JP3797794B2 - リンゴの鮮度保持包装体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リンゴが合成樹脂フィルムで包装された後も、リンゴが適正な酸素、二酸化炭素雰囲気下で呼吸量を大気中より低下させることによって、鮮度保持をさせるための包装体に関するものである。さらに詳しくは低酸素状態でリンゴの呼吸作用を抑制しながらも嫌気呼吸させないような酸素雰囲気を保持し品質の劣化を抑えるような条件を保持するリンゴの鮮度保持包装体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リンゴは冬の代表的な果物で、とりわけフジは消費者にとって食味が良く、さらには生産者にとって収穫後の低温貯蔵性が良く長期間収益が見込めるため、消費者、生産者の双方で最も人気が高い。庫内の温度とガス雰囲気を調整できるCA(Controlled Atomosphere)貯蔵庫の出現により、フジの収穫期が12月にもかかわらず、7月まで出荷が可能になった。 ただし、無包装やパンチ穴のあいた袋で出荷したリンゴは、呼吸を抑制していない為、老化現象である味のボケ、皮の褐変などの劣化が早い。
従来、酸素濃度は3%、二酸化炭素濃度3%の低酸素、低二酸化炭素環境が良いと言われている。絶えず庫内を目的に応じたガスを供給できるCA貯蔵庫ならば調整可能であるが、これは産地においての鮮度保持する場合に限定され、袋で流通する場合この濃度に保つ事が難しい。例えば無孔ポリエチレン袋で密封した場合、5℃以下で流通しないと呼吸に必要な酸素が不足し無酸素呼吸になるなど実際の販売には不向きである。大気の状態より、酸素濃度を低く、二酸化炭素濃度を高くすると呼吸が抑制されることは知られていたが、どの程度抑制することが良いのか規定するものが無かった。抑制しすぎると生理障害を引き起こし、抑制しなければ老化が進行してしてしまう。
また、リンゴは呼吸の際にエチレンも放出している。このエチレンも老化現象を引き起こすもので鮮度保持には邪魔になる成分である。対処法は、袋で流通する場合エチレンを分解または吸着する薬剤を同封するか、袋にパンチ穴を開けて換気する方法がある。吸着剤は吸着量に限界があるため少量のエチレンにしか効果が無い。また、分解剤は効果があるものの、高価なため適用が難しい。パンチ穴は換気しているためエチレン濃度は低いが、酸素、二酸化炭素濃度が大気と同じで呼吸を抑制出来ず、さらには水分も蒸散し、結局劣化してしまう。ただし、本発明者らの試験で本発明の条件では、袋内にエチレンは存在するものリンゴの保存性に影響みられないことがわかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、リンゴの味のボケ、皮の褐変などの劣化を防ぎ、新鮮さを維持する包装体を供給することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、合成樹脂フィルムで包装したリンゴの鮮度保持包装体において、袋中の酸素濃度を3〜12%、二酸化炭素濃度を8〜15%にし、かつリンゴの呼吸量を大気中での呼吸量の30〜80%に抑制して鮮度保持するンゴの鮮度保持包装体である。好ましくは、リンゴ1gあたりの合成樹脂フィルムの酸素透過量が1.5〜5cc/24hr・atmであり、合成樹脂フィルムが、平均孔径30〜100μmの穴を有するリンゴの鮮度保持包装体である。
【0005】
【発明の実施の形態】
リンゴの鮮度を保持するためには、袋の酸素濃度3〜12%、二酸化炭素濃度8〜15%が良い。リンゴは収穫後も呼吸し、自分の栄養素を消費しそのエネルギーで生存している。包装してもそのフィルムのガス透過量が高過ぎると袋内は大気と同じようなガス状態になり味のボケ、皮の褐変などの劣化が発生する。リンゴを鮮度保持するには、袋中の酸素濃度は3〜12%が好ましい。酸素濃度が3%未満では、リンゴが嫌気呼吸を起こしやすく、アルコール臭を発生する。また、12%を超えると呼吸抑制効果が薄い。袋中の二酸化炭素濃度は8〜15%が好ましい。二酸化炭素濃度が8%未満では呼吸抑制効果が薄く、15%を超えると呼吸抑制効果があるものの嫌気呼吸を誘発し易く、またエチレン分解剤を同封しない場合はエチレンの蓄積による味のボケや皮の褐変などの劣化を発生する。 エチレンが多く発生するツガルリンゴや、長期間貯蔵し成熟が進んだリンゴなどにはエチレン分解剤を同封した方が良い。
【0006】
リンゴの呼吸量は以下のように測定した。呼吸量は、目的のガス濃度例えば大気の場合酸素20.9%、二酸化炭素ほぼ0%、窒素79.1%の混合ガスをリンゴの入った容器に流入し、流入前と流出後の濃度をガスクロマトグラフで測定し、濃度差にガス流量と時間をかけて酸素消費量、二酸化炭素排出量を算出し、これを呼吸量とした。また、流入する混合ガスの濃度は任意に調整できるため、袋で保存したときの鮮度保持に適したガス濃度でリンゴの呼吸量を計測した。呼吸量は、品温や周囲のガス雰囲気、さらには表面積の大小、傷の有無等によって変化するため、傷の無いリンゴを同時期に入手し保存性と呼吸量を計測した。その結果、呼吸量を30〜80%に抑制することで鮮度保持可能であることが分かった。呼吸量が30%未満にするのは3℃以下のCA貯蔵庫や氷温貯蔵庫でのみ実現可能で、袋ではかなり難しい。また、80%を超えると、味のボケや皮の褐変などの劣化が発生し大気中の保存性と比較した場合とほとんど差が無かった。
【0007】
合成樹脂フィルムの酸素、二酸化炭素透過量はフジリンゴ1gあたり1.5〜5cc/24hr・atmが好ましい。酸素透過量が1.5cc/24hr・atm未満ではフジリンゴの呼吸に必要な酸素を袋内に供給できずに嫌気呼吸による異臭を発生し、さらには低酸素、高酸化炭素状態になり皮の褐変が発生する。5cc/24hr・atmを超えると供給過多で酸素濃度が15%を超え、呼吸抑制効果が弱く大気中の保存性と比較した場合とほとんど差が無かった。
【0008】
通常フィルムのガス透過量を調節するにはフィルムの選択透過性を用いてフィルムの厚さを調節する方法とフィルム表面に微孔を設ける方法がある。
実際に使用するためには鮮度保持をする条件以外に、易包装性、防曇性、価格などを考慮することが多く、さらには目的のガス濃度に調整し易くするために本発明では微孔を設けた有孔合成樹脂フィルムを用いた。
【0009】
本発明に用いるフィルムとしては、リンゴの包装に用いることのできるものであれはどのようなものであっても差し支えないが、一般には無延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレン、ポリエチレン等が用いられるが、これ等以外のポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート等のフィルム、さらにはこれらの複合フィルムであっても良く、さらには、これらのフィルム表面に接着層を設けたものでも、防曇処理したフィルムであっても何等差し支えはない。また、これらのフィルムの厚さは通常20〜60μmのものが用いられる。さらに、これらのフィルムは透明であっても、不透明であっても良く、また表面に印刷を付したものであっても何等差し支えはない。ただし、本発明のガス濃度を維持する為にはヒートシール性を有したフィルムでシールにより完全密封しなければならない。
また、フィルムの透過量はその材質によって一義的に決まっており、厚さに反比例する。包装されるリンゴの重量に応じてその厚さを調整することも可能であり、不足するときには20〜150μm、好ましくは30〜100μm程度の孔をフィルムに数個〜数百個/m2設け、リンゴ1g当たりのO2、及びCO2透過量が1.5〜5cc/24hr・atmに調整することも可能である。
【0010】
有孔フイルムで調整するときには、孔部の平均径はできるだけ小さいことが望ましく、一般的には20〜150μm、好ましくは30〜100μm程度である。孔径はできるだけ小さいことが望ましいが、20μm未満では有孔フイルムの生産性が低下する。また、平均孔径が150μmを超えると、適正な開孔面積比率を得るに必要な孔数が減少して、鮮度保持の品質精度に不安が生じる。また、孔の形状は、円形や四角または三角形など、どのような形状であってもよく、長径方向の平均径が150μm以下であれば何等差し支えはないが、円形が開孔作業性等の面より望ましい。
また、リンゴ包装袋に用いる有孔フイルムの袋当たりの孔の個数は開孔面積比率と平均孔径より算出されるが、できる限り複数個とすることが望ましい。内容物の付着や外的条件たとえば値段表の添付等で孔がふさがれてしまう場合があるので、鮮度を保証するには複数個の孔が好ましく、さらに袋あたり5個以上の孔をもち、孔1個あたりの影響度を20%以下にすることが望ましい。また、リンゴの包装袋としては、三方シール袋、四方シール袋またはガゼット袋などの形態の袋であっても何等差し支えなく、さらには、トレー、カップ等にリンゴを充填し、これを包装袋で包装する形態のものであってもよい。
【0011】
【実施例】
《実施例1》
内寸が160mm×270mmでフジリンゴ1gあたりの酸素透過量が1.2cc/24hr・atm、厚さが30μmの延伸ポリプロピレンでフジリンゴ500g(Mサイズ2個)充填した密封包装体を12℃で保存した。この時の保存中の酸素濃度、二酸化炭素濃度と保存性、並びに同時期に入手したフジリンゴで同じ酸素濃度、二酸化炭素濃度での呼吸量を表1に記載した。
《実施例2》
内寸が160mm×270mmでフジリンゴ1gあたりの酸素透過量が4.8cc/24hr・atm、厚さが30μmの延伸ポリプロピレンでフジリンゴ500g(Mサイズ2個)充填した密封包装体を12℃で保存した。この時の保存中の酸素濃度、二酸化炭素濃度と保存性、並びに同時期に入手したフジリンゴで同じ酸素濃度、二酸化炭素濃度での呼吸量を表1に記載した。
《実施例3》
内寸が160mm×270mmでフジリンゴ1gあたりの酸素透過量が2.2cc/24hr・atm、厚さが30μmの延伸ポリプロピレンでフジリンゴ500g(Mサイズ2個)充填し、さらに酸素10%、二酸化炭素10%の混合ガスで置換した密封包装体を12℃で保存した。この時の保存中の酸素濃度、二酸化炭素濃度と保存性、並びに同時期に入手したフジリンゴで同じ酸素濃度、二酸化炭素濃度での呼吸量を表1に記載した。
【0012】
《比較例1》
包装しないフジリンゴの12℃で保存した。大気中での呼吸量を表1に記載した。
《比較例2》
内寸が160mm×270mmでフジリンゴ1gあたりの酸素透過量が0.5cc/24hr・atm、厚さが30μmの延伸ポリプロピレンでフジリンゴ500g(Mサイズ2個)充填した密封包装体を12℃で保存した。この時の保存中の酸素濃度、二酸化炭素濃度と保存性、並びに同時期に入手したフジリンゴで同じ酸素濃度、二酸化炭素濃度での呼吸量を表1に記載した。
《比較例3》
内寸が160mm×270mmでフジリンゴ1gあたりの酸素透過量が6.5cc/24hr・atm、厚さが30μmの延伸ポリプロピレンでフジリンゴ500g(Mサイズ2個)充填した密封包装体を12℃で保存した。この時の保存中の酸素濃度、二酸化炭素濃度と保存性、並びに同時期に入手したフジリンゴで同じ酸素濃度、二酸化炭素濃度での呼吸量を表1に記載した。
【0013】
【表1】
【0014】
【発明の効果】
本発明の包装体により、リンゴの呼吸を抑制し、リンゴが褐変することなく、かつ食味も良く、さらには嫌気呼吸による異臭発生を防止できるように保存できる。
Claims (1)
- 合成樹脂フィルムよりなる包装袋で包装したリンゴの鮮度保持保存方法において、合成樹脂フィルムが平均孔径30〜100μmの穴を有し、リンゴ1gあたりの合成樹脂フィルムの酸素透過量が1.5〜5cc/24hr・atmであり、袋中の酸素濃度を3〜12%、二酸化炭素濃度を8〜15%にし、かつリンゴの呼吸量を大気中での呼吸量の30〜80%に抑制して鮮度保持することを特徴とするリンゴの鮮度保持保存方法。
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