JP3779006B2 - プロピレン系共重合体製造用触媒およびプロピレン系共重合体の製造方法 - Google Patents
プロピレン系共重合体製造用触媒およびプロピレン系共重合体の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプロピレン系共重合体製造用触媒に関するものであり、さらに詳しくは重合体の反応器への付着を伴わずに、高コモノマー含量の高分子量プロピレン系共重合体を粒子状で得ることの出来るプロピレン系共重合体製造用触媒およびプロピレン系共重合体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
メタロセン化合物とアルミノキサンあるいは有機ホウ素化合物からなる触媒によりオレフィンの共重合体を得ることは公知であり、このような触媒から得られる共重合体はシート、フィルム、ラミネートといった分野での利用が期待されている。例えば特開平2-173015号公報、同2-173016号公報、同2-173110号公報、同2-255812号公報などに特定のメタロセン化合物とアルミノキサンからなる触媒によりプロピレン、α−オレフィンおよびエチレンからなる共重合体が得られることが開示されている。しかしながら生成する重合体が塊状となること、あるいは重合体粒子が嵩比重の低い取り扱い困難な粉体となること、さらには重合体が反応器の器壁に付着したりすることなどの問題を有するため、これらの技術を工業的な生産に適用することは困難である。
【0003】
上記問題を解決する試みとしては、メタロセン化合物やアルミノキサンを固体担体上に担持する方法が提案されているが、重合体の反応器への付着が十分には解決されていない。これらは、例えば特開昭61-108610号公報、同61-296008号公報、同63-280703号公報、同63-22804号公報、同63-51405号公報、同63-51407号 公報、同63-55403号公報、同63-61010号公報、同63-248803号公報、特開平4-100808号公報、同3-74412号公報、同3-709号公報、同4-7306公報等に記載されてい る。
【0004】
また、同様に有機ホウ素化合物を担体上に担持することも提案されており、例えば特開平5-239138号公報、特開平5-247128号公報、特開平7-10917号公報など に開示されているが、やはり重合体の反応器への付着が十分に解決されてはいない。
特表平7-501573号公報には本発明の成分(A)に相当する触媒成分とメタロセン化合物からなる触媒が開示されている。そこではプロピレン単独重合体の製造においては重合体の反応器への付着が改善されてはいるものの、プロピレン系共重合体を製造した場合にはこれらの問題が解決されているとは言い難く、特に高コモノマー含量の共重合体を粒子状で得ることは困難である。さらには該公報に記載のメタロセン化合物を使用した場合においては、高分子量の共重合体を得ることは困難である。
【0005】
このようにメタロセン触媒により重合体の反応器への付着を伴わずに、高分子量プロピレン系共重合体を粒子状で与える製造技術は、未だ充分に確立されているとは言い難いのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、重合体の反応器への付着を伴わずに、高コモノマー含量の高分子量プロピレン系共重合体を粒子状で与える触媒を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記状況に鑑み鋭意検討した結果、特定のイオン性化合物を微粒子担体に接触させて得られる固体触媒成分に対して、特定の構造を有するメタロセン化合物を組み合わせることにより、重合体の反応器への付着を伴わずに、高コモノマー含量の高分子量プロピレン系共重合体を粒子状で与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
1)成分(A):一般式(I)
【化3】
〔M1(R1)a(R2)b(R3)c(R4−L)d〕-[D]+ (I)
(式中、M1はホウ素、またはアルミニウムであり、
R1、R2およびR3は、各々同一でも異なってもよく、炭素数1〜20の炭化 水素基、ハロゲン化炭化水素基、アルコキシ基、フェノキシ基またはハロゲン原子であり、
R4は炭素数1〜20のアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン 基、ハロゲン化アリーレン基、シラニレン基、置換シラニレン基、シラアルキレン基、置換シラアルキレン基、オキサシラニレン基、置換オキサシラニレン基またはオキサシラアルキレン基であり、
Lはシリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基またはアミノ基であり、
a、bおよびcは0または1〜3の整数、dは1〜4の整数であり、かつa+b+c+d=4であり、
Dは1価のカチオンである。)で表されるイオン性化合物および微粒子担体を接触させて得られる固体触媒成分、および成分(B):下記一般式(II)
【化4】
(式中、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、互いに同一でも異なってもよ く、各々水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基または炭素数1〜20の炭化水素基であり、
M2、M3およびM4は、互いに同一でも異なってもよく、各々炭素原子または ケイ素原子であり、
p、qおよびrは0または1〜2の整数であり、かつ1≦p+q+r≦4であり、
Q1およびQ2はシクロペンタジエニル骨格を有する炭化水素基であり、
X1およびX2は、互いに同一でも異なってもよく、各々ハロゲン原子、水素原子、アルコキシ基、フェノキシ基、アミド基または炭素数1〜30の炭化水素基である。)の構造を有するメタロセン化合物からなるプロピレン系共重合体製造用触媒、
【0009】
2)Q1、Q2の少なくともいずれか一方が、インデニル基もしくは置換インデニル基である前記1記載のプロピレン系共重合体製造用触媒、
3)Q1、Q2の少なくともいずれか一方が、2位にメチル基、エチル基またはi−プロピル基を有する置換インデニル基である前記1または2記載のプロピレン系共重合体製造用触媒、
4)p=1でq=r=0である前記1、2または3記載のプロピレン系共重合体製造用触媒、
5)p=q=1でr=0である前記1乃至4のいずれかに記載のプロピレン系共重合体製造用触媒、
6)R1、R2およびR3がペンタフルオロフェニル基である前記1乃至5のいず れかに記載のプロピレン系共重合体製造用触媒、
7)R4がテトラフルオロフェニレン基である前記6記載のプロピレン系共重合 体製造用触媒、
8)Lがトリクロロシリル基、メチルジクロロシリル基またはジメチルクロロシリル基のいずれかである前記1乃至7のいずれかに記載のプロピレン系共重合体製造用触媒、
9)Dがジアルキルアニリニウムイオンである前記1乃至8のいずれかに記載のプロピレン系共重合体製造用触媒、および
10)前記1乃至9のいずれかに記載のプロピレン系共重合体製造用触媒の存在下にプロピレンとエチレンおよび/またはα−オレフィンを共重合し、プロピレン含量が70重量%以上の共重合体を得るプロピレン系共重合体の製造方法を提供する。
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明において使用するイオン性化合物(A)は下記一般式(I)で表される。
【化5】
〔M1R1 aR2 bR3 c(R4−L)d〕-[D]+ (I)
【0011】
式中、M1はホウ素またはアルミニウムであり、好ましくはホウ素であり、
R1、R2およびR3は炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、 アルコキシ基、フェノキシ基またはハロゲン原子であり、これらは互いに異なってもよく、同一でもよい。炭化水素基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ハロゲン化アリール基が挙げられる。アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。これらのうち好ましくはアルキル基、アリール基およびハロゲン化アリール基であり、特に好ましくはアリール基およびハロゲン化アリール基である。
【0012】
アリール基の具体的としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基等が例示できる。
ハロゲン化アリール基の具体例としては、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基等のジフルオロフェニル基、2,3,4−トリフルオロフェニル基、2,4,5−トリフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基等のトリフルオロフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基等のテトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、およびこれらのフッ素原子を塩素、臭素等の他のハロゲン原子に換えたものなどがある。
【0013】
ハロゲン化アリール基の他の具体例としては、3,4−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等のビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,3,4−トリス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,3,5−トリス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)フェニル基等のトリス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,3,5,6−テトラキス(トリフルオロメチル)フェニル基等のテトラキス(トリフルオロメチル)フェニル基、ペンタキス(トリフルオロメチル)フェニル基等およびこれらのフッ素原子を塩素、臭素等、他のハロゲン原子に置き換えたものなどがある。
【0014】
これらハロゲン化アリール基の中でも、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基などのフルオロフェニル基が好ましく、さらに好ましくはテトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基であり、最も好ましくは、ペンタフルオロフェニル基である。
【0015】
前記イオン性化合物(I)において、R4は炭素数1〜20のアルキレン基、 ハロゲン置換アルキレン基、アリーレン基、ハロゲン置換アリーレン基、シラニレン基、置換シラニレン基、シラアルキレン基、置換シラアルキレン基、オキサシラニレン基、置換オキサシラニレン基、オキサシラアルキレン基のいずれかである。
【0016】
具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、3−フルオロ−o−フェニレン基、4−フルオロ−m−フェニレン基、2−フルオロ−p−フェニレン基等のフルオロフェニレン基、3,4−ジフルオロ−o−フェニレン基、4,5−ジフルオロ−m−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−p−フェニレン基等のジフルオロフェニレン基、2,3,5−トリフルオロ−p−フェニレン基、2,3,6−トリフルオロ−p−フェニレン基等のトリフルオロフェニレン基、2,4,5,6−テトラフルオロ−m−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−p−フェニレン基等のテトラフルオロフェニレン基が挙げられる。
【0017】
これらのうち好ましくは、2,4,5−トリフルオロ−m−フェニレン基、2,4,6−トリフルオロ−m−フェニレン基、4,5,6−トリフルオロ−m−フェニレン基、2,3,5−トリフルオロ−p−フェニレン基、2,3,6−トリフルオロ−p−フェニレン基、3,4,5,6−テトラフルオロ−o−フェニレン基、2,4,5,6−テトラフルオロ−m−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−p−フェニレン基であり、特に好ましくは、2,4,5,6−テトラフルオロ−m−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−p−フェニレン基である。
【0018】
本発明におけるイオン性化合物(A)中のLは、シリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基のいずれかである。
シリル基の例としては、下式 (III)で表わされるものが挙げられる。
【化6】
―〔Si(Z1Z2)−Z6−〕nSiZ3Z4Z5 (III)
【0019】
式(III) において、Z1、Z2、Z3、Z4およびZ5はハロゲン原子、アルコキ シ基、フェノキシ基、アシルオキシ基、炭素数1〜20の炭化水素基の中から選ばれ、Z3、Z4およびZ5のうち少なくとも一つはハロゲン原子、アルコキシ基 、フェノキシ基、アシルオキシ基のいずれかであり、Z6は酸素原子、イミノ基 、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、炭素数1〜20のオキサアルキレン基のいずれかであり、nは0または1〜10の整数である。
【0020】
より具体的には、トリクロロシリル基、トリブロモシリル基、トリヨードシリル基等のトリハロゲノシリル基やメチルジクロロシリル基、エチルジクロロシリル基、n−プロピル−ジクロロシリル基等のアルキルジハロゲノシリル基、ジメチルクロロシリル基、メチルエチルクロロシリル基、ジエチルクロロシリル基等のジアルキルハロゲノシリル基、フェニルジクロロシリル基、フェニルジブロモシリル基、p−トリルジクロロシリル基、クロロフェニルジクロロシリル基等のアリールジハロゲノシリル基、ジフェニルクロロシリル基、ジフェニルブロモシリル基等のジアリールハロゲノシリル基が挙げられる。
【0021】
さらには、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリ−n−プロポキシシリル基等のトリアルコキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基等のアルキルジアルコキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジエチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基、ジエチルエトキシシリル基等のジアルキルアルコキシシリル基、フェニルジメトキシシリル基、トリルジメトキシシリル基、フェニルジエトキシシリル基、トリルジエトキシシリル基等のアリールジアルコキシシリル基、ジフェニルメトキシシリル基、ジトリルメトキシシリル基、ジフェニルエトキシシリル基、ジトリルエトキシシリル基等のジアリールアルコキシシリル基などのアルコキシ基含有シリル基が挙げられる。
【0022】
さらにトリアセトキシシリル基等のトリアシルオキシシリル基、メチルジアセトキシシリル基等のアルキルジアシルオキシシリル基、ジメチルアセトキシシリル基等のジアルキルアシルオキシシリル基、フェニルジアセトキシシリル基等のアリールジアシルオキシシリル基、ジフェニルアセトキシシリル基等のジアリールアシルオキシシリル基やジメチルヒドロキシシリル基、メチルジヒドロキシシリル基、ジフェニルヒドロキシシリル基、フェニルジヒドロキシシリル基等のアルキルまたはアリールヒドロキシシリル基、トリヒドロキシシリル基等のシリル基が挙げられる。
【0023】
これらのうち好ましくは、ヒドロキシル基、トリクロロシリル基、メチルジクロロシリル基、ジメチルクロロシリル基、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基、トリアセトキシシリル基、メチルジアセトキシシリル基、ジメチルアセトキシシリル基、トリヒドロキシシリル基、メチルジヒドロキシシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基であり、特に好ましくはトリクロロシリル基、メチルジクロロシリル基、ジメチルクロロシリル基である。
【0024】
また前記イオン性化合物(A)において、a、bおよびcは0または1〜3の整数、dは1〜4の整数であり、かつa+b+c+d=4である。このうち好ましくはd=1である。
前記イオン性化合物(A)において、Dは1価のカチオンであり、具体的にはプロトン、トリフェニルカルベニウムイオン、トリ−(p−トリル)カルベニウムイオンなどのトリアリールカルベニウムイオンやトリメチルカルベニウムイオン等のカルベニウムイオン、トロピリウムイオン、フェロセニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、トリ−n−ブチルアンモニウムイオン、N,N−ジメチルアニリニウムイオン等のアンモニウムイオン、トリメチルオキソニウムイオン、トリエチルオキソニウムイオン等のオキソニウムイオン、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオンなどが挙げられる。
【0025】
これらのうち好ましいのは、プロトン、トリフェニルカルベニウムイオン、トリ−(p−トリル)カルベニウムイオン等のトリアリールカルベニウムイオン、N,N−ジメチルアニリニウムイオン、N,N−ジエチルアニリニウムイオン等のジアルキルアニリニウムイオン、トリメチルオキソニウムイオンやトリエチルオキソニウムイオン等のトリアルキルオキソニウムイオンである。
【0026】
本発明において、微粒子担体としては、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属水酸化物、金属アルコキシド、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、珪酸塩や有機高分子化合物等が好適に使用できる。
【0027】
金属酸化物としてはシリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、カルシア、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化銅等であり、金属ハロゲン化物としては、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム等が例示できる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等であり、金属アルコキシドとしてはマグネシウムエトキシド、マグネシウムメトキシド等である。炭酸塩としては炭酸カルシウム、塩基性炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸銅等が挙げられる。硫酸塩としては硫酸塩としては硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸銅、硫酸鉄等が挙げられる。
【0028】
硝酸塩としては硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム、硝酸ストロンチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸銅、硝酸鉄等が挙げられる。酢酸塩としては酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸バリウム、酢酸ストロンチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられる。珪酸塩としては雲母、タルク等の珪酸マグネシウムや珪酸カルシウム珪酸ナトリウム等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、シリカ、アルミナ、雲母やタルク等の珪酸マグネシウムや珪酸カルシウム、珪酸ナトリウムなどの珪酸塩である。
【0029】
これら担体の平均粒子径は、特に制限はないが、通常 0.1〜 2,000μmの範囲であり、好ましくは1〜 1,000μm、さらに好ましくは5〜100μmの範囲である。また比表面積は、特に制限はないが通常 0.1〜 2,000m2/gの範囲であ り、好ましくは10〜 1,500m2/gであり、さらに好ましくは100〜 1,000 m2/gの範囲である。
【0030】
本発明で使用する成分(A)の製造にあたっては、前記イオン性化合物(I)と微粒子状担体を任意の方法で接触させることが可能である。接触は有機溶剤の非存在下で直接行なっても良いが、一般的には有機溶剤中で接触が行われる。
ここで有機溶剤としてはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類やN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロピドン、ヘキサメチルホスホルアミド等のアミド類、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、デカノール等のアルコール類およびこれらの混合物等が使用可能である。
【0031】
前記イオン性化合物(I)と微粒子状担体との接触は、使用する有機溶剤やその他の条件を考慮して任意の温度で可能であり、通常−80℃〜300℃の範囲で行われる。接触温度の好ましい範囲は−50℃〜200℃であり、さらに好ましい範囲は0℃〜150℃である。
【0032】
前記イオン性化合物(I)の微粒子状担体に対する使用量に特に制限はないが、通常微粒子状担体の100重量部に対しイオン性化合物(I)が0.0001〜 1,000,000重量部の範囲である。イオン性化合物(I)の使用量を多くすると、オレフィン重合触媒の重合活性は向上する傾向にあるが、重合活性と製造コストのバランスを考慮するとイオン性化合物(I)の使用量は微粒子状担体100重量部に対し、好ましくは 0.1〜10,000重量部の範囲であり、さらに好ましくは1〜 1,000重量部の範囲である。
【0033】
このような方法により前記イオン性化合物(I)が微粒子状担体に担持され、本発明の成分(A)を与えることとなる。ここで担持の様式は化学結合によるものと推測されるが、その他の様式、たとえば物理的吸着によるものであってもかまわない。
【0034】
本発明における成分(B)は特定の構造を有するメタロセン化合物であり、重合体粒子の反応器への付着を伴わずに、高コモノマー含量の高分子量プロピレン系共重合体を粒子状で得るために必須の成分である。これ以外の化合物、例えば特表平7-501573号公報のようにハフニウムをジルコニウムに代えたメタロセン化合物や、2つのシクロペンタジエニル骨格が架橋していないハフニウム金属を含有するメタロセン化合物を使用して、高コモノマー含量のプロピレン系共重合体を得ようとすると、重合体粒子の反応器への付着が著しく、粒子状で重合体を得ることが困難となる。
【0035】
以下、本発明で用いる成分(B)について具体的に説明する。
成分(B)は下記式(II)で示される構造を有するメタロセン化合物である。
【化7】
【0036】
式中、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は水素原子、ハロゲン原子、アル コキシ基、フェノキシ基、炭素数1〜20の炭化水素基のいずれかであり、互いに同一でもよく、異なってもよい。炭素数1〜20の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基等のアリール基が挙げられる。これらのうち好ましいのは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、フェニル基であり、特に好ましいのはメチル基およびフェニル基である。
【0037】
M2、M3およびM4は炭素原子、ケイ素原子のいずれかであり、互いに同一で もよく、異なってもよい。
p、qおよびrは0または1〜2の整数、かつ1≦p+q+r≦4であり、好ましくは1≦p+q+r≦2である。
【0038】
Q1およびQ2はシクロペンタジエニル骨格を有する炭化水素基であり、より具体的にはシクロペンタジエニル基、2―メチルシクロペンタジエニル基、3−メチルシクロペンタジエニル基、2―エチルシクロペンタジエニル基、3−エチルシクロペンタジエニル基、2―n−プロピルシクロペンタジエニル基、3−n−プロピルシクロペンタジエニル基、2―i−プロピルシクロペンタジエニル基、3−i−プロピルシクロペンタジエニル基、2―n−ブチルシクロペンタジエニル基、3−n−ブチルシクロペンタジエニル基、2―i−ブチルシクロペンタジエニル基、3−i−ブチルシクロペンタジエニル基、2―s−ブチルシクロペンタジエニル基、3−s−ブチルシクロペンタジエニル基、2―t−ブチルシクロペンタジエニル基、3−t−ブチルシクロペンタジエニル基、2―フェニルシクロペンタジエニル基、3−フェニルシクロペンタジエニル基、2,3―ジメチルシクロペンタジエニル基、2,4−ジメチルシクロペンタジエニル基、2,5―ジメチルシクロペンタジエニル基、3,4−ジメチルシクロペンタジエニル基、2,3,4―トリメチルシクロペンタジエニル基、2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、2,3−ジエチルシクロペンタジエニル基、2,4−ジエチルシクロペンタジエニル基、2,5−ジエチルシクロペンタジエニル基、3,4−ジエチルシクロペンタジエニル基、1−インデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロ(1−インデニル)基、2−メチル−(1−インデニル)基、2−エチル−(1−インデニル)基、2−n−プロピル−(1−インデニル)基、2−i−プロピル−(1−インデニル)基、2−t−ブチル−(1−インデニル)基、2−メチル−4−i−プロピル−(1−インデニル基)、2−メチル−4−フェニル−(1−インデニル基)、2−メチル−4−(1−ナフチル)−(1−インデニル基)、2,4,7−トリメチル−(1−インデニル基)、2−トリメチルシリル−(1−インデニル)基、2−(t−ブチルジメチルシリル)−(1−インデニル)基、9−フルオレニル基等が例示される。
【0039】
これらのうち好ましいのは、1−インデニル基や2−メチル−(1−インデニル)基、2−エチル−(1−インデニル)基、2−i−プロピル−(1−インデニル)基等の置換インデニル基、もしくは2―メチルシクロペンタジエニル基、3−メチルシクロペンタジエニル基、2、4−ジメチルシクロペンタジエニル基、2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル基等、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたシクロペンタジエニル基などの中から選ばれる。
【0040】
X1およびX2は、ハロゲン原子、水素原子、アルコキシ基、フェノキシ基、アミド基、炭素数1〜30の炭化水素基の中から選ばれ、互いに同一でもよく異なってもよい。炭化水素基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、フェニル基等が挙げられる。
【0041】
式(II)で表わされるメタロセン化合物をより具体的に示すと、ビス(メチルシクロペンタジエニルハフニウム)ジメチルシランハフニウムジクロライド、
ビス(エチルシクロペンタジエニルハフニウム)ジメチルシランハフニウムジクロライド、
ビス(n−プロピルシクロペンタジエニルハフニウム)ジメチルシランハフニウムジクロライド、
ビス(i−プロピルシクロペンタジエニルハフニウム)ジメチルシランハフニウムジクロライド、
ビス(n−ブチルシクロペンタジエニルハフニウム)ジメチルシランハフニウムジクロライド、
ビス(t−ブチルシクロペンタジエニルハフニウム)ジメチルシランハフニウムジクロライド、
ビス(2,3−ジメチルシクロペンタジエニルハフニウム)ジメチルシランハフニウムジクロライド、
ビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニルハフニウム)ジメチルシランハフニウムジクロライド、
ビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニルハフニウム)ジメチルシランハフニウムジクロライド、
(メチルシクロペンタジエニル)(η5−1−インデニル)ジメチルシランハ フニウムジクロライド、
(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)(η5−1−インデニル)ジメチル シランハフニウムジクロライド、
(メチルシクロペンタジエニル)〔2−メチル−(η5−1−インデニル)〕 ジメチルシランハフニウムジクロライド、
(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)〔3−t―ブチル−(η5−1−イ ンデニル)〕ジメチルシランハフニウムジクロライド、
(メチルシクロペンタジエニル)(η5−9−フルオレニル)ジメチルシラン ハフニウムジクロライド、
(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)(η5−9−フルオレニル)ジメチ ルシランハフニウムジクロライドなどが挙げられる。
【0042】
また他の例としては、
ビス(η5−1−インデニル)ジメチルシランハフニウムジクロライド、
ビス[2−メチル−(η5−1−インデニル)]ジメチルシランハフニウムジ クロライド、
ビス[2,4,7−トリメチル−(η5−1−インデニル)]ジメチルシラン ハフニウムジクロライド、
ビス[2,4−ジメチル−(η5−1−インデニル)]ジメチルシランハフニ ウムジクロライド、
ビス[2−エチル−(η5−1−インデニル)]ジメチルシランハフニウムジ クロライド、
ビス[2−i−プロピル−(η5−1−インデニル)]ジメチルシランハフニ ウムジクロライド、
(η5−1−インデニル)[2−メチル−(η5−1−インデニル)]ジメチルシランハフニウムジクロライド、
(η5−1−インデニル)[2−エチル−(η5−1−インデニル)]ジメチルシランハフニウムジクロライド、
(η5−1−インデニル)[2−イソプロピル−(η5−1−インデニル)]ジメチルシランハフニウムジクロライド、
ビス[2−メチル−(η5−1−インデニル)]メチルフェニルシランハフニ ウムジクロライドも使用可能である。
【0043】
さらには、ビス[2、4、7−トリメチル−(η5−1−インデニル)]メチ ルフェニルシランハフニウムジクロライド、
ビス[2−エチル−(η5−1−インデニル)]メチルフェニルシランハフニ ウムジクロライド、
ビス[2−i−プロピル−(η5−1−インデニル)]メチルフェニルシラン ハフニウムジクロライド、
(η5−1−インデニル)[2−メチル−(η5−1−インデニル)]メチルフェニルシランハフニウムジクロライド、
(η5−1−インデニル)[2−エチル−(η5−1−インデニル)]メチルフェニルシランハフニウムジクロライド、
(η5−1−インデニル)[2−イソプロピル−(η5−1−インデニル)]メチルフェニルシランハフニウムジクロライドなども使用可能である。
【0044】
また、1,2−ビス(η5−1−インデニル)エタンハフニウムジクロライド 、
1,2−ビス[2−メチル−(η5−1−インデニル)]エタンハフニウムジ クロライド、
1,2−ビス[2、4−ジメチル−(η5−1−インデニル)]エタンハフニ ウムジクロライド、
1,2−ビス[2,4,7−トリメチル−(η5−1−インデニル)]エタン ハフニウムジクロライド、
1,2−ビス[2−エチル−(η5−1−インデニル)]エタンハフニウムジ クロライド、
1,2−ビス[2−i−プロピル−(η5−1−インデニル)]エタンハフニ ウムジクロライド、
(η5−1−インデニル)[2−メチル−(η5−1−インデニル)]エタンハフニウムジクロライド、
1,2−ビス(η5−9−フルオレニル)エタンハフニウムジクロライドなど のエチレン基により架橋したものも使用できる。
【0045】
イソプロピリデン基により架橋したものとしては、
2−(シクロペンタジエニル)−2−(η5−1−インデニル)プロパンハフ ニウムジクロライド、
2−(3−メチルシクロペンタジエニル)−2−(η5−1−インデニル)プ ロパンハフニウムジクロライド、
2−(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)−2−(η5−1−インデニル )プロパンハフニウムジクロライド、
2−(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)−2−〔3−t−ブチル−(η5−1−インデニル)〕プロパンハフニウムジクロライド、
2−(3−メチルシクロペンタジエニル)−2−(η5−9−フルオレニル) プロパンハフニウムジクロライド、
2−(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)−2−(η5−9−フルオレニ ル)プロパンハフニウムジクロライド、
2−(2−メチルシクロペンタジエニル)−2−〔2−メチル−(η5−9− フルオレニル)〕プロパンハフニウムジクロライド、
2−(3−メチルシクロペンタジエニル)−2−〔2−メチル−(η5−9− フルオレニル)〕プロパンハフニウムジクロライド、
2−(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)−2−[3−t−ブチル−(η5−9−フルオレニル)]プロパンハフニウムジクロライドなどが使用可能であ る。
【0046】
なおこれらの塩素原子を他のハロゲンや水素原子、アミド基、アルコキシ基、メチル基やベンジル基などの炭化水素基にかえたものも何ら制限無く使用することができる。
これらメタロセン化合物は公知の方法に従って製造することが可能である。より具体的には、対応するシクロペンタジエニル骨格を有する化合物と架橋部の構造を有する化合物と反応させてメタロセン化合物の配位子を製造したのち、四塩化ハフニウムやハフニウムテトラアルコキシドとを反応させることにより製造する方法等があげられる。
【0047】
本発明のプロピレン系共重合体製造用触媒は、必要に応じて上記以外の成分を使用しても差し支えない。このような成分の例としては、有機アルミニウム化合物や有機リチウム化合物などの有機金属化合物が挙げられる。より具体的にはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−i−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド等のジアルキルアルミニウムハライドやアルキルアルミニウムジハライド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシドあるいはフェノキシド、メチルアルミノキサン、i−ブチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類やフェニルリチウム、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、i−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、ジエチル亜鉛、ベンジルエチルマグネシウムなどが挙げられる。
【0048】
本発明のプロピレン系共重合体製造用触媒は、上記の成分(A)と成分(B)、さらには必要に応じその他の成分とを接触させることにより調製される。調製の方法には特に制限は無く、重合を行う反応器に各成分を別々に導入し反応器内で接触させることで調製してもよく、予め反応器の外で調製してもよい。
【0049】
上記の成分(A)と成分(B)を重合を行う反応器に別々に導入し反応器内で本発明の触媒を調製させる場合においては、成分(A)および成分(B)はそのまま導入してもよいが、ヘキサン、ヘプタンやトルエンといった炭化水素溶剤やパラフィン系、ナフテン系あるいは芳香族系のオイル、グリースなどに分散させた状態で導入してもよい。
【0050】
成分(A)と成分(B)を反応器の外で接触させ本発明の触媒を調製する場合、一般的には有機溶剤中で接触が行われる。ここで用いられる有機溶剤としてはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類やこれらの混合物等が使用可能である。
【0051】
成分(A)と成分(B)を反応器の外で接触させる場合、その温度は使用する有機溶剤やその他の条件を考慮して任意に決定され、通常−80℃〜200℃の範囲で行われる。接触温度の好ましい範囲は−50℃〜120℃であり、さらに好ましい範囲は0℃〜100℃である。
両成分を上記の有機溶剤中で接触させて触媒を調製した後は、そのまま重合を行う反応器に導入してもよく、液相を固液分離や減圧留去等により除去してから導入してもよい。さらにはヘキサンやトルエンなどで洗浄を行った後に投入することも可能である。
【0052】
成分(A)に対する成分(B)の使用量は特に制限はなく、通常、成分(A)中に含有されるイオン性化合物および/またはその残基1当量に対し0.01〜20当量の成分(B)が使用される。好ましくは、成分(A)中に含有されるイオン性化合物および/またはその残基1当量に対し、成分(B)0.05〜10当量であり、さらに好ましくは0.02〜5当量、特に好ましくは 0.1当量〜2当量の範囲である。
【0053】
本発明のプロピレン系共重合体の製造方法において、その重合方法は特に制限はなく、任意の重合方法を利用することができる。具体的には、液体プロピレン中で行う塊状重合、不活性溶剤の存在下に液相中で行う溶液重合やスラリー重合、気相モノマー中で行う気相重合が挙げられる。これらのうち好ましいのは塊状重合および気相重合である。
重合温度は特に制限はないが、高分子量の共重合体を粒子状で生産性よく得るためには、通常0℃を超え150℃未満の温度範囲であり、好ましくは10〜130℃、さらに好ましくは30℃〜95℃の範囲であり、特に好ましくは45℃〜85℃の範囲である。
【0054】
圧力は液相中の重合において常圧〜70kg/cm2、気相中では常圧〜50 kg/cm2の範囲が一般的であり、得ようとするプロピレン重合体組成物の性 質や、生産性などを考慮して適当な範囲を選択できる。また、重合時には、水素の導入や温度、圧力の選定など任意の手段により分子量を調節することが可能である。
【0055】
本発明により得られるプロピレン系共重合体の重量平均分子量は通常70,000以上であり、好ましくは 100,000以上、さらに好ましくは 120,000以上である。また本発明で得られるプロピレン系共重合体は、プロピレン含量が70重量%以上であり、好ましくは80〜99.5重量%、さらに好ましくは90〜99.0重量%である。プロピレン含量が70重量%未満のものを製造しようとすると粒子状で得ることが困難となる。プロピレンと共重合されるコモノマーはエチレンの他に、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の高級オレフィンが使用可能であり、これらの含有量は30重量%以下である。また本発明の主旨を逸脱しない範囲においてスチレン、ビニルトルエンといったビニル芳香族化合物やブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,4−ヘキサジエンといった共役あるいは非共役ジエンなどの少量を共重合することも可能である。
【0056】
【発明の効果】
本発明は、特定の固体触媒成分と特定の構造を有するメタロセン化合物が組み合わされているため、重合体の反応器への付着を伴わずに高コモノマー含量の高分子量プロピレン系共重合体を粒子状で与える。
【0057】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限りこれらに限定されるものではない。
【0058】
成分(A)の製造
(A−1):
1)イオン性化合物の製造
1−ブロモ−2,3,5,6−テトラフルオロフェニルベンゼン3.85g(1.86mmol)をジエチルエーテル50mlに溶解した。さらに−78℃でn−ブチルリチウムのヘキサン溶液( 1.6mol/l)10.5mlを滴下し、30分間撹拌した。得られた溶液をトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのヘキサン溶液(50mmol/l)200mlに添加し、25℃で20分間撹拌することで、生成物を固体として得た。溶液層を除去後、得られた固体をヘキサンで洗浄し真空乾燥を行った。
上記で得られた固体1.66gをテトラヒドロフラン10mlに溶解し−78℃まで冷却した後、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液( 1.6mol/l) 1.5mlを滴下し45分間撹拌した。この溶液を四塩化ケイ素 2.7mlをテトラヒドロフラン10mlに溶解した溶液に添加し、25℃で15分間撹拌した。この溶液にヘプタン100mlを加えた後、テトラヒドロフランを留去した。ヘプタン層を除去した残分をヘキサンで洗浄後、真空乾燥した。さらにジクロロメタン50mlを加え不溶分を除去した後、ジクロロメタンを留去することで1.65gの生成物を得た。
この生成物1.65gをジクロロメタン30mlに溶解した後、ジメチルアニリニウムクロライド0.31gを添加し、25℃で5分間撹拌した。不溶分を除去後、ジクロロメタンを留去、真空乾燥することでN,N−ジメチルアニリニウムトリス(ペンタフルオロフェニル)(p−トリクロロシリルテトラフルオロフェニル)ボラート 1.7gを得た。
【0059】
2)微粒子状担体との接触
ジクロロメタン30mlにシリカ(富士デビソン社製952) 0.5gを加えたスラリーに対し、前記イオン性化合物 0.3gをジクロロメタン6mlに溶解させた溶液を添加した。撹拌下2時間環流させた後、上澄みを除去しジクロロメタンで洗浄し、固体触媒成分(A−1)を得た。
【0060】
(A−2):
上記(A−1)のイオン性化合物の調製において、四塩化ケイ素の代わりにジメチルジクロロシランを用い、N,N−ジメチルアニリニウムトリス(ペンタフルオロフェニル)〔p−(クロロジメチルシリル)テトラフルオロフェニル〕ボラートを調製したのち、同様に固体触媒成分の調製を行った。
【0061】
成分(B)
(B−1):1,2−ビス(η5−1−インデニル)エタンハフニウムジクロラ イド、
(B−2):ビス(η5−1−インデニル)ジメチルシランハフニウムジクロラ イド、
(B−3):ビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジメチルシランハフニウムジクロライド、
(B−4):ビス(η5−9−フルオレニル)ジメチルシランハフニウムジクロ ライド、
(B−5):シクロペンタジエニル(η5−9−フルオレニル)ジフェニルメタ ンハフニウムジクロライド、
【0062】
重量平均分子量の測定
試験管に5mlの1,2,4−トリクロロベンゼンを取り、これに試料約 2.5mgを投入した。この試験管に栓をした後、160℃の恒温曹で試料を溶解させた。得られた溶液を焼結フィルターでろ過した後、ろ液をWaters社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置150C(カラム:Shodex AT−806MS,カラム温度140℃,溶媒流量1ml/分)を用いて測定した。
【0063】
プロピレンおよびヘキセン含有量
FT−IRスペクトルを測定した後、組成既知の試料より作成した検量線を用いて算出した。
【0064】
実施例1
1)オレフィン重合用触媒の調製
(B−1)の 0.5mmol/L−トルエン溶液4mlと、 0.5mol/Lのトリイソブチルアルミニウム(以下、TIBAと略記する。)トルエン溶液1mlを混合した溶液に上記成分(A−1)を30mg添加し3分間撹拌しオレフィン重合用触媒のスラリーを得た。
【0065】
2)オレフィンの重合
1.5Lのオートクレーブに 0.2mol/lのn−BuLiヘキサン溶液1ml、プロピレン8molを加え50℃に昇温し、エチレンをその分圧が 2.0kg/cm2となるまで導入した。その後、上記オレフィン重合用触媒をオートクレー ブ中に圧入し、エチレン分圧が前記の値を維持するよう連続的に供給しながら30分間重合を行った。重合活性(g/g-cat h)、得られた重合体の組成、重量平均分子量、重合体の性状、および重合体の反応器への付着の有無を測定評価した。オートクレーブ内への重合体の付着は見られず、プロピレン系共重合体を粒子状で得た。得られたプロピレン系共重合体のエチレン含量および重量平均分子量はそれぞれ4.1重量%および515,000であった。
【0066】
実施例2〜12
第1表に記載の条件以外は実施例1と同様に行い、結果を第1表に示す。いずれの場合ともオートクレーブ内への重合体の付着は見られず、得られたプロピレン系共重合体は粒子状であった。なお実施例2、5、7および9で用いたヘキセンはプロピレンと同時に導入した。
【0067】
比較例1
実施例1において(B−1)の代わりにビス(η5−1−インデニル)ジメチ ルシランジルコニウムジクロライドを用いた他は同様に行った。オートクレーブ内への重合体の付着が見られ、プロピレン系共重合体は塊状であった。得られたプロピレン系共重合体のプロピレン含量および重量平均分子量はそれぞれ96.5重量%および21,000であった。
【0068】
比較例2
実施例1において(B−1)の代わりに1,2−ビス(η5−1−インデニル )エタンジルコニウムジクロライドを用いた他は同様に行った。オートクレーブ内への重合体の付着が見られ、プロピレン系共重合体は塊状であった。得られたプロピレン系共重合体のプロピレン含量および重量平均分子量はそれぞれ96.2重量%および25,000であった。
【0069】
比較例3
実施例1において(B−1)の代わりにビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライドを用いた他は同様に行った。オートクレーブ内への重合体の付着が見られ、プロピレン系共重合体は塊状であった。得られたプロピレン系共重合体のプロピレン含量および重量平均分子量はそれぞれ95.3重量%および72,000であった。
【0070】
比較例4
1)固体触媒成分の調製
ジクロロメタン30mlにシリカ(富士デビソン社製952) 0.5gを加えたスラリーに対し、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート 0.3gをジクロロメタン6mlに溶解させた溶液を添加した。撹拌下2時間環流させた後、上澄みを除去し10mlのトルエンで2回洗浄し、固体触媒成分を得た。
【0071】
2)オレフィンの重合
実施例1において成分(A)のかわりに上記固体触媒成分を用いた以外は同様に行った。オートクレーブ内に重合体の激しい付着が見られ、得られたプロピレン系共重合体は塊状であった。得られたプロピレン系共重合体のプロピレン含量および重量平均分子量はそれぞれ95.7重量%および 553,000であった。
【0072】
実施例および比較例の結果をまとめて第1表に示す。
【0073】
【0074】
第1表から、本発明のプロピレン系共重合体製造用触媒は特定の固体触媒成分と特定のメタロセン化合物を組み合わせることにより、重合体の反応器への付着を伴わずに高コモノマー含量の高分子量プロピレン系共重合体を粒子状で与えることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のプロピレン系共重合体製造用触媒調製のフローチャート図である。
Claims (10)
- 成分(A):一般式(I)
R1、R2およびR3は、各々同一でも異なってもよく、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、アルコキシ基、フェノキシ基またはハロゲン原子であり、
R4は炭素数1〜20のアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基、ハロゲン化アリーレン基、シラニレン基、置換シラニレン基、シラアルキレン基、置換シラアルキレン基、オキサシラニレン基、置換オキサシラニレン基またはオキサシラアルキレン基であり、
Lはシリル基であり、
a、bおよびcは0または1〜3の整数、dは1〜4の整数であり、かつa+b+c+d=4であり、
Dは1価のカチオンである。)で表されるイオン性化合物および微粒子担体を接触させて得られる固体触媒成分、および成分(B):下記一般式(II)
M2、M3およびM4は、互いに同一でも異なってもよく、各々炭素原子またはケイ素原子であり、
p、qおよびrは0または1〜2の整数であり、かつ1≦p+q+r≦4であり、
Q1およびQ2はシクロペンタジエニル骨格を有する炭化水素基であり、
X1およびX2は、互いに同一でも異なってもよく、各々ハロゲン原子、水素原子、アルコキシ基、フェノキシ基、アミド基または炭素数1〜30の炭化水素基である。)の構造を有するメタロセン化合物からなる重量平均分子量70,000以上かつプロピレン含量96.8重量%以下のプロピレン系共重合体製造用触媒。 - Q1、Q2の少なくともいずれか一方が、インデニル基もしくは置換インデニル基である請求項1記載のプロピレン系共重合体製造用触媒。
- Q1、Q2の少なくともいずれか一方が、2位にメチル基、エチル基またはi−プロピル基を有する置換インデニル基である請求項1または2記載のプロピレン系共重合体製造用触媒。
- p=1でq=r=0である請求項1、2または3記載のプロピレン系共重合体製造用触媒。
- p=q=1でr=0である請求項1乃至4のいずれかに記載のプロピレン系共重合体製造用触媒。
- R1、R2およびR3がペンタフルオロフェニル基である請求項1乃至5のいずれかに記載のプロピレン系共重合体製造用触媒。
- R4がテトラフルオロフェニレン基である請求項6記載のプロピレン系共重合体製造用触媒。
- Lがトリクロロシリル基、メチルジクロロシリル基またはジメチルクロロシリル基のいずれかである請求項1乃至7のいずれかに記載のプロピレン系共重合体製造用触媒。
- Dがジアルキルアニリニウムイオンである請求項1乃至8のいずれかに記載のプロピレン系共重合体製造用触媒。
- 請求項1乃至9のいずれかに記載のプロピレン系共重合体製造用触媒の存在下にプロピレンとエチレンおよび/またはα−オレフィンを共重合し、重量平均分子量が70,000以上でプロピレン含量が70重量%〜96.8重量%の共重合体を得るプロピレン系共重合体の製造方法。
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