JP3802314B2 - エーテルの製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油性汚れ溶解剤、水に可溶な有機溶剤、極性油、乳化剤、潤滑剤、保湿剤等として、また界面活性剤の製造中間体として用いられるヒドロキシエーテル類の製造に有用なパラジウム触媒及びそれを用いたヒドロキシエーテル類の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アセタール化合物の水素化分解法としては、(1)ハロゲン化アルキルアルミニウム化合物又はハロゲン化アルミニウムと水素化アルミニウムリチウムとの混合物を用いる方法や、(2)水素雰囲気下、パラジウム、白金、ロジウム等の金属を担持した水素添加触媒を用いる方法が知られている。
【0003】
しかし、上記(1)の方法では、用いる試薬がはなはだしい発火性を有することから安全上の問題があり、またその試薬も化学量論量必要とすることから廃棄物が多量に発生する等の問題がある。また、上記(2)の方法では、このような問題がなく有利であるが環状アセタールなど多価アルコールのアセタールの場合、アセタール交換等により生成物がモノエーテル体、ジエーテル体等の混合組成となってしまうという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、エーテルの合成において、高選択的にモノエーテルを得ることのできる触媒及びそれを用いた環状アセタールの水素化分解による高選択的にモノエーテルを合成する方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ゼオライトよりも大きく実質的に均一な細孔径を持つ多孔性担体であるメソポーラスアルミノシリケートにパラジウムを担持させたものを触媒として用いることにより、上記課題を解決できることを見出した。さらに予めアンモニア又はその塩で処理したメソポーラスアルミノシリケートにパラジウムを担持させるとエーテル製造における活性の特に優れた触媒が得られることも見出した。
【0006】
すなわち本発明は、環状アセタールと水素とをメソポーラスアルミノシリケートに担持されたパラジウム触媒の存在下に反応させるエーテルの製法を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、アンモニア又はその塩で処理したメソポーラスアルミノシリケートにパラジウムを担持させたパラジウム触媒を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のパラジウム触媒の担体であるメソポーラスアルミノシリケートとは、2〜50nmの均一な細孔径を持つアルミノシリケートをいう。この均一な細孔径は粉末X線回折パターンから求めることができ、2〜10nmが好ましく、特に2〜6nmが好ましい。本発明ではこのようなメソポーラス細孔内でアセタール交換反応が抑制されることにより、モノエーテル体を高選択的に得ることができるものである。従って、最も良好な結果は、基質に適した細孔径やパラジウムの分散状態を有する触媒を用いることにより得られる。
【0009】
本発明のパラジウム触媒は、ゼオライトよりも大きな細孔を有するメソポーラスアルミノシリケートを合成し、これにパラジウムを担持させることにより製造することができる。
【0010】
メソポーラスアルミノシリケートは、例えば、Bull. Chem. Soc. Jpn., 63, 988(1990)に記載されている方法等により合成することができるが、Siに対するAlの比率は10重量%以下とするのが合成上好ましく、またメソポーラスアルミノシリケートの細孔径は2〜10nm、特に2〜6nmであるのが好ましい。
【0011】
本発明においては、メソポーラスアルミノシリケートをアンモニア又はその塩で処理してから、それにパラジウムを担持するのが好ましい。
予めメソポーラスアルミノシリケートをアニモニア又はその塩で処理する方法としては、合成したメソポーラスアルミノシリケートをアンモニア又はその塩で中和又はイオン交換により行う方法がよい。ここでアンモニアは、気体又は水溶液の状態で使用してもよい。またアンモニアの塩としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩;酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、乳酸アンモニウム等の低級(炭素数1〜3)有機酸のアンモニウム塩が挙げられるが、塩化アンモニウムが特に好ましい。この処理に用いるアンモニアの塩は水溶液として用いることができる。アンモニア又はその塩の量としては混入するナトリウムイオン量に対して充分過剰に用いる必要があり、具体的にはメソポーラスアルミノシリケート中のアルミニウムのモル量に対して1〜100モル倍、好ましくは1〜50モル倍の充分に過剰な量のアンモニア又はその塩の水溶液中に、0〜100℃、好ましくは常温〜80℃でメソポーラスアルミノシリケートを分散、接触させた後、水洗すればよい。また、パラジウムを担持する前に200〜700℃、好ましくは300〜600℃で焼成してもよいが、焼成せずにパラジウムを担持するのに使用してもかまわない。このようにパラジウムを担持させる前に、アンモニア又はその塩でメソポーラスアルミノシリケートを処理することにより、メソポーラスアルミノシリケート中に混入するナトリウムイオンが著しく減少し、イオン交換によるパラジウムの担持効率が向上し、また担持されたパラジウムの触媒反応活性が著しく向上する。特に多価アルコールとカルボニル化合物からエーテルを合成する際に使用すると、反応活性及びモノエーテル生成の選択性が著しく向上する。
【0012】
パラジウムをメソポーラスアルミノシリケートに担持する方法としては、含浸法、イオン交換法、CVDによる方法等が挙げられるが、一般的には含浸法が広く用いられている。しかしながら、このメソポーラスアルミノシリケートへ担持方法としては、イオン交換法が好ましい。
イオン交換法でパラジウムを担持させる方法は、比較的容易に高分散でパラジウムを担持させることが可能なため、本発明の触媒調製法として適している。
【0013】
この担持に使用されるパラジウム塩としては、PdCl2、Pd(OAc)2、Pd(NH4)Cl2、[Pd(NH3)4]Cl2等が挙げられるが、特にPdCl2、Pd(OAc)2が好ましい。、PdCl2、Pd(OAc)2等を用いたイオン交換の方法としては、例えば、PdCl2をアンモニア水に溶解させるか、又はPd(OAc)2をアセトンと水の混合液に溶解させ、メソポーラスアルミノシリケート又はその塩を分散、接触させる等の方法が挙げられるが、PdCl2のアンモニア水溶液を用いた方法が好ましく、この際のPdCl2量及び処理温度は特に限定されないが、PdCl2量としてはメソポーラスシリケートに対して好ましくは0.01〜500重量%、より好ましくは0.1〜200重量%であり、処理温度は好ましくは0〜100℃、より好ましくは室温〜80℃である。
【0014】
メソポーラスアルミノシリケートへのパラジウムの担持量としては、触媒全量中の0.1〜10重量%が好ましく、これを超える担持は担持の際にシンタリング等の悪影響を及ぼす可能性が高くなる。
【0015】
パラジウムをメソポーラスアルミノシリケートに担持させた後に、好ましくは200〜700℃、特に300〜600℃で焼成することが好ましい。
【0016】
かくして調製されたパラジウム触媒は、例えば次の反応式で示される環状アセタールと水素とを反応させてエーテルを製造する際の触媒として使用される。
【0017】
【化3】
Figure 0003802314
【0018】
〔式中、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素基を示し、R3〜R6は同一又は異なって、水素原子、水酸基、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素基若しくはヒドロキシアルキル基を示し、nは0〜2の数を示す。ただし、R1とR2は同時に水素原子となることはなく、またR1とR2、R3とR4、及びR3とR5はそれぞれ一緒になって隣接する炭素原子とともに環状構造を形成してもよい。〕
【0019】
本反応で用いる環状アセタールにおいて、一般式(1)中のR1及びR2としては、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、イソオクチル基、ウンデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基;シクロペンタン環、シクロヘキサン環等のR1とR2による環状構造が好ましいものとして挙げられる。
【0020】
一般式(1)中のR3〜R6としては、水素原子;水酸基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はこれにヒドロキシが置換したもの;シクロペンタン環、シクロヘキサン環等のR3とR4又はR3とR5による環状構造が好ましいものとして挙げられる。またこれら炭化水素基又はヒドロキシアルキル基が有していてもよい置換基としては、水素化分解を妨げない官能基であれば特に制限されず、例えばハロゲン原子、オキソ基等が挙げられる。nは0又は1であるのが好ましい。最も好ましいR3〜R6及びnの組み合わせとしては、R3=水素原子、R5=ヒドロキシメチル基かつn=0の組み合わせ、R3=R5=水素原子、n=1、R4=水素原子かつR6=水酸基の組み合わせが挙げられる。
【0021】
かかる環状アセタール(1)は、常法に従って、対応するカルボニル化合物と多価アルコールとのアセタール化反応によって合成することができる。
【0022】
かかるカルボニル化合物としては、カルボニル基を1個有する炭素数2〜37の直鎖、分岐鎖又は環状の化合物が好ましく、カルボニル基を1個有する炭素数2〜19の脂肪族アルデヒド、炭素数3〜37の直鎖若しくは分岐鎖のケトン及び炭素数5〜8の環状ケトンがより好ましく、カルボニル基を1個有する炭素数2〜12の脂肪族アルデヒド、炭素数3〜10の直鎖若しくは分岐鎖のケトン及び炭素数5〜6の環状ケトンが更に好ましい。このうちプロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、イソノニルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが特に好ましい。本発明においては、かかるカルボニル化合物を1種以上用いることができる。
【0023】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,2-又は1,3-プロパンジオール、グリセリン、1,2-、1,3-又は2,3-ブタンジオール、1,2-又は2,4-ペンタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、キシリトール、アラビトール、1,2-又は1,3-シクロペンタンジオール、1,2-又は1,3-シクロヘキサンジオール、2,3-ノルボルナンジオール等が挙げられ、なかでもグリセリン及びエチレングリコール、特にグリセリンが好ましい。
【0024】
アセタール化反応に用いられる多価アルコールのカルボニル化合物に対する比率(モル比)は、1.5〜0.2、特に1.2〜0.6が好ましい。この反応は酸触媒としてパラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸等をカルボニル化合物に対して0.01〜5モル%、好ましくは0.1〜1モル%用いて行う。
【0025】
上記アセタール化反応は、無溶媒下で、あるいはキシレン、トルエン、ベンゼン、オクタン、イソオクタン、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ブタン、リグロイン、石油エーテル等の不活性溶媒又はこれらの混合溶媒中で、生成する水を除去しながら行うのが好ましい。また、窒素流通下、窒素雰囲気下及び空気雰囲気下のいずれで反応を行ってもよい。反応温度は、使用するカルボニル化合物の沸点にもよるが、十分な反応速度と着色・副反応の抑制の観点より、20〜130℃、特に50〜100℃の範囲が好ましい。反応時間は、種々の条件によって変りうるが通常1〜30時間が好ましい。得られた環状アセタールは中和し、濾過、洗浄等の前処理を行った後、白土処理、晶析、蒸留等の操作によって精製できる。
【0026】
本発明は、かくして得られた環状アセタールの水素化分解反応において、触媒としてメソポーラスアルミノシリケートに担持されたパラジウム触媒を用いる。本発明におけるパラジウム触媒の使用量は、そのパラジウム担持量によっても異なるが、例えばパラジウムが5重量%担持されたものであれば、使用するヒドロキシ化合物に対して0.1〜10重量%が好ましい。
【0027】
上記触媒の存在下、環状アセタール化合物を水素雰囲気中で反応させるに際し、当該水素圧は特に限定されず、加圧下及び大気圧下のいずれでもよいが、0.1(大気圧)〜29.4MPa、特に0.1(大気圧)〜19.6MPaが好ましい。なお、反応方式は、密閉方式及び水素流通方式のいずれでもよい。
【0028】
また、反応温度は特に限定されないが、10〜220℃、特に30〜200℃が好ましい。反応時間は、反応温度、水素圧、触媒量等によって適宜選べばよいが、通常1〜40時間、好ましくは1〜20時間である。本発明の反応には、溶媒を用いることもでき、かかる溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素系溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は、反応液に対して0.5〜2倍容量が好ましい。また、反応系に環状アセタールの原料であるカルボニル化合物や多価アルコールを添加してもよい。更に、リン酸などの酸性物質や周期表3族元素のハロゲン化物を微量添加してもよい。
【0029】
本反応においては、アセタール交換反応が抑制されるためモノエーテル体を高選択的に得ることができるが、環状アセタールの分解される位置の違い(1位−2位間,2位−3位間)により2種類のモノエーテルが得られ得る。しかしこれらのいずれも油性汚れ溶解剤、水に可溶な有機溶剤、極性油、乳化剤、潤滑剤、保湿剤等として、また界面活性剤の製造中間体として有用であり、単離して又は混合物のままこれらの用途に使用することができる。
【0030】
反応混合物からのモノエーテルの精製は、濾過を行って触媒を除去した後、常法、例えば溶媒留去、洗浄、再結晶、蒸留、クロマトグラフィー等の手段又はこれらの組み合せにより行うことができる。
【0031】
本発明のパラジウム触媒に含有するパラジウム量、ケイ素量、アルミニウム量は原子吸光分析等の元素分析法により、またナトリウム量は、X線電子分光分析法により測定することができる。
【0032】
【実施例】
実施例1 パラジウム触媒(1)の調製
(1) メソポーラスアルミノシリケートの合成
水ガラス250g、アルミン酸ナトリウム10.8g及び水550mLを1Lステンレス製ビーカーに入れ、70℃で3時間撹拌後、水を蒸発させ、更に乾燥した後、700℃で5時間焼成し、120gの層状アルミノシリケートを得た。
得られた層状アルミノシリケート(重量比Si:A1=95:5)15gに水100mLを加え、撹拌後、セチルジメチルアンモニウムクロライド12g、1,3,5-トリメチルベンゼン5.0g及び水300mLを加え、70℃で3時間撹拌した後、2×10-3mol/m3塩酸でpHを8.5に調整しながら12時間撹拌した。室温まで冷却した後、濾過、水洗及び乾燥を行い、550℃で8時間焼成しメソポーラスアルミノシリケートを得た。更に2×10-3mol/m3塩化アンモニウム水溶液200mLを加え、50℃で3時間撹拌処理した後、濾過、水洗及び乾燥を行い、500℃で2時間焼成し、14gの白色固体を得た。XRD解析より細孔径は4.7nmであった。
【0033】
(2) メソポーラスアルミノシリケートへのパラジウムの担持
塩化パラジウム0.5gを1×10-3mol/m3アンモニア水30mL及び水50mLに溶解させ、50℃に昇温した。(1)で合成・処理したメソポーラスアルミノシリケート5.0g及び水50mLを加え、更に3時間撹拌後、濾過、水洗及び乾燥を行い、500℃で2時間焼成し、5.0gのパラジウム担持メソポーラスアルミノシリケート(パラジウム触媒(1))を得た。原子吸光分析による元素分析より触媒のパラジウム担持量は2.1%であり、X線電子分光分析(島津製作所製)を用いた分析によりナトリウム含有量は0.1%以下であった。
【0034】
実施例2 パラジウム触媒(2)の調製
(1) メソポーラスアルミノシリケートの合成
実施例1と同様にして得られた層状アルミノシリケート50gに水300mLを加え、撹拌後、セチルジメチルアンモニウムクロライド40g及び水1Lを加え、70℃で3時間撹拌した後、2×10-3mol/m3塩酸でpHを8.5に調整しながら12時間撹拌した。室温まで冷却した後、濾過、水洗及び乾燥を行い、700℃で7時間焼成し、メソポーラスアルミノシリケートをを得た。更に2×10-3mol/m3塩化アンモニウム水溶液800mLを加え、50℃で3時間撹拌処理した後、濾過、水洗及び乾燥を行い、500℃で2時間焼成し、38gの白色固体を得た。原子吸光分析による元素分析より、Al:Si比は重量比で4.8:95.2であり、またXRD解析より細孔径は3.5nm、BFT法による比表面積は750m2/gであった。
【0035】
(2) メソポーラスアルミノシリケートへのパラジウムの担持
塩化パラジウム2.0gを28%アンモニア水250mL及び水750mLに溶解させ、50℃に昇温した。(1)で合成・処理したメソポーラスアルミノシリケート2.0gを加え、更に3時間撹拌後、濾過、水洗及び乾燥を行い、550℃で2時間焼成し、パラジウム担持メソポーラスアルミノシリケート(パラジウム触媒(2))を得た。原子吸光分析による元素分析より触媒のパラジウム担持量は6.7%であり、X線光電子分光分析装置を用いた分析ではナトリウム含有量は0.1%以下であった。
【0036】
(3) 触媒効果(1,3-ジメチルブチルヘキサデシルエーテルの製造)
(イ)水素ガス導入管及び攪拌装置を備えた500mLのオートクレーブにヘキサデシルアルコール116g(0.5mol)、4-メチル-2-ペンタノン100g(1.0mol)及び触媒としてパラジウム触媒(2)1.5gを仕込み、水素圧9.8MPa下、150℃で5時間反応を行った。
反応終了後、濾過により触媒を除去し、減圧にて過剰の4-メチル-2-ペンタノンを留去した。更に減圧蒸留により精製し、目的とする1,3-ジメチルブチルヘキサデシルエーテル153g(0.47mol)を無色透明オイルとして得た。単離収率は94%であり、ガスクロマトグラフィー分析より純度は99.5%であった。
【0037】
(ロ)上記パラジウム触媒(2)の調製に際し、2×10-3mol/m3塩化アンモニウムでメソポーラスアルミノシリケートを処理しないで、他は同様にパラジウムを担持させたパラジウム触媒を調製した。パラジウム担持量は5%、ナトリウム含有量は2.1%であった。このパラジウム触媒を用いて(イ)と同様な反応とした結果、1,3-ジメチルブチルヘキサデシルエーテルの単離収率は51%であった。
【0038】
実施例3 3-オクチルオキシ-1,2-プロパンジオールの合成
(1) 2-ヘプチル-4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン及び2-ヘプチル-1,3-ジオキサン-5-オール
温度計、還流冷却器、ディーンスタークトラップ、塩化カルシウム管及び撹拌器を備えた容量3Lの反応容器にオクチルアルデヒド512.0g(3.994mol)、グリセリン404.5g(4.392mol)、パラトルエンスルホン酸一水和物3.80g(0.02mol)及びトルエン400mLを仕込んだ、撹拌しながら昇温し、還流温度で4時間反応を行い、計算量の水を留去した。反応終了後、炭酸ナトリウム4.24g(0.04mol)を加えて中和し、水100mLを加えた。その後、静置分層し、上層を飽和食塩水(100mL)で2回洗浄した後蒸留し、標記化合物の混合物を802.3g得た。ガスクロマトグラフィー分析より上記混合物としての純度は98.5重量%であった。
【0039】
(2) 3-オクチルオキシ-1,2-プロパンジオール
70mLのオートクレーブに(1)で得た混合物22.3g(0.11mol)及びパラジウム触媒(1)2.25gを仕込み、水素圧7.0MPa下、190℃で15時間反応を行った。反応終了後、濾過により触媒を除去し、18.0gの粗生成物を得た。
ガスクロマトグラフィー分析の結果、この粗生成物中のモノアルキルエーテルとジアルキルエーテルの重量比は94:6であり、モノアルキルエーテル中には標記化合物以外に2-オクチルオキシ-1,3-プロパンジオールが16重量%含まれていた。
【0040】
比較例1
〔市販触媒による3-オクチルオキシ-1,2-プロパンジオールの合成〕
触媒としてパラジウム触媒(1)の代わりに市販の5重量%パラジウムカーボン粉末を1.1g用いる以外は実施例1と同様にして反応させたところ、モノアルキルエーテルとジアルキルエーテルの重量比は、68:32であった。
【0041】
実施例4 3-sec-ブトキシ-1,2-プロパンジオールの合成
(1) 2-メチル-2-エチル-4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン
温度計、還流冷却器、ディーンスタークトラップ、塩化カルシウム管及び撹拌器を備えた3Lの反応容器にメチルエチルケトン400g(5.547mol)、グリセリン561.91g(6.102mol)、パラトルエンスルホン酸一水和物21.10g(0.1109mol)及びヘキサン400mLを仕込んだ。撹拌しながら昇温し、67〜74℃で30時間反応を行い、計算量の水を留去した。反応終了後60℃に冷却し、炭酸ナトリウム23.51g(0.2218mol)を加えて中和し、60℃で30分間撹拌した後、徐々に120℃まで昇温し、ヘキサン400mLを回収し、濾過を行い、粗製の標記化合物894.74gを得た。ビグリュー管(20cm×1.5cmφ)を用いて減圧蒸留し、標記化合物725.14gを得た(収率89.4%)。ガスクロマトグラフィー分析より上記化合物の純度は99.1重量%であった。b.p.101〜104℃/17mmHg。
【0042】
(2) 3-sec-ブトキシ-1,2-プロパンジオール
70mLのオートクレーブに(1)で得た化合物29.2g(0.10mol)及びパラジウム触媒(2)2.2gを仕込み、水素圧7.0MPa下、190℃で15時間反応を行った。反応終了後、濾過により触媒を除去し、27.2gの粗生成物を得た。
ガスクロマトグラフィー分析の結果、この粗生成物中のモノアルキルエーテルとジアルキルエーテルの重量比は92:8であり、モノアルキルエーテル中には標記化合物以外に2-sec-ブトキシ-1,3-プロパンジオールが15重量%含まれていた。
【0043】
比較例2
〔市販触媒による3-sec-ブトキシ-1,2-プロパンジオールの製造〕
触媒としてパラジウム触媒(2)の代わりに市販の5重量%パラジウムカーボン粉末を2.9g用いる以外は実施例2と同様にして反応させたところ、モノアルキルエーテルとジアルキルエーテルの重量比は70:30であった。
【0044】
実施例5 2-(1-メチルヘプチルオキシ)エタノールの合成
70mLのオートクレーブに2-ヘキシル-2-メチル-1,3-ジオキソラン30g(0.17mol)及びパラジウム触媒(2)2.2g及びリン酸110mgを仕込み、水素圧10MPa下、150℃で5時間反応を行った。反応終了後、濾過により触媒を除去し、粗生成物を29.7g得た。
ガスクロマトグラフィー分析の結果、この粗生成物中のモノアルキルエーテルとジアルキルエーテルの重量比は88:12であった。
【0045】
比較例3
〔市販触媒による2-(1-メチルヘプチルオキシ)エタノールの合成〕
触媒としてパラジウム触媒(2)の代わりに市販の5重量%パラジウム担持アルミナを0.6g用いる以外は実施例3と同様にして反応させたところ、モノアルキルエーテルとジアルキルエーテルの重量比は25:75であった。
【0046】
【発明の効果】
本発明のパラジウム触媒はエーテル製造に際して反応活性が優れ、環状アセタールの水素化分解によるエーテルの合成においても、高選択的にモノエーテルを得ることができる。

Claims (4)

  1. 環状アセタールと水素とをメソポーラスアルミノシリケートに担持されたパラジウム触媒の存在下に反応させるエーテルの製法。
  2. メソポーラスアルミノシリケートの細孔径が2〜 10nm である請求項1記載のエーテルの製法。
  3. 環状アセタールが次の一般式 (1)
    Figure 0003802314
    〔式中、R 1 及びR 2 は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜 18 の直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素基を示し、R 3 〜R 6 は同一又は異なって、水素原子、水酸基、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜 14 の直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素基若しくはヒドロキシアルキル基を示し、nは0〜2の数を示す。ただし、R 1 とR 2 は同時に水素原子となることはなく、またR 1 とR 2 、R 3 とR 4 、及びR 3 とR 5 はそれぞれ一緒になって隣接する炭素原子とともに環状構造を形成してもよい。〕で表され、得られるエーテルが次の一般式 (2)
    Figure 0003802314
    〔式中、R1〜R6及びnは前記と同じ意味を示す。〕で表されるものである請求項1又は2記載のエーテルの製法。
  4. 環状アセタールが、一般式(1)において、R3=水素原子、R5=ヒドロキシメチル基かつn=0の化合物、又はR3=R5=水素原子、n=1、R4=水素原子かつR6=水酸基の化合物である請求項3記載のエーテルの製法。
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