JP3801537B2 - 鋼矢板係止金具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、道路工事などに際して、山側から道路上への落石を防止する土留め壁を、柱となるH鋼と壁材となる鋼矢板とを組み合わせて構築する場合などに利用出来る鋼矢板係止金具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
山側から道路上への落石を防止する土留め壁などは、適当間隔おきに立設されたH鋼間に、両端部が両側のH鋼のフランジ部間に嵌合するように略水平向きで鋼矢板を所要段数嵌入して構築されるが、土留め壁の柱として必要な強度を有するH鋼は、そのフランジ部間寸法が鋼矢板の厚さの数倍程度のものとなるので、フランジ部間に嵌入させた鋼矢板を道路側のフランジ部の内面に当接する位置に固定して、各鋼矢板を段積みしなければならないが、従来は、各鋼矢板を両側のH鋼の道路側のフランジ部に固定する手段として溶接が利用されていた。このような溶接利用の鋼矢板固定方法では、溶接技術を備えた作業者が必要であり、鋼矢板固定作業にかかるコストが高くつくばかりでなく、仮設土留め壁が不要になって解体する際に、多大の手間と時間を要する欠点があった。
【0003】
上記の溶接利用の鋼矢板固定方法の問題点を解決するために、特開2001−55731号公報に記載のように、鋼矢板の両側辺に形成された折り返し部に嵌合する両脚部と、この両脚部をつなぐ山形部とを備えた係止金具を利用して、適当間隔おきに立設されたH鋼間に嵌入される鋼矢板の両端部を前記H鋼に係止する鋼矢板固定方法が考えられた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の係止金具利用の鋼矢板固定方法では、H鋼のフランジ間の寸法ばらつき、鋼矢板の厚さのばらつき、係止金具自体の寸法のばらつき等が原因で、上記係止金具では、鋼矢板の両端がH鋼のフランジ内面に完全に圧接されず、鋼矢板のがたつきが残ったり、逆に係止金具の使用が寸法的に困難になる場合があり、特に鋼矢板のがたつきが残る場合は、図4の最上段の鋼矢板6で示すように、上段の鋼矢板が下段の鋼矢板の内側に落ち込む結果となり、H鋼に沿って完全に連続する土留め壁面を構成することが出来なくなる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記のような従来の問題点を解消し得る鋼矢板係止金具を提供することを目的とするものであって、その手段を後述する実施形態の参照符号を付して示すと、適当間隔おきに立設されたH鋼1A,1B間に、両端部が両側のH鋼1A,1Bの前後フランジ部7a,7b間に嵌合するように略水平向きで嵌入される鋼矢板2の両端部を前記H鋼1A,1Bに係止する係止金具10であって、本体4Aと楔4Bとの組み合わせから成り、本体4Aは、鋼矢板2の両側辺に形成された折り返し部5a,5bに嵌合する両脚部3a,3bと、この両脚部3a,3bをつなぐ山形部6とを備え、楔4Bは、前記本体4Aの山形部6の頂部6aとこの頂部6aに隣接する前記H鋼1A,1Bのフランジ部7bとの間に前記鋼矢板2の上下巾方向に打ち込まれて、前記鋼矢板2を他方のフランジ部7aに当接した姿勢に保持させる鋼矢板係止金具において、前記楔4Bは、その両楔作用面11a,11bの一方に、前記本体4Aの山形部6の頂部6aが嵌合する凹溝12が当該楔作用面11aの長さ方向に沿って形成された構成となっている。
【0006】
尚、上記の本発明を実施する場合の具体的な構成として、前記楔4Bの凹溝12は、その一端を楔4Bの薄肉側端部13aに開放すると共に他端を楔4Bの厚肉側端部13bより手前で閉じることが出来る。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好適実施形態を添付図に基づいて説明すると、図1及び図2において、1A,1Bは、土留め壁構築場所に適当間隔おきに支柱として立設されたH鋼であり、2は鋼矢板である。この鋼矢板2は、両端部が両側のH鋼のフランジ部間に嵌合するように略水平向きで所定高さ(土留め壁高さ)まで段積み状に嵌入されるもので、両側辺に折り返し部3a,3bを備えた従来周知のものである。
【0008】
10は本発明に係る係止金具であって、本体4Aと楔4Bとの組み合わせから成る。本体4Aは、1本の鋼線材を曲げ加工して構成したもので、略平行な2つの脚部5a,5bと、この両脚部5a,5bを一端において互いにつなぐ山形部6とから成り、両脚部5a,5bを含む仮想平面に対し山形部6を含む仮想平面が略直角に立ち上がっている。この係止金具4は、鋼矢板2の両端に、その両脚部5a,5bを鋼矢板2の両側辺折り返し部3a,3bに挿入することにより取り付けられる。このとき、山形部6の弾性を利用して両脚部5a,5bを互いに接近させるように変形させた状態で当該両脚部5a,5bを鋼矢板2の両側辺折り返し部3a,3bに挿入するように構成しておくことにより、山形部6の弾性復帰力により両脚部5a,5bを鋼矢板2の両側辺折り返し部3a,3bの内面に圧接させ、その摩擦力で係止金具4が鋼矢板2から不測に脱落するのを防止することが出来る。
【0009】
楔4Bは、プラスチック成形品から成るもので、その両楔作用面11a,11bの内、一方の楔作用面11aには、図3に示すように、当該楔作用面11aの長さ方向に沿って凹溝12が形成されている。この凹溝12は、前記本体4Aの山形部6の頂部6aが嵌合し得るもので、その一端が楔4Bの薄肉側端部13aに開放されると共に他端が楔4Bの厚肉側端部13bより手前で閉じられている。
【0010】
上記構成の係止金具10の本体4Aを鋼矢板2の両端に、その山形部6が同一側に突出するように取り付けた状態で、当該鋼矢板2を2本のH鋼1A,1B間に、係止金具4が各H鋼1A,1Bの土留め壁の山側(後ろ側)のフランジ部7bに隣接するように略水平向きで吊り降ろすのであるが、図示のように係止金具4が突出する側とは反対側の鋼矢板2の表面と係止金具4の山形部6の頂部6aとの間の距離が、H鋼1A,1Bの前後のフランジ部7a,7bの内面間距離より、後述のように楔4Bを使用出来る程度だけ短くなるように本体4Aが構成されており、最初(最下段)の鋼矢板2を吊り下ろしたならば、各係止金具10の本体4Aの山形部6の頂部6aとこれに隣接するH鋼1A,1Bのフランジ部7bとの間に係止金具10の楔4Bを、その凹溝12が本体4Aの山形部6の頂部6aに外嵌するように、上から下向きに薄肉側端部13aより圧入する。この結果、図4の下側2段の鋼矢板2で示すように、係止金具10の本体4Aを介して鋼矢板2がH鋼1A,1Bの道路側(前側)のフランジ部7aに圧接され、当該鋼矢板2が、その巾方向がH鋼1A,1Bの長さ方向(垂直方向)と平行な姿勢に固定される。
【0011】
上記のようにして、両端部に係止金具10の本体4Aを取り付けた所要本数の鋼矢板2を順次2本のH鋼1A,1B間に吊り降ろすと共に、吊り下ろした鋼矢板2ごとに、その両端部の係止金具10の本体4Aと楔4Bとで各H鋼1A,1Bに固定することにより、に示すように、各鋼矢板2がH鋼1A,1Bの道路側(前側)のフランジ部7aに沿って段積みされ、所要高さの土留め壁が構築される。解体時には、各係止金具10の楔4Bを上向きに打ち叩いて除去した状態で、各鋼矢板2を上から順次引き上げれば良い。
【0012】
尚、係止金具4の両脚部5a,5bに関しては、特開2001−55731号公報に記載のように、互いに平行な直線状で且つ、その両脚部5a,5bの外側面間距離が鋼矢板2の両側辺折り返し部3a,3bの内面間距離よりも若干大きいように構成すること、先端が外側に広がるハの字形で且つ、その両脚部5a,5bの先端外側面間距離が鋼矢板2の両側辺折り返し部3a,3bの内面間距離よりも若干大きいように構成すること、両脚部5a,5bを外側に膨らむ湾曲状で且つ、その両脚部5a,5bの湾曲頂部の外側面間距離が鋼矢板2の両側辺折り返し部3a,3bの内面間距離よりも若干大きいように構成すること等が可能である。
【0013】
又、上記実施形態では、両端に予め係止金具10の本体4Aを取り付けた状態の鋼矢板2の両端部を当該係止金具本体4Aと共に両H鋼1A,1Bの前後フランジ部7a,7b間に吊り降ろす鋼矢板設置方法を説明したが、図4及び図5に示すように、鋼矢板2を吊り上げる前か又は、両端を両H鋼1A,1B間に吊り降ろした直後で未だ吊り索から外していない状態に於いて、鋼矢板2の中間適当位置に左右一対の係止金具本体4Aを、その両脚部5a,5bを鋼矢板2の両側辺折り返し部3a,3bに嵌合させる方法で装着しておき、当該鋼矢板2が両H鋼1A,1B間に所定高さまで吊り降ろされた状態において、前記係止金具本体4Aを、その山形部6の両端近傍部をハンマーで打ち叩くなどの方法で鋼矢板2の両端側へ移動させてH鋼1A,1Bの前後フランジ部7a,7b間に嵌入させることも出来る。
【0014】
更に、係止金具本体4Aの山形部6は、鋼矢板2の両端から外側に突出する位置にある必要はなく、H鋼1A,1Bの前後フランジ部7a,7b間に嵌合する状態であれば、鋼矢板2の両端より内側に寄った位置にある状態で使用することも出来る。
【0015】
尚、係止金具10の本体4Aと楔4Bとは、紐、ロープ、チエン等の索条体で繋いでおくことも出来る。
【0016】
【発明の効果】
以上のように本発明の鋼矢板係止金具によれば、土留め壁の支柱となるように適当間隔おきに立設されたH鋼間に吊り降ろした鋼矢板を、この鋼矢板の両端部に取り付けた係止金具により、前記H鋼の前後フランジ部の内、道路側(前側)のフランジ部に沿った姿勢に固定させることが出来るのであるが、このとき、係止金具の本体と当該本体が隣接する前記H鋼の山側(後ろ側)のフランジ部との間に楔を打ち込んで、係止金具の本体を介して鋼矢板を前記H鋼の道路側(前側)のフランジ部に圧接させることが出来るので、H鋼のフランジ間の寸法ばらつき、鋼矢板の厚さのばらつき、係止金具の本体の寸法のばらつき等あっても、鋼矢板をして前記H鋼の道路側(前側)のフランジ部に当接する垂直姿勢に確実に固定することが出来る。
【0017】
即ち、上記のような寸法的ばらつきがあると、図4の最上段の鋼矢板で示すように、単に係止金具10の本体4Aのみを使用したのでは、鋼矢板の下辺が直下の鋼矢板の後ろ側に落ち込み、H鋼に沿って完全に連続する土留め壁面を構成することが出来なくなるが、本発明の楔併用の係止金具を使用すれば、従来のように鋼矢板とH鋼とを溶接しなくとも、溶接した場合と同様に、H鋼に沿って完全に連続する土留め壁面を容易に構成することが出来る。又、係止金具の本体サイズを小さめに構成しておくことが出来るので、この係止金具の本体を鋼矢板の両端部に取り付けた状態でのH鋼フランジ部間への吊り卸し作業も容易に行える。しかも本発明の構成によれば、係止金具の楔を打ち込むとき、当該楔が所定位置から横にずれて外れるようなことがなくなり、作業を容易且つ能率的に行える。
【0018】
尚、請求項2に記載の構成によれば、楔の打ち込み開始は容易に行えるにもかかわらず、楔の打ち込み過ぎが防止出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 A図は使用状態での一部切り欠き平面図であり、B図は鋼矢板吊り降ろし前と鋼矢板吊り降ろし後の状態を示す縦断側面図である。
【図2】 土留め壁を構築した状態での一部切り欠き縦断背面図(山側から見た図)である。
【図3】 楔の斜視図である。
【図4】 楔を併用して固定された下から2段分の鋼矢板と、楔を併用しなかった場合の鋼矢板とを示す側面図である。
【符号の説明】
1A,1B H鋼
2 鋼矢板
3a,3b 鋼矢板の両側辺折り返し部
4A 係止金具の本体
4B 係止金具の楔
5a,5b 係止金具本体の両脚部
6 係止金具本体の山形部
6a 同山形部の頂部
6b,6c 同山形部の両端
7a,7b H鋼の前後フランジ部
8 H鋼のウェブ部
10 係止金具

Claims (2)

  1. 適当間隔おきに立設されたH鋼間に、両端部が両側のH鋼の前後フランジ部間に嵌合するように略水平向きで嵌入される鋼矢板の両端部を前記H鋼に係止する係止金具であって、本体と楔との組み合わせから成り、本体は、鋼矢板の両側辺に形成された折り返し部に嵌合する両脚部と、この両脚部をつなぐ山形部とを備え、楔は、前記本体の山形部の頂部とこの頂部に隣接する前記H鋼のフランジ部との間に前記鋼矢板の上下巾方向に打ち込まれて、前記鋼矢板を他方のフランジ部に当接した姿勢に保持させる鋼矢板係止金具において、前記楔は、その両楔作用面の一方に、前記本体の山形部の頂部が嵌合する凹溝が当該楔作用面の長さ方向に沿って形成されている、鋼矢板係止金具。
  2. 前記楔の凹溝は、その一端が楔の薄肉側端部に開放されると共に他端が楔の厚肉側端部より手前で閉じている、請求項1に記載の鋼矢板係止金具。
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