JP3796292B2 - 含フッ素ビニルエーテルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、含フッ素ビニルエーテルの新規な製造方法に関する。詳しくは、アルコキシド化合物とテトラフルオロエチレンとの反応により、含フッ素ビニルエーテルを収率良く製造する方法である。
【0002】
【従来の技術】
ポリテトラフルオロエチレンは耐薬品性、耐熱性、表面特性、電気特性等の優れた物性を有している半面、加工性等に問題点を有している。それ故、種々のコモノマーとテトラフルオロエチレンとの共重合体が製造されている。こういった共重合体のうち、側鎖にアルコキシ基を有する樹脂が溶融特性の優れたフッ素樹脂として知られており、例えば、特開平2−276808号公報には広いモノマー組成で製造できる樹脂として、テトラフルオロエチレンと含フッ素ビニルエーテルとの共重合体が提案されている。該共重合体に用いられる含フッ素ビニルエーテルは、対応するアルコキシド化合物とテトラフルオロエチレンとの反応によって製造されることが知られている(米国特許2917548号明細書)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
米国特許2917548号明細書によれば、アルコキシド化合物とテトラフルオロエチレンとの反応は、80〜110℃といった比較的高い反応温度、及び21kg/cm2程度といった比較的高い反応圧力が採用されているにもかかわらず、目的物である含フッ素ビニルエーテルの収率は高々40%程度と低い。また、反応におけるアルコキシド化合物とテトラフルオロエチレンの接触方法については、反応圧力を一定とするようにテトラフルオロエチレンを導入することが記載されているのみであり、含フッ素ビニルエーテルの収率を向上するための手段についての開示はない。
【0004】
また、特開平6−72938号公報に同様の含フッ素ビニルエーテルの製造方法が提案されているが、該公報においてもアルコキシド化合物とテトラフルオロエチレンの接触方法については、テトラフルオロエチレンを予め全量導入しておき反応中に供給しない方法と、反応中に連続、又は間欠的にテトラフルオロエチレンを供給する方法についての記載があるのみで、その反応について、反応速度、および反応速度と収率との関係について言及した記載はない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、副生成物を低減し、高収率で含フッ素ビニルエーテルを得ることができる改良された製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アルコキシド化合物とテトラフルオロエチレンとの反応について、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、目的物である含フッ素ビニルエーテルの収率を低下させる原因は、テトラフルオロエチレンとアルコキシド化合物との反応において、テトラフルオロエチレン1モルに対して、アルコキシド化合物が2または3モル反応して得られる多付加体が副生成物として生成しているためであることが明らかとなった。
【0007】
そして、更に研究を重ねた結果、多付加体の生成量を低減させ、高収率で目的物である含フッ素ビニルエーテルを製造するためには、当量以上のテトラフルオロエチレンを使用し且つ該アルコキシド化合物を溶媒中に溶解し、これを分散した状体でテトラフルオロエチレンと接触させることが有効であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、アルコキシド化合物とテトラフルオロエチレンとを反応させて含フッ素ビニルエーテルを製造する方法において、該アルコキシド化合物を溶解してなる溶液のミストと該アルコキシド化合物に対して1モル倍以上のテトラフルオロエチレンとを反応せしめることを特徴とする含フッ素ビニルエーテルの製造方法である。
【0009】
本発明において、原料の一方はアルコキシド化合物である。このアルコキシド化合物は、公知のものが特に制限されることなく使用できるが、特に本発明において好適に採用されるアルコキシド化合物としては下記一般式(1)
RfCH2OM (1)
(但し、Rfはハロゲン化炭化水素基であり、Mはアルカリ金属である。)
で示されるアルコキシド化合物が挙げられる。そして更に、上記一般式(1)で示されるアルコキシド化合物は、Rfのハロゲン化炭化水素基が下記一般式(2)
−CaHbFcXd (2)
(但し、Xはハロゲン原子であり、a及びcは1以上の整数であり、b及びdは0以上の整数であり、且つb+c+d≦2a+1となる関係を満足する。)で示されるフッ素化炭化水素基であるものが好ましい。また、前記一般式(1)中、Mで示されるアルカリ金属はNa、K、Cs等が好適に採用される。更に、Xのハロゲン原子としては、塩素原子が好適に採用される。
【0010】
上記した通り前記一般式(1)中、Rfはハロゲン化炭化水素基であればよいが、本発明においては、ハロゲン化炭化水素基は前記一般式(2)で示させるフッ素化炭化水素基が好適である。上記式中のaは1以上の整数であればよいが、原料のアルコールの入手の容易さから、aは1〜10の整数であることが好ましい。上記式中cは1以上の整数であればよく、b及びdはそれぞれ0以上の整数であればよく、b+c+d≦2a+1となる関係を有する。
【0011】
本発明において更に好適に用いられるアルコキシド化合物を具体的に例示すると、CF3CH2ONa、CF3CF2CH2ONa、CF3(CF2)2CH2ONa、CF3(CF2)3CH2ONa、CF3(CF2)4CH2ONa、CF3(CF2)5CH2ONa、CF3(CF2)6CH2ONa、HCF2CF2CH2ONa、H(CF2)4CH2ONa、ClCF2CF2CH2ONa、CF3CH2OK、CF3CF2CH2OK、CF3(CF2)2CH2OK、CF3(CF2)3CH2OK、CF3(CF2)4CH2OK、CF3(CF2)5CH2OK、CF3(CF2)6CH2OK、HCF2CF2CH2OK、H(CF2)4CH2OK、ClCF2CF2CH2OK、CF3CH2OCs、CF3CF2CH2OCs、HCF2CF2CH2OCs等を挙げることができる。
【0012】
前記一般式(1)で示されるアルコキシド化合物は、市販品をそのまま用いてもよいし、下記一般式(3)
RfCH2OH (3)
(但し、Rfは、前記一般式(1)と同じである。)
で示されるアルコールとアルカリ金属、アルカリ金属水素化物、またはアルカリ金属アミド化合物との反応によって得たものを用いてもよい。
【0013】
本発明において製造される含フッ素ビニルエーテルは一方の原料であるテトラフルオロエチレンのフッ素原子の1個がもう一方の原料であるアルコキシド化合物のアルコキシ基で置換された構造となる。原料として前記一般式(1)で示されるアルコキシド化合物を用いた場合、本発明の方法によって製造される含フッ素ビニルエーテルは下記一般式(4)
RfCH2OCF=CF2 (4)
(但し、Rfは、前記一般式(1)と同じである。)
で示される含フッ素ビニルエーテルである。
【0014】
本発明の最大の特徴は、アルコキシド化合物とテトラフルオロエチレンとの反応方法である。即ち、本発明は、アルコキシド化合物を溶解した溶液(以下単にアルコキシド溶液と略称する。)のミストを形成し、これをテトラフルオロエチレンと接触させる方法である。ミストの生成方法には特に制限なく、公知の方法を用いるこができる。ミスト生成方法を例示するならば、スプレーガンを用いる方法、超音波による方法等が挙げられる。
【0015】
ここで、本発明においてアルコキシド溶液とはアルコキシドが溶解している溶液である。溶媒としてはアルコキシド化合物を溶解し、本発明の反応に関して実質的に不活性である化合物であれば特に制限はない。好適に使用される溶媒を例示すると、ジエチルエーテル、グライム類等の直鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル化合物;更にはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物を挙げることができ、このうち特にジオキサン、テトラヒドロフランを好適に用いることができる。反応系内の水分の存在は、前記一般式(1)で示されるアルコキシド化合物の分解を起こすのみならず、副生成物の増加を招くために目的物の収率低下を引き起こす恐れがある。従って、溶媒は予め脱水、乾燥しておくことが好ましい。
【0016】
本発明において、アルコキシド化合物とテトラフルオロエチレンの使用割合はアルコキシド化合物に対して1モル倍以上である。テトラフルオロエチレンの使用割合が1モル倍より少ない場合は、テトラフルオロエチレン1モルに対して、アルコキシド化合物が2または3モル反応して得られる多付加体が副生成物として生成してくるため、目的とする含フッ素ビニルエーテルの収率が低下し、好ましくない。
【0017】
アルコキシド化合物とテトラフルオロエチレンとの反応による含フッ素ビニルエーテルの製造においては、この両者の接触を如何に迅速におこなえるかが、該アルコキシド化合物による副反応を防止し、生成物の収率向上に大きく影響を及ぼす。従って、これを達成するには、アルコキシド溶液のミストの径は、一般に1mm以下、好ましくは、500μm以下が採用される。ミストの径がこの値より大きい場合は、アルコキシド溶液の単位重量当たりの表面積が小さくなるために、テトラフルオロエチレンのアルコキシド溶液ミストへの溶解に時間がかかるため、多付加体が生成し、目的とする含フッ素ビニルエーテル化合物の収率が低下する傾向がある。
【0018】
ここで、ミストの径は例えば、写真撮影によって決定することもでき、またスプレーガンを用いた場合は、アルコキシド溶液の物性とスプレー条件から抜山−棚沢の実験式で見積もることも可能である。
【0019】
本発明の反応は、アルコキシド溶液ミストとテトラフルオロエチレンを接触させることによって達成されるが、アルコキシド溶液ミストをテトラフルオロエチレンの存在する反応器中に導入する方法、またテトラフルオロエチレンを圧送ガスとして用い、反応器中に導入することも可能である。
【0020】
本発明におけるテトラフルオロエチレンの反応圧力は特に限定されるものではないが、あまり高圧の場合、装置的にかなり高価となる欠点が生じてくる。
【0021】
従って、テトラフルオロエチレンの圧力は1〜30kg/cm2−Gが実際的であり、特に好ましくは、反応速度等を考慮すると5〜20kg/cm2−Gである。
【0022】
次に、反応温度は特に制限されるものではなく、反応速度に応じて反応温度を選べば良いが、一般には0〜150℃の範囲であり、特に50〜120℃の範囲が好適である。さらに、反応時間は特に制限されるものでは無く、一般的には数分〜30分である。
【0023】
本発明において、テトラフルオロエチレンに比較的高い圧力をかけた場合にその重合反応が起こる恐れがあるが、このような場合には重合を防止するために重合禁止剤を反応系に添加することが好ましい。重合禁止剤はアルコキシド溶液に混合して導入しても良いし、導入するテトラフルオロエチレンに同伴させて導入しても良い。用いられる重合禁止剤は実質的にテトラフルオロエチレンの重合を防止するための化合物であればなんら制限なく採用できる。本発明において用いられる重合禁止剤を例示すると、リモネン、ピネン、シメン、テルピネン等を挙げることができる。
【0024】
【発明の効果】
以上の説明から明かな様に、本発明によればアルコキシド化合物とテトラフルオロエチレンとの反応において、該アルコキシド化合物を溶解してなる溶液のミストと1モル倍以上のテトラフルオロエチレンとを接触せしめることによって、高収率で含フッ素ビニルエーテルを製造することができる。
【0025】
この効果は特に多付加体の生成が大きくなる、テトラフルオロエチレンを低圧条件で使用する場合に顕著である。
【0026】
【実施例】
本発明を更に詳細に説明するために以下実施例を示すが、本発明はこれら実施例になんら制限をうけるものではない。
【0027】
実施例1
温度90℃に制御された内容積3lのSUS製反応器に、0.2mmのノズル口径を有する、圧送式小型スプレーガンで、ナトリウム-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシド207g、及びリモネン3gを含む1,4-ジオキサン溶液2200gを、テトラフルオロエチレンを4.3l/分の速度で圧送ガスとして用い、ミスト径約100μmで導入した。約17分で全てのアルコキシド溶液が反応器に導入された。この間反応器は7kg/cm2−Gに維持するように、導入孔とは別のノズルから圧力を抜いた。導入終了後、10分後脱圧し、反応器を加熱して蒸留によりCF3CF2CH2OCF=CF2を189g得た。収率は原料のナトリウム-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシド基準で68%であった。
【0028】
比較例1
実施例1において、アルコキシド溶液の全量を反応器内に供給しておき、該反応器内にテトラフルオロエチレンをノズルから導入した以外は、同様に反応をおこなった。なお、テトラフルオロエチレンはマスフローコントローラーを用いて導入時間を同じにした。
【0029】
反応によって得られたCF3CF2CH2OCF=CF2は原料のナトリウム-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシド基準で47%であった。
Claims (1)
- アルコキシド化合物とテトラフルオロエチレンとを反応させて含フッ素ビニルエーテルを製造する方法において、該アルコキシド化合物を溶解してなる溶液のミストと該アルコキシド化合物に対して1モル倍以上のテトラフルオロエチレンとを接触せしめることを特徴とする含フッ素ビニルエーテルの製造方法。
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