JP3797190B2 - プラスチック気泡シートの製造方法および製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック気泡シートの製造方法および製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック、代表的にはポリエチレンを材料とし、真空成形により多数のキャップを形成したキャップフィルムと、平坦なバックフィルムとを貼り合わせ、多数の密閉された空気室を形成したプラスチック気泡シート(以下単に「気泡シート」という)が、主として緩衝包装の分野で、また一部は断熱材として使用されている。
【0003】
この種の気泡シートは、通常、図1に装置の概要を示すように、2台の押出機(1A,1B)と2本のT−ダイ(2A,2B)とを使用し、それらから出る溶融プラスチックフィルムの一方をキャップフィルム用フィルム(8A)、他方をバックフィルム用フィルム(8B)とし、キャップフィルム用フィルムを真空成形用の多数の凹みと真空吸引手段とを有する真空成形ロール(4)によりキャップフィルムに成形し、その裏面すなわちキャップの底面にバックフィルム用フィルムをバックフィルムとして貼り合わせ、加圧ロール(5)で完全に一体にして、製造されたプラスチック気泡シート(9)を剥離ロール(6)で真空成形ロールから剥がし取って製品を得る、という手順によっている。
【0004】
この従来の製造方法では、2本のT−ダイを設置するため、それら同士の、またはそれらと真空成形ロールとの取り合いの問題があって、ダイリップの開口を最適の位置に置くことは困難である。ダイリップは真空成形ロールから相当離れた位置にあって、「エアギャップ」が長く、フィルムが加工を受けるまでに冷えてしまうので、T−ダイを出る樹脂温度は、それを見込んで若干高くする必要がある。プラスチックの塑性加工において、樹脂温度は必要な限度で低い方がよいことは、いうまでもない。
【0005】
図1のような、T−ダイが2本並ぶ構成であると、それらから出る2枚の溶融フィルムが真空成形ロールに向かうときになす角度は、大きくならざるを得ない。結果として、バックフィルムがキャップフィルムにくらべて、必要以上に早く真空成形ロールに触れてしまい、その裏面にバックフィルムが接触するまでの回転角が大きく、従ってその間に経過する時間が、必要以上に長くなる。真空成形ロールはなるべく低い温度で操業したいが、そうすると、キャップフィルムにバックフィルムが接触するときにキャップフィルムが冷えすぎてしまうため、相互の融着が不完全になりがちである。いきおい真空成形ロールを保温して、その表面温度を高温に、ポリエチレンを材料とする場合には80℃程度にせざるを得ないが、そうすると真空成形ロールからの製品気泡シートの剥離が悪くなり、高速で運転することができない。
【0006】
一方、出願人は、ポリエチレンとくにLDPEを材料とする気泡シートの製造において、キャップフィルムをいったん冷却して延伸し、再度加熱して塑性を回復させてから成形に向ける、「冷却再加熱法」を開発して実施してきた。これにより、フィルムの強度を高め、剛性のある(腰の強い)気泡シートを製造することができる。上記した従来技術は、冷却再加熱法との対比において「ダイレクト法」と呼ばれる。
【0007】
しかし、近年新しい材料たとえばLLDPEやメタロセン触媒を用いたポリエチレンなどが台頭し、延伸を施さなくても十分な強度をもった製品が得られるようになった。そこで、冷却再加熱法にくらべてエネルギー消費の少ないダイレクト法の採用が、再度注目されるようになった。
【0008】
出願人はまた、気泡シートのフィルムの厚さと気泡の圧縮強度との関係について調べ、現在、常法により製造されている気泡シートは、材料として押し出されたキャップフィルム用フィルムが本来有すべき強度より、はるかに低い強度しか示していないことを知った。そしてこの点を改善する策として、キャップシートとするプラスチック材料に結晶性のポリオレフィンを使用し、押し出された溶融フィルムを冷却して結晶化温度領域内の温度にし、この温度領域で真空成形を行なってキャップシートを得る、という製造方法を開発し、すでに提案した(特願2001−170624号)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の一般的な目的は、気泡シートの製造技術に関する上記の変遷、すなわち加熱・冷却法からダイレクト法への回帰に対応し、従来のダイレクト法がもっていた欠点を解消し、フィルムを供給するT−ダイのダイリップを真空成形ロールに関して最適の位置に開口させることができ、したがってダイリップから真空成形ロールまでのエアギャップを短くでき、樹脂温度をあまり高くする必要がなく、2枚の溶融フィルムが真空成形ロールに向かう角度を適切に選ぶことができ、かつ、真空成形ロールの表面温度を従来より低くすることができ、それによって生産性を向上させることが容易な気泡シートの製造方法および製造装置を提供することにある。
【0010】
本発明の特定的な目的は、出願人が最近開発した気泡シートの改良技術を、上記の一般的な目的を達成する技術に適用し、同じフィルム厚さならより強度が高く、同じ強度でよければより薄いフィルムで間に合う気泡シートの製造技術を確立することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の一般的な目的を達成するプラスチック気泡シートの製造方法は、図2に示すように、2本のダイリップからプラスチックを溶融押出しし、押出されてできた2枚のフィルムの一方をキャップフィルム用フィルム(8A)とし、他方をバックフィルム用フィルム(8B)とし、キャップフィルム用フィルを、真空吸引される多数の凹みをそなえた真空成形ロール(4)で成形して多数のキャップをもったキャップフィルムとし、バックフィルム用フィルムを、真空成形ロール(4)上にあるキャップフィルムに加圧ロール(5)により貼りつけて、多数の密閉された空気室を形成することからなるプラスチック気泡シートの製造方法において、1個のダイヘッド(3)に設けられ、小さな距離をおいて平行に走る2本のダイリップ(31A,31B)が真空成形ロール(4)に近接した位置に開口する装置を使用すること、図3にみるように、加圧ロール(5)を真空成形ロールのほぼ真横から接触させるが、キャップフィルム用フィルム(8A)のみならずバックフィルム用フィルム(8B)をもこれらロールの接触点から上に向かう垂線(V)よりは真空成形ロール側に傾いた方向から供給すること、および真空成形ロール表面の温度をほほ常温に保って貼り合わせを行なうことを特徴とする。
【0012】
本発明の特定的な目的を達成する気泡シートの製造方法は、少なくともキャップフィルムとするプラスチック材料として結晶性のポリオレフィンを使用し、キャップフィルム用フィルムが真空成形ロールに接触するに先立ってこれを冷却して結晶化温度領域内の温度までフィルムの温度を下げ、結晶化の進行に伴う発熱のためにフィルムの温度低下が緩やかになっている間に真空成形を行なってキャップフィルムを得、バックフィルムと貼り合わせることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施形態】
上記の一般的な目的に資する製造方法を実施するための本発明の装置は、図2に見るように、プラスチックを溶融押出しする押出機(1)、2本のダイリップ、押し出された2枚のフィルムの一方すなわちキャップフィルム用フィルムを真空成形によりキャップフィルムとするための、多数の凹みと真空吸引手段をそなえた真空成形ロール(4)、2枚のフィルムの他方すなわちバックフィルム用フィルムを、キャップフィルムのキャップの底面にバックフィルムとして貼り付けるための加圧ロール(5)、製造されたプラスチック気泡シートを真空成形ロールから剥離するための剥離ロール(6)および製品を巻き取るための巻取手段(図示してない)を必須構成部分とするプラスチック気泡シートの製造装置において、上記2本のダイリップ(31A,31B)が1個のダイヘッド(3)に設けられ、ダイヘッドの形状が、ダイリップが真空成形ロールに近接した位置に開口するとともに、キャップフィルム用フィルム(8A)のみならずバックフィルム用フィルム(8B)も、図3にみるように、真空成形ロール(4)と加圧ロール(5)との接触の接触点から上に向かう垂線(V)よりは真空成形ロール側に傾いた方向から供給することを可能にするものであることを特徴とする。
【0014】
上記の特定的な目的に資する製造方法を実施するための本発明の装置は、図4に見るように、吐出されたキャップフィルム用フィルムに対する冷却用のエアーナイフ(ともに図示してない)を備え、フィルムの、前記した結晶化温度領域への冷却を行なってからキャップフィルムの真空成形を行なうように構成した製造装置である。この装置に使用するダイヘッドとしては、図5に示したような構造をもつものが好適である。すなわち、2本のダイリップ(33A,33B)が、溶融プラスチックの吐出方向に関して高低差をもって設けられたダイヘッド(3’)を使用し、低い側の、つまりダイヘッドに近い位置で開口するリップ(33A)からキャップフィルム用フィルム(8A)を吐出し、エアーナイフ(34)で冷却して真空成形ロール(4)に向かわせ、一方、高い側の、つまりダイヘッドから遠い位置で開口するリップ(33B)からバックフィルム用フィルム(8B)を吐出するように構成したものである。これにより、前記した傾きをもつフィルム供給が可能になる。
【0015】
加圧ロールに対しては、これをバックアップする形で、1本または数本(通常は、図示した2本が適切である)の、内部に冷水を通す冷却ロール(7)を設けて、加圧ロールの表面を冷却することが好ましい。加圧ロールは、一般に鋼製のロールの表面にゴムを貼りつけて製作したものであり、熱伝導はよくないから、溶融した状態で真空成形ロールと加圧ロールの間に供給される2枚のフィルムが与える熱により、操業中に温度が上昇してしまう。真空成形ロールの表面の温度を低くすることができ、かつ、それが好ましい本発明の製造方法においては、真空成形ロールを冷却する手段を用いることが、きわめて好ましい。
【0016】
本発明の別の態様は、図4に示すように、押出機を2台(1A,1B)使用し、同じダイヘッド(3)の中に別々に設けた樹脂マニホールド(32A,32B)に、それぞれ別個のプラスチックを供給して実施する。これにより、キャップフィルムとバックフィルムとが、物性、色および添加剤の少なくともひとつにおいて異なる気泡シートが製造できる。具体例は、表裏で色の異なるものや、一方の面だけに帯電防止機能をもたせたものなどである。図4に示したリップに高低差のあるダイヘッドにおいても、この図5に示すタイプとすることは、もちろん可能である。
【0017】
1個のダイヘッドの中にあっても、吐出されるダイリップが異なれば、加熱の手段を工夫することにより、樹脂温度をコントロールして若干の差を付けることは可能である。ダイリップにおける樹脂温度のコントロールは、物性の異なるプラスチックを併用する場合に必要なことが多いが、同じプラスチックの場合で、行ないたいことがあり、たとえばバックフィルムを少し高い温度にして、キャップフィルムとの完全な融着をはかることができる。
【0018】
このような吐出樹脂温度の差を実現するには、もちろん押出機を2台使用する態様の方が有利である。いうまでもないが、押出機から異なる温度で押し出すことができるばかりでなく、ダイヘッド内で、各樹脂マニフォルド内にある溶融プラスチックを別個に加熱してその温度を保つことができるからである。
【0019】
本発明を実施する装置の一例についてディメンションを示せば、真空成形ロールの外径としては25〜50cmの範囲、代表的には30cm台であり、2本のダイリップの間隔が10〜100mm、垂線(V)に対する傾きを、キャップフィルム用フィルムは80〜10度、バックフィルム用フィルムは70〜0度の範囲に設定した装置である。
【0020】
【作 用】
本発明に従って気泡シートを製造すれば、2本のダイリップの間隔を小さくできるから、図3に見るように、真空成形ロール(4)と加圧ロール(5)との接点から立てた垂線(V)に対する、キャップフィルム(8A)とバックフィルム(8B)との供給方向の傾きすなわち角度(θb)と(θc)との差、換言すれば2枚のフィルムがなす角度(θc−θb)を小さくすることができるから、キャップフィルムが点(I)において真空成形ロールに触れてキャップの成形が行なわれた直後に、点(II)においてキャップフィルム裏面にバックフィルムが接触し、融着が起こる。点(I)と点(II)との距離は、キャップの真空成形が可能な限度で、小さいのが好ましいことは、容易に理解されるであろう。このような条件下で融着させれば、キャップフィルムは、成形直後であるため、真空成形ロールに触れた側の表面が凝固しても、裏面はなお溶融状態に近い。プラスチックスの熱伝導性は低いからである。
【0021】
フィルムの供給の方向は、それらの差が小さいだけでなく、上記の垂線に対して大きく傾いた方向から(θbおよびθcが大きい条件)、すなわち真空成形ロールに近接した方向から行なわれるから、真空成形ロールの回転によって2枚のフィルムを真空成形ロールに向かって押しつける力が働き、これも融着を助ける。それゆえ、2枚のフィルムの融着は完全に行なわれ、加圧ロールの働きは、貼り合わせるというよりは、融着のダメ押しをして、フィルム裏面の平坦性を確保するという程度である。
【0022】
このようにして、キャップフィルムとバックフィルムとの融着にとって好都合な条件がそろうということは、逆にみれば、真空成形ロールの表面温度を低くすることが可能である、ということを意味する。つまり、従来は融着の確保のために保温していたものを、逆に冷却することができる。真空成形ロールの表面温度を低くすることができれば、製品気泡シートの真空成形ロールからの剥離が容易になって、より高速での運転が可能になり、生産性を高めることができる。
【0023】
一方、ダイリップから真空成形ロールまでの距離、すなわち、前述のエアギャップを短くできるということは、ダイリップから吐出された溶融プラスチックフィルムが真空成形ロールに至る間に幅が狭まる、「ネックイン」と呼ばれる現象を、最小限に抑えた形で気泡シートを製造することを許容する。ネックインは、プラスチックの種類によってその生じる程度が異なるので、ダイリップの長さが一定であれば、材料を変更するたびに製造できる気泡シート製品の最大幅が異なることになり、もし一定の製品幅を確保する必要があれば、ダイリップの長さを可変にしておかないと、材料にロスが出ることになる。本発明によりネックインが顕著に減少する結果、この問題はほぼ解消する。
【0024】
エアギャップが短い結果、吐出されてから加工されるまでの間の冷却が少なくなり、その分だけ吐出時の樹脂温度を低くすることができる。これは、一方で上記したネックインの減少を助長し、他方でプラスチックの劣化を少なくする。
【0025】
結晶化温度領域におけるキャップフィルム用フィルムの成形について説明を補足する。溶融状態の結晶性ポリオレフィンが冷却されたとき、或る温度において結晶化が開始し、このとき、ポリオレフィン内部では結晶化の進展に伴って結晶化熱が発生するため、温度の低下が結晶化熱により遅らされて、結晶化の大部分が完了するまでフィルムの温度低下が緩やかに進み、温度があまり変化しないかのように見える。結晶化が完了すると、温度低下の速度は、開始前と同様に速くなる。この、温度低下が緩やかに進む上限の温度と下限の温度との間が、結晶化温度領域である。
【0026】
前述の、従来技術による気泡シートのキャップの圧縮強度が小さい理由は、キャップの頂の周囲および裾野が肉薄になるからであることが、実測により判明した。このようなキャップができる原因として、つぎのような機構が考えられる。すなわち、溶融状態にあるキャップフィルム用フィルムは、真空成形ロールのくぼみに吸引されると、まず、くぼみの縁で限定された内部がくぼみに引き込まれて行き、その中央部分がくぼみの底に着く。このとき、くぼみの縁に当たる部分のフィルムは流動性が高いから、くぼみ内部に引き込まれる部分に引きずられて、肉薄になる。くぼみの底の中央部に着いたフィルムは、その場所に固定され、冷却されるため、もはやあまり変形しないが、底の周辺の部分は、その後に吸引されて広がり、くぼみの隅に至るから、引き延ばされて肉薄になる。
【0027】
これに対して、本発明では、真空成形されるポリオレフィンが結晶化の進行段階にあるから、真空成形が適用可能な程度の可塑性は有するものの、高い流動性はなくなっていて、変形に引きずられてフィルムの面内で流動することが、溶融状態にあるフィルムよりは少なく、キャップの、場所による肉厚の差が生じにくい。
【0028】
このような機構により、肉厚の場所による差が小さいキャップフィルムを製造する上で好都合な結晶性のポリオレフィンは、結晶化温度領域の幅が20℃以内、好ましくは15℃以内であり、結晶化熱が0.40Cal/g・deg.以上のものである。結晶化温度領域の幅が広いものや、結晶化熱の量が小さいものは、プラスチックフィルムの冷却過程で温度の低下があまり緩やかにならず、下記の機構に基づく発明の効果が十分に発現しない。結晶性ポリオレフィンのもつこのような特性は、キャップフィルムだけもっていればよいが、操業の便宜や製品の反りを避けるといった観点からは、バックフィルムも、同じ結晶性ポリオレフィンを使用する方が有利である。
【0029】
実操業に適した温度は、キャップフィルムの材料とする結晶性ポリオレフィンの融点をKm(絶対温度で表示)とするとき、キャップフィルム用フィルムがT−ダイから押し出された点における温度を(1.11〜1.34)×Kmの範囲に選び、真空成形ロールに接触する点における温度が(0.96〜1.04)×Kmの範囲になるように冷却を行なって実施することが推奨される。たとえば、融点120℃の常用のポリエチレンに対しては、押出温度を163〜253℃の範囲から選び(代表的には230℃)、成形加工時の温度が105〜135℃になるように冷却するのがよい。同様に、融点98℃の高流動性のポリエチレンに対しては、押出温度を139〜224℃の範囲から選び(代表的には180℃)、加工温度が83〜113℃になるように冷却するのがよい。
【0030】
【実施例1】
材料としてLLDPE「スミカセン」(住友化学製)を使用し、図2に示した構成の装置を用いて、気泡シートを製造した。この装置の2本のダイリップは、長さがともに1300mm、相互の間隔は50mm、真空成形ロールの径は30cmで、これに供給されるキャップフィルムの傾きは45度、バックフィルムの傾きは15度であり、エアギャップは、前者が60mm、後者が80mmである。気泡シートのキャップは、径10mm、高さ4mm、千鳥配置で、ピッチは11.5mmである。
【0031】
吐出時の樹脂温度を、2本のダイリップとも230℃として、気泡シートの製造を続けた。両耳切落とし後の製品幅にして1200mmの気泡シートを、引き取り速度85m/分で得た。
【0032】
【実施例2】
実施例1で使用したものと同じ材料を使用し、図4に示した構成の装置を用いて、キャップフィルムを赤色に、バックフィルムを黄色に着色した気泡シートを製造した。この装置の2本のダイリップの長さはともに1300mmであるが、相互の間隔は50mmである。それに伴って、真空成形ロールに供給されるキャップフィルムの傾きは45度、バックフィルムの傾きは15度、エアギャップは、前者が60mm、後者が80mmである。真空成形ロールは、実施例1と同じであるから、気泡シートのキャップも実施例と同じである。
【0033】
【実施例3】
材料として、HDPE「KEIYOポリエチT4010」(京葉ポリエチレン(株)製)を使用し、図5に示した構造のダイヘッドを備えた気泡シート製造装置を用いて、気泡シートを製造した。図にみるように、エアーナイフから空気を吹き付けて冷却し、キャップフィルム用フィルムが約100℃で真空成形ロールに接触するようにした。各フィルムの厚さおよびキャップは、つぎのとおりでる。
キャップフィルム:50μm バックフィルム:30μm
キャップ:径7mm、高さ4mm、ピッチ11.5mmの千鳥配置。
【0034】
この気泡シート製品について、圧縮強度および剛性を測定し、在来の同じフィルム厚の気泡シートと比較した。圧縮強度は、平らな板の上に直径67cmに切り抜いた気泡シートを置き、同じ大きさの板を介して0.5m/min.の速度で圧縮し、潰れたときの荷重をもって表した。剛性は、120mm×30mmの短冊状の試験片を、支持スパン90mm、三点曲げ試験で3.0mm/min.の速度で曲げたときの弾性勾配を測定することによって評価した。その結果を下に示す。
【0035】
【発明の効果】
前述した作用により、本発明の気泡シート製造技術によれば、キャップフィルムとバックフィルムとの2枚のフィルムの融着が完全に行なわれる条件下で真空成形ロールの表面温度を低くすることができるから、高速での運転が可能であり、高い生産性を実現できる。本発明により、押し出された溶融プラスチックのネックインが小さい条件で気泡シートに成形できるから、ダイの長さがフルに活用できるとともに、材料とするプラスチックの種類によるネックイン特性に影響されるところが小さい。吐出時の樹脂温度を低くできることは、ネックインの減少を助長し、かつ、プラスチックの劣化を少なくする。
【0036】
気泡シートの製造方法として前記した冷却再加熱法との比較においては、冷却および加熱のロールが不要であって設備が簡単になる上、消費エネルギーも少なくて済むから、気泡シートの製造コストが低減できる。
【0037】
キャップフィルムの材料として結晶性ポリオレフィンを選び、溶融押し出しされた状態のキャップシート用のシートを冷却して、結晶化温度領域にある間にキャップの成形を行なう態様においては、キャップ肉厚の場所による差が小さく、顕著な弱点のない気泡シートが得られる。結晶化段階における真空成形は延伸を伴うから、キャップそれ自体が強化されるという効果もある。この態様による気泡シート製品は、同じ量の材料を使用した場合は、改善された圧縮強度と剛性を有するものが得られ、同じ圧縮強度と剛性でよければ、より少ない量の材料で済むことを意味する。
【0038】
結晶化段階で真空成形を行なうことはまた、従来技術よりも高いラインスピードで操業することを可能にする。その理由は、ひとつは、キャップシート用のシートが凝固の直前で真空成形ロールに供給されるため、ロールへの接触から成形の完了までに要する時間が短くて済むことであり、いまひとつは、真空成形ロールからの製品気泡シートの剥離性がよく、高速で剥離してもトラブルの発生が少ないことである。なお、キャップシート用のポリオレフィンに含まれていた揮発性成分は、すべて真空成形ロールに至るまでに揮発し去るから、真空成形ロールの真空吸引孔を詰まらせるなどのトラブルも少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の気泡シート製造方法を説明するための、製造装置の概要を示す側面図。
【図2】 本発明の気泡シート製造方法を説明するための、製造装置の概要を示す一部縦断面図。
【図3】 本発明の気泡シート製造の作用機構を説明するための、製造装置の一部の拡大断面図。
【図4】 本発明の気泡シート製造方法における別の態様を説明するための、製造装置の概要を示す一部断面図。
【図5】 本発明の気泡シート製造方法における、さらに別の態様を説明するための、製造装置の主要部を示す断面図。
【符号の説明】
1,1A,1B 押出機
2A,2B T−ダイ(従来技術)
3 ダイヘッド(本発明)
31A,31B ダイリップ
32A,32B 樹脂マニホールド
3’ ダイヘッド(本発明の特定の態様)
33A,33B ダイリップ
34 エアーナイフ
4 真空成形ロール
5 加圧ロール
6 剥離ロール
7 冷却ロール
8A キャップフィルム用フィルム
8B バックフィルム用フィルム
9 プラスチック気泡シート
V 垂線
Claims (12)
- 2本のダイリップからプラスチックを溶融押出しし、押出されてできた2枚のフィルムの一方を、真空吸引される多数の凹みをそなえた真空成形ロールで成形して多数のキャップをもったキャップフィルムとし、他方の平坦なバックフィルムを、真空成形ロール上にあるキャップフィルムに加圧ロールにより貼りつけて、多数の密閉された空気室を形成することからなるプラスチック気泡シートの製造方法において、1個のダイヘッドに設けられ、小さな距離をおいて平行に走る2本のダイリップが真空成形ロールに近接した位置に開口する装置を使用すること、加圧ロールを真空成形ロールのほぼ真横から接触させるが、キャップフィルム用フィルムのみならずバックフィルム用フィルムをもこれらロールの接触点から上に向かう垂直線よりは真空成形ロール側に傾いた方向から供給すること、および真空成形ロール表面の温度をほぼ常温に保って貼り合わせを行なうことを特徴とする製造方法。
- 押出機を2台使用し、同じダイヘッドの中にそれぞれ別に設けた樹脂マニホールドに、物性、色および添加剤の少なくともひとつを異にする2種のプラスチックを供給し、前記2本のダイリップから押し出して実施する請求項1の製造方法。
- 少なくともキャップフィルムとするプラスチック材料として結晶性のポリオレフィンを使用し、キャップフィルム用フィルムが真空成形ロールに接触するに先立ってこれを冷却して結晶化温度領域内の温度までフィルムの温度を下げ、結晶化の進行に伴う発熱のためにフィルムの温度低下が緩やかになっている間に真空成形を行なってキャップフィルムを得、バックフィルムと貼り合わせて実施する請求項2の製造方法。
- キャップフィルムの材料とする結晶性ポリオレフィンの融点をKm(絶対温度で表示)とするとき、キャップフィルム用フィルムがT−ダイから押し出された点における温度を(1.11〜1.34)×Kmの範囲に選び、真空成形ロールに接触する点における温度が(0.96〜1.04)×Kmの範囲になるように冷却を行なって実施する請求項3の製造方法。
- キャップフィルム用フィルムを冷却する手段として、真空成形ロールの直前に設けたエアーナイフを使用する請求項3の製造方法。
- プラスチックを溶融押出しする押出機、2本のダイリップ、押し出された2枚のフィルムの一方を真空成形によりキャップフィルムとするための、多数の凹みと真空吸引手段とをそなえた真空成形ロール、2枚のフィルムの他方をキャップフィルムのキャップの底面にバックフィルムとして貼り付けるための加圧ロール、および製造されたプラスチック気泡シートを巻き取るための巻き取り手段を必須構成部分とするプラスチック気泡シートの製造装置において、上記2本のダイリップが1個のダイヘッドに設けられ、ダイヘッドの形状が、ダイリップが真空成形ロールに近接した位置に開口するとともに、キャップフィルム用フィルムのみならずバックフィルム用フィルムも真空成形ロールと加圧ロールとの接触の接触点から上に向かう垂直線よりは真空成形ロール側に傾いた方向から供給することを可能にするものであることを特徴とする製造装置。
- 加圧ロールに対し、これをバックアップする形で、少なくとも1本の冷却ロールを設けた請求項6の製造装置。
- 2本のダイリップを設けたダイヘッドの中にそれぞれ別の樹脂マニホールドを有するダイを使用し、このダイに2台の押出機を接続した請求項6の製造装置。
- 2本のダイリップが、溶融プラスチックの吐出方向に関して高低差をもって設けられたダイを使用し、低い側のリップからキャップフィルム用フィルムを吐出し、高い側のリップからバックフィルム用フィルムを吐出するように構成することにより、請求項6に規定したフィルム供給を可能にした請求項6の製造装置。
- 2本のダイリップからのプラスチックが異なる温度をもって押し出されることができるように、それぞれのヒーターを備えた請求項8または9の製造装置。
- 吐出されたキャップフィルム用フィルムに対する冷却用のエアーナイフを備え、請求項3に規定したフィルムの冷却を行なってからキャップフィルムの真空成形を行なうように構成した請求項6ないし9のいずれかの製造装置。
- 真空成形ロールの外径が25〜50cmであり、2本のダイリップの間隔が10〜100mm、垂直線に対する傾きを、キャップフィルム用フィルムは80〜10度、バックフィルム用フィルムは70〜0度の範囲に設定した請求項6ないし11のいずれかの製造装置。
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