JP3795168B2 - 無水銀アルカリ電池およびそのゲル状亜鉛負極の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無水銀アルカリ電池に用いるゲル状亜鉛負極の製造方法および前記製造方法により製造したゲル状亜鉛負極を用いた無水銀アルカリ電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
電解液にアルカリ水溶液を用い、負極に亜鉛を用いるアルカリ電池には、アルカリマンガン電池、酸化銀電池、空気電池などの電池が製品化されている。
これらの電池においては、従来は亜鉛に水銀が添加されていたが、近年、環境への配慮から、その添加量が減らされてきている。これらの中で、アルカリマンガン電池においては既に水銀が添加されていないが、亜鉛に対する電解液の比率が比較的小さい酸化銀電池や空気電池では、水銀がまだ添加されている。
【0003】
ところで、アルカリ電池の製造には、電解液と負極の亜鉛粉をゲル化剤とともに撹拌してゲル状亜鉛を作り、これを電池内に充填する工程がある。従来、このゲル状亜鉛の撹拌手段としては、万能撹拌機、ニーダー、プロペラ撹拌機など、撹拌子や撹拌羽を持つ撹拌機が一般的に用いられていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、無水銀アルカリ電池、特にその電解液比の小さい電池系においては、これらの撹拌機を用いて調製した場合、その電池の放電特性が有水銀電池に比較して劣るという問題があった。
【0005】
この放電特性の劣性は、亜鉛利用率の低下により生ずるもので、この現象は、電池内の亜鉛に対する電解液の比率が小さいほど顕著であり、また、同一の電池においては比較的重負荷の放電ほど顕著に現れることが分かった。
【0006】
この亜鉛利用率の低下を解決するため種々検討した結果、ゲル状亜鉛の撹拌調製において、その撹拌の方法がこの利用率に影響することが分かった。さらに、この原因について調査したところ、撹拌機内に撹拌子や撹拌羽を持つ撹拌機で調製したゲル状亜鉛は、その亜鉛粉が撹拌中に潰されたり、切断されることによって変形し、この変形が大きいほど、亜鉛利用率の低下も著しいことが分かった。
【0007】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、無水銀アルカリ電池のゲル状亜鉛を調製するための撹拌方法を改善することによって、亜鉛の利用率を向上させることを目的とし、その結果放電特性のよい無水銀アルカリ電池を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、亜鉛粉、電解液およびゲル化剤を混合撹拌して製造する無水銀アルカリ電池のゲル状亜鉛負極の製造方法において、撹拌機として撹拌子や撹拌羽を持たずかつバッグを収納していない撹拌装置を用いることを特徴とするものである。
【0009】
上記した撹拌子や撹拌羽をもたない撹拌機としては、例えば遠心力や重力などを利用して撹拌するタイプの撹拌装置が挙げられ、具体的にはV型撹拌機、シェイカー、遊星式撹拌機、ボールなしポットミル等が挙げられる。
【0010】
上記による撹拌機で調製したゲル状亜鉛を用いた無水銀アルカリ電池は、亜鉛粉の変形が小さいので、亜鉛利用率の低下が抑えられ、無水銀であっても有水銀の場合と同等に優れた放電特性を得ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の具体的な実施例と、その比較例を示す。代表的な電池として、空気亜鉛電池のPR44サイズ(直径φ11、総高5.4mm)を用いた。図1にこの空気亜鉛電池の断面図を示す。この図において、1は外装缶、2は空気極、3はゲル状亜鉛、4はキャップ、5はセパレータ、6は撥水膜、7は拡散紙、8は空気孔、9はシールテープ、10はパッキングである。
【0012】
(実施例1)
電池の試作に先立ち、ゲル状亜鉛を調製した。まず、水銀を添加していない亜鉛粉(0.10〜0.40mm)に、ゲル化剤(ポリアクリル酸)を0.5重量%加え、V型撹拌機を用いて撹拌した(ドライ撹拌)。
【0013】
次に、ドライ撹拌した混合品に、これに対して30重量%の電解液(30%のKOH)を加え、遊星式撹拌機を用いて撹拌を行った(ウェット撹拌)。
このようにして調製したゲル状亜鉛を、所定量、電池内へ充填した。
【0014】
(実施例2)
ドライ撹拌にシェイカーを用い、ウェット撹拌に遊星式撹拌機を用い、他は実施例1と同様にして、ゲル状亜鉛を調製し、同様に電池内へ充填して電池を製作した。
【0015】
(実施例3)
ドライ撹拌にV型撹拌機を用い、ウェット撹拌にボールなしポットミルを用い、他は実施例1と同様にして、ゲル状亜鉛を調製し、同様に電池内へ充填して電池を製作した。
【0016】
(実施例4)
ドライ撹拌にシェイカーを用い、ウェット撹拌にボールなしポットミルを用い、他は実施例1と同様にして、ゲル状亜鉛を調製し、同様に電池内へ充填して電池を製作した。
【0017】
なお、上記各実施例で用いた撹拌機について説明すると、V型撹拌機は、円筒の容器をV型に曲げた形の撹拌槽をもち、これの円柱方向を軸として、回転させることにより内容物を撹拌することを特徴とする。図2に典型的なV型撹拌機を示す。図2において、11はV型撹拌槽、12は回転軸である。
【0018】
シェイカーは、任意の形状をした撹拌容器を、ある一定の振幅で上下に振ることにより内容物を撹拌することを特徴とする。遊星式撹拌機は、円筒型の容器を円周方向に自転させると共に公転させ、その遠心力を利用して内容物を撹拌することを特徴とする。ボールなしポットミルは円柱状の容器を横に倒し、円柱方向を軸に回転させて内容物を撹拌することを特徴とする。
【0019】
比較例として、上記のドライ撹拌とウェット撹拌について、撹拌子や撹拌羽を有する撹拌機(プロペラ撹拌機、万能撹拌機、ニーダー)を表1に示す組み合わせで用いてゲル状亜鉛を調製し、実施例と同様に電池内へ充填した。
表1に前述の2種類の撹拌について、それぞれ検討した撹拌装置と、その結果、得られた電池の亜鉛の利用率を示した。
【0020】
【表1】
【0021】
なお、評価は250Ωと620Ω連続放電を行い、放電利用率は電池に入れた亜鉛の理論容量(mAh)に対する実際に放電できた容量の比で計算した。
表1に示されるように、本発明の実施例では比較例に比べていずれも放電利用率が高く、ゲル状亜鉛を製造する際の撹拌機として撹拌子や撹拌羽を有しないものを使用したことによって、無水銀アルカリ電池においても放電特性が向上できることが分かる。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の製造方法により製造したゲル状亜鉛を負極として使用することによって、無水銀アルカリ電池の放電特性を有水銀と同等に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である空気亜鉛電池の断面図。
【図2】本発明の実施例で用いたV型撹拌機の説明図。
【符号の説明】
1…外装缶、2…空気極、3…ゲル状亜鉛、4…キャップ、5…セパレータ、6…撥水膜、7…拡散紙、8…空気孔、9…シールテープ、10…パッキング、11…V型撹拌槽、12…回転軸。
Claims (3)
- 亜鉛粉、電解液およびゲル化剤を混合撹拌して製造する無水銀アルカリ電池のゲル状亜鉛負極の製造方法において、撹拌機として撹拌子や撹拌羽を持たずかつバッグを収納していない撹拌装置を用いることを特徴とする無水銀アルカリ電池のゲル状亜鉛負極の製造方法。
- 撹拌機が、V型撹拌機、シェイカー、遊星式撹拌機またはボールなしポットミルである請求項1記載の無水銀アルカリ電池のゲル状亜鉛負極の製造方法。
- 請求項1記載の製造方法によって製造したゲル状亜鉛負極を負極として装填した無水銀アルカリ電池。
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