JP3812517B2 - ドラム式洗濯機 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転ドラム内に洗濯物を投入し、洗濯、すすぎ、脱水などの各行程を逐次制御して洗濯するドラム式洗濯機に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来、この種のドラム式洗濯機は図８および図９に示すように構成していた。以下、その構成について説明する。
【０００３】
図８および図９に示すように、回転ドラム１は、外周部に多数の通水孔２を全面に設け、水受け槽３内に回転自在に配設している。回転ドラム１の回転中心に略水平方向に回転軸４を設け、この回転軸４にモータ５を連結し、回転ドラム１を回転駆動する。回転ドラム１の内壁面に数個の突起板６を設けている。
【０００４】
水受け槽３は洗濯機本体７よりばね体８で揺動可能に吊り下げられており、水受け槽３の下部に排水ホース９の一端を接続し、ホース９の他端を排水ポンプ１０に接続して水受け槽３内の洗濯水を排水するようにしている。給水弁１１は水受け槽３内に水を給水するものである。水位検知手段１２は水受け槽３内の水位を検知するものである。
【０００５】
制御装置１３は、マイクロコンピュータで構成した制御手段１４を有し、パワースイッチング手段１５を介してモータ５、排水ポンプ１０、給水弁１１などの動作を制御し、洗濯、すすぎ、脱水などの一連の行程を逐次制御する。入力設定手段１６は、運転コース等を設定するもので、制御手段１４は入力設定手段１６からの情報を入力して、その情報を基に表示手段１７を表示して使用者に知らせる。記憶手段１８は、制御手段１５により制御するのに必要なデータを記憶している。なお、１９は商用電源、２０は電源スイッチである。
【０００６】
上記構成において洗濯行程の動作を説明すると、回転ドラム１内に洗濯物と洗剤を投入し、電源、スタートボタン（図示せず）を押し、洗濯行程を開始すると、給水弁１１が動作して給水し、水位検知手段１２により所定の水位Ｎ１を検知するとモータ５を駆動する。また、所定の水位Ｎ２（Ｎ１と同等以上）を検知すると給水を停止する。
【０００７】
洗濯行程では、洗濯物に水が含まれるため補給水しながら、回転ドラム１はモータ５によって所定の回転数および所定の時間において、正転、停止、反転、停止駆動し、回転ドラム１内の洗濯物は突起板６に引っかかり、持ち上げられて水面上に落下する。この動作によって洗剤を徐々に溶解して洗濯水となり、洗濯物の汚れに作用することとなる。洗濯行程が終了すると、排水ポンプ１０を動作して水受け槽３内の洗濯水を排水する。
【０００８】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の構成では、回転ドラム１の正転、停止、反転、停止駆動によって回転ドラム１内の洗剤を溶解しながら洗濯物に機械力を与えて洗浄力を確保している。
【０００９】
このため、給水量が少ないドラム式洗濯機では洗剤の溶解や、洗濯物に洗剤液が均一にかかるために時間を有し、洗いむらが発生したり、洗浄力が低下し、または、洗浄時間が長くかかる要因の一つになっていた。
【００１０】
本発明は上記課題を解決するもので、洗濯行程で溶解した洗濯水を洗剤泡にして回転ドラム内の洗濯物に洗剤泡をかけることで、洗いむらを低減するとともに洗浄力を向上し、洗濯時間を短縮することを目的としている。
【００１１】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、回転中心軸を略水平方向または前面が高い略斜め方向に有する回転ドラムを水受け槽内に回転自在に配設し、この回転ドラムをモータにより駆動し、水受け槽内に給水手段により給水し、制御手段によりモータの動作を制御し洗濯、すすぎ、脱水の各行程を制御するよう構成し、制御手段は、洗濯行程にて、回転ドラムを連続回転させて回転ドラムと水受け槽間の洗濯液をかき混ぜることで洗剤泡を発生させ、その後、回転ドラムを回転ドラム内の洗濯物が張り付く程度の回転数で回転させて洗剤泡を回転ドラムの前面より回転ドラム内に溢れ出させることで回転ドラム内の洗濯物に洗剤泡をかけて洗濯するように構成したものである。
【００１２】
これにより、溶解した洗濯液を体積の大きい洗剤泡にして、回転ドラム内の洗濯物にかけることで、少ない洗濯液でも、回転ドラム内の洗濯物の汚れに洗剤成分を作用しやすくできるとともに、高濃度の洗濯液をしみ込みやすくできて、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができ、洗濯時間を短縮することができる。
【００１３】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項１に記載の発明は、回転中心軸を略水平方向または前面が高い略斜め方向に有し水受け槽内に回転自在に配設した回転ドラムと、前記回転ドラムを駆動するモータと、前記水受け槽内に給水する給水手段と、前記モータの動作を制御し洗濯、すすぎ、脱水の各行程を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、洗濯行程にて、前記回転ドラムを連続回転させて前記回転ドラムと前記水受け槽間の洗濯液をかき混ぜることで洗剤泡を発生させ、その後、前記回転ドラムを前記回転ドラム内の洗濯物が張り付く程度の回転数で回転させて前記洗剤泡を前記回転ドラムの前面より前記回転ドラム内に溢れ出させることで前記回転ドラム内の前記洗濯物に洗剤泡をかけて洗濯するように構成したものであり、溶解した洗濯液を体積の大きい洗剤泡にして、回転ドラム内の洗濯物にかけることで、少ない洗濯液でも、回転ドラム内の洗濯物の汚れに洗剤成分を作用しやすくできるとともに、高濃度の洗濯液をしみ込みやすくできて、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができ、洗濯時間を短縮することができる。
【００１４】
請求項２に記載の発明は、上記請求項１に記載の発明において、制御手段は、洗剤泡を回転ドラムの前面より前記回転ドラム内に溢れ出させているときに、前記回転ドラムが、前記回転ドラム内に洗濯物が張り付く回転数で回転するようにしたものであり、回転ドラム内に洗濯物が張り付き、洗剤泡が洗濯物を通過して、より多くの洗濯物に高濃度の洗剤液をしみ込ませることができ、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができる。
【００１５】
請求項３に記載の発明は、上記請求項１に記載の発明において、制御手段は、洗剤泡を回転ドラムの前面より前記回転ドラム内に溢れ出させているときに、前記回転ドラムが、前記回転ドラム内で前記洗濯物がこすれあいながら回転する回転数で回転するようにしたものであり、回転ドラム内で洗濯物がこすれあいながら回転して、洗剤泡がまんべんなく作用するとともに、油汚れや油に付着した粒子汚れを結合して持ち去りやすくすることができ、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができる。
【００１６】
請求項４に記載の発明は、上記請求項１〜３に記載の発明において、制御手段は、洗剤泡を回転ドラムの前面より前記回転ドラム内に溢れ出させて洗濯物が泡にまみれた状態とした後、前記回転ドラムを正転、反転して前記洗濯物に機械力を与えるようにしたものであり、回転ドラム内の洗濯物が泡でまみれた状態で洗濯物に機械力を作用することで、洗剤泡を洗濯物の汚れにまんべんなく接触しやすくできて、より多くの油汚れおよび油に付着した粒子汚れを結合して持ち去ることができ、また、より多くの洗濯物に高濃度の洗剤液がしみ込むことができ、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができる。
【００１７】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、従来例と同じ構成のものは同一符号を付して説明を省略する。
【００１８】
（実施例１）
図１および図２に示すように、制御装置２１は、マイクロコンピュータで構成した制御手段２２を有し、パワースイッチング手段１５を介してモータ５、排水ポンプ１０、給水弁（給水手段）１１などの動作を制御し、洗濯、すすぎ、脱水などの一連の行程を逐次制御する。
【００１９】
ここで、制御手段２２は、洗濯行程にて、洗剤泡を発生させ、回転ドラム１内の洗濯物に洗剤泡をかけて洗濯するようにしている。
【００２０】
上記構成において洗濯行程の動作を説明する。回転ドラム１内に洗濯物と洗剤を投入し、洗濯行程を開始すると、給水弁１１が動作して給水し、洗剤投入ケース（図示せず）を通り、洗剤とともに水受け槽３に入る。水位検知手段１２により所定の水位Ｎ１を検知するとモータ５を駆動する。また、所定の水位Ｎ２（Ｎ１と同等以上）を検知すると給水を停止する。
【００２１】
このとき、回転ドラム１を連続回転させると、回転ドラム１と水受け槽３間の凹凸で洗濯液がかき混ぜられて洗剤泡が発生する。つぎに、洗濯物が回転ドラム１の内壁に張り付く程度の回転数Ｓ１（例えば２００ｒ／ｍｉｎ）で回転させると、発生した洗剤泡は、遠心力の作用で回転ドラム１と水受け槽３の間を上昇し、前面上部より溢れ出て、回転ドラム１内の洗濯物にかかる。
【００２２】
ここで、洗剤泡について説明する。図３に示すように、一般に洗剤分子Ａは親水基ａと親油基ｂとからなる。つぎに、洗剤を水に溶かした状態を表わすと、図４に示すように、界面（水面）に洗剤分子Ａが整列し、並びきれない洗剤分子は水中に個々またはミセル（集団）として存在する。そして、界面の洗剤分子が取り除かれると直ちに水中の洗剤分子が界面に移動して補充される。
【００２３】
このとき、図５に示すように、洗剤液に気泡Ｂを送り込むと、気泡Ｂは上昇して界面に達し、界面に整列した洗剤分子Ａをそのまま泡の膜に保持した形の泡Ｃが発生する。この泡Ｃは洗剤分子Ａをできる限り多く配列しているため、洗剤濃度も高濃度となる。そして、泡として持ち去られた洗剤分子の補充には、液中の洗剤分子が移動することになり、気泡Ｂを次々送れば泡Ｃが次々と作られることになる。この泡Ｃの膜外側には親油基ｂが配列した状態となる。
【００２４】
泡Ｃを汚れた衣類の表面あるいは衣類を通過させることによって、親油基ｂが油汚れおよび油に付着した粒子汚れを結合して持ち去ることになる。また、泡Ｃが衣類を通過中に破泡すると衣類に高濃度の洗剤液がしみ込むことになり、これによっても汚れが落ちやすい状態となる。泡による衣類の洗浄が可能となる。
【００２５】
以上のように、溶解した洗濯液を体積の大きい洗剤泡にして、回転ドラム１内の洗濯物にかけるようにすることで、少ない洗濯液でも、回転ドラム１内の洗濯物の汚れに洗剤成分を作用しやすくできるとともに、高濃度の洗濯液をしみ込みやすくできて、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができ、洗濯時間を短縮することができる。
【００２６】
なお、他の実施例として、水受け槽３側に泡発生エアポンプ（図示せず）や泡吐出部（図示せず）などを設け、洗剤泡を発生して回転ドラム１内の洗濯物にかけるようにしてもよい。
【００２７】
（実施例２）
図６に示すように、回転ドラム１の回転軸４を回転中心に前面が高い、略斜め方向に構成している。他の構成は上記実施例１と同じであり、同一符号を付して説明を省略する。
【００２８】
ここで、制御装置２１を構成する制御手段２２は、洗濯行程にて洗剤泡を発生させ、回転ドラム１内の洗濯物に対して、回転中心軸の高位置側から斜め方向に、洗剤泡をかけて洗濯するようにしている。
【００２９】
上記構成において洗濯行程における動作を説明する。回転ドラム１を連続回転させて発生した洗剤泡を、遠心力の作用で回転ドラム１と水受け槽３間を上昇させ、前面上部より溢れ出す。このとき、洗剤泡は高位置側から斜め方向に落ち、回転ドラム１内の洗濯物にかかる。
【００３０】
以上のように、回転ドラム１の回転中心軸を斜め方向にすることで、低い位置に片寄った洗濯物に、逆の高い位置側から斜め方向に、洗剤泡を回転ドラム１内の洗濯物にかけることができ、回転中心軸が水平方向のものより、洗剤泡が斜め方向に広い範囲でかかりやすくなる。故に、回転中心軸が水平方向のものよりさらに、回転ドラム１内の洗濯物の汚れに洗剤成分を作用しやすくできるとともに、高濃度の洗濯液をしみ込みやすくできて、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができ、洗濯時間を短縮することができる。
【００３１】
なお、他の実施例として、水受け槽３側に泡発生エアポンプ（図示せず）や泡吐出部（図示せず）などを設け、洗剤泡を発生して回転ドラム１内の洗濯物にかけるようにしてもよい。
【００３２】
（実施例３）
図１に示す制御手段２２は、洗濯行程にて洗剤泡を発生させ、回転ドラム１を回転させながら、洗剤泡を供給するようにしている。他の構成は上記実施例１または２と同じである。
【００３３】
上記構成において洗濯行程における動作を説明する。回転ドラム１を連続回転させて発生した洗剤泡を、遠心力の作用で回転ドラム１と水受け槽３間を上昇させ、前面上部より溢れ出す。このとき、回転ドラム１を回転させながら洗剤泡を供給すると、回転ドラム１内の洗濯物にまんべんなくかかり、洗濯物を通過して回転ドラム１と水受け槽３間に戻る。このように、洗剤泡が循環する。
【００３４】
以上のように、回転ドラム１を回転しながら洗剤泡を供給することで、停止中に供給するよりも、洗濯物の汚れにまんべんなく均一に作用させることができ、また、多くの洗濯物に高濃度の洗剤液がしみ込むことができる。これにより、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができる。
【００３５】
（実施例４）
図７に示すように、回転数検知手段２３、回転ドラム１の回転数を検知するもので、その出力を制御装置２４を構成する制御手段２５に入力している。制御手段２５は、回転ドラム１内に洗剤泡を供給しながら、回転数検知手段２３の出力に基づいて回転ドラム１の回転数を制御するように構成している。その他の構成は上記実施例３と同じであり、同一符号を付して説明を省略する。
【００３６】
上記構成において洗濯行程における動作を説明する。回転ドラム１を回転させながら洗剤泡を前方上部より供給するときに、回転数を制御することで、回転ドラム１内の洗濯物は、回転数を高くすると回転ドラム１内に張り付き、回転数を低くすると回転ドラム１内で洗濯物が回転しながらこすれあう。
【００３７】
回転ドラム１の回転数を高くすると、回転ドラム１内に洗濯物が張り付き、洗剤泡が洗濯物を通過して、より多くの洗濯物に高濃度の洗剤液をしみ込ませることができ、また、回転ドラム１の回転数を低くすると、回転ドラム１内で洗濯物がこすれあいながら回転して、洗剤泡がまんべんなく作用するとともに、油汚れや油に付着した粒子汚れを結合して持ち去りやすくすることができる。これにより、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができる。
【００３８】
（実施例５）
図１に示す制御手段２２は、回転ドラム１内の洗濯物が泡にまみれた状態で、回転ドラム１を正転、反転するようにしている。他の構成は上記実施例１〜４と同じである。
【００３９】
上記構成において洗濯行程における動作を説明する。回転ドラム１内に洗剤泡を供給して、洗濯物が泡にまみれた状態になったところで、回転ドラム１を正転、反転して、洗濯物に機械力を与える。
【００４０】
回転ドラム１内の洗濯物が泡でまみれた状態で洗濯物に機械力を作用するようにすることで、洗剤泡を洗濯物の汚れにまんべんなく接触しやすくできて、より多くの油汚れおよび油に付着した粒子汚れを結合して持ち去ることができ、また、より多くの洗濯物に高濃度の洗剤液がしみ込むことができる。これにより、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができる。
【００４１】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、洗濯行程にて、回転ドラムを連続回転させて回転ドラムと水受け槽間の洗濯液をかき混ぜることで洗剤泡を発生させ、その後、回転ドラムを回転ドラム内の洗濯物が張り付く程度の回転数で回転させて洗剤泡を回転ドラムの前面より回転ドラム内に溢れ出させることで回転ドラム内の洗濯物に洗剤泡をかけて洗濯するように構成したことにより、少ない洗濯液でも、回転ドラム内の洗濯物の汚れに洗剤成分を作用しやすくできるとともに、高濃度の洗濯液をしみ込みやすくできて、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができ、洗濯時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明の第１の実施例のドラム式洗濯機のブロック回路図
【図２】 同ドラム式洗濯機の断面図
【図３】 洗剤分子をモデル的に表した図
【図４】 洗剤分子を水に溶かした状態を表したモデル図
【図５】 洗剤液中に気泡を通した場合のモデル図
【図６】 本発明の第２の実施例のドラム式洗濯機の断面図
【図７】 本発明の第４の実施例のドラム式洗濯機のブロック回路図
【図８】 従来のドラム式洗濯機の断面図
【図９】 同ドラム式洗濯機のブロック回路図
【符号の説明】
１ 回転ドラム
３ 水受け槽
５ モータ
１１ 給水弁（給水手段）
２２ 制御手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転ドラム内に洗濯物を投入し、洗濯、すすぎ、脱水などの各行程を逐次制御して洗濯するドラム式洗濯機に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来、この種のドラム式洗濯機は図８および図９に示すように構成していた。以下、その構成について説明する。
【０００３】
図８および図９に示すように、回転ドラム１は、外周部に多数の通水孔２を全面に設け、水受け槽３内に回転自在に配設している。回転ドラム１の回転中心に略水平方向に回転軸４を設け、この回転軸４にモータ５を連結し、回転ドラム１を回転駆動する。回転ドラム１の内壁面に数個の突起板６を設けている。
【０００４】
水受け槽３は洗濯機本体７よりばね体８で揺動可能に吊り下げられており、水受け槽３の下部に排水ホース９の一端を接続し、ホース９の他端を排水ポンプ１０に接続して水受け槽３内の洗濯水を排水するようにしている。給水弁１１は水受け槽３内に水を給水するものである。水位検知手段１２は水受け槽３内の水位を検知するものである。
【０００５】
制御装置１３は、マイクロコンピュータで構成した制御手段１４を有し、パワースイッチング手段１５を介してモータ５、排水ポンプ１０、給水弁１１などの動作を制御し、洗濯、すすぎ、脱水などの一連の行程を逐次制御する。入力設定手段１６は、運転コース等を設定するもので、制御手段１４は入力設定手段１６からの情報を入力して、その情報を基に表示手段１７を表示して使用者に知らせる。記憶手段１８は、制御手段１５により制御するのに必要なデータを記憶している。なお、１９は商用電源、２０は電源スイッチである。
【０００６】
上記構成において洗濯行程の動作を説明すると、回転ドラム１内に洗濯物と洗剤を投入し、電源、スタートボタン（図示せず）を押し、洗濯行程を開始すると、給水弁１１が動作して給水し、水位検知手段１２により所定の水位Ｎ１を検知するとモータ５を駆動する。また、所定の水位Ｎ２（Ｎ１と同等以上）を検知すると給水を停止する。
【０００７】
洗濯行程では、洗濯物に水が含まれるため補給水しながら、回転ドラム１はモータ５によって所定の回転数および所定の時間において、正転、停止、反転、停止駆動し、回転ドラム１内の洗濯物は突起板６に引っかかり、持ち上げられて水面上に落下する。この動作によって洗剤を徐々に溶解して洗濯水となり、洗濯物の汚れに作用することとなる。洗濯行程が終了すると、排水ポンプ１０を動作して水受け槽３内の洗濯水を排水する。
【０００８】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の構成では、回転ドラム１の正転、停止、反転、停止駆動によって回転ドラム１内の洗剤を溶解しながら洗濯物に機械力を与えて洗浄力を確保している。
【０００９】
このため、給水量が少ないドラム式洗濯機では洗剤の溶解や、洗濯物に洗剤液が均一にかかるために時間を有し、洗いむらが発生したり、洗浄力が低下し、または、洗浄時間が長くかかる要因の一つになっていた。
【００１０】
本発明は上記課題を解決するもので、洗濯行程で溶解した洗濯水を洗剤泡にして回転ドラム内の洗濯物に洗剤泡をかけることで、洗いむらを低減するとともに洗浄力を向上し、洗濯時間を短縮することを目的としている。
【００１１】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、回転中心軸を略水平方向または前面が高い略斜め方向に有する回転ドラムを水受け槽内に回転自在に配設し、この回転ドラムをモータにより駆動し、水受け槽内に給水手段により給水し、制御手段によりモータの動作を制御し洗濯、すすぎ、脱水の各行程を制御するよう構成し、制御手段は、洗濯行程にて、回転ドラムを連続回転させて回転ドラムと水受け槽間の洗濯液をかき混ぜることで洗剤泡を発生させ、その後、回転ドラムを回転ドラム内の洗濯物が張り付く程度の回転数で回転させて洗剤泡を回転ドラムの前面より回転ドラム内に溢れ出させることで回転ドラム内の洗濯物に洗剤泡をかけて洗濯するように構成したものである。
【００１２】
これにより、溶解した洗濯液を体積の大きい洗剤泡にして、回転ドラム内の洗濯物にかけることで、少ない洗濯液でも、回転ドラム内の洗濯物の汚れに洗剤成分を作用しやすくできるとともに、高濃度の洗濯液をしみ込みやすくできて、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができ、洗濯時間を短縮することができる。
【００１３】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項１に記載の発明は、回転中心軸を略水平方向または前面が高い略斜め方向に有し水受け槽内に回転自在に配設した回転ドラムと、前記回転ドラムを駆動するモータと、前記水受け槽内に給水する給水手段と、前記モータの動作を制御し洗濯、すすぎ、脱水の各行程を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、洗濯行程にて、前記回転ドラムを連続回転させて前記回転ドラムと前記水受け槽間の洗濯液をかき混ぜることで洗剤泡を発生させ、その後、前記回転ドラムを前記回転ドラム内の洗濯物が張り付く程度の回転数で回転させて前記洗剤泡を前記回転ドラムの前面より前記回転ドラム内に溢れ出させることで前記回転ドラム内の前記洗濯物に洗剤泡をかけて洗濯するように構成したものであり、溶解した洗濯液を体積の大きい洗剤泡にして、回転ドラム内の洗濯物にかけることで、少ない洗濯液でも、回転ドラム内の洗濯物の汚れに洗剤成分を作用しやすくできるとともに、高濃度の洗濯液をしみ込みやすくできて、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができ、洗濯時間を短縮することができる。
【００１４】
請求項２に記載の発明は、上記請求項１に記載の発明において、制御手段は、洗剤泡を回転ドラムの前面より前記回転ドラム内に溢れ出させているときに、前記回転ドラムが、前記回転ドラム内に洗濯物が張り付く回転数で回転するようにしたものであり、回転ドラム内に洗濯物が張り付き、洗剤泡が洗濯物を通過して、より多くの洗濯物に高濃度の洗剤液をしみ込ませることができ、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができる。
【００１５】
請求項３に記載の発明は、上記請求項１に記載の発明において、制御手段は、洗剤泡を回転ドラムの前面より前記回転ドラム内に溢れ出させているときに、前記回転ドラムが、前記回転ドラム内で前記洗濯物がこすれあいながら回転する回転数で回転するようにしたものであり、回転ドラム内で洗濯物がこすれあいながら回転して、洗剤泡がまんべんなく作用するとともに、油汚れや油に付着した粒子汚れを結合して持ち去りやすくすることができ、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができる。
【００１６】
請求項４に記載の発明は、上記請求項１〜３に記載の発明において、制御手段は、洗剤泡を回転ドラムの前面より前記回転ドラム内に溢れ出させて洗濯物が泡にまみれた状態とした後、前記回転ドラムを正転、反転して前記洗濯物に機械力を与えるようにしたものであり、回転ドラム内の洗濯物が泡でまみれた状態で洗濯物に機械力を作用することで、洗剤泡を洗濯物の汚れにまんべんなく接触しやすくできて、より多くの油汚れおよび油に付着した粒子汚れを結合して持ち去ることができ、また、より多くの洗濯物に高濃度の洗剤液がしみ込むことができ、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができる。
【００１７】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、従来例と同じ構成のものは同一符号を付して説明を省略する。
【００１８】
（実施例１）
図１および図２に示すように、制御装置２１は、マイクロコンピュータで構成した制御手段２２を有し、パワースイッチング手段１５を介してモータ５、排水ポンプ１０、給水弁（給水手段）１１などの動作を制御し、洗濯、すすぎ、脱水などの一連の行程を逐次制御する。
【００１９】
ここで、制御手段２２は、洗濯行程にて、洗剤泡を発生させ、回転ドラム１内の洗濯物に洗剤泡をかけて洗濯するようにしている。
【００２０】
上記構成において洗濯行程の動作を説明する。回転ドラム１内に洗濯物と洗剤を投入し、洗濯行程を開始すると、給水弁１１が動作して給水し、洗剤投入ケース（図示せず）を通り、洗剤とともに水受け槽３に入る。水位検知手段１２により所定の水位Ｎ１を検知するとモータ５を駆動する。また、所定の水位Ｎ２（Ｎ１と同等以上）を検知すると給水を停止する。
【００２１】
このとき、回転ドラム１を連続回転させると、回転ドラム１と水受け槽３間の凹凸で洗濯液がかき混ぜられて洗剤泡が発生する。つぎに、洗濯物が回転ドラム１の内壁に張り付く程度の回転数Ｓ１（例えば２００ｒ／ｍｉｎ）で回転させると、発生した洗剤泡は、遠心力の作用で回転ドラム１と水受け槽３の間を上昇し、前面上部より溢れ出て、回転ドラム１内の洗濯物にかかる。
【００２２】
ここで、洗剤泡について説明する。図３に示すように、一般に洗剤分子Ａは親水基ａと親油基ｂとからなる。つぎに、洗剤を水に溶かした状態を表わすと、図４に示すように、界面（水面）に洗剤分子Ａが整列し、並びきれない洗剤分子は水中に個々またはミセル（集団）として存在する。そして、界面の洗剤分子が取り除かれると直ちに水中の洗剤分子が界面に移動して補充される。
【００２３】
このとき、図５に示すように、洗剤液に気泡Ｂを送り込むと、気泡Ｂは上昇して界面に達し、界面に整列した洗剤分子Ａをそのまま泡の膜に保持した形の泡Ｃが発生する。この泡Ｃは洗剤分子Ａをできる限り多く配列しているため、洗剤濃度も高濃度となる。そして、泡として持ち去られた洗剤分子の補充には、液中の洗剤分子が移動することになり、気泡Ｂを次々送れば泡Ｃが次々と作られることになる。この泡Ｃの膜外側には親油基ｂが配列した状態となる。
【００２４】
泡Ｃを汚れた衣類の表面あるいは衣類を通過させることによって、親油基ｂが油汚れおよび油に付着した粒子汚れを結合して持ち去ることになる。また、泡Ｃが衣類を通過中に破泡すると衣類に高濃度の洗剤液がしみ込むことになり、これによっても汚れが落ちやすい状態となる。泡による衣類の洗浄が可能となる。
【００２５】
以上のように、溶解した洗濯液を体積の大きい洗剤泡にして、回転ドラム１内の洗濯物にかけるようにすることで、少ない洗濯液でも、回転ドラム１内の洗濯物の汚れに洗剤成分を作用しやすくできるとともに、高濃度の洗濯液をしみ込みやすくできて、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができ、洗濯時間を短縮することができる。
【００２６】
なお、他の実施例として、水受け槽３側に泡発生エアポンプ（図示せず）や泡吐出部（図示せず）などを設け、洗剤泡を発生して回転ドラム１内の洗濯物にかけるようにしてもよい。
【００２７】
（実施例２）
図６に示すように、回転ドラム１の回転軸４を回転中心に前面が高い、略斜め方向に構成している。他の構成は上記実施例１と同じであり、同一符号を付して説明を省略する。
【００２８】
ここで、制御装置２１を構成する制御手段２２は、洗濯行程にて洗剤泡を発生させ、回転ドラム１内の洗濯物に対して、回転中心軸の高位置側から斜め方向に、洗剤泡をかけて洗濯するようにしている。
【００２９】
上記構成において洗濯行程における動作を説明する。回転ドラム１を連続回転させて発生した洗剤泡を、遠心力の作用で回転ドラム１と水受け槽３間を上昇させ、前面上部より溢れ出す。このとき、洗剤泡は高位置側から斜め方向に落ち、回転ドラム１内の洗濯物にかかる。
【００３０】
以上のように、回転ドラム１の回転中心軸を斜め方向にすることで、低い位置に片寄った洗濯物に、逆の高い位置側から斜め方向に、洗剤泡を回転ドラム１内の洗濯物にかけることができ、回転中心軸が水平方向のものより、洗剤泡が斜め方向に広い範囲でかかりやすくなる。故に、回転中心軸が水平方向のものよりさらに、回転ドラム１内の洗濯物の汚れに洗剤成分を作用しやすくできるとともに、高濃度の洗濯液をしみ込みやすくできて、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができ、洗濯時間を短縮することができる。
【００３１】
なお、他の実施例として、水受け槽３側に泡発生エアポンプ（図示せず）や泡吐出部（図示せず）などを設け、洗剤泡を発生して回転ドラム１内の洗濯物にかけるようにしてもよい。
【００３２】
（実施例３）
図１に示す制御手段２２は、洗濯行程にて洗剤泡を発生させ、回転ドラム１を回転させながら、洗剤泡を供給するようにしている。他の構成は上記実施例１または２と同じである。
【００３３】
上記構成において洗濯行程における動作を説明する。回転ドラム１を連続回転させて発生した洗剤泡を、遠心力の作用で回転ドラム１と水受け槽３間を上昇させ、前面上部より溢れ出す。このとき、回転ドラム１を回転させながら洗剤泡を供給すると、回転ドラム１内の洗濯物にまんべんなくかかり、洗濯物を通過して回転ドラム１と水受け槽３間に戻る。このように、洗剤泡が循環する。
【００３４】
以上のように、回転ドラム１を回転しながら洗剤泡を供給することで、停止中に供給するよりも、洗濯物の汚れにまんべんなく均一に作用させることができ、また、多くの洗濯物に高濃度の洗剤液がしみ込むことができる。これにより、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができる。
【００３５】
（実施例４）
図７に示すように、回転数検知手段２３、回転ドラム１の回転数を検知するもので、その出力を制御装置２４を構成する制御手段２５に入力している。制御手段２５は、回転ドラム１内に洗剤泡を供給しながら、回転数検知手段２３の出力に基づいて回転ドラム１の回転数を制御するように構成している。その他の構成は上記実施例３と同じであり、同一符号を付して説明を省略する。
【００３６】
上記構成において洗濯行程における動作を説明する。回転ドラム１を回転させながら洗剤泡を前方上部より供給するときに、回転数を制御することで、回転ドラム１内の洗濯物は、回転数を高くすると回転ドラム１内に張り付き、回転数を低くすると回転ドラム１内で洗濯物が回転しながらこすれあう。
【００３７】
回転ドラム１の回転数を高くすると、回転ドラム１内に洗濯物が張り付き、洗剤泡が洗濯物を通過して、より多くの洗濯物に高濃度の洗剤液をしみ込ませることができ、また、回転ドラム１の回転数を低くすると、回転ドラム１内で洗濯物がこすれあいながら回転して、洗剤泡がまんべんなく作用するとともに、油汚れや油に付着した粒子汚れを結合して持ち去りやすくすることができる。これにより、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができる。
【００３８】
（実施例５）
図１に示す制御手段２２は、回転ドラム１内の洗濯物が泡にまみれた状態で、回転ドラム１を正転、反転するようにしている。他の構成は上記実施例１〜４と同じである。
【００３９】
上記構成において洗濯行程における動作を説明する。回転ドラム１内に洗剤泡を供給して、洗濯物が泡にまみれた状態になったところで、回転ドラム１を正転、反転して、洗濯物に機械力を与える。
【００４０】
回転ドラム１内の洗濯物が泡でまみれた状態で洗濯物に機械力を作用するようにすることで、洗剤泡を洗濯物の汚れにまんべんなく接触しやすくできて、より多くの油汚れおよび油に付着した粒子汚れを結合して持ち去ることができ、また、より多くの洗濯物に高濃度の洗剤液がしみ込むことができる。これにより、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができる。
【００４１】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、洗濯行程にて、回転ドラムを連続回転させて回転ドラムと水受け槽間の洗濯液をかき混ぜることで洗剤泡を発生させ、その後、回転ドラムを回転ドラム内の洗濯物が張り付く程度の回転数で回転させて洗剤泡を回転ドラムの前面より回転ドラム内に溢れ出させることで回転ドラム内の洗濯物に洗剤泡をかけて洗濯するように構成したことにより、少ない洗濯液でも、回転ドラム内の洗濯物の汚れに洗剤成分を作用しやすくできるとともに、高濃度の洗濯液をしみ込みやすくできて、洗いむらを低減できるとともに洗浄力を向上することができ、洗濯時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明の第１の実施例のドラム式洗濯機のブロック回路図
【図２】 同ドラム式洗濯機の断面図
【図３】 洗剤分子をモデル的に表した図
【図４】 洗剤分子を水に溶かした状態を表したモデル図
【図５】 洗剤液中に気泡を通した場合のモデル図
【図６】 本発明の第２の実施例のドラム式洗濯機の断面図
【図７】 本発明の第４の実施例のドラム式洗濯機のブロック回路図
【図８】 従来のドラム式洗濯機の断面図
【図９】 同ドラム式洗濯機のブロック回路図
【符号の説明】
１ 回転ドラム
３ 水受け槽
５ モータ
１１ 給水弁（給水手段）
２２ 制御手段
Claims (4)
- 回転中心軸を略水平方向または前面が高い略斜め方向に有し水受け槽内に回転自在に配設した回転ドラムと、前記回転ドラムを駆動するモータと、前記水受け槽内に給水する給水手段と、前記モータの動作を制御し洗濯、すすぎ、脱水の各行程を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、洗濯行程にて、前記回転ドラムを連続回転させて前記回転ドラムと前記水受け槽間の洗濯液をかき混ぜることで洗剤泡を発生させ、その後、前記回転ドラムを前記回転ドラム内の洗濯物が張り付く程度の回転数で回転させて前記洗剤泡を前記回転ドラムの前面より前記回転ドラム内に溢れ出させることで前記回転ドラム内の前記洗濯物に洗剤泡をかけて洗濯するように構成したドラム式洗濯機。
- 制御手段は、洗剤泡を回転ドラムの前面より前記回転ドラム内に溢れ出させているときに、前記回転ドラムが、前記回転ドラム内に洗濯物が張り付く回転数で回転するようにした請求項１記載のドラム式洗濯機。
- 制御手段は、洗剤泡を回転ドラムの前面より前記回転ドラム内に溢れ出させているときに、前記回転ドラムが、前記回転ドラム内で前記洗濯物がこすれあいながら回転する回転数で回転するようにした請求項１記載のドラム式洗濯機。
- 制御手段は、洗剤泡を回転ドラムの前面より前記回転ドラム内に溢れ出させて洗濯物が泡にまみれた状態とした後、前記回転ドラムを正転、反転して前記洗濯物に機械力を与えるようにした請求項１〜３のいずれか１項に記載のドラム式洗濯機。
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