧の調整等にて容易にセッティング可能である。一方、印刷用紙62の中には捌き圧を大きくしてもその圧が有効に作用して分離が可能となるものもある。
図3に示すように、主分離部材126を保持している主分離ベース部材125と捌き板130との間には、捌き板130の可動範囲に亘って隙間Gが設けられているので、複数枚の印刷用紙62が一度に捌き板130部に進入して捌き板130が下げられても、主分離手段122に接触することはない。また、これにより、捌き板130の可動範囲を広げることが可能になり、例え複数枚の印刷用紙62が一度に捌き板130部に進入しても、給紙ローラ120と捌き板130の間にその用紙束が挟まり、用紙間の圧が急激に大きくなり、用紙間の摩擦力が大きくなることによる重送、不送り、折れ、シワの発生はなくなる。
また、捌き板130が下げられても、主分離手段122の上流側に設けた用紙先端ガイド面142により印刷用紙62の先端部はスムーズに主分離部材126と給紙ローラ120とのニップ部に進入するようになる。
【0037】
次に、アジャスタ136による調整動作を説明する。
印刷用紙62の種類によっては重送が発生しやすいものもあって、給紙ローラ120に対する主分離部材126の接触圧を強めに調整することに加えて、捌き圧も強めに調整する必要性が生じるケースもある。
そのような場合、ネジ140を緩めてアジャスタ本体部137を上に移動させ、適正な位置で固定する。かかる操作によりバネ133の長さが変化し、給紙ローラ120に対する捌き板130の接触圧が変化する。
調整操作を迅速且つ容易に行えるように、ブラケット131とアジャスタ本体部137双方に用紙種類に対応した目盛りを付けてもよい。
また、本実施形態では、捌き板130の可動範囲内における接触圧の調整範囲を超えた位置で捌き板130を保持できるようになっている。図6に示すように、アジャスタ本体部137を捌き圧の調整範囲の下限位置よりも下に下げると、係合フック139のカギ部139aがベース部材132の係合凹部132Bに係合し、ベース部材132は引き下げられる。
これによって捌き板130は給紙ローラ120の外周面から離間する方向に退避する。ここで、ネジ140を固定すると、捌き板130は退避位置に保持される(請求項5)。
退避位置は、開口部132Aの小径部132Aaの上端に段付ネジ135の軸部135aが突き当たった位置としてもよく、その近傍としてもよい。
給紙テストを実施した結果、40kg紙よりも薄い極薄紙や、逆に封筒や私製ハガキの中でも200kg紙を超えるような用紙については上記のように捌き板130を退避位置に退避させた方がシワヤ不送りがなく良好な給紙品質が得られることが分かった。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、捌き板が用紙束の進入で下げられても捌き板の用紙搬送方向下流側先端部が主分離部と接触することはなく、これによって主分離手段の分離動作が妨げられることがないので重送を防止できる。また、用紙先端ガイド面によって用紙先端部を主分離部材へスムーズに案内することができる。また、隙間の存在によって捌き板の可動範囲を広げることができ、捌き板部位に複数枚の用紙が同時に進入してもこれによる重送、不送り、シワの発生を抑制することができる。
【0039】
本発明によれば、捌き板の表面での用紙先端ずらし捌きをより安定且つ効果的に行うことができる。また、用紙の厚さに関係なく捌き板を用紙に追従させることができる。
【0040】
本発明によれば、既存要素への付加構成によって構成の簡易化を図ることができる。
【0041】
本発明によれば、用紙の種類に対する微調整ができ、重送、不送り、シワの発生を高精度に抑制することができる。
【0042】
本発明によれば、給紙が比較的困難であった薄紙や厚紙に対しても捌き板の摩擦力が作用しない状態での給紙が可能となり、給紙品質を高めることができる。
【0043】
本発明によれば、給紙ローラに対する捌き板の接触圧を給紙ローラの軸方向に亘って均一にすることができ、且つ、高速給紙時にも良く用紙面に追従させることが可能となる。
【0044】
本発明によれば、給紙ローラの搬送力を有効に使うことができ、且つ、用紙先端に対しても無理な力が加わらないので、用紙の先端折れやシワの発生を抑制することができる。
【0045】
本発明によれば、構成の簡易化を図ることができる。
【0046】
本発明によれば、スペースが限られている用紙分離部を、捌き板、用紙先端ガイド面との関係において有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における画像形成装置としての孔版印刷装置の概要正面図である。
【図2】給紙装置の概要正面図である。
【図3】捌き板が給紙ローラに接触している状態の概要断面図である。
【図4】アジャスタの概要斜視図である。
【図5】用紙分離部に用紙が2枚進入した状態の概要断面図である。
【図6】捌き板を退避位置に位置付けた状態の概要断面図である。
【符号の説明】
51 給紙台
62 用紙としての印刷用紙
120 給紙ローラ
122 主分離手段
123 捌き手段
124 前板
125 主分離ベース部材
126 主分離部材
130 捌き板
131 支持部材としてのブラケット
132 ベース部材
133 付勢手段としてのバネ
136 アジャスタ
139 係合片としての係合フック
142 用紙先端ガイド面
G 隙間

Claims (10)

  1. 給紙台に積載された用紙を最上のものから順に送り出す給紙ローラと、該給紙ローラに向けて付勢される主分離部材を有する主分離手段と、該主分離手段の上流側に設けられ用紙を予備的に分離する捌き手段を有する給紙装置において、
    上記捌き手段が、少なくとも表面に摩擦面を有する捌き板と、該捌き板を上記給紙ローラに向けて付勢する付勢手段を有し、該捌き板の付勢方向の可動範囲に亘って該捌き板と上記主分離手段との間に用紙搬送方向における所定の隙間が設けられ、該捌き板と該主分離手段との間には用紙の先端を上記主分離部材へ案内する斜面形状の用紙先端ガイド面が設けられ、上記捌き板を上記給紙ローラから離間した位置に固定する手段を有していることを特徴とする給紙装置。
  2. 請求項1記載の給紙装置において、
    上記捌き手段が、支持部材と、該支持部材にスライド自在に支持され上記付勢手段による付勢力を伝達されるベース部材を有し、該ベース部材に上記捌き板がその用紙搬送方向下流側が所定の角度立ち上がった状態で保持されていることを特徴とする給紙装置。
  3. 請求項2記載の給紙装置において、
    上記給紙台に積載された用紙の先端を揃える前板を有し、上記支持部材が該前板に一体に形成されていることを特徴とする給紙装置。
  4. 請求項2又は3記載の給紙装置において、
    上記給紙ローラに対する上記捌き板の接触圧を調整するためのアジャスタを有し、該アジャスタは、上記付勢手段の付勢力を調整する方向に移動可能に設けられ且つ任意の位置で上記支持部材に固定可能であり、上記捌き板を上記給紙ローラから離間した位置に固定する手段を兼ねることを特徴とする給紙装置。
  5. 請求項4記載の給紙装置において、
    上記アジャスタが上記ベース部材に係合する係合片を一体に有し、該係合片は該アジャスタが上記捌き板の可動範囲内における上記接触圧の調整範囲を超えて下方に下げられたときに該ベース部材と干渉するように設けられ、上記捌き板が上記給紙ローラから離間した状態で該アジャスタを固定できることを特徴とする給紙装置。
  6. 請求項2乃至5の何れかに記載の給紙装置において、
    上記ベース部材が樹脂等の軽量部材で形成されていることを特徴とする給紙装置。
  7. 請求項1乃至6の何れかに記載の給紙装置において、
    上記捌き板の上記給紙ローラの軸方向における幅を該給紙ローラの同方向の幅よりも大きくしたことを特徴とする給紙装置。
  8. 請求項1乃至7の何れかに記載の給紙装置において、
    上記主分離手段が上記主分離部材を保持する主分離ベース部材を有し、該主分離ベース部材が上記用紙先端ガイド面を一体に有していることを特徴とする給紙装置。
  9. 請求項1乃至8の何れかに記載の給紙装置において、
    上記主分離部材が、少なくとも表面に摩擦面を有する板状に形成されていることを特徴とする給紙装置。
  10. 給紙装置により用紙を1枚ずつ分離して給紙し、該給紙された用紙に画像を転写する画像形成装置において、
    上記給紙装置が請求項1乃至9の何れかに記載のものであることを特徴とする画像形成装置。
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