JP3808974B2 - 中折れ式橋形クレーン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は中折れ式橋形クレーンに関するものであり、より具体的には、ガーダの先端部に倒伏位置と起立位置とに亘って上下回動自在に基端部を連結した基端ブーム部分と該基端ブーム部分の先端部に相対的に上下回動自在に基端部を連結した先端ブーム部分とからなるブームを具備する中折れ式橋形クレーンであって、特に、基端ブーム部分に設けた第1シーブと先端ブーム部分に設けた第2シーブとに掛け回された第1ロープ経路及び第2シーブとガーダ側に設けた第3シーブとに掛け回された第2ロープ経路を有する一定長の水平保持ロープにより、基端ブーム部分を倒伏位置及び起立位置に位置させたときにおいて、先端ブーム部分を水平状態に保持させるように構成された中折れ式橋形クレーンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の中折れ式橋形クレーンとしては、図10に示す如く、ガーダ9の先端部9aに倒伏位置(同図(A)位置)と起立位置(同図(B)位置)とに亘って上下回動自在に基端部11bを連結13した基端ブーム部分11と該基端ブーム部分11の先端部11aに相対的に上下回動自在に基端部12bを連結14した先端ブーム部分12とからなるブーム3を具備しており、基端ブーム部分11の先端部11aに設けた第1シーブ21と先端ブーム部分12の基端部12bに設けた第2シーブ22とに掛け回された第1ロープ経路241 及び第2シーブ22とガーダ9上に立設した支柱体10の上端部に設けた第3シーブ23とに掛け回された第2ロープ経路242 を有する一定長の水平保持ロープ24により、基端ブーム部分11を倒伏位置及び起立位置に位置させたときにおいて、先端ブーム部分12を水平状態に保持させるように構成されたもの(以下「従来クレーン」という)が知られている(例えば、特公昭44−22268号公報参照)。
【0003】
かかる従来クレーンにあって、荷役作業時においては、基端ブーム部分11を倒伏位置に位置させて、両ブーム部分11,12によりガーダ9から海上に水平に張り出す一連のブーム3を構成しておくが、かかる場合、支柱体10の上端部と各ブーム部分11,12との間に張設されたテンションバーによっても、各ブーム部分11,12の水平保持力が与えられる。一方、基端ブーム部分11を起立位置に位置させた場合には、テンションバーはブーム保持手段として全く機能せず、先端ブーム部分12は専ら水平保持ロープ24の張力のみによって水平保持されることになる。したがって、基端ブーム部分11を起立位置に位置させたときにおいて必要とされる水平保持ロープ24の張力(以下「必要ロープ張力」という)を基準として、水平保持ロープ24の選定,設計を行なうことが好ましい。
【0004】
ところで、近時、コンテナ船の大型化等に伴い中折れ式橋形クレーンの大型化傾向が著しく、ガーダ及びブームの長さ,高さ(地上からの高さをいう、以下同じ)が従前に比して極めて大きくなっている。一方、基端ブーム部分11を起立位置に位置させたときにおける先端ブーム部分12の高さは、航空機との接触回避等から一定以上に高くすることができず、一定の制限(以下「ブーム上限高さ」という)がある。このため、先端ブーム部分12の高さ(ブーム上限高さ)を決定する基端ブーム部分11の長さは、ガーダの高さが高くなっていることとも相俟って、大きく制限されることになり、その結果、クレーンの大型化に伴い、必然的に、先端ブーム部分12が長尺化し、その重量が増大する傾向にある。したがって、大型化の傾向にある近時の中折れ式橋形クレーンにあっては、必要ロープ張力が大幅に増大するといった問題があり、その解決が強く要請されているのが実情である。
【0005】
而して、従来クレーンにあっては、図10(B)に示す如く、基端ブーム部分11を起立位置に位置させたときにおける先端ブーム部分12が、基端ブーム部分11に対しては第1ロープ経路241 の張力pにより又ガーダ側(支柱体10)に対しては第2ロープ経路242 の張力qにより水平保持されることになる。ここで、先端ブーム部分12の重量つまり重心に作用する荷重をwとし、回動支点14から張力p,q及び荷重wの作用線までの垂直距離つまりモーメントの腕をh1 ,h2 ,h3 として、先端ブーム部分12の回動支点(両ブーム部分11,12の連結点)14回りにおけるモーメントの釣り合いを考えると、p,q,w間にはp・h1 +q・h2 =w・h3 の関係がある。そして、各ロープ経路241 ,242 におけるロープ掛け数をn1 ,n2 とすると、各ロープ経路241 ,242 を構成する各ロープ部分の張力tは同一であり、p=n1 ・t,q=n2 ・tであるから、先端ブーム部分12を水平保持するために必要とされる水平保持ロープ24の張力(必要ロープ張力)tはt=w・h3 /(n1 ・h1 +n2 ・h2 )となる。
【0006】
したがって、必要ロープ張力tを小さくしておくためには、張力p,qに対するモーメントの腕(以下「張力モーメントの腕」という)h1 ,h2 が大きくなるようにすればよい。なお、ロープ掛け数n1 ,n2 を増加することによっても必要ロープ張力tを小さくできるが、ロープ掛け数n1 ,n2 を必要以上に増加させると、水平保持ロープ24の屈曲数が多くなり、ロープ強度を大きく設定しておく必要があるため、必要ロープ張力tを小さくするための対策としては適当でない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来クレーンにおいては、図10(B)に示す如く、第1及び第2シーブ21,22が各ブーム部分11,12の端部11a,12bに設けられていて、先端ブーム部分12の回動支点14に近接する位置に位置しているため、張力モーメントの腕h1 ,h2 が小さく、必要ロープ張力tが先端ブーム部分12の長尺化,重量化に伴い頗る大きくなり、近時のクレーン大型化傾向に対処し難い。
【0008】
ところで、張力モーメントの腕h1 ,h2 はシーブ21,22,23の位置を変更することによって変化し、かかる位置を工夫することによって、張力モーメントの腕h1 ,h2 をより大きくすること、ひいては必要ロープ張力tをより小さくすることが可能であると考えられる。
【0009】
しかし、従来クレーンにおいては、張力モーメントの腕h1 ,h2 は、シーブ21,22,23を図10(B)に示す位置させたときが最大であり、シーブ21,22,23の位置を如何に工夫しても張力モーメントの腕h1 ,h2 をそれ以上大きくし得ない。
【0010】
すなわち、第1及び第3シーブ21,23の上下方向位置を図10(B)に示す位置より高くすれば、張力モーメントの腕h1 ,h2 をより大きくすることができるが、ブーム上限高さが高くなることから、このような手法はとることができない。また、第1シーブ21の水平方向位置を回動支点14から先端ブーム部分12の先端部方向に移動させる程、張力モーメントの腕h1 ,h2 は減少することになる。したがって、第1シーブ21の水平方向位置を先端ブーム部分12の後端部12bとしたときにおいて、張力モーメントの腕h1 ,h2 が最大となる。また、第2シーブ22も第1シーブ21と同様に、基端ブーム部分11の先端部11aに近付けておくことにより、張力モーメントの腕h1 ,h2 が大きくなる。また、第1及び第2シーブ21,22の相互位置関係は、両シーブ21,22間を結ぶ直線が回動支点14より下方に位置しないように設定しておく必要がある。当該直線が回動支点14より下方に位置すると、張力pによるモーメントが荷重wによるモーメントと同一方向に作用することになるからである。
【0011】
これらのことから、従来クレーンにあっては、結局、シーブ21,22,23を図10(B)に示す位置に位置させておくときに張力モーメントの腕h1 ,h2 が最大となる。したがって、必要ロープ張力tが先端ブーム部分12の長尺化,重量化に伴い大きくなるといった問題は、これを到底解決し得ない。
【0012】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、従来クレーンに比して必要ロープ張力を可及的に小さくすることができ、近時のクレーン大型化傾向に良好に対処することができる中折れ式橋形クレーンを提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の中折れ式橋形クレーンにあっては、上記の目的を達成すべく、特に、先端ブーム部分を、その基端部からガーダ方向に突出する延長部分を備えた形状に構成すると共に、基端ブーム部分に、その上下回動による起伏動作に伴って当該延長部分を干渉することなく出没させうる凹部を形成し、且つ第2シーブを当該延長部分に設けておくことを提案するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図9に基づいて具体的に説明する。
【0015】
この実施の形態における中折れ式橋形クレーン1は、図1に示す如く、クレーン本体2とブーム3と起伏装置4と水平保持装置5と荷役装置6とを具備する。なお、以下の説明においては、便宜上、前後とは図1における左右を意味するものとする。
【0016】
クレーン本体2は、図1に示す如く、岸壁7上に左右方向に走行自在に設置された架台8と、架台8の上端部に水平に支持されて前後方向に延びるガーダ9と、架台8の上端部に立設されてガーダ9の上方位へと延びる支柱体10とを具備する。
【0017】
ブーム3は、図1に示す如く、基端ブーム部分11と先端ブーム部分12とからなり、ガーダ9から海上へと張り出している。なお、ブーム3を構成する各ブーム部分11,12及びガーダ9は、周知のように、鉄骨構造をなす主構成部材とその上面に設けられた手摺り等の付属構成部材とからなるが、当該図面においては、便宜上、主構成部材のみを示し、付属構成部材については省略してある。以下の説明において、特に明示しない限り、ブーム3、各ブーム部分11,12及びガーダ9は主構成部材のみを意味するものとする。
【0018】
基端ブーム部分11は、図1〜図3に示す如く、その基端部たる後端部11bをガーダ9の先端部たる前端部9aに上下回動自在つまり起伏自在に連結13してあって、後述する起伏装置4により、ガーダ9に連なる水平な倒伏位置(図1実線位置、図2位置)とガーダ9の上方へと起立する起立位置(図1鎖線位置、図3位置)とに亘って起伏操作されるようになっている。また、先端ブーム部分12は、図1〜図3に示す如く、その基端部たる後端部12bを基端ブーム部分11の先端部たる前端部11aに相対的に上下回動自在につまり屈曲自在に連結14してあって、後述する水平保持装置5により、基端ブーム部分11を倒伏位置及び起立位置の何れに位置させたときにおいても水平状態に保持されるようになっている。なお、基端ブーム部分11の長さは、ガーダ9の高さ及び前記ブーム上限高さに応じて設定されており、先端ブーム部分12は基端ブーム部分11より長尺なものとされている。
【0019】
而して、先端ブーム部分12は、その後端部12bからガーダ方向つまり後方に突出する延長部分12cを備えた形状に構成されている。また、基端ブーム部分11には、その起伏動作に伴って当該延長部分12cを干渉することなく出没させうる凹部11cが形成されている。
【0020】
ところで、延長部分12cはブーム部分11,12の連結点14より後方に突出するものであるから、基端ブーム部分11の起伏動作時、特に基端ブーム部分11を倒伏位置に位置させたときにおいて、基端ブーム部分11に干渉する虞れがあるが、このような干渉は、基端ブーム部分11にその起伏動作に伴って延長部分12cが出没する凹部を設けておくことによって回避することができる。しかし、基端ブーム部分11にこのような凹部を格別に設けておくと、基端ブーム部分11の強度を低下させる虞れがある。他方、基端ブーム部分11は前述した如く鉄骨構造物であるから、必然的に、鉄骨材間等において大小様々な凹部が存在するものである。そこで、この実施の形態にあっては、鉄骨構造物である基端ブーム部分11に当然に存在する凹部の一部又は全部を、基端ブーム部分11を倒伏位置に位置させたときにおいて延長部分12cが没入する凹部11cとして利用することによって、上記した問題を解決している。すなわち、延長部分12cは、基端ブーム部分11の起伏動作に伴って、当該ブーム部分11にその構造上当然に存在する凹部11cに出没するような形状として、基端ブーム部分11との干渉を回避するように工夫されている。
【0021】
起伏装置4は、図1〜図3に示す如く、基端ブーム部分11の前端部11aの近傍位に設けたシーブ15と、支柱体10の上端部に設けたシーブ16と、支柱体10の後方に配してガーダ9上に設けた巻取りドラム17と、両シーブ15,16間から巻取りドラム17に至る起伏ロープ18と、基端ブーム部分11及び先端ブーム部分12と支柱体10の上端部との間に張設したテンションバー19,20とを具備して、起伏ロープ18を巻取りドラム17により巻取り操作して両シーブ15,16の間隔を伸縮変化させることにより、基端ブーム部分11を上記した倒伏位置と起立位置とに亘って起伏動作させるようになっている。また、各テンションバー19,20は屈曲自在な関節部19a,20aを有するもので、基端ブーム部分11を倒伏位置に位置させたときにおいて、各ブーム部分11,12を水平状態に支持すべく伸長し、基端ブーム部分11を起立位置へと回動させることによって、関節部19a,20aにより折り畳まれるようになっている。
【0022】
水平保持装置5は、図1〜図3に示す如く、基端ブーム部分11に設けた第1シーブ21と、先端ブーム部分12に設けた第2シーブ22と、ガーダ9側つまり支柱体10の上端部に設けた第3シーブ23と、第1シーブ21と第2シーブ22との間及び第2シーブ22と第3シーブ23との間に掛け回された一定長の水平保持ロープ24とを具備する。
【0023】
第1シーブ21は基端ブーム部分11の任意位置に設けることができるが、この例では、図1〜図3に示す如く、基端ブーム部分11の前後方向における略中央部に支持されている。第2シーブ22は、図1〜図3に示す如く、先端ブーム部分12の延長部分12cに支持されていて、回動支点14より後方に位置するように工夫されている。なお、第2シーブ22は、前述した付属構成部材も含む先端ブーム部分全体の上面から上方に突出しないように配置されている。
【0024】
水平保持ロープ24は、図5〜図7に例示する如く、第1及び第2シーブ21,22間に掛け回された第1ロープ経路241 と第2及び第3シーブ22,23間に掛け回された第2ロープ経路242 とを有するロープ掛け形態をなすものであり、その両端部をクレーン本体2に固定してある。各シーブ21,22,23の個数及びロープ端のクレーン本体2への固定手段は、ロープ掛け形態に応じて、任意に設定することができる。すなわち、図5に例示する第1ロープ掛け形態は、N(=1,2…)個の第1シーブ21とN+1個の第2シーブ22と2個の第3シーブ23とを設けて、水平保持ロープ24の中間部分を各第1シーブ21と第2シーブ22とに順次掛け回した上、一端部分を1番目の第2シーブ22から一方の第3シーブ23を経てクレーン本体2に固着24aすると共に他端部分をN+1番目の第2シーブ22から他方の第3シーブ23を経てクレーン本体2に固着24bしたものである。また、図6に例示する第2ロープ掛け形態では、第3シーブ23,23を経過した水平保持ロープ24の両端部を、クレーン本体2に直接固着せず、クレーン本体2に設けたシーブ23a,23aを介して相互に連結24cさせることにより、クレーン本体2に固定してある。その余の構成は、第1ロープ掛け形態と同一である。また、図7に例示する第3ロープ掛け形態は、第1ロープ掛け形態と第2ロープ掛け形態とを組み合わせたものである。なお、ロープ掛け数は、冒頭で述べた如く、必要以上に多くならないように配慮しておくことが望ましい。
【0025】
而して、各シーブ21,22,23の相互位置は、基端ブーム部分11の起立位置方向(又は倒伏位置方向)への回動変位に伴う第1ロープ経路241 のロープ伸長量(又は縮小量)と第2ロープ経路242 のロープ縮小量(又は伸長量)とが一致すること、及び基端ブーム部分11が倒伏位置及び起立位置に位置されたときにおいて先端ブーム部分12が第1及び第2ロープ経路241 ,242 の張力P,Q(図4参照)により水平状態に保持されることを条件として、適宜に設定することができる。
【0026】
荷役装置6は、図1及び図8に示す如く、基端ブーム部分11を倒伏位置に位置させたときにおいてブーム3及びガーダ9に形成される一連の水平レール(図示せず)上を所定の海上荷役位置(図1実線位置)と陸上荷役位置(同図二点鎖線位置)とに亘って走行するトロリ25と、トロリ25に昇降操作機構26を介して昇降可能に懸吊された吊具27と、ロープ受け機構28とを具備して、基端ブーム部分11を倒伏位置に位置させた状態で、トロリ25の走行と吊具27の昇降とを行なうことにより、コンテナ船29上と陸上との間でコンテナ30の移送を行なうようになっている。
【0027】
昇降操作機構26は、図8に示す如く、ガーダ9上に設けられた巻取りドラム31と、巻取りドラム31からガーダ9の基端部たる後端部9bに設けたシーブ32、トロリ25に設けたシーブ33及び吊具27に設けたシーブ34を経て先端ブーム部分12の先端部たる前端部12aに固着されたワイヤロープ35とを具備して、巻取りドラム31を操作することにより、トロリ25の位置に拘わらず、吊具27を昇降させるように構成されている。
【0028】
ロープ受け機構28は、基端ブーム部分11を起立位置に位置させたときにおいて先端ブーム部分12の前端部12aからトロリ25に至るワイヤロープ部分35aの垂れ下がりを防止するためのものであり、図9に示す如く、当該ワイヤロープ部分35aを保持する保持部36aを有し、トロリ25の前位に配して前記水平レールに走行自在に支持されたロープ受け体36と、一端部をガーダ9の後端部9bに固着すると共に他端部をロープ受け体36の後端部に設けたシーブ37を経てトロリ25の前端部に固着した第1ロープ38と、一端部を先端ブーム部分12の前端部12aに固着すると共に他端部をロープ受け体36の前端部に設けたシーブ39、先端ブーム部分12の前端部12aに設けたシーブ40、緊張機構41及びガーダ9の後端部9bに設けたシーブ42を経てトロリ25の後端部に固着した第2ロープ43とを具備する。而して、第1ロープ38におけるガーダ9への固着端からシーブ37に至るロープ部分とシーブ37からトロリ25に至るロープ部分と、第2ロープ43における先端ブーム部分12への固着部からシーブ39に至るロープ部分とシーブ39からシーブ40に至るロープ部分とは、相互に平行していて、トロリ25が走行すると、ロープ受け体36がトロリ走行方向と同一方向にトロリ走行量Lの1/2だけ追従走行せしめられるようになっている。また、トロリ25とロープ受け体36との位置関係は、図1に実線で示す如く、トロリ25が図1に実線で示す海上荷役位置に位置されたときにロープ受け体36が先端ブーム部分12から離脱することなく前端部12aの近傍位置(図1に実線で示す位置であり、以下「最前位置」という)に位置するように設定されている。ところで、先端ブーム部分12は、前述した如く、基端ブーム部分11より長尺なものとされていることから、トロリ25とロープ受け体36との位置関係を上記した如く設定しておけば、トロリ25をガーダ9の適当位置(図1に一点鎖線で示す位置であり、以下「起立時位置」という)に位置させておくことにより、ロープ受け体36を先端ブーム部分12の基端部12bに対応する位置(図1に一点鎖線で示す位置であり、以下「ロープ受け位置」という)に位置させておくことができる。すなわち、トロリ25が海上荷役位置から起立時位置まで走行したときの走行量L1 に対して、ロープ受け体36は最前位置からロープ受け位置までL1 /2だけ追従移動される(図1参照)。一方、先端ブーム部分12の全長は略L1 /2であり、基端ブーム部分11の全長はL1 /2より遙かに短いことから、海上荷役位置から起立時位置までの距離L1 は両ブーム部分11,12の全長合計より長くなる。その結果、起立時位置は必然的に基端ブーム部分11より後方となり、ガーダ9上に定められることになる。
【0029】
したがって、ロープ受け機構28によれば、トロリ25を起立時位置に位置させた状態で基端ブーム部分11を起立動作させると、トロリ25から先端ブーム部分12の前端部12aに至るワイヤロープ部分35aを、両ブーム部分11,12の屈曲部において、ロープ受け位置に位置するロープ受け体36の保持部36aによって保持させることができ、当該ワイヤロープ部分35aの垂れ下がりを良好に防止することができる。しかも、基端ブーム部分11の起立時にはトロリ25をガーダ9に支持させておくといった、中折れ式橋形クレーン1の基本的作業条件を満足する。
【0030】
以上のように構成された中折れ式橋形クレーン1にあっては、先端ブーム部分12を延長部分12cを有する形状となして、第2シーブ22を先端ブーム部分12の回動支点(両ブーム部分11,12の連結点)14より後方に位置させ得るように工夫したから、基端ブーム部分11を起立位置に位置させたときにおいて先端ブーム部分12を水平に保持させるために必要とされる水平保持ロープ24の張力(必要ロープ張力)Tを図10に示す従来クレーンに比して大幅に減じることができる。
【0031】
すなわち、基端ブーム部分11を起立位置に位置させたときにおいては、図4に示す如く、従来クレーンにおけると同様に、先端ブーム部分12が、基端ブーム部分11に対しては第1ロープ経路241 の張力Pにより又ガーダ9側(支柱体10)に対しては第2ロープ経路242 の張力Qにより水平保持されることになるが、回動支点14から張力P,Qの作用線までの垂直距離つまり張力モーメントの腕H1 ,H2 は、第2シーブ22を回動支点14より後方に位置させているため、従来クレーンにおける張力モーメントの腕h1 ,h2 より大きくなる。そして、このモーメントの腕H1 ,H2 は、基端ブーム部分11を起立位置に位置させた状態における第2シーブ22の水平位置を後方へ移動させるに従って、特に、第1シーブ21の位置より後方へ移動させるに従って、大きくなる。
【0032】
ところで、張力Pが先端ブーム部分12の水平保持力として作用するためには、つまり張力Pによるモーメントが先端ブーム部分12の自重Wによるモーメントと逆方向に作用するためには、張力Pの作用線が回動支点14より後方側を通過する必要がある。また、先端ブーム部分12が水平保持されるためには、少なくとも、基端ブーム部分11の起立位置方向への回動変位に伴って第1ロープ経路241 が伸長変化し、倒伏位置方向への回動変位に伴って第1ロープ経路241 が縮小変化する必要がある。しかし、これらの条件は、第2シーブ22が回動支点14の後方位に位置されている限り、第1及び第2シーブ21,22を如何なる位置に位置させておいても、満足される。したがって、第1及び第2シーブ21,22の位置を決定する上で、このような条件を考慮する必要はない。
【0033】
したがって、先端ブーム部分12の重量つまり重心に作用する荷重をW、その回動支点14に対するモーメントの腕をH3 、各ロープ経路241 ,242 におけるロープ掛け数をN1 ,N2 (例えば、図5又は図6に示すロープ掛け形態ではN1 =6,N2 =2であり、図7に示すロープ掛け形態ではN1 =12,N2 =4である)として得られる必要ロープ張力T(=W・H3 /(N1 ・H1 +N2 ・H2 )を、同一条件(W=w,H3 =h3 ,N1 =n1 ,N2 =n2 )下においては、従来クレーンにおける必要ロープ張力tに比して、大幅に小さくすることができる。その結果、先端ブーム部分12が長尺化,重量化されたときにも、水平保持ロープ24を必要以上に大径なものとする等の不都合を生じず、中折れ式クレーン1の大型化に良好に対処することができる。
【0034】
また、第2シーブ22を回動支点14の後方に位置させた場合にも、張力Qが基端ブーム部分11を起立位置に保持させるために必要な起伏ロープ18の張力Rを減じるように作用することになる。すなわち、図4に示す如く、ブーム全体の回動支点13(ガーダ9と基端ブーム部分11との連結点)に対する前記荷重Wのモーメントの腕をH4 、基端ブーム部分11の重量つまり重心に作用する荷重をW0 、この荷重W0 の回動支点13に対するモーメントの腕をH5 、張力Q,Rの回動支点13に対するモーメントの腕をH6 ,H7 として、回動支点13回りのモーメントの釣り合いを考えると、R=(W・H4 +W0 ・H5 −Q・H6 )/H7 となり、水平保持ロープ24の張力Qが起伏ロープ18に必要とされる張力Rを減ずるように作用することなる。したがって、第2シーブ22を回動支点14の後方に位置させることによって、起伏ロープ18に悪影響を及ぼすようなことはない。
【0035】
【発明の効果】
以上の説明から容易に理解されるように、本発明の中折れ式橋形クレーンは、先端ブーム部分をその基端部から突出する延長部分を有する特殊な形状に工夫し、この延長部分に第2シーブを設けることによって、第1及び第2ロープ経路の張力による両ブーム部分の連結点回りのモーメントを従来クレーンにおけるより大きくすることができるようにしたから、水平保持ロープに必要以上の張力を作用させる等の問題を生じることなく、先端ブーム部分が長尺化するクレーンの大型化に充分に対処することができ、その実用的価値極めて大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る中折れ式橋形クレーンの一例を示す側面図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す倒伏状態の詳細図である。
【図3】図1の要部を拡大して示す起立状態の詳細図である。
【図4】ブーム部分に作用する張力と荷重との関係を示す図3相当の作用説明図である。
【図5】水平保持ロープのロープ掛け形態を示す斜視図である。
【図6】図5と異なるロープ掛け形態を示す図5相当の斜視図である。
【図7】図5及び図6と異なるロープ掛け形態を示す図5相当の斜視図である。
【図8】荷役装置を示す概略側面図である。
【図9】ロープ受け装置を示す概略側面図である。
【図10】従来クレーンを示す要部の側面図である。
【符号の説明】
1…中折れ式橋形クレーン、3…ブーム、9…ガーダ、9a…ガーダの先端部、10…支柱体、11…基端ブーム部分、11a…基端ブーム部分の先端部、11b…基端ブーム部分の基端部、11c…凹部、12…先端ブーム部分、12b…先端ブーム部分の基端部、12c…延長部分、21…第1シーブ、22…第2シーブ、23…第3シーブ、24…水平保持ロープ、241 …第1ロープ経路、242 …第2ロープ経路。

Claims (1)

  1. ガーダの先端部に倒伏位置と起立位置とに亘って上下回動自在に基端部を連結した基端ブーム部分と該基端ブーム部分の先端部に相対的に上下回動自在に基端部を連結した先端ブーム部分とからなるブームを具備しており、基端ブーム部分に設けた第1シーブと先端ブーム部分に設けた第2シーブとに掛け回された第1ロープ経路及び第2シーブとガーダ側に設けた第3シーブとに掛け回された第2ロープ経路を有する一定長の水平保持ロープにより、基端ブーム部分を倒伏位置及び起立位置に位置させたときにおいて、先端ブーム部分を水平状態に保持させるように構成された中折れ式橋形クレーンにおいて、
    先端ブーム部分を、その基端部からガーダ方向に突出する延長部分を備えた形状に構成すると共に、
    基端ブーム部分に、その上下回動による起伏動作に伴って当該延長部分を干渉することなく出没させうる凹部を形成し、
    且つ前記第2シーブを当該延長部分に設けたことを特徴とする中折れ式橋形クレーン。
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