JP3804319B2 - 平版印刷版用支持体及びその製造方法、及び平版印刷版 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は平版印刷版用支持体及びその製造方法、及び平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、平版印刷版、たとえばPS版のような平版印刷版の支持体表面は、保水性・耐刷性を付与するために粗面加工され、さらに親水性・耐摩耗性を付与するために陽極酸化による酸化物皮膜層形成処理が行われてきた。粗面加工の方法としては、一般的には化学的(アルカリ・酸溶解等)、機械的(研摩剤を用いたブラシ研磨、サンドブラスト、液体ホーニング、粗さ転写ロールでの圧延等)、電気化学的(酸性溶液中での交流または直流の電解処理)な粗面化が知られており、支持体表面の加工にはこれらの方法のいくつかを適宜組み合わせて行われている。特に保水性を良好にする0.1〜数μm径のピットを形成するには電気化学的粗面化が必須であるが、均一な粗面を安定して形成するためには電解液の酸の濃度、電解液中に溶け込むアルミニウムの濃度、前処理の影響で混入する不純物濃度、電解液温度等を厳密にコントロールする必要があり、また、使用可能なあアルミニウム原反の組成範囲も狭く、組織の均一性も良好であることを必要とする等、制限が多い。また、陽極酸化処理には、一般に20〜40%の高濃度の硫酸水溶液が使用され、安全性の問題や、廃液処理等の環境面の問題も有している。
【0003】
一方で、電気化学的粗面化や陽極酸化処理を必ずしも必要としない印刷版用支持体の表面加工方法として、特表平9−504241号(WO95/18019)記載のような、機械的粗面化で基材のRaを0.3〜1.5μmに加工した後、酸化物粒子を熱噴霧(プラズマ溶射)処理で表面に親水性層として形成される印刷版の製造方法や、WO96/06200号記載のような、特定の物質をプラズマ法により1.9984×104Pa(150torr)以下の低圧下で支持体表面に層として形成することを特徴とする印刷版用支持体の製造方法が提案されている。しかし、このようなプラズマ溶射法による粗面化では保水性を良好にする0.1〜数μm径のピットを形成することができず、印刷性能が不充分であり、かつ、連続処理時の幅方向及び長手方向の処理安定性に欠け、コスト的にも満足のいくものではない。
【0004】
また、WO97/19819では、基材上に無機粒子を分散されたシリケート水溶液を塗布して親水性層を形成することを特徴とする印刷版用支持体の製造方法が提案されているが、この方法ではコスト低減を達成することは可能であるが、表面に多重的な粗さ構造を付与することができず、保水性が不十分であり、印刷時の水量変動により画質が低下したり、汚れが発生したりする問題がある。また、結合剤は単なる水ガラスであるため柔軟性に欠け、クラック(ひび割れ)が入りやすく剥離しやすい欠点があり、印刷中に脱落し耐刷性も満足のいくものではない。
【0005】
また、特開平9−99662号では、支持体上に設けられた画像受容層が空隙率30〜80%を有する三次元網目構造を有し、該層の構造が平均1次粒子径が100nm以下の無機微粒子と水溶性樹脂から形成されていることを特徴とするオフセット印刷版用基板が提案されているが、印刷版を触った時に汗(皮脂)が付着すると汚れが発生したり、ブランケット汚れ、長時間放置による汚れ性がPS版に比較すると未だ十分な性能が得られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、印刷版用支持体の親水性表面加工を安価な塗布により行うことができ、クラック(ひび割れ)の発生を抑制し、かつ印刷時に脱落することがなく、印刷版としての性能として特に、水量変動時の汚れ適性に優れ、印刷版を触った時に汗(皮脂)が付着しても汚れが発生せず、ブランケット汚れのしにくさがアルミニウム砂目同等以上を有する印刷版用支持体及び該支持体の製造方法、及び平版印刷版を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、上述の請求項1ないし7に記した各発明によって、達成された。
【0008】
すなわち、下記(1)〜(7)によって、達成された。
(1)少なくとも1層の親水性層を有し、該親水性層は多孔質シリカ粒子、多孔質アルミノシリケート粒子またはゼオライト粒子から選ばれる多孔質無機粒子と、平均粒径100nm以下で、かつ平均粒径の異なる金属酸化物微粒子を2種以上、含有することを特徴とする平版印刷版用支持体。
(2)該金属酸化物微粒子が、(a)平均粒径が1〜12nmのものと、(b)平均粒径が40〜100nmであるものの少なくとも2種を含有することを特徴とする(1)に記載の平版印刷版用支持体。
(3)該金属酸化物微粒子の上記(a)と(b)の固形分重量比が、(a):(b)=1:99〜20:80であることを特徴とする(2)に記載の平版印刷版用支持体。
(4)該金属酸化物微粒子の少なくとも1種が、コロイダルシリカであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
(5)多孔質無機粒子と金属酸化物微粒子を含有した塗布液を調整し、基材上に塗布、乾燥して親水性層を形成する印刷版用支持体の製造方法において、該親水性層の塗布液が多孔質シリカ粒子、多孔質アルミノシリケート粒子またはゼオライト粒子から選ばれる多孔質無機粒子と、平均粒径100nm以下で、かつ平均粒径の異なる金属酸化物微粒子を2種以上、含有し、且つ該多孔質無機粒子は、機械的分散により破砕する工程により分散された塗布液であることを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載の印刷版用支持体上に、インク受容性画像層を設けたことを特徴とする平版印刷版。
(7)(5)に記載の製造方法により製造された印刷版用支持体上に、インク受容性画像層を設けたことを特徴とする平版印刷版。
以下、本発明についてさらに詳述する。
【0009】
本発明の平版印刷版用支持体は、支持体上に少なくとも1層の親水性層を有してなる。親水性層の少なくともいずれか1層は、多孔質無機粒子と、平均粒径100nm以下で、かつ平均粒径の異なる金属酸化物微粒子を2種以上、含有する。
【0010】
親水性層は高い親水性と耐水性との相反する性能を高次で両立させることが要求される。支持体としては、従来の公知の支持体を特に制限なく使用することができ、使用目的等に応じて、材質、層構成及びサイズ等を適に選定して使用する。支持体としては、たとえば、紙、コート紙、合成紙(ポリプロピレン、ポリスチレン、もしくは、それらを紙とはり合わせた複合材料)等の各種紙類、塩化ビニル系樹脂シート、ABS樹脂シート、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等の単層あるいはそれらを2層以上積層した各種プラスチックフィルムないしシート、各種の金属で形成されたフィルムないしシート、各種のセラミック類で形成されたフィルムないしシート、更には、アルミニウム、ステンレス、クロム、ニッケル等の金属板、樹脂コーティングした紙に金属の薄膜をラミネートまたは蒸着したものが挙げられる。
【0011】
本発明に用いる多孔質無機粒子としては、多孔質シリカまたは多孔質アルミノシリケート粒子または、ゼオライト粒子が好ましい。また、多孔質粒子は塗布層全体の30〜95wt%であることが好ましく、50〜90wt%であることがより好ましい。
【0012】
多孔質シリカ粒子は一般に湿式法または乾式法により製造される。湿式法ではケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では四塩化珪素を水素と酸素とともに燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0013】
多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
【0014】
多孔質アルミノシリケート粒子はたとえば特開平10−71764号に記載されている方法により製造される。すなわち、アルミニウムアルコキシドと珪素アルコキシドを主成分として加水分解法により合成された非晶質な複合体粒子である。粒子中のアルミナとシリカの比率は1:4〜4:1の範囲で合成することが可能である。また、製造時にその他の金属のアルコキシドを添加して3成分以上の複合体粒子として製造したものも本発明に使用できる。これらの複合体粒子も製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0015】
粒子の多孔性としては、分散前の状態で、細孔容積で1.0cc/g以上であることが好ましく、1.2cc/g以上であることがより好ましく、1.8cc/g以上2.5cc/g以下であることがさらに好ましい。
【0016】
細孔容積は塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5cc/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。
【0017】
細孔容積が1.0cc/g未満の場合には、印刷時の汚れにくさ、水量ラチチュードの広さが不充分となる。
【0018】
粒径としては、親水性層に含有されている状態で(分散破砕工程を経た場合も含めて)、実質的に1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。
【0019】
粗大な粒子が存在すると親水性層表面に多孔質で急峻な突起が形成され、突起周囲にインクが残りやすくなって非画線部汚れが劣化する。
【0020】
次は、多孔質無機粒子として本発明に用いることができるゼオライト粒子について説明する。
【0021】
ゼオライトは結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。天然及び合成ゼオライトを合わせた一般式は、次のように表される。
【0022】
【化1】
(MI ,MII1/2 )m (Alm Sin O2(m+n))・xH2 O
【0023】
ここで、MI ,MIIは交換性のカチオンであって、MI はLi+ ,Na+ ,K+ ,Ti+ ,Me4 N+ (TMA),Et4 N+ (TEA),Pr4 N+ (TPA),C7 H15N2+,C8 H16N+ 等であり、MIIはCa2+,Mg2+,Ba2+,Sr2+,C8 H18N22+ 等である。
【0024】
また、n≧mであり、m/nの値つまりAl/Si比率は1以下となる。Al/Si比率が高いほど交換性カチオンの量が多く含まれるため極性が高く、したがって親水性も高い。好ましいAl/Si比率は0.4〜1.0であり、さらに好ましくは0.6〜1.0である。
【0025】
本発明で使用するゼオライト粒子としては、Al/Si比率が安定しており、また粒径分布も比較的シャープである合成ゼオライトが好ましく、たとえば、ゼオライトA:Na12(Al12Si12O48)・27H2 O;Al/Si比率1.0、ゼオライトX:Na86(Al86Si106 O384 )・264H2 O;Al/Si比率0.811、ゼオライトY:Na56(Al56Si136 O384 )・250H2 O;Al/Si比率0.412等が挙げられる。
【0026】
Al/Si比率が0.4〜1.0である親水性の高い多孔質粒子を含有することで親水性層自体の親水性も大きく向上し、印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。また、指紋跡の汚れも大きく改善される。
【0027】
Al/Si比率が0.4未満では親水性が不充分であり、上記性能の改善効果が小さくなる傾向がみられる。
【0028】
粒径としては、親水性層に含有されている状態で(分散破砕工程を経た場合も含めて)、実質的に1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。
【0029】
粗大な粒子が存在すると親水性層表面に多孔質で急峻な突起が形成され、突起周囲にインクが残りやすくなって非画線部汚れが劣化する。
【0030】
本発明に用いる平均粒径100nm以下の金属酸化物微粒子について、以下説明する。
【0031】
平均粒径100nm以下の金属酸化物微粒子としては、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他のいずれの形態でも良い。
【0032】
平均粒径としては、3〜100nmであることが好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。また、粒子表面に表面処理がなされていても良い。金属酸化物微粒子はその造膜性を利用して、結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0033】
上記のなかでも特にコロイダルシリカが比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高く好ましい。コロイダルシリカの場合、粒子径は小さいほど結合力が強くなる。粒子径が100nmよりも大きくなると結合力は大きく低下し、結合剤として使用した場合には強度が不足する。これらの金属酸化物微粒子を多孔質シリカ粒子とともに使用する場合は、微粒子自体が陽電荷を帯びている状態で使用することが好ましく、たとえば、アルミナゾルや酸性コロイダルシリカを使用することが好ましい。また、これらの金属酸化物微粒子を多孔質アルミノシリケート粒子およびまたはゼオライト粒子とともに使用する場合は、微粒子自体が陰電荷をおびている状態で使用することが好ましく、たとえば、アルカリコロイダルシリカを使用することが好ましい。多孔質シリカ微粒子と多孔質アルミノシリケートおよびまたはゼオライト粒子とともに使用する場合は、たとえば、表面をAlで処理して広いpH範囲での安定性を付与したコロイダルシリカを使用することが好ましい。
【0034】
次に多孔質粒子の分散破砕工程について述べる。
【0035】
粒子の分散破砕には大きく乾式と湿式とに分けることができる。乾式の分散破砕では乾燥工程が不要であるため工程は比較的シンプルとなるが、サブミクロンオーダーまでの分散破砕には通常湿式の方が有利である。
【0036】
乾式の分散破砕装置としては、高速回転衝撃剪断式ミル(たとえばアニュラータイプのイノマイザ)、電流式粉砕機(ジェットミル)、ロール式ミル、乾式の媒体撹拌ミル(たとえばボールミル)、圧縮剪断型粉砕機(たとえばオングミル)などが使用できる。
【0037】
湿式の分散破砕装置としては、湿式の媒体撹拌ミル(たとえばボールミル、アクアマイザ)、高速回転式剪断摩擦式ミル(たとえばコロイドミル)などが使用できる。
【0038】
分散破砕後の多孔質粒子の粒径は実質的に1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。また、粗大粒子が残存した場合には分級もしくは濾過により除去しても良い。
【0039】
特に湿式分散を行った場合は、多孔質粒子を乾燥させることなく塗布液を調整することが好ましい。分散破砕または分散剥離を行った粒子を乾燥させると再凝集を生じる場合があるためである。塗布液の固形分濃度を調整するために濃縮または希釈することは行っても良い。
【0040】
さらに、上記分散破砕において、表面処理剤を添加することで粒子に表面処理を行うこともできる。また、上記分散破砕において、塗布液に添加する他の成分を添加して同時に分散しても良く、あるいは上記分散破砕の後で、塗布液に添加する他の成分を添加して再度分散を行っても良い。分散破砕においては、メカノケミカルな反応が同時に起こっていると考えられ、塗布液に添加する他の成分と同時に分散した場合、塗膜となった際の強度向上効果が得られる場合がある。
【0041】
本発明の実施における画像形成方法は、たとえば以下のとおりである。以下のような公知の方法により画像を形成することができるが、これに限るものではない。
【0042】
公知のインクジェット法により画像様にインキ受容素材を付着させて画像層を形成する方法を採用できる。インキ受容素材は耐水性を有する。ホットメルトや画像形成後に熱または光で硬化する熱硬化性物質または光硬化性物質でも良い(熱硬化性物質、光硬化性物質については特開平9−99662号参照)。
【0043】
公知の感熱転写法によりインク受容性の感熱転写層を有したシートの感熱転写層を親水性層表面に密着させ、シート側からサーマルヘッドもしくはレーザー光によって画像様に加熱して、加熱部分の感熱転写層をシートから親水性層表面に転写した後、シートを取り去ることで画像層を形成する方法を採用できる。
【0044】
公知の光硬化性または光可溶性の感光層を親水性層上に塗設し、露光後、可溶部分を現像により除去して画像層を形成する方法を採用できる。
【0045】
公知の熱(赤外線)硬化性または熱(赤外線)可溶性の感光層を親水性層上に塗設し、レーザー露光後、可溶部分を現像により除去して画像層を形成する方法を採用できる。この場合、感光層としては、特願平9−332970号明細書に記載されているものをすべて使用可能である。
【0046】
本発明では、以下の無機粒子、結合材など併用してもかまわない。
【0047】
無機粒子としては、多孔質ではない金属酸化物粒子(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化クロム等)や金属炭化物粒子(炭化珪素等)、窒化ホウ素粒子、ダイアモンド粒子等が挙げられる。粒子は鋭角な角を有していない方が好ましく、たとえば溶融シリカ粒子、シラスバルーン粒子等球形に近い粒子が好ましい。
【0048】
多孔質でないことの指標としては、比表面積がBET値で50m2 /g以下であることが好ましく、10m2 /g以下であることがさらに好ましい。
【0049】
また、平均粒径は親水性層の層厚の1〜2倍であることが好ましく、1.1〜1.5倍であることがさらに好ましい。また粒度分布がシャープであることが好ましく、平均粒径の0.8〜1.2倍の範囲に全体の60%以上が含まれることが好ましく、さらに、平均粒径の2倍以上の粒子が5%以下であることが好ましい。
【0050】
親水性層の厚さとしては0.2〜10μmが好ましく、0.5〜5μmがさらに好ましい。したがって平均粒径は0.2〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましい。
【0051】
上記成分以外にも親水性層中に有機の結合剤または添加剤を含有させることができる。有機の結合剤としては親水性を有するものが好ましい。
【0052】
たとえば、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパク等のタンパク質類、キチン類、澱粉類、ゼラチン類、ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0053】
また、親水性層中にはカチオン性樹脂を含有しても良い。カチオン性樹脂としては、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンポリアミン等のようなポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。
【0054】
カチオン性樹脂は微粒子状の形態で添加しても良い。これは、たとえば特開平6−161101号に記載のカチオン性マイクロゲルが挙げられる。
【0055】
さらに、親水性層中には架橋剤を添加しても良い。架橋剤としては、たとえば、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、イソオキサゾール類、アルデヒド類、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物等を挙げることができる。
【0056】
親水性層に添加する結合剤としては、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2 /M2 O比率は、ケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが好ましい。無機粒子の溶解を防止するためである。
【0057】
親水性層に添加する結合剤としては、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーを使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、たとえば「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、または本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0058】
親水性層中に含有する上記のような有機成分は、たとえ親水性の樹脂であっても耐久性、耐水性等を向上させるために架橋させた場合は親水性が大きく低下し、印刷時の汚れ原因となることがある。また、有機成分は多孔質粒子の開口部を塞いだり、孔中に浸透することで親水性層の多孔性を損なって保水性を低下させる可能性もある。以上の理由から有機成分の添加量は少ない方が好ましい。具体的には、好ましくは、親水性層全体に対する有機成分の量が重量比で0〜30%であり、より好ましくは0〜10%であり、さらに好ましくは0〜5%である。
【0059】
【実施例】
以下本発明の好ましい実施例について説明する。但し当然のことであるが、本発明は以下の実施例により限定を受けるものではない。
【0060】
[平版印刷版用支持体1]
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの塗布面積を15W/(m2 ・min)のエネルギーでコロナ放電処理し支持体を作成した。次いで下記塗布液1を、高速ホモジナイザーで分散した乾燥膜厚が2.0μmになるよう塗布し、90℃で10分乾燥し、平版印刷版用支持体1を作成した。
【0061】
(塗布液1)
多孔質シリカ;サイロジェットP−403(GRACE Davison製、細孔容積2.05cc/g、平均粒径3μm) 30.0重量%
コロイダルシリカ;スノーテックス−OXS(日産化学製、平均粒径5nm、固形分10wt%) 3.5重量%
コロイダルシリカ;スノーテックス−OL(日産化学製、平均粒径45nm、固形分20wt%) 66.5重量%
【0062】
上記組成物を固型分濃度が16wt%になるように蒸留水で調整した。
【0063】
[平版印刷版用支持体2〜10]
平版印刷版用支持体1と同様に表1,表2の塗布液2〜10を高速ホモジナイザーで分散し乾燥膜厚が2.0μmになるよう塗布し、90℃で10分乾燥し、平版印刷版用支持体2〜10を作成した。
【0064】
[平版印刷版用支持体11〜20]
表1,表2の塗布液1〜10を、サンドグラインダーを使用し、媒体として硬質ガラスビーズ:ハイビ−20を用いて、1000rpmで1時間分散を行い乾燥膜厚が2.0μmになるよう塗布し、90℃で10分乾燥し、平版印刷版用支持体11〜20を作成した。
【0065】
得られた平版印刷版用支持体11〜20をSEM観察を行ったところ、多孔質シリカ及びゼオライト粒子は粉砕されて実質的に粒径が1μm以下になっていた。
【0066】
(塗膜クラック(ひび割れ)の程度評価)
上記で作製した平版印刷版用支持体1〜20について、SEM観察によりその塗膜クラックの程度を評価した。
○:クラックが見られない
△:わずかにクラックが見られる
×:全面にクラックが見られる
【0067】
[平版印刷版用支持体21]
平版印刷版用支持体の比較として、アルミニウムPS版用支持体(砂目)を以下の方法で作製した。
【0068】
厚さ0.24mmの1050材アルミニウム基材を、2wt%水酸化ナトリウム水溶液を用い、50℃で30秒間浸漬して脱脂した。十分に水洗した後、2wt%3号ケイ酸ナトリウム水溶液に70℃で30秒間浸漬処理し、水洗した後、十分に乾燥した。次いで、2.0wt%硝酸水溶液に10秒間浸漬・中和し、30℃、2.0wt%硝酸水溶液を用いて、ピークの電流密度が60A/dm2 の正弦波で正の電気量が500C/dm2 となるように電解粗面化処理を行った。次いで、1wt%水酸化ナトリウム水溶液を用い、30℃で20秒間浸漬し、水洗した後、Al基材2と同様にして陽極酸化処理とケイ酸ナトリウム処理を行い平版印刷版用支持体21を作製した。
【0069】
[平版印刷版用支持体の印刷評価]
(平版印刷版作製)
(バインダーの合成)
窒素気流下の三ツ口フラスコに2−ヒドロキシエチルメタアクリルアミド35部、メタアクリル酸3部、メタアクリル酸メチル30部、アクリロニトリル25部、メタアクリル酸エチル2部、ラウリルアクリレート5部にエタノール500部、α,α′−アゾビスイソブチロニトリル3部を入れ窒素気流中80℃のオイルバスで6時間反応させた。その後、反応停止剤としてハイドロキノンを10部添加し反応を終了させた。
【0070】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、水中で結析させこれを濾過・乾燥することで目的の化合物を得た。
【0071】
得られた化合物の重量平均分子量はGPCによるプルラン標準、N,N−ジメチルホルムアミド溶媒で測定したところ13万であった。
【0072】
次いで、作成したバインダーを使用し、100μmPET上に下記転写型組成物Aを乾燥膜厚2.0μmとなるように塗布し、80℃で3分間乾燥した。
【0073】
(転写型組成物A)
【0074】
これら組成物をシクロヘキサノン/MEK=1/1で固形分8%になるように調液した。
【0075】
このようにして作成した転写型シートを本実施例の平版印刷版支持体1〜21と対面しレーザー露光することにより画像を形成し平版印刷版を作成した。更に画像作成後、150℃で1分間熱処理を行い平版印刷版を作成した。下記評価を行い、その結果を表3,表4に示した。
【0076】
(印刷評価条件)
印刷機:三菱重工業(株)製DAIYA1F−1を用い、コート紙、湿し水(東京インキ(株)製H液SG−51 濃度1.5%)、インキ(東洋インキ製造(株)製ハイプラスM紅)を使用して、毎時8000枚のスピードで印刷を行った。
【0077】
(汗(皮脂)付着汚れ)
印刷版用支持体表面に、指を20秒間接触させた後に、印刷をスタートさせ、40枚印刷後の印刷物を評価した。
○:指紋状の汚れがない
△:微かに、指紋状の汚れが発生している
×:指紋状に汚れが発生している
【0078】
(水量変動適性)
湿し水供給量(設定値)を下げていった際の非画像部に汚れ発生するまでの枚数を評価
【0079】
(ブランケット汚れ)
2000枚印刷した時点で、ブランケット上に堆積した汚れを粘着テープではがし取り、そのテープを白紙上に貼って、汚れの程度をマクベス濃度計で測定した。
【0080】
(放置適性)
2000枚の印刷後、温度24℃、湿度50〜60%で、24時間放置したのち、印刷をスタートさせ、正常な印刷物が得られるまでの枚数を評価した。
【0081】
(塗膜強度)
20000枚の印刷後、平版印刷版用支持体をSEM観察し、塗膜のはがれの有無をSEM観察で評価した。
◎:はがれが見られない
○:わずかにはがれが見られるがPET面はほとんど露出していない
△:面積率で5%以上はがれてPET面が露出している
×:面積率で10%以上はがれてPET面が露出している
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
表1〜4より、本発明によって、すぐれた効果が得られることがわかる。
【0087】
【発明の効果】
本発明によれば、クラック(ひび割れ)、支持体と接着性に優れた、塗布型平版印刷版用支持体を得ることができ、また、汗(皮脂)付着による汚れ、水量変動時の汚れ性、ブランケットの汚れ、長時間放置後の汚れの優れた平版印刷版用の支持体を得ることができ、これらの改良された平版印刷版用支持体及びその製造方法、及び平版印刷版を提供することができる。
Claims (7)
- 少なくとも1層の親水性層を有し、該親水性層は多孔質シリカ粒子、多孔質アルミノシリケート粒子またはゼオライト粒子から選ばれる多孔質無機粒子と、平均粒径100nm以下で、かつ平均粒径の異なる金属酸化物微粒子を2種以上、含有することを特徴とする平版印刷版用支持体。
- 該金属酸化物微粒子が、(a)平均粒径が1〜12nmのものと、(b)平均粒径が40〜100nmであるものの少なくとも2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版用支持体。
- 該金属酸化物微粒子の上記(a)と(b)の固形分重量比が、(a):(b)=1:99〜20:80であることを特徴とする請求項2に記載の平版印刷版用支持体。
- 該金属酸化物微粒子の少なくとも1種が、コロイダルシリカであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
- 多孔質無機粒子と金属酸化物微粒子を含有した塗布液を調整し、基材上に塗布、乾燥して親水性層を形成する印刷版用支持体の製造方法において、該親水性層の塗布液が多孔質シリカ粒子、多孔質アルミノシリケート粒子またはゼオライト粒子から選ばれる多孔質無機粒子と、平均粒径100nm以下で、かつ平均粒径の異なる金属酸化物微粒子を2種以上、含有し、且つ該多孔質無機粒子は、機械的分散により破砕する工程により分散された塗布液であることを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷版用支持体上に、インク受容性画像層を設けたことを特徴とする平版印刷版。
- 請求項5に記載の製造方法により製造された印刷版用支持体上に、インク受容性画像層を設けたことを特徴とする平版印刷版。
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