JP3803794B2 - パン粉 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
パン粉、さらに詳細には電子レンジ加熱調理に適応するパン粉に関する。
【0002】
【従来の技術】
食生活の多様化により、簡便かつおいしい調理済みの冷凍食品が普及してきている。冷凍食品が、コロッケ、カツ、エビフライなどのパン粉を使用するフライ食品の場合、電子レンジで加熱調理して食するケースが増えている。
【0003】
しかし、油ちょう済冷凍フライ食品を電子レンジで加熱調理すると、冷凍期間が長くなるとフライ食品のパン粉の部分がふやけたり、クリスピー感が失われて、フライ食品の食感が悪くなる。更にはある程度クリスピー感はあっても舌ざわりが悪いという欠陥がみられ、油ちょう済冷凍フライ食品を電子レンジで加熱調理してもクリスピー感があって、しかも舌ざわりに優れたパン粉が望まれている。
【0004】
パン粉はパンを粉砕して製造するのが一般的であるが、それ以外の方法として、例えば特開昭57−186431号に示されている如く、イーストを使用しないで、アルファ化澱粉や界面活性剤を含む生地を押出成形後粉砕する方法では、電子レンジ加熱調理用として開発されたものではなく、押出成形を容易にする界面活性剤の添加や発酵工程がないため、パン粉の風味が悪くなったり、パン粉の特性が変わってしまうという問題があった。
【0005】
電子レンジ加熱調理対応のパン粉を製造する試みとして、例えばセルロース及びアルファ化澱粉を使用するパン粉(特開平05−316982号)が開示されており、穀類やいも類の澱粉を単にアルファ化して冷水に膨潤させた澱粉では、電子レンジ加熱調理耐性の不足を、セルロースの添加等によってパン粉の軟化をある程度防止しているが、パン粉としての舌ざわりが必ずしも良好でなかった。
【0006】
尚、アルファ化澱粉を揚げ物に使用した例として、溶解度が30%以下で、膨潤度が10%以上のアルファ化澱粉を25%以上含有するから揚げ粉(特開平8−56599号)が開示されているが、から揚げの食感などの改善を目的とし、電子レンジ加熱調理に対応するパン粉の製造を目的としたものでなかった。
【0007】
一方、冷水膨潤性でない澱粉を使用してパン粉を製造する例として、大豆粉及び加工澱粉(澱粉エーテル、澱粉エステル、架橋澱粉または湿熱処理澱粉)を添加するパン粉の製造方法(特開平7−256041号)が提案されており、この方法では、パン粉の吸油量の改善などに効果はみられても電子レンジ加熱調理に対応するものでなかった。
【0008】
また、上記以外の方法でパン粉に電子レンジ調理に対する耐性をもたせる試みとして、パン生地にコーンフラワーを添加するパン粉(特開平4−53459号)、油脂を乳化剤(例:グリセリン脂肪酸エステル)に含有させた油脂組成物を使用するパン粉(特開平08−103235号)、アルギン酸ナトリウム、カラゲーナン、ジエランガム、低メトキシペクチンなどの一種以上をパン生地に添加するパン粉(特開平08−182472号)等も開示されているが、必ずしも充分なものでなく、その改善が強く望まれている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
油ちょう済冷凍フライ食品を電子レンジで加熱しても、クリスピーな食感を有し、しかも舌ざわりが良好な冷凍食品用のパン粉を提供すること。
【0010】
【発明を解決しようとする手段】
上記の課題に関して、本発明者等は、鋭意努力の結果、冷水溶解度15%以下であって、且つ、冷水膨潤度が4〜25の冷水膨潤性澱粉を小麦粉に対して5〜25重量%添加して製造したパン粉を得ることによって、問題点の解消をはかることを可能にして、本発明を完成した。
【0011】
本発明でいうパン粉とは、小麦粉を主原料とし、食塩、イースト、イーストフード、油脂等を適宜添加してパン生地を製造し、焙焼法、電極法など常法に従ってパンを焼成し、そのパンを粉砕した生パン粉や目的に応じて乾燥した乾燥パン粉を意味する。
【0012】
冷水膨潤性澱粉とは、形状は粉末状であって、冷水に投入した時、一部が砂糖のように元の粒子の存在がなくなって水に溶解し、残りの部分が自重の何倍もの水を吸収して膨潤した粒子として存在する特性を有する澱粉を意味し、本発明のパン粉には冷水溶解度15%以下であって、且つ、冷水膨潤度4〜25に加工された澱粉を用いる。
【0013】
冷水溶解度が15%を越えると、パン生地の調製がしにくくなったり、パン粉の舌ざわりが悪くなる。冷水溶解度が低くなっても使用することができるが、得られるパン粉が、粉砕時に細片になりすぎる傾向があるので、通常0.2以上が好ましい。また、冷水膨潤度が4未満では、パン粉の電子レンジ耐性が弱くなる。25を越えるとパン生地の粘性が出すぎて粘性のバラツキが大きくなり、且つ、パン粉の舌ざわりが悪くなる。
【0014】
かかる冷水膨潤性澱粉を得るためには、例えば、澱粉をエピクロルヒドリン、トリメタリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、オキシ塩化リンなどの通常の架橋剤で処理、或は澱粉をこれらの架橋剤と無水酢酸、酢酸ビニルなどのエステル化剤やプロピレンオキサイド、モノクロル酢酸ソーダのようなエーテル化剤で処理後、中和、水洗した乳液を適度の水分に調製した後、ドラムドライヤーやスプレードライヤーにて糊化後乾燥し、粉砕して製造される。
【0015】
ここに示した冷水膨潤性澱粉を得る方法は、本発明で用いるパン粉を製造する上での好ましい態様の一例であり、必ずしもこの条件に拘るものでなく、要は冷水溶解度15%以下、冷水膨潤度4〜25の範囲にあるように加工された冷水膨潤性澱粉が得られる限り特に限定されない。尚、冷水膨潤性澱粉の製造に用いる原料澱粉としては市販の澱粉、例えばタピオカ澱粉、小麦澱粉、コ−ンスタ−チ、ワキシ−コ−ンスタ−チ、米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉などいずれも用いることができるが、油ちょう済冷凍フライ食品の電子レンジによる加熱調理後の好ましい食感をより長く持続させるという点でタピオカ澱粉がより効果的である。
【0016】
上記の冷水溶解度と冷水膨潤度は次のようにして測定されたものである。
乾物換算で試料約1gを25℃の水約100mlに分散した状態にし、30分間25℃の水の恒温槽の中でゆるやかに攪拌した後、遠心分離(3000r.p.m、10分間)し、ゲル層と上澄層に分ける。次いでゲル層の重量を測定し、これをAとする。次に重量測定したゲル層を乾固(105℃、恒量)して重量を測定し、これをBとし、A/Bで冷水膨潤度を表す。
【0017】
一方、この時の上澄液の容量および上澄液に含まれる全糖量をフエノール硫酸法で測定し冷水溶解度を算出する。 本発明は、冷水溶解度15%以下であって、且つ、冷水膨潤度4〜25の冷水膨潤性澱粉を小麦粉に添加して製造するパン粉であって、パン粉付けをする冷凍済フライ食品の電子レンジによる加熱調理後の食感改良を目的としたものである。
【0018】
該冷水膨潤性澱粉の添加量は、小麦粉に対して5〜25重量%とする。その添加量が5重量%未満のパン粉では油ちょう済冷凍フライ食品に対する電子レンジ耐性が弱く、25重量%を越えると、冷凍フライ食品を電子レンジで加熱調理すると舌ざわりが悪くなる。
【0019】
本発明のパン粉を得る方法として、ストレート法、中種法などの公知のパンを製造する方法が使用でき、パンの焼成については焙焼式、電極式の何れで行ってもよい。焼成後のパンを冷却、粉砕、必要により乾燥および冷凍保存してパン粉を得る方法が例示される。その際、冷水溶解度15%以下であって、且つ、冷水膨潤度4〜25の冷水膨潤性澱粉の添加は、パンの焼成までのパン生地の段階で行うが、ストレート法の場合では他の原材料と共に生地を作り、中種法の場合には中種を発酵させた生地に残りの材料と共に添加する。
【0020】
パン生地原料としては、小麦粉を主原料に食塩、イースト、イーストフード、ベーキングパウダーや重曹等の膨化剤、砂糖、グルコース、水飴、異性化糖、麦芽糖、乳糖、果糖、糖アルコール等の糖類、ショートニング、バター、マーガリン等の油脂、全卵、卵白、卵黄等の卵製品、牛乳、練乳、全脂乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、生クリーム、チーズ等の乳製品、大豆粉など通常使用される原材料以外に、必要に応じて脂肪酸モノ及びジグリセライド、レシチン、シュガーエステル、プロピレングリコール脂肪エステル等の乳化剤、アナトー色素、クチナシ色素、ラック色素、紅コウジ色素、紅バナ等の色素等を添加してもよい。
【0021】
パン粉の主たる用途としては、コロッケ、エビフライ、カツなどのフライ食品であり、家庭では、通常、主原料に小麦粉100%よりなる市販のパン粉を用いてフライにしてすぐに食してしまう場合が多く、揚げ色もよく、クリスピー感もそれなりにあって問題は少ない。しかし、家庭でもフライ食品をしばしば冷凍したり、油ちょう時の臭いそのものが嫌われて流通中の油ちょう済冷凍フライ食品を使用するケースが増えている。フライ食品が冷凍食品であると加熱が必要になる。この場合、再度油ちょうするとクリスピー感はあるが揚げ色が悪くなるし、油ちょうすると臭いの問題は解決できないし、手間もかかるので、簡単に調理できるように電子レンジが使用される。しかし冷凍期間が長くなると電子レンジで加熱調理すると一般的にパン粉が軟化してクリスピー感が不足したり、無理やりパン粉に硬さをもたせようとすると舌ざわりが悪くなるなどの問題があった。
【0022】
これに対して、本発明のパン粉を使用し、フライ食品にすることで、油ちょう直後は勿論、長期に冷凍した油ちょう済冷凍フライ食品を電子レンジで加熱調理しても、クリスピー感があって、しかも舌ざわりの改善をはかることが可能になる。
【0023】
本発明のパン粉を用いてフライ済冷凍食品を製造するにあたっては、通常の方法が使用でき、例えば、フライの中身に小麦粉などで粉付し、卵液またはバッター液を付けた後、本発明のパン粉をまぶし、フライ処理の後これを冷凍すればよい。冷凍に際しては急速冷凍が好ましい。フライの中身は、特に限定されず肉類、魚類、野菜類など任意の具剤を使用できる。卵液およびバッター液は、通常使われる組成であれば特に限定されない。フライ処理に用いる油としては、一般に食用に供することのできるものであれば、特に限定されず、通常は植物油が好ましい。
【0024】
かくして得られた油ちょう済冷凍フライ食品は、冷凍保存期間が長くなっても電子レンジ加熱調理でクリスピー感があって、舌ざわりにも優れたものとなる。以下に本発明を参考例と実施例でもって説明するが、実施例で使用する部は、重量部を表す。
【0025】
【参考例1】
水130部に硫酸ナトリウム10部を溶解し、タピオカ澱粉100部を分散させ、攪拌下でそれぞれに3%水酸化ナトリウム溶液を加えてpH11.1〜11.3に維持しながら、トリメタリン酸ソーダ(TMP)を表1に示す割合で投入し、10時間反応させた後、10%硫酸で中和し、水洗後30%濃度のスラリーを調製した。このスラリーを表面温度150℃のダブルドラムドライヤーで加熱処理し、乾燥し、40メッシュの篩を通過させた。得られた試料No.1〜No.4の冷水膨潤性澱粉の冷水溶解度と冷水膨潤度を表3に記載した。
【0026】
【表1】
【0027】
【参考例2】
参考例1に於てタピオカ澱粉をコ−ンスタ−チに替え、トリメタリン酸ソ−ダを0.12部添加した他は同様にして得られた試料No.5の冷水膨潤性澱粉の冷水溶解度と冷水膨潤度を表3に記載した。
【0028】
【参考例3】
水130部に硫酸ナトリウム20部を溶解し、馬鈴薯澱粉100部を分散させ、トリメタリン酸ソーダとプロピレンオキサイド(PO)を表2の割合で投入し、20時間反応させ、10%硫酸で中和後、実施例1に準じて処理して得られた試料No.6〜No.8の冷水膨潤性澱粉の冷水溶解度と冷水膨潤度を表3に記載した。
【0029】
【表2】
【0030】
【実施例1】
混合機(関東混合機工業製のカントーミキサー、HPS200型)に、小麦粉100部と澱粉系材料を小麦粉に対して表3の割合で使用し、イースト2部、イーストフード0.1部、ショートニング5部と水70部を一度に添加し、低速で3分、中高速で4分混捏した生地を、30℃で90分間発酵させ、次いで、パン生地を分割する。10分間のベンチタイムを取ってから、まるめてパン型に入れ、40℃で50分間焙炉で発酵させた後、200Vで20分間通電してパンを製造した。一晩冷却後、パン粉砕機で5mm程度に粉砕し、3.5メッシュ篩を通過させて、表3に記載するパン粉1〜パン粉14の生パン粉の試料を得た。
【0031】
尚、パン粉1は澱粉系試料を使用しないで同じように調製した生パン粉である。また、澱粉系材料としては、参考例1〜3の試料No.1〜No.8の冷水膨潤性澱粉、マツノリンW(松谷化学工業製のアルファー澱粉),タピオカ澱粉を用いた。
【0032】
小麦粉38部、乾燥全卵2部、水60部よりなるバッター液を調製する。このバッター液に約25gのコロッケ種をくぐらせ、表3に記載のパン粉をそれぞれ約15gまぶした試料を、予め180℃にしておいたサラダ油中に投入し、3分間フライしてコロッケとした。これらコロッケを急速冷凍し、−15℃で冷凍保存して冷凍コロッケを得た。パン粉1、パン粉5、パン粉10、パン粉13を使用した冷凍コロッケについてはそれぞれ7点づつ、その他のパン粉を使用した冷凍コロッケについてはそれぞれ3点づつ製造した。
【0033】
パン粉1〜15を使用して製造した冷凍コロッケを、冷凍5日目、10日目、20日目に取りだし、電子レンジ(500W)で1分間加熱調理した時の食感を表4に記載した。
【0034】
また、対照例としてパン粉1を用いた冷凍コロッケ、実施例としてパン粉5、10、13を用いた冷凍コロッケを冷凍7日目に電子レンジ(500W)で1分間加熱調理し、その後放置した時間による食感を表5に示した。パン粉5、パン粉10、、パン粉13は、小麦粉に対して冷水膨潤性澱粉を10重量%添加して製造したパン粉であり、冷水膨潤性澱粉にする前の原料はそれぞれ、タピオカ澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉である。
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
〈食感の評価〉
◎:クリスピー感が極めて強く、舌ざわりも非常に滑らかである。
○:クリスピー感があって、舌ざわりも滑らかである。
△:やや硬いかややべとつきがある。また舌ざわりがやや荒い。
×:硬すぎるかべとつきがひどい。または舌ざわりが荒い。
【0038】
【表5】
【0039】
〈放置時間による食感の評価〉
◎:極めてクリスピーである。
○:クリスピーである。
△:ややへたる。
×:へたりがひどい。
【0040】
【実施例3】
小麦粉100部、試料No.5の冷水膨潤性澱粉9部、イースト2部、イーストフード0.1部、ショートニング5部と水70部を使用し、オーブンを用いて200℃で20分間焼成した以外、実施例1と同じようにして生パン粉を製造した。冷水膨潤性澱粉を使用しないで同じように製造したパン粉を対照例の生パン粉とする。
【0041】
厚み約8mmの豚ロース肉60gにフライスターチS(松谷化学工業製の従来のフライ用澱粉)をまぶし、小麦粉38部、乾燥全卵2部、及び水60部よりなるバッター液でバッタリングし、実施例の生パン粉または対照例の生パン粉をそれぞれ約30gまぶしてから、180℃のサラダ油中で5分間フライ後、急速冷凍して冷凍保存した。冷凍7日目に電子レンジで1分間加熱後放置し、3時間目の食感をみたとところ、実施例の豚カツでは、良好なクリスピーな感じを有していた。一方対照例の豚カツでは、放置直後にはある程度クリスピー感はみられたものの、1時間後にはかなりのへたりがみたれた。また、冷凍20日目に電子レンジで調理加熱した時の食感は、実施例の豚カツでは舌ざわりが滑らかでクリスピー感も充分感じられるものであったが、対照例の豚カツではべとつきのひどいものであった。
Claims (2)
- 冷水溶解度15%以下であって、且つ、冷水膨潤度4〜25の冷水膨潤性澱粉を小麦粉に対し5〜25重量%配合したパン粉用パン生地を使用して製造されたパン粉。
- 冷水膨潤性澱粉がタピオカ澱粉由来のものである請求項1に記載のパン粉。
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1997
- 1997-01-28 JP JP02978097A patent/JP3803794B2/ja not_active Expired - Lifetime
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