JP3801051B2 - おから茶 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、おから茶及びそのエキスを少なくとも含む飲料に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般におからは豆腐製造の過程で大豆から豆乳を絞り取る際の副産物として取り出されるものであり、大半が廃棄物として処理される。しかし、その成分は豆乳を凌ぐほど豊かな栄養素を種々含んでいるので、廃棄物として処理する以外に、バランスの良い健康食品という観点からおからを有効に利用する技術が求められていた。
【0003】
そのような技術として、おからを原料に利用した飲料の製造方法が開示した「おから茶の製造方法」(特公平4−12702号公報参照)が挙げられる。しかし、前記の技術は、後述するように、大豆の有効な利用という観点からは十分ではない。
おからは、前記したように豆腐製造の過程で副産物として取り出されるものであるので、おからの原材料には大豆の種皮及び胚軸は含まれておらず、大豆の子葉のみが利用されたものである。大豆胚軸が除去されるのは、胚軸がにがみやエグミが強く、大豆製品の風味を損ないやすいことと、トリプシンの活性を阻害する好ましくない成分(トリプシンインヒビター)を含有していることが主な理由である。
【0004】
前記のように大豆胚軸の苦味やエグミが強いのは、イソフラボンが高濃度に含有されていることが原因であるが、その一方、イソフラボン配糖体はいわゆる植物性エストロゲンで、女性ホルモンと同様の作用がある。そのため、イソフラボン配糖体には、女性ホルモン不足の状態によって起こる更年期障害を軽減させる効果があるとともに破骨細胞が必要以上に骨を壊すことを抑制し、骨粗しょう症を予防するという効果がある。
また、動物実験ではイソフラボンを含む大豆たんぱく質が悪玉のLDL+VLDLコレステロールを有意に低下させ、善玉のHDLコレステロールを有意に上昇させることを認め、これらの成分が動脈硬化リスクの軽減に働いているとの報告がある。
更に、最近ではイソフラボン配糖体のゲニステインという物質に、腫瘍の生命維持に必要な血管新生を押さえる効果があり、それによりガン細胞の増殖を抑制することが明らかになった。
【0005】
このように、胚軸について、食品用途として利用すべき技術的方法を開発することが望まれる。前記の「おから茶の製造方法」(特公平4−12702号公報参照)によれば、おからだけを遠赤焙煎することで、イソフラボン等の有効成分を保持しつつ且つイソフラボン特有の渋味やえぐ味を改善し、香ばしく飲みやすい飲料を製造することができるが、大豆胚軸が含有するイソフラボン等の成分を如何にして有効に利用すべきかは開示されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、おからを茶として飲用を可能とならしめるとともに、大豆胚軸を用いイソフラボン等の有効成分を強化し、かつ風味良好なおから茶を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは種々検討の結果、大豆胚軸及びおからをそれぞれ単独に異なる焙煎条件下で焙煎し、所定の組成で混合すると、香ばしさ、香りなどの点において豊かな風味となり、イソフラボンの含有量を高めた飲料を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、焙煎した大豆胚軸を全体の重量1に対して重量比0.1〜0.6の割合で混合してなるものであって、茶としての飲用が可能なように構成したおから茶及びその製造方法である。
【0008】
本発明で用いる大豆胚軸は、種皮等の胚軸以外の部分が殆ど混入しておらず、またイソフラボンが損なわれていないものであれば、どのようなものでも良い。種皮、子葉、胚軸はそれぞれ成分や形状、かさ密度等が異なるので焙煎条件がそれぞれ異なり、胚軸に適する焙煎条件下で種皮、子葉等を含んだ混合物を焙煎すると、風味が損なわれて本発明の目的が達せられないからである。このように、焙煎状態を最良に行うために、胚軸とおからは別々に焙煎するのが望ましい。
【0009】
本発明において原料として用いられる前記の大豆胚軸としては、豆腐の製造工程中で分離・除去される胚軸を使用することができる。
具体的には、洗浄した丸大豆を水に浸漬して膨潤させ、剥皮して粗割した後、子葉部から篩別等して胚軸を得ることができる。
大豆を水に浸漬する時間は、吸水量が生大豆の120重量%程度になるまでとし、水温、気温によって異なるが8〜18時間位を要する。この浸漬大豆に加水しながら摩砕する。摩砕された大豆汁「呉」は約70〜105℃の温度で2〜20分間加熱して、次いで前記加熱した「呉」を濾過して豆乳とおからに分離する。
このように、豆腐の製造工程で分離或いは除去されて得られた胚軸及びおからを次のように焙煎し、本発明の飲料を製造する。
【0010】
おからの焙煎する一つの方法として、おからの焙煎に先だってまず、乾燥処理してから焙煎処理を行う。この乾燥処理には、例えば在来の低温除湿乾燥装置を用いて満足できる。低温除湿乾燥装置はヒートポンプ方式等により温熱された空気を循環送風機によって乾燥室内に循環されるように構成されたもので、乾燥室内には複数段の乾燥棚が装備されている。
この乾燥棚のトレーにおからを敷き詰め、約40℃で乾燥させる。当然、低温除湿乾燥装置は乾燥温度が選択できるため、40℃に限定しないが、できるだけゆっくりとした速度で水分含有率が9%程度まで均一に乾燥することが望ましい。
【0011】
次いで、このようにして乾燥したおからを焙煎処理する。この工程には、100℃以上に加熱できるものであればどのような装置も用いることができ、そのような装置として例えば、平釜、オーブン、ガスロースター、電熱ロースター、熱風ロースター等を挙げることができる。
この焙煎はおからに適宜揺動や反転作動を与えながら行われることが必要であり、表面が焦げてうす茶となる程度まで行われる。この時間は平釜のように目視可能な場合は目視により判断できるが、おおよそ、200℃程度の加熱で15分程度である。これにより、おからは独特の芳香を持つに至るとともに、湯を注ぐことによる養分浸出性を持つに至る。
また、前記焙煎方法以外の他の方法として、ガスロースター、電熱ロースター、熱風ロースター、遠赤外線装置を利用して前述の乾燥処理と焙煎処理を一気に行うこともできる。
【0012】
前述のように焙煎工程を経たおからはそのままでおから茶の必須成分して使用できるが、焙煎後粒子の細かいおからの炭化部分は茶として飲用するときににがみを強く出すため、必要に応じて篩機にかけて微粉末を除去する選別処理することもできる。
【0013】
胚軸の焙煎は、おからの焙煎方法と同様にして行うことができる。すなわち、乾燥処理してから焙煎処理を行う方法と、乾燥処理と焙煎処理を一度に行う方法によっても焙煎できる。胚軸の乾燥処理には、おからの乾燥に使用する装置、例えば前述した在来の低温除湿乾燥装置を用いることができる。また、焙煎処理には、100℃以上の加熱が可能な装置、すなわち平釜、オーブン、ガスロースター、電熱ロースター、熱風ロースター等を使用することができる。
胚軸の焙煎の度合いは、やや褐色の程度が強くなるまで行う。焙煎の程度が不足していると、トリプシンインヒビターが存在するので消化器に悪影響が生じる恐れがある。一方、焙煎の程度が過多であると苦味が強くなり、良好な風味が得られない。
【0014】
また、焙煎の効果や飲用時の抽出効率を考慮し、胚軸をローラーなどで所定の形状に変える処理や、粉砕機を使用して所定の粒径になるように粉砕したり、篩機等を利用して所定の粒径のものを選別処理することもできる。
このようにして得られた焙煎おからと焙煎胚軸は、焙煎胚軸が飲料素材全体の重量1に対して重量比0.1〜0.6の割合になるように混合する。焙煎胚軸の組成が全体の10重量%未満であると、イソフラボンの含有量に乏しい。一方、焙煎胚軸の組成が全体の60重量%超であると、イソフラボンの含有量が豊富である一方、焙煎の程度が過多であるとにがみが強くなり、良好な風味が得られない。
【0015】
このように、前記の組成の範囲内において、本発明のおから茶は、焙煎おから単独の場合と比較して、香ばしさ、香りなどの点において豊かな風味となり、イソフラボンの含有量を高めた飲料とすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、実施例及び比較例を挙げてこの発明を更に具体的に説明するが、この発明の範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0017】
【実施例】
(1)おから及び胚軸の焙煎
焙煎おからを以下の処方にて調製した。
まず、豆腐製造の過程から取り出されたおからを、低温除湿乾燥装置を用いて約45℃にて水分が約9重量%程度になるまで乾燥し、次いでオーブンを使用して約200℃で表面がうす茶色に焦げる程度に焙煎処理し、焙煎おからを調製した。
胚軸の焙煎は、以下の処方にて調製した。
豆腐の製造工程中で、大豆の子葉部から篩別して得られた胚軸を70℃の熱風で水分が約10重量%程度になるまで乾燥し、次いでガスロースターを使用して約160℃の熱風で焙煎し、やや褐色の程度が強くなるまで焙煎を行った。
【0018】
(2)おから茶の調整
前記の焙煎おから及び焙煎胚軸を表1及び表2に示す組成で混合し、本発明のおから茶及び比較例のおから茶を調製した。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
(3)風味評価
前記の実施例1〜6及び比較例1〜3のそれぞれのおから茶について風味評価を行った。すなわち、前記の実施例1〜6及び比較例1〜3についてそれぞれ、2人用の急須に小匙3杯(約6g)入れて約80℃の湯を入れて2回に分けて4杯分とり、これを5回繰り返して20杯分の飲料を調製した。このように調製した実施例1〜6及び比較例1〜3のそれぞれの飲料について、20人のパネラーに試飲してもらい、「甘み」「香り」「香ばしさ」「渋み」の観点から、「良い」「普通」「悪い」の三段階で評価をしてもらった。その結果を表3に示す。
【0022】
【表3】
【0023】
(4)イソフラボンの含有量を比較する。
前記の実施例1〜6及び比較例1〜3のそれぞれのおから茶100g当たりのイソフラボン含有量を高速液体クロマトグラフィにて分析した。その結果を表4に示す。
【0024】
【表4】
【0025】
前記の実施例1〜6及び比較例1〜3のそれぞれのおから茶について風味評価及びイソフラボン含有量の測定結果から、本発明のおから茶が風味及び生理活性物質(イソフラボン)の含有量において、比較例のおから茶よりもバランスが取れていることがわかる。
すなわち、比較例1及び比較例2のいずれも、風味においては実施例6よりも好評価が得られたが、イソフラボンの含有量においては格段に劣る。また、比較例3は、イソフラボンの含有量が実施例1〜6のいずれをも上回るものの、風味が著しく劣る。
これに対して、本発明のおから茶は風味及び生理活性物質(イソフラボン)の含有量のバランスが良いことがわかる。
【0026】
(5)製品保存安定性確認試験
前記の実施例1〜6のそれぞれのおから茶から製造した本発明の飲料について、保存安定性を調査した。
前記の実施例1〜6の本発明のおから茶6gを、それぞれ80℃のイオン交換水1リットルに投入して15秒間攪拌し、攪拌後1分間静置してからフィルターで濾過して茶葉を除去することにより、実施例1〜6のおから茶に含有される成分を抽出してなる飲料を調製した。次いで、それぞれの飲料を、充填温度80℃でPETボトルに無菌充填して製品とし、室温下に保存した。かかる製品について12ヶ月保存後の沈殿の発生状況を観察したところ、保存時の沈殿発生は生じていなかったので、保存安定性に優れることがわかった。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、香ばしさ、香りなどの点において豊かな風味となり、生理活性物質(イソフラボン等)の含有量を高めた飲料を得ることができ、産業廃棄物として処理されていたおから及び胚軸を健康志向の飲食物の分野において貴重な資源として簡易な方法で再利用することができる。
Claims (2)
- 焙煎した大豆胚軸と焙煎したおからとを含有し、かつ焙煎した大豆胚軸の組成比が全重量1に対して重量比0.1〜0.6であることを特徴とするおから茶(ただし、ぶどうの種子の焙煎物を含むものを除く)。
- 請求項1のおから茶又は該おから茶から抽出されたエキスを含むことを特徴とする飲料。
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