JP3805997B2 - 固定具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄骨材に木材等を固定するための固定具に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築構造において、鉄骨材からなる梁材や柱材に木材からなる軸組材や下地材を固定する場合、従来は、図4に示すようにして、鉄骨材の平坦部(この例ではH形鋼1のフランジ11)に木材2をあてがうとともに、フランジ11に形成した取付穴12に反対側から合板片3をあてがって、合板片3の側から取付穴12を利用して木材2にビス4を打ち込んでいた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の固定方法は、木材2と合板片3との間にフランジ11の取付穴12を挟み込んでビス4を打ち込むため、ビス止め時に木材2や合板片3が取付穴12からずれたりして、木材2をフランジ11に対して精度良く位置決めするのが困難であった。また、ビス4を打つときに取付穴12が見えないので、ビス4を打つべき位置を正確に定めにくかった。さらに、ビス4を打ちやすくするにはフランジ11の取付穴12を幾分大きめに形成する必要があるため、ビス止めした木材2にフランジ11の面方向の衝撃が加わると、木材2がフランジ11の面方向に沿ってずれてしまうことがあった。
【0004】
本発明は係る不都合を解決するためになされたもので、ビス止め時に木材を鉄骨材に対して精度良く位置決めすることができ、かつ鉄骨材と木材とを強固に固定しうる、作業性に優れた固定具を提供することを解決課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の固定具は、鉄骨材の平坦部に形成した取付穴に当該平坦部の両側から取り付けられて互いに結合される合成樹脂性のナット部材とボルト部材とからなり、ナット部材は、外径が前記平坦部の取付穴に嵌め込み可能で、かつ高さが前記平坦部の厚み以下に形成された外形円柱状のナット筒部と、このナット筒部の一端に形成された外形多角形状のナット頭部とを備え、前記ナット筒部及びナット頭部にはそれらの軸心を貫通する雌ネジ穴が形成される一方、ボルト部材は、外径が前記平坦部の取付穴よりも大きい外形略円板状または略円柱状の基板部と、この基板部の軸心から基板部の一方に突出する雄ネジ部と、この基板部から前記雄ネジ部の反対側に直立するように形成された略平板状の木材取付板とを備えることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、鉄骨材の平坦部に形成した取付穴にナット部材のナット筒部を嵌め込み、鉄骨材の反対側からナット部材の雌ネジ穴にボルト部材の雄ネジ部を結合して締め付けることで、固定具を鉄骨材の平坦部に取り付けることができる。ナット筒部の外径を鉄骨材の取付穴にほぼ等しくすれば、互いに結合したナット部材及びボルト部材は、鉄骨材に対してずれることなく保持される。こうして鉄骨材に取り付けられたボルト部材の木材取付板に木材をビス止めすることにより、木材を精度良く、かつ強固に固定することができる。
【0007】
この発明において、ボルト部材の基板部の軸心に対し、木材取付板は偏心して形成されていてもよい。この構成によれば、木材を位置決めする際の基準となる木材取付板の固定位置が、ボルト部材の回転状態によって二通りに変化するので、固定する木材のサイズに合わせて木材取付板の固定位置を任意に選択することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0009】
図1は、本発明の固定具5を示している。この固定具5は、互いに結合可能な合成樹脂性のナット部材6とボルト部材7とから構成され、鉄骨材の平坦部(この例ではH形鋼1のフランジ11)に形成した取付穴12にフランジ11の両側から取り付けられて一体に結合するようになっている。
【0010】
ナット部材6は、外形円柱状のナット筒部61と、ナット筒部61の一端に形成された外形多角形状(この例では六角柱状)のナット頭部62とを備えている。ナット筒部61は、外径がフランジ11の取付穴12にちょうど嵌まり込む大きさで、高さがフランジ11の厚みと同じか、それよりもわずかに小さく形成されている。ナット頭部62は、ナット筒部61よりもひと回り大きく、ナット筒部61と軸心を一致させて一体に形成されている。ナット筒部61及びナット頭部62の軸心には、両者を貫通する雌ネジ穴63が形成されている。
【0011】
ボルト部材7は、外形が円板状または平らな円柱状の基板部71と、基板部71の軸心から基板部71の一方に突出する雄ネジ部72と、基板部71から雄ネジ部72の反対側に直立するように形成された略平板状の木材取付板73とを備えている。基板部71は、フランジ11の取付穴12の内径よりも大きい外径を有し、雄ネジ部72側の底面は平坦に形成されている。雄ネジ部72は、前記ナット部材6の雌ネジ穴63に螺合可能であり、その長さは、フランジ11の厚みにナット部材6の高さを加えた寸法とほぼ同じか、それよりもやや長くなるように形成されている。
【0012】
木材取付板73は、基板部71とほぼ同じ幅で基板部71から立ち上がるように一体成形されているが、この実施の形態では、木材取付板73が基板部71の軸心に対してやや偏心した位置に形成されている。そのため、基板部71における木材取付板73側の底面は、木材取付板73を挟んで一方が狭く、他方が広くなっている。また、この実施の形態では、基板部71における木材取付板73側の底面には、半円形または略扇形の凹部74が数カ所形成されている。これらの凹部74は、成形時の樹脂の収縮を逃がして成形精度を高めるためのものである。
【0013】
この固定具5は、フランジ11に形成した取付穴12にナット部材6のナット筒部61を嵌め込み、フランジ11の反対側からナット部材6の雌ネジ穴63にボルト部材7の雄ネジ部72をねじ込んで締め付けることにより結合される。ナット部材6とボルト部材7とを結合するに際しては、ボルト部材7の木材取付板73をH形鋼1の材軸と平行になるように保持して、ナット部材6をスパナ等で締め付ける。これにより、ナット部材6の頭部とボルト部材7の基板部71との間にフランジ11が強固に挟み込まれるとともに、ナット部材6のナット筒部61がフランジ11の取付穴12内に拘束されて、フランジ11の面方向に対してもずれることなく保持される。
【0014】
図2〜図3は、この固定具5を利用した木材の固定形態を示す。
【0015】
図2に示した形態では、ボルト部材7の基板部71における狭いほうの底面をフランジ11の縁部側に向けて、この狭いほうの底面に合板21を載せ、合板21を木材取付板73にビス止めしている。図3に示した形態では、ボルト部材7の基板部71における広いほうの底面をフランジ11の縁部側に向けて、この広いほうの底面に角棒状の桟木22を載せ、桟木22を木材取付板73にビス止めしている。
【0016】
これらいずれの形態においても、木材を木材取付板73に合わせて精度良く位置決めすることができる。また、木材側から木材取付板73に向けてビス81,82を打ち込むことができるとともに、ビス81,82を打ち込む位置も木材取付板73の大きさだけの自由度があるので、ビス止め作業が容易であり、かつ木材を強固に固定することができる。
【0017】
そして、ボルト部材7における木材取付板73を基板部71に対して偏心させることにより、木材の種類やサイズに合わせて木材取付板73の固定位置を二通りに変化させることができる。
【0018】
さらにこの固定具5は、前記実施の形態とは上下を反対にして、あるいは横向きにして使用することも可能である。したがって、鉄骨材に取付穴12が形成可能で、かつ木材のビス止めが可能な位置であれば、前記したH形鋼1のフランジ11だけでなく、C形鋼のフランジやI形鋼のウェブなど、他の断面形状を有する鉄骨材の平坦部にも幅広く使用することができる。また、木材取付板73には、木材に限らず、ビス止めの可能な軽量鉄骨部材等を同様にして固定してもよい。
【0019】
なお、この固定具5を形成する合成樹脂の材質については特に限定されないが、ボルト部材7には、ビス止めに対する強度の安定性の点でABS樹脂が比較的好ましい。一方、ナット部材6にはナイロンが好適である。また、ボルト部材7とナット部材6とを異種の材質にしたほうが、締め付け時に強固に結合される。
【0020】
【発明の効果】
本発明の固定具は、互いに結合可能なナット部材とボルト部材とからなり、これらを鉄骨材の平坦部に形成した取付穴の両側から締め付けて鉄骨材に取り付けるようになっている。ボルト部材には木材取付板が形成されているので、この木材取付板に木材をビス止めすることにより、木材を簡単に、かつ精度良く位置決めして固定することができる。この固定具は鉄骨材の取付穴に嵌め込まれて、ずれることなく保持されるので、この固定具を介して固定された木材も、衝撃によってずれたりすることなく、適正な位置に強固に保持される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る固定具の斜視図である。
【図2】前記固定具を利用した木材の固定形態の一例を示す断面図である。
【図3】前記固定具を利用した木材の固定形態の他の例を示す断面図である。
【図4】従来の木材の固定方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 H形鋼(鉄骨材)
11 フランジ(平坦部)
12 取付穴
21 合板(木材)
22 桟木(木材)
5 固定具
6 ナット部材
61 ナット筒部
62 ナット頭部
63 雌ネジ穴
7 ボルト部材
71 基板部
72 雄ネジ部
73 木材取付板
Claims (2)
- 鉄骨材の平坦部に形成した取付穴に当該平坦部の両側から取り付けられて互いに結合される合成樹脂性のナット部材とボルト部材とからなり、
ナット部材は、外径が前記平坦部の取付穴に嵌め込み可能で、かつ高さが前記平坦部の厚み以下に形成された外形円柱状のナット筒部と、このナット筒部の一端に形成された外形多角形状のナット頭部とを備え、前記ナット筒部及びナット頭部にはそれらの軸心を貫通する雌ネジ穴が形成される一方、
ボルト部材は、外径が前記平坦部の取付穴よりも大きい外形略円板状または略円柱状の基板部と、この基板部の軸心から基板部の一方に突出する雄ネジ部と、この基板部から前記雄ネジ部の反対側に直立するように形成された略平板状の木材取付板とを備えることを特徴とする固定具。 - ボルト部材の基板部の軸心に対し、木材取付板が偏心して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の固定具。
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- 2001-05-22 JP JP2001152179A patent/JP3805997B2/ja not_active Expired - Fee Related
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