JP3799999B2 - 粘着加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や建築用など、各種に用いられる粘着加工を施された板形状の防音材、及びその粘着加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、ニードルフェルト、レジンフェルト、熱可塑フェルトなど各種の嵩高性フェルトや、アスファルト系、ゴム系のシート材料といった板形状の防音材は、自動車や建築用など、様々な場所や用途に使用されている。
【0003】
これらの板形状の防音材は、生産されたサイズそのままで使用されることもあるが、必要に応じて任意の形状にトリム加工されて供されることが多い。
【0004】
また、多くの場合、板形状の防音材を必要な箇所へ貼着施工するために、片面に粘着加工を施された後、必要に応じ任意の形状にトリム加工される。粘着加工を施された面は、そのままであると粘着能力が低下する、施工前に別の防音材と付着してしまう、ゴミなどが付着してしまう等の不具合があるため、離形紙を粘着加工面に貼着しておき、施工の直前に離形紙を剥がして、必要な場所に貼着施工される。
【0005】
しかしながら上記従来の粘着加工であると、任意形状にトリム加工された後の端材にも粘着剤が付着しているため、フェルト系の防音材の場合には、原材料としてリサイクルすることが困難である。これは粘着剤がフェルトのフリースを作成するために繊維を一度解繊するが、この解繊機に粘着剤が付着して繊維が絡まってしまうなどの不具合を生じるためである。従って粘着剤が付着した端材は、産業廃棄物として処理しなければならない。また、施工時に剥がされる離形紙も、大量に発生する廃棄物となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、従来と同様の粘着加工を施されながらも、端材がリサイクル可能であり、しかも離形紙を必要としない防音材、及び粘着加工方法の開発を課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決せんとして、本発明者らは鋭意研究の結果、板形状の防音材の片面には離型剤コーティングを、残る片面にはトリム加工後に粘着加工を施すことにより、上記課題をことごとく解決することを見出したものであり、しかして本発明の要旨は、以下に存する。
【0008】
ニードルフェルト、レジンフェルト、熱可塑フェルト、単層アスファルト系制振材、複層アスファルト制振材、単層ゴムシート、複層ゴムシートから選ばれる1種類、若しくは組み合わされた板形状防音材を(1)任意の一定サイズに裁断し、この片面のみ離型剤を塗布、要すれば加熱乾燥させることにより片面に離型剤コーティングを行ない、(2)任意の形状にトリム加工を行ない、(3)離型剤を塗布していない残りの片面に粘着剤を付着させ、粘着加工を施してなることを特徴とする粘着加工方法。以下に詳細に説明する。
【0009】
本発明になる板形状の防音材は、繊維原料からなる嵩高性フェルト系の防音材、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等の合成樹脂を従来公知の方法により発泡成型して得られるフォーム材、及びアスファルト、ゴムを主成分とするシート状の防音材、若しくはこれらを適宜組み合わせ、積層されたことによる防音材からなる。フェルト系の防音材及びフォーム材は主として吸音性や断熱性に優れ、アスファルトやゴムを主成分とする防音材は主として遮音性、制振性に優れるため、両者は単独でも、必要に応じて組み合わせても使用される。
【0010】
フェルト類は、天然繊維、化学繊維等を原料とした織布、不織布等を一度解繊し、嵩高性に加工したものである。レジンフェルトは、解繊後に熱硬化性樹脂を散布して、加熱により繊維間を固着したものであり、ニードルフェルトは、先端が釣り針形の針(ニードル)多数を、繊維の間に多数回刺すことにより、繊維相互を絡ませて固めたものである。
【0011】
合成樹脂フォーム材は、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム、塩化ビニルフォーム、酢酸ビニルフォーム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フォーム等が例示できる。
【0012】
アスファルトやゴムのシートは、アスファルトやゴムに各種の充填材を混合してシート状に加工したものである。ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、セミブローンアスファルト、変性アスファルト、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、加硫ゴム、再生ゴムなどが使用されている。
【0013】
本発明においては、生産されたフェルト系防音材、アスファルト、ゴム系防音材などの長尺形状のものは、適宜規格サイズに裁断された板形状のものを、合成樹脂フォーム材であれば、スラブフォームの板形状材を使用して、まず片面に離型剤をコーティングする。使用できる離型剤には特に制限はなく、従来公知のシリコン系離型剤などが使用できる。離型剤は常温でも乾燥して膜を形成するものもあるが、時間を要する場合には加熱乾燥を行なって短時間に離型剤を乾燥させることができる。加熱温度や加熱時間に関しては、使用する離型剤により適宜決められる。
【0014】
続いて、必要に応じて防音材を使用する箇所に合わせてトリム加工を行なう。例えば建築用など、特にトリム加工を要しない場合には、当然のことながら不要である。トリム加工は特に制限無く、従来公知の加工機が使用できる。本発明は平面的な板形状の防音材のトリムを想定しているが、多少の立体形状に成型することも可能である。この場合には加熱加圧成型プレスにより形状を成型して後、トリム加工を施すか、成型と同時にトリムを行なうことも可能である。
【0015】
必要に応じ、トリム加工の施された防音材は、既に片面に離型剤が塗布されているが、離型剤が塗布されていない残りの片面に、粘着剤を塗布する。粘着剤としては常温においてタック性を顕現するものであれば、特に制限無く、水系粘着剤、溶剤系粘着剤、エマルジョン系粘着剤、ホットメルト系粘着剤等、従来公知の各種の粘着剤が使用できる。これらの粘着剤の塗布方法としても特に制限はなく、刷毛塗り、ローラー塗布、スプレー塗布、カーテンフローコータ、ホットメルトアプリケータ等、従来公知の各種の方法が使用できる。防音材の片面全面に粘着剤を塗布しても良いが、必要な粘着力を得られ、かつ防音性能に低下を来さないのであれば、粘着剤は防音材片面の全面に塗布する必要はなく、部分的に塗布することも可能である。部分塗布の方法としては、帯状に塗布する方法、格子状に塗布する方法、スポット的にランダムに塗布する方法などが挙げられる。
【0016】
粘着剤の塗布量に関しては特に制限はなく、防音材自身の重量や、貼着される相手の材質、場所の角度、温度、面積等により、適宜決められる。粘着剤は、塗布された後乾燥させるが、常温による自然乾燥の他、加熱乾燥、温風による強制乾燥等、適宜使用する粘着剤に合わせて乾燥方法が選択される。。
【0017】
また、離型剤、粘着剤の塗布面が共に透明なフィルム状を呈している場合には、防音材のどちら側に離型剤が、どちら側に粘着剤が塗布されているか判別がつきにくい。このため、離型剤又は粘着剤、若しくは両方に着色がなされていれば、離型剤塗布面であるか、粘着剤塗布面であるかの判別が容易となり、輸送梱包状態から、必要箇所への防音材の貼着作業が非常に容易となる。着色方法は特に限定されるものではなく、染料、顔料、インキ、絵の具、塗料等を適当量混合させる方法など、離型剤や粘着剤自身の性能を低下させるものでなければ、任意に選択して着色できる。
【0018】
従来の粘着剤が塗布された防音材の場合には、粘着剤層の保護と作業能率のため、粘着剤塗布面に離形紙が貼られていた。本発明の防音材の場合には、片面に離型剤が塗布されているため、粘着剤塗布面に対して、離型剤塗布面を合わせることにより、この両者は積層密着しても、貼着一体化することはなく、容易に分離が可能であり、しかも粘着剤は粘着性能を保持している。このため、本発明の防音材は、例えば次のようにした荷姿を形成する。輸送用箱の中に、まず最初の1枚目を離型剤塗布面を下にして載置する。すると上面は粘着剤塗布面となるため、2枚目は1枚目と同様の向きで重ねると、1枚目の粘着剤塗布面と2枚目の離型剤塗布面が重なり、2枚目の粘着剤塗布面が上面となる。以後同様に積層することで、離形紙を使用することなく、粘着剤を保護しつつ、防音材の多数を梱包状態とすることができる。上記例では1枚目に、離型剤塗布面を下にしたが、輸送箱の下面が離型効果があるのであれば、逆に粘着剤塗布面を下にしてもよく、当然その場合には2枚目以降も粘着剤塗布面が下となる積層順序になる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の理解に供するため、以下に実施例を記載する。いうまでもなく、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0020】
【実施例1】
天然繊維/化学繊維を原料とし、これらを解繊してフリースを作成し、熱可塑性樹脂繊維をバインダー樹脂として混合し、厚さ10mmの板状の防音材を成形した。この防音材を1.5m×1.5mサイズに裁断し、この片面全面にシリコン系離型剤をスプレー塗布した。塗布面に約60℃の温風乾燥を施し、トリム型により一定形状にトリム加工した。加工された防音材の、離型剤が塗布されていない片面の約7割の面積に、水系粘着剤をローラー塗布により帯状に塗布して、塗布面に約60℃の温風乾燥を施して乾燥させ粘着防音材1を得た。
【0021】
【実施例2】
ニードルパンチング加工によりニードルフェルト原反を形成し、厚さ10mmの板状の防音材を成形した。この防音材を1.5m×1.5mサイズに裁断し、この片面全面にシリコン系離型剤をスプレー塗布した。塗布面に約60℃の温風乾燥を施し、トリム型により一定形状にトリム加工した。加工された防音材の、離型剤が塗布されていない片面の約8割の面積に、溶剤系粘着剤をローラー塗布により格子状に塗布して、塗布面に約60℃の温風乾燥を施して乾燥させ粘着防音材2を得た。
【0022】
【実施例3】
ストレート/ブローン混合アスファルトを溶融し、これに炭酸カルシウム、マイカ、繊維充填材、石油樹脂を混合して混練り、カレンダー加工を経て、厚さ4mmのアスファルト系防音材を得た。このアスファルト系防音材を1.5m×1.5mサイズに裁断し、この片面全面にシリコン系離型剤をスプレー塗布した。塗布面に約30℃の温風乾燥を施し、トリム型により一定形状にトリム加工した。加工された防音材の、離型剤が塗布されていない片面全面に、溶剤系粘着剤をロールコータ塗布により塗布して、塗布面に約40℃の温風乾燥を施して乾燥させ粘着防音材3を得た。
【0023】
【比較例】
実施例1〜3で使用した防音材の片面には離型剤を塗布せず、各防音材の粘着剤塗布面に離形紙を貼着して、粘着防音材4〜6を得た。
【0024】
【試験方法】
1) 荷姿梱包試験
防音材1〜3は、離型剤塗布面と粘着剤塗布面とを合わせて、20枚積層し、防音材4〜6は離形紙貼着面を全て上にして同様に20枚積層し、30℃雰囲気の環境試験室に30日間放置した。
2) 貼着試験
上記試験を終了後に、垂直の自動車鋼板面に各防音材を貼着し、軽く手により押さえて、24時間後に剥がれ、脱落がないか、観察した。
【0025】
【結果】
試験結果は以下の通りであった。
但し、荷姿梱包は放置期間後、防音材相互のブロッキング(密着一体化)がないこと、分離が容易なこと、分離後に粘着層の脱落がないことを条件とし、これらが全て満たされれば○とした。
貼着は、貼着24時間後、ずれ、剥がれ、脱落がないこと、手で軽く剥がしてみて、容易に剥がれないことを条件とし、これらが全て満たされれば○とした。
【0026】
【発明の効果】
本発明になる粘着防音材は、1)離形紙が不要、若しくはほとんど不要となる、2)トリム加工後の端材には、粘着剤が付着していないため、原材料としてリサイクルが可能である、3)従来の離形紙貼着と比較しても同等以上の貼着作業性を有する、等の優れた特徴があるため、今後益々重要となる、ゴミ問題解決への一助足り得るものであり、環境に優しい防音材の実現を可能とするものである。
Claims (1)
- ニードルフェルト、レジンフェルト、熱可塑フェルト、単層アスファルト系制振材、複層アスファルト制振材、単層ゴムシート、複層ゴムシートから選ばれる1種類、若しくは組み合わされた板形状防音材を(1)任意の一定サイズに裁断し、この片面のみ離型剤を塗布、要すれば加熱乾燥させることにより片面に離型剤コーティングを行ない、(2)任意の形状にトリム加工を行ない、(3)離型剤を塗布していない残りの片面に粘着剤を付着させ、粘着加工を施してなることを特徴とする粘着加工方法。
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