JP3803174B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロードノイズを低減しうる空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
タイヤが関係する騒音の一つにロードノイズがある。このロードノイズは、比較的荒れた路面を車両が走行するときに、車室内で発生する「ゴー」という不快な音である。このロードノイズは、路面の凹凸がタイヤを振動させ、さらにこの振動がリム、車軸、サスペンション、車体などに順次伝播し、車室内で聴取される。
【0003】
従来、このようなロードノイズを低減する方法として、振動伝達をタイヤで減衰させるべく、カーカスの折り返し高さを低くする方法や、リムからタイヤへの振動伝達を遮断するために、ビード部のリムフランジと接触する領域に振動遮断性に優れたゴムなどを配するものが提案されているが、これらの方法は、未だ十分なロードノイズ低減効果が得られていないのが現状である。
【0004】
ロードノイズを低減するためには、オーバーオールの騒音中で比較的音圧レベルが高い200Hz以下の低周波ロードノイズを低減することが有効であり、かつそのためにはタイヤの周方向1次共振周波数を下げることが重要となる。一般に、共振周波数fは下記数1で表される。なおkはタイヤのバネ定数、Mはタイヤ質量である。
【0005】
【数1】
Figure 0003803174
【0006】
前記共振周波数fを下げるためには、バネ定数kを下げるか、タイヤ質量を大きくすれば良いが、タイヤ質量の増加は転がり抵抗の増加などを招くため、本発明者らはタイヤ質量を変えることなくバネ定数を下げることによりタイヤの共振周波数を低下させ、ロードノイズを低減することを試みた。
【0007】
そして、バネ定数を下げるためには、タイヤの骨格をなすカーカスの配置、とりわけトレッド部からサイドウォール部を経てビード部に至るカーカスの本体部をビード部においてタイヤ軸方向外側に湾曲させ、カーカスの本体部をビード部の曲げ中立軸に近づかせることが非常に効果的であることを見出し本発明を完成させたのである。
【0008】
以上のように本発明は、カーカスの配置を改善することによって、タイヤのバネ定数を下げ、ひいてはロードノイズを低減しうる空気入りタイヤの提供を目的としている。さらにカーカスの配置を規制することにより、より一層ロードノイズを低減しうる空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部のビードコアに至る本体部に前記ビードコアの回りをタイヤ軸方向内側から外側に向けて折り返した折返し部を一体に設けかつコードを並列したカーカスプライからなるカーカスを有する空気入りタイヤであって、タイヤを正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した無負荷の状態である標準状態において、前記ビード部に、前記カーカスの本体部がタイヤ軸方向外側に湾曲することにより、ビード部のタイヤ軸方向内側から徐々にビード部の曲げ中立軸に近づく湾曲凸部を設けるとともに、この湾曲凸部の前記曲げ中立軸に最も近い頂部を、ビード部内かつタイヤが前記リムのリムフランジから離間する離間点よりも半径方向外方に位置させたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項1記載の発明は、前記ビード部は、タイヤ内腔に向く内表面が、前記湾曲凸部のタイヤ軸方向内方に位置する範囲において、該内方に凸に湾曲するとともに、前記頂部を通り前記内表面とタイヤ外表面とを最短で結ぶ線分の長さTdに対する同線分上の前記頂部と前記内表面との間の長さCdの比(Cd/Td)を0.3〜0.6としたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、前記ビード部は、タイヤ内表面に配されたインナライナのタイヤ軸方向外側にカーカスを湾曲させて前記湾曲凸部を形成するための補助ゴム層を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の空気入りタイヤである。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、前記補助ゴム層は、複素弾性率E* が30〜60kgf /cm2 であり、かつ損失正接tanδが0.05〜0.20のゴムからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の空気入りタイヤである。
【0013】
また、本明細書において用いる定義は次の通りである。
先ず「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim"となる。また、「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0014】
さらに、複素弾性率E* 、損失正接tanδは、4mm巾×30mm長さ×1.5mm厚さの短冊状試料を切り取って、岩本製作所(株)製の粘弾性スペクトロメーターを用い、温度70℃、周波数10Hz、動歪±2%の条件で測定した値として定める。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1、2において、本実施形態の空気入りタイヤは、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5の周りで折り返されて係止されるカーカス6と、トレッド部2の内方かつ前記カーカス6のタイヤ半径方向外側に配されたベルト層7とを具えた乗用車用ラジアルタイヤを例示している。
【0016】
前記カーカス6は、カーカスコードをタイヤ赤道Cに対して75゜〜90゜の角度で配列したラジアル構造の1枚以上、本例では1枚のプライからなる。前記カーカスコードは、本例ではナイロン、レーヨン若しくはポリエステル等の有機繊維コードが採用されるが、必要に応じてさらにはタイヤの種類に応じてスチールコードをも採用しうる。
【0017】
また、前記カーカス6は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至る本体部6Aと、この本体部6aからのびて前記ビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に向けて折り返される折返し部6Bとを有する。該カーカスの折返し部6Bは、そのタイヤ半径方向の外端部をタイヤの軸方向最外側位置となるタイヤ最大巾位置Mよりもタイヤ半径方向内側としたいわゆる(1−0)ロータンナップ構造を例示している。
【0018】
前記カーカスの折返し部6Bは、前記外端部の高さHcを、ビードベースラインBLからタイヤ最大巾位置Mまでのタイヤ半径方向距離である最大巾高さHの30〜60%、より好ましくは30〜50%の高さとすることにより、ビード部4のバネ定数を操縦安定性を維持しながら低下させることに有効である。なお、カーカスの構造は、いわゆるハイターンナップ構造でも勿論本発明の効果は発揮できる。
【0019】
また、カーカス6の本体部6Aと折返し部6Bとの間には、前記ビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびかつ硬質ゴムからなるビードエーペックス8(図2に示す)が配されビード部4を補強している。このビードエーペックス8は、本実施形態ではタイヤ軸方向の内面及び外面がともに、タイヤ軸方向内側に向けて凸に湾曲する湾曲部を有するものを示している。またビードエーペックス8は、タイヤ半径方向の全長さの約中間位置からタイヤ半径方向の外端8tまでを内端の厚さtの50%未満の小厚さとした好ましい態様を例示している。これらのビードエーペックス8の改善により、後述するカーカスの湾曲凸部9との相乗作用により、タイヤの質量増加を抑制した上でビード部4の撓みに対するバネ定数を効果的に低下しうる。
【0020】
なお本実施形態では、ビードエーペックス8は、前記湾曲凸部9の頂部9tの軸方向外側位置からタイヤ半径方向外側に向けて厚さが漸増する漸増部8aを経て先細状に厚さが漸減して終端する漸減部8sを有して形成されている。これにより、バネ定数の低減効果は発揮しつつ操縦安定性能をも高い次元で維持することが可能となる利点がある。
【0021】
このようなビードエーペックス8は、前記外端8tの高さHbは、前記タイヤの最大幅高さHの45〜120%、より好ましくは60〜100%、さらに好ましくは60〜80%とし、本例では65%としたものを例示している。
【0022】
また、本例ではビード部4に、前記カーカスの折返し部6Bのタイヤ軸方向外側からビードシート面4sを通りタイヤ内表面まで略U字状にのびるコードチェーファ13を配するとともに、ビード部4がリムフランジJFと接触するビード部外表面4aにクリンチゴム14を配置しているものを示す。
【0023】
前記ベルト層7は、コードをタイヤ赤道Cに対して例えば10〜35°の小角度で傾けて配列した少なくとも2枚、本例では内、外2枚のベルトプライ7A、7Bを前記コードが互いに交差する向きに重ね合わせて構成しており、ベルトコードは、スチールコード又はアラミド、レーヨン等の高弾性の有機繊維コードも必要に応じて用いうる。
【0024】
そして、本発明では、タイヤを正規リムJにリム組みしかつ正規内圧を充填した無負荷の状態である標準状態(図2に示す)において、前記ビード部4に、前記カーカスの本体部6Aがタイヤ軸方向外側に湾曲することにより、ビード部4のタイヤ軸方向内側から徐々にビード部の曲げ中立軸N(図2に示す)に近づく湾曲凸部9を設けることを特徴の一つとしている。
【0025】
一般にタイヤへの荷重負荷時、ビード部4はリムフランジJFへと倒れ込むように曲げ変形するが、このとき曲げ中立軸Nのタイヤ軸方向内側が圧縮変形、曲げ中立軸Nのタイヤ軸方向外側が引張変形となり、曲げ中立軸Nの部分は伸縮しない。従来の空気入りタイヤにおいては、図4に示すように、カーカスの本体部aが、タイヤ内腔面b側に近接して配置されており、ビード部では曲げの中立軸Nからは軸方向内側に遠ざかる位置にある。そして、タイヤ負荷時のビート部曲げ変形においては、このカーカスの本体部aのカーカスコードが全域において引張変形に抵抗し、ビード部4のバネ定数を高める働きをしている。
【0026】
そこで、本発明では、カーカスの本体部6Aに、ビード部4の曲げ中立軸Nに近づく湾曲凸部9を設けることにより、この部分においてビード部4を撓みやすくすることができ、該撓みに対するタイヤのバネ定数を効果的に低下させることができる。本発明では、このようなカーカスの本体部6Aの改善によて、タイヤの質量を実質的に変えることなくタイヤの周方向1次共振周波数を下げることができ、ひいては低周波ロードノイズを低減することができる。また、このようにカーカスの本体部6Aの配置の改善によれば、タイヤの撓みに対するバネ定数は下がるが、タイヤ周方向に対する剛性は低下することがないため、操縦安定性が低下するといった不具合もない。
【0027】
このような湾曲凸部9は、この湾曲凸部9の前記曲げ中立軸Nに最も近い頂部9tは、ビード部内かつタイヤが前記リムJのリムフランジJFから離間する離間点Pよりも半径方向外方に位置させることが必要である。
【0028】
前記カーカスの湾曲凸部9が、ビード部内に位置していなければビード部4の撓みに対するバネ定数を低下させる効果がない。同様に、カーカスの湾曲凸部9が、前記離間点Pよりも半径方向内方にあっても、この部分は、本来リムフランジJFにより変形が規制されるため、タイヤの撓みに対するバネ定数に関して影響が少なく、バネ定数を低下させることはできないからである。
【0029】
なおビード部内とは、リムシート面Jsに面するビードシート面4sからサイドウォール部3の半径方向内方端までをいい、サイドウォール部3は軟質のゴムからなる略一定のゴム厚さ部分であり、本例ではサイドウォール部3の内方端は図2のX−Xの位置となる。なお好ましくは、湾曲凸部9の頂部9tのビードベースラインBLからの半径方向高さHtは、前記タイヤ最大巾高さHの25〜45%、好ましくは30〜40%、本例では約32%としているが、前記離間点Pよりも半径方向外側であることは言うまでもない。また、カーカスの本体部6Aが、ビード部4のタイヤ軸方向内側から徐々にビード部の曲げ中立軸Nに近づくに際して、「近づく」とは中立軸Nに接し、或いはこれをタイヤ軸方向外側に超えることも含むものとして解しなければならない。
【0030】
さらに本実施形態では、前記ビード部4は、タイヤ内腔に向く内表面4iが、前記湾曲凸部9のタイヤ軸方向内方に位置する範囲において、該内方に凸に湾曲するものを例示している。これによって、タイヤ内表面4iと、湾曲凸部9との間の最短距離は、前記頂部9tを中心として、タイヤ半径方向内、外に漸減する。そして、前記湾曲凸部9の頂部9t(カーカス本体部6Aの中心で測定する)を通り前記内表面4iとタイヤ外表面とを最短で結ぶ線分の長さTdに対する同線分上の前記頂部9tと前記内表面4iとの間の長さCdの比(Cd/Td)を0.3〜0.6とする。
【0031】
前記比(Cd/Td)が、0.3〜0.6の範囲において、湾曲凸部9によるタイヤのバネ定数の低下が最大限発揮されることが本発明者らの実験の結果判明している。そして、前記比(Cd/Td)が、0.3未満になると、湾曲凸部9がビード部4において曲げ中立軸Nから十分に近づくことができない傾向にあり、バネ定数の低減効果が相対的に低下し、逆に0.6を超えると中立軸Nをタイヤ軸方向外側へ過大に超えていく傾向があり、同様に湾曲凸部9が中立軸Nから遠ざかる傾向がありかつタイヤの耐久性低下やタイヤ製造上の不具合などがあるため好ましくない。このような観点より、前記比(Cd/Td)が、0.3〜0.5、より好ましくは0.35〜0.5の範囲とすることが望ましい。換言すれば、ビード部の曲げ中立軸Nは、比(Cd/Td)が、0.3〜0.5の範囲を通ることが判る。
【0032】
また本実施形態の乗用車用ラジアルタイヤは、チューブレスタイヤであって、タイヤ内表面4iにタイヤ空気圧を保持するための空気を通過させにくいゴムからなるインナライナ10が配置されている。そして本例では、前記ビード部4は、このインナライナ10のタイヤ軸方向外側に前記カーカスの本体部6Aを湾曲させて前記湾曲凸部9を形成するための補助ゴム層11を介在させたものを例示している。
【0033】
空気入りタイヤは通常加硫金型により成形され、このとき、タイヤ内腔側からブラダーなどにより高圧、高温を作用を受けるが、このような状況においてもカーカスの本体部6Aに局部的にタイヤ軸方向外側に凸に湾曲する前記湾曲凸部9の形状を維持させるために、インナライナ10のタイヤ軸方向外側に補助ゴム層11を設けることが非常に効果があることが判明した。なおタイヤ質量をより厳密に変えないためには、このような補助ゴム層11の質量分だけ例えばビードエーペックス8の質量などを削減するのが好ましく、そのためには、より細長い形状とすることが好ましい。
【0034】
また前記補助ゴム層11は、加硫中の環境下でカーカスの湾曲凸部9の湾曲を維持するために、タイヤ加硫成形中にもゴム流れの少ない組成のものを用いるのが好ましいものである。このようなゴムとしては、例えば複素弾性率E* が30〜60kgf /cm2 、かつ損失正接tanδが0.05〜0.20とするのが望ましい。
【0035】
なお、補助ゴム層11において、さらにゴム流れを抑制するためには、複素弾性率E* は、より好ましくは40〜60kgf /cm2 とするのが良く、また損失正接tanδは0.10〜0.20の範囲とするのが好ましい。また、補助ゴム層11の最大厚さdは前記湾曲凸部9の頂部9tの位置かつ例えば3〜6mmとするのが好ましい。
【0036】
またこのような補助ゴム層11を配置するに際しては、ビードエーペックス8との相対位置関係を規制することが好ましい。すなわち、ビードエーペックス8の外端8tと、前記補助ゴム層11のタイヤ半径方向外端11tとがタイヤ半径方向において重複して配置されていると、カーカスの本体部6Aがこれらの外端位置で大きく屈曲変形しやすく、ビード部4の耐久性を低下させる傾向がある。逆に例えばビードエーペックス8の外端8tが、前記補助ゴム層11の外端11tよりもタイヤ半径方向外側に大きく離間して位置していると、タイヤ質量を増加させる傾向にあり好ましくない。このような観点より、ビードエーペックス8の外端8tと、前記補助ゴム層11の外端11tとの半径方向距離であるステップ量Sは、5〜15mmとするのが好ましい。
【0037】
【実施例】
タイヤサイズが、195/65R15であり、図1、図2に示すような構造のラジアルタイヤ(実施例1〜11)を試作するとともに、図4に示すビード構造を有する従来のラジアルタイヤ(従来例)についても併せて試作し、タイヤの周方向1次共振周波数とロードノイズなどを測定し性能を比較した。なおHt/H=0.32とした。
テスト方法は、次の通りである。
【0038】
<タイヤの周方向1次共振周波数>
インパクトハンマを用いたタイヤの振動伝達テストを行った。すなわち、図5に示すようにタイヤをリム組みし(リム:15×6JJ、内圧2.0kgf /cm2 )、充分に剛性の高い治具Bを用いて車軸部分で支持するとともに、トレッド部のタイヤ赤道上をインパクトハンマーDで打撃(振動の入力)し、車軸部分に伝達される振動(振動の出力)を例えば圧電型の3軸ロードセルEを用いて測定し振動伝達特性グラフからタイヤの周方向1次共振周波数を求め、従来例を100とする指数で表示した。数値が大きいほどタイヤの周方向1次共振周波数が小さく良好であることを示している。
【0039】
<ロードノイズテスト>
試供タイヤをリム組みし(リム:15×6JJ、内圧2.0kgf/cm2 )、排気量2800ccのFR車両に装着してアスファルト路面を速度60km/hにて走行し、ドライバーの右耳位置にてオーバーオールの騒音レベルdB(A)を測定し、従来例を100とする指数で表示した。数値が大きいほど騒音レベルが小さく良好であることを示している。
【0040】
<耐久性>
試供タイヤをリム組みし(リム:15×6JJ、内圧190kPa)、荷重710kgf 、速度80km/hでドラム上を走行させ、1時間毎に速度を10km/hづつステップアップし、タイヤに外観目視にて確認可能な損傷が発生した時点で走行を終了した。そして損傷が発生するまでの走行時間を従来例を100とする指数によって評価した。数値が大きいほど優れている。
【0041】
<操縦安定性>
試供タイヤをリム組みし(リム:15×6JJ、内圧2.0kgf /cm2 )、排気量2800ccのFR車両に装着してドライバーのみ乗車しタイヤテストコースのドライアスファルト路面を走行し、ドライバーの官能評価により従来例を100とする指数で評価した。数値が大きいほど、操縦安定性に優れている。
テストの結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
Figure 0003803174
Figure 0003803174
【0043】
テストの結果、実施例のタイヤは、いずれもタイヤの周方向1次共振周波数を下げ、その結果ロードノイズを低減していることが確認できた。また操縦安定性、耐久性については従来例との差は殆どないことも確認できた。特に、比(Cd/Td)が、0.35〜0.50の範囲のものが、優れていることが判る。
【0044】
さらに、図3には、タイヤ負荷時(荷重450kgf)のビード部の変形をCTスキャンにて撮像したビード部の断面輪部図を示している。本発明タイヤ(実施例1)では、従来例に比べ大きく撓んでおり、バネ定数が小さくなっていることが確認しうる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、カーカスの本体部に、ビード部の曲げ中立軸Nに近づく湾曲凸部を設けることにより、この部分においてビード部を撓みやすくすることができ、たわみに対するタイヤのバネ定数を効果的に低下させることができるから、タイヤの質量を実質的に変えることなく周方向共振周波数を下げ、ひいては低周波ロードノイズを低減しうる。また、このようにカーカスの本体部の配置の改善により、タイヤ周方向に対する剛性は低下することがないため、操縦安定性が低下するといった不具合もない。
【0046】
た湾曲凸部の頂部を通りタイヤ内表面とタイヤ外表面とを最短で結ぶ線分の長さTdに対する同線分上の前記頂部と前記内表面との間の長さCdの比(Cd/Td)を規制したことにより、湾曲凸部に構成の基づきタイヤのバネ定数の低下が最大限発揮され、ロードノイズをより一層低減しうる。
【0047】
また請求項2記載の発明では、インナライナのタイヤ軸方向外側に前記カーカスの本体部を湾曲させて前記湾曲凸部を形成するための補助ゴム層を設けることにより、カーカスの本体部に局部的にタイヤ軸方向外側に凸に湾曲した湾曲凸部を容易に形成しうる。
【0048】
また請求項3記載の発明では、加硫中の環境下でカーカスの湾曲凸部を形成、維持するために、前記補助ゴム層のゴム組成をタイヤ加硫成形中にもゴム流れの少ない組成に限定したことにより、湾曲凸部が加硫中の熱や圧力により消失してしまうのを確実に防止し、湾曲凸部を精度良く形成しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すタイヤ子午断面図である。
【図2】ビード部の拡大断面図である
【図3】ビード部の変形状態をCTスキャンで撮影した断面輪郭図である。
【図4】従来のビード部の拡大断面図である
【図5】共振周波数の測定方法を説明する線図である。
【符号の説明】
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
6a カーカスプライ
6A カーカスの本体部
6B カーカスの折返し部
7 ベルト層
8 ビードエーペックス
9 湾曲凸部
9t 頂部
11 補助ゴム層

Claims (3)

  1. トレッド部からサイドウォール部を経てビード部のビードコアに至る本体部に前記ビードコアの回りをタイヤ軸方向内側から外側に向けて折り返した折返し部を一体に設けかつコードを並列したカーカスプライからなるカーカスを有する空気入りタイヤであって、
    タイヤを正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した無負荷の状態である標準状態において、
    前記ビード部に、前記カーカスの本体部がタイヤ軸方向外側に湾曲することにより、ビード部のタイヤ軸方向内側から徐々にビード部の曲げ中立軸に近づく湾曲凸部を設けるとともに、
    この湾曲凸部の前記曲げ中立軸に最も近い頂部を、ビード部内かつタイヤが前記リムのリムフランジから離間する離間点よりも半径方向外方に位置させ、
    しかも前記ビード部は、タイヤ内腔に向く内表面が、前記湾曲凸部のタイヤ軸方向内方に位置する範囲において、該内方に凸に湾曲するとともに、前記頂部を通り前記内表面とタイヤ外表面とを最短で結ぶ線分の長さTdに対する同線分上の前記頂部と前記内表面との間の長さCdの比(Cd/Td)を0.3〜0.6としたことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記ビード部は、タイヤ内表面に配されたインナライナのタイヤ軸方向外側にカーカスを湾曲させて前記湾曲凸部を形成するための補助ゴム層を設けたことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記補助ゴム層は、複素弾性率E* が30〜60kgf /cm2 であり、かつ損失正接tanδが0.05〜0.20のゴムからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
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