JP3802504B2 - 不飽和基含有多分岐化合物、それを含有する硬化性組成物及びその硬化物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の分野において光硬化性成分及び/又は熱硬化性成分として有利に用いることができる不飽和基含有多分岐化合物に関する。また、本発明は、該不飽和基含有多分岐化合物を含有し、紫外線又は電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、あるいはさらに加熱によって硬化し、かつ、基材との密着性、機械的特性、耐熱性、可撓性、耐薬品性及び電気絶縁性等に優れた硬化物を与える硬化性組成物及びそれから得られた硬化物に関する。さらに、本発明は、該硬化性組成物の、接着剤、コーティング剤、プリント配線板の製造時に使用されるソルダーレジスト、エッチングレジスト、ビルドアップ基板用層間絶縁材、メッキレジスト、ドライフィルムなど広範囲な用途、特にはプリント配線板への適用に関する。
【0002】
【従来の技術】
活性エネルギー線の照射による樹脂の硬化は、その硬化速度が速いこと、無溶剤であることなどから、金属塗装、木材コーティング、印刷インキ、電子材料などに広く利用されている。これらの分野において用いられる光硬化性組成物は、一般的に、不飽和二重結合を有するプレポリマー、重合性モノマー、及び光重合開始剤を必須成分としている。光硬化性成分として主に用いられる上記プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート及びエポキシアクリレート等が挙げられる。これらプレポリマーは、重合性の不飽和基を有しているので、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する化合物(光重合開始剤)と混合することで架橋反応が起こり得る。
【0003】
しかしながら、これらラジカル重合性プレポリマーは、一般に分子量が小さく、活性エネルギー線の照射により瞬間的に硬化するため、塗膜中に残留応力が生じ、基材への密着性、機械的特性が低下する問題点があった。かかる問題点を解決するために、ラジカル重合性プレポリマーの高分子量化も検討されてはいるが、塗工可能な粘度に調整するためには多量の反応性希釈剤が必要であり、そのため、このような活性エネルギー線硬化性組成物は強靱性、機械的特性、耐薬品性などに乏しいものであった。さらに、高分子量化によりアルカリ現像液に対する溶解性が下がり、現像できない場合も生じ、現像できるように酸価を上げると樹脂の高粘度化や塗膜物性の低下を招くことになった。
【0004】
また、プリント配線板のレジスト材料等として使用される比較的分子量の低いエポキシアクリレート系感光性樹脂をベースポリマーとする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物では、架橋密度を上げることによって高い硬度及び優れた耐熱性、電気絶縁性等の特性は得られるものの、反面、硬化収縮が大きく、寸法変化が大きくなるばかりか、可撓性や強靭性等が低くなるという難点があった。さらに、塗膜の耐熱性を向上させるために、耐熱性に優れた結晶性の大きなモノマー成分を導入することが考えられるが、この場合には、成膜性が低下するという難点がある。一方、可撓性や強靭性を改善するためには、一般に結晶性のモノマーの使用を避け、ベースポリマーを線状化することが考えられるが、この場合には、逆に機械的特性や耐熱性等が低下するという難点がある。
【0005】
上記のことを踏まえ、かかる問題点を解決するためには、樹脂自体に耐熱骨格を有し、さらに一次分子量が大きく、溶剤に対する溶解性、特にアルカリ現像性に優れた樹脂の開発が望まれる。ところが、一般に一次分子量を大きくすると線状高分子の分子鎖の絡み合いが増大し、溶解性の低下、現像性低下を生じてしまうことになる。このため、現在、上記の要望をすべて満たすような樹脂はほとんど無いのが実状である。
【0006】
このように、従来、現像性に優れ、強度、伸び、靭性等の機械的特性と、耐熱性、可撓性、耐薬品性等の特性とが高いレベルでバランスのとれた硬化物が得られる硬化性組成物は未だ見出されていないのが現状である。
【0007】
その一方で、近年、新しいポリマーの創製として、デンドリマーやハイパーブランチポリマーのような多分岐化合物の開発が進められている。この構造は分子鎖の絡み合いが無くなるため、高分子量でありながら溶液粘度が低く、各種溶剤に対する溶解性に優れるといった特長を有する。したがって、耐熱性に優れた結晶性の高い骨格を導入してポリマー骨格を形成した場合、耐熱性及び溶解性に優れたポリマーの開発が可能となると思われる。例えば、分子中にアミノ基を含有する多分岐化合物は、硬化性組成物を調製する際の低分子量成分の添加量が少なくてすむ利点がある。しかしその一方で、分子中に電気特性を悪化させるアミノ基を含むこと、及び側鎖に化学修飾可能な置換基を持たないため、これら多分岐化合物の用途は限定されてしまうこと、などが不利な点として挙げられている(特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−193321号公報(特許請求の範囲等)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、近年、新しいポリマーとしての多分岐化合物の開発が進められてはいるが、光硬化性成分及び/又は熱硬化性成分として有効利用することができる多分岐化合物は未だ見出されていないのが現状である。
【0010】
そこで本発明の目的は、前記した従来技術の問題点を解消し、紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、あるいはさらに加熱によって硬化し、その硬化物は基材との密着性や機械的特性に優れ、種々の分野において光硬化性成分及び/又は熱硬化性成分として有利に用いることができるアルカリ可溶性の不飽和基含有多分岐化合物を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、紫外線又は電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、あるいはさらに加熱によって硬化し、基材に対する密着性に優れると共に、機械的特性や耐熱性、熱安定性、可撓性、耐薬品性、電気絶縁性等の諸特性に優れた硬化物が得られる硬化性組成物及びその硬化物、更には該硬化物を適用したプリント配線板を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の第一の側面は、新規な不飽和基含有多分岐化合物を提供することにあり、その不飽和基含有多分岐化合物は、(a)一分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物と、(b)一分子中に2つ以上(但し、上記(a)成分が2つのエポキシ基を有する化合物の場合、3つ以上)のカルボキシル基を有するポリカルボン酸と、(c)不飽和モノカルボン酸との反応により得られる反応物(I)と、(d)ラクトンモノマーとの反応物(II)に、さらに(e)多塩基酸無水物を反応させて得られた反応物であることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の第二の側面は、前記不飽和基含有多分岐化合物を含有する硬化性組成物を提供することにあり、その硬化性組成物は、(A)前記不飽和基含有多分岐化合物と、(B)重合開始剤とを必須成分として含有することを特徴とするものである。また、この硬化性組成物には、前記(A)成分及び(B)成分に加えて、さらに(C)熱硬化性成分を好適に含有させることができる。本発明の硬化性組成物は、液状のまま用いてもよいし、ドライフィルムの形態として用いてもよい。
【0014】
さらに本発明の第三の側面は、前記硬化性組成物の硬化物を提供することにあり、この硬化物は、前記硬化性組成物を活性エネルギー線照射及び/又は加熱により硬化させて得られたことを特徴とするものである。この硬化物は種々の分野に適用することができるが、特にプリント配線板のソルダーレジスト層や層間絶縁層の形成に有利に適用することができる。
【0015】
よって、本発明の第四の側面は、前記硬化性組成物を適用したプリント配線板を提供することにあり、そのプリント配線板は、所定の回路パターンの導体層を有する回路基板上に永久保護膜としてのソルダーレジスト皮膜が形成されたプリント配線板において、前記ソルダーレジスト皮膜が、前記硬化性組成物の硬化塗膜からなることを特徴とするものである。
【0016】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、(a)一分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(以下、多官能エポキシ化合物という)と、(b)一分子中に2つ以上(但し、上記(a)成分が2つのエポキシ基を有するビスエポキシ化合物の場合、3つ以上)のカルボキシル基を有するカルボン酸(以下、ポリカルボン酸類という)と、(c)不飽和モノカルボン酸との反応により得られる反応物(I)の二級水酸基に、(d)ラクトンモノマーを付加させた反応物(II)に、さらに(e)多塩基酸無水物を反応させて得られる不飽和基含有多分岐化合物(A)は、末端に多量の重合性基を有するため光硬化性に優れた樹脂であると共に、側鎖に長鎖アルキル鎖で結合したカルボキシル基の存在によりアルカリ水溶液に対して優れた溶解性を示すため、アルカリ現像型の感光性樹脂として極めて有用であることを見出した。また、不飽和基含有多分岐化合物(A)はエステル結合及び/又はエーテル結合を有する多分岐構造のため、これを硬化性成分として組成物に含有させたところ、この組成物は硬化収縮が少なく、強度、伸び、靭性等の機械的特性や耐熱性、電気絶縁性に優れた硬化物を与えることを見出した。さらに、不飽和基含有多分岐化合物(A)は多分岐構造のため、同じ分子量の線状ポリマーと比較すると、分子同士の絡み合いがなくなるため、種々の溶媒に対する高い溶解性を示し、また溶液粘度を低下できるという特長を有する。かかる特長を踏まえさらに検討した結果、溶剤量を低減することが可能となるばかりか、酸価の低減或いは高分子量化が可能となり、上記特性向上に加え、造膜性や反りなどの塗膜特性が更に向上することも見出した。従って、本発明の不飽和基含有多分岐化合物(A)は、前記したような優れた特性を有するため、種々の分野において光硬化性成分及び/又は熱硬化性成分として有利に用いることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
まず、本発明の不飽和基含有多分岐化合物(A)は、反応促進剤の存在下、(a)多官能エポキシ化合物と、(b)ポリカルボン酸類と、(c)少なくとも1つ以上の不飽和二重結合基を有する不飽和モノカルボン酸との重付加反応により得られた反応物(I)の水酸基に、(d)ラクトンモノマーを付加させた反応物(II)に、さらに(e)多塩基酸無水物を付加反応させて製造することができる。
【0018】
例えば、多官能エポキシ化合物(a)とポリカルボン酸類(b)のいずれか一方を二官能、他方を三官能の化合物とした場合、例えば、ポリカルボン酸類(b)として三官能カルボン酸をXで表わし、多官能エポキシ化合物(a)として二官能エポキシ化合物をYで表わし、不飽和モノカルボン酸(c)をZで表わし、(d)ラクトンモノマーをVで表わし、(e)多塩基酸無水物をWで表わすと、例えば下記一般式(1)で示されるような多分岐構造のポリマーが得られる。
【0019】
【化1】
【0020】
二官能化合物と三官能化合物を逆にした場合、即ち一分子中に3つのエポキシ基を有する三官能エポキシ化合物と一分子中に2つのカルボキシル基を有する化合物との重付加反応の場合も同様な多分岐構造となる。不飽和モノカルボン酸(c)は反応停止剤として作用し、末端部には不飽和二重結合基が付加して導入された不飽和基が存在する。同様に、多官能エポキシ化合物(a)とポリカルボン酸類(b)の双方共に三官能以上の化合物とした場合にも、さらに分岐の状態は複雑になるが、多分岐構造となる。
【0021】
前記の構造を、化学式を用いてより具体的に説明すると、例えば、多官能エポキシ化合物(a)として後述するような二官能エポキシ化合物を用い、ポリカルボン酸類(b)として後述するような三官能カルボン酸を用いた場合、例えば下記一般式(2)で示されるような骨格構造単位を有する不飽和基含有多分岐化合物(A)が得られる。また、例えば多官能エポキシ化合物(a)として三官能エポキシ化合物を用い、ポリカルボン酸類(b)として二官能カルボン酸を用いた場合、例えば下記一般式(3)で示されるような骨格構造単位を有する不飽和基含有多分岐化合物(A)が得られる。
【0022】
【化2】
(式中、R1は多官能エポキシ残基、R2はポリカルボン酸残基を表わす。nは、1以上の整数、好ましくは1〜5である。Tは、各々独立して、下記一般式(4)、(5)、(6)及び(7)で示される基のいずれかで表わされる。)
【0023】
【化3】
(式中、R3は、多塩基酸無水物残基を表わす。kは、2〜6であり、好ましくは、5であり、mは、1又は2である。)
【0024】
また、前記一般式(2)及び(3)において、末端基は下記一般式(8)〜(15)で示されるような基となる。
【0025】
【化4】
(式中、R1及びR2は、前記と同じ意味であり、R4、R5及びR6は、それぞれ水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、アラルキル基、シアノ基、フッ素原子、又はフリル基を表わす。k、mは、前記と同じ意味である。)
【0026】
すなわち、末端部のエポキシ基に不飽和モノカルボン酸が付加して不飽和基が導入された部分の末端は一般式(8)で示される末端基となる。また、末端部のエポキシ基に不飽和モノカルボン酸が付加しなかった部分の末端は式(9)で示される末端基となる。さらに、割合的には少ないが、ポリカルボン酸(b)に多官能エポキシ化合物(a)と未反応のカルボキシル基が残存する場合、その部分の末端は一般式(10)、(11)又は(12)で示される末端基となる。さらに、未反応カルボキシル基にラクトン環が開環付加した場合、その部分の末端は一般式(13)、(14)又は(15)で示される末端基となる。但し、一般式(10)、(11)、(13)、(14)はトリカルボン酸を用いた場合、一般式(12)、(15)はジカルボン酸を用いた場合である。
【0027】
前記反応は、多官能エポキシ化合物(a)とポリカルボン酸(b)と不飽和モノカルボン酸(c)とを一括して混合し、反応させる方法(ワンポット方法)と、多官能エポキシ化合物(a)とポリカルボン酸(b)の重付加反応終了後に不飽和モノカルボン酸(c)を添加して反応させる方法(逐次方法)のいずれも可能である。しかしながら、逐次反応の場合、多官能エポキシ化合物(a)とポリカルボン酸(b)の反応が進行しすぎるとゲル化し易いため、ゲル化直前に反応停止剤として作用する不飽和モノカルボン酸(c)を添加して末端エポキシ基をブロックすることが望ましい。その後、ラクトンモノマー(d)を添加し付加反応させて反応物(II)を得、さらに多塩基酸無水物(e)付加により本発明の不飽和基含有多分岐化合物(A)が製造できる。
【0028】
また、必要に応じて反応停止剤として作用する不飽和モノカルボン酸(c)の一部を、最大で不飽和モノカルボン酸(c)の40%まで、(f)一分子中に少なくとも1個以上の水酸基とエポキシ基と反応する水酸基以外の1個の反応性基(例えばカルボキシル基、2級アミノ基など)を有する化合物に置き換えることもできる。
【0029】
前記反応において、多官能エポキシ化合物(a)とポリカルボン酸(b)との割合(反応混合物中の仕込み割合)は、それぞれの官能基のモル比で0.1≦[ポリカルボン酸のカルボキシル基のモル数]/[多官能エポキシ化合物のエポキシ基のモル数]≦1の範囲が好ましく、より好ましくは0.2≦[ポリカルボン酸のカルボキシル基のモル数]/[多官能エポキシ化合物のエポキシ基のモル数]≦0.8の範囲である。上記当量比が0.1未満であると、生成する多分岐化合物中へのポリカルボン酸骨格の導入量が少なくなり、所望の分子量の樹脂が得られず、充分な塗膜物性が得られないので好ましくない。一方、上記当量比が1を超えると、重付加反応において重合末端がカルボキシル基となり易いため、引き続く不飽和モノカルボン酸(c)の付加反応が進行し難く、重合性基の導入が困難となるため、好ましくない。すなわち、多官能エポキシ化合物(a)とポリカルボン酸(b)の価数に拘らず、多官能エポキシ化合物(a)の官能基(エポキシ基)がポリカルボン酸(b)の官能基(カルボキシル基)よりも過剰となるようにして反応させることにより、末端部にエポキシ基が位置するようにし、これに不飽和モノカルボン酸(c)を付加させることで多量の不飽和基を導入することができる。反応時間や反応温度等の反応条件を変えることにより、また、前記した当量比の範囲内においてポリカルボン酸(b)の使用量を制御することにより、生成する多分岐化合物の分子量及び分岐状態をある程度制御することが可能となる。
【0030】
本発明に用いられる多官能エポキシ化合物(a)のうち、一分子中に2つのエポキシ基を有する化合物の代表例としては、以下のものが挙げられる。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールA、ビフェノール、ビキシレノール、ナフタレンジオールなどの二官能フェノール化合物、又はアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などのジカルボン酸にエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるジグリシジルエーテル類、ジグリシジルエステル類などが挙げられる。また、ビニルシクロヘキセンなどの環状オレフィン化合物を過酢酸などで酸化して得られる脂環式エポキシ化合物も挙げられる。市販品としては、ジャパンエポキシレジン社製のエピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004やダウ・ケミカル社製のDER−330、DER−337や東都化成社製のYD−115、YD−128、YD−7011R、YD−7017などのビスフェノールA型エポキシ樹脂;ナガセケムテックス社製のデナコールEX−251、デナコールEX−251AなどのビスフェノールS型エポキシ樹脂;東都化成製のYDF−170などのビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のYDB−360、YDB−400、YDB−405などのテトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂;ナガセケムテックス社製のデナコールEX−201などのレソルシノールジグリシジルエーテル類;ジャパンエポキシレジン社製のYX−4000などのビフェノールジグリシジルエーテル類;大日本インキ化学工業社製のエピクロンHP−4032、HP−4032Dなどのナフタレン型エポキシ樹脂;ナガセケムテックス社製のデナコールEX−721などのフタル酸ジグリシジルエステル類等が挙げられる。又、例えばダイセル化学社製のセロキサイド2021シリーズ、セロキサイド2080シリーズ、セロキサイド3000などの脂環式エポキシ樹脂;丸善石油化学社製のHBPA−DGEやジャパンエポキシレジン社製のYL−6663などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ナガセケムテックス社製のデナコールEX−212、デナコールEX−701などの脂肪族型エポキシ樹脂;その他アミノ基含有エポキシ樹脂;共重合型エポキシ樹脂;カルド型エポキシ樹脂など公知慣用のエポキシ樹脂を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
一分子中に3つのエポキシ基を有する化合物の代表例としては、例えば、ナガセケムテックス社製のデナコールEX−301;ダイセル化学社製のエポリードGT400などが挙げられる。1分子中に3つのエポキシ基を有する化合物であれば特に限定は無く、公知慣用のエポキシ樹脂を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに分岐の状態が複雑になるが4官能以上のエポキシ化合物も単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0032】
本発明に用いられるポリカルボン酸(b)のうち、一分子中に2つのカルボキシル基を有する化合物の代表例としては、下記一般式(16)で示されるジカルボン酸類が挙げられる。
【化5】
(式中、R2は、前記と同じ意味である。)
【0033】
ジカルボン酸の具体的な例としては、アジピン酸やフマル酸、シトラコン酸、イタコン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸やヘキサヒドロテレフタル酸、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロヘキセン−4,5−ジカルボン酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンド−cis−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(商品名:ナジック酸)、メチルエンド−cis−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(商品名:メチルナジック酸)などの飽和又は不飽和脂環式ジカルボン酸、フタル酸やイソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
【0034】
一分子中に少なくとも3つのカルボキシル基を有する化合物(b)の代表例としては、下記一般式(17)で表わされるトリカルボン酸類が挙げられる。
【化6】
(式中、R2は、前記と同じ意味である。)
【0035】
トリカルボン酸の具体的な例としては、メタントリカルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、アコニック酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸などの炭素数1〜18の飽和又は不飽和脂肪族トリカルボン酸、ヘミメレニック酸、トリメシン酸、トリメリック酸などの芳香族トリカルボン酸などが挙げられる。
【0036】
前記反応に使用する不飽和モノカルボン酸(c)としては、分子中に重合性の不飽和結合とカルボキシル基を併せ持つ化合物であれば公知のものが使用可能である。具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、ソルビン酸、α−シアノケイ皮酸、β−スチリルアクリル酸等が挙げられる。また、二塩基酸無水物と水酸基を有する(メタ)アクリレート類とのハーフエステルを用いてもよい。具体的には、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、コハク酸等の酸無水物と、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類とのハーフエステルなどが挙げられる。さらに、これらの化合物に、ε−カプロラクトンなどのラクトンモノマーを付加した化合物なども挙げられる。これらの不飽和モノカルボン酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートとはアクリレートとメタクリレートを総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0037】
尚、必要に応じて、不飽和モノカルボン酸の一部を置き換える、一分子中に少なくとも1個以上の水酸基とエポキシ基と反応する水酸基以外の1個の反応性基(例えばカルボキシル基、2級アミノ基など)を有する化合物(f)としては、分子中に水酸基とエポキシ基と反応する水酸基以外の反応性基を併せ持つ化合物であれば特に限定はない。具体例としては、例えばジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、ジメチロールカプロン酸などのヒドロキシ基含有モノカルボン酸類、ジエタノールアミン、ジイソプロパロールアミンなどのアルカノールアミンなどを挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
前記反応物(I)の合成に使用する反応促進剤としては、三級アミン、三級アミン塩、四級オニウム塩、三級ホスフィン、クラウンエーテル錯体、又はホスホニウムイリドの中から任意に選択することが可能であり、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
三級アミンとしては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン)、DABCO(1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン)、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジンなどが挙げられる。
【0040】
三級アミン塩としては、例えば、サンアプロ(株)製のU−CATシリーズなどが挙げられる。
【0041】
四級オニウム塩としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、スチボニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、スタンノニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。特に好ましいものは、アンモニウム塩及びホスホニウム塩である。アンモニウム塩の具体例としては、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド(TBAC)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、テトラ−n−ブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)等のテトラ−n−ブチルアンモニウムハライドや、テトラ−n−ブチルアンモニウムアセテート(TBAAc)などが挙げられる。ホスホニウム塩の具体例としては、テトラ−n−ブチルホスホニウムクロライド(TBPC)、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミド(TBPB)、テトラ−n−ブチルホスホニウムアイオダイド(TBBI)等のテトラ−n−ブチルホスホニウムハライド、テトラフェニルホスホニウムクロライド(TPPC)、テトラフェニルホスホニウムブロミド(TPPB)、テトラフェニルホスホニウムアイオダイド(TPPI)等のテトラフェニルホスホニウムハライドや、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド(ETPPB)、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート(ETPPAc)などが挙げられる。
【0042】
三級ホスフィンとしては、炭素数1〜12のアルキル基、又はアリール基を有する、三価の有機リン化合物であればよい。具体例としては、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。
【0043】
さらに、三級アミン又は三級ホスフィンと、カルボン酸あるいは酸性の強いフェノールとの付加反応により形成される四級オニウム塩も反応促進剤として使用可能である。これらは、反応系に添加する前に四級塩を形成するか、もしくはそれぞれを別に添加して反応系中で四級塩形成を行なわせるいずれの方法でもよい。具体的には、トリブチルアミンと酢酸より得られるトリブチルアミン酢酸塩、トリフェニルホスフィンと酢酸より形成されるトリフェニルホスフィン酢酸塩などが挙げられる。
【0044】
また、クラウンエーテル錯体の具体例としては、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ジベンゾ18−クラウン−6、21−クラウン−7、24−クラウン−8等のクラウンエーテル類と、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウムなどのアルカリ金属塩との錯体が挙げられる。
【0045】
ホスホニウムイリドとしては、ホスホニウム塩と塩基との反応により得られる化合物であれば公知のものが使用可能であるが、取扱いの容易さから安定性の高いものの方が好ましい。具体的な例としては、(ホルミルメチレン)トリフェニルホスフィン、(アセチルメチレン)トリフェニルホスフィン、(ピバロイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(ベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(p−メトキシベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(p−メチルベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(p−ニトロベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(ナフトイル)トリフェニルホスフィン、(メトキシカルボニル)トリフェニルホスフィン、(ジアセチルメチレン)トリフェニルホスフィン、(アセチルシアノ)トリフェニルホスフィン、(ジシアノメチレン)トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。
【0046】
これら反応促進剤の使用量は、多官能エポキシ化合物(a)のエポキシ基1モルに対して約0.1〜25モル%の割合であることが望ましく、さらに好ましくは0.5〜20モル%の割合であり、より好ましくは1〜15モル%の割合である。反応促進剤の使用量がエポキシ基1モルに対して0.1モル%よりも少ない割合の場合、実用的な速度で反応が進行し難く、一方、25モル%を超えて多量に存在しても顕著な反応促進効果は見られないため、経済性の点で好ましくない。
【0047】
前記反応物(I)の合成の反応温度としては、約50〜200℃の範囲が望ましく、さらに好ましくは70〜130℃である。反応温度が50℃よりも低い場合には、反応が進行し難くなるので好ましくない。一方、200℃を超えた場合には、生成物の二重結合が反応して熱重合を生じ易くなり、また低沸点の不飽和モノカルボン酸が蒸発するので好ましくない。反応時間は、原料の反応性、反応温度に応じて適時選択すればよいが、約5〜72時間が好適である。
【0048】
前記反応は無溶剤下でも進行するが、反応時の攪拌効率を改善するために(D)希釈剤の存在下で行なうことも可能である。用いる希釈剤(D)としては反応温度を維持できるものであれば特に限定されないが、好ましくは原料を溶解するものが良い。また、合成時の希釈剤(D)として(D−1)有機溶剤を用いた場合は、減圧蒸留などの公知の方法にて溶剤を除去してもよい。さらには、製造時に後述する(D−2)反応性希釈剤の存在下で行なうことも可能である。
【0049】
有機溶剤(D−1)は、反応に悪影響を与えず、反応温度を維持できるものであれば公知のものが使用できる。具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの炭化水素類が挙げられる。
【0050】
次に、上記反応物(I)の水酸基と、ラクトンモノマー(d)との反応は、前記反応物(I)中の水酸基に対して、水酸基1当量あたりラクトンモノマー(d)を、0.1当量以上であり、好ましくは0.1〜1.0当量である。ラクトンモノマーの付加量が、0.1未満の場合、可撓性を上げる効果が無く、また、1.0当量を超えた場合、硬化物の耐熱性などの塗膜特性が低下するので、好ましくない。
【0051】
ラクトンモノマー(d)としては、環状エステル化合物である、5員環のγ−ブチロラクトン誘導体、6員環のδ−バレロラクトン誘導体、7員環のε−カプロラクトン誘導体、8員環のζ−エナントラクトン誘導体などが挙げられ、特に好ましいものとしては、ε−カプロラクトンが挙げられる。
【0052】
上記反応に用いられる触媒としてハロゲン化第一スズやモノブチルスズトリス−2−エチルヘキサネート、オクタン酸第一スズ、ジブチルスズジラウレート等が使用可能である。これらの中でも、モノブチルスズトリス−2−エチルヘキサネートを用いることが着色をより低減でき、また、エステル交換反応がより少なくなることで触媒濃度を増やすことができ、また反応時間短縮の点でも非常に優れていて、より好ましい。この触媒を用いる場合の添加量としては、1〜1000ppm、好ましくは10〜500ppmである。
【0053】
反応温度は、80〜150℃、好ましくは100〜140℃である。80℃より低いと反応が遅く、150℃より高いと反応中にアクリルの熱重合が起こり、ゲル化する危険性がある。反応系には重合抑制剤を添加することが好ましい。重合抑制剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン等を0.01〜1%、好ましくは0.03〜0.5%の範囲で用いる。反応系には窒素のような不活性ガスを通じるとラジカル重合が起こりやすくなるため、全くガスを通さないか、あるいは、空気等を通じることが反応物の熱重合を防止するのに役立つ。
【0054】
さらに、本発明では、前記のようにして生成した末端にエチレン性不飽和基、側鎖にラクトンモノマー(d)の付加に伴う水酸基を有する反応物(II)中の水酸基の1当量に対して、多塩基酸無水物(e)を0.1〜1.0モル反応させることにより、カルボキシル基を有するアルカリ可溶性の不飽和基含有多分岐化合物(A)が製造される。
【0055】
多塩基酸無水物(e)の具体例としては、無水フタル酸、無水コハク酸、オクテニル無水フタル酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水マレイン酸、無水テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水トリメリット酸などの二塩基又は三塩基酸無水物、あるいはビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの四塩基酸二無水物などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0056】
これらの多塩基酸無水物(e)と、前記ヒドロキシルアルキル基を有する反応物(II)との反応は、前記の配合割合で約50〜150℃、好ましくは80〜130℃の温度範囲で行なうことが可能である。多塩基酸無水物(e)の使用量は、前記反応物(II)中の水酸基1当量に対して、0.1〜1.0モルが好適である。0.1モルより少ないと導入されるカルボキシル基の量が少なくなり、アルカリ可溶性が著しく低くなるので好ましくない。一方、1.0モルを超えて多量に配合すると、未反応の多塩基酸無水物(e)が樹脂中に残存し、耐久性、電気特性などの特性を低下させるため好ましくない。
【0057】
前記多塩基酸無水物(e)との反応における反応促進剤としては、前述の三級アミン、三級アミン塩、四級オニウム塩、三級ホスフィン、リンイリド、クラウンエーテル錯体、及び三級アミンあるいは三級ホスフィンとカルボン酸又は酸性の強いフェノールとの付加体が使用可能である。その使用量は多塩基酸無水物(e)に対して0.1〜25モル%の範囲であり、さらに好ましくは0.5〜20モル%であり、より好ましくは1〜15モル%である。但し、前記反応物(I)の製造時に用いた触媒が系内に残存する場合、新たに触媒を添加しなくても反応を促進することが可能である。
【0058】
前記反応は、有機溶剤(D−1)の存在下、又は無溶剤下でも進行するが、反応時撹拌効率を改善するために前記希釈剤(D)の存在下で行なうことも可能である。
【0059】
また、前記反応においては、不飽和二重結合の重合によるゲル化を防止する目的で、空気を吹き込んだり、重合禁止剤を加えてもよい。重合禁止剤の例としては、ハイドロキノン、トルキノン、メトキシフェノール、フェノチアジン、トリフェニルアンチモン、塩化銅などが挙げられる。
【0060】
前記のようにして得られた本発明の不飽和基含有多分岐化合物(A)に、重合開始剤(B)として、(B−1)光ラジカル重合開始剤及び/又は(B−2)熱ラジカル重合開始剤を混合することにより、本発明の光硬化性及び/又は熱硬化性の組成物が得られる。この硬化性組成物は、紫外線又は電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、あるいはさらに加熱によって硬化し、基材との密着性、機械的特性、耐薬品性等に優れた硬化物を形成することができる。
【0061】
また、前記不飽和基含有多分岐化合物(A)及び重合開始剤(B)と共に、熱硬化性成分(C)、例えば、一分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(以下、多官能エポキシ化合物という)(C−1)及び/又は一分子中に少なくとも2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物(以下、多官能オキセタン化合物という)(C−2)を好適に混合することができる。これにより、さらに特性を向上することができる。例えば、前記不飽和基含有多分岐化合物(A)及び光ラジカル重合開始剤(B−1)と共に、熱硬化性成分(C)、例えば、多官能エポキシ化合物(C−1)及び/又は多官能オキセタン化合物(C−2)を混合することにより光硬化性・熱硬化性組成物が得られ、この光硬化性・熱硬化性組成物は、その塗膜を露光・現像することで画像形成が可能であり、さらに現像後加熱することで、硬化収縮を生じることなく、基材との密着性、機械的特性、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性、及び耐クラック性等の諸特性に優れた硬化皮膜を形成することができる。また、前記不飽和基含有多分岐化合物(A)及び熱重合開始剤(B−2)と共に、熱硬化性成分(C)、例えば多官能エポキシ化合物(C−1)及び/又は多官能オキセタン化合物(C−2)を混合することにより、熱により速やかに硬化し、ダレ等の無い塗膜が形成でき、さらに加熱することにより、基材との密着性、機械的特性、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性、及び耐クラック性等の諸特性に優れた硬化皮膜を形成することができる。
【0062】
さらに、前記のような硬化性組成物もしくは光硬化性・熱硬化性組成物に、希釈剤(D)として後述するような反応性モノマーを添加することにより、光硬化性を向上させることができる。
【0063】
前記重合開始剤(B)として用いられる光ラジカル重合開始剤(B−1)としては、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する公知の化合物が使用可能であり、その具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−メチルチオ−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアミノアセトフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド等のアルキルホスフィン類;9−フェニルアクリジン等のアクリジン類などが挙げられる。
【0064】
これらの光ラジカル重合開始剤(B−1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの光ラジカル重合開始剤(B−1)の配合量は、前記不飽和基含有多分岐化合物(A)100質量部当り0.1〜30質量部の割合が好ましい。光ラジカル重合開始剤(B−1)の配合量が上記範囲よりも少ない場合、活性エネルギー線の照射を行なっても硬化しないか、もしくは照射時間を増やす必要があり、適切な塗膜物性が得られ難くなる。一方、上記範囲よりも多量に光ラジカル重合開始剤(B−1)を添加しても、硬化性に変化は無く、経済的に好ましくない。
【0065】
本発明の硬化性組成物もしくは光硬化性・熱硬化性組成物においては、活性エネルギー線による硬化を促進させるために、硬化促進剤及び/又は増感剤を上記のような光ラジカル重合開始剤(B−1)と併用してもよい。使用し得る硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート等の三級アミン類;β−チオジグリコール等のチオエーテル類などが挙げられる。増感剤としては、(ケト)クマリン、チオキサンテン等の増感色素類;及びシアニン、ローダミン、サフラニン、マラカイトグリーン、メチレンブルー等の色素のアルキルホウ酸塩などが挙げられる。これらの硬化促進剤及び/又は増感剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その使用量は、前記不飽和基含有多分岐化合物(A)100質量部当り0.1〜30質量部の割合が好ましい。
【0066】
前記重合開始剤(B)として用いられる熱ラジカル重合開始剤(B−2)としては、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレイト、4,4’−アゾビス−4−シアノバリックアシツド、2−メチル−2,2’−アゾビスプロパンニトリル等のアゾ系開始剤などが挙げられ、より好ましいものとしてはノンシアン、ノンハロゲンタイプの1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)が挙げられる。熱ラジカル重合開始剤(B−2)は、前記不飽和基含有多分岐化合物(A)100質量部当り0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部の割合で用いられる。
【0067】
また、熱ラジカル重合開始剤(B−2)として有機過酸化物のうち硬化速度の小さいものを用いる場合には、トリブチルアミン、トリエチルアミン、ジメチル−p−トルイジン、ジメチルアニリン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の三級アミン、あるいはナフテン酸コバルト、オクトエ酸コバルト、ナフテン酸マンガン等の金属石鹸を促進剤として用いることができる。
【0068】
本発明の硬化性組成物中に添加される熱硬化性成分(C)としては、下記の多官能エポキシ化合物(C−1)及び/又は多官能オキセタン化合物(C−2)を好適に用いることができる。
【0069】
多官能エポキシ化合物(C−1)としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノール、クレゾール、ハロゲン化フェノール、アルキルフェノールなどのフェノール類とホルムアルデヒドを酸触媒下で反応させて得られるノボラック類に、エピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるものであり、市販品としては日本化薬(株)製のEOCN−103、EOCN−104S、EOCN−1020、EOCN−1027、EPPN−201、BREN−S;ダウ・ケミカル社製のDEN−431、DEN−438;大日本インキ化学工業(株)製のエピクロンN−730、N−770、N−865、N−665、N−673、N−695、VH−4150など)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAなどのビスフェノール類にエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるものであり、市販品としては、ジャパンエポキシレジン社製のエピコート1004、エピコート1002;ダウ・ケミカル社製のDER−330、DER−337など)、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(例えば、トリスフェノールメタン、トリスクレゾールメタンなどとエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるものであり、市販品としては、日本化薬(株)製のEPPN−501、EPPN−502など)、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、ビフェノールジグリシジルエーテル、その他脂環式エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、共重合型エポキシ樹脂、カルド型エポキシ樹脂、カリックスアレーン型エポキシ樹脂など公知慣用のエポキシ樹脂を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
本発明の硬化性組成物において熱硬化性成分として用いられる多官能オキセタン化合物(C−2)としては、一分子中に2つのオキセタン環を有するビスオキセタン類や、一分子中に3つ以上のオキセタン環を有するトリスオキセタン類などが挙げられ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
前記の多官能エポキシ化合物(C−1)及び/又は多官能オキセタン化合物(C−2)の配合量は、前記不飽和基含有多分岐化合物(A)100質量部に対して5〜100質量部の割合が適当であり、好ましくは15〜60質量部である。
【0072】
さらに、熱硬化反応を促進するために、三級アミン類、四級オニウム塩類、三級ホスフィン類、クラウンエーテル錯体などや、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミドなどの公知の硬化促進剤を少量併用することができる。硬化促進剤は、これらの中から任意に選択することが可能であり、これらを単独で又は2種以上混合して用いてもよい。その他、ホスホニウムイリドなど、公知の硬化促進剤を使用できる。
【0073】
イミダゾール誘導体としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。市販されているものとしては、例えば、四国化成(株)製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZなどが挙げられる。経時安定性向上を図るものとしては、旭チバ(株)製のノバキュアHX−3721、HX−3748、HX−3741、HX−3088、HX−3722、HX−3742、HX−3921HP、HX−3941HP、HX−3613なども挙げられる。
【0074】
硬化促進剤の使用量は、前記多官能エポキシ化合物(C−1)及び/又は多官能オキセタン化合物(C−2)のエポキシ基及び/又はオキセタニル基1モルに対して0.1〜25モル%の範囲であり、好ましくは0.5〜20モル%であり、より好ましくは1〜15モル%である。硬化促進剤の使用量が、エポキシ基及び/又はオキセタニル基1モルに対して0.1モル%よりも少ないと実用的な速度で硬化反応が進行し難く、一方、25モル%よりも多量に存在しても顕著な反応促進硬化は見られないので、経済性の点で好ましくない。
【0075】
本発明の硬化性組成物もしくは光硬化性・熱硬化性組成物には、希釈剤(D)を合成時あるいは合成後に加えることができる。希釈剤(D)としては、前記した有機溶剤(D−1)の他、硬化反応に関与することができる重合性基を有する化合物を好適に用いることができ、単官能(メタ)アクリレート類及び/又は多官能(メタ)アクリレート類などの公知の反応性希釈剤(D−2)が使用可能である。具体的な例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及び二塩基酸無水物と一分子中に少なくとも1個以上の不飽和基を有するアルコールとの反応物などを挙げることができる。これら反応性希釈剤(D−2)は、単独で又は2種以上の混合物で用いられ、その使用量は、前記不飽和基含有多分岐化合物(A)100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは10〜70質量部の割合である。上記反応性希釈剤(D−2)の配合量が100質量部を超えた場合、接触露光に必要な指触乾燥性が得られ難くなり、また耐熱性等の塗膜特性が低下するので、好ましくない。
【0076】
尚、本発明の硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記反応物(I)、(II)や、さらに前記反応物(I)に多塩基酸無水物(d)を付けたような、(E)他の活性エネルギー線硬化性樹脂を併用しても構わない。特に、好ましいものとしては、現像性を低下させないために、カルボキシル基含有の活性エネルギー線硬化性樹脂、例えば、多官能エポキシ樹脂に、不飽和モノカルボン酸を付加した後、多塩基酸無水物を付加したような活性エネルギー線硬化性樹脂がある。
【0077】
本発明の硬化性組成物もしくは光硬化性・熱硬化性組成物には、さらに必要に応じて硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウムなどの公知慣用の充填剤、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カーボンブラックなどの公知慣用の着色顔料、消泡剤、密着付与剤、レベリング剤などの各種添加剤を加えてもよい。
【0078】
このようにして得られた硬化性組成物もしくは光硬化性・熱硬化性組成物は、希釈剤(D)の添加により粘度を調整した後、スクリーン印刷法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、ディップコーティング法、及びスピンコーティング法などの塗布方法により塗布し、例えば、約60〜120℃の温度で仮乾燥することで組成物中に含まれる有機溶剤を除去し、塗膜を形成する。ドライフィルムの形態にある場合には、そのままラミネートすればよい。その後、活性エネルギー線を照射、又は加熱することにより、速やかに硬化する。
【0079】
本発明の光硬化性の組成物は、不飽和基含有多分岐化合物(A)にカルボキシル基を有していることから、所定の露光パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により、又は直接描画法により露光し、未露光部をアルカリ水溶液により現像してレジストパターンを形成できる。
【0080】
さらに、熱硬化性成分を含有する光硬化性・熱硬化性の組成物の場合、上記露光・現像後に約140〜200℃の温度で加熱して熱硬化させることにより、密着性、機械的強度、はんだ耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、及び耐電蝕性などの諸特性に優れた硬化皮膜が形成できる。またさらには、熱硬化前又は後にポストUV硬化を行なうことにより、諸特性をさらに向上させることができる。
【0081】
上記現像に用いるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウム、アンモニア、有機アミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキシドなどの水溶液が使用できる。現像液中のアルカリの濃度は概ね0.1〜5質量%であればよい。現像方式はディップ現像、パドル現像、スプレー現像などの公知の方法を用いることができる。
【0082】
前記光硬化性の組成物を硬化させるための照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが適当である。また、レーザー光線なども露光用活性光源として利用できる。その他、電子線、α線、β線、γ線、X線中性子線なども利用可能である。
【0083】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明についてより具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断わりのない限り、全て質量基準である。
【0084】
合成例1
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに、大日本インキ化学工業社製のナフタレン型エポキシ樹脂HP−4032D(エポキシ当量=136)13.6部、トリメシン酸4.7部、トリフェニルホスフィン2.6部、及びN−メチルピロリドン50mlを仕込み、100℃にて6時間反応を行なった。その後、メタクリル酸8.6部、メトキノン0.1部を加え90℃で12時間反応を行った。反応液を室温まで冷却後、大量の水に注ぎ、沈澱した固体を回収した。さらに、この固体をテトラヒドロフランに溶解し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過後、大量のジエチルエーテルに注ぐことで精製を行なった。得られた沈澱をろ別し、減圧乾燥することで、反応物(I−1)を17.2部得た。
【0085】
得られた反応物(I−1)の構造は、1H−NMR及びIRスペクトルにて確認した。付加反応が進行したことを示すエステル結合に起因するνC=OとνC−O−Cの吸収がそれぞれ1727cm-1と1237cm-1に新たに見られ、さらにエポキシ環の開環付加反応により生じた水酸基の吸収及び不飽和二重結合に由来する吸収が検出されたことから、目的の構造であることが判明した。GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)による測定結果から、重量平均分子量は34000であった。この反応物(I−1)の二重結合当量は787.3g/当量、水酸基当量は213.2g/当量、酸価は6.8mgKOH/gであった。
【0086】
次いで、撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに、得られた反応物(I−1)を10.7部、ε−カプロラクトン5.7部、トリフェニルホスフィン0.1部、メトキノン0.05部、カルビトールアセテート14.0部を仕込み、80℃で12時間反応を行った。その後、無水テトラヒドロフタル酸4.6部を加え、さらに80℃で12時間反応を行った。得られた樹脂溶液(A−1)について、IRスペクトルにて構造確認を行なった結果、無水テトラヒドロフタル酸のνC=Oに起因する1778cm-1の吸収が完全に消失し、さらに3000cm-1付近のカルボキシル基に起因する幅広の吸収が見られたことから、側鎖にカルボキシル基が導入されたことが確認された。さらに、酸価測定を行なった結果、無水テトラヒドロフタル酸付加後は80mgKOH/gであった。
【0087】
合成例2
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに、前記合成例1で得られた反応物(I−1)を10.7部、ε−カプロラクトン5.7部、トリフェニルホスフィン0.1部、メトキノン0.05部、カルビトールアセテート12.7部を仕込み、80℃で12時間反応を行った。その後、無水テトラヒドロフタル酸3.2部を加え、さらに80℃で12時間反応を行ない、樹脂溶液(A−2)を得た。酸価測定を行なった結果、無水テトラヒドロフタル酸付加後は、60mgKOH/gであった。
【0088】
比較合成例1
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに、前記合成例1の反応物(I−1)を10.7部、無水テトラヒドロフタル酸3.0部、トリフェニルホスフィン0.1部、メトキノン0.05部、カルビトールアセテート9.1部を仕込み、80℃で12時間反応を行った。得られた比較樹脂溶液(R−1)の酸価測定を行なった結果、無水テトラヒドロフタル酸付加後は、80mgKOH/gであった。
【0089】
比較合成例2
合成例1の操作と同様に、大日本インキ化学工業社製のナフタレン型エポキシ樹脂HP−4032D(エポキシ当量=136)10.7部、トリメシン酸3.5部、トリフェニルホスフィン2.6部、及びN−メチルピロリドン50mlを仕込み、80℃にて6時間反応を行なった。その後、メタクリル酸8.6部及びメトキノン0.01部を加え、さらに同温度で12時間反応を行った。反応液を室温まで冷却後、大量の水に注ぎ、沈澱した固体を回収した。さらに、この固体をテトラヒドロフランに溶解し、大量のヘキサンに注ぐことで精製を行なった。得られた沈澱をろ別し、減圧乾燥することで、反応物(I−2)を13.8部得た。GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)による測定結果から、重量平均分子量は5000であった。この反応物(I−2)の二重結合当量は817.3g/当量、水酸基当量は258.7g/当量、酸価は2.6mgKOH/gであった。
【0090】
次いで、撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに、得られた反応物(I−2)を7.8部、無水テトラヒドロフタル酸2.2部、トリフェニルホスフィン0.1部、メトキノン0.05部、カルビトールアセテート6.7部を仕込み、80℃で12時間反応を行った。得られた比較樹脂溶液(R−2)の酸価測定を行なった結果、無水テトラヒドロフタル酸付加後は、80mgKOH/gであった。
【0091】
実施例1、2及び比較例1、2
合成例1及び2で得られた不飽和基含有多分岐化合物(A−1)、(A−2)と、比較合成例1及び2で得られた比較樹脂溶液(R−1)、(R−2)を、それぞれ下記の表1に示す配合割合で各成分を配合し、3本ロールミルを用いて混練し、光硬化性・熱硬化性の組成物を調製し、硬化塗膜の特性を評価した。その結果を下記の表2に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
表2に示す結果から明らかなように、本発明の不飽和基含有多分岐化合物(A−1)、(A−2)を用いた実施例1、2の光硬化性・熱硬化性の組成物は、比較合成例1、2で合成した比較樹脂溶液(R−1)、(R−2)を用いた比較例1、2の光硬化性・熱硬化性の組成物を用いた場合と比較して現像性が向上し、さらに伸び率などの可撓性に優れた硬化物を与えることがわかる。
なお、表2中の特性評価の方法は以下の通りである。
【0095】
引張弾性率、引張強度(引張破壊強さ)、伸び率(引張破壊伸び)
JIS K 7127に準拠して求めた。
【0096】
現像性
前記実施例1、2及び比較例1、2の光硬化性・熱硬化性の組成物を、銅ベタ基板上にスクリーン印刷で約20μmの膜厚でそれぞれ全面塗布し、次いで80℃で30分加熱乾燥させた。その後、1wt%Na2CO3水溶液で現像し、20μm厚のそれぞれの組成物が、溶解して銅箔が見えるまでの時間(秒)を測定した。
【0097】
はんだ耐熱性
前記実施例1、2及び比較例1、2の各光硬化性・熱硬化性の組成物を、回路形成されたプリント配線板に、スクリーン印刷法で約20μmの膜厚でそれぞれ全面塗布し、次いで80℃で30分加熱乾燥させた。その後、これらの基板にネガフィルムを介して500mJ/cm2の露光量にて露光を行ない、次いで、アルカリ水溶液で1分間現像を行なった後、さらに150℃で60分の熱硬化を施して評価基板を作製した。
【0098】
このようにして得られた各評価基板について、ロジン系フラックスを塗布して予め260℃に設定したはんだ槽に30秒間浸漬する操作を3回行ない、目視による塗膜の膨れ・剥がれ・変色について評価した。
○:全く変化が認められないもの
△:僅かに変化したもの
×:塗膜の膨れ、剥がれがあったもの
【0099】
密着性試験
前記はんだ耐熱性試験を実施した評価基板を用い、JIS D0202の試験方法に従って碁盤目状のクロスカットを入れ、次いで粘着テープによるピーリングテストを行ない、塗膜の剥離状態を目視観察し、評価した。
○:全く剥がれのないもの
△:クロスカット部が少し剥がれたもの
×:剥がれたもの
【0100】
180°折り曲げ性
前記実施例1、2及び比較例1の光硬化性・熱硬化性の組成物を、バーコーターを用いてアルミ箔に70μmの膜厚で塗布し、高圧水銀灯にて120秒間光照射を行ない、硬化塗膜を作成した。この塗膜を180°に折り曲げた際のクラックの有無を目視にて観察した。
◯:クラックが認められないもの
×:クラックが認められるもの
【0101】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の不飽和基含有多分岐化合物を用いた硬化性組成物は、カルボキシル基を主骨格から離すことにより、耐熱性、密着性を低下させることなく、現像性、折り曲げ性などの可撓性を向上することができる。従って、この硬化性組成物を硬化させた硬化物は、フレキシブルプリント配線板や薄板のプリント配線板のような現像時にスプレー圧の伝わりにくい、柔軟性を有した基板に適用する際にも、現像不良などを起こすことなく、効率よく生産することができ、特にプリント配線への適用に好適である。
Claims (5)
- (a)一分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物と、(b)一分子中に2つ以上(但し、上記(a)成分が2つのエポキシ基を有する化合物の場合、3つ以上)のカルボキシル基を有するカルボン酸と、(c)不飽和モノカルボン酸との反応により得られる反応物(I)と、(d)ラクトンモノマーとの反応物(II)に、さらに(e)多塩基酸無水物を反応させて得られた反応物であることを特徴とする不飽和基含有多分岐化合物。
- (A)請求項1に記載の不飽和基含有多分岐化合物と、(B)重合開始剤とを必須成分として含有することを特徴とする硬化性組成物。
- さらに(C)熱硬化性成分を含有する請求項2に記載の硬化性組成物。
- 請求項2又は3に記載の硬化性組成物を活性エネルギー線照射及び/又は加熱により硬化させて得られたことを特徴とする硬化物。
- 所定の回路パターンの導体層を有する回路基板上に永久保護膜としてのソルダーレジスト皮膜が形成されたプリント配線板において、前記ソルダーレジスト皮膜が、請求項2又は3に記載の硬化性組成物の硬化塗膜からなることを特徴とするプリント配線板。
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