JP3808759B2 - モータのアーマチャ及びモータシャフトの製造装置 - Google Patents

モータのアーマチャ及びモータシャフトの製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータのアーマチャ及びモータシャフトの製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、直流モータにおけるアーマチャは、回転軸(モータシャフト)と、コイルを巻装したコアと、整流子(コンミテータ)を備えており、回転軸にはコア及び整流子が一体的に固定されている。回転軸に整流子を固定する具体な方法として、回転軸の外周面にその軸方向に長いセレーション突条(回止突起)を形成し、そのセレーション突条に整流子を圧入することにより行う方法がある(例えば、特開2001−136709号公報)。
【0003】
上記のようなセレーション突条(回止突起)は、回転軸の外周面に凹溝を形成し、溝形成時の塑性変形によってその部位の肉を外周面から突出させることにより形成している。より具体的には、図9に示すように、90°の角部を有する一対のパンチ41,42を用いて回転軸43の上下から挟持加圧し、図10に示すように、回転軸43の外周面に凹溝44を形成する。この凹溝44の形成(溝加工)時の塑性変形によって回転軸43の外周面から盛り上がる突起45がセレーション突条となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来技術の場合、回転軸43の外周面に形成される凹溝44は、90°の角を有する断面形状となり、外周面から突出する突起45は、その高さが低くなだらかな形状となる。そのため、回転軸43と整流子との固定強度を十分に確保することができなかった。固定強度を確保するためには、軸方向への圧入長さ(突起45の軸方向の長さ)を長くする方法が考えられるが、その場合には整流子へのダメージが問題となってしまう。つまり、整流子の圧入部位は樹脂にて形成されており、圧入長さを長くするとその樹脂部分にヒビ割れが発生する確率が高くなる。
【0005】
そこで、従来では、回転軸43と整流子との固定部分に接着剤などを使用することで、所定の固定強度を確保するようにしていた。しかし、接着剤を用いる場合、作業が煩雑となり、接着剤の管理及び取り扱いなど、コスト高の原因となってしまう。また、この凹溝44を形成するパンチ41,42は90°の角部を有するので、図10に示すように、加圧方向(パンチ41の進行方向)に対して垂直な平面で回転軸43の外周面を加圧することとなる。そのため、凹溝形成の際の抵抗が大きく、より大きな加圧力が必要となり、凹溝形成のための装置は比較的大型のものが必要となるといった問題をも有していた。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は製造コストを低減することができるモータのアーマチャ及びモータシャフトの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、モータシャフトと、前記モータシャフトに固定され、樹脂製の絶縁体とその外周面に複数配置されたセグメントとからなる整流子と、を備えたモータのアーマチャにおいて、前記モータシャフトには、その軸方向に長手でかつその外周面から内径側に鋭角に食込む断面楔状の凹溝と、該凹溝を形成することによって前記凹溝の周方向に隣接して前記外周面から突出形成される回止突起とが設けられ、前記凹溝は、前記モータシャフトの軸線を通る基準平面に略平行な第1面と該第1面に対して径方向外側に位置し鋭角を成す第2面とを有する1対の第1凹溝群と、前記基準平面に垂直な平面に対し前記第1凹溝群と対称な第2凹溝群とを有してなり、前記モータシャフトの前記回止突起に前記整流子を外嵌して圧入固定した。
【0009】
請求項に記載の発明は、モータシャフトと、前記モータシャフトに固定され、樹脂製の絶縁体とその外周面に複数配置されたセグメントとからなる整流子と、を備えたモータのアーマチャにおいて、前記モータシャフトには、その軸方向に長手でかつその外周面から内径側に鋭角に食込む断面楔状の凹溝と、該凹溝を形成することによって前記凹溝の周方向に隣接して前記外周面から突出形成される回止突起とが設けられ、前記凹溝は、前記モータシャフトの軸線を通る基準平面に略平行な第1面と、前記第1面に対して径方向外側に位置して鋭角を成す第2面とを有し、前記第2面を含む平面は、前記モータシャフトの軸線を含んで構成され、前記モータシャフトの前記回止突起に前記整流子を外嵌して圧入固定した
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のモータのアーマチャにおいて、前記回止突起は、その高さが前記整流子の圧入方向に向けて高くなるようテーパ状に形成されている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、外周面に回止突起が突出形成され、該回止突起に整流子が外嵌して圧入固定されるモータシャフトの製造装置であって、前記モータシャフトをその軸線を通る基準平面に平行となる方向であってかつ前記基準平面に垂直な平面に対して垂直な方向に加圧して軸方向に長手でかつ外周面から内径側に鋭角に食込む断面楔状の凹溝を形成するパンチを備え、前記パンチには、前記モータシャフトへの加圧方向と平行な平行面と、該平行面に対しモータシャフトの径方向外側に鋭角を成して傾斜する傾斜面とを有する凹溝形成爪が形成され、前記パンチを用いて前記モータシャフトに断面楔状の凹溝を形成することにより、該凹溝の周方向に隣接して前記回止突起を突出形成する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のモータシャフトの製造装置において、前記パンチは、2つに分割され、前記モータシャフトをその軸線を通る基準平面に平行となる方向であってかつ前記基準平面に垂直な平面に対して垂直な方向に挟持加圧して前記断面楔状の凹溝を複数形成する分割パンチであり、前記分割パンチの各々には、前記平行面と前記傾斜面とを有する一対の凹溝形成爪が形成されている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のモータシャフトの製造装置において、前記分割パンチのそれぞれ一対の凹溝形成爪は、前記平行面に対する前記傾斜面の角度を全て同一とした。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれか1項に記載のモータシャフトの製造装置において、前記傾斜面は、前記凹溝形成爪が前記モータシャフトの外周面に接触する接触点における接線に対し略垂直な面である。
【0014】
(作用)
請求項1〜3に記載の発明によれば、モータシャフトには、プレス機のパンチなどを用いて外周面から内径側に鋭角に食込む凹溝が形成されている。この凹溝の形成に際して、その凹溝形成部位の肉が径方向に突出し、凹溝の周方向に隣接して回止突起が形成される。この場合、凹溝の断面形状が鋭角の楔状であるため、その凹溝の形成時にシャフト外周面から突出形成される回止突起は、従来技術と比較して鋭い形状となる。従って、整流子をモータシャフトの回止突起に外嵌して圧入固定するとき、その鋭い回止突起が整流子の樹脂部分に食込み、小さな加圧力で整流子の圧入を行うことができる。しかも、回止突起は、その高さが比較的高くても整流子の樹脂(絶縁体)に食い込む体積は少ないため、整流子が割れにくくかつ固定強度特に、モータシャフトと整流子とが相対回転する方向への固定強度を高めることができる。
【0015】
請求項に記載の発明によれば、モータシャフトの外周面において、凹溝及び回止突起がバランスの取れた位置に形成されるので、そのシャフトに整流子を圧入固定することにより、回転方向に安定した固定強度を得ることができる。
【0016】
請求項に記載の発明によれば、第2面を含む平面がモータシャフトの軸線を含むよう凹溝が形成されるため、回止突起が回転軸の径方向外方に向けて突出形成される。
請求項3に記載の発明によれば、整流子の圧入時における圧入負荷を分散することができるので実用上好ましいものとなる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、パンチには、モータシャフトへの加圧方向と平行な平行面と、該平行面に対しモータシャフトの径方向外側に鋭角を成して傾斜する傾斜面とを有する凹溝形成爪が形成されている。このパンチを用いて断面楔状の凹溝を形成する場合、凹溝の形成部位の肉が傾斜面に沿ってシャフトの径方向外側に逃げ、それにより回止突起が突出形成される。よって、外周面から鋭く突出した回止突起を形成することができる。また、凹溝形成爪が鋭角であるので、凹溝形成時に必要となる加圧力を抑えることができ、製造装置の小型化を図ることが可能となる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、2つに分割された分割パンチの各々には、一対の凹溝形成爪が形成されており、その分割パンチを用いモータシャフトをその軸線を通る基準平面に平行となる方向であってかつ前記基準平面に垂直な平面に対して垂直な方向に挟持加圧することにより、凹溝(回止突起)が複数形成される。この場合、1回のパンチ加工により複数の凹溝を同時に形成することができる。よって、複数回のパンチ加工により複数の凹溝を形成する製造装置と比較して、製造コストを抑制できる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、平行面に対する傾斜面の角度、つまり、各凹溝形成爪の角度を全て同一としたので、モータシャフトに形成される各回止突起が同一形状となり、該モータシャフトと整流子の固定をバランスの良いモータシャフト周りの固定強度で圧入固定できる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、回止突起の突出方向が回転軸の径方向に一致するため、深さが小さい凹溝を形成する場合でも、高く鋭い回止突起を形成することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。
【0022】
図1は、本実施形態における直流モータ1の要部断面図である。直流モータ1において、ハウジング2の内周面には、複数のマグネット3が固着されている。このマグネット3の内側には、電機子(アーマチャ)4が回転可能に支持されている。同電機子4は、回転軸(モータシャフト)5、コア6、整流子(コンミテータ)7等を備えている。
【0023】
ハウジング2には軸受8が設けられており、同軸受8を介して回転軸5が回転可能に支持されている。また、コア6は、回転軸5の中間部(マグネット3に対向する部位)に配置固定され、同コア6には巻線(電機子コイル)9が巻装されている。さらに、回転軸5の一端側(図1の右側)には、整流子7が回転軸5と一体回転可能に固定されており、同整流子7には、ハウジング2に保持されたブラシ10が押圧接触される。このブラシ10及び整流子7を介してコア6の巻線9に電流を供給することにより、アーマチャ4が回転する。
【0024】
図2に示すように、整流子7は、略円筒形状の絶縁体12と、その絶縁体12の外周に複数配置される整流子片(セグメント)13とを備えている。絶縁体12は、熱硬化性樹脂(具体的には、レゾール樹脂)からなり、その中央には回転軸5を挿入するための軸挿通孔12aが設けられている。
【0025】
セグメント13は、絶縁体12の外周面に対応して円弧状に形成され、セグメント13の一方端(図2の左側)には結線爪13aが形成されている。結線爪13aは、その基端部分(付け根部分)が折り曲げられセグメント13の外側に配設されている。この結線爪13aにコア6からのびる巻線9を固着することにより、同巻線9が整流子7(セグメント13)に電気的に接続される。また、セグメント13の内周面中央には、その両端部から中央部側へと切り起こされ、さらに同中央部側に折り曲げられた2つの中爪(カール爪)13bが形成されている。この中爪13bは、セグメント13の中央部において絶縁体12を保持するための部位であり、セグメント13が絶縁体12から剥落するのを防止する役割を果たしている。
【0026】
また、回転軸5の外周面において、整流子7を外嵌する部位には、軸方向に長手でかつ断面楔状の凹溝15が形成されている。本実施形態では、4つの凹溝15が回転軸5の周方向に所定の間隔をおいて形成されており、それら凹溝15の周方向に隣接して回止突起16が形成されている。この回止突起16は、前記凹溝15を形成することによって回転軸5の外周面から突出形成される。そして、図2において、右側から整流子7(絶縁体12の軸挿通孔12a)を回転軸5に外嵌し回止突起16に圧入することで整流子7が回転軸5に固定される。
【0027】
電機子4の回転時において、整流子7にはブラシ10が摺接するためその接触抵抗に対応する所定のトルクが加わるが、上記のように、整流子7を回転軸5の回止突起16に圧入固定することにより、整流子7に加わるトルクに抗する固定強度が確保される。なお、本実施形態では、外径(回転突起16の高さを含む)が約8mmである回転軸5を用いており、整流子7に加わるトルクを考慮して、圧入代(=回転軸5の外径−整流子7の軸挿通孔12aの内径)が0.05〜0.12mmとなるよう設定している。また、圧入長さ(回止突起16の軸方向の長さ)は約7mmとしている。
【0028】
本実施形態において、回転軸5における4つの凹溝15及び回止突起16は、製造装置としてのプレス加工機を用いた塑性加工により形成される。
詳述すると、プレス加工機は、図3に示すように、上側パンチ21及び下側パンチ22とからなる分割パンチ23を備えている。上側パンチ21及び下側パンチ22は、互いに同一形状をなし、回転軸5を挟んで対向配置されている。このプレス加工機では、加工対象となる回転軸5をホルダ(図示略)により所定位置に固定した後、図3(a),(b)に示すように上側パンチ21と下側パンチ22とで挟持加圧して4つの凹溝15を形成している。つまり、上側パンチ21は回転軸5の上方から下方に向けて加圧し、下側パンチ22は回転軸5の下方から上方に向けて加圧する。また、上側パンチ21及び下側パンチ22の加圧方向が回転軸5の軸線と平行となるよう回転軸5及び各パンチ21,22の各位置が設定されている。
【0029】
上側パンチ21及び下側パンチ22は、回転軸5の軸線を通る基準平面(紙面直交方向の平面)P1を中心に左右対称の形状であり、それぞれ一対の凹溝形成爪24を有している。この凹溝形成爪24は、図4に示すように、回転軸5への加圧方向(パンチ21,22の進入方向)と平行な平行面24aと、該平行面24aに対し回転軸5の径方向外側に鋭角(具体的には、70°)を成して傾斜する傾斜面24bとを有する。
【0030】
これら上側パンチ21及び下側パンチ22の凹溝形成爪24によって回転軸5の外周面を挟持加圧することで、凹溝形成爪24の当接部位が塑性変形する。これにより、回転軸5の外周面には、内径側に鋭角に食込む断面楔状の凹溝15が形成される。この凹溝15は、凹溝形成爪24の形状(平行面24a及び傾斜面24b)に対応した形状となり、基準平面P1に略平行な第1面15aと、該第1面15aに対して回転軸5の径方向外側に位置し鋭角(=70°)を成す第2面15bとを有する。
【0031】
また、凹溝15の形成時には、その形成部位の肉は傾斜面24bに沿って径方向外側に逃げ、外周面から突出する。これによって、凹溝15の周方向(図4では、時計回り方向)に隣接して回止突起16が突出形成される。このように、上側パンチ21及び下側パンチ22を用いて回転軸5の外周面に凹溝加工を施すことで、従来技術と比較して鋭く突出した回止突起16が形成される。
【0032】
なお、図3及び図4に示す凹溝形成爪24は、紙面直交方向(回転軸5の軸方向)に所定長さ(具体的には、7mm)を有しており、この凹溝形成爪24の長さに対応して、凹溝15及び回止突起16は回転軸5の軸方向に7mmの長さで形成される。また、図3(a)に示すように、各パンチ21,22における一対の凹溝形成爪24の間隔(一方の凹溝形成爪24の平行面24aと他方の凹溝形成爪24の平行面24aとの間隔)Wは、6mm程度としている。この間隔Wは、回転軸5の外周面に対する凹溝形成爪24の進入角度と、回転軸5における凹溝15の形成位置とを考慮して設定されている。なお、凹溝形成爪24の進入角度とは、回転軸5の外周面と凹溝形成爪24との接点における接線と凹溝形成爪24の平行面24aとの成す角である。
【0033】
ここで、凹溝形成爪24の間隔Wが狭いと、凹溝形成爪24の進入角度が大きくなり圧入時の負荷が増す。また、間隔Wが広いと、凹溝15が形成される位置のバランスが悪くなる。好ましくは、図5に示すように、上側パンチ21の各凹溝形成爪24の回転軸外周面と接触する2つの接触点Aと回転軸5の軸線Oとの成す角度αが100°で、上側パンチ21と下側パンチ22の基準平面P1に対し同一側にある各凹溝形成爪24の回転軸外周面と接触する2つの接触点Aと回転軸5の軸線Oとの成す角度βが80°となるよう間隔Wを設定するとよい。よって、本実施形態では、直径が8mmである回転軸5に対して、凹溝形成爪24の間隔Wを6mmとすることで、圧入負荷(プレス加工機の加圧力)を抑えかつ凹溝15をバランスよく形成するようにしている。
【0034】
また、本実施形態において、上側パンチ21の一対の凹溝形成爪24により形成される2つの凹溝15が第1凹溝群を構成し、下側パンチ22の一対の凹溝形成爪24により形成される2つの凹溝15が第2凹溝群を構成している。これら第1凹溝群と第2凹溝群とにおける各凹溝15は、基準平面P1に垂直な垂直面P2に対して対称となるよう設けられている。つまり、各凹溝15(回止突起16)は、回転軸5の外周面においてバランスの取れた位置に配設されている。
【0035】
以上詳述したように本実施の形態は、以下の特徴を有する。
(1)回転軸5の外周面から鋭く突出した回止突起16を形成したので、その回止突起16に整流子7を圧入固定するとき、鋭い回止突起16が整流子7の絶縁体12に食込み、小さな加圧力で整流子7の圧入を行うことができる。しかも、回止突起16は、その高さが比較的高くても整流子7の絶縁体12に食い込む体積は少ないため、整流子7が割れにくくかつ固定強度特に、回転軸5と整流子7とが相対回転する方向への固定強度を高めることができる。よって、従来技術のように接着剤を用いることなく固定強度を十分に確保でき、アーマチャ4の製造コストを低減することができる。
【0036】
(2)上側パンチ21及び下側パンチ22の各々には、一対の凹溝形成爪24が形成されており、それらパンチ21,22を用い回転軸5をその軸線に平行に挟持加圧することにより、4つの凹溝15(回止突起16)が同時に形成される。この場合、複数回のパンチ加工により4つの凹溝15(回止突起16)を形成する場合と比較して、製造コストを抑制できる。
【0037】
また、図3(b)に示すように、回転軸5において、4つの回止突起16のうちの半分は、凹溝15の時計回り方向側に凸設され、残りの半分は、凹溝15の反時計回り方向側に凸設されている。よって、アーマチャ4(回転軸)が時計回り方向または反時計回り方向のいずれに回転する場合にも、同じ固定強度を確保できるので、実用上好ましいものとなる。
【0038】
(3)回転軸5の外周面にバランスよく形成した4つの回止突起16に整流子7を圧入固定することにより、回転軸5の回転方向に対して安定した固定強度を得ることができる。
【0039】
(4)凹溝形成爪24が鋭角(=70°)であるので、従来技術と比べ凹溝形成時に必要となる加圧力を抑えることができる。従って、プレス加工機において、加圧力を発生させるアクチュエータやパンチ21,23に加圧力を伝達する部材等を小さくすることができ、加工機の小型化が可能となる。
【0040】
(5)各凹溝形成爪24の角度(平行面24aに対する傾斜面24bの角度)を全て同一の角度(=70°)としたので、各回止突起16が同一形状となり、回転軸5と整流子7の固定をバランスの良い回転軸周りの固定強度で固定することができる。
【0041】
(6)整流子7を構成する絶縁体12の樹脂材料として、レゾール樹脂を使用した。このレゾール樹脂は、他の樹脂材料であるノボラック樹脂と比較して伸び率が大きいので、本実施形態にように、レゾール樹脂を用いることにより、整流子7の圧入時におけるヒビ割れを防止することができる。
【0042】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同様の構成については、その詳細な説明及び図面を省略する。
【0043】
図6及び図7に示すように、本実施形態における上側パンチ31及び下側パンチ32(分割パンチ33)は、上記第1実施形態のパンチ21,22よりも鋭角な凹溝形成爪34を有する。具体的には、図7に示すように、回転軸5の外周面に4つの凹溝を等間隔(90°間隔)で形成する場合、凹溝形成爪34における平行面34aと傾斜面34bとの成す角は45°である。この凹溝形成爪34の平行面34aは、加圧方向と平行に設けられ、凹溝形成爪34の傾斜面34bは、回転軸5の外周面と接触する接点Aでの接線L1に対して垂直となるよう配設されている。つまり、図6に示すように、上側パンチ31及び下側パンチ32が回転軸5を挟持する状態では、各凹溝形成爪34の傾斜面34bは、接点Aと回転軸5の中心Oとを結ぶ線(図7における接線L1の法線L2)上に配置される。
【0044】
これらパンチ31,32を用いて回転軸5の外周面を挟持加圧することで、図8に示すように凹溝35が形成される。この凹溝35の加工時において、凹溝形成部位の肉は傾斜面34bに沿って回転軸5の径方向外側に逃げ、回止突起36が突出形成される。
【0045】
本実施形態によれば、回止突起36の突出方向(肉の盛り上がり方向)が回転軸5の径方向に一致するため、回止突起36を効率よく形成することができる。つまり、凹溝35の深さの比較的小さい場合にも、高く鋭い回止突起36を形成することができる。また、凹溝形成爪34が上記第1実施形態の凹溝形成爪24よりも鋭角であるので、凹溝形成時のパンチ31,32の加圧力をより低減することができ、加工機を小型化できる。
【0046】
なお、上記以外に次の形態にて具体化できる。
・上記実施形態におけるプレス加工機は、上側パンチ21,31と下側パンチ22,32とに分割された分割パンチ23,33を備え、各パンチ21,22,31,32には一対の凹溝形成爪34が形成されるものであったが、これに限るものではない。例えば、上側パンチ21,31と下側パンチ22,32のいずれか一方のみを用いて回転軸5を加圧する構成としてもよい。要は、回転軸5への加圧方向と平行な平行面と、該平行面に対し回転軸5の径方向外側に鋭角を成して傾斜する傾斜面とを有する凹溝形成爪が少なくとも1つ形成されたパンチを備えるものであればよい。但し、凹溝形成爪が1つであるパンチを用いて、回転軸5に複数(上記実施形態では4個)の凹溝15,35を加工する場合には、複数回(4回)のパンチ加工が必要となるので、上記実施形態のように分割パンチ23,33を用いた方がより容易に回転軸5の溝加工を行うことができる。
【0047】
また、上記各実施形態では、回転軸5の外周面に4個の凹溝15,35(回止突起16,36)を形成するものであったが、凹溝15,35の個数に限定されるものではない。但し、溝数が少ないと、十分な固定強度が確保できず、また、溝数を必要以上に増やすと、圧入時における整流子7のヒビ割れが懸念される。よって、上記実施形態のように、4個の凹溝15,35を形成すれば、整流子7のヒビ割れがなく固定強度を確保することができるので、実用上好ましいものとなる。
【0048】
・上記第2実施形態において、凹溝形成爪34の平行面34aと傾斜面34bとの成す角を45°としたが、これに限定されず、接点Aの位置を図7の紙面右方向、すなわち間隔Wを広げる方向に移動させることにより、回転軸5の軸線Oと接点Aとを結ぶ直線L2方向へ回止突起36を形成しながらも凹溝形成爪34の平行面34aと傾斜面34bとの成す角を大きくできる。これにより、凹溝形成爪34の爪先の強度が向上する。
【0049】
・回転軸5に突出形成する回止突起16,36は、その高さが整流子7の圧入方向に向けて(図2では回止突起16における右端から左端に向けて)徐々に高くなるようテーパ状に形成してもよい。なおこの場合、パンチ21,22,31,32における凹溝形成爪24,34は、軸方向(図3及び図6では紙面直交方向)に傾斜するように配設する。このようにすれば、整流子7の圧入時における圧入負荷を分散することができるので実用上好ましいものとなる。
【0050】
上記実施形態から把握できる技術思想をその効果とともに記載する。
(イ)前記整流子の絶縁体の樹脂材料として、レゾール樹脂を使用したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のモータのアーマチャ。レゾール樹脂は、他の樹脂材料であるノボラック樹脂と比較して伸び率が大きいので、レゾール樹脂を用いることにより、圧入時のヒビ割れを防止することができる。
【0051】
(ロ)前記パンチには、前記平行面と前記傾斜面とを有する一対の凹溝形成爪が形成されたことを特徴とする請求項4に記載のモータシャフトの製造装置。このようにすれば、一対の凹溝形成爪によって、2つの凹溝(回止突起)を同時に形成することができる。
【0052】
(ハ)前記一対の凹溝形成爪は、前記モータシャフトの軸線を通る基準平面を中心に対称となるよう配設されることを特徴とする請求項5に記載のモータシャフトの製造装置。このようにすれば、モータシャフトの外周面にバランスよく回止突起を形成することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、モータシャフトに形成された鋭い回止突起が整流子の樹脂に食込み固定強度が十分に確保されるので、アーマチャの製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態における直流モータの概略構成を示す断面図。
【図2】 整流子及び回転軸の構成を説明するための部分断面図。
【図3】 第1実施形態のパンチによる回転軸の溝加工を説明するための説明図。
【図4】 第1実施形態の凹溝及び回止突起の形状を説明するための説明図。
【図5】 パンチにおける凹溝形成爪の間隔を説明するための説明図。
【図6】 第2実施形態のパンチによる溝加工を説明するための説明図。
【図7】 図6のパンチと回転軸との当接部位の拡大図。
【図8】 第2実施形態の凹溝及び回止突起の形状を説明するための説明図。
【図9】 従来のパンチによる溝加工を説明するための説明図。
【図10】 従来の凹溝及び突起の形状を説明するための説明図。
【符号の説明】
1…直流モータ、4…アーマチャ、5…モータシャフトとしての回転軸、7…整流子、12…絶縁体、13…セグメント、15…凹溝、16…回止突起、21…上側パンチ、22…下側パンチ、23…分割パンチ、24…凹溝形成爪、24a…平行面、24b…傾斜面、31…上側パンチ、32…下側パンチ、33…分割パンチ、34…凹溝形成爪、34a…平行面、34b…傾斜面、35…凹溝、36…回止突起、A…接点、L1…接線、P1…基準平面、P2…垂直面。

Claims (7)

  1. モータシャフトと、
    前記モータシャフトに固定され、樹脂製の絶縁体とその外周面に複数配置されたセグメントとからなる整流子と、
    を備えたモータのアーマチャにおいて、
    前記モータシャフトには、その軸方向に長手でかつその外周面から内径側に鋭角に食込む断面楔状の凹溝と、該凹溝を形成することによって前記凹溝の周方向に隣接して前記外周面から突出形成される回止突起とが設けられ、
    前記凹溝は、前記モータシャフトの軸線を通る基準平面に略平行な第1面と該第1面に対して径方向外側に位置し鋭角を成す第2面とを有する1対の第1凹溝群と、前記基準平面に垂直な平面に対し前記第1凹溝群と対称な第2凹溝群とを有してなり、
    前記モータシャフトの前記回止突起に前記整流子を外嵌して圧入固定したことを特徴とするモータのアーマチャ。
  2. モータシャフトと、
    前記モータシャフトに固定され、樹脂製の絶縁体とその外周面に複数配置されたセグメントとからなる整流子と、
    を備えたモータのアーマチャにおいて、
    前記モータシャフトには、その軸方向に長手でかつその外周面から内径側に鋭角に食込む断面楔状の凹溝と、該凹溝を形成することによって前記凹溝の周方向に隣接して前記外周面から突出形成される回止突起とが設けられ、
    前記凹溝は、前記モータシャフトの軸線を通る基準平面に略平行な第1面と、前記第1面に対して径方向外側に位置して鋭角を成す第2面とを有し、前記第2面を含む平面は、前記モータシャフトの軸線を含んで構成され、
    前記モータシャフトの前記回止突起に前記整流子を外嵌して圧入固定したことを特徴とするモータのアーマチャ。
  3. 請求項1または請求項2に記載のモータのアーマチャにおいて、
    前記回止突起は、その高さが前記整流子の圧入方向に向けて高くなるようテーパ状に形成されていることを特徴とするモータのアーマチャ。
  4. 外周面に回止突起が突出形成され、該回止突起に整流子が外嵌して圧入固定されるモータシャフトの製造装置であって、
    前記モータシャフトをその軸線を通る基準平面に平行となる方向であってかつ前記基準平面に垂直な平面に対して垂直な方向に加圧して軸方向に長手でかつ外周面から内径側に鋭角に食込む断面楔状の凹溝を形成するパンチを備え、
    前記パンチには、前記モータシャフトへの加圧方向と平行な平行面と、該平行面に対しモータシャフトの径方向外側に鋭角を成して傾斜する傾斜面とを有する凹溝形成爪が形成され、
    前記パンチを用いて前記モータシャフトに断面楔状の凹溝を形成することにより、該凹溝の周方向に隣接して前記回止突起を突出形成することを特徴とするモータシャフトの製造装置。
  5. 請求項4に記載のモータシャフトの製造装置において、
    前記パンチは、2つに分割され、前記モータシャフトをその軸線を通る基準平面に平行となる方向であってかつ前記基準平面に垂直な平面に対して垂直な方向に挟持加圧して前記断面楔状の凹溝を複数形成する分割パンチであり、
    前記分割パンチの各々には、前記平行面と前記傾斜面とを有する一対の凹溝形成爪が形成されたことを特徴とするモータシャフトの製造装置。
  6. 請求項5に記載のモータシャフトの製造装置において、
    前記分割パンチのそれぞれ一対の凹溝形成爪は、前記平行面に対する前記傾斜面の角度を全て同一としたことを特徴とするモータシャフトの製造装置。
  7. 請求項4〜6のいずれか1項に記載のモータシャフトの製造装置において、
    前記傾斜面は、前記凹溝形成爪が前記モータシャフトの外周面に接触する接触点における接線に対し略垂直な面であることを特徴とするモータシャフトの製造装置。
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