JP3779016B2 - プロピレン共重合用触媒およびプロピレン共重合体の製造方法 - Google Patents

プロピレン共重合用触媒およびプロピレン共重合体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はプロピレン共重合用触媒およびプロピレン共重合体の製造方法に関する。さらに詳しくは、生産効率などの点で工業的に意義のある重合温度においてもファウリングを発生することなく、粒子状のプロピレン共重合体を与えるプロピレン共重合用触媒およびその触媒を用いたプロピレン共重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
メタロセン化合物とアルミノキサンあるいは有機ホウ素化合物などの助触媒とからなる触媒によりプロピレンの共重合体を得ることは公知である。しかし生成する重合体が塊状となる、あるいは重合体粒子が嵩比重の低い取り扱い困難な粉体となり、さらには重合体が反応器の器壁に付着するファウリングなどの問題を有するため、これらの技術を工業的な生産に適用することは困難である。
【0003】
上記問題を解決する試みとしては、メタロセン化合物やアルミノキサンを固体担体上に担持する方法が提案されている。
これらは、例えば特開昭61-108610号公報、同61-296008号公報、同63-280703 号公報、同63-22804号公報、同63-51405号公報、同63-51407号公報、同63-55403号公報、同63-61010号公報、同63-248803号公報、特開平4-100808号公報、同3-74412号公報、同3-709号公報、同4-7306公報等に記載されているが、ファウリン グや塊状の重合体の生成といった問題は十分には解決されていない。
また同様に有機ホウ素化合物を担体上に担持することも提案されており、例えば特開平5-239138号公報、特開平5-247128号公報、特開平7-10917号公報等に開 示されているが、やはりファウリングや塊状の重合体の生成といった問題は十分に解決されてはいない。
【0004】
特表平7-501573号公報には、本発明で使用する成分Aに相当する触媒成分とメタロセン化合物からなる触媒が開示されている。ここでは50℃以下の比較的低温でプロピレンを単独重合した場合においてはファウリングが改善されてはいるものの、重合速度あるいは現場での制御のし易さ等の点から工業的に意義のある50℃を超える温度、ことに約55℃〜約85℃程度の温度においてはファウリングが改善されているとは言い難く、また得られる重合体の性状も取り扱い困難な塊状となってしまう。さらには該公報に記載のメタロセン化合物を使用した場合においては、高分子量の重合体を得ることが困難である。
【0005】
本発明で使用する成分Bのようなメタロセン化合物は、例えば特開平6-100579号公報、特開平7-188318号公報等に記載されている。
特開平6-100579号公報にはこのようなメタロセン化合物と微粒子担体上に担持された助触媒からなる触媒が、70℃程度の工業的に意義のある温度においてファウリングを伴うことなくプロピレンの単独重合体を与えることが開示されているが、その触媒を共重合体の製造に用いた場合におけるファウリングの有無については記載していない。本発明者の検討では該触媒によりプロピレンを共重合体した場合にははなはだしいファウリングを伴い、また得られる重合体も塊状となることが判明した。
このように工業的に意義のある温度においては、メタロセン触媒によりファウリングを伴わずに、高分子量プロピレン共重合体を粒子状で与える製造技術は、未だ充分に確立されているとは言い難いのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明はメタロセン触媒によりファウリングを伴わずに、工業的に意義のある重合温度で高分子量プロピレン共重合体を粒子状で与えることが可能なプロピレン共重合用触媒およびそれを用いたプロピレン共重合体の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記状況に鑑み鋭意検討した結果、特定のイオン性化合物を微粒子担体に接触させて得られる助触媒成分、特定のメタロセン化合物、有機アルミニウム、および有機リチウム化合物等の有機金属化合物からなる触媒により、50℃を超える高温においてプロピレンを重合してもファウリングを伴うことなく、粒子状のプロピレン共重合体が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のプロピレン共重合用触媒、およびプロピレン共重合体の製造方法を提供する。
1)成分A:(I)下記一般式(1)
[M1(R1a(R2b(R3c(R4−L)d-[D]+ (1)
(式中、M1はホウ素、またはアルミニウムであり、
1、R2およびR3は、互いに同一でも異なってもよく、各々炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、アルコキシ基、フェノキシ基またはハロゲン原子であり、
4は炭素数1〜20のヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、
Lはシリル基であり、
Dは1価のカチオンであり、
a〜cは0または1〜3の整数、dは1〜4の整数であり、かつa+b+c+d=4である。)で示されるイオン性化合物および(II)微粒子担体を接触させて得られる助触媒成分、
成分B:下記一般式(2)
Figure 0003779016
(式中、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、互いに同一でも異なってもよく、各々水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、または炭素数1〜20の炭化水素基であり、
2、M3およびM4は、互いに同一でも異なってもよく、各々炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子またはスズ原子であり、
5はチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、p、q、rは0または1〜2の整数で、かつ1≦p+q+r≦4であり、
1およびQ2はシクロペンタジエニル骨格を有する炭化水素基であり、互いに同一でも異なってもよいが、少なくとも一方は2位および4位に置換基を有するインデニル基であり、X1およびX2は、互いに同一でも異なってもよく、各々ハロゲン原子、水素原子、アルコキシ基、フェノキシ基、アミド基または炭素数1〜30の炭化水素基である。)で示されるメタロセン化合物、
成分C:有機アルミニウム化合物、および
成分D:有機リチウム、有機亜鉛、有機マグネシウム化合物から選ばれる1以上の化合物、からなるプロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上のα−オレフィンを60℃以上で共重合するためのプロピレン共重合用触媒。
【0009】
2)R1、R2およびR3がペンタフルオロフェニル基である前記1に記載のプロピレン共重合用触媒。
3)R4がテトラフルオロフェニレン基である前記1または2記載のプロピレン共重合用触媒。
4)Lがトリクロロシリル基、メチルジクロロシリル基、ジメチルクロロシリル基のいずれかである前記1乃至3のいずれかに記載のプロピレン共重合用触媒。
5)成分Dがアルキルリチウムである前記1乃至4のいずれかに記載のプロピレン共重合用触媒。
6)成分Dと成分Bの割合がモル比で成分D/成分B=5/1〜100/1の範囲である前記1乃至5のいずれかに記載のプロピレン共重合用触媒。
7)成分Bにおいて、M2が炭素原子またはケイ素原子であり、pが1または2,かつq=r=0であり、Q1およびQ2が共に2位および4位に置換基を有するインデニル基である前記1乃至6のいずれかに記載のプロピレン共重合用触媒。
8)前記1乃至7のいずれかに記載のプロピレン共重合用触媒の存在下、60℃以上の温度でプロピレンとエチレンを共重合するプロピレン共重合体の製造方法。
9)60℃〜85℃の温度でプロピレンとエチレンを共重合する前記8記載のプロピレン共重合体の製造方法。
10)成分A、成分Bおよび成分Cを予め混合したものと、成分Dとを別々に重合反応器に導入する前記8または9に記載のプロピレン共重合体の製造方法。
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で成分Aに使用される(I)イオン性化合物は下記一般式(1)で表される。
[M1(R1a(R2b(R3c(R4−L)d-[D]+ (1)
式中、M1はホウ素またはアルミニウムであり、好ましくはホウ素である。
1、R2およびR3は、互いに同一でも異なってもよく、各々炭素数1〜20 の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、アルコキシ基、フェノキシ基またはハロゲン原子である。
【0011】
炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基等のアリール基、ハロゲン化アリール基があげられる。アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等があげられる。これらのうち好ましくはアルキル基、アリール基およびハロゲン化アリール基であり、特に好ましくはアリール基およびハロゲン化アリール基である。
【0012】
ハロゲン化アリール基の具体例としては、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基等のジフルオロフェニル基、2,3,4−トリフルオロフェニル基、2,4,5−トリフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基等のトリフルオロフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基等のテトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,4−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等のビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,3,4−トリス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,3,5−トリス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)フェニル基等のトリス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,3,5,6−テトラキス(トリフルオロメチル)フェニル基等のテトラキス(トリフルオロメチル)フェニル基、ペンタキス(トリフルオロメチル)フェニル基等およびこれらのフッ素原子を塩素、臭素等、他のハロゲン原子に置き換えたものなどである。
【0013】
これらハロゲン化アリール基の中でも、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等のフルオロフェニル基が好ましく、さらに好ましくはテトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基であり、最も好ましくは、ペンタフルオロフェニル基である。
【0014】
前記式(I)のイオン性化合物において、R4は炭素数1〜20の炭化水素基 であり、これらは炭素原子および水素原子以外のヘテロ原子(ハロゲン原子等)を含んでいてもよい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、3−フルオロ−o−フェニレン基、4−フルオロ−m−フェニレン基、2−フルオロ−p−フェニレン基等のフルオロフェニレン基、3,4−ジフルオロ−o−フェニレン基、4,5−ジフルオロ−m−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−p−フェニレン基等のジフルオロフェニレン基、2,3,5−トリフルオロ−p−フェニレン基、2,3,6−トリフルオロ−p−フェニレン基等のトリフルオロフェニレン基、2,4,5,6−テトラフルオロ−m−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−p−フェニレン基等のテトラフルオロフェニレン基があげられる。これらのうち好ましくは、2,4,5−トリフルオロ−m−フェニレン基、2,4,6−トリフルオロ−m−フェニレン基、4,5,6−トリフルオロ−m−フェニレン基、2,3,5−トリフルオロ−p−フェニレン基、2,3,6−トリフルオロ−p−フェニレン基、3,4,5,6−テトラフルオロ−o−フェニレン基、2,4,5,6−テトラフルオロ−m−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−p−フェニレン基であり、特に好ましくは、2,4,5,6−テトラフルオロ−m−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−p−フェニレン基である。
【0015】
本発明で使用するイオン性化合物(I)を表わす式(1)中、Lはシリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基のいずれかである。シリル基の例としては、下式(3)で表わされるものが挙げられる。
―〔SiZ12−Z6−〕nSiZ345 (3)
【0016】
式(3)において、Z1、Z2、Z3、Z4およびZ5はハロゲン原子、アルコキ シ基、フェノキシ基、アシルオキシ基、炭素数1〜20の炭化水素基の中から選ばれ、Z3、Z4およびZ5のうち少なくとも一つはハロゲン原子、アルコキシ基 、フェノキシ基、アシルオキシ基のいずれかである。
【0017】
6は酸素原子、イミノ基、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20 のアリーレン基、炭素数1〜20のオキサアルキレン基のいずれかである。nは0または1〜10の整数である。
より具体的には、トリクロロシリル基、トリブロモシリル基、トリヨードシリル基等のトリハロゲノシリル基、メチルジクロロシリル基、エチルジクロロシリル基、n−プロピル−ジクロロシリル基等のアルキルジハロゲノシリル基、ジメチルクロロシリル基、メチルエチルクロロシリル基、ジエチルクロロシリル基等のジアルキルハロゲノシリル基、フェニルジクロロシリル基、フェニルジブロモシリル基、p−トリルジクロロシリル基、クロロフェニルジクロロシリル基等のアリールジハロゲノシリル基、ジフェニルクロロシリル基、ジフェニルブロモシリル基等のジアリールハロゲノシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリ−n−プロポキシシリル基等のトリアルコキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基等のアルキルジアルコキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジエチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基、ジエチルエトキシシリル基等のジアルキルアルコキシシリル基、フェニルジメトキシシリル基、トリルジメトキシシリル基、フェニルジエトキシシリル基、トリルジエトキシシリル基等のアリールジアルコキシシリル基、ジフェニルメトキシシリル基、ジトリルメトキシシリル基、ジフェニルエトキシシリル基、ジトリルエトキシシリル基等のジアリールアルコキシシリル基等のアルコキシ基含有シリル基、トリアセトキシシリル基等のトリアシルオキシシリル基、メチルジアセトキシシリル基等のアルキルジアシルオキシシリル基、ジメチルアセトキシシリル基等のジアルキルアシルオキシシリル基、フェニルジアセトキシシリル基等のアリールジアシルオキシシリル基、ジフェニルアセトキシシリル基等のジアリールアシルオキシシリル基やジメチルヒドロキシシリル基、メチルジヒドロキシシリル基、ジフェニルヒドロキシシリル基、フェニルジヒドロキシシリル基等のアルキルまたはアリールヒドロキシシリル基、トリヒドロキシシリル基等のシリル基が挙げられる。
【0018】
これらのうち好ましいのは、ヒドロキシル基、トリクロロシリル基、メチルジクロロシリル基、ジメチルクロロシリル基、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基、トリアセトキシシリル基、メチルジアセトキシシリル基、ジメチルアセトキシシリル基、トリヒドロキシシリル基、メチルジヒドロキシシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基であり、特に好ましいのはトリクロロシリル基、メチルジクロロシリル基、ジメチルクロロシリル基である。
【0019】
また前記(I)イオン性化合物において、a〜cは0または1〜3の整数で、dは1〜4の整数であり、かつa+b+c+d=4である。このうち好ましいのはd=1である。
【0020】
前記(I)イオン性化合物において、Dは1価のカチオンである。
具体的にはプロトン、トリフェニルカルベニウムイオン、トリ−(p−トリル)カルベニウムイオン等のトリアリールカルベニウムイオンやトリメチルカルベニウムイオン等のカルベニウムイオン、トロピリウムイオン、フェロセニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、トリ−n−ブチルアンモニウムイオン、N,N−ジメチルアニリニウムイオン等のアンモニウムイオン、トリメチルオキソニウムイオン、トリエチルオキソニウムイオン等のオキソニウムイオン、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、プロトン、トリフェニルカルベニウムイオン、トリ−(p−トリル)カルベニウムイオン等のトリアリールカルベニウムイオン、N,N−ジメチルアニリニウムイオン、N,N−ジエチルアニリニウムイオン等のジアルキルアニリニウムイオン、トリメチルオキソニウムイオンやトリエチルオキソニウムイオン等のトリアルキルオキソニウムイオンである。
【0021】
本発明の成分Aに使用される、(II)微粒子担体としては、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属水酸化物、金属アルコキシド、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、珪酸塩や有機高分子化合物等が好適に使用できる。金属酸化物としてはシリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、カルシア、酸化亜鉛等であり、金属ハロゲン化物としては、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ナトリウム等が例示できる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等であり、金属アルコキシドとしてはマグネシウムエトキシド、マグネシウムメトキシド等である。炭酸塩としては炭酸カルシウム、塩基性炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等が挙げられる。硫酸塩としては硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。酢酸塩としては酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等が挙げられる。珪酸塩としては雲母、タルク等の珪酸マグネシウムや珪酸カルシウム珪酸ナトリウム等があげられる。これらのうち好ましくは、シリカ、アルミナ、雲母やタルク等の珪酸マグネシウムや珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム等の珪酸塩である。
【0022】
有機高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体の部分あるいは完全鹸化物等のポリオレフィンやその変性物、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0023】
これら有機高分子化合物のうち好ましいのは、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等の極性基を有するものであり、具体的には水酸基含有不飽和化合物、不飽和カルボン酸等でグラフト変性した変性ポリオレフィン、エチレン−ビニルエステル共重合体の部分あるいは完全鹸化物等である。
これら(II)微粒子担体の平均粒子径は、特に制限はないが、通常0.1〜2,000μmの範囲であり、好ましくは1〜1,000μm、さらに好ましくは5〜100μ mの範囲である。また比表面積は、特に制限はないが通常0.1〜2,000m2/gの 範囲であり、好ましくは10〜1,500m2/gであり、さらに好ましくは100〜1,000m2/gの範囲である。
【0024】
本発明で用いる成分Aの製造にあたっては前記(I)のイオン性化合物と(II)の微粒子状担体を任意の方法で接触させることが可能であり、有機溶剤の非存在下で直接接触させても良いが、一般的には有機溶剤中で接触が行なわれる。ここで用いられる有機溶剤としてはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類やN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド等のアミド類、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、デカノール等のアルコール類およびこれらの混合物等が使用可能である。
【0025】
前記(I)イオン性化合物と(II)微粒子状担体との接触は、使用する有機溶剤やその他の条件を考慮して任意の温度で可能であるが、通常−80℃〜300℃の範囲で行なわれる。接触温度の好ましい範囲は−50℃〜200℃であり、さらに好ましい範囲は0℃〜150℃である。また前記イオン性化合物(I)の微粒子状担体(II)に対する使用量に特に制限はないが、通常微粒子状担体(II)の100重量部に対しイオン性化合物(I)が0.0001〜1,000,000重量部の範 囲である。イオン性化合物(I)の使用量を多くすると、オレフィン重合触媒の重合活性は向上する傾向にあるが、重合活性と製造コストのバランスを考慮するとイオン性化合物(I)の使用量は微粒子状担体(II)100重量部に対し、好ましくは0.1〜10,000重量部の範囲であり、さらに好ましくは1〜1,000重量部の範囲である。
【0026】
このような方法により前記イオン性化合物(I)が化学結合あるいは物理的吸着により微粒子状担体(II)に担持され、本発明の成分Aを与えることとなる。
【0027】
以下、本発明で使用する成分Bについて具体的に説明する。
成分Bは下記一般式(2)で表わされるメタロセン化合物である。
Figure 0003779016
【0028】
式中、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、互いに同一でも異なってもよ く、各々水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、または炭素数1〜20の炭化水素基のいずれかである。
炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基やフェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアリールアルキル基、ビニル基、プロペニル基等のアルケニル基等が挙げられる。
【0029】
2、M3およびM4は、互いに同一でも異なってもよく、各々炭素原子、ケイ 素原子、ゲルマニウム原子またはスズ原子であり、好ましくは炭素原子およびケイ素原子である。
5はチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウムのいずれかであり、好 ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウムのいずれかであり、さらに好ましくはジルコニウムまたはハフニウムであり、最も好ましくはジルコニウムである。
【0030】
p,q,rは0または1〜2の整数であり、かつ1≦p+q+r≦4であり、好ましくは1≦p+q+r≦2である。
1およびQ2は、互いに同一でも異なってもよく、各々シクロペンタジエニル骨格を有する炭化水素基であり、具体的にはη5−1−インデニル基や、2−メ チル−(η5−1−インデニル)基、2−エチル−(η5−1−インデニル)基、2−i−プロピル−(η5−1−インデニル)基等の置換インデニル基、もしく は2―メチル(η5−シクロペンタジエニル)基、3−メチル(η5−シクロペンタジエニル)基、2,4−ジメチル(η5−シクロペンタジエニル)基、2,3 ,5−トリメチル(η5−シクロペンタジエニル)基等のシクロペンタジエニル 基、9−フルオレニル基等である。
【0031】
1およびQ2のうち少なくともいずれか一方は2位および4位に置換基を有するインデニル基であり、好ましくはQ1およびQ2の両方とも2位および4位に置換基を有するインデニル基である。2位および4位に置換基を有するインデニル基の例としては、2,4−ジメチル−(η5−1−インデニル)基、2,4,7 −トリメチル−(η5−1−インデニル)基、2−メチル−4−i―プロピル− (η5−1−インデニル)基、2−メチル−4−フェニル−(η5−1−インデニル)基、2−メチル−4−(1−ナフチル)−(η5−1−インデニル)基、2 −メチル−4−(9−アントラセニル)−(η5−1−インデニル)基、2−メ チル−4−(9−フェナントリル)−(η5−1−インデニル)基等であり、特 に4位にアリール基を有するものが好ましい。
【0032】
1およびX2は、互いに同一でも異なってもよく、各々ハロゲン原子、水素原子、アルコキシ基、フェノキシ基、アミド基、または炭素数1〜30の炭化水素基である。
炭素数1〜30の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基やフェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアリールアルキル基、ビニル基、プロペニル基等のアルケニル基等が挙げられる。
【0033】
本発明で成分Bに使用可能なメタロセン化合物をより具体的に示すと、
ビス[2,4,7−トリメチル−(η5−1−インデニル)]ジメチルシランジ ルコニウムジクロライド、
ビス[2,4−ジメチル−(η5−1−インデニル)]ジメチルシランジルコニ ウムジクロライド、
ビス[2−メチル−4,5−ベンゾ(η5−1−インデニル)]ジメチルシラン ジルコニウムジクロライド、
ビス[2−メチル−4−フェニル−(η5−1−インデニル)]ジメチルシラン ジルコニウムジクロライド、
ビス[2−メチル−4−(1−ナフチル)−(η5−1−インデニル)]ジメチ ルシランジルコニウムジクロライド、
1,2−ビス[2,4−ジメチル−(η5−1−インデニル)]エタンジルコニ ウムジクロライド、
1,2−ビス[2,4,7−トリメチル−(η5−1−インデニル)]エタンジ ルコニウムジクロライドや、これらのジルコニウムをチタン、ハフニウムあるいはバナジウム等の他の金属に、塩素原子を他のハロゲン原子や水素原子、アミド基、アルコキシ基、メチル基やベンジル基等の炭化水素基に置き換えたものなどを使用することができる。
【0034】
なお、上記以外のメタロセン化合物、例えばQ1およびQ2の両方とも2位および4位に置換基を持たないインデニル基であるメタロセン化合物を用いた場合には、50℃を超える温度特に55℃以上の重合温度においては、ファウリングが甚だしく、また得られる重合体も塊状となってしまう。
【0035】
本発明で使用する成分C(有機アルミニウム化合物)としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−i−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド等のジアルキルアルミニウムハライドやアルキルアルミニウムジハライド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド等のジアルキルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシドあるいはフェノキシド等である。
【0036】
これらのうち好ましくは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−i−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウムであり、さらに好ましくはトリ−i−ブチルアルミニウム等の分岐アルキル基を有するトリアルキルアルミニウムである。
【0037】
本発明で使用する成分Dは、有機リチウム、有機亜鉛、有機マグネシウム化合物の中から選ばれる1以上である。本発明で成分Dを使用せずに重合を行なうとファウリングが発生し、また得られる重合体は塊状となる。
成分Dの作用は以下のようなものと推定される。すなわち、本発明においては成分Aと成分B(特定のメタロセン化合物)を接触させることにより、該成分Bも微粒子担体上に担持される。このとき成分Bは微粒子担体上に完全に担持されるとは限らず、また一旦担持したものが重合系内で脱離したりする。このような遊離した状態にある成分Bにより反応器壁や重合体粒子表面での重合が進行し、ファウリングが発生すると考えられる。このとき成分Dにより遊離した状態にある成分Bが不活化され、反応器壁や重合体粒子表面での重合が抑制されるため、ファウリングの発生が抑制されると考えられる。
なお、成分Dのような成分Bを不活化する化合物を添加すると重合が阻害され、重合体が得られ難くなると予測される。しかし成分Dにより不活化された成分Bは、再度、成分Aと接触することにより重合活性を回復するため、本発明においては成分Dの添加による重合の阻害は見られず、ファウリングを伴わずに高い活性でプロピレン共重合体を与えるものと推定される。
【0038】
成分Dとして使用可能な有機リチウムとしては、フェニルリチウム等のアリールリチウムや、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、i−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム等のアルキルリチウム等が挙げられる。有機亜鉛としてはジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛等があり、有機マグネシウムとしてはジn−ブチルマグネシウム、n−ブチルエチルマグネシウム、メチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムブロマイド、n−プロピルマグネシウムブロマイド等のジアルキルマグネシウム、i−プロピルマグネシウムブロマイド、n−ブチルマグネシウムクロライド、i−ブチルマグネシウムクロライド、s−ブチルマグネシウムクロライド、t−ブチルマグネシウムクロライド、フェニルマグネシウムブロマイドやこれらの塩素原子や臭素原子を他のハロゲンに変えたものなどのアルキルマグネシウムハライド等がある。これらのうち好ましいのは、有機リチウム、有機マグネシウムであり、さらに好ましいのはアルキルリチウム、ジアルキルマグネシウムであり、最も好ましくはアルキルリチウムである。
【0039】
本発明のプロピレン共重合用触媒は、上記の成分A、成分B、成分Cおよび成分Dを接触させることにより調製される。
調製方法には特に制限は無く、重合を行なう反応器に各成分を別々に導入し反応器内で接触させることで調製してもよく、予め反応器の外で調製してもよい。上記の各成分を重合を行なう反応器に別々に導入し反応器内で本発明の触媒を調製させる場合においては、各成分はそのまま導入してもよいが、ヘキサン、ヘプタンやトルエンといった炭化水素溶剤やパラフィン系、ナフテン系あるいは芳香族系のオイル、グリース等に分散させた状態で導入してもよい。
【0040】
成分A〜成分Dの各成分を反応器の外で接触させて触媒を調製する場合、一般的には有機溶剤中で接触が行なわれる。ここで用いられる有機溶剤としてはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類やこれらの混合物等が使用可能である。またその温度は使用する有機溶剤やその他の条件を考慮して任意に決定されるが、通常−80℃〜200℃の範囲で行なわれる。接触温度の好ましい範囲は−50℃〜120℃であり、さらに好ましい範囲は0℃〜100℃である。
【0041】
両成分を上記の有機溶剤中で接触させて触媒を調製した後は、そのまま重合を行なう反応器に導入してもよく、液相を固液分離や減圧留去等により除去してから導入してもよい。さらにはヘキサンやトルエンなどで洗浄を行なった後に投入することも可能である。
【0042】
これら触媒調製法のうち成分A、成分Bおよび成分Cを重合を行なう反応器の外で予め接触させた後、重合反応器内で成分Dと接触させることが好ましい。
成分Aに対する成分Bの使用量は特に制限はなく、通常、成分A中に含有されるイオン性化合物および/またはその残基1モルに対し0.01〜20モルである。好ましくは成分A中に含有されるイオン性化合物および/またはその残基1モルに対し、0.05〜10モルであり、さらに好ましくは0.02〜5モル、特に好ましくは0.1〜2モルの範囲である。
【0043】
成分Bに対する成分Cの使用量には特に制限はなく、通常、成分B中に含有されるジルコニウム等の遷移金属1モルに対し0.01〜100,000モルである。好まし くは該遷移金属1モルに対し、0.1〜10,000モルであり、さらに好ましくは10 〜3,000モル、特に好ましくは20〜1,000モルの範囲である。
【0044】
成分Bに対する成分Dの使用量は特に制限はなく、通常、成分B中に含有されるジルコニウム等の遷移金属1モルに対し0.01〜10,000モルである。成分Dの使用量が増加するにつれファウリングは抑制されるが、重合活性は低下する傾向にある。ファウリングを抑制しつつ良好な重合活性を得るために、好ましくは該遷移金属1モルに対し、0.1〜1,000モルであり、さらに好ましくは1〜300モル、特に好ましくは5〜100モルの範囲である。
【0045】
本発明のプロピレン共重合用触媒は任意の重合方法に適用可能であり、具体的には液体プロピレン中で行なうバルク重合、不活性溶剤の存在下に液相中で行なう溶液重合やスラリー重合、気相モノマー中で行なう気相重合において使用することが可能である。これらのうち好ましいのはバルク重合および気相重合である。
【0046】
本発明のプロピレン共重合用触媒は任意の重合温度で使用可能であるが、通常は工業的に意義のある50℃を超える重合温度で使用される。重合温度の好ましい範囲は55〜85℃の範囲であり、さらに好ましくは60℃〜85℃、特に好ましくは60℃〜80℃の範囲である。重合時の圧力は液相中の重合において常圧〜70kg/cm2、気相中では常圧〜50kg/cm2の範囲が一般的であり、得ようとするプロピレン共重合体の性質や、生産性などを考慮して適当な範囲を選択できる。また重合時には、水素の導入や温度、圧力の選定など任意の手段により分子量を調節することが可能である。
【0047】
本発明のプロピレン共重合用触媒を使用するプロピレン共重合体の製造方法により得られるプロピレン共重合体は、プロピレンとエチレンや炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体である。炭素数4以上のα−オレフィンとしては1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の高級オレフィンが使用可能である。また本発明の主旨を逸脱しない範囲においてスチレン、ビニルトルエンといったビニル芳香族化合物やブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,4−ヘキサジエンといった共役あるいは非共役ジエン等の少量を共重合することも可能である。
【0048】
本発明で得られるプロピレン共重合体のプロピレン含量は80.0〜99.9重量%の範囲であり、好ましくは90.0〜99.5重量%、さらに好ましくは93〜99.0重量%の範囲である。またその融点は70〜160℃の範囲であり、好ましくは90〜155℃の範囲、さらに好ましくは100〜150℃の範囲である。重量平均分子量に特に制限はなく、通常50,000以上であり、好ましくは100,000〜1,000,000、さらに好ましくは150,000〜700,000の範囲である。
【0049】
【発明の効果】
本発明のプロピレン共重合用触媒により、ファウリングを伴わずに工業的に意義のある50℃を超える重合温度で、高分子量プロピレン共重合体を粒子状で得ることができる。
【0050】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限りこれらに限定されるものではない。
実施例および比較例において、使用した各成分および物性の測定方法は以下の通りである。
【0051】
成分Aの製造
A−1
1)(I)イオン性化合物の製造
1−ブロモ−2,3,5,6−テトラフルオロフェニルベンゼン3.85g(1.86mmol)をジエチルエーテル50mlに溶解した。さらに−78℃でn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6mol/リットル)10.5mlを滴下し、30分間撹 拌した。得られた溶液をトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのヘキサン溶液(50mmol/リットル)200mlに添加し、25℃で20分間撹拌することにより、生成物を固体として得た。溶液層を除去後、得られた固体をヘキサンで洗浄し真空乾燥を行なった。
【0052】
上記で得られた固体1.66gをテトラヒドロフラン10mlに溶解し−78℃まで冷却した後、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6mol/リットル)1.5mlを滴下し45分間撹拌した。この溶液を四塩化ケイ素2.7mlをテトラヒドロフ ラン10mlに溶解した溶液に添加し、25℃で15分間撹拌した。この溶液にヘプタン100mlを加えた後、テトラヒドロフランを留去した。ヘプタン層を除去した残分をヘキサンで洗浄後、真空乾燥した。さらにジクロロメタン50mlを加え不溶分を除去した後、ジクロロメタンを留去することで1.65gの生成物を得た。
【0053】
この生成物1.65gをジクロロメタン30mlに溶解した後、ジメチルアニリニウムクロライド0.31gを添加し、25℃で5分間撹拌した。不溶分を除去後、ジクロロメタンを留去、真空乾燥することでN,N−ジメチルアニリニウムトリス(ペンタフルオロフェニル)(p−トリクロロシリルテトラフルオロフェニル)ボラート1.7gを得た。
【0054】
2)(II)微粒子状担体との接触
ジクロロメタン30mlにシリカ(富士デビソン社製952,平均粒子径:130μm,比表面積:270m2/g)0.5gを加えたスラリーに対し、前記(I)イオン性化合物0.3gをジクロロメタン6mlに溶解させた溶液を添加した。 撹拌下2時間還流させた後、上澄みを除去しジクロロメタンで洗浄し、成分A−1を得た。
【0055】
A−2
前記A−1の(I)イオン性化合物の調製において、四塩化ケイ素の代わりにジメチルジクロロシランを用い、N,N−ジメチルアニリニウムトリス(ペンタフルオロフェニル)〔p−(クロロジメチルシリル)テトラフルオロフェニル〕ボラートを調製したのち、同様に微粒子状担体との接触を行ないA−2を得た。
【0056】
成分B
下記の、B−1〜B−4を使用した。
B−1:ビス[2−メチル−4,5−ベンゾ(η5−1−インデニル)]ジメチ ルシランジルコニウムジクロライド、
B−2:ビス[2−メチル−4−(1−ナフチル)−(η5−1−インデニル) ]ジメチルシランジルコニウムジクロライド、
B−3:ビス[2−メチル−4−フェニル−(η5−1−インデニル)]ジメチ ルシランジルコニウムジクロライド、
B−4:1,2−ビス[2,4,7−トリメチル−(η5−1−インデニル)] エタンジルコニウムジクロライド。
【0057】
重量平均分子量の測定
試験管に5mlの1,2,4−トリクロロベンゼンを取り、これに試料約2.5 gを投入した。この試験管に栓をした後、160℃の恒温槽で試料を溶解させた。得られた溶液を焼結フィルターでろ過した後、ろ液をWaters社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置150C(カラム:Shodex AT−806MS カラム温度140℃ 溶媒流量1ml/分)を用いて測定した。
【0058】
実施例1
1)プロピレン重合用触媒の調製
B−1の0.5mmol/リットル−トルエン溶液4mlと成分Cとして0.5mol/リットルのトリイソブチルアルミニウム(以下、TIBAと略記する。)トルエン溶液1mlを混合した溶液に、上記成分A−1を30mg添加し3分間撹拌しオレフィン重合用触媒のスラリーを得た。
【0059】
2)プロピレンの重合
1.5リットル のオートクレーブに成分Dとして0.1mol/lのn−BuLiヘキ サン溶液0.5ml、プロピレン8molを加え60℃に昇温し、エチレンをその 分圧が1.0kg/cm2となるまで導入した。その後、上記オレフィン重合用触媒をオートクレーブ中に圧入し、エチレンをその分圧が1.0kg/cm2なるよう間欠的に導入しながら10分間重合を行なった。得られたプロピレン共重合体は粒子状であり、オートクレーブ中にファウリングは見られなかった。得られたプロピレン共重合体の重量平均分子量は136,000であった。
【0060】
実施例2
B−1の代わりにB−2を用いた以外は実施例1と同様に行なった。得られたプロピレン共重合体は粒子状であり、オートクレーブ中にファウリングは見られなかった。得られたプロピレン共重合体の重量平均分子量は735,000であった。
【0061】
実施例3
B−1の代わりにB−3を用いた以外は実施例1と同様に行なった。得られたプロピレン共重合体は粒子状であり、オートクレーブ中にファウリングは見られなかった。得られたプロピレン共重合体の重量平均分子量は436,000であった。
【0062】
実施例4
B−1の代わりにB−4を用いた以外は実施例1と同様に行なった。得られたプロピレン共重合体は粒子状であり、オートクレーブ中にファウリングは見られなかった。得られたプロピレン共重合体の重量平均分子量は136,000であった。
【0063】
実施例5
1)プロピレン重合用触媒の調製
B−2の0.5mmol/リットル−トルエン溶液4mlと、成分CとしてTIBA の0.5mol/リットル−トルエン溶液1mlを混合した溶液に上記成分A−2を3 0mg添加し3分間撹拌しオレフィン重合用触媒のスラリーを得た。
【0064】
2)プロピレンの重合
1.5リットル のオートクレーブに成分Dとして0.1mol/リットルのn−BuLiヘ キサン溶液0.5ml、プロピレン8molを加え70℃に昇温し、エチレンをそ の分圧が1.0kg/cm2となるまで導入した。その後、上記オレフィン重合用触媒をオートクレーブ中に圧入し、エチレンをその分圧が1.0kg/cm2となるよう間欠的に導入しながら20分間重合を行なった。得られたプロピレン共重合体は粒子状であり、オートクレーブ中にファウリングは見られなかった。得られたプロピレン共重合体の重量平均分子量は651,000であった。
【0065】
実施例6
成分Dとしてn−ブチルリチウムの代わりにn−ブチルエチルマグネシウムを0.01mmol用いた以外は実施例5と同様に行なった。得られたプロピレン共重合体は粒子状であり、オートクレーブ中にファウリングは見られなかった。得られたプロピレン共重合体の重量平均分子量は612,000であった。
【0066】
実施例7
成分Dとしてn−ブチルリチウムの代わりにジエチル亜鉛を0.01mmol用いた以外は実施例5と同様に行なった。得られたプロピレン共重合体は粒子状であり、オートクレーブ中にファウリングは見られなかった。得られたプロピレン共重合体の重量平均分子量は593,000であった。
【0067】
比較例1
B−1の代わりに1,2−ビス(η5−1−インデニル)エタンジルコニウム ジクロライドを用いた以外は実施例1と同様に行なった。得られたプロピレン共重合体は塊状であった。オートクレーブ中にファウリングが見られた。得られたプロピレン共重合体の重量平均分子量は21,000であった。
【0068】
比較例2
成分Dを用いなかった以外は実施例1と同様に行なった。得られたプロピレン共重合体は塊状であった。オートクレーブ中にファウリングが見られた。得られたプロピレン共重合体の重量平均分子量は148,000であった。
【0069】
比較例3
1)助触媒成分の調製
トルエン50mlにシリカ(富士デビソン社製952)3.0gを加えたスラリ ーに対し、公知の方法にしたがって製造したメチルアルミノキサン(Al原子換算で0.35mol/リットル)のトルエン溶液70mlを添加した。室温で1時間撹拌した後、トルエンを減圧で留去した。その後、30mlのヘキサンで5回洗浄し、助触媒成分を得た。
【0070】
2)プロピレン重合用触媒の調製
B−1の0.5mmol/リットル−トルエン溶液4mlと0.5mol/リットルのTIBAのトルエン溶液1mlを混合した溶液に、成分Aの代わりに上記1)で調製した助触媒成分を30mg添加後、3分間撹拌しオレフィン重合用触媒のスラリーを得た。
【0071】
3)プロピレンの重合
上記2)で得られた触媒を用い、重合時間を10分とした以外は実施例1と同様に行なった。得られたプロピレン共重合体は塊状であり、オートクレーブ中に激しいファウリングが見られた。得られたプロピレン共重合体の重量平均分子量は178,000であった。
【0072】
比較例4
1)助触媒成分の調製
ジクロロメタン30mlにシリカ(富士デビソン社製952)0.5gを加えた スラリーに対し、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート0.3gをジクロロメタン6mlに溶解させた溶液を添加した。 撹拌下2時間環流させた後、上澄みを除去し10mlのトルエンで2回洗浄し、助触媒成分を得た。
【0073】
2)プロピレンの重合
実施例1において成分Aの代わりに上記助触媒成分を用い、重合時間を5分とした以外は同様に行なった。オートクレーブ内に重合体の激しい付着が見られ、得られたプロピレン共重合体は塊状であった。得られたプロピレン共重合体の重量平均分子量は156,000であった。
【0074】
比較例1に見られるように本発明のメタロセン化合物と異なるメタロセン化合物を使用すると、重合時にファウリングが発生し、得られる重合体も塊状となる。また比較例2では本発明の成分Dを使用していないため、重合時にファウリングが発生し、得られる重合体も塊状となることが判る。比較例3、4は従来から多数提案されている担持助触媒を本発明のメタロセン化合物と組み合わせたものであるが、この場合においても重合時にファウリングが発生し、得られる重合体も塊状となることが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプロピレン共重合用触媒調製のフローチャート図である。

Claims (10)

  1. 成分A:(I)下記一般式(1)
    [M1(R1a(R2b(R3c(R4−L)d-[D]+ (1)
    (式中、M1はホウ素、またはアルミニウムであり、
    1、R2およびR3は、互いに同一でも異なってもよく、各々炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、アルコキシ基、フェノキシ基またはハロゲン原子であり、
    4は炭素数1〜20のヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、
    Lはシリル基であり、
    Dは1価のカチオンであり、
    a〜cは0または1〜3の整数、dは1〜4の整数であり、かつa+b+c+d=4である。)で示されるイオン性化合物および(II)微粒子担体を接触させて得られる助触媒成分、
    成分B:下記一般式(2)
    Figure 0003779016
    (式中、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、互いに同一でも異なってもよく、各々水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、または炭素数1〜20の炭化水素基であり、
    2、M3およびM4は、互いに同一でも異なってもよく、各々炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子またはスズ原子であり、
    5はチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、p、q、rは0または1〜2の整数で、かつ1≦p+q+r≦4であり、
    1およびQ2はシクロペンタジエニル骨格を有する炭化水素基であり、互いに同一でも異なってもよいが、少なくとも一方は2位および4位に置換基を有するインデニル基であり、X1およびX2は、互いに同一でも異なってもよく、各々ハロゲン原子、水素原子、アルコキシ基、フェノキシ基、アミド基または炭素数1〜30の炭化水素基である。)で示されるメタロセン化合物、
    成分C:有機アルミニウム化合物、および
    成分D:有機リチウム、有機亜鉛、有機マグネシウム化合物から選ばれる1以上の化合物、からなるプロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上のα−オレフィンを60℃以上で共重合するためのプロピレン共重合用触媒。
  2. 1、R2およびR3がペンタフルオロフェニル基である請求項1に記載のプロピレン共重合用触媒。
  3. 4がテトラフルオロフェニレン基である請求項1または2記載のプロピレン共重合用触媒。
  4. Lがトリクロロシリル基、メチルジクロロシリル基、ジメチルクロロシリル基のいずれかである請求項1乃至3のいずれかに記載のプロピレン共重合用触媒。
  5. 成分Dがアルキルリチウムである請求項1乃至4のいずれかに記載のプロピレン共重合用触媒。
  6. 成分Dと成分Bの割合がモル比で成分D/成分B=5/1〜100/1の範囲である請求項1乃至5のいずれかに記載のプロピレン共重合用触媒。
  7. 成分Bにおいて、M2が炭素原子またはケイ素原子であり、pが1または2,かつq=r=0であり、Q1およびQ2が共に2位および4位に置換基を有するインデニル基である請求項1乃至6のいずれかに記載のプロピレン共重合用触媒。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載のプロピレン共重合用触媒の存在下、60℃以上の温度でプロピレンとエチレンを共重合するプロピレン共重合体の製造方法。
  9. 60℃〜85℃の温度でプロピレンとエチレンを共重合する請求項8記載のプロピレン共重合体の製造方法。
  10. 成分A、成分Bおよび成分Cを予め混合したものと、成分Dとを別々に重合反応器に導入する請求項8または9に記載のプロピレン共重合体の製造方法。
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