JP3792105B2 - 石英ガラスの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
石英ガラスの製造方法に係り、さらに詳しくはF2レーザ(157nm)の真空紫外波長域の光透過を要する光学系に使用される石英ガラスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえばSiウェハ上に、集積回路の微細パターンを露光・転写する光リソグラフィ技術においては、ステッパと呼ばれる露光装置が使用される。そして、このステッパの光源は、LSIの高集積化に伴って、KrF(248nm)やArF(193nm)エキシマレーザーから、F2(157nm)レーザリソグラフィへと短波長化が進められている。なお、ステッパの照明系もしくは投影系のレンズに用いられる光学素材としては、短波長域での高透過率および耐紫外線性が要求されるため、合成石英ガラスが使用されている。
【0003】
上記用途に対応して、VAD法をベースとした真空紫外用石英ガラスの製造手段(特開平8−75901号公報)が提案されている。すなわち、スート合成した多孔質ガラスにフッ素をドープした後、フッ素ドープ多孔質ガラスを透明化(石英ガラス化)し、さらに水素をドープする製造方法と、フッ素濃度50ppm以上および水素濃度が1x1017 分子/cm3以上の石英ガラス光学部材が知られている。
【0004】
また、同じくVAD法をベースとした合成石英ガラス光学部材の製造手段(特開平11−302025号公報)も提案されている。すなわち、スート合成した多孔質ガラスにフッ素をドープした後、フッ素ドープ多孔質ガラスを酸素−He系ガス雰囲気中で透明化(石英ガラス化)し、さらに水素をドープする製造方法と、フッ素濃度400ppm以上および酸素の含有量が真空中1000℃昇温時における酸素分子放出量換算で2x1018分子/m2以下、さらに要すれば水素濃度が1x1015 分子/cm3以上の合成石英ガラス光学部材が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、VAD法をベースとした合成石英ガラスは、一般的に、F2 レーザーの波長である157nmでの透過率が約5%と低く、特性的にステッパの照明系もしくは投影系での使用に適さない。なお、ガラス形成原料としてSiCl4 を用い、酸水素火炎中で加水分解して得られる多孔質ガラスに対するフッ素ドープに当たって、フッ素化物としてSiF4 を使用することが、前記短波長域の透過率向上に有効なことも知られている。
【0006】
しかし、フッ素ドープにSiF4 を使用して得たフッ素ドープ石英ガラスは、157nmの短波長域での透過率が必ずしも高いとはいえない。そして、157nmの短波長域の透過率を高めるには、フッ素ドープだけでは十分でなく、酸素欠乏欠陥と呼ばれる≡Si−Si≡(≡は3個のSi−O結合を示す)の欠陥生成を抑制することの重要性も指摘されている。つまり、≡Si−Si≡欠陥は、163nmの吸収ピークを持っており、この酸素欠乏欠陥がフッ素ドープ石英ガラス中に生成すると、その吸収裾の影響で、157nm波長域での透過率が低下することが知られている。
【0007】
たとえば、特開平8−75901号公報に記載された手段で得られた真空紫外用石英ガラスの場合、真空紫外透過率スペクトルで163nmをピークとした吸収が観察され、≡Si−Si≡欠陥がフッ素ドープ石英ガラス中に生成していることも認められる。そして、≡Si−Si≡欠陥の影響により、厚さ6.4mmのフッ素ドープ石英ガラスの157nm波長域での透過率は、約30%と低いものである。
【0008】
一方、特開平11−302025号公報に記載された合成石英ガラス光学部材の場合は、フッ素ドープ石英ガラス中における≡Si−Si≡欠陥の生成を抑制できるが、酸素分子がガラス中に含有されるため、F2レーザー(157nm)を照射すると赤色蛍光が発生し、F2レーザー用に好適するとは言い難い。
【0009】
本発明は、上記事情に対処してなされたもので、F2レーザーリソグラフィに適する157nm波長域での透過率が高いフッ素ドープ石英ガラスを容易に得られる製造方法の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、石英ガラス形成原料を火炎加水分解させて多孔質石英ガラス体化する工程と、前記多孔質石英ガラス体を不活性ガスの雰囲気中で加熱し、加熱温度1000〜1200℃の時点でSiF4濃度1〜20%の雰囲気に切り換えてフッ素ドープ処理する工程と、前記フッ素ドープ処理雰囲気中で昇温して、前記フッ素ドープした多孔質石英ガラス体を透明化処理する工程と、前記透明化処理した後に、水素ガス含有雰囲気中、200〜300℃の温度で水素ドープ処理する工程とを有することを特徴とする石英ガラスの製造方法である。
請求項2の発明は、請求項1記載の石英ガラスの製造方法において、フッ素ドープした多孔質石英ガラス体を透明化処理する工程にて透明石英ガラスインゴットを作製し、このインゴットから切り出した透明石英ガラス板に、水素ガス含有雰囲気中、200〜300℃の温度で水素ドープ処理することを特徴とする。
【0011】
請求項1および2の発明は、≡Si−Si≡欠陥の生成が、フッ素ドープ石英ガラスの製造過程での過剰な脱水に起因することに着目してなされたものである。すなわち、VAD法をベースとしたフッ素ドープ石英ガラスの製造では、フッ素をドープする前に、塩素あるいは水素による脱水が行われる。また、≡Si−Si≡欠陥は、脱水処理したVAD合成石英ガラスによく見られる。
【0012】
そして、この≡Si−Si≡欠陥の生成メカニズムは明確でないが、脱水し過ぎるとガラスネットワーク構造にある≡Si−O−Si≡結合中の酸素が抜け、≡Si−Si≡欠陥が生成すると考えられる。つまり、VAD法をベースとしたフッ素ドープ石英ガラスの製造方法において、過度の脱水を防止ないし抑制することにより、157nm波長域での透過率が高いフッ素ドープ石英ガラスを提供するに至ったものである。
【0013】
請求項1の発明において、多孔質石英ガラス体化は、たとえばSiCl4 を酸水素火炎中で加水分解し、得られたガラス微粒子を堆積させることによって行われる。そして、この多孔質石英ガラス体に対して、いわゆるフッ素ドープなどを行うが、特に、このときの操作条件に考慮が払われる。
【0014】
すなわち、多孔質石英ガラス体をSiF4 ガス雰囲気に曝して、フッ素ドープを行うと同時に脱水も行われる。この過程で、SiF4 濃度が1%未満では、所要のフッ素ドープが困難であり、20%を超えると脱水し過ぎて、効果的に、≡Si−Si≡欠陥の生成を抑制することができない。したがって、SiF4 濃度は、1〜20%の範囲内に選ぶ必要がある。
【0015】
また、SiF4 ガスを導入するときの温度(多孔質石英ガラス体の)が、1000℃未満では、透明化温度である1450℃まで、SiF4 ガス雰囲気に曝す時間が必然的に長くなり、脱水し過ぎて、≡Si−Si≡欠陥の生成を抑制することが困難となる。一方、1200℃を超えると、多孔質石英ガラス体の熱による収縮が始まり、十分なフッ素ドープが行われない。したがって、上記所定濃度のSiF4 ガスを導入するときの温度は、1000〜1200℃の範囲内で選ばれる必要がある。
【0016】
請求項1および2の発明において、フッ素ドープした多孔質石英ガラス体の透明化は、前記フッ素ドープ処理した雰囲気中で行われる。ここで、SiF4 ガスを含まない雰囲気中で透明化処理すると、フッ素の拡散が起こり易く、結果的に、多孔質石英ガラス体にドープされたフッ素が抜け出して、≡Si−Si≡欠陥が生成する。したがって、透明化処理は、フッ素ドープ処理と同様の雰囲気中で行なわれる必要がある。
【0017】
請求項1および2の発明において、透明化処理したフッ素ドープ多孔質石英ガラス体に対する水素ドープは、200〜300℃の温度範囲内で行われる。すなわち、水素ガス含有雰囲気中で、水素ドープ処理するに当たり、そのときの加熱温度が200℃未満では水素ドープが不十分であり、逆に、300℃を超えると、化学反応が起こってSi−H結合が生成する。このSi−H結合の生成は、F2レーザー(157nm)耐性の低下を招来して、実用性が損なわれる。したがって、水素ドープ処理温度は、200〜300℃の温度範囲内とする必要がある。
【0018】
なお、このフッ素ドープ多孔質石英ガラス体に対する水素ドープは、次のように行ってもよい。すなわち、多孔質石英ガラス体を透明化する際に透明石英ガラスインゴットを作製し、その透明石英ガラスインゴットから任意の厚さに石英ガラス板を切り出して、板の状態で上記水素ドープ処理を行ってもよい。そして、この場合は、水素ドープ処理の時間を過剰に長くする必要もなくなり、数十時間の処理で済ませることができ、工業的生産性の上で、大きな利点となる。
【0019】
【発明の実施態様】
【0020】
実施例1
先ず、ガラス成形原料としてのSiCl4 を酸水素火炎中で加水分解させ、生成したシリカ微粒子を石英ガラス製のターゲットに堆積させて、直径250mm、長さ500mmの多孔質シリカ(スート)を得た。次いで、前記スートを試料として、流量20l/minのHeガス雰囲気中、400℃/hの昇温速度で1200℃まで昇温した後、雰囲気ガスをSiF4 10%+He90%の混合ガスに切り換え(流量20l/min)、1200℃で2hキープしてフッ素ドープを行った。
【0021】
前記フッ素ドープ処理終了後、雰囲気はそのままとして、400℃/hの昇温速度で1450℃まで昇温し、1450℃で2hキープして透明化処理行って、直径125mm、長さ250mmの合成石英ガラスインゴットを得た。この合成石英ガラスインゴットを切断し、直径125mm、厚さ8mmの円盤状のガラスを切り出して、流量20l/minのH2雰囲気中、300℃で30hキープして水素ドープ処理を行った。
【0022】
前記水素ドープした円盤状ガラスから、長さ62.5mm、幅15mm、厚さ8mmの片を切り出し、光学研磨を施して長さ62.5mm、幅12mm、厚さ6.4mmの角棒状ガラスに調製し、次のような試験・評価を行った。すなわち、イオンクロマトグラフィ法でフッ素濃度測定(評価1)、赤外線分光測定装置でOH吸収ピークによりOH濃度測定(評価2)、ラマン分光装置でH2吸収ピークにより水素濃度測定(評価3)、真空紫外測定装置(JACSO VUV−200)で163nmの吸光度α163
【cm−1】によって、≡Si−Si≡欠陥の有無判定(評価4)、同じ真空紫外測定装置でF2レーザ波長である15
7nmの透過率T157
【%】の測定(評価5)を行った。
【0023】
実施例2、3
実施例1の場合において、流量20l/minのHeガス雰囲気中、400℃/hの昇温速度で1200℃まで昇温した後、雰囲気ガスをSiF4 20%+He80%の混合ガス(実施例2)もしくはSiF4 1%+He99%の混合ガス(実施例3)に切り換え(流量20l/min)、1200℃で2hキープしてフッ素ドープを行った他は、同様の条件としてフッ素および水素をドープした石英ガラスを製造し、同様の試験・評価を行った。
【0024】
比較例1、2
実施例1の場合において、流量20l/minのHeガス雰囲気中、400℃/hの昇温速度で1200℃まで昇温した後、雰囲気ガスをSiF4 25%+He75%の混合ガス(比較例1)もしくはSiF4 0.5%+He99.5%の混合ガス(比較例2)に切り換え(流量20l/min)、1200℃で2hキープしてフッ素ドープを行った他は、同様の条件としてフッ素および水素をドープした石英ガラスを製造し、同様の試験・評価を行った。
【0025】
上記実施例1、2、3および比較例1、2は、Heガス雰囲気をSiF4 +He混合ガスに切り換えるときのSiF4 濃度の影響を示すものである。そして、これら石英ガラスの製造における主要条件を表1に、また、製造した石英ガラスの真空紫外透過スペクトルを図1に、評価1〜評価5の結果を表2にそれぞれ示した。図1において、曲線Aは実施例1の場合、曲線Bは実施例2の場合、曲線Cは実施例3の場合、曲線aは比較例1の場合、曲線bは比較例2の場合をそれぞれ示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
図1および表2から分かるように、この発明に係る石英ガラスの場合は、F2レーザー波長である157nmの透過率がいずれも80%を超えている。これに対して比較例1、2の石英ガラスは、≡Si−Si≡欠陥の発生ねあるいはSiF4 濃度の低さによるフッ素ドープの悪さなどによって、157nm波長での透過率が45〜56%程度に過ぎない。
【0029】
実施例4
ガラス成形原料としてのSiCl4 を酸水素火炎中で加水分解させ、生成したシリカ微粒子を石英ガラス製のターゲットに堆積させて、直径250mm、長さ500mmの多孔質シリカ(スート)を得た。次いで、前記スートを試料として、流量20l/minのHeガス雰囲気中、400℃/hの昇温速度で1000℃まで昇温した後、雰囲気ガスをSiF4 10%+He90%の混合ガスに切り換え(流量20l/min)、1000℃で2hキープしてフッ素ドープを行った。
【0030】
前記フッ素ドープ処理終了後、雰囲気はそのままとして、400℃/hの昇温速度で1450℃まで昇温し、1450℃で2hキープして透明化処理を行って、直径125mm、長さ250mmの合成石英ガラスインゴットを得た。この合成石英ガラスインゴットを切断し、直径125mm、厚さ8mmの円盤状のガラスを切り出して、流量20l/minのH2雰囲気中、300℃で30hキープして水素ドープ処理を行った。
【0031】
前記水素ドープした円盤状ガラスから、長さ62.5mm、幅15mm、厚さ8mmの片を切り出し、光学研磨を施して長さ62.5mm、幅12mm、厚さ6.4mmの角棒状ガラスに調製し、実施例1の場合と同様の条件で試験・評価を行った。
【0032】
比較例3、4
実施例4の場合において、流量20l/minのHeガス雰囲気中、400℃/hの昇温速度で1000℃まで昇温した後、雰囲気ガスをSiF4 10%+He90%の混合ガスに切り換える代わりに、切り換え時の温度を900℃(比較例3)、もしく1300℃(比較例4)とした他は、同様の条件としてフッ素および水素をドープした石英ガラスを製造し、同様の試験・評価を行った。
【0033】
上記実施例4および比較例3、4は、Heガス雰囲気をSiF4 10%+He90%の混合ガスに切り換えるときの温度の影響を示すものである。そして、石英ガラスの製造における主要条件を表1に併せて示し、また、製造した石英ガラスの真空紫外透過スペクトルを図2に、さらに、評価1〜評価5の結果を表2に併せて示した。
【0034】
図2において、曲線Aは実施例1の場合、曲線Dは実施例4の場合、曲線cは比較例3の場合、曲線dは比較例4の場合をそれぞれ示す。
【0035】
図2および表2から分かるように、この発明に係る石英ガラスの場合は、F2レーザー波長である157nmの透過率が80%以上とすぐれている。これに対して、比較例3、4の石英ガラスは、≡Si−Si≡欠陥の発生、あるいは熱収縮によるフッ素ドープの悪さなどによって、157nm波長での透過率が30〜55%程度に過ぎない。
【0036】
比較例5
フッ素ドープした多孔質シリカ(スート)を透明化処理するときの雰囲気の影響を比較したものである。すなわち、上記実施例1の場合は、フッ素ドープ処理時と同じ雰囲気で行ったのに対して、この比較例では、SiF4 を含まないHeガス雰囲気で透明化処理を行った。そして、この石英ガラスの製造における主要条件を表1に併せて示し、また、製造した石英ガラスの真空紫外透過スペクトルを図3に、さらに、評価1〜評価5の結果を表2に併せて示した。なお、図3において、曲線Aは実施例1の場合、曲線eは比較例5の場合をそれぞれ示す。比較例5の石英ガラスは、≡Si−Si≡欠陥の発生によって、157nm波長での透過率が68%程度に過ぎない。
【0037】
実施例5
ガラス形成原料としてのSiCl4 を酸水素火炎中で加水分解させ、生成したシリカ微粒子を石英ガラス製のターゲットに堆積させて、直径250mm、長さ500mmの多孔質シリカ(スート)を得た。次いで、前記スートを試料として、流量20l/minのHeガス雰囲気中、400℃/hの昇温速度で1200℃まで昇温した後、雰囲気ガスをSiF4 10%+He90%の混合ガスに切り換え(流量20l/min)、1200℃で2hキープしてフッ素ドープを行った。
【0038】
前記フッ素ドープ処理終了後、雰囲気はそのままとして、400℃/hの昇温速度で1450℃まで昇温し、1450℃で2hキープして透明化処理行って、直径125mm、長さ250mmの合成石英ガラスインゴットを得た。この合成石英ガラスインゴットを切断し、直径125mm、厚さ8mmの円盤状のガラスを切り出して、流量20l/minのH2雰囲気中、200℃で30hキープして水素ドープ処理を行った。
【0039】
前記水素ドープした円盤状ガラスから、長さ62.5mm、幅15mm、厚さ8mmの片を切り出し、光学研磨を施して長さ62.5mm、幅12mm、厚さ6.4mmの角棒状ガラスに調製し、実施例1の場合と同様の条件で試験・評価を行った。
【0040】
比較例6、7
実施例5の場合において、流量20l/minのH2雰囲気中に、200℃、30hキープする水素ドープ処理条件を、150℃、30hキープ(比較例6)、もしく350℃、30hキープ(比較例7)とした他は、同様の条件としてフッ素および水素をドープした石英ガラスを製造し、同様の試験・評価を行った。
【0041】
上記実施例5および比較例6、7は、水素ドープ処理時の温度の影響を示すものである。そして、石英ガラスの製造における主要条件を表1に併せて示し、また、製造した石英ガラスの評価1〜評価5の結果を表2に併せて示した。表2から分かるように、水素ドープ温度が150℃(比較例6)の場合は、水素ドープ濃度が上記実施例の場合に比べ低く、また、水素ドープ温度が350℃(比較例7)の場合は、OH濃度が上記実施例の場合に比べ高い値となった。
【0042】
比較例8
フッ素ドープ前に、多孔質シリカ(スート)脱水を行うか否かの影響を比較したものである。すなわち、上記実施例1の場合は、フッ素ドープ処理前に、脱水処理を施さなかったのに対して、この比較例では、H2雰囲気中に、1200℃、2hの熱処理を施し、脱水処理を行った他は上記実施例1の場合と同様の条件で石英ガラスを製造した。
【0043】
そして、この石英ガラスの製造における主要条件を表1に併せて示し、また、製造した石英ガラスの真空紫外透過スペクトルを図4に、さらに、評価1〜評価5の結果を表2に併せて示した。なお、図4において、曲線Aは実施例1の場合、曲線fは比較例8の場合をそれぞれ示す。図4から分かるように、脱水工程を加えた場合(比較例8)は、≡Si−Si≡欠陥が生成し、157nm波長における透過率が30%程度に低下している。
【0044】
上記実施例1〜5に係る石英ガラス、および比較例6、7に係る石英ガラスについて、紫外光レーザーを照射し、その照射中における157nm波長での透過率変化を試験評価した。その結果、実施例1〜5に係る石英ガラスの場合は、いずれも157nm波長での透過率変化が認められず、また、赤色発光も観察されなかった。一方、比較例6、7に係る石英ガラスの場合は、157nm波長での透過率が急激に低下した。すなわち、これらは紫外光レーザ照射試験での耐紫外線特性が劣ると云った結果が得られた。
【0045】
本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲でいろいろの変形を採ることができる。たとえばSiF4 +He混合ガス中のSiF4 濃度、SiF4 +He混合ガスへの切り換え温度などは、所定の範囲内で、任意に選択・設定できる。また、本発明では、フッ素ドープの手段として、SiF4 含有雰囲気での熱処理を選択したが、工業的な取り扱い難さ、コストアップなどを考慮しなければ、SiF4 の代わりにF2 を用いることもできる。
【0046】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、163nmでの吸収を持つ≡Si−Si≡欠陥の生成が抑制ないし防止され、157nm波長で80%程度の透過率を有するフッ素ドープ系の石英ガラスを容易に、再現性よく得ることができる。しかも、このフッ素ドープ系の石英ガラスは、紫外光レーザーの照射による157nm波長での透過率変化も認められない。つまり、F2レーザー用などに適する耐久性、透過率を有する石英ガラスを容易に提供できる。
【0047】
請求項2の発明によれば、水素ドープ処理時間を高々数十時間程度に短縮することができ、生産性の向上や低コスト化などが図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フッ素ドープ処理におけるSiF4 濃度と製造した石英ガラスの真空紫外透過スペクトルとの関係例を示す特性図。
【図2】フッ素ドープ処理のためSiF4 導入温度と製造した石英ガラスの真空紫外透過スペクトルとの関係例を示す特性図。
【図3】フッ素ドープ後の透明化処理雰囲気と製造した石英ガラスの真空紫外透過スペクトルとの関係例を示す特性図。
【図4】フッ素ドープ前の脱水処理の有無と製造した石英ガラスの真空紫外透過スペクトルとの関係例を示す特性図。
【符号の説明】
A、B、C、D……実施例
a、b、c、d、e、f……比較例
Claims (2)
- 石英ガラス形成原料を火炎加水分解させて多孔質石英ガラス体化する工程と、
前記多孔質石英ガラス体を不活性ガスの雰囲気中で加熱し、加熱温度1000〜1200℃の時点でSiF4濃度1〜20%の雰囲気に切り換えてフッ素ドープ処理する工程と、
前記フッ素ドープ処理雰囲気中で昇温して、前記フッ素ドープした多孔質石英ガラス体を透明化処理する工程と、
前記透明化処理した後に、水素ガス含有雰囲気中、200〜300℃の温度で水素ドープ処理する工程と、
を有することを特徴とする石英ガラスの製造方法。 - フッ素ドープした多孔質石英ガラス体を透明化処理する工程にて透明石英ガラスインゴットを作製し、このインゴットから切り出した透明石英ガラス板に、水素ガス含有雰囲気中、200〜300℃の温度で水素ドープ処理することを特徴とする請求項1記載の石英ガラスの製造方法。
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