JP3805129B2 - 基礎構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、所謂フラットスラブを基礎スラブに採用することで、直接基礎の根切り深さを浅くできるように構成した基礎構造に関し、更に詳しくは、隣接方向に間隔をあけて複数の柱部を設け、前記各柱部の荷重を支持地盤に伝達する鉄筋コンクリート構造の基礎スラブを、前記各柱部の下端部に一体的に設け、前記基礎スラブ中に、引張側に位置するようにアンボンドPC鋼線を埋設してある基礎構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の基礎構造としては、例えば、基礎スラブの内、柱下部にあたる部分を、下向きに膨出させると共に、厚み寸法を大きくした膨出部として構成してあるものがあった(特公昭61−35334号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この種の基礎構造によれば、基礎スラブ全域を有効に活用して、広い範囲に建物荷重を分散することで、基礎から支持地盤に伝わる単位荷重を抑えることが可能となり、例えば、支持杭や地盤改良等の工事を実施できないような現場にも適応することができるものである。
上述した従来の基礎構造によれば、柱部からの荷重の大半が、前記膨出部の下方地盤に集中的に作用し易く、支持地盤に対して前記基礎スラブ全域を使用して荷重を伝えることが困難となり、地盤状況が軟弱な場合には、不当沈下の原因になり易い問題点がある。
【0004】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、より均等に建物荷重を分散して支持地盤に伝え易い基礎構造を提供するところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の特徴構成は、図1・図4〜9に例示するごとく、隣接方向に間隔をあけて複数の柱部2を設け、前記各柱部2の荷重を支持地盤Gに伝達する鉄筋コンクリート構造の基礎スラブ1を、前記各柱部2の下端部に一体的に設け、前記基礎スラブ1中に、引張側に位置するようにアンボンドPC鋼線5Aを埋設してある基礎構造において、連続する前記アンボンドPC鋼線5Aは、柱部2ではスラブ厚み内の下端側に位置させてあると共に、隣接する柱部2の中間部ではスラブ厚み内の上端側に位置させてあり、前記基礎スラブ1の接地面の内、隣接する柱部2の中間部に、前記柱部2の隣接方向に交差する方向に連続する下方突条6を設け、前記下方突条6の側面を、斜め下方を向く傾斜面6aに形成してあるところにある。
請求項1の発明の特徴構成によれば、前記PC鋼線によってプレストレスを導入することで、隣接柱間の基礎スラブ部分の接地圧が上昇するわけであるが、その際、前記下方突条を設けてあることによって、下方突条の下方に位置する支持地盤のみならず、前記傾斜面から、斜め下方の支持地盤にも建物荷重を伝達することができる。従って、支持地盤のより広い部分に建物荷重を分散して作用させることが可能となり、従来のように、柱下部の地盤のみに建物荷重が集中するのを是正することが可能となる。
また、前記傾斜面によって支持地盤を圧密させる作用をも期待でき、支持地盤の地耐力の向上を図ることが可能となる。
これらの結果、基礎スラブ全域を有効に活用して、広い範囲に建物荷重を分散して作用させることができると共に、支持地盤の改良効果をも期待することができるようになって、支持地盤が軟弱であるような場合であっても、建物の不等沈下の防止が図り易くなり、支持杭や地盤改良等の工事を実施できないような現場においても適応することができようになった。
【0006】
請求項2の発明の特徴構成は、図8・9に例示するごとく、前記下方突条6中に、長手方向に連続した中空部Vを設けてあるところにある。
請求項2の発明の特徴構成によれば、請求項1の発明による作用効果を叶えることができるのに加えて、前記中空部を、例えば、配管や、配線や、流体の流路としてのスペースとして使用することが可能となり、それらのスペースを別途設ける必要がなくなり、経済的に建物の機能をより向上させることが可能となる。
【0007】
請求項3の発明の特徴構成は、図1〜9に例示するごとく、前記基礎スラブ1における前記柱部2の固定部に、十字鉄骨2Aを埋設してあるところにある。
請求項3の発明の特徴構成によれば、請求項1又は2の発明による作用効果を叶えることができるのに加えて、前記十字鉄骨と基礎スラブのコンクリートとの一体性が向上することによって、基礎スラブ内での柱部の固定度を向上させることが可能となる。
また、前記十字鉄骨による補強効果によって、基礎スラブの厚み寸法を小さく設定することも可能となり、その結果、根切り深さをより浅くできるようになり、地下掘削手間や掘削残土の低減化によって建設コストの低減を図ることが可能となる。
【0008】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本発明による基礎構造の一実施形態を採用した建物Bを示すもので、は、地上複数階の鉄骨構造で構成してある。そして、基礎スラブ1は、鉄筋コンクリート構造で構成してあり、所謂フラットスラブからなる「べた基礎」形式をとるものである。
【0011】
前記基礎スラブ1には、図2・3に示すように、建物Bの各柱部2の下端部を一体的に埋設してある。
【0012】
この柱部2は、角筒形状の鋼管で構成してあり、下端部には、図に示すように、H形鋼で構成した十字鉄骨2Aが溶接してあり、この十字鉄骨2Aが前記基礎スラブ1内に埋設されていることによって、基礎スラブ1と柱部2との連結力を強め、より頑丈な連結構造をつくっている。尚、前記十字鉄骨2Aの各H形鋼は、長手方向が夫々柱の隣接方向に沿う状態に配置してある。
また、前記柱部2は、基礎スラブ1への埋設部のすぐ上方で分割自在に構成してある。具体的には、上柱部2Cと下柱部2Bとを連結プレート3を添わせた状態で多数の高張力ボルト4によって連結固定してある。従って、例えば支持地盤Gが軟弱地盤で、不等沈下を生じるような場合があっても、各柱部2の前記上柱部2Cと下柱部2Bとの間に高さ調整用の部材を介在させて固定し直すことで、建物の地上部が水平になるように調整することが可能となる。
【0013】
次に、前記基礎スラブ1について詳しく説明する。
基礎スラブ1は、種々の応力条件を鑑みて厚み寸法や、鉄筋量を設定してあると共に、引張側に位置するようにアンボンドPC鋼線5Aを設けてある。前記アンボンドPC鋼線5Aは、平面的には、図3に示すように、各柱部2において前記十字鉄骨2Aの一方のH形鋼の長手方向に沿って、他方のH形鋼と交差する状態に間隔をあけて複数本配置してある。そして、複数のアンボンドPC鋼線5AからなるPC鋼線群5は、図に示すように、基礎スラブ1全体中に格子状に配置されている。
従って、前記アンボンドPC鋼線5Aによって基礎スラブ1にプレストレスを導入することによって、基礎スラブ1内の引張応力を打ち消す作用を期待でき、その結果、基礎スラブ1そのものの厚みを薄くすることが可能となる。
一方、基礎スラブ1の接地面の内、隣接する柱部2の中間部には、前記柱部2の隣接方向に交差する方向に連続する下方突条6を設けてある。即ち、基礎スラブ1全体としてみた場合、下方突条6は、平面的に前記PC鋼線群5の格子と柱間隔寸法の半分づつ縦横にずれた位置に同様の格子状となるように設けらていることになる。
この下方突条6の断面形状は、図1に示すように、逆三角形で、下方突条6の両側面は、斜め下方を向く傾斜面6aに形成してある。
尚、下方突条6は、基礎スラブ1の本体と共に一体的に鉄筋コンクリートによって構成してある。
【0014】
本実施形態の基礎構造によれば、前記アンボンドPC鋼線5Aによってプレストレスを導入することで、支持地盤Gへの建物荷重を、柱部2直下においては減少させると共に、隣接柱間の基礎スラブ1部分で増加させることができ、特に、前記傾斜面6aから、斜め下方の支持地盤Gにも建物荷重を伝達することができるから、支持地盤Gのより広い部分に建物荷重を分散して作用させることが可能となる。更には、前記傾斜面6aによって支持地盤Gを圧密させる作用をも期待でき、支持地盤の地耐力の向上を図ることが可能となる。
これらの結果、支持地盤Gが軟弱であるような場合であっても、建物Bの不等沈下の防止が図り易くなる。
また、基礎スラブ1そのものの厚みを薄くできるから、根切り深度を浅くできるようになると共に、各材料の使用量を減少させることができるようになり、建設コストの低減を図ることが可能となる。
更には、基礎スラブ1深度を浅くすることも可能となるから、建物B下方地盤中に、例えば、埋蔵文化財が存在するような場合であっても、それらの埋蔵文化財に悪影響を与えずに建物建設を実施することが可能となる。
また、前記下方突条6は、支持地盤Gと基礎スラブ1との相対的な横移動に対する抵抗となり得ることから、地震時の横揺れに対して効果を発揮することも可能となる。
【0015】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0016】
〈1〉 前記下方突条6は、先の実施形態で説明したように隣接柱間の中央部分にのみ設けてある構成に限るものではなく、例えば、図4・5・7・9に示すように、中央部分以外に設けてあるものであってもよい。また、隣接柱間に単数条の下方突条を設けてある構成に限るものではなく、図5・7・9に示すように、二条の下方突条、或いは、三条以上の複数条の下方突条を設けてあってもよい。
また、下方突条の断面形状は、先の実施形態で説明した逆三角形のものに限るものではなくに、例えば、図6・7・9に示すように、前記傾斜面6aが曲面となるような断面形状であってもよい。また、それら以外にも、例えば、図8に示すように、下方突条の外形断面形状が、逆台形であってもよい。
要するに、前記下方突条は、基礎スラブ1の接地面の内、隣接する柱部2の中間部に、前記柱部2の隣接方向に交差する方向に連続する状態に設け、その側面が斜め下方を向く傾斜面6aに形成してあればよく、それを総称して下方突条という。
〈2〉 また、下方突条は、図8・9に示すように、その中に、長手方向に連続した中空部Vを設けてあっもよく、この場合は、この中空部Vを、例えば、配管や、配線や、流体の流路としてのスペースとして使用することが可能となり、それらのスペースを別途設ける必要がなくなり、経済的に建物の機能をより向上させることが可能となる。
〈3〉 当該基礎構造は、鉄骨構造の建物に設けるものに限らず、鉄筋コンクリート造や、鉄骨鉄筋コンクリート造等、他の本体構造に採用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】基礎構造を示す断面図
【図2】基礎構造の要部を示す説明図
【図3】基礎スラブの平面図
【図4】別実施形態の基礎構造を示す断面図
【図5】別実施形態の基礎構造を示す断面図
【図6】別実施形態の基礎構造を示す断面図
【図7】別実施形態の基礎構造を示す断面図
【図8】別実施形態の基礎構造を示す断面図
【図9】別実施形態の基礎構造を示す断面図
【符号の説明】
1 基礎スラブ
2 柱部
2A 十字鉄骨
5A アンボンドPC鋼線
6 下方突条
6a 傾斜面
G 支持地盤
V 中空部
Claims (3)
- 隣接方向に間隔をあけて複数の柱部を設け、前記各柱部の荷重を支持地盤に伝達する鉄筋コンクリート構造の基礎スラブを、前記各柱部の下端部に一体的に設け、前記基礎スラブ中に、引張側に位置するようにアンボンドPC鋼線を埋設してある基礎構造であって、
連続する前記アンボンドPC鋼線は、柱部ではスラブ厚み内の下端側に位置させてあると共に、隣接する柱部の中間部ではスラブ厚み内の上端側に位置させてあり、前記基礎スラブの接地面の内、隣接する柱部の中間部に、前記柱部の隣接方向に交差する方向に連続する下方突条を設け、前記下方突条の側面を、斜め下方を向く傾斜面に形成してある基礎構造。 - 前記下方突条中に、長手方向に連続した中空部を設けてある請求項1に記載の基礎構造。
- 前記基礎スラブにおける前記柱部の固定部に、十字鉄骨を埋設してある請求項1又は2の何れかに記載の基礎構造。
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