JP3797142B2 - ポリエステル系被覆フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インキ密着性、印刷性及び耐粉落ち性に優れたポリエステル系被覆フィルムに関するものであり、特にラベル用基材として好適である。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル系フィルムは、高度の結晶性、優れた透明性、光沢、力学的性質、及び耐薬品性を有することから、広範囲な用途に使用されている。さらに、印刷性、耐ブロッキング性、帯電防止性などの機能性付与を目的として、ポリエステル系フィルム表面に被覆層を形成することが一般的に行われている。また、フィルムの透明性とハンドリング性(耐ブロッキング性、滑り性、耐摩耗性など)を両立させるために、ポリエステル系フィルムの被覆層中に粒子を含有させたり、フィルム表面に凹凸を形成させることも一般的に行われている。
【0003】
しかし、印刷において、特にラベル印刷の方法として多用されるシール印刷や、オフセット印刷においては、被印刷面と印刷機のロールとがスリップしたときなどに、フィルムとロールが擦れ、粒子が被覆層から削り取られて、粉となって被覆層表面から落ちるというトラブルが発生するという問題があった。従来は、この様な被覆層からの粒子の脱落は着目されていなかったが、粒子が脱落すれば上記特性が失われるだけでなく、落ちた粉がロール汚れを引き起こす。また、インキ抜けが発生し、商品価値の低下をもたらす。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題を解決し、インキ密着性を維持しながら、耐粉落ち性や印刷性に優れたポリエステル系被覆フィルムを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、ポリエステル系フィルムの被覆層面の鏡面光沢度を特定の範囲とすることにより、インキ密着性と印刷性及び耐粉落ち性を満足したポリエステル系被覆フィルムを得られることを見出した。
【0006】
即ち、本発明の課題は、以下の手段により達成できる。
1)光学濃度0.3以上で示される不透明度を有するポリエステル系フィルムの少なくとも片面に被覆層を設けたポリエステル系被覆フィルムであって、前記被覆層が、ポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系重合体および/またはそれらの共重合体から選ばれた少なくとも1種からなる樹脂、及び1種以上の不活性粒子を主たる構成成分とする組成物からなり、かつ、前記被覆層面の60度鏡面光沢度G1及び75度鏡面光沢度G2が、下記式(1)及び(2)を満足することを特徴とするポリエステル系被覆フィルム。
G1≦20 ・・・(1)
1<G2/G1≦4 ・・・(2)
【0007】
2)ポリエステル系フィルムが、該フィルム内部に空洞を含有し、かつその見掛け密度が0.3〜1.3g/cm3であることを特徴とする前記1)記載のポリエステル系被覆フィルム。
【0009】
3)前記被覆層の樹脂が、水不溶性かつ水分散性のポリエステル樹脂及び分子内に少なくとも1個のブロックイソシアネートを有する水溶性ポリウレタン系樹脂からなることを特徴とする前記1)記載のポリエステル系被覆フィルム。
【0010】
4)前記被覆層面の表面固有抵抗値が1×1013Ω/□以下であることを特徴とする前記1)記載のポリエステル系被覆フィルム。
【0011】
5)ポリエステル系フィルムが、該フィルム内部に空洞を含有し、かつその空洞積層数密度が0.20個/μm以上であることを特徴とする前記1)記載のポリエステル系被覆フィルム。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明で基材に使用するポリエステル系フィルムの主たる構成成分であるポリエステル樹脂とは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸またはそのエステル、及びエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのグリコールを重縮合させて得られるポリエステルを主体とするものである。
【0013】
また、ポリエステル樹脂の成分として、共重合可能な芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸類や、芳香族、脂肪族、脂環族のグリコール類を含んでいてもよい。
【0014】
これらのポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸とグリコールとをエステル化反応後重縮合させる方法、芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応後重縮合させる方法、あるいは芳香族ジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させる方法などの公知の方法によって製造することができる。
【0015】
かかるポリエステル樹脂の代表例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはポリエチレン−2,6−ナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂が挙げられる。このポリエステルはホモポリマーであってもよいし、異種のポリエステル樹脂を混合しても良いし、第三成分を共重合したものであってもよい。いずれにしても、エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート単位が70モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であるポリエステルが好ましい。なかでも、ポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。
【0016】
本発明において使用されるポリエステル系フィルムは、強度、腰など実用性の点から、二軸配向フィルムであることが特に好ましい。
【0017】
また、本発明において使用されるポリエステル系フィルムは、単層構造でもよいし、複層構造でもよいが、その一部の層もしくは全部の層が不透明であることが好ましい。ポリエステル系フィルムの不透明度を示す光学濃度は、0.3以上であり、好ましくは0.3〜4.0であり、特に好ましくは、0.5〜3.0である。光学濃度が0.3未満であると、得られるポリエステル系被覆フィルムの表面に印刷を施した場合に印刷効果が不鮮明となり好ましくない。また、光学濃度が4.0以下であると、より優れた印刷効果が期待できる。
【0018】
上記範囲内の光学濃度を得る方法は特に限定されないが、ポリエステル樹脂中に無機粒子、あるいは当該ポリエステル樹脂と非相溶の熱可塑性樹脂を含有させることにより達成することが出来る。これらの含有量は特に限定されないが、無機粒子の場合は生成ポリエステルに対し5〜35重量%が好ましく、特に好ましくは8〜25重量%である。一方、非相溶性の熱可塑性樹脂を含有させる場合は、ポリエステルに対し5〜35重量%が好ましく、特に好ましくは8〜28重量%である。また、無機粒子と、ポリエステル樹脂に非相溶な熱可塑性樹脂を併用する場合には、ポリエステル系フィルムに対して、その合計量が40重量%以下とすることが、フィルム強度、腰、製膜安定性の点から好ましい。
【0019】
使用する無機粒子は特に限定されないが、平均粒径が0.1〜4.0μmの無機粒子が好ましく、特に好ましくは0.3〜1.5μmの無機粒子である。具体的には、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫化亜鉛などの白色顔料が好ましく、これらを混合しても良い。さらに、フィルム中に一般的に含有されている無機粒子、例えばシリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレー、リン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、硫酸カルシウムなどを併用しても良い。
【0020】
また、ポリエステル樹脂と非相溶の熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂と混合する場合、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。また、それらの熱可塑性樹脂は混合しても良く、変性したものでも良い。当然のことながら、上記無機粒子と併用することもできる。また必要に応じて、種々の増白剤を添加してもよいことは言うまでもない。
【0021】
さらに、本発明において使用されるポリエステル系フィルムは、その見掛け密度が0.3〜1.3g/cm3である微細空洞含有ポリエステル系フィルムであることが好ましい。
【0022】
また、その空洞積層数密度が、クッション性と表面剥離強度の両立の点で、0.20個/μm以上、好ましくは0.25個/μm以上、より好ましくは0.30個/μm以上である微細空洞含有ポリエステル系フィルムも好ましい。その結果、得られるポリエステル系被覆フィルムは、印刷鮮明性や印刷時の加工特性に優れる。ここで、空洞積層数密度(個/μm)は、式:
フィルム厚み方向の空洞数(個)/フィルム厚み(μm)
で定義される。当該空洞積層数密度の上限は、空洞発現効率の点から0.80個/μmが好ましく、0.55個/μmがより好ましい。同密度を上記の範囲に調節する方法としては、非相溶の熱可塑性樹脂の添加量や種類、粘度などを調節するほか、押出機のスクリュー形状の変更や、溶融樹脂流路へのスタティックミキサー設置などの方法が用いられるが、この限りではない。
【0023】
これらの微細空洞含有ポリエステル系フィルムは、フィルム中に含有する微細空洞がマトリックスであるポリエステルとの界面において光散乱を起こすことにより不透明度が一段と向上し、前記無機粒子の添加を減らすことができるので、特に有用である。さらに、微細空洞を含有せしめることにより、基材フィルム自体を軽量化できるため、取扱いが容易になるとともに、原料コストダウンや輸送コストダウンなど経済的効果も大きなものとなる。
【0024】
この様な、微細空洞含有ポリエステル系フィルムを得る方法としては、マトリックスである熱可塑性ポリエステル樹脂に対し、前述の如きポリエステル樹脂に非相溶な熱可塑性樹脂を混練りし、ポリエステル樹脂中に非相溶樹脂を微粒子状に分散させたシートを少なくとも一軸方向に延伸することにより、前記非相溶樹脂微粒子の周囲に空洞を発生させる方法など、既に開示されている公知の方法を用いることができる。
【0025】
また、得られた微細空洞含有ポリエステル系フィルムの厚みは、5〜300μmであることが好ましい。特に、その空洞積層数密度が0.20個/μm以上である微細空洞含有ポリエステル系フィルムの厚みは、20〜300μmが好ましく、さらに好ましくは40〜250μmである。
【0026】
さらに、本発明のポリエステル系被覆フィルムは、基材としてのポリエステル系フィルムの少なくとも片面に被覆層を設けることが必要である。前記被覆層は、好ましくは、後述のインキ密着性の評価法において、クロスカット法によるインキ残留率が90%以上である機能を有する密着性改質層である。
【0027】
被覆層を設ける方法としては、密着性改質樹脂組成物を含む塗布液を基材のポリエステル系フィルム表面に塗布する方法、あるいは密着性改質樹脂を共押出し法により基材のポリエステル系フィルムに積層する方法などが挙げられる。さらに基材のポリエステル系フィルムと被覆層との密着性をさらに向上させるために、予め当該フィルム表面を表面処理してもよい。表面処理の方法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線(UV)照射処理、放射線(EB)照射処理などの活性エネルギー線照射による方法、火炎処理、更にPVD、CVDなどのベーパーデポジット法が挙げられる。
【0028】
特に、被覆層を設ける方法として、密着性改質樹脂組成物を含む塗布液を該ポリエステル系フィルム表面に塗布する方法が、本発明における被覆層と印刷インキ層、その他のコーティング剤との密着性の観点から、最も有効な方法である。
【0029】
この様な被覆層を構成する樹脂組成物としては、ポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系重合体および/またはそれらの共重合体から選ばれた少なくとも1種からなる樹脂、及び1種以上の不活性粒子を主たる構成成分とする組成物であることが好ましい。
【0030】
上記密着性改質樹脂のなかでも、分子中にスルホン基を含有する水不溶性かつ水分散性のポリエステル系樹脂と分子内に少なくとも1個のブロックイソシアネートを有する水溶性ポリウレタン系樹脂を混合した密着性改質樹脂からなる被覆層は、基材のポリエステル系フィルムのみならず、汎用の紫外線(UV)硬化型インキ及び酸化重合インキ等の印刷インキとの密着性が大きく改善できることから、特に好ましい。
【0031】
この場合、前記水不溶性かつ水分散性のポリエステル系樹脂(A)と水溶性ポリウレタン系樹脂(B)の含有量は、重量比で(A)/(B)=90/10〜10/90であることが好ましく、重量比で(A)/(B)=80/20〜20/80が特に好ましい。
【0032】
本発明のポリエステル系被覆フィルムは、被覆層面の60度鏡面光沢度G1及び75度鏡面光沢度G2が、下記式(1)及び(2)を満足することが必要である。
G1≦20 ・・・(1)
1<G2/G1≦4 ・・・(2)
【0033】
被覆層面の60度鏡面光沢度G1は20以下であることが必要であり、好ましくは18以下、特に好ましくは15以下である。また、75度鏡面光沢度G2と60度鏡面光沢度G1との比G2/G1は、1を超え4以下であることが必要であり、好ましくは1を超え3.5以下、特に好ましくは1を超え3以下である。
【0034】
被覆層面の60度鏡面光沢度G1が20を超えると、耐粉落ち性が不十分となる。また、被覆層面の75度鏡面光沢度G2と60度鏡面光沢度G1との比(G2/G1)が1以下の場合は耐粉落ち性が不十分となり、さらに印刷性も若干低下する。一方、G2/G1が4を超えると、インキを吸収する被覆層表面の凹凸が少なくなるため、印刷性が悪化する。
【0035】
被覆層面の60度鏡面光沢度G1及び75度鏡面光沢度G2が、前記式(1)及び(2)を満足するためには、被覆層に含有させる不活性粒子の平均粒径、粒子径の標準偏差、形態(粒径比、長径/短径)、粒子含有量、被覆層の厚みなどを適宜調整することが好ましい。
【0036】
具体的には、被覆層に含有させる不活性粒子の平均粒径d(μm)と被覆層の厚みt(μm)との比(d/t)は、1.0〜5.0であることが好ましく、より好ましくは1.2〜4.0であり、最も好ましくは1.5〜2.5である。d/tが1.0未満であると、十分なインキ着肉性、印刷給紙性や耐ブロッキング性が得られない傾向がある。一方、5.0を超えると、印刷時に粒子がポリエステル系被覆フィルムの被覆層から脱落し、粉落ちの原因になりやすい。前記d及びtは電子顕微鏡で観察した写真から求めることができる。
【0037】
被覆層の厚みtは、0.01〜5.0μmが好ましく、さらに好ましくは0.05〜1.5μm、特に好ましくは0.1〜1.0μmである。被覆層の厚みが0.01μm未満であると、基材のポリエステル系フィルムとの密着性が十分得られず、また、粒子を被覆層中に十分に固定できず、被覆層から粒子が脱落する傾向がある。逆に、5.0μmを越えると、粒子が被覆層の樹脂の中に埋まってしまい、ポリエステル系被覆フィルムのハンドリング性に不可欠な表面凹凸や耐ブロッキング性が得られない傾向がある。
【0038】
被覆層中に含有させる不活性粒子としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレー、リン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウムなどの無機粒子や、ポリスチレン系、ポリアクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン樹脂系などの有機ポリマー系粒子等が挙げられる。これらは1種でも良いが、2種以上併用しても良い。
【0039】
前記被覆層中の不活性粒子の平均粒径dは、0.04〜1.5μmが好ましく、さらに好ましくは0.06〜1.0μm、特に好ましくは0.1〜0.8μmである。不活性粒子の平均粒径が0.04μm未満であると、ポリエステル系被覆フィルム表面への凹凸の形成が不十分となり、インキ密着性が不十分となる傾向がある。逆に、1.5μmを越えると、粒子がポリエステル系被覆フィルムの被覆層から脱落し粉落ちの原因になる傾向がある。
【0040】
前記粒子の中でも、粒径比(長径/短径)が1.0〜1.5であり、粒子径の標準偏差が1.0以下の不活性粒子が、耐粒子脱落性の点から好ましい。特に好ましくは、粒径比(長径/短径)が1.0〜1.2であり、粒子径の標準偏差が0.5以下の不活性粒子である。この要件を満足する不活性粒子としては、球状シリカ粒子、球状シリコーン樹脂粒子、球状架橋ポリスチレン粒子、球状架橋アクリル粒子、球状または立方体状炭酸カルシウム粒子、または燐酸カルシウム粒子などが挙げられる。
【0041】
前記被覆層中の不活性粒子の平均粒径、粒径比及び粒子径の標準偏差は、例えば特開平1−284534号公報の記載に準じて求めることができる。
【0042】
前記被覆層において、樹脂/粒子の重量比は30/70〜70/30が好ましく、さらに好ましくは35/65〜60/40、特に好ましくは40/60〜50/50である。樹脂の重量比が30未満であると、粒子を被覆層中に十分に固定できず、粒子が被覆層から脱落し、粉落ちの原因になる傾向がある。逆に、樹脂の割合が70を越えると、十分なインキ着肉性、給紙性や耐ブロッキング性が得られにくくなる。
【0043】
さらに、本発明のポリエステル系被覆フィルムは、被覆層面の表面固有抵抗値が、好ましくは1×1013Ω/□以下、より好ましくは1×1012Ω/□以下である。表面固有抵抗値が1×1013Ω/□よりも大きくなると、当該ポリエステル系被覆フィルムをラベル化するための種々の工程、例えば、粘着剤のコート、印刷、断裁、打ち抜きなどにおいて静電気トラブルが発生しやすくなる。表面固有抵抗値を上記範囲内とするには、例えば、以下に示すように、上記密着性改質樹脂組成物に帯電防止剤を添加する等の方法が採用できる。
【0044】
また、前記被覆層を構成する組成物中に、さらに帯電防止剤が含まれている場合が、得られたフィルムをラベル化するための種々の工程、例えば粘着剤のコート、印刷、断裁、打ち抜きなどにおける静電気トラブルの発生を防止できるため、特に好ましい。帯電防止剤としては、塗布型の帯電防止剤として一般的に用いられているもの(例えば、第4級アンモニウム塩系帯電防止剤)、粒子状のカーボンブラック、ニッケル、銅などの金属紛、酸化スズ、酸化亜鉛などの金属酸化物、繊維状の黄銅、ステンレス、アルミニウム等の金属コートファイバー、鱗片状黒鉛、アルミニウムフレーク、銅フレーク等の導電性フィラー、スルホン化ポリアニリン、ポリピロールなどの導電性ポリマーが、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意に使用することができる。
【0045】
被覆層を設ける方法としては、上記のように、密着性改質樹脂および不活性粒子を主成分とする密着性改質樹脂組成物を含有する塗布液を、ポリエステル系フィルム表面に塗布する方法が好ましい。この場合、塗布液の液温は、好ましくは10℃〜20℃に、より好ましくは12℃〜18℃に設定される。また、塗布液のpHは、好ましくは5.5〜7.5に、より好ましくは6.0〜7.0に設定される。塗布液の液温またはpHが上記範囲外であると、塗布液中の不活性粒子が凝集し易くなり、塗布液循環系内のフィルターの目詰まりによる生産性の低下、被覆層の耐粉落ち性の低下、塗布液の経時安定性の低下という問題が生じる。また、上記塗布液を塗布する前に、金網、バッグ式フィルター、糸巻き式フィルター、カートリッジ式フィルター等のフィルターを用いて当該塗布液をろ過して、上記好ましい平均粒径範囲を超える大きな不活性粒子を除去することが望ましい。塗布液の液温およびpHを上記範囲内に設定し、かつ/または上記フィルターを用いて塗布液をろ過することによって、被覆層面の60度鏡面光沢度G1および75度鏡面光沢度G2が上記式(1)および(2)を満足するポリエステル系被覆フィルムを容易に得ることができる。
【0046】
また、上記塗布方法としては、グラビアコート、リバースコート、キスコート、リバースキスコートなどのロールコート方式、バーコート方式、エアナイフ方式、ブレードコート方式やコンマコート(ロールナイフコート)方式、カーテンコート方式、スプレイ方式、ディップ方式など通常用いられている方法を適用することができる。
【0047】
塗布する段階としては、未延伸ポリエステル系フィルム表面にあらかじめ塗布する方法、一軸方向に配向させたポリエステル系フィルム表面に塗布し、それを更に直角方向に配向させる方法、二軸配向処理後のポリエステル系フィルム表面に塗布する方法などのいずれの方法も可能であるが、特に一軸配向したポリエステル系フィルム表面に塗布した後直角方向に延伸配向し、結晶化を完了させる方法が、密着性、経済性、クリーン度等の点で、最も好ましい方法である。
【0048】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではない。なお、下記実施例で採用した各種物性、性能の測定・評価法は次の通りである。
【0049】
(1)印刷性
ポリエステル系被覆フィルムの被覆層表面に、UV硬化型インキ(株式会社セイコーアドバンス製、UVA710 ブラック)をテトロン・スクリーン(#300メッシュ)によって印刷した後に、500mJ/cm2で紫外線照射処理を行い印刷サンプルを得た。得られたサンプルを目視により、以下のように判定した。
◎:印刷部が非常に鮮明で判りやすい
○:印刷部が鮮明で判りやすい
△:印刷部がやや不均一
×:印刷部が不均一
【0050】
(2)インキ密着性
酸化重合(あるいは溶剤)型インキの場合は、ポリエステル系被覆フィルムの被覆層表面にテトロン・スクリーン(250メッシュ)によって印刷した後に、1日風乾させる。また、UV硬化型インキの場合には、ポリエステル系被覆フィルムの被覆層表面にテトロン・スクリーン(300メッシュ)によって印刷した後に、UV露光装置により500mJ/cm2のUV露光を与え、UV硬化型インキを硬化させる。
【0051】
使用した酸化重合型インキは、酸化重合型インキ(十条化工株式会社製、黒)を希釈溶剤(十条加工株式会社製、テトロン)で体積比が4:1となるよう希釈したものを使用した。また、UV硬化型インキは株式会社セイコーアドバンス製インキ(UVA710、ブラック)を使用した。
【0052】
硬化したインキ層に対し、カッターナイフにより2mm角100マスのクロスカット面を入れ、その上にセロテープ(登録商標,ニチバン株式会社製、CT−24、25mm幅)を気泡が入らないように貼りつけ、さらにその上をこすって十分に密着させる。その後、上記インキ面のセロテープ(登録商標)が密着されていない前後の両端部を手で押さえ、セロテープ(登録商標)を上の方向(角度90度方向)にクロスカット面から急速に剥離した。
【0053】
剥離後のインキ面を観察し、100個のマス目におけるインキ残留率(マス目の一部分でも剥がれたものも剥がれた個数として扱う)を以下の4段階の基準でインキ密着性を評価し、◎及び○を合格とした。
◎:残留率100%(全く剥離しない)
○:残留率90%以上100%未満(実用上問題なく使用できる)
△:残留率70%以上90%未満(密着性が若干弱く、実用上問題が発生する可能性有り)
×:残留率50%以上70%未満(密着性に問題有り)
【0054】
(3)耐粉落ち性
学振式摩擦試験器(山口科学産業社製)で荷重ヘッド部とポリエステル系被覆フィルムの接触部に黒紙を用い、ヘッド部の荷重を200gf/25mm2(5mm×5mm)、当該フィルムを10往復させて荷重ヘッド部と擦った後の黒紙の状態を目視により次のように判定した。
○:黒紙上に全く粉が付いていない
△:黒紙上に、0.5mm以下の粉が1〜10箇所付いている
×:黒紙上に、0.5mm以下の粉が11箇所以上、または0.5mmより大きい粉が付いている
【0055】
(4)帯電防止性
ポリエステル系被覆フィルムを23℃、65%RHの雰囲気下で24時間放置後、その雰囲気下で高抵抗率計(三菱油化(株)製、ハイレスタ−IP)を用い印加電圧500Vにて被覆層表面の表面固有抵抗値(Ω/□)を測定した。
【0056】
(5)不活性粒子の平均粒径
特開平1−284534号公報の記載に準じ、走査型電子顕微鏡と画像処理装置を用いて少なくとも100個以上の粒子を測定し、平均粒径(μm)を求めた。
【0057】
(6)被覆層の厚み
走査型電子顕微鏡でポリエステル系被覆フィルムの断面写真を撮り、その写真上で被覆層の厚みを計測する。同様の計測を、場所を変えて100回行い、その計測値の平均を被覆層の厚み(μm)とした。
【0058】
(7)ポリエステル系フィルムの不透明度
マクベス濃度計TR−927型を使用し、Gフィルターを介した光の透過率を測定し、得られた光線透過率から光学濃度を計算し、不透明度の指標とした。光学濃度は、光線透過率(範囲:0〜100%)の逆数の対数(Log10)として表される。光学濃度の値が大きい程、不透明度が高いことを示す。
【0059】
(8)ポリエステル系フィルムの見掛け密度
ポリエステル系フィルムを10cm×10cmの正方形に正確に切り出し、その厚みを50点測定して平均厚みt(μm)を求める。次に、サンプルの重量を0.1mgまで測定しW(g)とし、次式により算出した値を見掛け密度とした。
見掛け密度(g/cm3)=(W/t)×100
【0060】
(9)ポリエステル系被覆フィルムの被覆層面の鏡面光沢度
JIS−Z8741に記載の方法2(75度鏡面光沢)、方法3(60度鏡面光沢)に準じて測定した。
【0061】
(10)ポリエステル系フィルムを構成するポリエステル樹脂の固有粘度
フェノール60重量%と1,1,2,2−テトラクロロエタン40重量%の混合溶媒にポリエステル樹脂を溶解し、固形分をガラスフィルターで濾過した後、30℃にて測定した。
【0062】
(11)ポリエステル系フィルムの空洞積層数密度
まず、フィルムをエポキシ樹脂に埋設し、ミクロトームを用いてフィルムの縦延伸方向と平行かつフィルム面に垂直に割断したサンプルを5点作成した。同一サンプルにおいて、異なる部位の5箇所において、走査型電子顕微鏡を用いて、割断面を300〜3,000倍の適切な倍率で検鏡し、フィルム全厚みにおける空洞の分布状態が明確に確認できる写真を撮影した。写真画像上の任意の場所でフィルム表面に垂直な直線を引き、この直線と交わる空洞の数(積層数)を計数した。また、この直線に沿ってフィルムの全厚み(μm)を測定し、空洞の積層数をこれで除して空洞積層数密度(個/μm)を求めた。なお、測定は写真1枚につき5箇所で行い、総計25箇所の平均値を求めてサンプルの空洞積層数密度(個/μm)とした。
【0063】
(12)塗布液の温度
塗布液の液温(℃)を水銀式の温度計を用いて測定した。
【0064】
(13)塗布液のpH
pHメーター(堀場製作所製、カスタニーACT D−22)を用いて測定した。
【0065】
実施例1
固有粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂80重量%と、メルトフローインデックス5.5g/10分のポリスチレン15重量%および平均粒径0.3μmのルチル型酸化チタン5重量%を含有する樹脂組成物を285℃で溶融し、表面温度40℃のドラム上に押し出しし、次いで得られた未延伸シートを90℃で3.5倍縦方向に延伸し、ポリエステル系フィルムの一軸延伸フィルムを得た。
【0066】
共重合ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、バイロナール)を固形分で3.15重量%、末端イソシアネート基を親水性基でブロックした水溶性ウレタン樹脂(第一工業製薬(株)製、エラストロン)を固形分で5.85重量%、帯電防止剤として第4級アンモニウム塩系帯電防止剤を、前記樹脂成分に対し6.20重量%、平均粒径0.45μmのシリカ粒子を12.4重量%含有するように、塗布液を調製した。
得られた塗布液を、pH調整液でpH6.5に調整し、次いでバッグ式フィルター(住友スリーエム社製、リキッドフィルターバッグ)で濾過し、そして塗布液循環系ストックタンク内で15℃で2時間攪拌した。
【0067】
この塗布液を、上記で得た一軸延伸フィルムの片面に、リバースキスコート法により延伸前の樹脂固形分厚みが0.9μmとなる様に塗布し、引き続き乾燥しつつ120℃で3.5倍横方向に延伸した後、230℃で4%緩和させながら熱処理し、見掛け密度が1.10g/cm3でありかつ空洞積層数密度が0.31個/μmである、微細空洞を含有する厚さ50μmのポリエステル系フィルムの片面に被覆層が形成された、ポリエステル系被覆フィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び表2に示す。
【0068】
実施例2
被覆層に含有させる共重合ポリエステル樹脂を2.5重量%に、水溶性ウレタン樹脂を4.6重量%に、不活性粒子として、平均粒径0.45μmのシリカ粒子を6.0重量%、平均粒径0.8μmの炭酸カルシウム粒子を2.0重量%とした以外は、実施例1と全く同様にして、ポリエステル系被覆フィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び表2に示す。
【0069】
比較例1
被覆層に含有させる不活性粒子を、平均粒径2.0μmのベンゾグアナミンホルムアルデヒド縮合物粒子9.0重量%とした以外は、実施例1と全く同様にして、ポリエステル系被覆フィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び表2に示す。
【0070】
比較例2
被覆層に含有させる共重合ポリエステル樹脂を9.1重量%、水溶性ウレタン樹脂を3.9重量%、不活性粒子を、平均粒径5.5μmのシリカ粒子2.9重量%、平均粒径2.7μmのシリカ粒子2.9重量%、平均粒径0.15μmのシリカ粒子7.3重量%、延伸前の樹脂固形分厚みを1.8μmとした以外は、実施例1と全く同様にして、ポリエステル系被覆フィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び表2に示す。
【0071】
比較例3
ストックタンク内の塗布液の温度を40℃にした以外は、実施例1と全く同様にして、ポリエステル系被覆フィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び表2に示す。
【0072】
比較例4
塗布液のpHを9.5にした以外は、実施例1と全く同様にして、ポリエステル系被覆フィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1及び表2に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【発明の効果】
本発明のポリエステル系被覆フィルムは、インキ密着性を維持しながら、粉落ちを防止して印刷性を高めることができるので、特にラベル用基材として有用である。
Claims (5)
- 光学濃度0.3以上で示される不透明度を有するポリエステル系フィルムの少なくとも片面に被覆層を設けたポリエステル系被覆フィルムであって、前記被覆層が、ポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系重合体および/またはそれらの共重合体から選ばれた少なくとも1種からなる樹脂、及び1種以上の不活性粒子を主たる構成成分とする組成物からなり、かつ、前記被覆層面の60度鏡面光沢度G1及び75度鏡面光沢度G2が、下記式(1)及び(2)を満足することを特徴とするポリエステル系被覆フィルム。
G1≦20 ・・・(1)
1<G2/G1≦4 ・・・(2) - ポリエステル系フィルムが、該フィルム内部に空洞を含有し、かつその見掛け密度が0.3〜1.3g/cm3であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル系被覆フィルム。
- 前記被覆層の樹脂が、水不溶性かつ水分散性のポリエステル樹脂及び分子内に少なくとも1個のブロックイソシアネートを有する水溶性ポリウレタン系樹脂からなることを特徴とする請求項1記載のポリエステル系被覆フィルム。
- 前記被覆層面の表面固有抵抗値が1×1013Ω/□以下であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル系被覆フィルム。
- ポリエステル系フィルムが、該フィルム内部に空洞を含有し、かつその空洞積層数密度が0.20個/μm以上であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル系被覆フィルム。
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