JP3791132B2 - 皿ばね式摩擦ダンパを用いた制振構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐振用補強部材と該耐振用補強部材を設ける建物架構との間にダンパを設けて、より積極的に振動減衰するようにした制振構造に関し、とりわけ、ダンパを摩擦ダンパとして構成した場合に、構造体の変形や摩擦部分の摩耗によっても略一定した摩擦減衰力を発生させることができる皿ばね式摩擦ダンパを用いた制振構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
中,高層建築物では、地震や風等の水平力に対する抵抗要素として、耐振壁や例えば特公平4−12790号公報(Int.Cl.E04H 9/02)に開示されるように、ブレース構造を用いた建物架構が広く用いられている。ブレースでは建物架構に入力された振動の減衰効果を更に向上させるために、制振用のダンパを組み込むようにしたものがある。この制振用のダンパとしては特開平5−10050号公報(Int.Cl.E04H 9/02)に開示されるように、ブレースの上端部と梁との間に配置される束材を塑性変形可能な鋼材で形成した鋼材ダンパ(履歴ダンパ)があり、鋼材の塑性変形により振動エネルギーを吸収するようになっている。
【0003】
しかし、この種の鋼材ダンパではある程度以上の変形が生じて鋼材が降伏するまではダンパとしての機能が得られないという欠点があり、かつ、鋼材が繰り返し降伏してエネルギーを吸収した場合には、該鋼材の歪硬化により降伏耐力が大きくなり、累積塑性変形性能や疲労強度が低下して取り替えが必要となる。また、鋼材ダンパは設計上、付加剛性,降伏耐力および降伏変位等に制約がある。
【0004】
一方、低振動から減衰効果を得ることができる制振用のダンパとして、上記鋼材ダンパ以外に摩擦力を利用した摩擦ダンパが知られている。この摩擦ダンパは滑り板に摩擦材をばねで押し付け、摩擦材に生じる摩擦力を利用して振動エネルギーを吸収するようになっており、このときに用いられるばねとしては、コイルばね,板ばね,ゴム板等の様々なものが知られている。即ち、上記摩擦ダンパでは滑り板および摩擦材相互間の摩擦係数をμとすると、発生する摩擦力Fは摩擦係数μと滑り板に摩擦材を圧接させる圧接力Pの積μ×Pで与えられる。このときの圧接力Pは上記ばねの弾発力として得られ、P=K×σ(K:ばね定数、σ:ばね変形量)によってその弾発特性が一義的に決定される。また、上記ばねは、ばね定数(剛性)Kが一定で線形のばね特性を備えたものが用いられ、この線形性を有する範囲で得られるばね性能に基づいて適用されるのが一般的である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記摩擦ダンパは、建物架構が地震や風、荷重や温度伸縮等の外部要因によって変形したり、摩擦材の摩耗によりその板厚が変化したりすると、ばねの変形量σが予め設定した値から変化してしまう。このようにばねの変形量σが変動すると、これに応じてばねの弾発力Pが変動してしまうため、摩擦係数μが一定であっても摩擦ダンパの摩擦力Fに変動が生じ(F=μ×P=μ×(K×σ))、延いては、摩擦ダンパ4による摩擦減衰力を一定に維持することができなかった。
【0006】
このように摩擦減衰力を一定に維持することができないと、摩擦ダンパを設計値通りに作動させることができず、該摩擦ダンパを設けた制振壁やブレースの機能が低下して建物架構に不慮の損害を生じさせるおそれがあるという課題があった。
【0007】
本発明は係る従来の課題に鑑みて創案されたものであり、外部要因による建物架構の変形や摩擦材の摩耗等によりばねの変形量が変化しても、一定した摩擦減衰力を発生させることができる皿ばね式摩擦ダンパを用いた制振構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の皿ばね式摩擦ダンパを用いた制振構造は、相対向する一対の柱部材と、これら柱部材の上下端部を連結する上、下一対の架設部材とで区画される空間内に耐振用補強部材を備え、該耐振用補強部材を上記架設部材から上下方向に適宜隙間を設けて配置し、上記耐振用補強部材と上記架設部材とを上記上下方向隙間に介設したダンパを介して連結するようにした建物架構であって、上記ダンパを、上記架設部材と上記耐振用補強部材との間に設けられ、水平方向を指向する滑り板および該滑り板に圧接しつつ滑動する摩擦材からなる摩擦減衰力生成部と、該摩擦減衰力生成部と上記架設部材若しくは上記耐振用補強部材の少なくとも何れか一方との間に設けられ、該摩擦減衰力生成部に圧接力を生じさせる弾発力を発生する皿ばねとからなる摩擦ダンパで構成し、該皿ばねは、所定の与圧力が付加されて圧縮された状態で、上記摩擦減衰力生成部と上記架設部材若しくは上記耐振用補強部材の少なくとも何れか一方との間に設けられ、かつ、たわみ変形量に対して弾発力の変動が線形ばね領域内よりも小さい、非線形ばね領域内で使用されるとともに、上記皿ばねと上記架設部材若しくは上記耐震用補強部材との間には、前記与圧力を調整するためのスペーサが差し込まれていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載の皿ばね式摩擦ダンパを用いた制振構造は、請求項1に記載の皿ばね式摩擦ダンパを用いた制振構造であって、上記耐振用補強部材が上記空間内に備えられたブレースであって、該ブレースの上端部と上方の該架設部材とを上記上下方向隙間に介設した上記摩擦ダンパを介して連結したことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の請求項3に記載の皿ばね式摩擦ダンパを用いた制振構造は、請求項1に記載の皿ばね式摩擦ダンパを用いた制振構造であって、上記耐振用補強部材が上記空間内に備えられた耐振壁であって、該耐振壁の上端部と上方の該架設部材とを上記上下方向隙間に介設した上記摩擦ダンパを介して連結したことを特徴とする。
【0011】
以上の構成による本発明の皿ばね式摩擦ダンパを用いた制振構造の作用は、建物架構に地震等の水平振動が入力されると、摩擦ダンパに水平方向の変位力が入力される。すると、摩擦減衰力生成部の滑り板と摩擦材は、皿ばねの弾発力によって圧接された状態で相対的に滑動して摩擦抵抗力を発生し、この摩擦抵抗力により振動が効果的に減衰される。このとき、上記皿ばねは、所定の与圧力が付加されて圧縮された状態で上記摩擦減衰力生成部と上記架設部材若しくは上記耐振用補強部材の少なくとも何れか一方との間に設けられ、かつ、たわみ変形量に対して弾発力の変動が線形ばね領域内よりも小さい、非線形ばね領域内で使用されることになるので、種々の原因によって皿ばねの変形量が見込み変化量の範囲で変化した場合にあっても、摩擦減衰力生成部に圧接力を生じさせる皿ばねの弾発力の変動はきわめて小さくなる。従って、摩擦減衰力生成部で発生される摩擦抵抗力を略一定に維持することができるため、振動減衰能力が変動することを防止することができる。また、皿ばねと架設部材若しくは耐震用補強部材との間のスペーサにより、皿ばねの与圧力の微調整が可能となる。
【0012】
そして上記耐振用補強部材が建物架構の空間内に備えられたブレース若しくは耐振壁であって、これらブレースまたは耐振壁の上端部と上方の該架設部材とを上記上下方向隙間に介設した上記摩擦ダンパを介して連結した場合には、減衰能力が変動することを防止した上記構成の摩擦ダンパにより設定にしたがった確実な振動減衰作用を確保しつつ、これらブレースや耐振壁が本来有する耐振機能を有効に発揮させて、効果的に建物架構を制振することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施形態について添付図面を参照しつつ詳細に説明する。図1から図5は本発明の皿ばね式摩擦ダンパを用いた制振構造の一実施形態を示し、図1はブレースを取り付けた建物架構の概略構成図、図2はブレースと建物架構との間に介設される摩擦ダンパの要部を断面した拡大正面図、図3は同摩擦ダンパの要部を断面した拡大平面図、図4は摩擦ダンパに用いられる皿ばねを示す拡大断面図、図5は摩擦ダンパに適用される皿ばねのばね特性の一実測例を示すグラフ図である。
【0014】
本実施形態は基本的には、図1に示すように建物架構10の相対向する柱部材12,12と、これら柱部材12,12の上下端部を連結する上,下架設部材としての上,下梁14,14aまたは床14bとで区画される空間S内で、下梁14aまたは床14bから上梁14に向かってハの字形状に延出される一対のブレース16,16を備える。そして、これら両ブレース16,16の上端部16a,16aを、上梁14の下方から適宜隙間δを設けてつなぎ材18を介して結合し(直接結合してもよい)、該結合部18aと上梁14とを上記隙間δに介設する図2,図3に示す摩擦ダンパ20で連結するようになっている。尚、上記床14bに対しては、上方階の下梁14aが上梁14となる。
【0015】
摩擦ダンパ20は、上梁14の下面と上記結合部18aの上面との間に設けられ、水平方向を指向する滑り板22および該滑り板22に圧接しつつ滑動する摩擦材24からなる摩擦減衰力生成部26と、該摩擦減衰力生成部26と該結合部18aとの間に設けられ、該摩擦減衰力生成部26に圧接力を生じさせる弾発力を発生する皿ばね28とで構成する。このとき、上記皿ばね28は、設定圧接力が加えられて上記上梁14と上記結合部18aとの間の上下方向隙間δ寸法の見込み変化量に対して、図5に示す弾発力の変動が小さい非線形ばね領域R内でたわみ変形されるように設定してある。
【0016】
上記摩擦減衰力生成部26の一方を構成する滑り板22としては、ステンレス板や、その表面にステンレス板が設けられたクラッド鋼等で形成されると共に、その表面(下面)は滑らかな平坦面として形成され、上記上梁14の下面に固設される。一方、上記摩擦減衰力生成部26の他方を構成する摩擦材24としては摩擦係数μが一定の部材、μが小さい(0.2程度)ものとしては例えば四フッ化エチレンや超高分子量ポリエチレン(例えば、ソマライト(商品名))、μが中くらい(0.5程度)のものとしては例えば表面を平滑にしたステンレス板、さらにμが大きい(1.0程度)ものとしては表面を平坦にした鋼板などで、これらから必要に応じた摩擦係数μを有する材料を選択して形成され、後述するシャーキー30の上端部のフランジ30a上面に形成された凹部30bに嵌着される。
【0017】
上記皿ばね28は、複数の皿ばね単体28aを同軸状に積層して構成される。該皿ばね単体28aは、図4に示すように中央部に開口部28bが形成される皿状に形成され、複数枚の該皿ばね単体28aを同じ向きに重ね合わせた4組のばね積層体を、逆向きに交互に突き合わせることにより上記皿ばね28が構成される。そして、皿ばね28は積層された状態で中心部に貫通される開口部28bに、ガイドを兼ねるシャーキー30を挿通し、該シャーキー30によって皿ばね単体28aが積層された状態を保持して位置ずれが防止される。また、シャーキー30の上端部にはフランジ30aが形成され、該フランジ30aによって皿ばね28が上方に抜け出るのが阻止される。
【0018】
一方、上記皿ばね28の下側には支持台32が配置され、該支持台32上に皿ばね28が載置されると共に、該支持台32の中央部に形成された凹部32aに上記シャーキー30の下端部が軸方向の移動を可能に挿入される。そして、上記摩擦ダンパ20が上梁14とブレース16,16の結合部18aとの間に介装される際、所定の予圧力が付加されるように圧縮状態で取り付けられる。該予圧力は支持台32と結合部18aとの間に差し込まれるスペーサ34によって微調整される。このように取り付け状態で予圧力が付加されることにより、上記皿ばね28は図5に示したばね特性の荷重−変位関係が非線形となる領域Rに達するようになっている。
【0019】
即ち、図5は本実施形態に用いた上記皿ばね28の本発明に採用し得るばね特性の荷重−変位曲線のグラフの一実測例が示され、縦軸には必要摩擦減衰力を得るために摩擦減衰力生成部26に入力される荷重wを示し、該荷重wの反力として摩擦減衰力生成部26に生じさせるべき圧接力、すなわち皿ばね28によって発生させる弾発力が示されると共に、横軸には皿ばね28のたわみ量σが示されている。そして、必要摩擦減衰力を得ることができる設定圧接力の値と、これを加えたときの皿ばね28のたわみ量との関係が同図から理解される。
【0020】
上記皿ばね28自体の荷重特性はその形状に依存することが知られており、本発明では図4に示すように、皿ばね単体28aの板厚をS、全たわみ量をhとした場合に、h/Sが1.3〜1.4の皿ばねを使用することが好ましい。h/Sが1.3よりも小さいと反りの発生が小さく十分な変形量を確保できず、また1.4よりも大きいと逆向きに反る変形が生じてしまうおそれがある。なお、Doは皿ばねの外径寸法、Diは皿ばねの内径寸法である。また、皿ばねの組み合わせ方に関しては、皿ばねを同じ向きに重ね合わせる並列では、重ね枚数を2枚にすると2倍の弾発力、3枚にすると3倍の弾発力というように、弾発力はこの並列の重ね枚数で調整することができる。また皿ばねの向きを互い違いに重ね合わせる直列では、重ね枚数を2枚にすると2倍のたわみ量、3枚にすると3倍のたわみ量というように、たわみ量はこの直列の重ね枚数で調整することができる。従って、これら並列および直列の並べ方を種々組み合わせることによって、様々な弾発力を確保しつつ所望のたわみ量に設定することができる。
【0021】
上述したようにグラフに例示された実際の皿ばね28では、設定圧接力が加えられることで荷重−変位関係が非線形となる領域Rに達している。ここで非線形領域Rとは、摩擦ダンパ20が配置される上下方向隙間寸法δの見込み変化量に対して弾発力の変動が小さい領域をいい、そしてこの皿ばね28はこの非線形ばね領域R内で使用されることになる。すなわち、線形領域を超えて、皿ばね28のたわみ量σが変化してもその発生弾発力の変動がきわめて小さな非線形領域R内を当該皿ばね28の使用領域として設定するようになっている。
【0022】
図5の実測例では、必要摩擦減衰力を得るために皿ばね28に設定すべき圧接力(弾発力)は約60tであり、このとき皿ばね28に発生しているたわみ量σは、非線形領域Rに達しているおおよそ40mmである。このような状態の皿ばね28に対し、上記上下方向隙間寸法δが±5mm範囲で変動しても、弾発力の変動を±4t程度に抑えることができる。これを同一の皿ばねの線形領域での使用と比較すると、例えば16mmのたわみ量で使用される皿ばねでは、たわみ変形量が10mm減少してたわみ量が6mmになると、弾発力で23tの変動を生じてしまうことが理解される。
【0023】
この実測例では、皿ばね28は約62mmたわませると潰れてしまう性能となっていて、このような皿ばね28に対して45mm以下のたわみ量で使用することは、全たわみ量のおよそ75%以下での使用(45/62<0.75)にあたり、残留変形の発生も防止できて耐久性に関しても満足できる使用となっている。
【0024】
以上説明したように本実施形態の皿ばね式摩擦ダンパを用いた制振構造にあっては、図1に示した建物架構10に地震等の水平振動が入力されると、ブレース16,16の結合部18aと上梁14との間の隙間δに介設された摩擦ダンパ20に水平方向の変位力が入力される。すると、図2に示した摩擦減衰力生成部26の滑り板22と摩擦材24は、皿ばね28の弾発力によって圧接された状態で相対的に滑動して摩擦抵抗力を発生し、この摩擦抵抗力により振動が効果的に減衰される。このとき、上記皿ばね28は、設定圧接力が加えられて上梁14と上記ブレースの結合部18aとの間の上下方向隙間寸法δの見込み変化量に対して、弾発力の変動が小さい非線形ばね領域R内でたわみ変形されるように設定されている。このため、建物架構10が地震や風、荷重や温度伸縮等の外部要因によって変形したり、摩擦材24の摩耗によりその板厚が変化したりして皿ばね28の変形量σが見込み変化量の範囲で変化した場合にあっても、摩擦減衰力生成部26に圧接力を生じさせる皿ばね28の弾発力の変動はきわめて小さくなる。従って、摩擦減衰力生成部26で発生される摩擦抵抗力を略一定に維持することができるため、建物架構10に入力される振動に対する減衰性能が変動することを防止することができる。
【0025】
このように、種々の原因により摩擦ダンパ20を介設した建物架構10とブレース16,16の結合部18aとの間の上下方向隙間寸法δが変化しても、一定した摩擦減衰力を発生させることができるので、摩擦ダンパ20による制振機能を設計値通りに発揮させることができる。従って、これによりブレース16,16の信頼性を向上することができ、延いては建物架構10を効果的に制振することができる。また、皿ばね28にたわみ変形が生じても摩擦減衰力生成部26に加わる弾発力がほぼ一定で変動がないので、後々の複雑なメンテナンスを不要とすることができる。
【0026】
また、巨大地震により著しく大きな振動が入力された場合には、皿ばね28が全たわみ量分変形して密着状態で建物架構10を剛体支持するため、有効なバックアップシステムとして機能させることができるという利点もある。更に、本実施形態の皿ばね式摩擦ダンパを用いた制振構造は、地震に対してのみならず、風による建物架構10の揺れに対しても有効に作用することはいうまでもない。
【0027】
図6には他の実施形態が示されており、この実施形態では上梁14下方に比較的長いつなぎ材18を配設し、このつなぎ材18の両端部に各ブレース16の上端部を接続するようにして、ブレース16相互間に広い空間を確保できるようにしている。そしてこの長く形成したつなぎ材18の両端部に摩擦ダンパ20を2つ配設していて、このような実施形態にあっても上記実施形態と同様な作用効果を確保することができる。特にこの実施形態では、つなぎ材18が2つの摩擦ダンパ20によって両端支持される形態なので、摩擦ダンパ20の増設による高効率な振動減衰と、つなぎ材18の両端支持によって建物架構10内に発生するモーメント等に対するつなぎ材18の負担軽減とを確保できて、効果的な制振作用を発揮させることができる。
【0028】
また図7にはさらに他の実施形態が示されており、この実施形態では建物架構10内にプレキャストコンクリート製等の耐振壁50が備えられている。この耐振壁50は下端部が下梁14aや床14bに接合されて建物架構10内に立設され、上端部50aと上梁14との間に所定の上下方向隙間が形成されている。また、耐振壁50の両側部と建物架構10を構成する一対の柱部材12との間には、建物架構10と耐振壁50との水平方向相対変位を吸収し許容するための隙間gが形成されている。そしてこのように配置された耐振壁50の上端部50a両側と上梁14との間には2つの摩擦ダンパ20が配設されていて、このような実施形態にあっても上記実施形態と同様な作用効果を確保することができる。
【0029】
すなわち、これら図6および図7に示す実施形態にあっても、減衰能力が変動することを防止した上記構成の摩擦ダンパ20により設定にしたがった確実な振動減衰作用を確保しつつ、これらブレース16や耐振壁50が本来有する耐振機能を有効に発揮させて、これらの相乗効果により効果的に建物架構を制振することができる。
【0030】
そして、以上のように摩擦ダンパ20の設置個数については必要に応じて1以上、複数個設置することができるとともに、耐振用補強部材についても、ブレース16や耐振壁50に限らず、その他の構造を設定して、これらに対して上記摩擦ダンパ20を設置することが可能である。
【0031】
図8および図9は他の実施形態を示し、図8は摩擦ダンパの要部を断面した拡大正面図、図9は同摩擦ダンパの要部を断面した拡大平面図であり、この実施形態を上記実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0032】
即ち、この実施形態にあっては、皿ばね28が平面配置で4つ設けられて構成されている。このように多数の皿ばね28を用いると、皿ばね28を1つ備える場合に比べて、皿ばね28に加えられる設定圧接力、すなわち発生弾発力を分散させることが可能となり、ばね設計の自由度を増すことができる。また、本実施形態では皿ばね28は、皿ばね単体28aを順次反対向きに重ね合わせて組み合わせることで構成されている。
【0033】
勿論、この実施形態にあっても上記それぞれの皿ばね28は開口部28bにガイドを兼ねたシャーキー30が挿通されて、皿ばね28の位置ずれが防止されるようになっている。また、それぞれの皿ばね28に挿通される4個のシャーキー30の上端部は共通のフランジ30aによって互いに連結される。更に、該フランジ30aと支持台32との間には、締め付け用のPC鋼棒40が設けられ、該PC鋼棒40がナット40aによって締め付け可能となっている。
【0034】
このように構成された摩擦ダンパ20は、これを取り付ける際に、まずPC鋼棒40に対してナット40aを締め込んでフランジ30aと支持台32との間を十分に縮め、この状態で摩擦ダンパ20を上梁14とブレース16,16(図1および図6参照)の結合部18aとの間に配置する。次いでナット40aを緩め、皿ばね28に設定圧接力に対応する弾発力が発生するたわみ量までナット40aを緩めていく。このたわみ量は設置時には既知の量であり、当該たわみ量にセット(予圧力の付加)できたならばナット40aの緩め作業を一旦終了する。そして、このとき、支持台32と結合部18aとの間に間隙が生じている場合には、これらの間にスペーサ34を介装して、ボルト42で支持台32を結合部18aに固定する。その後、ナット40aを外して皿ばね28を上下方向に伸び縮みが自由な状態とするようになっている。
【0035】
勿論、この実施形態にあっても上記実施形態と同様に、皿ばね28に予圧力が付加されることにより、上梁14と上記ブレースの結合部18aとの間の上下方向隙間寸法δの見込み変化量に対して、弾発力の変動が小さい非線形ばね領域R内でたわみ変形されるように設定されている。従って、この実施形態にあっても上記実施形態と同様の機能を発揮できることはいうまでもなく、特にこの実施形態では積層される皿ばね単体28aは、上下に隣接されるものどうしが反対に向き合って配置されるため、許容されるばね変形量を大きく取ることができる。本実施形態の摩擦ダンパ20は、図7に示した耐振壁50にも適用可能である。
【0036】
ところで、上記各実施形態にあっては上梁14側に摩擦減衰力生成部26を配置し、ブレース16,16の結合部18a側に皿ばね28を配置した場合を開示したが、これに限ることなくこれらを反対に取り付けて摩擦減衰力生成部26を結合部18a側、皿ばね28を上梁14側に配置してもよい。また、皿ばね28を構成する皿ばね単体28aの組み合わせ配置構成に関しても、上記実施形態の開示形態に限らず、本発明の皿ばね28に求められる設定が可能である限り、種々に変更して組み合わせ構成することができることはもちろんである。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の皿ばね式摩擦ダンパを用いた制振構造にあっては、耐振用補強部材と架設部材との上下方向隙間に介設されるダンパを、架設部材と耐振用補強部材との間に設けられ、水平方向を指向する滑り板および滑り板に圧接しつつ滑動する摩擦材からなる摩擦減衰力生成部と、摩擦減衰力生成部と架設部材若しくは耐振用補強部材の少なくとも何れか一方との間に設けられ、摩擦減衰力生成部に圧接力を生じさせる弾発力を発生する皿ばねとからなる摩擦ダンパで構成し、皿ばねは、所定の与圧力が付加されて圧縮された状態で、上記摩擦減衰力生成部と上記架設部材若しくは上記耐振用補強部材の少なくとも何れか一方との間に設けられ、かつ、たわみ変形量に対して弾発力の変動が線形ばね領域内よりも小さい、非線形ばね領域内で使用されるように構成したので、建物架構に地震等の水平振動が入力されると、摩擦ダンパの摩擦減衰力生成部の滑り板と摩擦材は、皿ばねの弾発力によって圧接された状態で相対的に滑動して摩擦抵抗力を発生し、この摩擦抵抗力により入力された振動を効果的に減衰することができる。このとき、種々の原因によって皿ばねの変形量が見込み変化量の範囲で変化した場合にあっても、摩擦減衰力生成部に圧接力を生じさせる皿ばねの弾発力の変動をきわめて小さくすることができるので、摩擦減衰力生成部で発生される摩擦抵抗力を略一定に維持することができ、振動減衰能力が変動することを防止することができる。さらに、皿ばねと架設部材若しくは耐震用補強部材との間のスペーサにより、皿ばねの与圧力の微調整が可能となるので、皿ばねを非線形ばね領域内に確実に設定することができ、入力された振動を効果的に減衰することができる。
【0038】
そして上記耐振用補強部材が建物架構の空間内に備えられたブレース若しくは耐振壁であって、これらブレースまたは耐振壁の上端部と上方の該架設部材とを上記上下方向隙間に介設した上記摩擦ダンパを介して連結した場合には、減衰能力が変動することを防止した上記構成の摩擦ダンパにより設定にしたがった確実な振動減衰作用を確保しつつ、これらブレースや耐振壁が本来有する耐振機能を有効に発揮させて、これらの相乗効果により効果的に建物架構を制振することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すブレースを取り付けた建物架構の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すブレースと建物架構との間に介設される摩擦ダンパの要部を断面した拡大正面図である。
【図3】図2の摩擦ダンパの要部を断面した拡大平面図である。
【図4】図2の摩擦ダンパに用いられる皿ばねを示す拡大断面図である。
【図5】本発明の一実施形態を示す摩擦ダンパに適用される皿ばねのばね特性の一実測例を示すグラフ図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示すブレースを取り付けた建物架構の概略構成図である。
【図7】本発明のさらに他の実施形態を示す耐振壁を取り付けた建物架構の概略構成図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態を示す他の摩擦ダンパの要部を断面した拡大正面図である。
【図9】図8の摩擦ダンパの要部を断面した拡大平面図である。
【符号の説明】
10 建物架構 12 柱部材
14 上梁 14a 下梁
14b 床 16 ブレース
18 つなぎ材 18a 結合部
20 摩擦ダンパ 22 滑り板
24 摩擦材 26 摩擦減衰力生成部
28 皿ばね 28a 皿ばね単体
50 耐振壁
δ 上下方向隙間寸法 R 非線形ばね領域
Claims (3)
- 相対向する一対の柱部材と、これら柱部材の上下端部を連結する上、下一対の架設部材とで区画される空間内に耐振用補強部材を備え、該耐振用補強部材を上記架設部材から上下方向に適宜隙間を設けて配置し、上記耐振用補強部材と上記架設部材とを上記上下方向隙間に介設したダンパを介して連結するようにした建物架構であって、
上記ダンパを、上記架設部材と上記耐振用補強部材との間に設けられ、水平方向を指向する滑り板および該滑り板に圧接しつつ滑動する摩擦材からなる摩擦減衰力生成部と、該摩擦減衰力生成部と上記架設部材若しくは上記耐振用補強部材の少なくとも何れか一方との間に設けられ、該摩擦減衰力生成部に圧接力を生じさせる弾発力を発生する皿ばねとからなる摩擦ダンパで構成し、
該皿ばねは、所定の与圧力が付加されて圧縮された状態で、上記摩擦減衰力生成部と上記架設部材若しくは上記耐振用補強部材の少なくとも何れか一方との間に設けられ、かつ、たわみ変形量に対して弾発力の変動が線形ばね領域内よりも小さい、非線形ばね領域内で使用されるとともに、上記皿ばねと上記架設部材若しくは上記耐震用補強部材との間には、前記与圧力を調整するためのスペーサが差し込まれていることを特徴とする皿ばね式摩擦ダンパを用いた制振構造。 - 上記耐振用補強部材が上記空間内に備えられたブレースであって、該ブレースの上端部と上方の該架設部材とを上記上下方向隙間に介設した上記摩擦ダンパを介して連結したことを特徴とする請求項1に記載の皿ばね式摩擦ダンパを用いた制振構造。
- 上記耐振用補強部材が上記空間内に備えられた耐振壁であって、該耐振壁の上端部と上方の該架設部材とを上記上下方向隙間に介設した上記摩擦ダンパを介して連結したことを特徴とする請求項1に記載の皿ばね式摩擦ダンパを用いた制振構造。
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