JP3626380B2 - 印刷版及び画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷版及び画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、PS版のような平版印刷版の支持体表面は、保水性・耐刷性を付与するために粗面加工され、さらに親水性・耐摩耗性を付与するために陽極酸化による酸化物皮膜層形成処理が行われてきた。
【0003】
粗面加工の方法としては、一般的には化学的(アルカリ・酸溶解等)、機械的(研磨剤を用いたブラシ研磨、サンドブラスト、液体ホーニング、粗さ転写ロールでの圧延等)、電気化学的(酸性溶液中での交流又は直流の電解処理)な粗面化が知られており、支持体表面の加工にはこれらの方法のいくつかを適宜組み合わせて行われている。
【0004】
特に保水性を良好にする0.1〜数μm径のピットを形成するには電気化学的粗面化が必須であるが、均一な粗面を安定して形成するためには電解液の酸の濃度、電解液中に溶け込むアルミの濃度、前処理の影響で混入する不純物濃度、電解液温度等を厳密にコントロールする必要があり、また、使用可能なアルミ原反の組成範囲も狭く、組織の均一性も良好であることを必要とする等、制限が多い。
【0005】
また、陽極酸化処理には、一般に20〜40%の高濃度の硫酸水溶液が使用され、安全性の問題や、廃液処理等の環境面の問題も有している。
【0006】
一方で、電気化学的粗面化や陽極酸化処理を必ずしも必要としない印刷版用支持体の表面加工方法として、特表平9−504241号(WO95/18019)のような、機械的粗面化で基材のRaを0.3〜1.5μmに加工した後、酸化物粒子を熱噴霧(プラズマ溶射)処理で表面に親水性層として形成させる印刷版の製造方法や、WO96/06200のような、特定の物質をプラズマ法により1.9984×104Pa(150torr)以下の低圧下で支持体表面に層として形成することを特徴とする印刷版用支持体の製造方法が提案されている。しかし、このようなプラズマ溶射法による粗面化では保水性を良好にする0.1〜数μm径のピットを形成することができず、印刷性能も不充分であり、かつ、連続処理時の幅方向及び長手方向の処理安定性に欠け、コスト的にも満足のいくものではない。
【0007】
また、WO97/1987では、基材上に無機粒子が分散させたシリケート水溶液を塗布して親水性層を形成することを特徴とする印刷版用支持体の製造方法が提案されているが、この方法ではコスト低減を達成することは可能であるが、表面に多重的な粗さ構造を付与することができず印刷時の水量ラチチュードが不充分であり、また、結合剤は単なる水ガラスであるため柔軟性に欠け、クラックが入りやすく剥離しやすい欠点があり、耐刷性も満足のいくものではない。
【0008】
また、特開平9−99662号では、支持体上に設けられた画像受容層が空隙率30〜80%を有する三次元網目構造を有し、該層の構造が平均1次粒子径が100nm以下の無機微粒子と水溶性樹脂から形成されていることを特徴とするオフセット印刷版用基板が提案されているが、現行PS版のアルミ砂目に比較して、印刷時の非画線部汚れや水量ラチチュード及び耐刷性ともに大きく劣った性能しか得ることができていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の第一の目的は、印刷版用支持体の親水性表面加工を安価な塗布により行うことができ、かつ、印刷版としての性能(水量ラチチュード、非画線部の汚れにくさ、ブランケット汚れのしにくさ等)がアルミ砂目同等以上であり、かつ、十分な耐刷性を有する印刷版を提供することにある。
【0010】
また、印刷データのデジタル化に伴い、安価で取り扱いが容易でPS版と同等の印刷適性を有したCTPが求められている。特に近年、赤外線レーザー記録による種々の方式のCTPが提案されている。
【0011】
それらの中でも特別な現像処理を必要としない、いわゆるドライCTP(印刷機上での現像を含む)が注目されている。例えば、特開平8−507727号、同6−186750号、同6−199064号、同7−314934号に記載されているものが挙げられる。しかし、いずれの方式も基体上に形成したいずれかの層をレーザーでアブレーションさせて除去するものであり、露光機内の汚染が問題となる。汚染を防止するには露光機内に専用の吸引式クリーナーを設置する等の方式が考えられるが、アブレーションした物質を完全に除去することは難しい。また、全体をカバーシート等で覆ってアブレーションした物質を飛散させない方法も考えられるが、カバーシートの貼り合わせ/剥離等の手間及び剥離した廃材の発生が問題となる。
【0012】
また、水を使用する印刷の場合、非画像部をなし、水を保持する機能を有する層の親水性が不充分であり、印刷時の汚れが問題となる。
【0013】
したがって、本発明の第二の目的は、完全に明室での取り扱いが可能で、アブレーションを必要とせずに画像形成可能で露光機汚染の懸念がなく、特別な現像処理が不要であり、印刷機上で現像される場合でも印刷機汚染の懸念がない、可視画性に優れた印刷版及び画像形成方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、下記構成によって、解決される。
1.基材上に順に、多孔質無機粒子を含有する親水性層と、熱により画像形成可能な画像形成層を有する印刷版において、該親水性層が光熱変換機能素材を含有し、かつ、前記多孔質無機粒子が細孔容積が0.5〜2.5ml/gの多孔質シリカ、細孔容積が0.5〜2.5ml/gの多孔質アルミノシリケート、Al/Si比率0.4〜1.0のゼオライトから選ばれる粒子であり、かつ、前記画像形成層が熱により溶融する素材を含有し、さらに、該熱により溶融する素材の140℃での溶融粘度が150cps以下であることを特徴とする印刷版。
【0015】
2.光熱変換機能素材が導電性を有することを特徴とする請求項1に記載の印刷版。
【0016】
3.光熱変換機能素材が導電性を有する金属酸化物であることを特徴とする請求項2に記載の印刷版。
【0017】
4.金属酸化物が層形成時に実質的に無色又は白色を呈することを特徴とする請求項3に記載の印刷版。
【0018】
5.光熱変換機能素材が平均径0.5μm以下の粒子であるか若しくは平均径0.5μm以下の粒子の表面にコーティングされているものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の印刷版。
【0019】
6.多孔質粒子径が1μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の印刷版。
【0020】
7.多孔質無機粒子を含有する親水性層が薄層状無機粒子を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の印刷版。
【0021】
8.粒子が層状鉱物であることを特徴とする請求項7に記載の印刷版。
【0022】
9.粒子が膨潤性層状鉱物であることを特徴とする請求項8に記載の印刷版。
【0023】
10.多孔質無機粒子を含有する親水性層が100nm以下の金属酸化物微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の印刷版。
【0024】
11.金属酸化物微粒子がコロイダルシリカであることを特徴とする請求項10記載の印刷版。
【0025】
12.多孔質無機粒子を含有する親水性層が新モース硬度5以上の無機粒子を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の印刷版。
【0026】
13.多孔質無機粒子を含有する親水性層に含まれる有機成分が層全体の0〜30wt%であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の印刷版。
【0027】
14.熱により溶融する素材が粒径0.05μm〜10μmの粒子状であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の印刷版。
【0028】
15.熱により溶融する素材を含有する画像形成層が水溶性樹脂及び/又は100nm以下の金属酸化物微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の印刷版。
【0029】
16.熱により溶融する素材を含有する画像形成層が光熱変換機能素材を含有することを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の印刷版。
【0030】
17.光熱変換機能素材が金属酸化物であることを特徴とする請求項16に記載の印刷版。
【0031】
18.基材上に形成されたいずれかの層が熱により発色又は消色又は色相が変化する機能を有する素材を含有することを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の印刷版。
【0032】
19.請求項1〜13のいずれかに記載の印刷版において、画像形成層を含む1層以上の層が実質的に無色又は白色を呈することを特徴とする印刷版。
【0033】
20.請求項1〜19のいずれかに記載の印刷版を画像様に加熱し熱により溶融する素材を溶融させ、少なくともその一部を多孔質層に浸透させることで画像部とし、さらに非画像部の熱により溶融する素材を除去することで画像を形成することを特徴とする印刷版の画像形成方法。
【0034】
21.画像様の加熱を赤外線レーザー光で行うことを特徴とする請求項20に記載の印刷版の画像形成方法。
【0035】
22.非画像部の熱により溶融する素材の除去を物理的な力で行うことを特徴とする請求項20又は21に記載の印刷版の画像形成方法。
【0036】
23.非画像部の熱により溶融する素材の除去を水による水溶性樹脂の溶解で行うことを特徴とする請求項20又は21に記載の印刷版の画像形成方法。
【0037】
24.非画像部の熱により溶融する素材の除去を印刷機上で行うことを特徴とする請求項20〜23のいずれかに記載の印刷版の画像形成方法。
【0038】
25.非画像部の熱により溶融する素材の除去を版胴を回転させながら、湿し水供給ロール及び/又はインク供給ロール及び/又はブランケット胴を接触させるか、及び/又は印刷機に付加した非画像部の熱により溶融する素材を除去可能な専用装置を用いて行うことを特徴とする請求項24に記載の印刷版の画像形成方法。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細について説明する。
<光熱変換材>
光熱変換機能を有する素材(光熱変換機能素材)としては赤外線を熱に変換する機能、すなわち赤外部に吸収のある素材を使用することができる。そのひとつとして、一般的な赤外吸収色素(シアニン、フタロシアニン)が挙げられる。ただし、水溶性の色素を多孔質層中に添加すると層の耐水性、耐久性が低下する、水不溶性の色素を添加する場合は水系分散液中に固体色素を極微粒子状に均一に分散させることが困難であり、凝集した状態の色素では光熱変換効率が悪い。また、印刷時の汚れ原因となる。
【0048】
赤外部に吸収を有する光熱変換機能素材の中でも、素材自体が導電性を有する素材であることが好ましい。半導体であっても良い。理由は明らかではないが、導電性を有する光熱変換機能素材を層中に添加した場合、特に湿し水を使用した印刷において非画線部へのインクの付着性が著しく改善され、汚し回復性が大きく改善する結果となった。このような素材としては、金属、導電性カーボン、グラフィト、導電性金属酸化物等が挙げられる。これらの中でも特に導電性金属酸化物が好ましい。
【0049】
金属としては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下の微粒子であれば、いずれの金属であっても使用することができる。形状としては、球状、片状、針状等いずれの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0050】
導電性カーボンとしては特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。また、下式で示される導電性指標が30以上であることが好ましく、50以上であることがさらに好ましい。
導電性指標=(比表面積[m2/g]×DBP吸油量[ml/100g]1/2/(1+揮発分)
【0051】
グラファイトとしては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0052】
導電性(もしくは半導体)金属酸化物としては、ZnO、AlをドープしたZnO、SnO2、SbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn2O3(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)等が挙げられる。また、これらの金属酸化物で心材(BaSO4、TiO2、9Al2O3・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。
【0053】
また、上記導電性金属酸化物の中でも塗膜中に分散させた際に実質的に着色しない(無色もしくは白色を呈する)ものが好ましい。このような素材としては、透明導電膜として利用されるATOやITOが挙げられ、また無色もしくは白色の心材をATOやITOで被覆した素材も挙げられる。
【0054】
これらの光熱変換材は塗膜中に均一に分散させることが重要であり、単独で、あるいは他の塗膜組成成分のいずれかと同時に機械的に分散させて塗布液とすることが好ましい。その際に分散剤を使用しても良い。
【0055】
<多孔質シリカ又は多孔質アルミノシリケート粒子>
多孔質シリカ粒子は一般に湿式法又は乾式法により製造される。湿式法ではケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では四塩化珪素を水素と酸素とともに燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0056】
多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。多孔質アルミノシリケート粒子は例えば特開平10−71764号に記載されている方法により製造される。すなわち、アルミニウムアルコキシドと珪素アルコキシドを主成分として加水分解法により合成された非晶質な複合体粒子である。また、製造時にその他の金属のアルコキシドを添加して3成分以上の複合体粒子として製造したものを本発明に使用できる。これらの複合体粒子も製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0057】
粒子の多孔性としては、分散前の状態で、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0ml/g以上2.5ml/g以下であることがさらに好ましい。
細孔容積は塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。
細孔容積が0.5ml/g未満の場合には、印刷時の汚れにくさ、水量ラチチュードの広さが不充分となる。
【0058】
粒径としては、親水性層に含有されている状態で(分散破砕工程を経た場合も含めて)、実質的に1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。
粗大な粒子が存在すると親水性層表面に多孔質で急峻な突起が形成され、突起周囲にインクが残りやすくなって非画線部汚れが劣化する。
【0059】
<ゼオライト粒子>
ゼオライトは結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。天然及び合成ゼオライトを合わせた一般式は、次のように表される。
(MI,MII 1/2)m(AlmSinO2(m+n))・xH2O
ここで、MI,MIIは交換性のカチオンであって、MIはLi+,Na+,K+,Ti+,Me4N+(TMA),Et4N+(TEA),Pr4N+(TPA),C7H15N2 +,C8H16N+等であり、MIIはCa2+,Mg2+,Ba2+,Sr2+,C8H18N2 2+等である。
【0060】
また、n≧mであり、m/nの値つまりAl/Si比率は1以下となる。Al/Si比率が高いほど交換性カチオンの量が多く含まれるため極性が高く、したがって親水性も高い。好ましいAl/Si比率は0.4〜1.0であり、さらに好ましくは0.8〜1.0である。
【0061】
本発明で使用するゼオライト粒子としては、Al/Si比率が安定しており、また粒径分布も比較的シャープである合成ゼオライトが好ましく、例えば、ゼオライトA:Na12(Al12Si12O48)・27H2O;Al/Si比率1.0、ゼオライトX:Na86(Al86Si106O384)・264H2O;Al/Si比率0.811、ゼオライトY:Na56(Al56Si136O384)・250H2O;Al/Si比率0.412等が挙げられる。
【0062】
Al/Si比率が0.4〜1.0である親水性の高い多孔質粒子を含有することで親水性層自体の親水性も大きく向上し、印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。また、指紋跡の汚れも大きく改善される。
Al/Si比率が0.4未満では親水性が不充分であり、上記性能の改善効果が小さくなる。
【0063】
粒径としては、親水性層に含有されている状態で(分散破壊工程を経た場合も含めて)、実質的に1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。
粗大な粒子が存在すると親水性層表面に多孔質で急峻な突起が形成され、突起周囲にインクが残りやすくなって非画線部汚れが劣化する。
【0064】
<多孔質粒子の含有量>
多孔質粒子は塗布層全体の20〜95wt%であることが好ましく、30〜80wt%であることがより好ましい。
【0065】
<平均粒径100nm以下の金属酸化物微粒子>
平均粒径100nm以下の金属酸化物微粒子としては、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他のいずれの形態でも良い。平均粒径としては、3〜100nmであることが好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。また、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0066】
金属酸化物微粒子はその造膜性を利用して、結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。上記の中でも特にコロイダルシリカが比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高く好ましい。
【0067】
コロイダルシリカの場合、粒子径は小さいほど結合力が強くなる。粒子径が100nmよりも大きくなると結合力は大きく低下し、結合剤として使用した場合には強度が不足する。
【0068】
これらの金属酸化物微粒子を多孔質シリカ粒子とともに使用する場合は、微粒子自体が陽電荷を帯びている状態で使用することが好ましく、例えば、アルミナゾルや酸性コロイダルシリカを使用することが好ましい。また、これらの金属酸化物微粒子を多孔質アルミノシリケート粒子及び/又はゼオライト粒子とともに使用する場合は、微粒子自体が陰電荷を帯びている状態で使用することが好ましく、例えば、アルカリコロイダルシリカを使用することが好ましい。多孔質シリカ粒子と多孔質アルミノシリケート粒子及び/又はゼオライト粒子とともに使用する場合は、例えば、表面をAlで処理して広いpH範囲での安定性を付与したコロイダルシリカを使用することが好ましい。
【0069】
<新モース硬度5以上の無機粒子>
多孔質ではない金属酸化物粒子(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化クロム等)や金属炭化物粒子(炭化珪素等)、窒化ホウ素粒子、ダイアモンド粒子等が挙げられる。粒子は鋭角な角を有していない方が好ましく、例えば溶融シリカ粒子、シラスバルーン粒子等球形に近い粒子が好ましい。
多孔質でないことの指標としては、比表面積がBET値で50m2/g以下であることが好ましく、10m2/g以下であることがさらに好ましい。
【0070】
また、平均粒径は親水性層の層厚の1〜2倍であることが好ましく、1.1〜1.5倍であることがさらに好ましい。また粒度分布がシャープであることが好ましく、平均粒径の0.8〜1.2倍の範囲に全体の60%以上が含まれることが好ましく、さらに、平均粒径の2倍以上の粒子が5%以下であることが好ましい。
【0071】
親水性層の厚さとしては、0.2〜10μmが好ましく、0.5〜5μmがさらに好ましい。したがって平均粒径は0.2〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましい。
新モース硬度5以上の無機粒子の含有量としては、塗布層全体の1〜50wt%であることが好ましく、3〜30wt%であることがより好ましい。
【0072】
<層状鉱物粒子>
層状鉱物粒子としては、カオリナイト、ハロイサイト、クリソタイル、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。
【0073】
中でも、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、さらに好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)、マイカ(〜1;陰電荷)、ハイドロタルサイト(〜2;陽電荷)、マガディアイト(〜1;陰電荷)等が挙げられる。
【0074】
特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。また、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性であるものが好ましく、自由膨潤であるものがさらに好ましい。
【0075】
また、上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング剤等)を施したものも使用することができる。
【0076】
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、親水性層中に含有されている状態で(膨潤工程、分離剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が20μm以下であり、また平均アスペクト比(粒子の最大長/粒子の厚さ)が20以上の薄層状であることが好ましく、平均粒径が10μm以下であり、平均アスペクト比が50以上であることがさらに好ましい。
【0077】
粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく強靭な塗膜とすることができる。
粒子径が上記範囲をはずれると、不必要な表面粗さの増加を伴って、非画線部の汚れやブランケット汚れが劣化する場合がある。また、アスペクト比が上記範囲以下である場合、柔軟性が不充分となり、塗膜のクラック抑制効果が低減する。
層状鉱物粒子の含有量としては、塗布層全体の1〜50wt%であることが好ましく、3〜30wt%であることがより好ましい。
【0078】
<薄層状粒子の基材面に対する配向度>
薄層状粒子は親水性層内で基材面に対して粒子面がより平行に配向して存在することで最も効率良く塗膜強化の効果を発揮することができる。薄層状粒子の配向度は、親水性層塗布時に塗布長手方向に剪断力がかかるような塗布方法を用い、その剪断力を調整することでコントロールすることが可能である。例えばリバースロールコーターや押し出しコーターを用い、塗布後の固形分濃度、ウエット膜厚、塗布速度等を調整して配向度を調整する。また、塗布乾燥後にカレンダー処理して塗膜を圧縮することでも配向度を向上させることが可能であるが、カレンダー処理は印刷版として必要な機能を損なわない範囲で行うことが必要である。
【0079】
配向度は支持体断面のSEM観察より求める。支持体断面の基材面の線と親水性層断面に観察される薄層状粒子断面の線とがなす角度θを計測し(線が曲線である場合は1次式による近似直線とのなす角度を計測する)、cosθを求める。断面に見られる1μm以上の長さの薄層状断面の線について同様の計測を行って、cosθの平均値を求めて、これを配向度とする。配向度は0.7以上が好ましく、0.8以上がさらに好ましい。配向度が0.7よりも小さいと塗膜の強化効果が不充分であったり、不必要な表面粗さの増加を伴って、非画線部の汚れやブランケット汚れが劣化する場合がある。
【0080】
<多孔質粒子の分散粉砕又は層状鉱物粒子の分離剥離工程>
粒子の分散破砕又は層剥離に大きく乾式と湿式とに分けることができる。乾式の分散破砕では乾燥工程が不要であるため工程は比較的シンプルとなるが、サブミクロオーダーまでの分散破砕及び100nm以下の層厚までの層剥離には通常湿式の方が有利である。
【0081】
乾式の分散破砕装置としては、高速回転衝撃剪断式ミル(例えばアニュラータイプのイノマイザ)、気流式粉砕機(ジェットミル)、ロール式ミル、乾式の媒体攪拌ミル(例えばボールミル)、圧縮剪断型粉砕機(例えばオングミル)等が使用できる。
湿式の分散破砕装置としては、湿式の媒体攪拌ミル(例えばボールミル、アクアマイザ)、高速回転式剪断摩擦式ミル(例えばコロイドミル)等が使用できる。
【0082】
分散破砕後の多孔質粒子の粒径は実質的に1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。また、粗大粒子が残存した場合には分級もしくはろ過により除去しても良い。
また、分散破砕後の層状鉱物粒子は平均粒径(粒子の最大長)が20μm以下であり、また平均アスペクト比(粒子の最大長/粒子の厚さ)が20以上の薄層状であることが好ましく、平均粒径が10μm以下であり、平均アスペクト比が50以上であることがさらに好ましい。また、層状鉱物粒子の分散破砕の前に後述する膨潤工程を行っても良い。
【0083】
特に湿式分散を行った場合は、多孔質粒子、層状鉱物粒子ともに乾燥させることなく塗布液を調整することが好ましい。分散破砕又は分散剥離を行った粒子を乾燥させると再凝集を生じる場合があるためである。塗布液の固形分濃度を調整するために濃縮又は希釈することは行っても良い。
【0084】
さらに、上記分散破砕又は分散層剥離工程において、表面処理剤を添加することで粒子に表面処理を行うこともできる。また、上記分散破砕又は分散層剥離工程において、塗布液を添加する他の成分を添加して同時に分散しても良く、あるいは上記分散破砕又は分散層剥離工程の後で、塗布液に添加する他の成分を添加して再度分散を行っても良い。分散破砕又は分散層剥離工程においては、メカノケミカルな反応が同時に起っていると考えられ、塗布液に添加する他の成分と同時に分散した場合、塗膜となった際の強度向上効果が得られる場合がある。
【0085】
<層状鉱物粒子の膨潤工程>
自由膨潤である膨潤性合成フッ素雲母は水と混合・攪拌するだけでも十分に膨潤し、平均厚さで10nm以下の薄層に分断して安定した分散液となる。
【0086】
Mg−バーミキュライトは、例えば下記のようなイオン交換処理を行うことで膨潤性を示すようになる。
Mg−バーミキュライト+クエン酸リチウムaq.→Li−バーミキュライト+クエン酸マグネシウムaq..
さらに浸透圧で限定膨潤したLi−バーミキュライトを機械的に分散・層剥離することで平均厚さ10nm以下の薄層にまで分断することが可能となる。
【0087】
<有機の結合剤又は有機の添加剤>
上記成分以外にも親水性層中には有機の結合剤又は添加剤を含有させることができる。有機の結合剤としては親水性を有するものが好ましい。例えば、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパク等のタンパク質類、キチン類、澱粉類、ゼラチン類、ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0088】
また、親水性層中にはカチオン性樹脂を含有しても良い。カチオン性樹脂としては、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンポリアミン等のようなポリアルキレンポリアミン等又はその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。
カチオン性樹脂は微粒子状の形態で添加しても良い。これは、例えば特開平6−161101号に記載のカチオン性マイクロゲルが挙げられる。
【0089】
さらに、親水性層中には架橋剤を添加しても良い。架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、イソオキサゾール類、アルデヒド類、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物等を挙げることができる。
【0090】
<ケイ酸塩水溶液の結合剤>
親水性層に添加する結合剤としては、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが好ましい(無機粒子の溶解を防止)。
【0091】
<ゾル−ゲル法による無機又は有機−無機ハイブリッドの結合剤>
親水性層に添加する結合剤としては、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーを使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、または本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0092】
<有機成分の含有量>
親水性層中に含有する上記のような有機成分は、たとえ親水性の樹脂であっても耐久性、耐水性等を向上させるために架橋させた場合は親水性が大きく低下し、印刷時の汚れ原因となる。また、有機成分は多孔質粒子の開口部を塞いだり、孔中に浸透することで親水性層の多孔性を損なって保水性を低下させる可能性もある。以上の理由から有機成分の添加量は少ない方が好ましい。具体的には、好ましくは、親水性層全体に対する有機成分の量が重量比で0〜30%であり、より好ましくは0〜10%であり、さらに好ましくは0〜5%である。
【0093】
<基材>
基材としては、印刷版の基板として使用される公知の材料を使用することができる。例えば、金属板、プラスチックフィルム、ポリオレフィン等で処理された紙、上記材料を適宜貼り合わせた複合基材等が挙げられる。基材の厚さとしては、印刷機に取り付け可能であれば特に制限されるものではないが、50〜500μmのものが一般的に取り扱い易い。
【0094】
金属板としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられるが、比重と剛性との関係から特にアルミニウムが好ましい。アルミニウム板は、通常その表面に存在する圧延・巻取り時に使用されたオイルを除去するためにアルカリ、酸、溶剤等で脱脂した後に使用される。脱脂処理としては特にアルカリ水溶液による脱脂が好ましい。また、塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行うことが好ましい。例えば、ケイ酸塩やシランカップリング剤等のカップリング剤を含有する液に浸漬するか、液を塗布した後、十分な乾燥を行う方法が挙げられる。陽極酸化処理も易接着処理の一種と考えられ、使用することができる。また、陽極酸化処理と上記浸漬又は塗布処理を組み合わせて使用することもできる。また、脱脂した表面もしくは陽極酸化処理を施した表面に、特開平8−240914号に示された方法による有機−無機ゾルゲル皮膜を形成してもよい。また、公知の方法で粗面化されたアルミニウム板を使用することもできる。
【0095】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等を挙げることができる。特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。これらプラスチックフィルムは塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行うことが好ましい。易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、紫外線照射処理等が挙げられる。また、下塗り層としては、ゼラチンやラテックスを含む層等が挙げられる。
【0096】
また、複合基材としては、上記材料を適宜貼り合わせて使用するが、親水性層を形成する前に貼り合わせても良く、また、親水性層を形成した後に貼り合わせても良く、印刷機に取り付ける直前に貼り合わせても良い。
【0097】
<画像形成層:本発明>
本発明の画像形成層は後述する「熱により溶融する素材」を、後述する方法で多孔質粒子と光熱変換材とを含む層の上に固定することで得られる。
画像形成層自体に光熱変換材を含有しても良く、画像形成層の上にさらに光熱変換材を含有する層を設けても良い。
【0098】
また、画像形成層自体にマット材を含有しても良く、画像形成層の上にさらにマット材を含有する層を設けても良い。
さらに、画像形成層の上にアブレーション防止等の目的の保護層やカバーシートを設けても良い。
【0099】
<熱により溶融する素材>
本発明に使用される熱により溶融する素材としては、インク受容性であることが好ましい。
また、融点が140℃未満であり、50℃以上140℃未満の範囲にあることが好ましい。融点が50℃未満では保存性が問題であり、融点が140℃以上では感度が低下する。
【0100】
本発明に使用する熱により溶融する素材としては、140℃未満で溶融し流動性を示すものであればどのようなものをもちいても構わない。例えば、パラフィン、ポリオレフィン、マイクロワックス、脂肪酸系ワックス及び酸化ポリエチレンワックス等が挙げられる。これらは分子量800〜10000程度のものであり、通常高圧及び低圧重合法により低密度及び高密度ポリエチレンとして、また高分子ポリオレフィンの熱分解により得られる。また、乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基等の極性基を導入することもできる。また、軟化点を下げたり作業性を向上させるためにこれらのワックスを併用することも可能である。後者としては、ステアロミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド又はこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビススステラロアミド、エチレンビスステラロアミド等が挙げられ、これらの併用も可能である。また、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0101】
さらに、本発明に使用する熱により溶融する素材としては、140℃での溶融粘度が150cps以下であることが必要である。140℃での溶融粘度が150cps以下であることにより、溶融時の多孔質層への浸透が促進され、画像部が多孔質層と一体となることで画像強度が向上する。
【0102】
または、インク受容層の素材(140℃での溶融粘度が150cps以下である熱により溶融する素材)が、軟化点が40℃以上,融点が50℃以上の素材で被覆されていても良い。被覆素材は多孔性であってもなくても良く、多孔性でない場合は心材のインク受容性素材は室温で液体であって良い(上記素材の比較的低分子量のものも使用可能)。また、被覆材は200℃以下で溶融しなくても、加熱により孔及び/又は亀裂を生じて、また、被覆材が多孔性であれば加熱による変化を生じなくとも、溶融した心材が被覆材の外に染み出せば良い。
【0103】
被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、例えば「マイクロカプセル−その機能と応用−」(近藤保編集、日本規格協会、1991年)等に記載されている種々の方法で行うことができる。
【0104】
また、熱により溶融する素材又は他の素材により被覆された熱により溶融する素材の形態としては、0.05μm〜10μmの粒子状であることが好ましい。さらに好ましくは、0.1μm〜5μmである。粒子状であることで、多孔質粒子と光熱変換材を含有する層の上に均等に配置することが可能となる。0.05μm未満だと、層に形成された細孔中に侵入する可能性が高くなり、非画線部汚れ原因となる懸念が生じる。10μmよりも大きい場合は露光装置のレーザービームスポットよりも大きくなって、解像度が低下する。
【0105】
<熱により溶融する素材の固定方法>
熱により溶融する素材は、露光されなかった非画線部の熱により溶融する素材が、露光後になんらかの物理的な力及び/又は溶液による溶解によってそのほとんどが除去可能であるような形態で多孔質層表面に固定される。
【0106】
例えば、粉体のまま、公知の粉体塗装法(静電塗装等)によって多孔層表面に付着させ、適当量の加熱により層表面に融着させても良い。この際、あらかじめ層表面の温度を上げておいて、粉体が付着すると同時に融着させても良い。ただし、このような熱融着を使用する場合は層細孔中への浸透を極力抑える必要がある。これは、融着時に層に含有されている空気自体も加熱して体積を膨張させ、熱溶融物の細孔への浸透を防止する等の方法で行うことができる。また、加熱の代わりに超音波の印加によって融着させることもできる。あるいは、融着せずにファンデルワールス力や静電力のみで付着させておいても良い。
このようにして固定した非画線部の溶融素材は、露光後に何らかの物理的な力により、そのほとんどが除去される。
【0107】
また、固定方法としては、有機及び/又は無機のバインダにより固定しても良い。これは、バインダを溶解した溶液中(熱溶融素材は溶解しない)に熱溶融素材を分散した塗布液を多孔質層上に塗布するか、バインダを溶解した溶液を多孔質層上に塗布し、バインダが粘着性を呈しているうちに上記の粉体塗装法によって熱溶融素材を付着させる等の方法で行うことができる。ただし、この場合はバインダ成分が多孔質層細孔に浸透するため、細孔を完全に塞ぐことがないように塗布液のバインダ濃度を制御する必要がある。また、塗布時に、多孔質層を加熱して、層に含有されている空気自体も加熱して体積を膨張させ、塗布液の細孔への浸透を抑制することもできる。
【0108】
このようにして固定した非画線部の溶融素材は、露光後にバインダ成分を溶解しうる溶剤によってバインダを溶解して多孔質表面から遊離させてそのほとんどが除去されるか、及び/又は物理的な力によりそのほとんどが除去される。
【0109】
湿し水を使用した印刷機上で非画線部の熱溶融素材を除去可能とするためにはバインダが水溶性であることが好ましい。水溶性バインダとしては、前述の親水性の結合剤が使用可能であるが、特にメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体やポリビニルアルコールが好ましい。
無機バインダとして金属ケイ酸塩を添加しても良い。
【0110】
また、バインダとしては、100nm以下の金属酸化物微粒子を使用することができる。特に、比較的結合力が弱く、物理的な力による現像性を妨げない30nm以上100nm以下の金属酸化物微粒子が好ましく、この粒径範囲のコロイダルシリカが特に好ましい。
また、水溶性バインダと100nm以下の金属酸化物微粒子を併用することもできる。
さらに、取り扱い性向上のために、熱により溶融する素材を含有する層にマット剤を含有させることができる。マット剤の粒子径としては熱により溶融する素材粒子の径よりも大きいことが好ましい。マット剤としては塗料中の沈降の問題がないといった点から有機粒子であることが好ましく、例えばPMMAやシリコーン、PTFEの粒子が挙げられる。これらの粒子は表面処理や表面被覆がなされていてもよい。
【0111】
<画像形成方法:その他>
本発明の多孔質粒子と光熱変換機能素材を含有した層上には、本発明の画像形成層以外にも、以下のような公知の方法により画像を形成することができるが、これに限るものではない。
【0112】
公知のインクジェット法により画像様にインキ受容素材を付着させて画像層を形成する。インキ受容素材は耐水性を有する。ホットメルトや画像形成後に熱又は光で硬化する熱硬化性物質又は光硬化性物質でも良い。熱硬化性物質、光硬化性物質については特開平9−99662号参照。
【0113】
公知の感熱転写法によりインク受容性の感熱転写層を有したシートの感熱転写層を親水性層表面に密着させ、シート側からサーマルヘッドもしくはレーザー光によって画像様に加熱して、加熱部分の感熱転写層をシートから親水性層表面に転写した後、シートを取り去ることで画像層を形成する。
【0114】
公知の光硬化性又は光可溶性の感光層を親水性層上に塗設し、露光後、可溶部分を現像により除去して画像層を形成する。
公知の熱(赤外線)硬化性又は熱(赤外線)可溶性の感光層を親水性層上に塗設し、レーザー露光後、可溶部分を現像により除去して画像層を形成する。上記感光層としては、例えば、次のような感光層が挙げられる。
【0115】
ポリヒドロキシフェノールとケトン又はアルデヒドとの重縮合樹脂のo−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルと、アルカリ可溶性樹脂を含有する感光性組成物の層;ヒドロキシフェニルメタクリルアミドを分子構造中に有する高分子化合物と、o−キノンジアジド化合物を含有する感光性組成物の層;フェノール及びm−,p−混合クレゾールとアルデヒドを共縮重合させた樹脂と、o−キノンジアジド化合物を含有する感光性組成物の層;o−キノンジアジド化合物、s−トリアジン化合物、該s−トリアジン化合物の光分解生成物との相互作用により色調を変える色素、アルカリ可溶性樹脂を含有する感光性組成物の層;付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を少なくとも1個有する化合物、芳香属性水酸基を側鎖に有する化合物及び/又は脂肪族水酸基を側鎖に有する化合物を構成単位として分子中に含有する、アルカリ水に可溶性又は膨潤性の酸性ビニル共重合体、光重合開始剤、ジアゾ樹脂を含有する感光性組成物の層;酸発生剤、酸分解化合物、赤外線吸収剤を含有する感光性組成物の層;酸発生剤、酸で不溶化する化合物、赤外線吸収剤を含有する感光性組成物の層等である。
【0116】
<可視画性の付与方法>
例えば、感熱紙に使用されている公知の技術を適用することができる。
例えば、ロイコ染料のような電子供与性染料と電子受容性顕色剤とを熱により反応させて発色させる方法や、ジアゾニウム塩とカプラー(フェノール誘導体や活性メチレン基を有する化合物等)とを熱で反応させて発色させた後、光照射して定着させる方法等が挙げられる。これらの発色剤は過熱しない状態では実質的に無色であることが好ましい。また、これらの素材はマイクロカプセル化して使用することもできる。
【0117】
また、光熱変換材として、チタンブラック等の一部の酸素を除去することで導電性を付与し、かつ、着色した素材を用いた場合、露光加熱によって、酸化を進行させて脱色させることが原理的には可能である。例えば黒色のチタンブラックは酸化して白色の二酸化チタンへと変化する。これにより露光部の可視画を得ることができる。
【0118】
<露光方法>
赤外線レーザーによる露光が好ましい。CTP用の一般的な露光機が使用できる。露光エネルギーは100〜500mJ/cm2が好ましい。
【0119】
<現像方法>
物理的な力による:ブラシ、スポンジ等でこすり取る。粘着シート、粘着ロール等の粘着物を表面に押し当ててはがし取る。
熱溶融素材を固定しているバインダの溶解(及び物理的な力)による:バインダを溶解可能な溶液に浸漬する。溶液をかけ流す。同時にブラシ、スポンジ等でこすり取る。溶液を含ませたスポンジでこすり取る。
【0120】
<現像方法:印刷機上>
版胴に印刷版を取り付け、版胴を回転させながら、湿し水供給ローラー、インキ供給ローラー、ブランケット胴の少なくともひとつを版胴に接触させて、湿し水もしくはインキ溶剤によるバインダ溶解効果と各ローラーとの接触剥離効果のいずれか又は複合によって非画線部の熱溶融素材を除去する。
または、印刷機上に専用の現像装置(非画線部の熱溶融素材を除去可能であればどのような機構でも良い)を設置して、それにより非画線部の熱溶融素材を除去する。
印刷版表面から印刷機上で除去される物質は実質的に無色もしくは白色であることが好ましい。これらの物質の可視光での着色が強い場合、印刷機汚染や印刷物の色濁りが問題となる。
【0121】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<多孔質粒子、層状鉱物粒子の分散液の作成>
分散液〔1〕:多孔質シリカ サイクロジェットP−403(GRACE Davison社製、細孔容積2.05ml/g、平均粒径3μm)を純水中に攪拌を行いながら徐々に添加し、固形分20wt%の分散液を得た。
【0122】
分散液〔2〕:合成A型ゼオライト シルトンB(水澤化学社製、Al/Si比率=1.0、平均粒径1.5μm)を純水中に攪拌を行いながら徐々に添加し、固形分20wt%の分散液を得た。
【0123】
分散液〔3〕:膨潤性合成雲母 ソマシフME−100(コープケミカル社製、平均粒径1〜5μm、アスペクト比20以上)を純水中に攪拌を行いながら徐々に添加し、固形分5wt%の分散液(コロイド溶液)を得た。ほぼ完全に膨潤していると考えられ、粒子の平均厚さは100nm以下、アスペクト比は50以上である。
【0124】
分散液〔4〕:多孔質アルミノシリケート AMTシリカ#100B(水澤化学社製、細孔容積0.5ml/g以上(吸油量として70ml/100g)、平均粒径1.0μm)を純水中に攪拌を行いながら徐々に添加し、固形分20wt%の分散液を得た。
【0125】
<親水性層用塗布液の調整>
表1〜3、表4に示したような組成、分散条件で親水性層用塗布液を調整し、ろ過して塗布液を得た。表1の塗布液は、PETフィルム上に薄く塗布、乾燥した後、SEM観察を行い、多孔質粒子や層状鉱物粒子の形状を確認して、その結果を表1に示した。
【0126】
<印刷版用支持体の作製>
表5〜表7に示したような塗布液、基材、塗布厚の組合わせで印刷版用支持体を作製した。表中の各基材の条件は下記の通りである。親水性層の塗布はワイヤーバーにより行った。設定膜厚を得るため、塗布液組成、固形分濃度等に応じて適宜ワイヤーバーの番手は変更した。塗布後は80℃で2分間乾燥した。
【0127】
〔PET基材1〕
厚さ0.18mmのPETフィルムに以下の方法により二層からなる下塗り層を形成した。
1)第一下塗り層
PET基材の塗布面にコロナ放電処理を施した後、下記組成の塗布液を、20℃、相対湿度55%の雰囲気下でワイヤーバーにより乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように塗布した。その後、140℃で2分間乾燥を行った。
【0128】
2)第二下塗り層
上記フィルムの第一下塗り層を形成した面にコロナ放電処理を施した後、下記組成の塗布液を、35℃、相対湿度22%の雰囲気下でエアーナイフ方式により乾燥後の膜厚が0.1μmとなるように塗布した。その後、140℃で2分間乾燥を行った。
<第二下塗り層組成>
ゼラチン 9.6g
界面活性剤(A) 0.4g
硬膜剤(b) 0.1g
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0129】
【化1】
【0130】
〔Al基材1〕
厚さ0.24μmの1050材アルミニウム基材を、2wt%水酸化Na水溶液を用い、50℃で30秒間浸漬して脱脂した。十分に水洗した後、2wt%3号ケイ酸Na水溶液に70℃で30秒間浸漬処理し、水洗した後、十分に乾燥した。
【0131】
〔Al基材2〕
Al基材1と同様にして脱脂したアルミニウム基材を、20wt%硫酸水溶液を用い、25℃で20Vの電圧で陽極酸化処理して、0.5g/m2の陽極酸化皮膜を形成した。水洗した後、Al基材1と同様にしてケイ酸Na処理を行った。
【0132】
〔Al基材3〕
Al基材1と同様にして脱脂したアルミニウム基材を、20wt%硝酸水溶液に10秒間浸漬・中和し、30℃、2.0wt%硝酸水溶液を用いて、ピークの電流密度が60A/dm2の正弦波で正の電気量が500C/dm2となるように電解粗面化処理を行った。次いで1wt%水酸化Na水溶液を用い、30℃で20秒間浸漬し、水洗した後、Al基材2と同様にして陽極酸化処理とケイ酸Na処理を行った。
【0133】
〔Al基材4〕
Al基材2と同様にして陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム基材表面に、特開平8−240914号の実施例1に記載されているものと同一の方法により有機−無機ゾルゲル皮膜を形成した。
【0134】
<表5:支持体(親水性層)の印刷評価>
〔画像形成・印刷版の作製〕
インクとして下記組成のものを使用し、インクジェット方式により画像を形成した。その後、100℃で2分間乾燥して印刷版とした。インクジェット方式による画像形成は、版面上で1ドットが約40μm径となるようなインク吐出量とし、720dpiの解像度で行った。
【0135】
〔インク組成〕
ラテックス粒子:ヨドゾールGD87B水分散液(カネボウNSC社製、平均粒径90nm、Tg60℃、固形分50wt%) 170重量部
カルボキシメチルセルロースCMC−1220(ダイセル化学工業社製)5重量部
カーボンブラック水分散液(分散剤含有)SD9020(大日本インキ社製、1次粒径100nm以下、固形分30wt%) 33重量部
上記に純水を加えて固形分濃度を7.0wt%とした。
【0136】
〔印刷評価条件〕
印刷機:ハイデルGTOを用い、コート紙、湿し水(東京インキ社製、H液SG−51、濃度1.5%)、インキ(東洋インキ社製、トーヨーキングハイエコーM紅)を使用して印刷を行った。
【0137】
〔非画線部の汚れにくさ〕
1000枚印刷した時点でのシャドウ部(画像として120線での70%の網点部)の目開きの程度を目視で判断した。
【0138】
〔シャドウ部の目開き〕
1000枚印刷した時点でのシャドウ部(画像として、マイクロソフトオフィス97の「オートシェイプ機能の塗りつぶしパターン:70%」を用いた部分)の目開きの程度を目視で判断した。
【0139】
〔指紋跡汚れ〕
印刷前にあらかじめ非画線部に指紋跡をつけておいた部分の、1000枚印刷した時点での汚れの程度を目視で判断した。
【0140】
〔汚し回復性〕
1000枚印刷後、湿し水の供給を切り、インクのみを印刷版全体に付けた後、再度湿し水を供給して、印刷を再開した。紙面非画線部の汚れの程度が1000枚印刷時点と同等になった印刷枚数で汚し回復性を評価した(枚数が多いほど不良)。
【0141】
<表6:支持体(親水性層)の印刷評価>
〔画像形成・印刷版の作製〕
同様にして作成した表6に示した各支持体の上に下記組成の画像形成層を乾燥後重量で1.2g/m2となるように塗布し、50℃で3分間乾燥して印刷版とした。得られた印刷版をレーザー露光機のドラムに巻きつけ、830nmの赤外線レーザーで露光エネルギー量を表6に示したように変化させて画像様に露光した。露光後の版を自動現像機で現像液として水のみを用いて現像し、乾燥して印刷版とした。変化させた露光エネルギーに対する画像形成の程度を同様に表6に示した。
【0142】
〔画像形成層1 組成〕(参考例)
ラテックス粒子:ヨドゾールGD87B水分散液(カネボウNSC社製、平均粒径90nm、Tg60℃、固形分50wt%) 190重量部
カルボキシメチルセルロースCMC−1220(ダイセル化学工業社製) 5重量部
上記に純水を加えて固形分濃度を11.0wt%とした。
【0143】
〔印刷評価条件〕
印刷機:ハイデルGTOを用い、コート紙、湿し水(東京インキ社製、H液SG−51、濃度1.5%)、インキ(東洋インキ社製、トーヨーキングハイエコーM紅)を使用して印刷を行った。
【0144】
〔耐刷性〕
印刷物の画像部にインキ着肉不良が現れるまでの印刷枚数を耐刷性とした。その時の印刷枚数を各露光エネルギー量に対応した画像部ごとに求め、それぞれの耐刷性を評価した。
【0145】
<表7:支持体(親水性層)の印刷評価>
〔画像形成・印刷版の作製〕
同様にして作成した表7に示した各支持体の上に下記のいずれかの組成の画像形成層を塗布し、70℃で3分間乾燥して印刷版とした。塗布量は乾燥後の重量として表中に示した。得られた印刷版をレーザー露光機のドラムに巻きつけ、830nmの赤外線レーザーで画像様に4000dpiで露光して印刷版とした。露光エネルギー量は表7に示した。
【0146】
〔画像形成層2 組成〕
インク受容性熱溶融素材粒子:ポリエチレンワックスエマルジョンA101(岐阜セラック社製、平均粒子径1.5μm、軟化点85℃、融点122℃、140℃での溶融粘度150cps、固形分40wt%) 100重量部
カルボキシメチルセルロース CMC−1220(ダイセル化学工業社製) 5重量部
上記に純水を加えて固形分濃度を10.0wt%とした。
【0147】
〔画像形成層3 組成〕
インク受容性熱溶融素材粒子:マイクロクリスタリンワックスエマルジョンA206(岐阜セラック社製、平均粒子径0.5μm、軟化点65℃、融点108℃、140℃での溶融粘度8cps、固形分40wt%) 100重量部
コロイダルシリカ スノーテックス20L(日産化学社製、平均粒径45nm、固形分20wt%) 50重量部
上記に純水を加えて固形分濃度を10.0wt%とした。
【0148】
〔画像形成層4 組成〕
インク受容性熱溶融素材粒子:マイクロクリスタリンワックスエマルジョンA206(岐阜セラック社製、平均粒子径0.5μm、軟化点65℃、融点108℃、140℃での溶融粘度8cps、固形分40wt%) 100重量部
コロイダルシリカ スノーテックス20L(日産化学社製、平均粒径45nm、固形分20wt%) 50重量部
マット材:PMMA粒子 MX220(綜研化学社製、平均粒子径2μm)10重量部
上記に純水を加えて固形分濃度を12.0wt%とした。
【0149】
〔画像形成層5 組成〕
インク受容性熱溶融素材粒子:マイクロクリスタリンワックスエマルジョンA213(岐阜セラック社製、平均粒子径1.0μm、軟化点65℃、融点108℃、140℃での溶融粘度8cps、固形分30wt%) 135重量部
コロイダルシリカ スノーテックス20L(日産化学社製、平均粒径45nm、固形分20wt%) 50重量部
光熱変換剤:カーボンブラック水分散液(分散液含有) SD9020(大日本インキ社製、1次粒径100nm以下、固形分30wt%) 20重量部
上記に純水を加えて固形分濃度を11.0wt%とした。
【0150】
〔画像形成層6 組成〕
インク受容性熱溶融素材粒子:マイクロクリスタリンワックスエマルジョンA206(岐阜セラック社製、平均粒子径0.5μm、軟化点65℃、融点108℃、140℃での溶融粘度8cps、固形分40wt%) 100重量部
コロイダルシリカ スノーテックス20L(日産化学社製、平均粒径45nm、固形分20wt%) 40重量部
カルボキシメチルセルロース CMC−1220(ダイセル化学工業社製) 2重量部
光熱変換剤:酸化スズドープ酸化インジウムT−1(三菱マテリアル社製、1次粒子径20nm、粉体) 5重量部
上記に純水を加えて固形分濃度を11.0wt%とした。
【0151】
〔画像形成層7 組成〕
インク受容性熱溶融素材粒子:マイクロクリスタリンワックスエマルジョンA206(岐阜セラック社製、平均粒子径0.5μm、軟化点65℃、融点108℃、140℃での溶融粘度8cps、固形分40wt%) 100重量部
コロイダルシリカ スノーテックス20L(日産化学社製、平均粒径45nm、固形分20wt%) 50重量部
マット材:PMMA粒子 MX440(綜研化学社製、平均粒子径4μm)10重量部
可視画剤:特開平9−286177号に記載の実施例1・発色マイクロカプセル1と同様の方法で作成したロイコ染料と顕色剤とを含有した体積平均粒子径3.3μmのマイクロカプセル(固形分として) 5重量部
上記に純水を加えて固形分濃度を12.0wt%とした。
【0152】
〔印刷評価条件〕
印刷機:三菱重工業社製DAIYAIF−1を用い、コート紙、湿し水(東京インキ社製、H液SG−51、濃度1.5%)、インキ(東洋インキ社製、トーヨーキングハイエコーM紅)を使用して印刷を行った。
【0153】
〔水量低減での汚れにくさ〕
湿し水供給量(設定値)を下げていった際の汚れにくさ(網点部のカラミ、非画線部の汚れ)を比較した。
【0154】
〔水量ラチチュード〕
湿し水供給量(設定値)を変化させた際に良好な印刷品質が得られる設定値の変化幅を求め比較した。
【0155】
〔小点再現性〕
100枚印刷した時点で、印刷版上に25μm径で形成したドットが紙面上で確認できるかどうか比較した。
【0156】
〔ブランケット汚れ〕
2000枚印刷した時点で、ブランケット上に堆積した汚れを粘着テープではがし取り、そのテープを白紙上に貼って、汚れの程度を比較した。
【0157】
〔耐刷性〕
印刷物の画像部にインキ着肉不良が現れるまで印刷を行い、その時の印刷枚数を求め、耐刷性を評価した。
【0158】
〔露光後可視画性評価〕
レーザー露光後の印刷版の画像部/非画像部の可視画性の有無を目視で判断した。
【0159】
【表1】
【0160】
【表2】
【0161】
【表3】
【0162】
【表4】
【0163】
【表5】
【0164】
【表6】
【0165】
【表7】
【0166】
【発明の効果】
本発明によれば、印刷版用支持体の親水性表面加工を安価な塗布により行うことができ、かつ、印刷版としての性能(水量ラチチュード、非画線部の汚れにくさ、ブランケット汚れのしにくさ等)がアルミ砂目同等以上であり、かつ、十分な耐刷性を有する印刷版用支持体を提供することができる。
【0167】
また本発明によれば、完全に明室での取り扱いが可能で、アブレーションを必要とせずに画像形成可能で露光機汚染の懸念がなく、特別な現像処理が不要であり、印刷機上で現像される場合でも印刷機汚染の懸念がない、可視画性に優れた印刷版及び画像形成方法を提供することができる。
Claims (25)
- 基材上に順に、多孔質無機粒子を含有する親水性層と、熱により画像形成可能な画像形成層を有する印刷版において、該親水性層が光熱変換機能素材を含有し、かつ、前記多孔質無機粒子が細孔容積が0.5〜2.5ml/gの多孔質シリカ、細孔容積が0.5〜2.5ml/gの多孔質アルミノシリケート、Al/Si比率0.4〜1.0のゼオライトから選ばれる粒子であり、かつ、前記画像形成層が熱により溶融する素材を含有し、さらに、該熱により溶融する素材の140℃での溶融粘度が150cps以下であることを特徴とする印刷版。
- 光熱変換機能素材が導電性を有することを特徴とする請求項1に記載の印刷版。
- 光熱変換機能素材が導電性を有する金属酸化物であることを特徴とする請求項2に記載の印刷版。
- 金属酸化物が層形成時に実質的に無色又は白色を呈することを特徴とする請求項3に記載の印刷版。
- 光熱変換機能素材が平均径0.5μm以下の粒子であるか若しくは平均径0.5μm以下の粒子の表面にコーティングされているものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の印刷版。
- 多孔質粒子径が1μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の印刷版。
- 多孔質無機粒子を含有する親水性層が薄層状無機粒子を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の印刷版。
- 粒子が層状鉱物であることを特徴とする請求項7に記載の印刷版。
- 粒子が膨潤性層状鉱物であることを特徴とする請求項8に記載の印刷版。
- 多孔質無機粒子を含有する親水性層が100nm以下の金属酸化物微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の印刷版。
- 金属酸化物微粒子がコロイダルシリカであることを特徴とする請求項10記載の印刷版。
- 多孔質無機粒子を含有する親水性層が新モース硬度5以上の無機粒子を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の印刷版。
- 多孔質無機粒子を含有する親水性層に含まれる有機成分が層全体の0〜30wt%であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の印刷版。
- 熱により溶融する素材が粒径0.05μm〜10μmの粒子状であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の印刷版。
- 熱により溶融する素材を含有する画像形成層が水溶性樹脂及び/又は100nm以下の金属酸化物微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の印刷版。
- 熱により溶融する素材を含有する画像形成層が光熱変換機能素材を含有することを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の印刷版。
- 光熱変換機能素材が金属酸化物であることを特徴とする請求項16に記載の印刷版。
- 基材上に形成されたいずれかの層が熱により発色又は消色又は色相が変化する機能を有する素材を含有することを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の印刷版。
- 請求項1〜13のいずれかに記載の印刷版において、画像形成層を含む1層以上の層が実質的に無色又は白色を呈することを特徴とする印刷版。
- 請求項1〜19のいずれかに記載の印刷版を画像様に加熱し熱により溶融する素材を溶融させ、少なくともその一部を多孔質層に浸透させることで画像部とし、さらに非画像部の熱により溶融する素材を除去することで画像を形成することを特徴とする印刷版の画像形成方法。
- 画像様の加熱を赤外線レーザー光で行うことを特徴とする請求項20に記載の印刷版の画像形成方法。
- 非画像部の熱により溶融する素材の除去を物理的な力で行うことを特徴とする請求項20又は21に記載の印刷版の画像形成方法。
- 非画像部の熱により溶融する素材の除去を水による水溶性樹脂の溶解で行うことを特徴とする請求項20又は21に記載の印刷版の画像形成方法。
- 非画像部の熱により溶融する素材の除去を印刷機上で行うことを特徴とする請求項20〜23のいずれかに記載の印刷版の画像形成方法。
- 非画像部の熱により溶融する素材の除去を版胴を回転させながら、湿し水供給ロール及び/又はインク供給ロール及び/又はブランケット胴を接触させるか、及び/又は印刷機に付加した非画像部の熱により溶融する素材を除去可能な専用装置を用いて行うことを特徴とする請求項24に記載の印刷版の画像形成方法。
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