JP3795334B2 - バルブのウォータハンマ防止構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は水栓等におけるバルブのウォータハンマ防止構造に関し、詳しくは円筒形状のシリンダ弁体とその外側の円筒形状のケーシングとを備えた形態のバルブにおけるウォータハンマ防止構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水栓等の水回り機器において円筒形状のシリンダ弁体及びその外側の円筒形状のケーシングの周方向所定位置に、内外方向に貫通する通水用の開口をそれぞれ形成し、そのケーシングに対するシリンダ弁体の回転に伴い各開口を重なり状態に一致させることで水路の開放を行い、また開口を不一致若しくは重なり面積を変化させることで水路の遮断若しくは水量調節を行う形式のバルブが用いられている。
【0003】
図4(A)(イ)はこの種形式のバルブにおいて、シリンダ弁体の開口30Aとケーシングの開口28Aとが完全一致して水路を開放した状態を、また(ロ)はシリンダ弁体の回転(90°回転)によりシリンダ弁体の開口30Aとケーシングの開口28Aとが完全不一致となり、水路を遮断した状態をそれぞれ示している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来、各種の水回り機器において、バルブ等を急閉止させたときに水流が急に停止することによって水撃現象、いわゆるウォータハンマの生じることが問題視されている。
【0005】
而してこの種形式のバルブの場合においても同様に、水路の開放状態即ち(A)(イ)に示す状態から、シリンダ弁体を回転させて急激に(ロ)に示す状態としたとき、水流が急激に停止することによってウォータハンマが生じるといった問題があった。
而してこのようなウォータハンマが生じると、配管内において突発的な圧力上昇が生じ、配管系が振動したりその振動によって騒音を発生したり、或いはシール部分に過大な圧力が作用してシールが損傷してそこから漏れを生じるといったことの原因となる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のバルブのウォータハンマ防止構造はこのような課題を解決するために案出されたものである。
而して請求項1のものは、円筒形状のシリンダ弁体及びその外側の円筒形状のケーシングの周方向所定位置に、内外方向に貫通する通水用の開口をそれぞれ形成し、該ケーシングに対する該シリンダ弁体の回転に伴い各開口を重なり状態に一致させることで水路の開放を行い、各開口を不一致若しくは重なり面積を変化させることで水路の遮断若しくは水量調節を行う形式のバルブにおいて、前記シリンダ弁体の開口及び/又はケーシングの開口に、周方向且つ水路を閉じる方向に進むにつれて開口幅が減少する先細り形状部を形成し、且つ該シリンダ弁体の開口を該ケーシングの開口に一致させて水路を完全開放した状態で前記先細り形状部が該ケーシングの開口又は該シリンダ弁体の開口より周方向にはみ出す形状に、それらシリンダ弁体及びケーシングの開口が形成してあり、更に前記シリンダ弁体及びケーシングの同一周方向位置、且つ同一水路位置に複数の前記開口が設けてあって、該シリンダ弁体及び/又はケーシングの該同一周方向位置、且つ同一水路位置の複数の開口の何れかに前記先細り形状部が形成してあり、残りの開口については該先細り形状部が形成してないことを特徴とする。
【0007】
【作用及び発明の効果】
以上のように本発明は、シリンダ弁体の開口及びケーシングの開口の少なくとも何れか一方に、周方向且つ水路を閉じる方向に先細りとなる先細り形状部を形成し、且つ水路を完全に開放した状態の下でその先細り形状部がケーシングの開口又はシリンダ弁体の開口から周方向にはみ出すように、その先細り形状部を形成したもので、本発明によれば、水路を完全に開放した状態からシリンダ弁体を回転させて水路を遮断する状態としたとき、先細り形状部の存在によって、シリンダ弁体を急激に回転させたとしても水路が急激に遮断されず、水路を遮断する直前において水流が徐々に絞られながら最終的に遮断状態となる。
従って本発明によれば水流が急激に停止することが効果的に回避され、水流の急激な停止に起因するウォータハンマの発生が良好に防止される。
【0008】
本発明においては、シリンダ弁体及びケーシングの同一周方向位置、且つ同一水路位置に複数の開口を設けておき、それらの内の何れかに上記先細り形状部を形成し、残りのものについてはそのような先細り形状部を形成しないようになしておくことができる。
このようにすることによって、水路を遮断する直前で良好に水流を絞りながら最終的に水路を遮断状態となすことができる。
【0009】
例えば複数の開口を設けた場合において、その何れにも上記のような先細り形状部を設けておくと、水路を遮断する直前で良好に水流を絞ることができず、この結果更なるシリンダ弁体の回転によって水路が比較的急激に遮断されることとなって、ウォータハンマを十分良好に防止することが難しい。
しかるに本発明では複数の開口の内の何れかにのみ先細り形状部を設けてあることによって、ウォータハンマを良好に防止することができる。
【0010】
本発明においては、シリンダ弁体の開口とケーシングの開口とが完全一致となる全開状態、即ち水路を完全に開放する状態から、完全不一致となる全閉状態との間で100°以上好ましくは120°以上上記シリンダ弁体を回転させるようになしておくことができる。
但し上限値は170°とすることが望ましい。
【0011】
【実施例】
次に本発明の実施例を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は壁12に取り付けられた水栓(この例では洗濯機水栓)で、14は水栓10の本体ボデー,16はそこから延び出した吐水管,18は吐止水及び水量調節のためのハンドルである。
【0012】
図2に示しているように、本体ボデー14の内部には水路20の遮断又は開放を制御するバルブ22が組み込まれている。
このバルブ22は、ハンドル18に固定されてこれと一体回転する円筒形状のシリンダ弁体24と、その外側の円筒形状のケーシング26とを有している。
【0013】
図3に示しているように、ケーシング26には周方向所定位置且つ同一周方向位置において2つの通水用の開口28,28が設けられている。
また同じくシリンダ弁体24においても対応する2つの通水用の開口30,30が同一周方向位置に設けられている。
これらケーシング26及びシリンダ弁体24を有する本例のバルブ22の場合、ハンドル18の操作によってシリンダ弁体24を回転させ、そしてシリンダ弁体24の開口30,30がケーシング26の開口28,28に一致した状態で水路20が完全開放され、水路20を通じて送られて来た水が吐水管16から外部に吐水される。
【0014】
また一方、ハンドル18の操作によってシリンダ弁体24が上記の位置と異なる位置に回転させられ、そしてシリンダ弁体24の開口30,30とケーシング26の開口28,28とが完全不一致となったところで水路20が遮断され、吐水管16からの吐水が停止する。
更にシリンダ弁体24の開口30,30と、ケーシング26の開口28,28とが重なり合った状態で且つその重なり面積が変化することで、吐水管16からの吐水の水量が調節される。
【0015】
尚、図4(B)に示しているようにケーシング26の開口28,28は、シリンダ弁体24の開口30,30に対して、後述する先細り形状部34を除き、その大きさが大きいものとされている。
【0016】
図3及び図4に示しているように、本例においてはシリンダ弁体24の2つの開口30,30の内の一方に、周方向且つ水路20を閉じる方向に先細りとなる平面展開形状が略三角形状をなす先細り形状部34が形成されている。
この先細り形状部34は、図4(B)(イ)に示しているように、開口30と28とが一致し水路20を完全開放した状態の下で開口28から周方向にはみ出す位置及び形状に形成されている。
【0017】
即ち、図4(A)に示しているように従来のバルブにあってはシリンダ弁体の開口30Aがケーシングの開口28A内部に完全に納まる形状で構成されているが、本例においては開口30における先細り形状部34を除いた全体が開口28内に納まり、その先細り形状部34だけが開口28から周方向にはみ出す形状で各開口30,28が構成されている。
尚先細り形状部34を形成していない他の開口30については、水路20を完全開放した状態の下でケーシング26の開口28内にその全体が納まるようにそれらの開口30,28が構成してある。
【0018】
本例の水栓10におけるバルブ22の場合、シリンダ弁体24の開口30,30をケーシング26の開口28,28に一致させて水路20を完全開放した状態では、水路20内の水が最大流量で開口30,28を通過し、吐水管16を通じて外部へと流出する。
尚このとき、図4(B)(イ)に示しているように開口30,30の内の一方の先細り形状部34が、対応する開口28より周方向にはみ出した状態となっている。
【0019】
この状態からハンドル18によってシリンダ弁体24を回転操作すると、開口30,30と28,28とが部分的に重なり合う状態となり、そしてその重なり面積の減少とともに水量が減少して行く。
そして当初の水路20の完全開放状態からシリンダ弁体24を丁度90°回転操作したところで、シリンダ弁体24における一方の開口30がケーシング26の対応する開口28と完全不一致となり、また今一方の開口30もまた対応する開口28に対してその大部分が不一致となり、そして周方向に延び出した先細り形状部34のみが対応する開口28と重なり合った状態となる。
【0020】
従ってこの段階では水路20は完全遮断状態とはならず、先細り形状部34を通じて所定量の水がバルブ22を通過して吐水管16から流出する。
即ちこのような先細り形状部34を形成しておくことによって、水路20の完全遮断状態直前で水流が絞られることとなる。
【0021】
そしてこの段階から更にハンドル18によってシリンダ弁体24を回転操作すると、ここにおいて先細り形状部34もまた対応する開口28に対し不一致となり、各開口30,28が全て閉じられた状態となる。
即ち水路20がここにおいて完全遮断状態となる。この結果吐水管16からの吐水が停止する。
【0022】
本例の場合、図4(B)(イ)に示す水路20の完全開放状態からシリンダ弁体24を丁度90°回転させたところで(ロ)に示す状態、即ち先細り形状部34のみがケーシング26の開口28と部分的に重なり合った状態となり、そして当初位置から丁度135°回転操作したところで(ハ)に示す状態、即ち先細り形状部34もまた開口28から外れた状態となる。
【0023】
以上のように本例のバルブ22の場合、水路20を完全に開放する状態からシリンダ弁体24を回転させて水路20を遮断する際、シリンダ弁体24を急激に回転させたとしても先細り形状部34の存在によって水路20が急激に遮断されず、水路20を遮断する直前において水流が徐々に絞られながら最終的に遮断状態となる。
従って本例のバルブ22にあっては、水流が急激に停止することが効果的に回避され、水流の急激な停止に起因するウォータハンマの発生が良好に防止される。
【0024】
また本例ではシリンダ弁体24における同一周方向位置の2つの開口30,30の内の一方のみに先細り形状部34を形成し、他のものについてはそのような先細り形状部34を形成していないため、水路20を遮断する直前で良好に水流を絞りながら最終的に水路20を遮断状態となすことができる。
【0025】
即ち2つの開口30,30の何れにも上記のような先細り形状部34を設けておくと、水路20を遮断する直前で良好に水流を絞ることができず、この結果、水流停止時に比較的急激に水路20が遮断されることとなって、ウォータハンマが必ずしも十分良好に防止されない恐れがある。
しかるにこの例では2つの開口30,30の何れか一方のみに先細り形状部34を設けているため、水路20の遮断時に良好に水流を絞りながら最終的に遮断状態とすることができ、ウォータハンマの発生を良好に防止することができる。
【0026】
尚、開口30,30の両方に先細り形状部34を設けておき、且つその先細り形状部34をそれぞれ細く形成しておいて、それら2つの先細り形状部34を合せた開口幅が、開口30,30の何れか一方のみに先細り形状部34を設けた場合の開口幅と同じようになしておくといったことも考えられるが、このようにすると水流を絞るときに煩わしい音が発生するといった問題がある。
これに対して本例では何れか一方の開口30にのみ先細り形状部34を設けているので、そうした問題も生じない。
【0027】
図5〜図7は本発明の他の実施例を示している。
この例は、バス吐水とシャワー吐水とを行うシャワーバス水栓への適用例を示したもので、図5中36はそのシャワーバス水栓(水栓35)における温調ユニット,38は切替ユニット,40は温調ハンドル,42は切替ハンドル,52はカバープレートである。
【0028】
温調ユニット36には一対のサプライ管44が接続されており、それらサプライ管44を通じて温調ユニット36に水,湯がそれぞれ供給される。
供給された水と湯とは温調ユニット36内部で混合され、その混合水が連結管46を通じて切替ユニット38内部に流入する。
而して切替ハンドル42の操作によって切替ユニット38内部に流入した混合水が、吐水管48からバス吐水され、或いはまたシャワー出口50を通じてシャワーヘッドへと送り出される。
【0029】
図6に切替ユニット38の内部構造が示してある。
同図に示しているように、切替ユニット38の内部には水路20の切替えを行うバルブ56が本体ボデー54内部に組み込まれている。
このバルブ56は、切替ハンドル42と一体回転する円筒形状のシリンダ弁体58と、その外側の円筒形状のケーシング60とを有している。
【0030】
図7に示しているように、ケーシング60には同一周方向位置に通水用の開口62−1,62−1と62−2,62−2とが設けられている。
一方シリンダ弁体58には、対応する位置に通水用の開口64−1,64−1と64−2,64−2とが設けられている。
尚シリンダ弁体58の開口64−1,64−1と64−2,64−2とは周方向に90°位置をずらせて設けてある。
【0031】
本例においては、シリンダ弁体58の開口64−1,64−1の一方に上記と同様の先細り形状部34が設けられている。
更にまた他方の開口64−2,64−2の一方に同じく先細り形状部34が形成されている。
【0032】
この例においては、切替ハンドル42を操作してシリンダ弁体58を回転させることで、吐水管48からの吐水とシャワー出口50からの吐水とが切り替えられる。
詳しくはシリンダ弁体58の開口64−1,64−1がケーシング60の開口62−1,62−1と一致した状態で混合水の水路20が吐水管48側に切り替えられ、更にこの状態からシリンダ弁体58が回転して、その開口64−2,64−2がケーシング60の開口62−2,62−2と一致した状態で混合水の水路20がシャワー出口50側に切り替えられる。
尚各開口62−1,62−2と64−1,64−2との形状及び位置関係更に先細り形状部34の形状及び位置関係については上記実施例と同様である。
【0033】
本例においても、シリンダ弁体58の回転操作によって水路20の切替え或いは水路20の遮断を行うとき、先細り形状部34によって急激な水路20の遮断即ち急激な水流の停止が効果的に回避され、その水流の急激な停止に起因するウォータハンマの発生が良好に防止される。
【0034】
以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明のバルブは上記洗濯機水栓,シャワーバス水栓以外の他の様々な水栓におけるバルブに適用することが可能であるし、或いはまたそのような水栓以外の水回り機器のバルブに適用することが可能であるなど、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例であるバルブを含む水栓を示す図である。
【図2】 図1の水栓の内部に組み込まれたバルブとその周辺部を断面図で示す図である。
【図3】 図2におけるバルブを分解して示す図である。
【図4】 図2及び図3のバルブの作用を従来のバルブの作用と比較して示す作用説明図である。
【図5】 本発明の他の実施例のバルブを含むシャワーバス水栓を示す図である。
【図6】 図5における切替ユニットの内部構造を一部切り欠いて示す図である。
【図7】 図6におけるバルブを分解して示す図である。
【符号の説明】
20 水路
22,56 バルブ
24,58 シリンダ弁体
26,60 ケーシング
28,30,62−1,62−2,64−1,64−2 開口
34 先細り形状部

Claims (1)

  1. 円筒形状のシリンダ弁体及びその外側の円筒形状のケーシングの周方向所定位置に、内外方向に貫通する通水用の開口をそれぞれ形成し、該ケーシングに対する該シリンダ弁体の回転に伴い各開口を重なり状態に一致させることで水路の開放を行い、各開口を不一致若しくは重なり面積を変化させることで水路の遮断若しくは水量調節を行う形式のバルブにおいて、
    前記シリンダ弁体の開口及び/又はケーシングの開口に、周方向且つ水路を閉じる方向に進むにつれて開口幅が減少する先細り形状部を形成し、且つ該シリンダ弁体の開口を該ケーシングの開口に一致させて水路を完全開放した状態で前記先細り形状部が該ケーシングの開口又は該シリンダ弁体の開口より周方向にはみ出す形状に、それらシリンダ弁体及びケーシングの開口が形成してあり、更に前記シリンダ弁体及びケーシングの同一周方向位置、且つ同一水路位置に複数の前記開口が設けてあって、該シリンダ弁体及び/又はケーシングの該同一周方向位置、且つ同一水路位置の複数の開口の何れかに前記先細り形状部が形成してあり、残りの開口については該先細り形状部が形成してないことを特徴とするバルブのウォータハンマ防止構造。
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