JP3805078B2 - オレフィン重合用触媒 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はオレフィン重合用触媒に関し、さらに詳しくは初期活性が高く、ファウリングや塊状重合体の生成の抑制されたオレフィン重合用触媒に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
メタロセン化合物とアルミノキサンあるいは有機ホウ素化合物などの助触媒からなる触媒によりオレフィンの重合体を得ることは公知である。しかし生成する重合体が塊状となる、あるいは重合体粒子が嵩比重の低い取り扱い困難な粉体となる、さらには重合体が反応器の器壁に付着するファウリングなどの問題を有するため、これらの技術を工業的な生産に適用することは困難である。上記問題を解決する試みとしては、メタロセン化合物やアルミノキサンを固体担体上に担持する方法が提案されているが、ファウリングや塊状の重合体の生成という問題が十分には解決されていない。これらは例えば特開昭61-108610号公報、同61-296008号公報、同63-280703号公報、同63-22804号公報、同63-51405号公報、同63-51407号公報、同63-61010号公報、同63-248803号公報、特開平4-100808号公報、同3-74412号公報、同3-709号公報、同4-7306公報等に記載されている。また同様に有機ホウ素化合物を担体上に担持することも提案されており、例えば特開平5-239138号公報、特開平5-247128号公報、特開平7-10917号公報などに開示されてい るが、やはりファウリングの発生は十分に解決されてはいない。
【0003】
特表平7-501573号公報には本発明に類似の触媒が、またWO96/41808号公報には本発明に使用される触媒成分が開示されている。ここではファウリングや塊状重合体の生成は改善されているものの、未だ十分ではなく一層の改良が望まれている。また本発明の成分(C)とは異なる有機アルミニウムを用いた触媒では、重合の初期活性が低く、重合途中で急激に発熱したりするため、重合を安定して行うことが容易でない。この結果、生成した重合体が互着し塊状となったり、重合反応器に付着しファウリングが発生する。しかも得られる製品の品質が不均一になったり流通系の反応器においては使用した触媒が重合体中に十分分散せずに排出されるため、得られた重合体の成形外観を損ねたりする場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的はメタロセン触媒により、高い初期活性でファウリングや塊状重合体の生成を伴わずにオレフィン重合体を与えることが可能なオレフィン重合用触媒を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記状況に鑑み鋭意検討した結果、メタロセン化合物、特定のイオン性化合物と微粒子担体を接触させて得られる助触媒、および特定の有機アルミニウムからなる触媒が、高い初期活性を示し、ファウリングや塊状重合体の生成を伴うことなくオレフィン重合体を与えることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
1)一般式(1)
【化4】
[M1(R1)a(R2)b(R3)c(R4−L)d]-・[K]+ (1)
(式中、M1はホウ素またはアルミニウムであり、
R1、R2およびR3は、互いに同一でも異なってもよく、炭素数1〜20の炭 化水素基、ハロゲン化炭化水素基、アルコキシ基、フェノキシ基またはハロゲン原子であり、
R4は炭素数1〜20のヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、
Lはシリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基またはアミノ基であり、
a、bおよびcは0または1〜3の整数、dは1〜4の整数で、かつa+b+c+d=4であり、
Kは1価のカチオンである。)
で示されるイオン性化合物(a-1)と微粒子状担体(a-2)を接触させて得られる助触媒成分(A)、メタロセン化合物(B)、および一般式(2)
【化5】
Al(X)m(R)3-m (2)
(式中、Xは水素原子、ハロゲン原子またはアルコキシ基であり、Rはn−ブチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−オクチル、i−オクチルまたはn−デシル基であり、mは0または1である。)
で示される有機アルミニウム化合物(C)からなるオレフィン重合用触媒、
2)R1、R2およびR3がペンタフルオロフェニル基であり、R4がテトラフルオロフェニレン基である前記1記載のオレフィン重合用触媒、
3)Lがトリクロロシリル基、メチルジクロロシリル基またはジメチルクロロシリル基である前記1〜2に記載のオレフィン重合用触媒、
4)メタロセン化合物が一般式(3)
【化6】
(式中、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、互いに同一でも異なってもよ く、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基または炭素数1〜20の炭化水素基であり、
M2、M3およびM4は、互いに同一でも異なってもよく、炭素原子、ケイ素原 子、ゲルマニウム原子またはスズ原子であり、
M5はチタン、ジルコニウム、ハフニウムまたはバナジウムであり、
p、qおよびrは0または1〜2の整数で、かつ1≦p+q+r≦4であり、
Q1およびQ2は、互いに同一でも異なってもよく、2位に置換基を有するインデニル基であり、少なくともいずれか一方は2位および4位に置換基を有し、
X1およびX2は、互いに同一でも異なってもよく、ハロゲン原子、水素原子、アルコキシ基、フェノキシ基、アミド基または炭素数1〜30の炭化水素基である。)で示されるものである前記1〜3のオレフィン重合用触媒、および
5)有機リチウム、有機亜鉛、有機マグネシウム化合物の中から選ばれる1以上の有機金属化合物(D)を含有する前記1〜4のオレフィン重合用触媒を提供するものである。
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用する触媒成分(A)を構成するイオン性化合物(a-1)は下記一 般式(1)で表わされる。
【化7】
[M1(R1)a(R2)b(R3)c(R4−L)d]-・[K]+ (1)
【0008】
式中、M1はホウ素またはアルミニウムであり、好ましくはホウ素である。
R1、R2およびR3は、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基 、アルコキシ基、フェノキシ基またはハロゲン原子であり、これらは互いに同一でも異なってもよい。炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基等のアリール基、ハロゲン化アリール基が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、アルキル基、アリール基およびハロゲン化アリール基であり、特に好ましいのはアリール基およびハロゲン化アリール基である。
【0009】
ハロゲン化アリール基の具体例としては、4−フルオロフェニル基等のフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基等のジフルオロフェニル基、2,4,5−トリフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基等のトリフルオロフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基等のテトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,4−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等のビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,3,5−トリス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)フェニル基等のトリス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,3,5,6−テトラキス(トリフルオロメチル)フェニル基等のテトラキス(トリフルオロメチル)フェニル基、ペンタキス(トリフルオロメチル)フェニル基等およびこれらのフッ素原子を塩素原子、臭素原子等、他のハロゲン原子に置き換えたものなどが挙げられる。
【0010】
これらハロゲン化アリール基の中でも、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基などのフルオロフェニル基が好ましく、さらにはテトラフルオロフェニル基およびペンタフルオロフェニル基が好ましく、特にペンタフルオロフェニル基が好ましい。
【0011】
前記イオン性化合物(a-1)において、R4は炭素数1〜20のヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、4−フルオロ−m−フェニレン基、2−フルオロ−p−フェニレン基等のフルオロフェニレン基、4,5−ジフルオロ−m−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−p−フェニレン基等のジフルオロフェニレン基、2,4,5−トリフルオロ−m−フェニレン基、2,4,6−トリフルオロ−m−フェニレン基、4,5,6−トリフルオロ−m−フェニレン基、2,3,5−トリフルオロ−p−フェニレン基、2,3,6−トリフルオロ−p−フェニレン基等のトリフルオロフェニレン基、3,4,5,6−テトラフルオロ−o−フェニレン基、2,4,5,6−テトラフルオロ−m−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−p−フェニレン基等のテトラフルオロフェニレン基が挙げられる。
【0012】
これらのうち好ましいのは、2,4,5−トリフルオロ−m−フェニレン基、2,4,6−トリフルオロ−m−フェニレン基、4,5,6−トリフルオロ−m−フェニレン基、2,3,5−トリフルオロ−p−フェニレン基、2,3,6−トリフルオロ−p−フェニレン基、3,4,5,6−テトラフルオロ−o−フェニレン基、2,4,5,6−テトラフルオロ−m−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−p−フェニレン基であり、特に好ましいのは、2,4,5,6−テトラフルオロ−m−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−p−フェニレン基である。
【0013】
イオン性化合物(a-1)中のLは、シリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル 基、アミノ基のいずれかであり、好ましくはシリル基またはヒドロキシル基である。シリル基としては、下記一般式(3)で表わされるものが挙げられる。
【0014】
【化8】
―〔Si(Z1Z2)−Z6−〕nSiZ3Z4Z5 (3)
【0015】
一般式(3)において、Z1、Z2、Z3、Z4およびZ5はハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、アシルオキシ基、炭素数1〜20の炭化水素基の中から選ばれ、Z3、Z4、Z5のうち少なくとも一つはハロゲン原子、アルコキシ基 、フェノキシ基、アシルオキシ基である。Z6は酸素原子、イミノ基、炭素数1 〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアリーレン基、炭素数1〜20のオキサアルキレン基のいずれかである。nは0または1〜10の整数である。
【0016】
上記シリル基の具体例としては、トリクロロシリル基等のトリハロゲノシリル基、メチルジクロロシリル基、エチルジクロロシリル基等のアルキルジハロゲノシリル基、ジメチルクロロシリル基、ジエチルクロロシリル基等のジアルキルハロゲノシリル基、フェニルジクロロシリル基、p−トリルジクロロシリル基等のアリールジハロゲノシリル基、ジフェニルクロロシリル基等のジアリールハロゲノシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基、メチルジメトキシシリル基等のアルキルジアルコキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基等のジアルキルアルコキシシリル基、フェニルジメトキシシリル基、トリルジメトキシシリル基等のアリールジアルコキシシリル基、ジフェニルメトキシシリル基、ジトリルメトキシシリル基、ジフェニルエトキシシリル基等のジアリールアルコキシシリル基などのアルコキシ基含有シリル基、トリアセトキシシリル基等のトリアシルオキシシリル基、メチルジアセトキシシリル基等のアルキルジアシルオキシシリル基、ジメチルアセトキシシリル基等のジアルキルアシルオキシシリル基、フェニルジアセトキシシリル基等のアリールジアシルオキシシリル基、ジフェニルアセトキシシリル基等のジアリールアシルオキシシリル基やジメチルヒドロキシシリル基等のアルキルヒドロキシシリル基等が挙げられる。
【0017】
これらのうち好ましいのは、トリクロロシリル基、メチルジクロロシリル基、ジメチルクロロシリル基、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基、トリアセトキシシリル基、メチルジアセトキシシリル基、ジメチルアセトキシシリル基、トリヒドロキシシリル基、メチルジヒドロキシシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基であり、特に好ましいのはトリクロロシリル基、メチルジクロロシリル基、ジメチルクロロシリル基である。
【0018】
また前記イオン性化合物(a-1)において、a、bおよびcは0または1〜3 の整数、dは1〜4の整数であり、かつa+b+c+d=4である。これらのうちでも好ましいのはd=1の化合物である。
【0019】
前記イオン性化合物(a-1)において、Kは1価のカチオンである。具体的に はプロトン、トリフェニルカルベニウムイオン、トリ(p−トリル)カルベニウムイオンなどのトリアリールカルベニウムイオンやトリメチルカルベニウムイオン等のカルベニウムイオン、トロピリウムイオン、フェロセニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、トリ−n−ブチルアンモニウムイオン、N,N−ジメチルアニリニウムイオン等のアンモニウムイオン、トリメチルオキソニウムイオン、トリエチルオキソニウムイオン等のオキソニウムイオン、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオンなどが挙げられる。これらのうち好ましいのは、プロトン、トリフェニルカルベニウムイオン、トリ−(p−トリル)カルベニウムイオン等のトリアリールカルベニウムイオン、N,N−ジメチルアニリニウムイオン、N,N−ジエチルアニリニウムイオン等のジアルキルアニリニウムイオン、トリメチルオキソニウムイオンやトリエチルオキソニウムイオン等のトリアルキルオキソニウムイオンである。
【0020】
本発明で好適に使用できる前記イオン性化合物(a-1)の具体例としては、N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(クロロジメチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N−ジメチルアニリニウム(4−トリクロロシリル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート等、WO96/41808号に記載されている化合物等が挙げられる。
【0021】
本発明において、触媒成分(A)に使用される微粒子状担体(a-2)としては 、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属水酸化物、金属アルコキシド、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、珪酸塩や有機高分子化合物等が挙げられる。
【0022】
金属酸化物としては、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、カルシア、酸化亜鉛等が例示でき、金属ハロゲン化物としては、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ナトリウム等が例示できる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられ、金属アルコキシドとしては、マグネシウムエトキシド、マグネシウムメトキシド等が挙げられる。炭酸塩としては、炭酸カルシウム、塩基性炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等が挙げられる。硫酸塩としては、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。酢酸塩としては、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等が挙げられる。珪酸塩としては、雲母、タルク等の珪酸マグネシウムや珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、シリカ、アルミナ、雲母やタルク等の珪酸マグネシウムや珪酸カルシウム、珪酸ナトリウムなどの珪酸塩である。
【0023】
有機高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体の部分あるいは完全鹸化物等のポリオレフィンやその変性物、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。
これら有機高分子化合物のうちでも好ましいのは、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等の極性基を有するものであり、具体的には水酸基含有不飽和化合物、不飽和カルボン酸等でグラフト変性した変性ポリオレフィン、エチレン−ビニルエステル共重合体の部分あるいは完全鹸化物等が挙げられる。
【0024】
これら微粒子状担体(a-2)の平均粒子径は、特に制限はないが、通常0.1〜2,000μmの範囲であり、好ましくは1〜1,000μm、さらに好ましくは5〜100μmの範囲である。また比表面積は、特に制限はないが通常0.1〜2,000m2/g の範囲であり、好ましくは10〜1,500m2/gであり、さらに好ましくは100〜1,000m2/gの範囲である。
【0025】
本発明で使用する触媒成分(A)の調製は、前記イオン性化合物(a-1)と微 粒子状担体(a-2)を任意の方法で接触させることにより行なうことができる。 有機溶剤の非存在下で直接接触させてもよいが、一般的には有機溶剤中で接触が行なわれる。ここで用いられる有機溶剤としてはペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類やN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0026】
前記イオン性化合物(a-1)と微粒子状担体(a-2)との接触は、使用する有機溶剤やその他の条件を考慮して任意の温度で可能であるが、通常−80℃〜300℃の範囲で行なわれる。好ましい接触温度の範囲は−50℃〜200℃であり、さらに好ましい範囲は0℃〜150℃である。
【0027】
また、前記イオン性化合物(a-1)の微粒子状担体(a-2)に対する使用量に特に制限はないが、通常微粒子状担体(a-2)100重量部に対しイオン性化合物 (a-1)が0.0001〜1,000,000重量部の範囲である。(a-1)の使用量を多くする と、触媒の重合活性は向上する傾向にあるが、重合活性と製造コストのバランスを考慮すると(a-1)の使用量は微粒子担体(a-2)100重量部に対し、好ましくは0.1〜10,000重量部の範囲であり、さらに好ましくは1〜1,000重量部の範囲である。
このような方法により前記イオン性化合物(a-1)が、物理的吸着や化学結合 により、微粒子状担体(a-2)に担持され、本発明で用いる触媒成分を与えるこ ととなる。
【0028】
本発明で使用するメタロセン化合物(B)は、プロピレンを重合するものであれば特に制限はないが、プロピレンを立体規則的に重合するメタロセン化合物を使用することが好ましい。中でも高分子量のプロピレン重合体、特にエチレンを共重合した場合にも高分子量の重合体、あるいは高融点の重合体が得られることから、メタロセン化合物(B)として下記一般式(3)で表わされるものを用いることが好ましい。
【0029】
【化9】
【0030】
式中、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、水素原子、ハロゲン原子、ア ルコキシ基、フェノキシ基、炭素数1〜20の炭化水素基のいずれかであり、互いに同一でも異なってもよい。炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基やフェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアリールアルキル基、ビニル基、プロペニル基等のアルケニル基などが挙げられる。
【0031】
M2、M3およびM4は、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子 のいずれかであり、互いに同一でも異なってもよい。これらの中でも好ましいのは炭素原子およびケイ素原子である。M5はチタン、ジルコニウム、ハフニウム 、バナジウムのいずれかであり、好ましいのはチタン、ジルコニウム、ハフニウムであり、さらに好ましいのはジルコニウムまたはハフニウムであり、最も好ましいのはジルコニウムである。
【0032】
p、qおよびrは0または1〜2の整数であり、かつ1≦p+q+r≦4であり、好ましくは1≦p+q+r≦2である。
【0033】
Q1およびQ2は2位に置換基を有するインデニル基であり、少なくともいずれか一方は2位および4位に置換基を有し、互いに同一でも異なってもよい。好ましいのは、Q1およびQ2が共に2位および4位に置換基を有するインデニル基である。なおQ1およびQ2は2位および4位以外の位置に、付加的に任意の置換基を有していてもよい。また、各置換基は他の置換基と互いに結合し環状構造を形成していてもよい。
【0034】
2位の置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基、ビニル基やプロペニル基などのアルケニル基、フェニル基やトリル基、1−ナフチル基などのアリール基もしくはハロゲン化アリール基、ベンジル基などのアリールアルキル基もしくはハロゲン化アリールアルキル基、メトキシ基やエトキシ基などのアルコキシ基、トリメチルシリルオキシ基などのシリルオキシ基、トリメチルシリル基などのシリル基、アミノ基、フォスフィノ基などが挙げられる。これらの中でも、好ましいのはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのアルキル基であり、さらに好ましいのはメチル基およびエチル基である。
【0035】
4位の置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基など前記2位の置換基と同様のものが例示される。これらのうち好ましいのはアルキル基およびアリール基であり、特に好ましいのはアリール基である。
【0036】
X1およびX2は、ハロゲン原子、水素原子、アルコキシ基、フェノキシ基、アミド基および炭素数1〜30の炭化水素基の中から選ばれ、互いに同一でも異なってもよい。炭素数1〜30の炭化水素基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基やフェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアリールアルキル基、ビニル基、プロペニル基等のアルケニル基などが挙げられる。
【0037】
本発明で使用するメタロセン化合物(B)をより具体的に示すと、
ビス[2,4,7−トリメチル−(η5−1−インデニル)]ジメチルシランジ ルコニウムジクロライド、
ビス[2,4−ジメチル−(η5−1−インデニル)]ジメチルシランジルコニ ウムジクロライド、
ビス[2−メチル−4,5−ベンゾ(η5−1−インデニル)]ジメチルシラン ジルコニウムジクロライド、
ビス[2−メチル−4−フェニル−(η5−1−インデニル)]ジメチルシラン ジルコニウムジクロライド、
ビス[2−メチル−4−(1−ナフチル)−(η5−1−インデニル)]ジメチ ルシランジルコニウムジクロライド、
ビス[2−メチル−4−(9−アントラセニル)−(η5−1−インデニル)] ジメチルシランジルコニウムジクロライド、
ビス[2−メチル−4−(9−フェナントリル)−(η5−1−インデニル)] ジメチルシランジルコニウムジクロライド、
1,2−ビス[2,4−ジメチル−(η5−1−インデニル)]エタンジルコニ ウムジクロライド、
1,2−ビス[2,4,7−トリメチル−(η5−1−インデニル)]エタンジ ルコニウムジクロライドが挙げられる。
さらに上記化合物のジルコニウムをチタンやハフニウム等の他の金属に置換したもの、塩素原子を他のハロゲン原子や水素原子、アミド基、アルコキシ基、メチル基やベンジル基などの炭化水素基に置換したものなどをも使用することができる。
【0038】
本発明で使用する触媒成分(C)は下記一般式(2)で表わされる有機アルミニウム化合物である。
【化10】
AlXmR3-m (2)
式中、mは0または1であり、好ましくは0である。Xは水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基のいずれかであり、互いに同一でも異なってもよい。Rはn−ブチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−オクチル、i−オクチル、n−デシルの中から選ばれるいずれかである。
本発明で好ましく使用できる有機アルミニウム化合物(C)としては、例えば、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−i−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−i−オクチルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウムが挙げられる。これらのなかでもメタロセン化合物を溶解させる効果が高く、使用する溶剤量が低減されることから、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−i−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−i−オクチルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウムが特に好ましい。
【0039】
本発明において上記以外の有機アルミニウムを用いた場合、オレフィン重合用触媒の初期活性が低下し、さらにはファウリングの発生や、活性の著しい低下が起こる場合がある。
【0040】
本発明では前記成分(A)、(B)および(C)の他に、さらに有機リチウム、有機亜鉛、有機マグネシウム化合物の中から選ばれる1以上の有機金属化合物(D)を使用することができる。成分(D)を使用することにより、特にファウリングの発生が抑制されるだけでなく、生成するオレフィン重合体粒子の互着が抑制され粉体性状の良好な粒子が得られる。これらの効果は特に共重合体の製造時に顕著に現れる。
【0041】
本発明で使用される成分(D)の作用は以下のようなものと推定される。
すなわち本発明においては成分(A)と成分(B)の特定のメタロセン化合物を接触させることにより、成分(B)も成分(A)中の微粒子状担体に担持される。このとき成分(B)は微粒子状担体に完全に担持されるとは限らず、また一旦担持したものが重合系内で脱離したりする。このような遊離した状態にある成分(B)により反応器壁や重合体粒子表面での重合が進行し、ファウリングが発生すると考えられる。このとき本発明の成分(D)により遊離した状態にある成分(B)が不活化され、反応器壁や重合体粒子表面での重合が抑制されるため、ファウリングの発生が抑制されると考えられる。
なお成分(D)のような、成分(B)を不活化する化合物を添加すると重合が抑制されると予測される。しかし成分(D)により不活化された成分(B)は、再度、成分(A)と接触することにより重合活性を回復するものと推定されるため、本発明においては成分(D)の添加による重合の抑制はあまり見られず、ファウリングを伴わずに高い活性でオレフィン系共重合体を与えることとなる。
【0042】
成分(D)として使用可能な有機リチウムとしては、フェニルリチウム等のアリールリチウムや、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、i−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム等のアルキルリチウムなどが挙げられる。有機亜鉛としてはジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛等が挙げられ、有機マグネシウムとしてはジ(n−ブチル)マグネシウム、n−ブチルエチルマグネシウム等のジアルキルマグネシウム、メチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムブロマイド、n−プロピルマグネシウムブロマイド、i−プロピルマグネシウムブロマイド、n−ブチルマグネシウムクロライド、i−ブチルマグネシウムクロライドなどのアルキルマグネシウムハライド等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、有機リチウム、有機マグネシウムであり、さらに好ましいのはアルキルリチウム、ジアルキルマグネシウムであり、最も好ましいのはアルキルリチウムである。
【0043】
本発明のオレフィン重合用触媒は上記の成分(A)、成分(B)、成分(C)および任意に成分(D)を接触させることにより調製することができる。これらの成分は同時に接触させてもよく、また遂次に接触させてもよいが、成分(D)を使用する場合、その接触は成分(A)〜(C)の接触後に行うことが好ましい。また調製の方法に特に制限はなく、重合を行なう反応器に各成分を別々に導入し反応器内で接触させて調製してもよく、予め反応器の外で調製してもよい。
【0044】
上記の各成分を重合を行なう反応器に別々に導入し反応器内で本発明の触媒を調製させる場合においては、各成分はそのまま導入してもよいが、ヘキサン、ヘプタン、トルエンなどの有機溶剤や、あるいはパラフィン系、ナフテン系、芳香族系のオイル、グリースなどに分散させた状態で導入してもよい。
反応器の外で接触させて触媒を調製する場合には、一般的には有機溶剤中で接触が行なわれる。使用可能な有機溶剤としてはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類やこれらの混合物等が挙げられる。
また接触時の温度は、使用する有機溶剤やその他の条件を考慮して任意に決定されるが、通常−80〜200℃の範囲で行なわれる。好ましい接触温度の範囲は−50〜120℃であり、さらに好ましい範囲は0〜100℃である。
【0045】
両成分を上記の有機溶剤中で接触させて触媒を調製した後は、そのまま重合を行なう反応器に導入してもよく、液相を固液分離や減圧留去等により除去してから導入してもよい。さらにはヘキサンやトルエンなどで洗浄を行なった後に投入することも可能である。
【0046】
成分(B)に対する成分(A)の使用量は特に制限はないが、通常、成分(B)中に含有されるジルコニウム等の遷移金属1モルに対し、成分(A)中のイオン性化合物が0.05〜100モルであり、好ましくは0.1〜50モル、さらに好ま しくは1〜10モル、特に好ましくは2.5〜4.0モルの範囲である。
【0047】
また、成分(B)に対する成分(C)の使用量は特に制限はなく、通常、成分(B)中に含有されるジルコニウム等の遷移金属1モルに対し0.01〜100,000モ ルであり、好ましくは0.1〜10,000モル、さらに好ましくは10〜3,000モル、特に好ましくは20〜1,000モルの範囲である。
【0048】
成分(D)を使用する場合、成分(B)に対するその使用量には特に制限はなく、通常、成分(B)中に含有されるジルコニウム等の遷移金属1モルに対し0.01〜10,000モルであり、好ましくは0.1〜1,000モル、さらに好ましくは1〜300モル、特に好ましくは5〜100モルの範囲である。
【0049】
本発明のオレフィン重合用触媒は、任意の重合方法に適用可能である。具体的には液体プロピレン中で行なう塊状重合、不活性溶剤の存在下に液相中で行なう溶液重合やスラリー重合、気相モノマー中で行なう気相重合があるが、これらのうち好ましいのは塊状重合および気相重合である。
【0050】
重合温度は任意であるが、通常は工業的に意義のある50℃を超える温度範囲で使用される。重合温度の好ましい範囲は55〜85℃の範囲であり、さらに好ましくは60℃〜85℃、特に好ましくは60℃〜80℃の範囲である。
【0051】
重合時の圧力は液相中の重合において常圧〜70kg/cm2、気相中では常 圧〜50kg/cm2の範囲が一般的であり、得ようとするプロピレン重合体の 性質や、生産性などを考慮して適当な範囲を選択できる。また重合時には、水素により分子量の調節を行なうことが可能である。また、温度、圧力の選定など任意の手段によっても分子量を調節することも可能である。
【0052】
本発明のオレフィン重合用触媒により得られるオレフィン重合体は、エチレン、プロピレンや炭素数4以上のα−オレフィンの重合体もしくは共重合体である。炭素数4以上のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の高級オレフィンが使用可能である。また本発明においてスチレン、ビニルトルエンといったビニル芳香族化合物やブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1、4−ヘキサジエンといった共役あるいは非共役ジエンなどの少量を共重合することも可能である。
【0053】
【発明の効果】
メタロセン化合物、特定のイオン性化合物と微粒子担体を接触させて得られる助触媒、および特定の有機アルミニウムからなる触媒により、ファウリングや塊状重合体の生成を伴うことなく高い初期活性でオレフィン重合体を与えることができる。
【0054】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【0055】
助触媒成分(A−1):
ジクロロメタン6mlにイオン性化合物(a-1)としてN,N−ジメチルアニ リニウム[4−(トリクロロシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ ル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート0.3gを溶解させた溶液と、ジクロロメタン30mlに微粒子担体(a-2)としてシリカ(富士デビソン社製95 2)0.5gを加えたスラリーを混合し、撹拌下2時間還流させた。その後、上澄 みを除去しジクロロメタンで洗浄することで成分(A−1)を得た。
【0056】
助触媒成分(A−2):
前記成分(A−1)の調製において、N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(クロロジメチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラートを用いた以外は同様に行い、成分(A−2)を得た。
【0057】
メタロセン化合物(B−1):
ビス[2−メチル−4−(1−ナフチル)−(η5−1−インデニル)]ジメ チルシランジルコニウムジクロライド。
【0058】
また、重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、分子量分布(Mw/Mn)は以下の方法により測定した。
試験管に5mlの1,2,4−トリクロロベンゼンを取り、これに試料約2.5 mgを投入した。この試験管に栓をした後、160℃の恒温槽で試料を溶解させた。得られた溶液を焼結フィルターでろ過した後、ろ液をWaters社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置150C(カラム:Shodex HT−806M カラム温度140℃ 溶媒流量1ml/分)を用いてMw、Mnを測定し、得られた値より、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0059】
実施例1
1)メタロセン溶液の調製
窒素気流下30mlのフラスコに(B−1)を5.2mg採取し、このフラスコ に室温で成分(C)として0.5mol/l−トリ−n−ブチルアルミニウム(以下、TNBAと略す。)のヘキサン溶液を4ml加えた。この時点でフラスコ内部にはオレンジ色の固体が残存していた。その後、滴下ロートよりNa−K合金で脱水したヘキサンを、固体が完全に溶解するまで滴下した。ヘキサン滴下量は2.5mlであり、この時の(B−1)の濃度は0.25mmol/lであった。
2)プロピレン重合用触媒の調製
上記で得た(B−1)および成分(C)を含む溶液を2.0ml、窒素気流下の 30mlフラスコに採取し、これに前記成分(A−1)を30mg添加後、3分間撹拌しプロピレン重合用触媒のスラリーを得た。
3)プロピレンの重合
1.5リットルのオートクレーブに成分(C)として0.5mol/l−TNBAの トルエン溶液4ml、プロピレン8molを加え70℃に昇温した後、上記オレフィン重合用触媒をオートクレーブ中に圧入し、重合を開始した。触媒圧入60分後、メタノールを圧入して重合を停止させた。未反応のプロピレンを除去し、粒子状のプロピレン重合体(Mw=1,323,000、Mw/Mn=3.4)を得た。オートクレーブ中にファウリングは見られなかった。重合活性は3,700g−ポリプロ ピレン/g−触媒・時間であった。
4)初期活性の評価
上記3)プロピレンの重合において重合時間を10分とした以外は同様に実施した。重合活性は3,300g−ポリプロピレン/g−触媒・時間であり、この値を 初期活性とした。
【0060】
比較例1
TNBAの代わりにトリ−i−ブチルアルミニウム(以下、TIBAと略す。)を用いた以外は実施例1と同様に行なった。(B−1)の濃度は0.26mmol/lであった。得られたプロピレン重合体(Mw=1,273,000、Mw/Mn=3.3 )は粒子状であったが互着が見られ、オートクレーブ中にファウリングが見られた。重合活性は3,200g−ポリプロピレン/g−触媒・時間であった。また初期 活性は400g−ポリプロピレン/g−触媒・時間であった。
【0061】
比較例2
TNBAの代わりにトリエチルアルミニウム(以下、TEAと略す。)を用いた以外は実施例1と同様に行なった。(B−1)の濃度は0.13mmol/lであ った。得られたプロピレン重合体は粒子状であったが互着が見られ、オートクレーブ中にファウリングが見られた。重合活性は670g−ポリプロピレン/g−触媒・時間であった。また初期活性は110g−ポリプロピレン/g−触媒・時間であった(Mw=1,272,000、Mw/Mn=3.5)。
【0062】
実施例2
TNBAの代わりにトリ−n−ヘキシルアルミニウム(以下、TNHAと略す。)を用いた以外は実施例1と同様に行なった。(B−1)の濃度は0.33mmol/lであった。得られたプロピレン重合体(Mw=1,296,000、Mw/Mn=3.2)は粒子状であり、オートクレーブ中にファウリングは見られなかった。重合 活性は3,740g−ポリプロピレン/g−触媒・時間であった。また初期活性は3,370g−ポリプロピレン/g−触媒・時間であった。
【0063】
実施例3
TNBAの代わりにトリ−n−オクチルアルミニウム(以下、TNOAと略す。)を用いた以外は実施例1と同様に行なった。(B−1)の濃度は0.90mmol/lであった。得られたプロピレン重合体は粒子状であり、オートクレーブ中 にファウリングは見られなかった。重合活性は4,120g−ポリプロピレン/g− 触媒・時間であった。また初期活性は3,810g−ポリプロピレン/g−触媒・時 間であった(Mw=1,317,000、Mw/Mn=3.2)。
【0064】
実施例4
TNBAの代わりにトリ−i−オクチルアルミニウム(以下、TIOAと略す。)を用いた以外は実施例1と同様に行なった。(B−1)の濃度は1.1mmo l/lであった。得られたプロピレン重合体は粒子状であり、オートクレーブ中 にファウリングは見られなかった。重合活性は3,920g−ポリプロピレン/g− 触媒・時間であった。また初期活性は3,670g−ポリプロピレン/g−触媒・時 間であった(Mw=1,320,000、Mw/Mn=3.3)。
【0065】
実施例5
TNBAの代わりにトリ−i−ヘキシルアルミニウム(以下、TIHAと略す。)を用いた以外は実施例1と同様に行なった。(B−1)の濃度は0.31mmol/lであった。得られたプロピレン重合体は粒子状であり、オートクレーブ中 にファウリングは見られなかった。重合活性は4,030g−ポリプロピレン/g− 触媒・時間であった。また初期活性は3,780g−ポリプロピレン/g−触媒・時 間であった(Mw=1,287,000、Mw/Mn=3.2)。
【0066】
実施例6
TNBAの代わりにトリ−n−デシルアルミニウム(以下、TNDAと略す。)を用いた以外は実施例1と同様に行なった。(B−1)の濃度は1.3mmol/lであった。得られたプロピレン重合体は粒子状であり、オートクレーブ中にファウリングは見られなかった。重合活性は3,720g−ポリプロピレン/g−触媒 ・時間であった。また初期活性は3,520g−ポリプロピレン/g−触媒・時間で あった(Mw=1,250,000、Mw/Mn=3.3)。
【0067】
実施例7
1)メタロセン溶液の調製
実施例1と同様に行なった。(B−1)の濃度は0.27mmol/lであった。
2)プロピレン重合用触媒の調製
(A−1)の代わりに(A−2)を用いた他は、実施例1と同様に行なった。
3)プロピレンとエチレンの共重合
1.5リットルのオートクレーブに成分(D)として0.1mol/lのn−ブチル リチウム(以下、n−BuLiと略す。)ヘキサン溶液0.5ml、プロピレン8 molを加え70℃に昇温した。さらにエチレンをその分圧が2.0kg/cm2(全圧22.5kg/cm2)となるまで導入した。その後、上記プロピレン重合用触 媒をオートクレーブ中に圧入した。このとき全圧は24.0kg/cm2となった。 その後、全圧が24.0kg/cm2を維持するように、エチレンを間欠的に供給し ながら20分間重合を行なった。得られたプロピレン共重合体(Mw=689,000 、Mw/Mn=3.1、エチレン含量2.3重量%)は粒子状であり、オートクレーブ中にファウリングは見られなかった。重合活性は18,900g−ポリプロピレン/g−触媒・時間であった。
4)初期活性の評価
上記3)プロピレンとエチレンの共重合において重合時間を5分とした以外は同様に実施した。初期活性は15,700g−ポリプロピレン/g−触媒・時間であった。
【0068】
実施例8
1)メタロセン溶液の調製
TNBAの代わりにTNOAを用いた他は、実施例1と同様に行なった。(B−1)の濃度は1.1mmol/lであった。
2)プロピレン重合用触媒の調製
(A−1)の代わりに(A−2)を用いた他は、実施例1と同様に行なった。
3)プロピレンとエチレンの共重合
1.5リットルのオートクレーブに成分(C)として0.5mol/lのTNOAヘ キサン溶液2.0ml、プロピレン8molを加え70℃に昇温した。さらにエチ レンをその分圧が1.0kg/cm2(全圧21.5kg/cm2)となるまで導入した 。その後、上記プロピレン重合用触媒をオートクレーブ中に圧入した。このとき全圧は23.0kg/cm2となった。その後、全圧が23.0kg/cm2を維持するように、エチレンを間欠的に供給しながら15分間重合を行なった。得られたプロピレン共重合体(Mw=756,000、Mw/Mn=3.2、エチレン含量1.1重量%) は粒子状であり、オートクレーブ中にファウリングは見られなかった。重合活性は14,500g−ポリプロピレン/g−触媒・時間であった。
4)初期活性の評価
上記3)プロピレンとエチレンの共重合において重合時間を5分とした以外は同様に実施した。初期活性は13,200g−ポリプロピレン/g−触媒・時間であった。
【0069】
実施例9
TNOAの代わりにTNHAを用いた以外は実施例8と同様に行なった。(B−1)の濃度は0.32mmol/lであった。得られたプロピレン共重合体(Mw =732,000、Mw/Mn=3.3、エチレン含量1.2重量%)は粒子状であり、オー トクレーブ中にファウリングは見られなかった。重合活性は11,300g−ポリプロピレン/g−触媒・時間であった。また初期活性は9,800g−ポリプロピレン/ g−触媒・時間であった。
【0070】
実施例10
TNBAの代わりにTNOAを用いた以外は実施例7と同様に行なった。(B−1)の濃度は1.0mmol/lであった。得られたプロピレン共重合体(Mw=598,000、Mw/Mn=3.2、エチレン含量2.1重量%)は粒子状であり、オート クレーブ中にファウリングは見られなかった。重合活性は24,100g−ポリプロピレン/g−触媒・時間であった。また初期活性は23,200g−ポリプロピレン/g−触媒・時間であった。
【0071】
比較例3
n−ブチルリチウムを使用せずに、TNBAの代わりにトリ−i−ブチルアルミニウムを用いた以外は実施例7と同様に行なった。(B−1)の濃度は0.24mmol/lであった。得られたプロピレン重合体(Mw=621,000、Mw/Mn=3.3、エチレン含量2.5重量%)は塊状であり、オートクレーブ中にファウリングが見られた。重合活性は18,200g−ポリプロピレン/g−触媒・時間であった。また初期活性は5,150g−ポリプロピレン/g−触媒・時間であった。
【0072】
実施例および比較例の結果を下記表にまとめて示す。
実施例1〜6および比較例1〜2から明らかなように、有機アルミニウム化合物成分(C)として本発明で規定するものを使用した触媒は初期活性に優れ、得られるプロピレン重合体にファウリングの発生や塊状重合体の生成は見られない。また実施例7〜10および比較例3から明らかなように、本発明の触媒は共重合体の製造においても優れた効果を示すことが分かる。
【0073】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明触媒の調製工程を示すフローチャート図である。
Claims (5)
- 一般式(1)
[M1(R1)a(R2)b(R3)c(R4−L)d]-・[K]+ (1)
(式中、M1はホウ素またはアルミニウムであり、R1、R2およびR3は、互いに同一でも異なってもよく、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、アルコキシ基、フェノキシ基またはハロゲン原子であり、R4は炭素数1〜20のヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、Lはシリル基であり、a、bおよびcは0または1〜3の整数、dは1〜4の整数で、かつa+b+c+d=4であり、Kは1価のカチオンである。)で示されるイオン性化合物(a−1)と微粒子状担体(a−2)を接触させて得られる助触媒成分(A)、メタロセン化合物(B)、および一般式(2)
Al(X)m(R)3-m (2)
(式中、Xは水素原子、ハロゲン原子またはアルコキシ基であり、Rはn−ブチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−オクチル、i−オクチルまたはn−デシル基であり、mは0または1である。)で示される有機アルミニウム化合物(C)からなるオレフィン重合用触媒。 - R1、R2およびR3がペンタフルオロフェニル基であり、R4がテトラフルオロフェニレン基である請求項1記載のオレフィン重合用触媒。
- Lがトリクロロシリル基、メチルジクロロシリル基またはジメチルクロロシリル基である請求項1または2に記載のオレフィン重合用触媒。
- メタロセン化合物が一般式(3)
M2、M3およびM4は、互いに同一でも異なってもよく、炭素原子、ケイ素原 子、ゲルマニウム原子またはスズ原子であり、
M5はチタン、ジルコニウム、ハフニウムまたはバナジウムであり、
p、qおよびrは0または1〜2の整数で、かつ1≦p+q+r≦4であり、
Q1およびQ2は、互いに同一でも異なってもよく、2位に置換基を有するインデニル基であり、少なくともいずれか一方は2位および4位に置換基を有し、
X1およびX2は、互いに同一でも異なってもよく、ハロゲン原子、水素原子、アルコキシ基、フェノキシ基、アミド基または炭素数1〜30の炭化水素基である。)
で示されるものである請求項1乃至3のいずれかのオレフィン重合用触媒。 - 有機リチウム、有機亜鉛、有機マグネシウム化合物の中から選ばれる1以上の有機金属化合物(D)を含有する請求項1乃至4のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒。
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