JP3794601B2 - ボンディングワイヤ用スプールケース - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体用ボンディングワイヤのスプールケースに関し、詳しくは、スプール胴部に巻き回しられたボンディングワイヤに触れることなくスプールを取り扱うことができるスプールケースに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、半導体装置の組み立てに用いるボンディングワイヤを巻き回した筒状のスプールを収容するためのケースとして、各種構造のものが知られている。
例えば実公昭58−41188号には、スプールを嵌合せしめる上向膨出状の嵌合隆を一体に備えた容器本体と、該容器本体の外周隆に嵌合する蓋体からなり、該蓋体に前記嵌合隆と対応してスプールと嵌合する押え凹部を形成し、収容されるスプールを前記嵌合隆と蓋体で定置状に押えてがたつきを防止するようにしたスプールケースが開示されている。
【0003】
ところで、この種スプールケースに収容されたスプールは、半導体装置の組み立て現場等においてケースから取り出してワイヤボンダのスプールホルダへ装着されるが、従来においてはスプールのフランジを手で持って取り扱っており、ワイヤ表面に手が触れてしまう等によりワイヤ損傷が生じる虞れがあった。
【0004】
このような不具合を解消するべく、特開平7−86326号公報には、相互に嵌合する容器と蓋からなるスプールケースにおいて、容器及び蓋のうち少なくとも一方に、スプールを保持すると共にスプールに直接手を触れることなく着脱できるスプール保持部を備えたボンディングワイヤ用スプールケースが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし乍ら、前記ボンディングワイヤ用スプールケースの技術内容についてより詳細に検討すると、以下のような問題点が無いとはいえなかった。
すなわち、該スプールケースのスプール保持部は、発明の詳細な説明の記載からみて、スプールの胴部内壁に接触する嵌合隆の内側に、該嵌合隆を弾性変形させるための操作部となる凹部を備え、該凹部に差し込んだ指を外側へ開く、若しくは内側へ閉じることで前記嵌合隆を弾性変形させるをもって、前記胴部内壁に対する嵌合隆の接触圧を調整する構成のものである。
これに対し、上記スプールはワイヤボンダのスプールホルダに外側から嵌め込むようにして装着されるようになるが、スプールホルダの長さはボンダによって様々であり、また近年においては、スプールに巻き回すワイヤ長さの長尺化に伴うスプール総重量の増加に対応するべく、スプール掛止手段を備えたスプールホルダも各種提供され、該掛止手段はスプールの胴部内壁に接触するようスプールホルダに付設される。
従って、スプールの胴部内壁に嵌合隆を接触させてスプールを保持するようにした上記ボンディングワイヤ用スプールケースを用いた場合、前記保持部がスプールホルダ先端部やスプール掛止手段に当たって、スプールの装着に支障を来すケースもあった。
また上記スプールケースは前述の通り、凹部に差し込んだ指の開閉操作でスプール保持部の接触圧を調整するようになっており、作業者の不注意等により指の操作を間違えてしまうと前記接触が解除され、スプールが脱落する虞れも無いとはいえない。
【0006】
さらに従来のスプールケースは、容器本体が下に、蓋体が上に位置する状態で作業テーブル上や運搬ケース内等に置くよう形成され、この場合、スプール中心軸がほぼ垂直状態になり、巻き回されたワイヤの巻き崩れの問題が生じる。
【0007】
本発明は上述した従来事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ケース本体内に収容するスプールを該スプールに手を触れることなく着脱自在に保持できると共に、ボンダに対するスプールの脱着をスプールホルダの長短やスプール掛止手段の有無等に関係なく行え、且つスプール保持の信頼性が高くてスプール保持状態を容易に維持することができ、さらに、作業テーブル上や運搬ケース内に置く場合等の取り扱いにも優れた、新規なボンディングワイヤ用スプールケースを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために本発明は、ボンディングワイヤを巻き回したスプールを、相互に嵌合する容器本体と蓋体からなるケース本体の内部に収容したボンディングワイヤ用スプールケースであって、前記ケース本体は、内部に収容したスプールをその中心軸がほぼ水平になる横向き状態で保持可能な定置手段を下面側に備えると共に、前記容器本体は、前記蓋体と嵌合する外周隆の内側面に、ケース本体内に収容されるスプールのフランジ外周縁に弾性係合する係合部を複数設けて、該容器本体と一体に各係合部が弾性変形してスプールを着脱自在に保持するよう形成し、且つ前記外周隆に、容器本体に保持されたスプールにおけるボンディングワイヤのテープ止め端部を露呈させる凹部を形成したことを要旨とする。
【0009】
このように構成した場合、容器本体を弾性変形させればこれと一体に各係合部が弾性変形してスプールのフランジ外周縁に係脱自在に係合し、スプールは容器本体に着脱自在に保持されるので、スプールに直接手を触れることなく該スプールを取り扱うことができる。該保持状態は、係合部を変形させてフランジから外さない限り解除されない。また該保持状態は、係合部をフランジ外周縁に係合させて保持するもので、スプール胴部に巻き回したワイヤやスプール胴部内側に対する干渉が生じないことはいうまでもない。
また、上記定置手段が下側になるようにケース本体を置けば、内部に収容されたスプールはその中心軸がほぼ水平になるように保持され、スプール胴部に巻き回されたワイヤには、ワイヤ自身の荷重、取り扱いや運搬の際等の振動,衝撃等がワイヤ全長にわたってほぼ均等に分散される構造となり、ワイヤの巻き崩れを効果的に防止することができるため好ましい。
さらに、容器本体の外周隆に凹部を設け、容器本体に保持されたスプールのボンディングワイヤのテープ止め端部を前記凹部の範囲内に位置せしめて露呈させることで、スプールを容器本体に保持させた状態で、ピンセット等の道具を用いて前記テープ止め端部のテープを剥がすことができる。
【0010】
上記テープ止め端部を露呈させるための凹部は、上記定置手段に対向させてケース本体の上面側に設けることが好ましい。
この場合、上記定置手段が下側になるように容器本体を置けば、該容器本体に保持されたスプールはその中心軸がほぼ水平になるように保持され、且つテープ止め端部は容器本体の上側に露呈するので、テープ剥がし作業が右勝手、左勝手の双方に対応可能となる。
【0011】
上記外周隆の内側面に、スプールホルダの突出部に対応する逃げ用凹部を設けると良い。
この場合、容器本体に保持されたスプールをスプールホルダに装着する際の取り扱いが容易になり、汎用性が向上するため好ましい。
【0012】
上記容器本体における外周隆で囲まれた部分にケース本体外側へ突出する把持部を形成すると良い。この場合、容器本体の取り扱いは把持部を把持して行うことで、係合部の不用意な変形を防止して、スプールの脱落防止をより確実になすことができる。
また前記把持部の表面に滑り止め部を形成することで、その把持を確実ならしめることができ、好ましい。滑り止め部は、把持部表面に複数の凸部又は凹部を適宜間隔ごとに形成したり、把持部表面に梨地処理を施して滑り止め処理を施す等により形成することができる。
【0013】
また本発明は、ボンディングワイヤを巻き回したスプールを、相互に嵌合する容器本体と蓋体からなるケース本体の内部に収容したボンディングワイヤ用スプールケースであって、前記容器本体は、前記蓋体と嵌合する外周隆の内側面に、ケース本体内に収容されるスプールのフランジ外周縁に弾性係合する係合部を複数設けて、該容器本体と一体に各係合部が弾性変形してスプールを着脱自在に保持するよう形成する一方、前記蓋体にはスプールの胴部内側に緩嵌する膨出状の嵌合隆を設け、該嵌合隆の突端部分を蓋体の開口縁より突出させたことを要旨とする。
【0014】
このように構成した場合、容器本体と一体に各係合部が弾性変形してスプールのフランジ外周縁に係脱自在に係合し、スプールは容器本体に着脱自在に保持されるので、スプールに直接手を触れることなく該スプールを取り扱うことができる。該保持状態は、係合部を変形させてフランジから外さない限り解除されない。また該保持状態は、係合部をフランジ外周縁に係合させて保持するもので、スプール胴部に巻き回したワイヤやスプール胴部内側に対する干渉が生じないことはいうまでもない。
また、容器本体と蓋体を相互に嵌合させた状態において、スプールは、上記係合部によって容器本体に保持されると同時に、上記嵌合隆により蓋体に保持され、ケース本体内におけるスプールの保持がより確実になる。
さらに、上記嵌合隆の突端を蓋体の開口縁より突出させたので、容器本体と蓋体を相互に嵌合する際に、容器本体に保持されたスプールに巻き回されたボンディングワイヤが蓋体の開口縁に触れることのないよう、前記嵌合隆がガイドとなってスプールを蓋体中心方向へ導く。
【0015】
上記容器本体における外周隆で囲まれた部分に、スプールホルダの突出部に対応する逃げ用の孔を形成すると共に、該孔を上記嵌合隆で閉塞可能に形成すると良い。
この場合、容器本体に保持されたスプールをスプールホルダに装着する際、スプールホルダの突出部を孔に逃がすことで取り扱いが容易になり、汎用性が向上するため好ましい。また、容器本体と蓋体を相互に嵌合した際は前記孔を嵌合隆で閉塞して、埃,塵等の侵入を防止することができる。
【0016】
上記孔を上記嵌合隆で閉塞可能に形成するための具体例としては、容器本体と蓋体を相互に嵌合した際に、嵌合隆の突端が上記孔に嵌合するよう嵌合隆を形成する。この場合、嵌合隆突端の蓋体開口縁からの突出量が比較的大きくなるので、嵌合隆による前述のガイド機能の向上が期待できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面を参照して説明する。
本例のボンディングワイヤ用スプールケースは図2に示すように、ボンディングワイヤ1を巻き回したスプール2をケース本体aの内部に収容したものであって、ケース本体aは図1,図3に示すように、相互に嵌合する容器本体3と蓋体4からなる。
【0018】
スプール2は、この種技術分野において通常用いられる構造のもので、ボンディングワイヤ1を巻き回すための筒状の胴部2aと、該胴部2aの両端開口縁に周設した左右のフランジ2b,2bを備えている。
【0019】
ケース本体aは、相互に嵌合する容器本体3と蓋体4からなり、該容器本体3、蓋体4はプラスチック材等を使用して真空成形法等で成型するをもって弾性変形可能に一体成形され、容器本体3にボンディングワイヤ1を巻き回したスプール2を保持し、側方から蓋体4を被嵌状に被せるものである。
【0020】
容器本体3は、その外周部分に蓋体4の開口縁4aと嵌合する外周隆5を備え、この外周隆5で囲まれた中央部分には、ケース本体aの外側へ突出する膨出状の把持部6を外周隆5と一体に連設する。
また容器本体3は、スプール2を着脱自在に保持するための係合部7を複数備えている。
【0021】
係合部7は、上記外周隆5の頂面となる内側面5a、すなわち、容器本体3に保持されるスプール2の一方のフランジ2bの外側面2cと当接する内側面5aに、上記フランジ2bの外周縁に沿って適宜間隔ごとに対応するよう複数設けられ、その先端部は前記フランジ2bの外周縁に弾性係合するよう略爪状又は略鉤状に形成し、各係合部7を前記一方のフランジ2bの外周縁に係合させるをもって、該フランジ2bを係脱自在に保持し、これにより、スプール2は片持ち状態で容器本体3に着脱自在に保持される。
【0022】
夫々の係合部7は外周隆5の内側面5aと一体に連設して、外周隆5と一体に各係合部7が弾性変形し、フランジ2bに対する係脱(すなわち、スプール2の着脱)を行えるよう形成する。
尚、本例では左右二つの係合部7をフランジ2bの外周縁の左右二箇所に対応するよう設けると共に、上記略爪状又は略鉤状部分を備えない係合部7’を、フランジ2bの外周縁の下端側に当接してフランジ2bを支承可能に設け、これら三つの係合部でフランジ2bを着脱自在に保持するようにしたが、係合部の数や形状、設ける位置等はこれに限定されず、スプール2を保持可能で且つその脱着が可能な適宜数を適所に設けることができる。
【0023】
上記内側面5aの裏面となる外周隆の外側面には、前記各係合部7に対応せしめてリブ8を一体に連設し、外周隆の外端縁5bを内側に弾性変形させた際、このリブ8を支点として各係合部7が開方向に弾性変形し、フランジ2bに対する係脱が容易になされるよう形成する。
【0024】
外周隆5の内側面5aには、スプールホルダ100 の突出部(例えば後述する掛止手段200 )に対応する逃げ用凹部9を、前記係合部7の形成に支障がなく、且つ容器本体3に必要な強度,耐久性,弾性が維持される範囲で、適宜複数箇所に設ける。
これにより、容器本体3に保持されたスプール2をスプールホルダ100 に装着する際、掛止手段200 を凹部9に逃がすことで取り扱いが容易になり、汎用性が向上するため好ましい。
また、凹部9は広い方が好ましい。広い凹部であるほど、スプールホルダ100 の突出部(掛止手段200 )の位置合わせが容易になり、スプールホルダ100 へのスプール2の装着がより容易になると共に、汎用性が更に向上する。また凹部9は、簡素な形状の方がごみの付着を防止し得、洗浄し易いため好ましい。
【0025】
外周隆5の下面には平坦状の定置面10aを形成し、蓋体4の後述する定置面10bと共に、ケース本体a内部に収容したスプール2をその中心軸がほぼ水平になる横向き状態で保持可能な定置手段を形成する。
【0026】
上記把持部6は、外周隆5の内側面5aの内端縁からケース本体a外方へ向けて筒状の面部を一体に連設してなり、容器本体3を取り扱う際の持ち手として機能し、係合部7の不用意な変形を防止する。すなわち、把持部6を設けない場合は外周隆5が把持部として機能するようになるが、この場合、不用意に外周隆5を変形させるに伴い係合部7が変形し、スプール2が脱落する虞れが無いとは言えない。そこで本例のように把持部6を設けることで、容器本体3を取り扱う際は把持部6を持ち手とすれば、係合部7の不用意な変形を防止できる。
把持部6の表面は梨地処理(滑り止め処理)を施すことで滑り止め部6’を形成し、その把持を確実ならしめる。
把持部6の内側の空間11は、容器本体3に保持されたスプール2の胴部2a内側に対応させ、スプールホルダ100 の突出部(例えば後述する掛止手段200 )などの逃げ部として機能させる。
また把持部6の膨出端部は閉塞せずに開口部12とし、該開口部12は、スプールホルダ100 の突出部(例えば後述する掛止手段200 )に対応する逃げ用の孔とする。
【0027】
尚、上記把持部6は突出基端側から先端側に向けて、その外径が漸次小径となる略円錐台形状に形成し、容器本体3同士を密接状に積み重ねることができるようにして、容器本体3の保管,運搬等の際のコストの低減を図るようにする。
【0028】
蓋体4は、容器本体3の外周隆5に嵌合してスプール2を被嵌するもので、その深さはスプール2の長さとほぼ同じ位に形成して、その側面壁4bにスプール2の他方のフランジ2bが当接するようにする。
【0029】
蓋体4の周壁は、上記外周隆5に嵌合可能な略半円筒状とすると共に、下面には平坦状の定置面10bを形成して前述のごとく定置手段を形成する。
該定置手段は、スプール2を収容したケース本体aを作業テーブル上や運搬ケース内等に置く際に、そのスプール2の中心軸がほぼ水平になる横向き状態でスプール2を保持可能とし、これにより、胴部2aに巻き回されたワイヤ1には、ワイヤ1自身の荷重、取り扱いや運搬の際等の振動,衝撃等がワイヤ1全長にわたってほぼ均等に分散される構造となり、ワイヤ1の巻き崩れを効果的に防止出来、さらにケース本体aの転がり防止も図れる。
【0030】
蓋体4の内部には、容器本体3に保持されたスプール2の胴部2a内側に緩嵌する膨出状の嵌合隆13を設け、ケース本体aにおいてはスプール2を、容器本体3に片持ち状に保持すると同時に、嵌合隆13により蓋体4に保持して、スプール2の保持をより確実ならしめる。
また、嵌合隆13の突端部分は蓋体4の開口縁4aより突出させ、容器本体3と蓋体4を相互に嵌合する際に、容器本体3に保持されたスプール2に巻き回されたボンディングワイヤ1が蓋体4の開口縁4aに触れることのないよう、嵌合隆13がガイドとなってスプール2を蓋体4中心方向へ導く。
【0031】
また嵌合隆13は、蓋体開口縁4aから突出する部分が把持部6の内側空間11に遊挿され、且つその突端13aは把持部6端部の開口部12に嵌合して該開口部12を閉塞可能に形成する。
さらに嵌合隆13は、基端側から先端側に向けてその外径が漸次小径となる略円錐台形状に形成し、蓋体4同士を密接状に積み重ねることができるようにして、蓋体4の保管,運搬等の際のコストの低減を図るようにする。
【0032】
スプール2の胴部2aに巻き回されたワイヤ1は、その巻き終り端部を一方のフランジ2bにテープ止めされるが、本例では容器本体3の外周隆5に、このテープ止め端部1aを露呈させる凹部14を設けてある。
凹部14は、上記定置手段となる定置面10aに対向させて外周隆5の上面側に設け、テープ止め端部1aが該凹部14の開口範囲内に位置するようスプール2を容器本体3に保持して露呈させることで、容器本体3に保持したスプール2のテープ止め端部1aを、ピンセット等の道具を用いて剥がすことができる。
また、テープ止め端部1aは容器本体3の上側に露呈するので、前記したテープ剥がし作業が右勝手、左勝手の双方に対応可能となる。
【0033】
図中15は嵌合隆13に嵌合したスプール2のフランジ2bの外側面2cに当接するべく、蓋体4の側面壁4bに凹設された押圧部、16は同スプール2の胴部2a内周に当接するべく、嵌合隆13の外周に突設された押圧部で、これら押圧部15,16はスプール2のガタ付き防止に寄与する。
【0034】
ところで、この種スプールケースのケース本体aは、使用後に回収され、検査、洗浄、乾燥作業を経て繰り返し使用されるが、本例では上述した容器本体3、蓋体4における隅部になる箇所、例えば逃げ用凹部9、凹部14、押圧部15,16等の凹み部位の角隅部や、外周隆5における内側面5aと把持部6との連設角部等を全て1R以上の湾曲面として、洗浄後の乾燥工程における水切りが迅速且つ確実になされるよう考慮している。
【0035】
さらに本例では、ケース本体aの適所に、内部に収容されたスプール2を取り出す際の順序を表示している。
すなわち、容器本体3における把持部6と、蓋体4の各外端部位には、相互に嵌合する容器本体3と蓋体4を分離させることを認識させるための外向きの矢印17,18を記し、さらに外周隆5の係合部7近傍には、外端縁5bを内側に弾性変形させて係合部7を変形させスプール2の取り外しを行うための押圧箇所を認識させる三角形の記号19を記す。また、前記矢印17,18と記号19には、操作順序を表示する数字20,21,22を記す。
【0036】
以上のように構成した本例のスプールケースは、ボンディングワイヤ1を巻き回したスプール2の一方のフランジ2bの外周縁に、容器本体3における外周隆5の内側面5aの各係合部7を弾性係合せしめて、容器本体3にスプール2を保持させ、該スプール2の胴部2aに嵌合隆13を差し込みながら容器本体3と蓋体4を嵌合させて、ケース本体aの内部に前記スプール2を収容することができる。
そうして、定置面10a,10bが下側になるようにケース本体aを取り扱うことで、収容されたスプール2をその中心軸がほぼ水平になるように保持して巻き回されたボンディングワイヤ1の巻き崩れ防止を図る。
また容器本体3と蓋体4を分離させてケース本体aを開いた後は、スプール2が保持された容器本体3を取り扱うをもって、スプール2に直接手を触れることなく該スプール2の着脱を行うことができる。
【0037】
すなわち、スプール2の保持は各係合部7の弾性係合力により維持され、それら係合部7を弾性変形させてフランジ2bから外さない限り解除されない。また該保持状態は、各係合部7をフランジ2b外周縁に係合させて保持するもので、スプール胴部2aに巻き回したワイヤ1や胴部2a内側に対する干渉が生じない。
【0038】
例えば、スプールホルダ100 へスプール2を装着する場合は、把持部6を持って容器本体3をホルダ100 に被せるようにして、該ホルダ100 にスプール2を外装し、次いで外周隆5の外端縁5bを内側に変形させれば、各係合部7を一体に弾性変形してフランジ2bとの係合が外れ、しかる後容器本体3のみを外せば、スプール2はホルダ100 に装着される(図6参照)。
またその際、ホルダ100 に付設されたスプール掛止手段200 を凹部9,空間11,開口部12等に逃がすことができ、該掛止手段200 がスプール装着作業の邪魔になることはない。
ホルダ100 からスプール2を外すときは、上記の作業を逆から行ってスプール2を容器本体3に保持させれば良い。
【0039】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明はこれに限定されず、本願の特許請求範囲に記載された技術的思想の範囲内であれば、他の異なる実施形態とすることも可能であり、特に、本願出願人による先提案のスプールケース(特願平9−214783号、特願平9−342843号、特願平10−11107号等)に開示された構成との組み合わせを図ることは、本願と先提案の構成との相乗効果が期待できるので好ましい。
【0040】
例えば図7は、上記した定置面10a,10bを形成せずにケース本体aの下端面を傾斜面とする一方、同下端面には、中心軸が水平になるようにスプール2を保持するための脚部23を設けて、上記定置手段を形成している。
さらにこの脚部23を折り畳み自在に形成すれば、容器本体3,蓋体4同士を密接状に積み重ねることができるので好ましい。
【0041】
さらに容器本体、蓋体の何れか一方又は双方を透明体とすれば、スプール2に巻かれたワイヤ1の種別,規格等を確認できるため好ましい。
【0042】
尚、図示の都合上、ボンディングワイヤ1は実際より大径で、且つスプール2に対し単層状に巻き付けるよう示したが、該ワイヤ1は直径1mm以下の細線であってスプール2に多層状に巻回され、且つ係合部7の先端部は、該多層状に巻回されるワイヤ1の表層部分に接触しない程度の寸法をもって形成することはいうまでもない。
【0043】
【発明の効果】
本発明のスプールケースは以上説明したように、容器本体に設けた係合部をフランジ外周縁に係合させることで、該容器本体にスプールを保持させることができる。
従って、ワイヤ表面に手が触れてしまうことによりワイヤ損傷等が生じることなくスプールを取り扱えると共に、スプールホルダの長短やスプール掛止手段の存在等に左右されずに各種ボンダへの対応が可能な汎用性を備える。
また、係合部によりフランジ保持状態が維持されるので、万が一作業者が手を緩めたとしても、スプール脱落の虞れのない信頼性の高い取り扱い作業を実現できる。
さらに、定置手段によりスプールが水平に保持されるようにしてワイヤの巻き崩れ防止を図り、さらにワイヤのテープ止め端部を、容器本体の外周隆に設けた凹部の開口範囲内に位置せしめて露呈させることで、スプールを容器本体に保持させた状態でピンセット等の道具を用いて前記テープ止め端部のテープを剥がすことができる等、多くの効果を奏する。
【0044】
上記凹部をケース本体の上面側に設けた場合、テープ止め端部が容器本体の上側に露呈するので、テープ剥がし作業が右勝手、左勝手の双方に対応可能となる。
【0045】
上記外周隆の内側面に、スプールホルダの突出部に対応する逃げ用凹部を設けた場合、容器本体に保持されたスプールをスプールホルダに装着する際の取り扱いが容易になると共に、汎用性が向上する等の利点がある。
【0046】
上記容器本体に把持部を形成し、容器本体の取り扱いは把持部を把持して行う場合、係合部の不用意な変形を防止して、スプールの脱落防止をより確実になすことができる。
また把持部表面に滑り止め部を形成した場合、その把持を確実ならしめることができる。
【0047】
また、蓋体にはスプールの胴部内側に緩嵌する膨出状の嵌合隆を設け、該嵌合隆の突端部分を蓋体の開口縁より突出させた場合、ケース本体内のスプールの保持は、上記係合部と嵌合隆とで、より確実になされる。
上記嵌合隆の突端を蓋体の開口縁より突出させた場合、巻き回されたボンディングワイヤが蓋体の開口縁に触れることのないよう、嵌合隆がガイドとなってスプールを蓋体中心方向へ導くという利点がある。
【0048】
上記容器本体における外周隆で囲まれた部分に、スプールホルダの突出部に対応する逃げ用の孔を形成し、該孔を上記嵌合隆で閉塞可能に形成した場合、スプールホルダへのスプール装着に際し、ホルダの突出部を孔に逃がすことで取り扱いが容易になると共に、汎用性が向上する利点があり、また容器本体と蓋体を相互に嵌合した際は前記孔を嵌合隆で閉塞して、埃,塵等の侵入を防止することができる等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すケース本体の分解斜視図。
【図2】本発明の実施の形態の一例を示す一部切欠正面図。
【図3】本発明の実施の形態の一例を示すケース本体の分解断面図。
【図4】容器本体の一部切欠側面図。
【図5】蓋体の一部切欠側面図。
【図6】使用状態を示す断面図。
【図7】本発明の実施の形態の他例を示す正面図。
【符号の説明】
a:ケース本体
1:ボンディングワイヤ
2:スプール
2a:胴部
2b:フランジ
3:容器本体
4:蓋体
5:外周隆
6:把持部
6’:滑り止め部
7:係合部
9:逃げ用凹部
10a,10b:定置面(定置手段)
12:開口部(逃げ用の孔)
13:嵌合隆
Claims (6)
- ボンディングワイヤを巻き回したスプールを、相互に嵌合する容器本体と蓋体からなるケース本体の内部に収容したボンディングワイヤ用スプールケースであって、
前記ケース本体は、内部に収容したスプールをその中心軸がほぼ水平になる横向き状態で保持可能な定置手段を下面側に備えると共に、
前記容器本体は、前記蓋体と嵌合する外周隆の内側面に、ケース本体内に収容されるスプールのフランジ外周縁に弾性係合する係合部を複数設けて、該容器本体と一体に各係合部が弾性変形してスプールを着脱自在に保持するよう形成し、且つ前記外周隆に、容器本体に保持されたスプールにおけるボンディングワイヤのテープ止め端部を露呈させる凹部を形成したことを特徴とするボンディングワイヤ用スプールケース。 - 上記凹部は、上記定置手段に対向させてケース本体の上面側に設けたことを特徴とする請求項1記載のスプールケース。
- 上記外周隆の内側面に、スプールホルダの突出部に対応する逃げ用凹部を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のスプールケース。
- 上記容器本体における外周隆で囲まれた部分にケース本体外側へ突出する把持部を形成すると共に、該把持部の表面に滑り止め部を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスプールケース。
- ボンディングワイヤを巻き回したスプールを、相互に嵌合する容器本体と蓋体からなるケース本体の内部に収容したボンディングワイヤ用スプールケースであって、
前記容器本体は、前記蓋体と嵌合する外周隆の内側面に、ケース本体内に収容されるスプールのフランジ外周縁に弾性係合する係合部を複数設けて、該容器本体と一体に各係合部が弾性変形してスプールを着脱自在に保持するよう形成する一方、前記蓋体にはスプールの胴部内側に緩嵌する膨出状の嵌合隆を設け、該嵌合隆の突端部分を蓋体の開口縁より突出させたことを特徴とするボンディングワイヤ用スプールケース。 - 上記容器本体における外周隆で囲まれた部分に、スプールホルダの突出部に対応する逃げ用の孔を形成すると共に、該孔を上記嵌合隆で閉塞可能に形成したことを特徴とする請求項5記載のスプールケース。
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