JP3803833B2 - 繊維状充填層による特定気体の抽出回収方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、現在化学プラントなどで多数利用されている吸収、吸着装置において用られる抽出しようとする特定気体の分離回収に関するものである。特に、本発明は、抽出しようとする特定気体を吸収または吸着する物質を細線化したものを繊維状充填層として使用し、これに特定気体を吸収または吸着させた後、この充填層を加熱または減圧して特定気体を放出させて回収する特定気体の抽出回収方法に関するものである。本発明は、具体的には水素吸蔵合金による水素の分離回収において使用される他に、核融合炉からのトリチウムの抽出にも利用される。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術においては、気体の物質中における溶解度の温度依存性や圧力依存性を利用して特定気体を分離回収する代表的な方法に、気体を吸収、吸着する物質を球状の粒子として多孔体を形成した粒子充填層を利用する方法がある。また、熱回収においては、片面からの高熱流束を除去するために、銅に酸化アルミナを少量添加した物質を細線化して多孔体とした充填層(商品名:GLIDCOP
AI−15)を用いた研究がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の球状粒子を用いた充填層では、吸収、吸着が行われる表面積は大きくなるが、粒子充填層の流動抵抗が大きいため、流量を大きくとれない上にポンプ動力が大きくなる欠点があった。また、球状粒子を用いた充填層では、粒子表面での物質伝達率が球表面のそれに近く、物質伝達率の向上を見込めないという短所があった。そのために充填材の体積に対する表面積を大きくとれても系全体としての吸収、吸着効率が向上せず、吸収、吸着あるいは放出、脱着に時間を要する欠点があった。
【0004】
更に、等しい粒径の粒子からなる充填層では、壁近傍での多孔率が高いため、粒子充填層全体の有効熱伝導率が悪くなり、充填層全体を均一な温度に保つことが困難となるために、特に流れと直角方向に存在する吸収、吸着物質中に吸収、吸着、溶解した気体濃度が不均一となり、結果的に回収効率が低下し、また充填層を加熱するときの熱入力が大きくなってしまう欠点があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、これら従来技術の問題点を解決して画期的な気体抽出回収技術を実現するために、特定気体を吸収または吸着する物質を細線化して繊維状のものとし、これを繊維状充填層に構成して特定気体を抽出回収する方法である。即ち、本発明は、抽出しようとする特定気体を吸収する物質を細線化したものを繊維状充填層に形成し、これに特定気体を含む気体または液体を流して特定気体を充填層に吸収させた後、この充填層を周囲から加熱して充填層の温度を上昇させて充填層に吸収された特定気体を放出させて回収することにより、抽出しようとする特定気体を抽出回収する方法である。
【0006】
また、本発明は、抽出しようとする特定気体を含む気体または液体を高圧にし、これを繊維状充填層に流して特定気体を充填層に吸収させた後、この充填層を低圧に保持することにより特定気体を充填層から放出させ、これを回収する特定気体を抽出回収する方法である。
【0007】
本発明の他の方法は、抽出しようとする特定気体を化学反応により吸着する物質を細線化したものを繊維状充填層に形成し、この充填層を低温または高圧とすることによりその表面に特定気体を化学反応により吸着させた後、充填層を高温または低圧に保持することにより特定気体を充填層表面から脱着させて回収する特定気体を抽出回収する方法である。
【0008】
また、本発明の更に他の方法は、繊維状充填層を二重管構造からなる外管部に形成し、その内管部に抽出しようとする特定気体を含む気体または液体を流し、内管壁を通して透過する気体を外管部に設けた充填層に吸収あるいは化学反応により吸着させた後、外管部を加熱することによって特定気体を充填層から放出させ、これを回収する特定気体を抽出回収する方法である。
【0009】
本発明における吸収については、物質表面に到達した気体が物質内部にまで拡散によって移動するので、充填層の表面積だけでなく容積も考慮の対象になってくる。また本発明における吸着については、物質表面での気体の挙動が重要になり、例えばある気体が物質表面で反応して異なる物質に変化することによってその気体を物質表面で捕捉する場合であり、この場合には物質内部までの拡散は重要ではない。そこで、本発明においては、吸収または吸着の現象が温度依存性が強く、粒子充填層より繊維状充填層の方が熱伝導性に優れている点を利用している。
【0010】
【実施例】
次に、本発明における、水素吸蔵合金を用いて水素を吸収した後にこれを回収することからなる水素の抽出方法を具体的な実施例に基づいて説明する。
【0011】
図1のように水素吸蔵合金(例えば、イットリウム含有合金等)を細線化したもの(線径:0.5mmから3mm程度)を繊維状充填層1(平均多孔率約0.1−0.4程度)に形成した流路3に、水素を含んだ混合気体または液体を流して水素をその吸蔵合金に吸収させる。
【0012】
その合金が水素で飽和状態になれば、水素で飽和された吸蔵合金から水素を回収するための気体を充填層に流し、且つその周囲から充填層を加熱する。充填層の温度の上昇に伴い水素の溶解度が低下する吸蔵合金の場合には、水素が回収気体中に放出される。また、合金中の水素濃度が低下すれば、この充填層を冷却後に再び水素を含んだ混合気体又は液体を流して水素を充填層合金に吸収させる。
【0013】
また、前記水素吸収、回収処理を二重管を用いて行う場合には、図3に示されるように、二重管4の内管6の管壁に透過窓5を設け、その内管と外管7との間に繊維状充填層8を設けて水素回収処理を行う。二重管の外管部に水素を選択的に吸着する水素吸蔵合金(例えば、バナジウムまたはジルコニウム合金等)からなる充填層8を設置し、内管内を流れる水素含有流体を透過窓5を通して外管部に透過させて水素を充填層に吸収させた後に、充填層を周囲から加熱することによって水素を放出させ、この放出された水素を回収気体9によって分離回収する。
【0014】
更にまた、充填層表面での化学反応により抽出しようとする特定気体を吸着して回収する場合には、特定気体を吸着する物質を細線化して繊維状充填層を形成し、これを図1に示されるような従来の粒子充填層2を用いた吸着筒の代わりに使用することによって、特定気体を分離回収する。例えば、ゼオライト系の吸着剤を充填層にして使用することにより特定気体である二酸化炭素を吸着させることができる。以上のように、従来の粒子充填層に代えて、特定気体を吸収または吸着する物質を細線化した充填層を使用することによって前記問題点を解決することができた。
【0015】
本発明の繊維状充填層物質を得るための細線化方法としては、シース熱電対を製作する方法のように金属又は合金を引っ張りながら加熱冷却を繰り返して細線状にしてコイル等に巻取りながら製作する。例えば、銅のように柔らかい金属を含む合金では0.05mm程度の線径のものまで製作することができる。本発明の繊維状充填層に比較的近い形状のものに金属また合金束子があるが、これを更に細い線径(例えば0.1mmから1mm)にしたものが本発明においては好適である。
【0016】
水素等の気体吸蔵合金には、例えばMg2Cu,Mg2Ni等のマグネシウム系、LaNi5などの希土類金属系、TiFe、TiMn、TiCr2等のチタン系、ZrMn2等のジルコニウム系が使用される。またイットリウム、バナジウム、ジルコニウム等の純物質も吸蔵物質として使用されるが、熱伝導性の観点から合金のほうが優れている。CO2の吸着剤として使用される化合物としてはゼオライトが使用されるが、これには多少繊維化に難しい点が残る。
【0017】
【作用】
本発明においては、従来の充填粒子形成物質を細線化して繊維状充填層とすることにより、充填材の体積に対する表面積は小さくなるけれども、処理される気体または液体の流量を大きくとれて物質伝達率が向上するので、抽出しょうとする特定気体の吸収、吸着速度が向上し、また吸収、吸着における系全体の回収率が向上する。更に、壁近傍の多孔率を低くすることができ、また充填物質間の接触抵抗が少なくなるため、充填層全体の有効熱伝導率が高くなって、充填層の温度が均一化されるので、その結果、充填物質中に吸収されたあるいはその表面に吸着されたものの、流れと直角方向における気体濃度が均一化する。
【0018】
【発明の効果】
(熱入力の低減についての効果)
同じ充填率の粒子充填層に比べて、充填層全体の有効熱伝導率が大きくなるため、充填層の温度が均一化され、これに伴い充填層への加熱入力を低減することができる。
【0019】
(ポンプ動力の低減についての効果)
同じ充填率の粒子充填層に比べて、流体の流動抵抗が小さくなるため、ポンプ動力が低減される。
【0020】
(抽出効率の増大についての効果)
これまでの粒子充填層に比べて処理される気体の流量が大きくとれ、物質伝達率も向上するため、吸収、吸着、放出または脱着に要する時間が短縮される。また充填層温度も均一化できるので、吸収、吸着物質中の抽出しょうとする特定気体濃度が均一化されるために吸収、吸着における系全体の回収効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の繊維充填層を示す図である。
【図2】 従来の粒子充填層を示す図である。
【図3】 本発明の二重管を用いた繊維充填層を示す図である。
【符号の説明】
1,8: 繊維状充填層
2: 粒子充填層
3: 気体流路
4: 二重管
5: 透過窓
6: 内管
7: 外管
9: 回収気体
Claims (1)
- 内管と外管とからなる二重管構造を有する特定気体の抽出回収装置の内管の管壁に透過窓を設け、その内管と外管との間の外管部に特定気体の吸蔵合金を細線化した繊維状充填層を設け、その内管内に抽出しようとする特定気体を含む気体又は液体を流し、内管の管壁に設けた透過窓を通して透過する気体又は液体を外管部に設けた充填層で吸収又は吸着処理した後、外管部を加熱することによって特定気体を充填層から放出させて回収することを特徴とする、繊維状充填層による特定気体の抽出回収方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP14212095A JP3803833B2 (ja) | 1995-06-08 | 1995-06-08 | 繊維状充填層による特定気体の抽出回収方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP14212095A JP3803833B2 (ja) | 1995-06-08 | 1995-06-08 | 繊維状充填層による特定気体の抽出回収方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH08332337A JPH08332337A (ja) | 1996-12-17 |
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Family Applications (1)
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ITMI20061173A1 (it) * | 2006-06-19 | 2007-12-20 | Getters Spa | Leghe getter non evaporabili adatte particolarmente per l'assorbimento di idrogeno |
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1995
- 1995-06-08 JP JP14212095A patent/JP3803833B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH08332337A (ja) | 1996-12-17 |
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