JP3810542B2 - ホワイトソース入りマヨネーズ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、グラタン、ドリアなどに使用されるベイク用ソースに関し、詳しくは、該ベイク用ソースとして用いる新規なホワイトソース入りマヨネーズに関する。
【0002】
【従来の技術】
グラタン、ドリアなどにトッピング或いはつなぎとして使用されるベイク用ソースとして、従来より、ルーに牛乳を加えて調製するホワイトソースをベースとするものが一般的に用いられている。
従来のベイク用ソースに新しい風味を与えるという観点から、マヨネーズにホワイトソースを配合したものをベイク用ソースとして用いるという試みがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、マヨネーズのような酸性の調味料に、牛乳を加えて調製するホワイトソースを配合すると、カゼインを主成分とする牛乳のタンパク質が酸凝固を起こすようになるためか、得られた配合物は1〜2日保存後にはざらつきが生じ、更に保存を続けると表面に油が遊離してくるのが認められるようになる。このような配合物を実際にグラタン、ドリアなどのベイク用ソースとして用いてみると、ベイクして得られるものは油が著しく分離して、所望するような外観、風味を有するものは得難いことがわかった。
【0004】
よって、本発明は、このような問題の生じ難い、即ち、長期(例えば、4ケ月以上)保存後であってもざらつきや油分離(遊離)などが生じ難く、製造時の品質をほぼ保持し得、このものをベイク用ソースとして用いた場合に所望する外観、風味を呈するグラタン、ドリアなどを提供し得るホワイトソース入りマヨネーズ食品を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的に即して種々検討を重ねたところ、ホワイトソース入りマヨネーズを製造するに際して、マヨネーズ食品の分野で従来乳化剤成分として用いられていた卵黄に代えて、或いはその一部に代えて、リゾ化処理した卵黄を用いると共に、更にペクチンを配合するならば、得られる製品は、長期(例えば、4ケ月以上)保存後であっても製造時の品質を実質的に維持し、ざらつきや油分離(遊離)が生じ難く、実際にベイク用ソースとして用いた場合に所望する外観、風味を有するベイクド製品を提供し得るものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、原料の一部として、リゾ化処理した卵黄とペクチンとを配合してなることを特徴とするホワイトソース入りマヨネーズを提供するものである。
なお、本発明において、%並びに割合(比)は特に規定した場合を除き、すべて重量基準である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のホワイトソース入りマヨネーズ:
本発明の対象食品は、ホワイトソース入りマヨネーズである。
ここにおいて、ホワイトソースとは、ルー、即ち、典型的には小麦粉を油脂(主としてバター)で炒めた炒め粉、に牛乳を加えて、必要に応じて調味して煮上げたソースを意味する。具体的には、小麦粉5〜120gをバター50〜100gで炒めたものに牛乳を加えてホワイトソース1リットルとしたものなどが例示できる。
【0008】
また、マヨネーズとは、食用植物油脂(典型的にはサラダ油)と食用有機酸(典型的には食酢)とのO/W型エマルジョンであって、卵黄により乳化されてなる、少なくとも3万cP(典型的には3万〜50万cP)の粘度を有する半固体状食品を意味する。具体的には、所定量の食酢、卵黄、調味料の混合物中に所定量のサラダ油を加えて粗乳化、仕上げ乳化して仕上げたものなどが例示できる。なお、本発明において、「マヨネーズ」なる用語には、上記したような従来の典型的なマヨネーズの他、マヨネーズを主体とし、更に、例えば、主として、デンプン粉または食用ガム等を配合したサラダドレッシング;固ゆで卵、たまねぎ、セロリ等を配合したタルタルソース;ピクルス等を配合したサンドイッチスプレッド等も包含される、と理解されるべきである。
【0009】
本発明の対象食品であるホワイトソース入りマヨネーズは、上記したようなマヨネーズを主体とし、これにホワイトソースを配合してなるものである。ここにおいて、ホワイトソースとマヨネーズとの配合割合は、特に限定されるものではないが、前者対後者が1:19〜1:1の範囲内にあるものが好ましい。このような配合割合のホワイトソース入りマヨネーズは通常pHが3.5〜4.5程度であるのが一般的である。
【0010】
本発明のホワイトソース入りマヨネーズは、原料の一部として、リゾ化処理した卵黄とペクチンとを配合してなるものである。
ここにおいて、「リゾ化処理した卵黄」とは、卵黄の主成分であるリポタンパク質(リン脂質とタンパク質との複合体)の構成リン脂質をリゾ化処理によりリゾリン脂質とした卵黄を意味する。具体的には、例えば、卵黄にリン脂質分解酵素であるホスホリパーゼA2 を作用させて加水分解し、リン脂質の2位の脂肪酸を遊離させて得られる卵黄をいう。この際、リン脂質のリゾリン脂質への変換率をリゾ化率という。即ち、変換前のリン脂質と変換後のリゾリン脂質との合計量に対する変換後のリゾリン脂質の重量百分率を、本発明において、リゾ化率という。
【0011】
本発明における「リゾ化処理した卵黄」は、少なくともリゾ化率5%、即ちリゾ化率5%以上の卵黄が好ましい。これより低いリゾ化率のものでは、後述するペクチンとの併用においても最終製品の製造時の品質は維持し難く、保存中におけるざらつきや油分離(遊離)の発生の防止効果は得難い。リゾ化率20%以上の、例えば40%、50%、55%の卵黄が好ましい。
【0012】
本発明において「リゾ化処理した卵黄」の配合割合は、最終製品の全重量に対して2〜8%程度が好ましい。2%より少ないと、後述するペクチンとの併用においても保存中のざらつき/油分離(遊離)発生の防止効果は得難くなる傾向があり、また8%より多くなると最終製品に苦味が感じられるようになる。リゾ化率の高いものは低いものに比べて、一般的に、配合割合は少なくてよい。
【0013】
本発明において、上記したようなリゾ化処理した卵黄と共に配合される「ペクチン」としては、天然物(例えば、レモンの皮、リンゴ、マツの形成層など)から抽出したペクチンの他、メトキシル基含量を高めたハイメトキシルペクチン(HMペクチン)やメトキシル基含量を低めたローメトキシルペクチン(LMペクチン)などが例示できる。
【0014】
本発明において「ペクチン」の配合割合は、最終製品の全重量に対して0.01〜0.5%程度が好ましい。0.01%より少なくなると、後述の試験例の結果からも明らかなように、リゾ化処理した卵黄との併用においても保存中の油分離(遊離)発生の防止効果は得難くなる傾向があり、また0.5%より多くなると保存後のものは食した際口溶けが悪くなる傾向があり、またこれを用いて製したベイクド製品はぼそぼそしたような食感を呈するようになる。
【0015】
本発明のホワイトソース入りマヨネーズは、マヨネーズ食品の分野で従来より乳化成分として用いられている卵黄に代えて、或いはその一部に代えて上記したようなリゾ化処理した卵黄を配合すると共に、上記したようなペクチンを配合してなるものであり、後述の試験例の結果から明らかなように、長期(例えば6ケ月)保存後であっても製造時の品質をほぼ維持し、ざらつきや油分離(遊離)が生じ難く、実際にベイク用ソースとして用いた場合に所望する外観、風味を有するベイクド製品を提供し得るものである。
【0016】
本発明のホワイトソース入りマヨネーズの製造方法:
本発明のホワイトソース入りマヨネーズの製造は、典型的には、予め調製しておいた或いは用意しておいたホワイトソースおよびリゾ化処理した卵黄を水相原料の一部として、またペクチンを通常油相原料の一部として用いる他は、すべて従来のマヨネーズの製造方法に準じて行えばよく、また、別法として、ホワイトソース以外は上記と同様に用いて製したマヨネーズに、別途用意しておいたホワイトソースを均一に混合することにより製造してもよい。
【0017】
(イ)ホワイトソースの調製
鍋でバターを溶かし、小麦粉を加えて炒めたルーに、加温した牛乳を加えて、必要に応じて塩、胡椒などの調味料や香味材料を加え、必要に応じて更に煮上げてホワイトソースとする。このように調製したものの他、市販されている冷凍或いは缶詰品を適宜用いてもよい。
【0018】
(ロ)卵黄のリゾ化処理
卵黄をニーダー等の加熱混練装置のタンクに投入し、50℃前後に加温後、市販のホスホリパーゼA2 を卵黄に対して0.01〜0.1%(10000IU/ml)添加し、加温・撹拌しながら酵素処理をして所望のリゾ化率のリゾ化処理卵黄を得る。
【0019】
(ハ)ペクチン
通常、市販品を用いる。ダマになり易いので使用に際して油相原料(例えばサラダ油)に分散させておくとよい。
【0020】
(ニ)ホワイトソース入りマヨネーズの製造
上記(イ)に準じて用意しておいたホワイトソース、(ロ)で得られたリゾ化処理した卵黄、並びにその他の、マヨネーズの一般的な水相原料、例えば食酢、清水、通常の卵黄または全卵液、食塩、砂糖、胡椒などを、所定量ミキサーに入れ、これらを撹拌しながら、上記(ハ)に準じて用意しておいた所定量のペクチンを分散させたサラダ油を添加して粗乳化する。次いでコロイドミル或いは高圧ホモゲナイザーなどの乳化機に移して仕上げ乳化を行ない、所望製品とする。
別法として、ホワイトソース以外は上記と同様に用いて製したマヨネーズに、上記(イ)に準じて用意しておいたホワイトソースを、所定割合で混合機に入れ、両者を均一に混合して所望製品としてもよい。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例および試験例でもって更に詳しく説明する。
実施例1
(1)ホワイトソースの調製
直火型の鍋でバター1,050gを溶かし、小麦粉900gを加えて炒めてルーをつくり、そのまま放置しておく。別途牛乳15リットルを加温し(沸かし)、このものを上記のルーに撹拌しながら徐々に添加してホワイトソースとする。こうして得られた15kgのホワイトソースを用い、下記の方法に準じて本発明のホワイトソース入りマヨネーズを製造した。
【0022】
(2)ホワイトソース入りマヨネーズの製造
(1)で得られたホワイトソース15kg、別途調製しておいたリゾ化率55%の卵黄2kg、食酢7kg、殺菌卵黄2kg、食塩1.5kg、上白糖2kg、胡椒0.05gおよび清水10kgをミキサーに入れ、これらを撹拌しながらペクチン0.1kgを分散させたサラダ油60kgを徐々に添加して粗乳化したのち、コロイドミルに移して仕上げ乳化をし、得られた本発明のホワイトソース入りマヨネーズ(ホワイトソース:マヨネーズ=1:5.6;リゾ化卵黄2%含有;ペクチン0.1%含有;pH4.3)を、チューブ容器にそれぞれ300gずつ充填し、250個の製品とした。
【0023】
(3)グラタンの製造
(2)で得られた製品を常温にて4ケ月保存後、ベイク用ソースとして実際に下記の方法に準じてグラタンの製造に用いた。なお、保存後の製品そのものは、ざらつき感も油の遊離も認められなかった。
一口大にカットし、蒸したかぼちゃ160gとじゃがいも160gを上記のソース60gで和え、グラタン皿に盛ったのち250℃のオーブンで常法に準じて焼き、かぼちゃとじゃがいものグラタンを製造した。
このグラタンを食してみたところソースはざらつき感はなく、また油の分離も認められず外観、風味とも良好であった。
【0024】
実施例2
(1)ホワイトソース入りマヨネーズの製造
上記実施例1の(1)で記載の方法に準じて調製したホワイトソース30kgと、リゾ化率25%の卵黄4kg用いた他はすべて上記実施例1の(2)の方法に準じて本発明のホワイトソース入りマヨネーズ(ホワイトソース:マヨネーズ=1:2.9;リゾ化卵黄3.4%含有;ペクチン0.09%含有;pH4.1)を製造し、チューブ容器にそれぞれ300gずつ充填し、285個の製品とした。
【0025】
(2)グラタンの製造
(1)で得られた製品を常温にて6ケ月保存後ベイク用ソースとして実際に下記の方法に準じてドリアの製造に用いた。なお、保存後の製品そのものは、ざらつき感も油の遊離も認められなかった。
バターライス(フライパンでバター10gを溶かし、みじん切り玉ねぎ30gを炒め、冷えたご飯110gを加えて更に炒めたもの)145gをグラタン皿にしき、その上に、ボイルしたのち4cm大にカットしたほうれん草50g、一口大にカットしたベーコン50gおよびしめじ50gを上記のソース80gで和えたものを載せたのち、250℃のオーブンで常法に準じて焼き、ほうれん草・ベーコン・きのこのドリアを製造した。
このドリアを食してみたところソースのざらつき感はなく、また油の分離も認められず外観、風味とも良好であった。
【0026】
試験例1
実施例1において、リゾ化卵黄を最終製品中の配合割合が0%、1%、1.5%、2%、5%、8%、8.5%、9%、12%となる量用い、清水で調整した他はすべて実施例1の(2)に準じてホワイトソース入りマヨネーズを9種類(いずれもペクチン0.1%含有;pH4.3)製造した。
これら9種類の製品(300g入りチューブ容器詰め品)を常温にて6ケ月保存後、それぞれ、(a)容器に入ったままの外観;(b)粘度;(c)風味に関して試験をし、また、ベイク用ソースとして実際にグラタンを製造し、得られたベイクド製品の(d)外観並びに(e)食感についてそれぞれ試験をした。
それらの結果を下表1に示す。
なお、本発明において粘度測定は、BH型粘度計(東京計器(株)製)を用い、いずれも下記の条件下で常法通りに行なった。
測定温度:20℃
ローター:NO.6
回転速度:2rpm
製造直後の粘度はいずれの製品とも3万〜30万cP程度で、ベイク用ソースとしての使用に適切であった。
【0027】
【表1】
【0028】
表1の結果から、リゾ化処理した卵黄とペクチンとを配合してなるホワイトソース入りマヨネーズは、6ケ月保存後に、リゾ化卵黄の含有率が8%を超えたものには苦味が感じられることはあっても、ざらつきや油分離(遊離)などが生じ難いことがわかる。また、いずれの試験に対してもリゾ化卵黄が2〜8%配合されたものが好ましいことがわかる。
【0029】
試験例2
上記試験例1の製品5(最終製品中のリゾ化卵黄の配合割合:5%)に関して、ペクチンを最終製品中の配合割合が0%、0.005%、0.01%、0.1%、0.3%、0.5%、0.55%、0.6%、1.0%となる量用い、清水で調整した他はすべて上記製品5の製法に準じて9種類のホワイトソース入りマヨネーズ(いずれもリゾ化卵黄5%含有;pH4.3)を製造した。
これら9種類の製品(300g入りチューブ容器詰め品)を常温にて6ケ月保存後、それぞれ、(a)容器に入ったままの外観;(b)粘度;(c)風味に関して試験をし、また、ベイク用ソースとして実際にグラタンを製造し、得られたベイクド製品の(d)外観並びに(e)食感についてそれぞれ試験をした。
それらの結果を下表2に示す。なお、製造直後の粘度はいずれの製品とも5万〜25万cP程度で、ベイク用ソースとしての使用に適切であった。
【0030】
【表2】
【0031】
表2の結果から、ペクチンの含有率が0.55%を超えたものに、口溶けが悪くなる傾向があり、またそのベイクド製品がぼそぼそした食感になる傾向があっても、リゾ化処理した卵黄とペクチンとを配合してなるホワイトソース入りマヨネーズは、ペクチンの配合割合がかなり低くても6ケ月保存後にざらつきや油分離が生じ難いことがわかる。また、いずれの試験に対してもペクチンが0.01〜0.5%配合されているものが好ましいことがわかる。
【0032】
【発明の効果】
本発明のホワイトソース入りマヨネーズは、グラタンやドリアなどの調理に際して、現場でホワイトソースとマヨネーズとを混ぜ合わせるという操作(手間)を全く必要とせず、直ちにベイク用ソースとして用い得、しかも6ケ月以上もの長期保存後であっても製造時の品質をほぼ維持していることから、保存後のものを用いても得られるベイクド製品は、ざらつきや油分離が認め難いものであり、所望する外観、風味を呈するものである。
よって、各種ベイキング料理に広く利用し得るものである。
Claims (6)
- 原料の一部として、リゾ化処理した卵黄とペクチンとを配合してなることを特徴とするホワイトソース入りマヨネーズ。
- ホワイトソースとマヨネーズとの割合が、重量基準で、1:19〜1:1である、請求項1に記載のホワイトソース入りマヨネーズ。
- リゾ化率5%以上リゾ化処理した卵黄が配合されている、請求項1または2に記載のホワイトソース入りマヨネーズ。
- リゾ化率20%以上リゾ化処理した卵黄が配合されている、請求項1または2に記載のホワイトソース入りマヨネーズ。
- リゾ化処理した卵黄が全重量の2〜8%配合されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のホワイトソース入りマヨネーズ。
- ペクチンが全重量の0.01〜0.5%配合されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のホワイトソース入りマヨネーズ。
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