JP3805729B2 - フットカバーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フットカバーの製造方法、さらに詳しくは、主としてパンプス等の開口部の大きい靴類、その他スリッポン、スニーカー等の靴類の内側に着用するフットカバーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にパンプス等の靴を女性が履く場合、冬場等では冷えの防止のためのみならず、靴の着脱時に滑りを良くする意味でもストッキングが着用されるが、夏場では汗や蒸れ等で着用者に不快感を与えるため、素足でパンプスを履く場合がある。
【0003】
これは、スニーカー等と異なり、パンプスのように開口部の大きい靴の場合、短い靴下を着用すると足の甲側に靴下が裸出するので体裁が悪く、そのために素足でパンプスを履くことが一種のファッションとして定着した感もある。
【0004】
ところが、現実には素足で靴を着用すること自体、不快感を免れることはできない。従って、パンプスを履く場合には、夏場であってもストッキングを着用する女性もいる。そして、素足でパンプスを履くかストッキングを着用するかは、着用する女性の判断によるが、いずれにしても満足な状態で判断されているわけではない。
【0005】
そこでこのような点に鑑み、最近ではパンプスのような開口部の大きい靴であっても、足の甲の部分に裸出せず、体裁を損なうことがないようなフットカバーが使用されつつある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このようなフットカバーは、パンプスのような開口部の大きい靴であっても、足の甲の部分に裸出しないように形成されているため、全体の形状が底浅型であり、歩行中に不用意に脱げるおそれがある。
【0007】
このような問題を解決するために、特開平6−220703号や、特開平10−292206号のような出願もなされているが、これらの特許出願は、滑り止め或いは摩擦付与等の手段を設けて上記のような問題を解決しようとしたものであり、根本的に上記問題を解決するには至っていない。
【0008】
そして、これは上記のようなフットカバーの製造方法に起因している。すなわち、上記従来のフットカバーは、一般の靴下を製造する場合と同様に、自動丸編靴下編機によって、ソール部(足底部)及びインステップ部(足甲部)からなるフート部を編成するとともにヒール部及びトウ部をそれぞれ編成して靴下の形態に縫製したものを、足の甲の部分に開口部が形成されるように裁断して製造されている。
【0009】
このようにフート部、ヒール部、トウ部を編成して靴下状の形態とした後に裁断して製造されるため、その製造後のフットカバーは、裁断された端縁が開口部の端縁とされた形態となる。この場合、裁断すべき位置は容易に設定できるわけではないので、パンプスを履いた際に足の甲の部分に裸出しないようなラインとなり、しかも歩行時に不用意に脱げることのないようなラインとなるように、開口部の端縁のラインを合致させることは困難となっていた。
【0010】
ちなみに、フート部においては、ソール部(足底部)とインステップ部(足甲部)とを色柄を変えて縫製する等により、その境界部分を切断する目印部分とすることもできないこともないが、トウ部やヒール部においては、目印となる部分を設定することは不可能であり、その結果、特にトウ部では、パンプス等を履いた際に開口部から足の甲の部分に裸出しないように且つ歩行時に不用意に脱げないように開口部端縁のラインを設定するのが非常に困難となっていた。
【0011】
また、靴下状の形態とされたものを裁断する工程が必要となるため、全体として製造が煩雑となっていた。
【0012】
さらに、トウ部では孔のあいた部分を縫合して靴下状の形態とした後に裁断するので、上記縫合した縫い目がどうしても残存することとなり、その分履き心地が悪くなるという問題点があった。
【0013】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、足の甲の部分に裸出せず外観体裁を維持できるというこの種のフットカバーの利点を維持しつつ、且つ歩行中に不用意に脱げるおそれのなく、しかも製造が簡易で履き心地のよいフットカバーを提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、編糸を掛止する針(9)がシリンダ(8)に円周状に配設され、且つ該シリンダ(8)の円周状に配設された多数の針(9)のうち、1/5〜2/5の針は糸を掛止するための掛止部が欠損され、3/5〜4/5の針は糸を掛止するための掛止部が残存して形成された自動丸編靴下編機の前記シリンダ(8)を交互に正方向及び逆方向に回転させながら、上部に開口部(5)を形成しつつ、ヒール部(2)、トウ部(3)、及び該ヒール部(2)とトウ部(3)間のソール部(4)を連続的に編成して製造することを特徴とする。
【0016】
トウ部におけるゴアラインよりも先端側Gの生地の編みコース数が、トウ部におけるゴアラインよりも後端側Fの生地の編みコース数に比べて少なくなるように編成することも可能であり、特に、女性のパンプス等の靴の内側に着用するフットカバーの場合には、パンプスからはみ出ないようにするためにも、このように編成するのが望ましい。
【0017】
また、ソール部4は、開口部の端縁をほぼまっすぐに形成するために、目減らし及び目増しなしの状態で編成されることが望ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面に従って説明する。
【0020】
図1乃至図3において、1 は全体が略船形に形成されたフットカバー本体で、後端側のヒール部2(かかと部)と、先端側のトウ部3(爪先部)と、該ヒール部2及びトウ部3間のソール部4(足底部)とで構成されている。フットカバー本体1は綿、ポリアミド系合成繊維、ポリウレタン繊維で構成されている。
【0021】
そして、フットカバー本体1の上面には開口部5が形成されている。この開口部5の開口端縁は、非裁断状態に形成されたものである。そして、その開口部5の開口端縁のうち、トウ部3における開口端縁はフットカバー本体1の編成コース目に沿うラインを有して形成され、ソール部4における開口端縁はフットカバー本体1の編成コース目と交差する方向のラインを有して形成されている。また、開口部5の開口端縁は、ゴム装着のための縫製がされている。
【0022】
このフットカバー本体1のヒール部2、ソール部4、トウ部3は、糸を掛止する掛止部(フック部)を有するべら針が円周状の全周に配設された自動丸編靴下編機のシリンダを交互に正方向及び逆方向に回転させながら連続的に編成されている。
【0023】
次に、上記のような構成からなるフットカバー7の製造方法の実施形態について説明する。
【0024】
本実施形態のフットカバー7を製造するに際しては、一般の自動丸編靴下編機の一部を改良したもの、すなわち図4及び図5に示すようなシリンダ8の円周状全周に、図6に示すように、上端にフック部10を有するとともに下端にバット部11を有する針9(ベラ針)を200本配設した自動丸編靴下編機を改良したものが用いられる。この針9は、シリンダ8の溝部12内に挿入されるものである。
【0025】
本実施形態では、配設された200 本の針のうち、140 本の針については一般のベラ針と同様にフック部10及びバット部11を有するものであるが、この140 本の針のうちの両端の針に隣接するそれぞれ2本分(計4本)についてはフック部10もバット部11もない。すなわち針自体がシリンダの溝に存在していない。
【0026】
さらに残りの56本の針については、バット部11は存在するが、フック部10が欠損しているものである。そして、フック部10が欠損している針のバット部11は長いものであり、フック部10を有する上記140 本の針のバット部11は短いものである。
【0027】
一般の靴下の製造機においては、円周状全周に配設された針のすべてのフック部に糸が掛止される結果、ヒール部やトウ部はシリンダを交互に正方向及び逆方向に回転させながら編成され、ソール部及びインステップ部(足甲部)からなるフート部(足部)は、シリンダを正方向に回転させながら編成されることで、全周に生地が存在する靴下が製造されることになる。
【0028】
しかし、本実施形態では、60本の針のフック部が欠損されているので、そのフック部が欠損した針は糸を編成せず、従って、140 本の針のみが編成に寄与し、しかもシリンダが正逆方向に交互に回転するので、図1乃至3に示すように足の甲部に編み生地がない状態のフットカバー本体1が編成されることとなるのである。
ここで、フック部が欠損された60本の針のうち、フック部10を有する140 本の針の両端の針に隣接するそれぞれ2本分(計4本)についてバット部11も欠損させているのは、後述のように、針下げピッカーによって2本の針下げを行うべきところ、1本の針下げしか行われないようにするためである。
また、その反面、残りの56本についてフック部10を欠損させているにもかかわらず、長いバット部11を残存させているのは、この長いバット部11は針下げピッカーが不用意に上昇するのを規制しており、長いバット部11が存在しないと、針下げピッカーが不用意に上昇して非編成レベルにある短いバット部11を編成レベルに下げるおそれがあり、その場合、その短いバット部11を有する針によって不用意に編成がなされるおそれがあるからである。
【0029】
しかも、本実施形態では、ヒール部2及びトウ部3のみならず、その間のソール部4も、上記シリンダ8を交互に正方向及び逆方向に回転させながら編成されるので、ヒール部2、ソール部4、トウ部3が連続的に編成されることとなる。
【0030】
ここで、シリンダ8の下部には、一般の自動丸編靴下編機の場合と同様に、カム等が具備されており、そのシリンダ8の回転に伴い、カムに沿って針9が図7(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)のように順次上下動し、糸13をループ状に順次結着していくことによって、編成が行われるのである。尚、カムとしては、図8に示すように、センターカム17や左度山カム20、右度山カム21が用いられている。
【0031】
本実施形態のフットカバー7の製造方法を説明するに際し、その説明の便宜上、先ず自動丸編靴下編機による一般的な靴下の製造方法、特に本実施形態に関連するヒール部及びトウ部の製造工程を説明する(靴下工学:日本靴下工業組合連合会編集,日本靴下協会発行1979年10月20日発行,P110〜113 )。
【0032】
一般に、自動丸編靴下編機による靴下の製造工程においてヒール部とトウ部とが編成される場合には、図9(イ)に示すようにシリンダの半周部分14(シリンダのキー溝のある部分とは反対側)にある針、すなわち長いバット部を有する針をセンター・カム17に上げて非編成状態とし、残る半周部分15の短いバット部を有する部分の針によってシリンダの正逆往復回転により、針上げピッカー19及び針下げピッカー24による目減らしや目増やしを行ないながら、ヒール部とトウ部とが編成される。
【0033】
針上げピッカー19及び針下げピッカー24によって目減らしや目増やしをした境目のラインをゴア・ラインと呼び、このゴア・ラインの目数を針の上げ下げの数という。針上げピッカー19及び針下げピッカー24は、図10や図11に示すようにシリンダ8に近接して配置されている。
【0034】
ヒール部とトウ部の編成時、シリンダの回転が正回転から、正逆往復回転に切り替えられるが、この際、長いバット部を有する針9aは、図12に示すように上げスイッチ・カム16によって非編成状態の位置に上げられる。これは、図13に示すように、上げスイッチ・カム16がシリンダ面に対し短いバット部を有する針9bを通過させ、長いバット部を有する針9aのみ係止し、作用させてセンター・カム17の上面の位置(レベル)に上げるからである。
【0035】
ヒール部とトウ部を編成する順序として、先ず短いバット部を有する針9bがすべて編成に寄与するが、シリンダ8の正逆往復回転に伴って、針上げピッカーにより短いバット部を有する針9bを左右交互に長いバット部を有する針9aと同じレベルに上げ、短いバット部を有する針9bによる編成範囲15を図9(ロ)のように狭くする(目減らし作用)。
【0036】
図9(ロ)の状態から、針下げを作用させて再び編成範囲15を図9(ハ)のように広げ(目増し作用)、ヒール部及びトウ部の編成を終了する。
【0037】
針上げピッカーはシリンダ8が正逆の往復回転中、左右両回転に対し、1回転毎に編成レベルの針を上部の非編成レベル(センター・カム17の上面)に上げ、目減らしの機能を果たす。針上げピッカー19は、図14に示すように、左度山カム20及び右度山カム21の凹部22,23 に入り、図15に示すように1本目の針のバット11に押されることによって、針上げピッカー19自体が針のバット11の1枚を保持し、図14の矢印イに示すように斜面を滑ってセンター・カム17の上部レベルに運ぶものである。
【0038】
針下げピッカー24は、図16に示すように針のバット11を2枚ずつ保持し、シリンダ8の正逆往復回転中、左右両回転に対し1回転ごとに休止レベル(センター・カム17の上面)の針を、図17に示すように各2本ずつ編成レベルに下げ、目増やしの機能を果たす。尚、図16及び図17において、25はレベリングカムを示す。
【0039】
針上げ、すなわち目減らしの工程では針が編成に寄与しないように、針上げピッカーにて針各1本ずつ、休止レベル(編成しない状態)に上げて目減らしとなるが、針下げすなわち目増やしの工程では針上げにより1本ずつ休止レベルに上げながら、針下げにて針を各2本ずつ編成レベルに下げるため、差し引き各1本ずつの目増やしができることになる。(靴下工学:日本靴下工業組合連合会編集,日本靴下協会発行1979年10月20日発行,P110〜113 )
【0040】
以上は、一般の靴下の製造方法であるが、本実施形態では、針上げピッカーを用いた目減らしや、針下げピッカーを用いた目増やしを調整して行いつつ、上記のような靴下の製造方法に準じてフットカバー本体1のヒール部2、トウ部3、ソール部4を編成した。
【0041】
そして、本実施形態では、ヒール部2側から編成し始め、次にソール部4を編成し、さらにトウ部3を編成する。図18に示すA部乃至G部に応じて説明する。尚、図18において、28,29は、ヒール部2及びトウ部3の上部にそれぞれ設けられた捨糸部である。ヒール部2及びトウ部3においては、開口部の端縁が編み目に沿っているので、巻き込みがおこる、すなわち端縁における生地がカールするおそれがあり、ゴム付け縫製が困難になるため、上記のような捨糸部28,29 を保持してゴム付け縫製を容易にしたものである。この、捨糸部28,29 は、シリンダ8を正方向にのみ回転させて編成される。
【0042】
先ず、ヒール部2のA部においては、針上げピッカーによって1本の針上げにより目減らしを行って編成する。
次に、ヒール部2のB部においては、針上げピッカーによって1本の針上げにより目減らしを行うとともに、針下げピッカーによって2本の鍼下げにより目増やしを行い、差し引き1本の目増やしがなされる。
【0043】
次に、ヒール部2のC部においては、A部と同様に編成する。
次に、ヒール部2のD部においては、B部と同様に編成する。
【0044】
次に、ソール部4(E部)においては、針上げピッカーによって1本の針上げにより目減らしを行うとともに、針下げピッカーによって1本の鍼下げにより目増やしを行うが、シリンダの円周状全周に配設された200 本の針のうち、フック部10及びバット部11を有する140 本の針の両端の針に隣接する2本分については、フック部10もバット部11も存在しないため、本来針下げピッカーによって2本の鍼下げが行われるべきところ、1本の鍼下げしか行われない。この結果、目減らしも目増やしも行われないこととなる。
【0045】
次に、トウ部3のF部においては、A部と同様に編成する。
さらに、トウ部3のG部においては、針上げピッカーによって1本の針上げにより目減らしを行うとともに、針下げピッカーによって2本の鍼下げにより目増やしを行うが、このときは、針上げピッカーによる針上げが規制される。
【0046】
すなわち、この場合にはワイヤーを針上げピッカーに接続し、そのワイヤーに張力を作用させて針上げピッカーを非作動位置に上げれば、針上げピッカーによる針上げが行われないので、目減らしが行われなくなる。この結果、針下げ2本分の目増やしが行われたことになる。
【0047】
以上のようにしてフットカバー本体1の編成が終了するが、本実施形態では、中央のソール部4が、針上げ1本、針下げ1本で目減らしも目増やしもなしという変則的な編成方法で編成されているので、ヒール部2やトウ部3のように編成が進むにつれて湾曲するようなことがなく、上端縁はほぼまっすぐな状態で編成されることとなる。
【0048】
しかも、シリンダ8の円周状全周に配設された200 本の針のうち、フック部10及びバット部11を有する140 本の針で編成され、残りの60本の針は編成に寄与しないので、ソール部4は、甲部において編み生地が編成されることなく、上部に開口部5を形成しつつ、且つ足底から上の部分全体を包み込むような好適な形態に編成されることとなる。
【0049】
また、従来のように裁断しなくとも、上記のような変則的な編成によって、上記のように開口部5の端縁が自動的に形成されることとなるのである。
また、トウ部3の先端部分(G部)においては、ワイヤーの引っ張り力で針上げピッカーの針上げが規制されて針下げ2本分の目増やしが行われるという変則的な編成方法がなされるため、トウ部3においてゴアライン30よりも先端側のG部の部分における編みコース数が、ゴアライン30よりも後端側のF部の部分における編みコース数の半分の数となり、その分生地が少なくなる。その結果、トウ部3の部分は、パンプス等を履いた際に、そのパンプスからはみ出ないように形成されることとなる。
尚、この場合、針上げピッカー規制のタイミングをずらせることによって、F部の部分における編みコース数を調整することもできる。
【0050】
しかも、開口部5のトウ部3側の端縁26は、図19に示すように、そのトウ部3における編成コース目に沿うように該編成コース目のラインと同様のラインを描いて形成されることになり、結果的にトウ部3側の端縁26における両側部26a,26b を結ぶ距離が最短距離となるように編成されることとなる。
この結果、トウ部3の部分が足から離脱しようとする力が作用しにくい形態となっている。
【0051】
ちなみに、上記トウ部3におけるG部で、上述のようにエアシリンダによる針上げの規制を行わず、G部とF部における編みコース数を同じにすると、G部における編みコース数は前述の図19の場合に比べて増えているので、図20に示すようにトウ部3のG部における生地の量が増え、従って開口部5のトウ部3側の端縁26は、図19の場合に比べて足の甲側に延びている。
【0052】
従って、そのままの状態でパンプスに着用すると、パンプスからトウ部3がはみ出ることになる。そこで、パンプスからはみ出ることがないように、図27のような仮想切断線27に沿ってトウ部3を切断することが必要となるが、その仮想切断線27の切断端縁は、同図に示すようにトウ部3の編成コース目に沿わないこととなる。この場合において、仮想切断線27の切断位置がフットカバーの開口部の端縁となり、その切断後の開口部の端縁が編成コース目に沿わず、結果的にトウ部3側の端縁26における両側部26a,26b を結ぶ距離が最短距離よりも長くなる。従って、トウ部3は足の爪先から位置ずれし易い状態となり、足からフットカバーが離脱し易い状態となるのである。
また、切断位置となる仮想切断線27を的確に設定するような目印が存在しないため、その切断位置、ひいては縫製ラインを設定するのが困難となる。
【0053】
これに対して、図19のように、開口部5のトウ部3側の端縁26が、トウ部3における網目に沿うようなラインを描いて形成され、トウ部3側の端縁26における両側部26a,26b を結ぶ距離が最短距離となるように編成されるていると、トウ部3の部分が足から離脱しにくい状態となり、しかもトウ部3の先端側のG部における編みコース数がF部に比べて減らされているので、パンプスからはみ出ることがないような開口部5の端縁に形成されることとなるのである。
【0054】
このように、本実施形態の製造方法によって、フットカバー本体1、特にヒール部2及びトウ部3から足が離脱することがないような且つパンプスを履いた際にはみでることがないような開口部5の端縁のラインを有する好適な形態のフットカバー7が得られた。
【0055】
尚、上記実施形態では、円周上の全周に200本の針が配設されたシリンダ8を具備する編機が用いられたが、シリンダ8に配設される針の本数、シリンダーの大きさ(釜径)及びゲージも該実施形態に限定されるものではない。
【0056】
また、該実施形態では、フック部10及びバット部11を有する針を140 本残存させ、バット部11は存在するがフック部10を欠損させた針を56本とし、残りの4本の針をフック部10もバット部11もないものとしたが、これらの針の比率は該実施形態に限定されるものではない。
【0057】
ただし、足がフットカバーから離脱することがない開口部5の端縁のラインを有する好適な形態のものを得るためには、フック部10及びバット部11を有する針を全体の3/5〜4/5残存させ、フック部10を欠損させた針を全体の1/5〜2/5とすることが必要である。
また、上記実施形態では、針のフック部10及びバット部11を欠損させることで針下げピッカーによる針下げを1本ずつ行わせることで、1本の針上げ及び1本の針下げによって目減らし及び目増しなしの状態にしたが、目減らし及び目増しなしの状態にする手段はこれに限定されるものではなく、たとえば針上げピッカー及び針下げピッカーをともに機能させないようにして目減らし及び目増しなしにすることも可能である。
【0058】
さらに、針上げピッカーや針下げピッカーによる調整の本数も該実施形態に限定されるものでない。
さらに、上記実施形態では、ワイヤーの引っ張り力で針上げピッカーの針上げを規制し、針下げ2本分の目増やしを行わうことで、トウ部3の先端部分(G部)における編みコース数をトウ部3の後端部分(F部)における編みコース数よりも減らすよう調整したが、この編みコース数の調整手段も該実施形態に限定されるものではない。
【0059】
さらに、上記実施形態では、フットカバー本体1の素材として綿、ポリアミド系合成繊維、ポリウレタン繊維からなるものを用いたが、フットカバー本体1の素材も該実施形態に限定されるものではない。
【0060】
さらに、上記実施形態では、女性のパンプス等の内側に着用するフットカバーに適用する場合について説明したが、これに限らず、たとえば紳士用靴の内面側に着用するフットカバーに本発明を適用することも可能である。
【0061】
ただし、紳士用靴はパンプスのように開口部が大きいわけではないので、上記のようにトウ部3におけるG部とF部における編みコース数は同じであってもよく、この場合はエアシリンダによる針上げの規制を行なう必要がない。
従って、G部とF部における編みコース数を変えることは本発明に必須の条件ではない。
【0062】
【発明の効果】
以上のように、本発明においては、編糸を掛止する針が円周状に配設された自動丸編靴下編機のシリンダを交互に正方向及び逆方向に回転させながらヒール部、ソール部、トウ部を連続的に編成して製造されるため、靴下状に編成されたものの上部を裁断することによって製造された従来のフットカバーのように裁断位置が一定しないものに比べると、シリンダに具備される針のうち、編成に寄与する針数を調整する等によって、製造後のフットカバーの開口部の端縁のラインを設定することが可能となり、その結果、足の下側から包み込むような状態で着用することができるとともに着用時に不用意に脱げることがなく、且つパンプスからはみでることがないように開口部は一定以上の大きさに形成されたフットカバーを提供することができるという効果がある。
【0063】
また、従来のように靴下の形態に編成した後に裁断する方法ではなく、シリンダを交互に正方向及び逆方向に回転させながら、ヒール部、ソール部、トウ部を連続的に編成した製造する方法であるため、従来のフットカバーの製造方法のように、裁断という工程が不要となり、全体の製造も簡易化されるという効果がある。
【0064】
さらに、従来のフットカバーのように余分な縫い目がないので、履きごこちが悪くなることがないという効果がある。
【0065】
さらに、トウ部におけるゴアラインよりも先端側の生地の編みコース数が、トウ部におけるゴアラインよりも後端側の生地の編みコース数に比べて少なくなるように編成されている場合には、パンプス等を履いた際に、そのパンプスからフットカバーのトウ部の部分がはみ出ることがなく、しかも開口部のトウ部側の端縁における両側部を結ぶ距離が最短距離となるように編成されるので、トウ部の部分が足から離脱しにくい形態となる。
よって、従来において、開口端縁を形成する切断すべき目印となる位置の設定が特に困難であったトウ部においても、切断作業を伴うことなく、上記のようなトウ部の編成コース目に沿った開口端縁を有するように形成することが可能となる。
【0066】
さらに、ソール部が目減らし及び目増しなしの状態で編成されている場合には、ヒール部やトウ部のように編成が進むにつれて湾曲するようなことがなく、上端縁はほぼまっすぐな状態で編成されることとなり、また甲部が形成されることがないので、従来のように切断作業を伴わずにソール部においてまっすぐな状態の開口端縁を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態のフットカバーの正面図。
【図2】同平面図。
【図3】同斜視図。
【図4】シリンダの概略平面図。
【図5】同概略側面図。
【図6】針の概略正面図
【図7】針による糸の編成状態を示す概略正面図。
【図8】針による糸の編成時のシリンダ,カム等の展開状態の正面図。
【図9】長いバットを有する針と短い針を有する針とのシリンダにおける編成範囲を示す概略平面図。
【図10】針上げピッカーとシリンダとの相関関係を示す概略平面図。
【図11】針下げピッカーとシリンダとの相関関係を示す概略平面図。
【図12】針上げ及び針下げとシリンダ、カムとの相関関係を展開した状態で示す概略平面図。
【図13】長いバットを有する針及び短い針を有する針と、上げスイッチカムとの相関関係を示す概略平面図。
【図14】針上げピッカーとカムとの相関関係を示す概略平面図。
【図15】針上げピッカーと針のバットとの相関関係を示す概略側面図。
【図16】針下げピッカーと針のバットとの相関関係を示す概略側面図。
【図17】針下げピッカーとカムとの相関関係を示す概略側面図。
【図18】フットカバーの編成区域を模式的に示す概略正面図。
【図19】フットカバーの編組織を模式的に示す概略平面図。
【図20】比較例としてのフットカバーの編組織を模式的に示す概略平面図。
【符号の説明】
1…フットカバー本体 2…ヒール部
3…トウ部 4…ソール部
5…開口部 8…シリンダ
9…針
Claims (1)
- 編糸を掛止する針(9)がシリンダ(8)に円周状に配設され、且つ該シリンダ(8)の円周状に配設された多数の針(9)のうち、1/5〜2/5の針は糸を掛止するための掛止部が欠損され、3/5〜4/5の針は糸を掛止するための掛止部が残存して形成された自動丸編靴下編機の前記シリンダ(8)を交互に正方向及び逆方向に回転させながら、上部に開口部(5)を形成しつつ、ヒール部(2)、トウ部(3)、及び該ヒール部(2)とトウ部(3)間のソール部(4)を連続的に編成して製造することを特徴とするフットカバーの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002218137A JP3805729B2 (ja) | 2002-07-26 | 2002-07-26 | フットカバーの製造方法 |
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