JP3794258B2 - スタータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スタータの換気経路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術として、例えば特開平7−103116号公報に開示されたスタータの換気装置がある。この換気装置は、図6に示す様に、クラッチケース100に複数の肉盗み空間110を設け、この肉盗み空間110とクラッチ室120とを介して図示しない始動モータの内部空間(モータ室)を外部と連通させている。
この構成によれば、モータ室から外部に通じる換気通路を長く、且つ複雑に形成できるので、モータ室への浸水を容易に防止できる効果がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の構成では、肉盗み空間110とクラッチ室120とを連通する連通孔130が、クラッチ室120の上部に配されるギヤ140(減速装置)の径方向外周に設けられているため、ギヤ140の回転によって飛散したグリスが付着して連通孔130を塞ぎ、換気できなくなる問題があった。
また、換気通路を流れる循環空気は、モータ室で発生したブラシ粉を含んでいるため、そのブラシ粉がクラッチ室120に侵入してグリスに混入すると、ギヤ140等の異常摩耗を引き起こす恐れがあった。更に、循環空気に含まれるブラシ粉が連通孔130の周囲に付着して連通孔130を塞ぐ恐れもある。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、グリスの付着による換気経路の遮断を防止でき、且つブラシ粉の拡散を抑制できるスタータの換気経路を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
(請求項1の手段)
本発明は、アーマチャを収納するモータ室とマグネットスイッチの内部空間(スイッチ室と呼ぶ)とを連通して換気経路の一部を構成する連通路を有するスタータにおいて、フロントハウジングとセンタハウジングは、互いの合わせ面にそれぞれ肉盗み空間が形成され、且つ両者の肉盗み空間は、一部が重なった状態で互いにずれた位置に設けられて迷路状の通路を形成し、センタハウジングには、自身の壁面を貫通してモータ室と迷路状の通路とを連通するモータ側換気孔と、フロントハウジングに形成された肉盗み空間に連通する連絡室と、センタハウジングの壁面を貫通して連絡室とスイッチ室とを連通するスイッチ側換気孔とが設けられ、連通路は、モータ側換気孔と、迷路状の通路と、連絡室と、スイッチ側換気孔とで構成されている
この構成によれば、減速機構で使用されるグリスがギヤの回転によって飛散しても、連通路がグリスによって塞がれることはなく、換気経路を確保できる。
また、モータ室で発生したブラシ粉が換気経路を流れる循環空気に乗って飛ばされても、連通路が迷路構造であるため、ブラシ粉が連通路を通り抜けてマグネットスイッチの内部空間へ侵入する可能性は極めて低く、ブラシ粉の拡散を防止できる。
【0007】
(請求項の手段)
請求項に記載したスタータにおいて、フロントハウジングは、ギヤ室と肉盗み空間との間で、センタハウジングとの合わせ面より突出して連絡室内へ入り込む隔壁が設けられている。
この場合、ギヤ(減速機構)の回転によってグリスが飛散した時でも、隔壁によってグリスが肉盗み空間(迷路状の通路)へ入り込むことを防止できる。
【0008】
(請求項の手段)
請求項1または2に記載したスタータにおいて、センタハウジングは、天地方向でスイッチ側換気孔よりモータ側換気孔の方が下方に設けられており、フロントハウジングは、モータ側換気孔に通じる肉盗み空間がモータ側換気孔より低い位置まで設けられ、ブラシ粉を溜めるスペースが確保されている。
この構成によれば、肉盗み空間の迷路構造によって肉盗み空間から抜け出せなかったブラシ粉をモータ側換気孔より低い肉盗み空間のスペースに溜めることができる。言い換えると、肉盗み空間の底部にブラシ粉が溜まっても、そのブラシ粉によってモータ側換気孔が塞がれることはなく、ブラシ粉の拡散防止効果を長期間維持することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1はスタータの換気経路を示すハウジングの断面図、図2は図1のB視図(フロントハウジングの合わせ面側から見た平面図)、図3は図1のC視図(センタハウジングの合わせ面側から見た平面図)、図5はスタータの全体図である。
本実施例のスタータ1は、図5に示す様に、アーマチャ2の回転を減速する減速機構(後述する)を備え、この減速機構を収納するギヤ室3(図2参照)が形成されたフロントハウジング4に対し、センタハウジング5を介して始動モータ6とマグネットスイッチ7が二軸構成で組付けられている。
【0010】
上記の減速機構は、図2に示す様に、アーマチャ2の回転軸2aに設けられたドライブギヤ8、このドライブギヤ8と噛み合うアイドルギヤ9、このアイドルギヤ9と噛み合うクラッチギヤ10によって構成され、アーマチャ2の回転がドライブギヤ8→アイドルギヤ9→クラッチギヤ10へと伝達される間に減速されて回転力を増大する。クラッチギヤ10の回転力は、クラッチギヤ10の内周に設けられる一方向クラッチ(図示しない)を介してピニオンシャフト11に伝達され、このピニオンシャフト11にスプライン結合するピニオンギヤ12を回転駆動する。
【0011】
始動モータ6は、図5に示す様に、モータハウジング(下述する)の内部にアーマチャ2及びブラシ13等が収納されて構成される。
モータハウジングは、アーマチャ2の外周に固定磁極14を配置する円筒状のヨーク15と、このヨーク15の前端開口部を塞ぐセンタハウジング5と、ヨーク15の後端開口部を塞ぐエンドカバー16とで構成され、エンドカバー16には換気パイプ17が取り付けられている。
アーマチャ2は、図5に示す様に、ベアリング18、19を介してセンタハウジング5とエンドカバー16とに回転自在に支持され、マグネットスイッチ7に内蔵されるモータ接点(図示しない)が閉じると、ブラシ13を通じて給電されて回転する。
【0012】
マグネットスイッチ7は、センタハウジング5と一体に設けられたスイッチケース20(図1参照)の内部にコイル21、プランジャ22、モータ接点等が収納され、スイッチケース20の後端開口部がエンドプレート23によって気密に塞がれている。
このマグネットスイッチ7は、コイル21が通電されると、磁力を受けてプランジャ22が吸引されることでモータ接点を閉じるとともに、ロッド24を介してピニオンシャフト11を前方(図5の左方向)へ押し出す。コイル21への通電が停止されると、磁力の消滅に伴ってプランジャ22が押し戻されてモータ接点を開く。
【0013】
このスタータ1には、モータハウジングの内部空間(以下モータ室25と呼ぶ)と、エンドプレート23で塞がれたスイッチケース20の内部空間(以下スイッチ室26と呼ぶ)とを連通して換気経路の一部を構成する連通路27(図1に矢印で示す)が設けられている。
その連通路27は、図1に示す様に、フロントハウジング4とセンタハウジング5との合わせ面に形成される両者の肉盗み空間28、29、この肉盗み空間28、29とモータ室25とを連通するモータ側換気孔30、ギヤ室3の側方に形成されてフロントハウジング4の上部肉盗み空間28に通じる連絡室31、この連絡室31とスイッチ室26とを連通するスイッチ側換気孔32により構成される。
【0014】
フロントハウジング4の肉盗み空間28は、図2に示す様に、減速機構のドライブギヤ8とアイドルギヤ9を収納しているギヤ室3の下部側に隣接して設けられている。この肉盗み空間28は、ギヤ室3との間に設けられるリブ33の端面がセンタハウジング5の合わせ面に密着することにより、ギヤ室3と直接に連通することはなく区画されている。
センタハウジング5の肉盗み空間29は、図3に示す様に、ヨーク15の前端開口部を塞いでいる部分の端面(合わせ面)に円弧状に並んで設けられている。
但し、両者の肉盗み空間28、29は、図1に示す様に、フロントハウジング4とセンタハウジング5とを組み合わせた時に、互いの一部が重なった状態で交互にずれた位置に設けられており、迷路構造を形成している。
【0015】
モータ側換気孔30は、図1に示す様に、モータ室25の前方側を塞ぐセンタハウジング5の壁面を軸方向に貫通して設けられ、センタハウジング5に形成された最下部の肉盗み空間29に開口している(図3参照)。
連絡室31は、図1及び図3に示す様に、クラッチギヤ10の外周部に対向してセンタハウジング5の端面に設けられた環状凹部34の一部を肉盗み空間29側へ延長して設けられ、フロントハウジング4の上部肉盗み空間28と通じている。なお、上記の環状凹部34は、ベアリング35を保持する円筒状の軸受保持部36の外周に形成されている。
【0016】
スイッチ側換気孔32は、図1に示す様に、スイッチ室26の前方側を塞ぐセンタハウジング5の壁面を軸方向に貫通して設けられ、前記の連絡室31に通じている(図3参照)。
これにより、モータ室25とスイッチ室26は、モータ側換気孔30、肉盗み空間28、29、連絡室31、スイッチ側換気孔32によって相互に連通し、更に換気パイプ17を通じてスタータ1の外部とも連通している。
【0017】
フロントハウジング4の端面(合わせ面)には、図2及び図4に示す様に、前述の環状凹部34を有するセンタハウジング5の外周縁部とインロー嵌合する嵌合壁部37(本発明の隔壁)が突設され、この嵌合壁部37がギヤ室3のクラッチギヤ10側に設けられている。この嵌合壁部37は、図2に示す様に、円周上の一方の端部が肉盗み空間28の上端部とギヤ室3との間を遮る位置まで設けられており、フロントハウジング4とセンタハウジング5とを組み合わせた時に、嵌合壁部37の端部が連絡室31に入り込んでいる(図1参照)。
【0018】
次に、本実施例の作用及び効果について説明する。
なお、スタータ1の作動は極めて周知であり、ここでは説明を省略する。
スタータスイッチ(図示しない)がONされてマグネットスイッチ7のコイル21が通電され、プランジャ22が吸引されることでスイッチ室26に圧力変動が生じると、スタータ1の内部には、スイッチ室26からスイッチ側換気孔32→連絡室31→肉盗み空間28、29(迷路構造)→モータ側換気孔30→モータ室25へ通じる換気経路を経て、更に換気パイプ17から外気へ開放される換気流が発生する。
【0019】
この場合、上記の換気経路は、モータ側換気孔30とスイッチ側換気孔32とを連通する連通路27が減速機構を収納するギヤ室3を側方へ迂回して設けられているので、減速機構で使用されるグリスが各ギヤ8〜10の回転によって飛散しても、連通路27がグリスによって塞がれることはなく、換気経路を確保できる。
また、図1に示した様に、フロントハウジング4に設けられた嵌合壁部37が連絡室31の内部へ突出しているので、各ギヤ8〜10の回転によってグリスが飛散した場合でも、嵌合壁部37によってグリスが肉盗み空間28、29へ入り込むことを抑制できる効果がある。
【0020】
更に、フロントハウジング4とセンタハウジング5との合わせ面に形成された両者の肉盗み空間28、29を交互にずらして配置することにより、連通路27を迷路構造に形成している。これにより、モータ室25で発生したブラシ粉が換気経路を流れる循環空気に乗って飛ばされても、ブラシ粉が迷路構造の連通路27を通り抜けてギヤ室3あるいはスイッチ室26まで侵入する可能性は極めて低く、ブラシ粉の拡散を防止できる。その結果、ギヤ室3でグリスにブラシ粉が混入することがなく、ブラシ粉の付着によるギヤ類等の異常摩耗を防止できる。また、スイッチ室26では、プランジャ22等の摺動面にブラシ粉が侵入することもなく、プランジャ22の摺動不良等を防止できる。
【0021】
また、フロントハウジング4には、モータ側換気孔30に通じる最下部の肉盗み空間28がモータ側換気孔30より低い位置まで設けられている。この場合、モータ側換気孔30を通って肉盗み空間28、29へ侵入したブラシ粉を最下部の肉盗み空間28に溜めることができる(図1参照)。言い換えると、肉盗み空間28の底部にブラシ粉が溜まっても、そのブラシ粉によってモータ側換気孔30が早期に塞がれることはなく、ブラシ粉の拡散防止効果を長期間維持することができる。
【0022】
なお、本実施例のスタータ1は、マグネットスイッチ7を始動モータ6の上側に配置しているが、その位置関係は特に限定されるものではなく、マグネットスイッチ7を始動モータ6の下側に配置しても良い。
また、始動モータ6のエンドカバー16に換気パイプ17を取り付けているが、マグネットスイッチ7(例えばスイッチケース20)に換気パイプ17を取り付けても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】スタータの換気経路を示すハウジングの断面図である。
【図2】図1のB視図(フロントハウジングの合わせ面側から見た平面図)である。
【図3】図1のC視図(センタハウジングの合わせ面側から見た平面図)である。
【図4】フロントハウジングの合わせ面側を示す斜視図である。
【図5】スタータの全体図である。
【図6】従来技術の換気経路を示すクラッチケースの平面図である。
【符号の説明】
1 スタータ
2 アーマチャ
3 ギヤ室
4 フロントハウジング
5 センタハウジング
7 マグネットスイッチ
8 ドライブギヤ(減速機構)
9 アイドルギヤ(減速機構)
10 クラッチギヤ(減速機構)
25 モータ室
26 スイッチ室(マグネットスイッチの内部空間)
27 連通路
28 フロントハウジングの肉盗み空間
29 センタハウジングの肉盗み空間
30 モータ側換気孔
31 連絡室
32 スイッチ側換気孔
37 嵌合壁部(隔壁)

Claims (3)

  1. アーマチャに回転力を発生する始動モータと、
    前記アーマチャを通電するマグネットスイッチと、
    前記アーマチャの回転を減速する減速機構と
    この減速機構を収納するギヤ室を形成するフロントハウジングと、
    このフロントハウジングに組み合わされるセンタハウジングとを備え、
    前記フロントハウジングに対し、前記センタハウジングを介して前記始動モータと前記マグネットスイッチが二軸構成で組付けられると共に、前記アーマチャを収納するモータ室と前記マグネットスイッチの内部空間(スイッチ室と呼ぶ)とを連通して換気経路の一部を構成する連通路を有するスタータにおいて、
    前記フロントハウジングとセンタハウジングは、互いの合わせ面にそれぞれ肉盗み空間が形成され、且つ両者の肉盗み空間は、一部が重なった状態で互いにずれた位置に設けられて迷路状の通路を形成し、
    前記センタハウジングには、自身の壁面を貫通して前記モータ室と前記迷路状の通路とを連通するモータ側換気孔と、前記フロントハウジングに形成された肉盗み空間に連通する連絡室と、前記センタハウジングの壁面を貫通して前記連絡室と前記スイッチ室とを連通するスイッチ側換気孔とが設けられ、
    前記連通路は、前記モータ側換気孔と、前記迷路状の通路と、前記連絡室と、前記スイッチ側換気孔とで構成されていることを特徴とするスタータ。
  2. 請求項に記載したスタータにおいて、
    前記フロントハウジングは、前記ギヤ室と前記肉盗み空間との間で、前記センタハウジングとの合わせ面より突出して前記連絡室内へ入り込む隔壁が設けられていることを特徴とするスタータ。
  3. 請求項1または2に記載したスタータにおいて、
    前記センタハウジングは、天地方向で前記スイッチ側換気孔より前記モータ側換気孔の方が下方に設けられており、
    前記フロントハウジングは、前記モータ側換気孔に通じる前記肉盗み空間が前記モータ側換気孔より低い位置まで設けられ、ブラシ粉を溜めるスペースが確保されていることを特徴とするスタータ。
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