JP3791446B2 - エピタキシャルウェーハの製造方法及びエピタキシャルウェーハ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコン基板上にエピタキシャル層を形成したエピタキシャルウェーハの製造方法及びエピタキシャルウェーハに関する。
【0002】
【従来の技術】
CZ(チョクラルスキー)法で引上成長されたシリコン単結晶を加工して作製されたシリコンウェーハは、酸素不純物を多く含んでおり、この酸素不純物は転位や欠陥等を生じさせる酸素析出物(BMD:Bulk Micro Defect)となる。
この酸素析出物がデバイスが形成される表面にある場合、リーク電流増大や酸化膜耐圧低下等の原因になって半導体デバイスの特性に大きな影響を及ぼす。
【0003】
このため、従来、シリコンウェーハ表面に対し、1250℃以上の高温で短時間の急速加熱・急冷の熱処理(Rapid Thermal Annealing:RTA)を所定の雰囲気ガス中で施し、内部に過剰空孔(Vacancy)を埋設するとともに、この後の熱処理で表面において空孔を外方拡散させることによりDZ(Denuded Zone)層(無欠陥層)を均一に形成する方法が用いられている(例えば、国際公開公報 WO 98/38675に記載の技術)。そして、上記DZ層形成後に、上記温度より低温で熱処理を施すことで、内部の欠陥層として酸素析出核を形成・安定化してゲッタリング効果を有するBMD層を形成する工程が採用されている。
【0004】
また、近年、シリコン基板の表面にシリコン単結晶のエピタキシャル層をエピタキシャル成長したエピタキシャルウェーハが用いられている。例えば、ウェーハ表面の完全性を上げるために、抵抗が0.03Ω・cm以上である高抵抗のp-型シリコン基板上に所望の抵抗としたp型のエピタキシャル層をデバイス作製層として成長したエピタキシャルウェーハ(以下、p/p-ウェーハと略す)等が知られている。
このエピタキシャルウェーハでは、p-型シリコン基板内に所定の密度のBMDを生じさせるために、このシリコン基板に、予め、1250℃以上の温度の水素雰囲気中にてRTAを施し、その後、1100℃以上の温度で、このシリコン基板上にp型のエピタキシャル層を成長させる方法が採られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のエピタキシャルウェーハでは、p型のエピタキシャル層の成長は、通常、1100℃以上の水素雰囲気中にて行われるために、空孔欠陥を消滅させる格子間シリコンの注入が生じ、シリコン基板の表面に残存する酸素析出核が消滅してしまい、所望の密度のBMDが得られないという問題点があった。
特にp/p-ウェーハの場合、ドーパントのB(ホウ素)濃度が低いp-基板にエピタキシャル成長させるため、酸素析出核が消滅しやすい傾向があり、IG(Intrinsic Gettering)特性を確保するのが困難であった。
さらに、このエピタキシャルウェーハでは、酸素析出核を形成・安定化させるためには、DZ層の厚みを一定の幅で確保する必要があるが、このDZ層の厚みを制御することは非常に難しい。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、所望の密度のBMD密度及び所望の厚みのDZ層が確保されることで、高い近接ゲッタリング効果を有するエピタキシャルウェーハの製造方法及びエピタキシャルウェーハを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、次の様なエピタキシャルウェーハの製造方法及びエピタキシャルウェーハを採用した。
すなわち、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、シリコン基板の表面にシリコン単結晶のエピタキシャル層をエピタキシャル成長してなるエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
前記シリコン基板に1200℃以上かつシリコンの融点以下の温度、10〜30秒の熱処理時間にて急速加熱・急速冷却の熱処理を施して内部に新たに空孔を形成する空孔形成工程と、
前記空孔形成工程において熱処理した十分な量の空孔を有するシリコン基板上に、1170℃以下でかつ前記熱処理温度より30℃以上低いエピタキシャル成長温度にてシリコン単結晶のエピタキシャル層をエピタキシャル成長するエピタキシャル成長工程とを有するとともに、
このエピタキシャル成長工程が、該エピタキシャル成長における熱処理により前記空孔から酸素析出核を形成するとともに、前記シリコン基板中心部に酸素析出核を残存させる酸素析出核残存工程でもあることを特徴とする。
本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、シリコン基板の表面にシリコン単結晶のエピタキシャル層をエピタキシャル成長してなるエピタキシャルウェーハの製造方法であって、前記シリコン基板に1200℃以上かつシリコンの融点以下の温度にて急速加熱・急速冷却の熱処理を施して内部に新たに空孔を形成する空孔形成工程と、この熱処理したシリコン基板上に、前記熱処理温度より30℃以上低いエピタキシャル成長温度にてシリコン単結晶のエピタキシャル層をエピタキシャル成長するエピタキシャル成長工程とを有することを特徴とする。
【0008】
このエピタキシャルウェーハの製造方法では、前記シリコン基板を1200℃以上かつシリコンの融点以下の温度にて急速加熱・急速冷却の熱処理を施して内部に新たに空孔を形成し、その後、この熱処理したシリコン基板上に、前記熱処理温度より30℃以上低いエピタキシャル成長温度にてシリコン単結晶のエピタキシャル層をエピタキシャル成長させることにより、シリコン基板内部の空孔欠陥は消滅することなく残存することとなる。これにより、高い近接ゲッタリング効果を有するエピタキシャルウェーハを容易に製造することが可能になる。
【0009】
また、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、前記シリコン基板及び前記エピタキシャル層がp型であるときに好適である。すなわち、このエピタキシャルウェーハの製造方法では、シリコン基板及びエピタキシャル層がp型であるので、いわゆるp/p-ウェーハ等のエピタキシャルウェーハにおいても、十分なゲッタリング効果を奏することができる。
【0010】
また、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、前記熱処理温度と前記エピタキシャル成長温度との差を65〜115℃とするのが好ましい。
このエピタキシャルウェーハ中の空孔欠陥の密度の制御は、前記熱処理温度を変えることで可能であるから、この熱処理温度を変えることにより所望の密度のBMDを得ることが可能になる。
また、DZ層の厚みの制御は、エピタキシャル成長温度を変えることで可能であるから、このエピタキシャル成長温度を変えることにより所望の厚みのDZ層を得ることが可能になる。
これにより、シリコン基板内部の空孔欠陥は消滅することなく確実に残存することとなり、さらに高い近接ゲッタリング効果が可能になる。
【0011】
また、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、前記熱処理は、窒化ガス、水素、酸素、窒素、アルゴンのいずれか1種または2種以上を含む雰囲気ガス中にて施されるのが好ましい。
前記熱処理の雰囲気ガスを、窒化ガス、水素、酸素、窒素、アルゴンのいずれか1種または2種以上を含む雰囲気ガスとすることで、シリコン基板内部に高密度の空孔欠陥が形成されることとなり、その後にエピタキシャル成長を施しても、これらの空孔欠陥は消滅するおそれが無い。
【0012】
また、本発明のエピタキシャルウェーハは、熱処理により内部に新たに空孔が形成されたシリコン基板の表面にシリコン単結晶のエピタキシャル層をエピタキシャル成長してなるエピタキシャルウェーハであって、前記シリコン基板に酸素析出熱処理を施した後の酸素析出物の密度は、5.0〜15.0×105cm2であることを特徴とする。
【0013】
このエピタキシャルウェーハでは、シリコン基板に酸素析出熱処理を施した後の酸素析出物の密度を5.0〜15.0×105cm2としたことにより、高い近接ゲッタリング効果を奏することができる。
【0014】
また、本発明のエピタキシャルウェーハは、無欠陥層の厚みを50〜250μmとしたことにより、高い近接ゲッタリング効果を奏することができる。
【0015】
また、本発明のエピタキシャルウェーハは、シリコン基板に施す酸素析出熱処理の条件として、600〜800℃にて2〜4時間熱処理した後、さらに1000〜1100℃にて10〜20時間熱処理するのが好ましい。
シリコン基板に上記の酸素析出熱処理を施すことで、その酸素析出物の密度を5.0〜15.0×105cm2、無欠陥層の厚みを50〜250μmと制御することが可能になる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るエピタキシャルウェーハの製造方法及びエピタキシャルウェーハの一実施形態について図面に基づき説明する。
本実施形態におけるエピタキシャルウェーハの製造方法は、エピタキシャル成長前に、シリコン基板に1200℃以上かつシリコンの融点以下の温度にて急速加熱・急速冷却の熱処理を施して内部に新たに空孔を形成する空孔形成工程と、この熱処理したシリコン基板上に、前記熱処理温度より30℃以上低いエピタキシャル成長温度にてシリコン単結晶のエピタキシャル層をエピタキシャル成長するエピタキシャル成長工程とを有する方法である。
【0017】
ここで、本実施形態のエピタキシャルウェーハの製造方法に用いられる熱処理炉について説明する。
図1は、シリコン基板Sに熱処理を施すために用いられる枚葉式の熱処理炉を示す断面図であり、この熱処理炉1は、シリコン基板Sが載置可能な円環状のサセプタ2と、このサセプタ2を内部に収納する反応室3とを備えており、この反応室3の外部には、シリコン基板Sを加熱するためのランプ(図示略)が配置されている。
【0018】
サセプタ2は、炭化珪素(SiC)等で形成された円環状のもので、その内周に沿って段部2aが形成され、この段部2a上にシリコン基板Sの周縁部が載置されるようになっている。
反応室3は、中空の箱状のもので、その内壁には、シリコン基板Sの表面に雰囲気ガスGを供給するための供給口3a、及び該供給口3aに対向する壁面に形成されて供給された雰囲気ガスGを排出する排出口3bがそれぞれ形成されている。この供給口3aは、雰囲気ガスGの供給源(図示略)に接続されている。
【0019】
雰囲気ガスGは、窒化ガス、H2(水素)、O2(酸素)、N2(窒素)、Ar(アルゴン)のいずれか1種からなるガス、または、これらのガスのうち2種以上を含む混合ガスである。
上記の窒化ガスは、特にN2(窒素)が分解可能な温度よりも低い温度で分解する、例えば、NH3、NO、N2O、N2O2、ヒドラジン、ジメチルヒドラジン等の窒素原子を含むガスである。
【0020】
なお、本実施形態では、窒化ガスを主とした雰囲気ガスG、特にNH3を主とした雰囲気ガスGを用いている。
その理由は、本発明者等のこれまでの検討結果によれば、シリコンウェーハに熱処理を施す際に、窒化ガス、特にNH3を主とした雰囲気ガスを用いることにより、N2を用いた場合と比べて高効率で空孔注入効果が得られる。したがって、同一の熱処理条件にて熱処理を行うと、窒化ガスを主とした雰囲気ガスGの方がシリコンウェーハ中のBMDの密度が高くなるので、熱処理の低温化、短時間化が可能であるからである。
【0021】
ここで、シリコンウエーハ中の酸素析出物(BMD)の密度分布について説明する。
例えば、窒化ガスを含む雰囲気ガス中でRTA処理を行ったシリコンウエーハに対して酸素析出のための熱処理を行うと、厚さ方向にBMD密度の分布がM型に形成される傾向がある。すなわち、厚さ方向のBMD密度は、表面近傍に最大値(以下、BMDピーク密度と称す)を有すると共に、厚さ方向の中間部分に極小値(M型分布の底部:以下、BMDバルク密度と称す)を有している。
【0022】
このBMD密度は、窒化ガスを含む雰囲気ガスの窒化作用により注入・凍結された空孔濃度のみに依存する。
BMDピーク密度は主としてRTA処理温度に比例し、シリコンウェーハの酸素濃度依存性は小さい。
一方、BMDバルク密度のRTA処理温度依存性は、ある温度領域でBMDバルク密度が極小になり、この極小点より高温側では急峻な温度依存性を示す。この時のBMDバルク密度は、シリコンウェーハの酸素濃度に大きく依存する。したがって、酸素濃度が高い場合、BMDバルク密度が高くなり、BMDピーク密度との差が小さく、浅いM型となる。
【0023】
次に、本実施形態のエピタキシャルウェーハの製造方法について、図1及び図2に基づき説明する。図2は、本実施形態のエピタキシャルウェーハの製造方法を示す過程図であり、エピタキシャルウェーハの断面構造を製造工程順に示している。
ここでは、このエピタキシャルウェーハの構造をその製造プロセスと合わせて説明する。まず、図1に示す熱処理炉1を用いて高抵抗のp-型シリコン基板SにRTA(Rapid Thermal Annealing)処理を施し、このシリコン基板Sの内部に新たに空孔を形成する(空孔形成工程)(図2(a))。なお、このp-型のシリコン基板Sは、CZ法により引上成長されたインゴットから切り出され、両面が鏡面研磨されたポリッシュドウェーハであり、抵抗が1〜2Ω・cmのものである。
【0024】
RTA処理についてより詳しく説明すると、サセプタ2にシリコン基板Sを載置した後、供給口3aから上記雰囲気ガスGをシリコン基板Sの表面に供給した状態で、1200℃以上かつシリコンの融点(1414℃)以下の範囲の熱処理温度かつ10〜30秒の範囲の熱処理時間で、短時間の急速加熱・急速冷却(例えば、50℃/秒の昇温又は降温、望ましくは30℃/秒)のRTA処理を行う。なお、本実施形態では、シリコン基板Sの内部に効果的に空孔を形成するために、1200℃以上かつ1250℃以下の範囲の熱処理温度かつ10〜30秒の範囲の熱処理時間でRTA処理を行う。
この熱処理温度及び熱処理時間の範囲であれば、図2(b)に示すように、内部に十分な量の空孔Vを形成することができる。
【0025】
次いで、このシリコン基板Sをエピタキシャル成長炉内にセットし、図2(c)に示すように、RTA処理温度(1200℃以上かつシリコンの融点(1414℃)以下の温度)より30℃以上低いエピタキシャル成長温度で、抵抗が0.03Ω・cm以上のp型シリコン単結晶であるエピタキシャル層Eを膜厚数μmまでエピタキシャル成長し、エピタキシャルウェーハWを作製する。
【0026】
このエピタキシャル成長温度とRTA処理温度との差は30℃以上あれば良いが、好ましくは65〜115℃である。
例えば、RTA処理の温度が1200℃であれば、エピタキシャル成長温度は1170℃以下、好ましくは1135〜1085℃となる。これにより、シリコン基板S内部の空孔欠陥であるエピタキシャル成長後の残存酸素析出核Vnは、エピタキシャル成長の際においても全部は消滅することなく、シリコン基板Sの中心部に残存することとなる。
このようにして作製されたエピタキシャルウェーハWは、高い近接ゲッタリング効果を有するp/p-ウェーハとなる。
【0027】
このようにして得られたエピタキシャルウェーハWに酸素析出熱処理を施す。この酸素析出熱処理は、好ましくは600〜800℃にて2〜4時間熱処理した後、さらに1000〜1100℃にて10〜20時間熱処理する。
酸素析出熱処理後のエピタキシャルウェーハWは、シリコン基板SのBMD(酸素析出物)の密度が5.0〜15.0×105cm2であり、このエピタキシャルウェーハWの表面を基準(0μm)としたときのDZ層(無欠陥層)の厚みが50〜250μmである。
【0028】
図3はBMDが安定して存在するためのRTA処理及びエピタキシャル成長の各温度範囲を示す図であり、この図では、p-型のシリコン基板Sを用い、RTA処理温度として1110℃、1150℃、1200℃の3点を、エピタキシャル成長温度として1185℃、1115℃、1135℃の3点を、それぞれ採っている。なお、図中、「●」はBMDが安定して存在する点であり、「×」はBMDが消滅した点である。
(図3中に、1200℃を超えるRTA処理温度におけるデータ、及び1185〜1135℃の範囲外のエピタキシャル成長温度におけるデータを御記入下さい。)
この図によれば、RTA処理温度が1200℃以上であれば、エピタキシャル成長温度が1135〜1085℃の範囲で、BMDが消滅することなく安定して存在することが分かる。
【0029】
図4はRTA処理温度(TRTA)とエピタキシャル成長温度(TEPI)との温度差ΔT(=TRTA−TEPI)(℃)とBMD密度(×104個/cm2)との関係を示す図である。ここでは、1200℃で10秒間、RTA処理を施したp-型のシリコン基板を用いて、温度差ΔTとBMD密度との関係を調べた。
この図によれば、温度差ΔTが30℃以上であればBMDは消滅することなく安定して存在していることが分かる。特に、温度差ΔTが65〜115℃の範囲では、温度差ΔTに対してBMD密度がほぼ直線的に増加しており、この範囲では、温度差ΔTを制御することでBMD密度を任意に制御することができることが分かった。
【0030】
図5はエピタキシャル成長温度(TEPI)とBMD密度(×104個/cm2)との関係を示す図である。ここでは、1200℃で10秒間、RTA処理を施したp-型のシリコン基板を用いて、エピタキシャル成長温度とBMD密度との関係を調べた。
BMD密度としては、BMDバルク密度(図中、●)とBMDピーク密度(図中、■)とに分けて調べた。ここでは、エピタキシャル成長温度それぞれについて、3個の試料のBMDピーク密度とBMDバルク密度を測定し、これらの平均値、最大値及び最小値を図示した。
【0031】
この図によれば、BMDバルク密度は、エピタキシャル成長温度が高くなるにしたがってほぼ直線的に減少し、値の幅も小さくなっていることが分かる。したがって、エピタキシャル成長温度を制御することでBMDバルク密度を制御することができる。また、BMDピーク密度は全般的に小さい値で、エピタキシャル成長温度が1115℃以上では完全に消滅していることが分かる。
なお、エピタキシャル成長温度を一定にした場合のエピタキシャル成長時間とBMDバルク密度との関係を調べたが、BMDバルク密度はエピタキシャル成長時間が40〜160秒の範囲でほぼ一定であることが確かめられた。
【0032】
図6はエピタキシャル成長条件の異なるエピタキシャルウェーハそれぞれのDZ幅の面内方向変化を示す図である。
エピタキシャル成長条件は、1135℃で40秒(図中、○)、1115℃で40秒(図中、■)、1085℃で40秒(図中、●)、1135℃で80秒(図中、□)の4点とし、それぞれについて、中心部、半径/2の点、周辺部それぞれにおけるDZ幅を測定した。
この図によれば、1085℃で40秒の成長条件では、DZ幅に変化が認められるものの、他の成長条件では、DZ幅の変化が非常に小さいことが分かった。
【0033】
本実施形態のエピタキシャルウェーハの製造方法によれば、RTA処理温度(1200℃以上かつシリコンの融点(1414℃)以下の温度)より30℃以上低いエピタキシャル成長温度でエピタキシャル成長させるので、シリコン基板S内部の酸素析出核Vnを消滅することなく安定して存在させることができ、その結果、高い近接ゲッタリング効果を有するエピタキシャルウェーハを容易に製造することができる。
また、高抵抗体であるp-型のシリコン基板Sの表面に、p型シリコン単結晶からなるエピタキシャル層Eを成長させたので、いわゆるp/p-ウェーハ等のエピタキシャルウェーハにおいても、十分なゲッタリング効果が得られる。
【0034】
本実施形態のシリコンウェーハによれば、酸素析出熱処理後のシリコン基板SのBMD(酸素析出物)の密度を5.0〜15.0×105cm2とし、このエピタキシャルウェーハWのDZ層の厚みを50〜250μmとしたので、高い近接ゲッタリング効果を有することとなる。したがって、このエピタキシャルウェーハに作り込まれたデバイスの特性及び信頼性を向上させることができ、引いては製品の歩留まりを向上させることができる。
【0035】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本実施形態では、抵抗が1〜2Ω・cmのp-型のシリコン基板Sを用いたが、p-型以外のシリコン基板であってもよく、p-型シリコン基板Sに限定されることはない。
また、このシリコン基板Sに窒素を添加しておいても構わない。この場合、通常のシリコン基板Sよりも高いBMD密度が得られるので、優れたIG(Intrinsic Gettering)特性を有する。
【0036】
さらに、本実施形態では、p/p-ウェーハのエピタキシャルウェーハに本実施形態のRTA処理及びエピタキシャル成長を施したが、エピタキシャル層よりもp型の不純物濃度が高いシリコン基板を用いたいわゆるp/p+ウェーハに本実施形態のRTA処理及びエピタキシャル成長を施しても構わない。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のシリコンウェーハの製造方法によれば、シリコン基板を1200℃以上かつシリコンの融点以下の温度にて急速加熱・急速冷却の熱処理を施して内部に新たに空孔を形成し、その後、この熱処理したシリコン基板上に、前記熱処理温度より30℃以上低いエピタキシャル成長温度にてシリコン単結晶のエピタキシャル層をエピタキシャル成長させるので、エピタキシャル成長後においてもシリコン基板内部の空孔欠陥は全部が消滅することなく、一部が残存することとなり、高い近接ゲッタリング効果を有するエピタキシャルウェーハを容易に製造することができる。
【0038】
本発明のエピタキシャルウェーハによれば、酸素析出熱処理後のシリコン基板の酸素析出物の密度を5.0〜15.0×105cm2としたので、高い近接ゲッタリング効果を奏することができる。したがって、このエピタキシャルウェーハに作り込まれたデバイスの特性及び信頼性を向上させることができ、引いては製品の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態のシリコンウェーハの製造方法に用いられる熱処理炉を示す概略構成図である。
【図2】 本発明の一実施形態のシリコンウェーハの製造方法を示す過程図である。
【図3】 BMDが安定して存在するためのRTA処理及びエピタキシャル成長の各温度範囲を示す図である。
【図4】 RTA処理温度とエピタキシャル成長温度との温度差とBMD密度との関係を示す図である。
【図5】 エピタキシャル成長温度とBMD密度との関係を示す図である。
【図6】 エピタキシャル成長条件の異なるエピタキシャルウェーハそれぞれのDZ幅の面内方向変化を示す図である。
【符号の説明】
1 熱処理炉
2 サセプタ
3 反応室
E エピタキシャル層
G 雰囲気ガス
S p-型シリコン基板
V 空孔
Vn エピタキシャル成長後の残存酸素析出核
Claims (7)
- シリコン基板の表面にシリコン単結晶のエピタキシャル層をエピタキシャル成長してなるエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
前記シリコン基板に1200℃以上かつシリコンの融点以下の温度、10〜30秒の熱処理時間にて急速加熱・急速冷却の熱処理を施して内部に新たに空孔を形成する空孔形成工程と、
前記空孔形成工程において熱処理した十分な量の空孔を有するシリコン基板上に、1170℃以下でかつ前記熱処理温度より30℃以上低いエピタキシャル成長温度にてシリコン単結晶のエピタキシャル層をエピタキシャル成長するエピタキシャル成長工程とを有するとともに、
このエピタキシャル成長工程が、該エピタキシャル成長における熱処理により前記空孔から酸素析出核を形成するとともに、前記シリコン基板中心部に酸素析出核を残存させる酸素析出核残存工程でもあることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。 - 請求項1記載のエピタキシャルウェーハの製造方法において、
前記シリコン基板及び前記エピタキシャル層はp型であることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。 - 請求項1または2記載のエピタキシャルウェーハの製造方法において、
前記熱処理温度と前記エピタキシャル成長温度との差は、65〜115℃であることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。 - 請求項1、2または3記載のエピタキシャルウェーハの製造方法において、
前記熱処理は、窒化ガス、水素、酸素、窒素、アルゴンのいずれか1種または2種以上を含む雰囲気ガス中にて施されることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。 - 請求項1から4のいずれか記載の製造方法により製造され、熱処理により内部に新たに空孔が形成されたシリコン基板の表面にシリコン単結晶のエピタキシャル層をエピタキシャル成長してなるエピタキシャルウェーハであって、
前記シリコン基板に酸素析出熱処理を施した後の酸素析出物の密度は、5.0〜15.0×10 5 cm2 であることを特徴とするエピタキシャルウェーハ。 - 請求項5記載のエピタキシャルウェーハにおいて、
このエピタキシャルウェーハの無欠陥層の厚みは、50〜250μmであることを特徴とするエピタキシャルウェーハ。 - 請求項5または6記載のエピタキシャルウェーハにおいて、
前記酸素析出熱処理は、600〜800℃にて2〜4時間熱処理した後、さらに1000〜1100℃にて10〜20時間熱処理することを特徴とするエピタキシャルウェーハ。
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