JP3790793B2 - 異形高分子微粒子の製造方法及び異形微粒子状高分子 - Google Patents

異形高分子微粒子の製造方法及び異形微粒子状高分子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、異形高分子微粒子の製造方法、特に円盤状の高分子微粒子の製造方法及び異形微粒子状高分子に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、乳化重合法や懸濁重合法等により高分子微粒子を製造する場合には、その表面エネルギーを最小にしようとする働きから真球状又は略真球状の微粒子が得られる。それ以外の異形高分子微粒子を製造することは困難である。
【0003】
このような状況の下で本発明者は、異形高分子微粒子の製造方法として、表面に多数の凹部を有する高分子微粒子を製造する方法としてシード乳化重合法を提案している(特開平6−287244号、特開平6−287245号)。
【0004】
この方法は、水溶性有機溶媒と水との混合溶媒中又は水中で、シードポリマー粒子としてのポリスチレン粒子にモノマーとしてのアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルを吸収させた後、該モノマーを乳化重合させることを特徴とする方法であって、ゴルフボール状高分子複合体微粒子を製造することができる。
【0005】
より詳しくは、図1を参照して説明すると、この従来法では、まず、重合媒体として、水に少量のアルコールを添加した混合溶媒(例えば、エタノール/水(10/90;重量比)の混合物)又は水を用い、このような媒体中にシードポリマー粒子1としてのポリスチレン粒子を分散させた分散液中に、表面モノマー(例えば、アクリル酸ブチル)を添加する。この系を5℃程度の低温で撹拌して、表面モノマーをシードポリマー粒子に吸収させる。こうすると、図1のaに示すように、シードポリマー粒子1は、表面モノマーで均一に膨潤される。
【0006】
次いで、重合開始剤を添加し、上記シードポリスチレンのガラス転移温度よりも低い温度でシード乳化重合を行うと、表面モノマー(BA)で膨潤したシードポリマー粒子1に、媒体中で生成した開始剤ラジカルが侵入して重合が開始され、表面モノマー(例えば、アクリル酸ブチルモノマー(BA))由来の表面ポリマー(例えば、ポリアクリル酸ブチル(PBA))が粒子表面に生成すると同時に相分離して集まり、粒子表面にドメイン2が形成される(図1のb)。シードポリマー粒子中に存在している表面モノマー(BA)はドメイン2に吸収される(図1のc)。このときシードポリスチレン部分は膨潤していた表面モノマー(BA)が急激に減少するため粘度が上昇し、上記ドメインが固定され、シードポリマー粒子であるポリスチレン粒子1の表面に多数のモノマー吸収ドメイン3が散点状に形成される。
【0007】
この各ドメイン3に吸収された表面モノマー(アクリル酸ブチル(BA))が重合するにつれ、該モノマーから得られる表面ポリマー(ポリアクリル酸ブチル(PBA))の密度が表面モノマー(BA)に比して高いので、ドメイン3で生成した表面ポリマー(PBA)が収縮する。その結果、図1のdに示すようにシードポリマー粒子1表面に多数の凹部4ができ、ゴルフボール状の高分子複合体粒子が得られる。
【0008】
一般に上記凹部4が深くまた開口部が大きいと、比表面積が大きくなり、有用物質の担持材料としての効率向上、光散乱能の向上等があり、有用性が向上する。
【0009】
上記特開平6−287244号及び特開平6−287245号に記載の従来法は、ポリマー粒子表面に多数の凹部を有するゴルフボール状高分子微粒子を形成するという点で画期的なものであった。
【0010】
しかしながら、上記従来法では、凹部を形成するためには、重合反応を行う前に表面モノマーをシードポリマー粒子に吸収させる必要があり、このため、操作がやや煩雑である。
【0011】
さらに、上記従来法では、凹部が比較的小さくなるために基本的には球体表面に凹部が形成された微粒子が得られるのみであり、微粒子の基本的な外形を変化させることはできなかった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、基本的な外形が球形又は略球形以外の異形高分子微粒子を効率よく製造できる方法、及び、均一な異形微粒子状高分子を提供することを主目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を見出した。
▲1▼ 予め表面モノマーをシードポリマー粒子中に吸収させるのではなく、表面モノマーを媒体中に存在させた状態で特定の補助溶媒の存在下にシード分散重合を行うことにより、シードポリマー粒子表面に、表面モノマーが重合して得られる表面ポリマーと補助溶媒とを含む領域が形成される。次いで、この補助溶媒を除去することにより、シードポリマー粒子表面に凹部が形成されるとともに、該凹部表面に表面ポリマーの膜が形成される。
▲2▼ ▲1▼の効果を得るためには、補助溶媒として、シードポリマーの貧溶媒又は非溶媒であるが、表面ポリマーの良溶媒であり、かつ、媒体に部分溶解する有機溶媒を使用することが必要である。また、媒体として、表面モノマーを溶解するとともに補助溶媒を部分溶解するものを用いることが必要である。このような媒体として、i)補助溶媒の貧溶媒(PS)であるか、ii)補助溶媒の貧溶媒(PS)と補助溶媒の非溶媒(NS)との混合液であるか、又はiii)補助溶媒の良溶媒(GS)と補助溶媒の非溶媒(NS)との混合液を使用できる。
▲3▼ 前記のii)の場合には、媒体中のPSの比率を80重量%以上とするとともに、補助溶媒をシードポリマーの50重量%以上使用することにより、凹部が大きくなって、その結果球形又は略球形以外の外形を有する異形高分子微粒子が得られる。また、前記のiii)の場合には、媒体中のNSの比率を40重量%以上とするとともに、補助溶媒をシードポリマーの50重量%以上使用することにより異形高分子微粒子が得られる。
▲4▼ 特に、前記のii)の場合に媒体中のPSの比率を90重量%以上とするとともに、補助溶媒をシードポリマーの100重量%以上使用することにより、円盤状の異形高分子微粒子が得られる。また、前記のiii)の場合に媒体中のGSの比率を30〜50重量%程度とするとともに、補助溶媒をシードポリマーの100重量%以上使用することにより、円盤状の異形高分子微粒子が得られる。
▲5▼ 得られる異形微粒子状高分子は、各微粒子の粒子径及び外形が極めて均一なものである。
【0014】
本発明は、前記知見に基づきさらに研究を重ねて完成されたものであり、以下の各項の異形高分子微粒子の製造方法及び異形微粒子状高分子を提供する。
【0015】
項1. 媒体中にシードポリマー粒子を分散させた分散液に、表面モノマー、補助溶媒、開始剤及び分散剤を添加して、シード分散重合法により表面モノマーを重合又は共重合させるシード分散重合工程と、補助溶媒を除去する工程とを含み、
表面モノマーは、媒体に溶解し、かつ、重合又は共重合によりシードポリマーと相溶性が低いとともにシードポリマーに比べて媒体との親和性が低いか又は同等である表面ポリマーを与えるものであり、
補助溶媒は、シードポリマーの貧溶媒又は非溶媒であるが、表面ポリマーの良溶媒であり、かつ、媒体に部分溶解する有機溶媒であり、
媒体は、表面モノマーを溶解するとともに補助溶媒を部分溶解するものであり、かつ、i)補助溶媒の貧溶媒(PS)、ii)補助溶媒の貧溶媒(PS)80重量%以上と補助溶媒の非溶媒(NS)20重量%以下との混合液、又はiii)補助溶媒の良溶媒(GS)20〜60重量%と補助溶媒の非溶媒(NS) 80〜40重量%との混合液であり、
補助溶媒をシードポリマーの50〜500重量%添加する異形高分子微粒子の製造方法。
【0016】
項2. 媒体が、表面モノマーを溶解するとともに補助溶媒を部分溶解するものであり、かつ、i)補助溶媒の貧溶媒(PS)、ii)補助溶媒の貧溶媒(PS)90重量%以上と補助溶媒の非溶媒(NS)10重量%以下との混合液、又はiii)補助溶媒の良溶媒(GS)30〜50重量%と補助溶媒の非溶媒(NS) 70〜50重量%との混合液である項1に記載の方法。
【0017】
項3. 補助溶媒をシードポリマーの100〜300重量%添加する項1又は2に記載の方法。
【0018】
項4. シード分散重合工程において、シードポリマー粒子を単分散状態とする項1、2又は3に記載の方法。
【0019】
項5. シードポリマーが、アクリル酸のC1−C8アルキルエステル、メタクリル酸のC1−C8アルキルエステル及び芳香族ビニルから選ばれる少なくとも1種のラジカル重合性モノマーから得られるポリマー又はコポリマーであり、媒体を構成する補助溶媒の良溶媒成分(GS)がアセトン、エタノール、1−プロパノール及び2−プロパノールから選ばれる少なくとも1種の水溶性有機溶媒であり、媒体を構成する補助溶媒の貧溶媒成分(PS)がメタノールであり、媒体を構成する補助溶媒の非溶媒成分(NS)が水であり、
表面モノマーが、アクリル酸のC1−C8アルキルエステル、メタクリル酸のC1−C8アルキルエステル、芳香族ビニル、シアン化ビニル、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和カルボン酸エステル、ハロゲン化ビニル、共役ジエン、カルボン酸ビニルエステル及びエチレン性不飽和カルボン酸アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーである項1から4のいずれかに記載の方法。
【0020】
項6. 異形微粒子状高分子であって、各微粒子の基本的な外形が球形又は略球形以外の形である異形微粒子状高分子。
【0021】
項7. 各微粒子が円盤状である項6に記載の異形微粒子状高分子。
【0022】
項8. 数平均粒子径(Dn)が0.05〜100μmである項6又は7に記載の異形微粒子状高分子。
【0023】
項9. 粒子径分布の広がりを示す変動係数(Cv)が2〜10%である項6、7又は8に記載の異形微粒子状高分子。
【0024】
項10. 粒子径分布((重量平均粒子径(Dw)/数平均粒子径(Dn))が1〜1.1である項6〜9のいずれかに記載の異形微粒子状高分子。
【0025】
項11. さらに、少なくとも一部の表面に異種ポリマー層を備えた項6から10のいずれかに記載の異形微粒子状高分子。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の異形高分子微粒子の製造方法の概要
本発明の異形高分子微粒子の製造方法は、分散剤を用いて媒体中にシードポリマー粒子を分散させた分散液に、表面モノマー、補助溶媒及び開始剤を添加して、シード分散重合法により表面モノマーを重合又は共重合させるシード分散重合工程と、補助溶媒を除去する工程とを含む方法である。
【0027】
本発明方法において、前記表面モノマーは、媒体に溶解し、かつ、重合又は共重合によりシードポリマーとは相溶性が低いとともにシードポリマーに比べて媒体との親和性が低いか又は同等である表面ポリマーを与えるものである。
【0028】
また、補助溶媒は、シードポリマーの貧溶媒又は非溶媒であるが、表面ポリマーの良溶媒であり、かつ、媒体に部分溶解する有機溶媒である。
【0029】
また、媒体は、表面モノマーを溶解するとともに補助溶媒を部分溶解するものであり、かつ、i)補助溶媒の貧溶媒(PS)、ii)補助溶媒の貧溶媒(PS)80重量%以上と補助溶媒の非溶媒(NS)20重量%以下との混合液、又はiii)補助溶媒の良溶媒(GS)20〜60重量%と補助溶媒の非溶媒(NS) 80〜40重量%との混合液である。
【0030】
また、補助溶媒をシードポリマーの50〜500重量%添加する。
シードポリマー粒子
シードポリマー粒子としては、従来公知の方法、特に、乳化重合、分散重合等により粒子化されたビニルポリマーがいずれも使用できる。より具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸のC1−C8アルキルエステル(特にC1−C4アルキルエステル)、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸のC1−C8アルキルエステル(特にC1−C4アルキルエステル)、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン等の芳香族ビニルから選ばれる少なくとも1種のラジカル重合性モノマーから得られるポリマー又はコポリマーを例示できる。
【0031】
シードポリマー粒子の数平均粒子径(Dn)としては、特に限定されず、0.05〜100μm程度の数平均粒子径のものを使用できる。特に、0.5〜20μm程度の数平均粒子径のものを用いるのが好ましい。また、シードポリマー粒子は、粒子径が揃った単分散状態であるのが好ましいが、単分散状態でなくてもよい。
【0032】
本明細書において、シードポリマー粒子の数平均粒子径は実施例の項目に記載の方法により測定したものである。
【0033】
シードポリマーの微粒子は、それを構成するモノマーから、従来公知の慣用されている乳化重合方法、分散重合方法等により、容易に製造することができる。また、単分散状態のシードポリマーの微粒子も従来公知の方法、例えば、コロイド・アンド・ポリマー・サイエンス(Colloid & Polymer Science), 267, 193 (1989)及び同誌,269,222(1991)に記載の方法に従い、製造することができる。シードポリマー粒子の粒子径の調整方法もこれらの文献に記載されている。
【0034】
シードポリマーの分子量範囲は、特に限定されず、広い範囲から適宜選択すればよく、一般には、重量平均分子量で10000〜1000000程度、特に20000〜500000程度であることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。
媒体
本発明で使用する媒体としては、まず、シードポリマーの微粒子を実質上溶解することなく分散させることができる媒体であることが要求される。
【0035】
更に、媒体は、シードポリマーに対してよりも、表面モノマーの重合により得られる表面ポリマーに対する親和性が低いか又は同等であることが要求される。
【0036】
ここで、表面ポリマーがシードポリマーに比べて、媒体との親和性が低いか又は同等であるという条件が満たされているかどうかの判定は、例えば、シードポリマーの0.01重量%トルエン溶液と媒体との界面張力をγAとし、表面ポリマーの0.01重量%トルエン溶液と媒体(M)との界面張力をγBとした場合に、γA<γBであるか又はγA=γBである関係を充足するかどうかを確認することにより行うことができる。
【0037】
本明細書において、界面張力は、ASTM−971−50において規定されるデュヌイの白金リング法に準拠して、溶媒としてトルエンを用い、ポリマー濃度を0.01重量%として測定した値である。
【0038】
更に、媒体は、補助溶媒を部分溶解するものであることが要求される。 このような媒体は、i)補助溶媒の貧溶媒(PS)、ii)補助溶媒の貧溶媒(PS)80重量%以上と補助溶媒の非溶媒(NS)20重量%以下との混合液、又はiii)補助溶媒の良溶媒(GS)20〜60重量%と補助溶媒の非溶媒(NS) 80〜40重量%との混合液である。
【0039】
ii)の場合には、PSの比率が余りに少ないとシードポリマー粒子表面に形成される凹部が小さくなってシードポリマー粒子の基本的外形を球形以外の形にすることができないが、本発明の範囲内であればこのような問題は生じない。本発明の範囲内で、媒体中に含まれるPSの比率を高くすると、シードポリマー粒子表面に形成される凹部が大きくなり、これに伴いシードポリマー粒子表面の凹部の数が少なくなる。特に、媒体中に含まれるPSを90重量%以上、NSを10重量%以下とすることにより、円盤状の微粒子が得られる。
【0040】
iii)の場合には、GSの比率が余りに少ないとシードポリマー粒子表面に形成される凹部が小さくなってシードポリマー粒子の基本的外形を球形以外の形にすることができない。また、GSが余りに多いと、GSに補助溶媒が溶けてしまい異形微粒子が得られなくなる。本発明の範囲内であればこのような問題は生じない。本発明の範囲内で、媒体中に含まれるGSの比率を高くすると、シードポリマー粒子表面に形成される凹部が大きくなり、これに伴いシードポリマー粒子表面の凹部の数が少なくなる。特に、媒体中に含まれるGSを30〜50重量%程度、NSを70〜50重量%程度とすることにより、円盤状の微粒子が得られる。
【0041】
典型的には、良溶媒とは対象成分(他の溶媒、上記の場合には補助溶媒)を完全に又は略完全に溶解させる溶媒であり、貧溶媒とは、対象成分を部分的に溶解させる溶媒であり、非溶媒とは対象成分を全く又は実質的に全く溶解しない溶媒をいう。
【0042】
具体的には、ある溶媒が補助溶媒のGS、PS又はNSであるか否かは、容量既知の補助溶媒を容器に入れておき、この補助溶媒に容量既知の判定対象溶媒を混合した後に静置し、相分離した2層の容量を目視観察することにより行える。この場合に補助溶媒層が消失し、均一透明溶液が観察されればGSと判定し、補助溶媒層の容量が減少するものの層として観察されればPSと判定し、補助溶媒層の容量がほとんど変化なくて2層が観察されればNSと判定する。
【0043】
例えばGSとしてはアセトン又はエタノール、1−プロパノール、2−プロパノールのような炭素数2又は3の飽和脂肪族アルコール等を単独で又は2種以上混合して使用できる。特に、エタノールが好ましい。また、PSについては、i)の場合には単独で補助溶媒を部分溶解させる溶媒をPSとして使用でき、溶媒の種類を選択することにより得られる微粒子の形状を調整できる。また、ii)の場合にはNSとの混合液にして初めて補助溶媒を部分分解させるような溶媒を使用できる。例えばメタノールはi)及びii)の双方の場合に使用できる溶媒である。また、NSとしては水等を使用できる。
【0044】
媒体の使用量は、特に限定されず、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、シードポリマー微粒子100重量部に対して、通常100〜5000重量部、特に1000〜2000重量部であるのが好ましい。
【0045】
シードポリマー粒子を媒体に分散させるには、分散剤をシードポリマー粒子に対して5重量%程度の量で使用して、常法に従って分散させればよい。分散剤としては、この分野で慣用されているものであれば特に限定なく使用できるが、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリ(ハイドロオキシステアリン酸−g−メタクリル酸メチルーco−メタクリル酸)共重合体等の高分子分散安定剤;ノニオン系界面活性剤;アニオン系界面活性剤;両性界面活性剤などが挙げられる。特にポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール等を使用し得る。特にポリアクリル酸が好ましい。
【0046】
上記分散剤は、分散重合の際に使用する分散剤と同じであるのが好ましいが、異なっていてもよい。
表面モノマー
前述したように、本発明で使用する表面モノマーは、次の(i)〜(iii)の条件を充足するようなモノマーである:
(i) 媒体に溶解する。
【0047】
(ii)表面モノマーを重合又は共重合して得られる表面ポリマーが、シードポリマーに比べて、媒体との親和性が低いか又は同等である。
【0048】
(iii) 表面モノマーを重合又は共重合して得られる表面ポリマーが、シードポリマーとは相溶性が低いポリマーである。
【0049】
特に、表面モノマーは、シードポリマーに比し、構成モノマーの種類及び/又は組成において異なるポリマーを与えるものが好ましく使用できる。
【0050】
ここで、表面ポリマーがシードポリマーに比べて媒体との親和性が低いか又は同等であるという条件が満たされているかどうかの判定は、前記「媒体」の項で説明したようにして行うことができる。
【0051】
表面モノマーはこれを重合又は共重合して得られる表面ポリマーが、シードポリマーよりも媒体に対する親和性が高すぎると、シード分散重合により、シードポリマーをコアとし表面ポリマーをシェルとするコア/シェル型の球状微粒子になってしまう。また、表面ポリマーとシードポリマーとの相溶性が高すぎても、単に球状又は略球状の微粒子になってしまう。従って、異形高分子微粒子を得るためには、表面ポリマーとシードポリマーとの相溶性が余り高くなく、かつ、媒体への親和性が表面ポリマーよりシードポリマーの方が高いことが必要である。
【0052】
シードポリマーと表面ポリマーとの間の相溶性は、例えば両ポリマーを共通の良溶媒に溶解させて5重量%程度の均一溶液を得た後、各ポリマー溶液をガラス板上に流延して溶媒を蒸発させることによりポリマーフィルムを得る。このとき、フィルムが白濁していれば両ポリマーの相溶性は悪い(低い)と判定する。また、フィルムが透明であれば両ポリマーの相溶性は良いと判定する。
【0053】
より具体的には、表面モノマーとしては、アクリル酸のC1−C8アルキルエステル、メタクリル酸のC1−C8アルキルエステル、スチレン等に代表される芳香族ビニル、シアン化ビニル、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和カルボン酸エステル、ハロゲン化ビニル、共役ジエン、カルボン酸ビニルエステル及びエチレン性不飽和カルボン酸アミド等から選ばれるラジカル重合性モノマーを例示できる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0054】
上記例示した表面モノマーのうちでも、特に、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル,アクリル酸プロピル,アクリル酸ブチル等のアクリル酸のC1−C8アルキルエステル(特にC1−C4アルキルエステル)、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル,メタクリル酸プロピル,メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸のC1−C8アルキルエステル(特にC1−C4アルキルエステル)、スチレン、α-メチルスチレン,ビニルトルエン,ジメチルスチレン等の芳香族ビニルが好ましい。
【0055】
表面モノマーの使用量は、特に限定されず、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、シードポリマー粒子100重量部に対して、10〜200重量部程度、特に30〜70重量部程度であるのが好ましい。
補助溶媒
本発明で使用する補助溶媒は、シードポリマーの貧溶媒又は非溶媒であるが、表面ポリマーの良溶媒であることがまず必要である。換言すると、補助溶媒は、シードポリマーには吸収されにくいが、表面ポリマーには吸収されるような溶媒である。
【0056】
シードポリマーと表面ポリマーとの特定の組み合わせに対して、いかなる溶媒が、本発明の補助溶媒として使用できるか否かの判定は、補助溶媒に、別途調製したシードポリマーと表面ポリマーとを別々に添加し、どちらか一方のみを溶解するかどうかを観察することにより行うことができる。典型的には、ポリマーに対する貧溶媒とは、ポリマーを完全には溶解しないが若干は膨潤する溶媒であり、ポリマーに対する非溶媒とはポリマーを全く又は実質上全く溶解しない溶媒である。また、ポリマーに対する良溶媒とは、ポリマーを完全に溶解する溶媒である。
【0057】
また、補助溶媒は、媒体に部分溶解する有機溶媒であることが必要である。補助溶媒が媒体に完全溶解してしまうと表面ポリマーに吸収されるより媒体中に存在している方が多くなり、一般的には、シードポリマー粒子表面に大きな深い凹部が出来なくなってしまう傾向がある。
【0058】
なお、補助溶媒も、表面モノマーを溶解するものであるのが好ましい。
【0059】
上記条件を充足する補助溶媒としては、シードポリマーと表面モノマーとの組み合わせにより、広い範囲から選択した有機溶媒を使用できる。特に、シードポリマーが(メタ)アクリル酸C1−C8アルキルエステルのポリマーであり、表面モノマーがスチレン等の前記芳香族ビニルである場合、補助溶媒としては、シクロヘキサン、シクロペンタン等の炭素数5〜8程度の単環式の環状アルカン又はデカリン、テレピン等の炭素数8〜12程度の二環式の環状アルカン等が好ましく使用できる。特に前者ではシクロヘキサン、後者ではデカリンが好ましい。
【0060】
また、シードポリマーがスチレン等の前記芳香族ビニルのポリマーであり、表面モノマーが(メタ)アクリル酸C1−C8アルキルエステルである場合、補助溶媒としては、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン等の炭素数8〜12程度の脂肪族炭化水素やオクタノール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール等の炭素数7〜12程度の飽和脂肪族高級アルコール等が好ましく使用できる。特に前者としてはデカン、ドデカン、後者としてはデシルアルコール、ドデシルアルコールが好ましい。
【0061】
補助溶媒の使用量は、シードポリマー微粒子100重量部に対して、50〜500重量部程度使用する。補助溶媒の使用量が余りに少ないと、シードポリマー粒子表面に形成される凹部が小さくなってシードポリマー粒子の基本的外形を球形以外の形にすることができない。また、補助溶媒が多すぎると、シードポリマー粒子が凝集するなど不安定化する傾向があり、微粒子の製造上好ましくない。本発明の範囲内であればこのような問題は生じない。特に、補助溶媒をシードポリマー微粒子100重量部に対して、100〜300重量部程度使用することにより、円盤状の高分子微粒子が得られる。
開始剤
本発明で使用する開始剤としては、上記媒体に溶解し、ラジカル重合性のモノマーの重合を開始させる開始剤であれば、特に限定されることなく使用できる。
【0062】
開始剤としては、アゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、tert-ブチルパーオキサイド等の過酸化物、レドックス系の開始剤等が使用できる。
【0063】
重合開始剤の使用量は、表面モノマーの重合に有効な量であれば特に限定されず、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、表面モノマー100重量部に対して、0.1〜10重量部、特に0.5〜2重量部であるのが好ましい。
分散剤
本発明で使用する分散剤は、シードポリマー粒子の分散状態を安定化する目的で使用する。分散剤としては、従来から分散重合を行うに当たって慣用されている分散剤がいずれも使用できる。例えば、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリ(ハイドロオキシステアリン酸−g−メタクリル酸メチル−co−メタクリル酸)共重合体等の高分子分散安定剤;ノニオン系界面活性剤;アニオン系界面活性剤;両性界面活性剤等を使用できる。
【0064】
また、上記分散剤としては、シードポリマー粒子を製造する際に使用した分散剤をそのまま使用することができ、或いは、シードポリマー粒子製造後に追加的に添加してもよい。
【0065】
分散剤の使用量は、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、シード粒子100重量部に対して1〜30重量部、特に3〜15重量部とするのが好ましい。
シード分散重合
本発明では、前記従来法とは異なり、表面モノマーをシードポリマーに吸収させる工程を行うことなく、シード分散重合を行う。即ち、上記シードポリマーの微粒子を分散させた媒体に、表面モノマー、補助溶媒、重合開始剤及び分散剤を添加し、得られた系をシード分散重合法に供することより表面モノマーを重合させる。
【0066】
重合は、上記系を撹拌下加熱することにより行われる。撹拌条件は特に限定されないが、例えば、50〜200rpm程度の回転速度を有する撹拌装置を用いて行うのが好ましい。重合温度としては、使用する表面モノマーの種類等に応じて広い範囲から選択できるが、一般には、30〜90℃程度、特に40〜70℃程度とするのが好ましい。重合時間は、重合条件により変わり得るが、一般には、3〜24時間程度である。重合は、不活性ガス、例えば窒素ガス、アルゴンガス等の雰囲気中で行うのが好ましい。
【0067】
この重合反応により、例えば図2のaに側面図で示すように、シードポリマー微粒子10の表面に、表面ポリマー及び補助溶媒を含有する複数のドメイン11が形成された異形複合高分子微粒子が生成する。さらに、補助溶媒の使用量を多くし、かつ、媒体中に含まれるGSの比率を高くすることにより、例えば図2のbに断面図で示すように、円盤状のシードポリマー微粒子10の両表面に二つのドメイン11が形成された円盤状複合高分子微粒子が生成する。
【0068】
シード分散重合反応終了後、得られた複合高分子微粒子を重合反応混合物から単離する。単離方法としては、従来から慣用されている方法、例えば、濾過、遠心分離等が使用できる。
補助溶媒の除去
単離後、得られた複合高分子微粒子から、補助溶媒を除去する処理を行う。除去処理としては、単離された複合高分子微粒子から補助溶媒が除去できる限り、どのような方法でもよい。例えば、乾燥処理、溶媒を用いた洗浄又は抽出処理等を採用できる。
【0069】
乾燥処理としては、表面ポリマーと補助溶媒とを含むドメインから補助溶媒が蒸発すると共に補助ポリマーの層がこのドメインの底部に付着してくぼみが形成される方法であればどのような条件でもよく、例えば、温度0〜90℃程度、圧力1〜1×105 Pa程度の減圧又は常圧で、所望の深さの凹部が形成されるまで、乾燥する方法を例示できる。
【0070】
また、上記溶媒を用いた洗浄又は抽出処理は、所望の厚さの補助ポリマー層が形成されるまで、上記複合高分子微粒子を、補助溶媒とのなじみのよい有機溶媒に、浸漬等の方法で接触させればよい。
【0071】
補助溶媒を除去すると、図2のドメイン11から補助溶媒が除去されると共に表面ポリマーの層がドメイン11の底部に付着する。これにより、例えば図3のaに側面図で示すように、くぼみ13を有するシードポリマー微粒子10の、くぼみ13表面に表面ポリマー層12が形成された異形高分子微粒子が得られる。或いは、例えば図3のbに断面図で示すように、円盤状のシードポリマー微粒子10の表面に表面ポリマー層12が形成された円盤状高分子微粒子が得られる。このように、本発明によると、異形高分子微粒子を容易に製造することができる。
異形微粒子状高分子
このようにして得られる本発明の異形微粒子状高分子は、各微粒子の基本的な外形が球形でもなく、楕円のような略球形でもない。本発明の異形微粒子状高分子を構成する各微粒子は、1微粒子当たり1〜20個程度のくぼみを有する。各微粒子は、くぼみを除いた部分の表面積がくぼみがないとした場合の微粒子の表面積の50%以下である。1微粒子に存在するくぼみの形及び位置は規則的でもよく、または不規則でもよい。くぼみの形態は、平面又は粒子の中心に向かって椀状にへこんだ曲面の形態である。本発明の異形微粒子状高分子を構成する各微粒子は、特に、円盤状であることが好ましい。
【0072】
本発明方法により得られる異形微粒子状高分子の数平均粒子径は、原料として用いたシードポリマー粒子の平均粒子径とほぼ同様であるか若干大きいのが通常である。本発明の異形微粒子状高分子は、数平均粒子径(Dn)が通常0.05〜100μm程度、特に0.5〜20μm程度であることが好ましい。数平均粒子径は、実施例の項目に記載の方法で測定した値である。
【0073】
特に、本発明における異形微粒子状高分子を構成する各微粒子が円盤状である場合には、その数平均粒子径は、1〜200μm程度であることが好ましい。円盤状微粒子の場合の粒子径は円形面の直径に相当する。また、円盤の厚み(補助ポリマー層を除いた部分の厚み)は通常0.05〜10μm程度、特に0.1〜5μm程度であることが好ましい。円盤状微粒子の厚みも実施例に記載の方法により求めた値である。円盤状微粒子の厚みは、本発明方法において、シードポリマーに対して補助溶媒を50〜500重量%程度使用することにより前記範囲にすることができる。
【0074】
また、本発明方法により得られる異形微粒子状高分子は、微粒子の粒子径及び外形が非常に均一である。変動係数(Cv)が2〜10%程度、特に2〜5%程度であることが好ましい。Cvは実施例に記載の方法により測定した値である。
【0075】
また、本発明の異形微粒子状高分子は、粒子径分布、すなわち「重量平均粒子径(Dw)/数平均粒子径(Dn)」が1〜1.1程度、特に1〜1.05程度であることが好ましい。重量平均粒子径(Dw)も実施例に記載の方法で測定した値である。
【0076】
本発明の異形微粒子状高分子は、通常少なくとも一部の表面に異種ポリマー層を備える。異種ポリマー層は微粒子の全面を覆っていてもよく或いは一部に覆われていない部分があってもよい。異種ポリマーは表面モノマーが重合又は共重合して得られる表面ポリマーである。異種ポリマー層の厚さは、使用する表面モノマーの量及び補助溶媒の除去の程度によって異なるが、通常20〜1000nm程度である。
表面ポリマーからなる異種ポリマー層は、適当な溶媒を用いて洗浄除去することができる。溶媒としては、例えば当該微粒子の製造に用いた補助溶媒を使用できる。
用途
本発明の異形微粒子状高分子は、真球状微粒子とは異なる流動性、充填性を示す。従って、樹脂等の充填剤、電子写真用トナーとして用いれば、特異な特性が得られる。また、本発明の異形高分子微粒子は真球状微粒子より高い光散乱能を有する。従って、白色度や隠蔽力の高い有機顔料として有用であり、塗料、インク、化粧品などの分野で有利に利用できる。
【0077】
また特に円盤微粒子状高分子は、光、熱に対して異方性を示すことから、光・熱センサー等において有利に使用できる。また、円盤微粒子状高分子は潤滑剤として有利に使用できる。
【0078】
また、特に円盤状微粒子が表面に比較的柔らかいポリマー層を有するときには、混合した材料と接着し易く、樹脂の充填剤として用いる場合に樹脂の補強効果が増強される。一方、円盤状微粒子がその表面に比較的硬いポリマー層を有するときには潤滑剤として好適に使用できる。
【0079】
この他、本発明の異形微粒子状高分子は、マイクロエレクロニクス分野や生医学分野でも応用の可能性がある。
【0080】
【発明の効果】
本発明によると、基本的外形が球形又は略球形以外の異形高分子微粒子を効率よく製造できる方法、及び、均一な異形微粒子状高分子が提供される。
【0081】
詳述すれば、本発明方法によれば、特定のシードポリマー、表面モノマー、媒体及び補助溶媒を用いてシード分散重合を行うことにより、簡単に異形高分子微粒子が得られる。また、補助溶媒の成分及び使用量を調節することにより、微粒子の形状を種々変化させることができ、特に円盤状の高分子微粒子が簡単に得られる。
【0082】
このような異形微粒子状高分子、特に円盤微粒子状高分子は、懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の従来公知の方法では得られなかったものである。また、本発明の異形微粒子状高分子の各微粒子は少なくとも一部の表面に異種ポリマー層を備える場合もあるが、このような表面コートされた異形微粒子状高分子も未だ存在しなかったものである。
【0083】
得られた異形微粒子状高分子は、各微粒子の形態及び大きさが極めて均一である。不均一な微粒子群を分級することにより均一化する場合には、目的とする大きさの微粒子以外の微粒子が無駄になるが、本発明方法によれば、このような無駄がでない。
【0084】
【実施例】
以下に実施例を揚げて本発明をより一層詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<数平均粒子径、重量平均粒子径の測定方法>
本発明におけるシード高分子微粒子の数平均粒子径(Dn)及び重量平均粒子径(Dw)は、微粒子群の透過型電子顕微鏡写真(微粒子数200個以上)を画像解析法(Mac Scope、三谷商事社製)に供することにより求めた最大径から算出した値である。また、本発明により得られた異形高分子微粒子及び円盤状微粒子のDn及びDwは、微粒子群の走査型電子顕微鏡写真(微粒子数50個以上)から手作業で最大径を測定し、平均した値である。
<円盤状微粒子の厚さの測定方法>
本発明における円盤状微粒子の厚さは、走査型電子顕微鏡写真(粒子数30個以上)から手作業で厚さを測定し、平均した値である。
<変動係数(Cv)の測定方法>
Cvとは、微粒子の粒子径の標準偏差値をその粒子の数平均粒子径で除した値を%表示したものである。
【0085】
Cv(%)=(微粒子粒子径の標準偏差値/数平均粒子径)×100
具体的には計測したいシード微粒子をコロジオン膜又はガラスプレート等の基板上に載せ、必要に応じて微粒子を乾燥又は基板に固定する。次いで、基板上のシード微粒子の透過型電子顕微鏡写真(粒子数200個以上)を画像解析法(Mac Scope、三谷商事社製)に供することにより求めた値である。また、本発明により得られた異形高分子微粒子及び円盤状微粒子については、アルミブロック上で室温乾燥した微粒子の走査型電子顕微鏡写真(粒子数50個以上)から手作業で最大径を測定し、上記の関係式より算出した。
参考例(シードポリマー粒子の製造)
水200重量部及びエタノール685重量部に対して分散安定剤としてポリアクリル酸(分子量2×105)12重量部を溶解した溶液に、モノマーとしてスチレン100重量部及び開始剤として2,2'-アゾビス-イソブチロニトリル1.68重量部を添加し、窒素雰囲気下で、ホモジナイザーを用いて速度60rpmで撹拌しながら70℃で加熱しつつ、24時間かけて分散重合させた。
【0086】
これにより、図4に示すように、数平均粒子径(Dn)1.57μm、重量平均粒子径(Dw)/数平均粒子径(Dn)1.002、変動係数Cv2.61%の真球状又は略真球状のポリスチレン微粒子が得られた。
実施例1
シードポリマーとして、参考例により得られたポリスチレン微粒子0.5gを、媒体としてのメタノール8.0g/水2.0gの混合媒体に分散させた。分散剤としてはポリビニルピロリドンを0.05g使用した。得られた分散液に、表面モノマーとしてラウリルメタクリル酸0.25g、補助溶媒としてドデカン1.0g及び開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリル2.9gを溶解させた。次いで、窒素ガス雰囲気中60℃で24時間、3cm幅で60回/分の速度で撹拌して、シード分散重合させた。
【0087】
得られた重合反応混合物から、生成した高分子微粒子を、遠心分離機を用いて単離し、圧力1×105Pa、温度25℃にて減圧乾燥することにより、本発明の高分子微粒子を得た。得られた微粒子はDn1.80μm、Cv4.5%であった。
実施例2〜7
実施例1において、媒体に含まれるメタノールと水との比率を変更した以外は、実施例1と同様にして高分子微粒子を得た。
【0088】
各実施例で使用した各成分の種類及び使用量を以下の表1にまとめて示す。
【0089】
【表1】
Figure 0003790793
【0090】
実施例1〜6により得られた各異形高分子微粒子の走査型電子顕微鏡写真をそれぞれ図5のa〜fに示す。また、実施例7により得られた異形高分子微粒子の走査型電子顕微鏡写真を図6に示す。図5から、媒体中のメタノールの比率を高くするほど得られる微粒子のくぼみは大きくかつ少なくなり、メタノールが88重量%で略円盤状の微粒子が得られ、メタノールが90重量%で完全に円盤状の微粒子が得られたことが分かる。また、実施例7では、媒体としてメタノールを単独で用いた場合にも円盤状の微粒子が得られた。
【0091】
また、実施例1〜7により得られた各微粒子は、大きさの揃った微粒子であった。
【0092】
また、実施例6において、得られた分散液中に多量のエタノールを加えることによりドデカンを微粒子から放出させる前及び放出させた後の、微粒子を光学顕微鏡で観察した写真を図7に示す。図7のaはドデカン放出前の写真であり、図7のbはドデカン放出後の写真である。この写真から、円盤状のポリスチレン微粒子の両面に当初付着していたドメインからドデカンが除去されることにより円盤状の微粒子が得られたことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のシード乳化重合法によるゴルフボール状微粒子の生成機構を示す模式図である。
【図2】本発明方法において、表面モノマーの重合に伴い表面ポリマーが析出してシードポリマー粒子に付着した状態の1例を示す模式図である。
【図3】本発明方法において、補助溶媒を除去することにより得られる異形高分子微粒子の1例を示す模式図である。
【図4】本発明の実施例において使用したシードポリマー粒子の1例を示す図面代用写真である。
【図5】媒体中のメタノールと水との比率と、得られる異形高分子微粒子の外形との関係を示す図面代用写真、すなわち実施例1〜6で得られた各異形高分子微粒子を示す図面代用写真である。
【図6】媒体としてメタノールを単独で用いた実施例7で得られた円盤状高分子微粒子を示す図面代用写真である。
【図7】実施例6により得られた円盤状高分子微粒子を示す図面代用写真である。aはドデカン放出前であり、bはドデカン放出後である。
【符号の説明】
1 シードポリマー粒子
2 ドメイン
3 モノマー吸収ドメイン
4 くぼみ
10 シードポリマー粒子
11 ドメイン
12 表面ポリマー層
13 くぼみ

Claims (12)

  1. 媒体中にシードポリマー粒子を分散させた分散液に、表面モノマー、補助溶媒、開始剤及び分散剤を添加して、シード分散重合法により表面モノマーを重合又は共重合させるシード分散重合工程と、補助溶媒を除去する工程とを含み、
    表面モノマーは、媒体に溶解し、かつ、重合又は共重合によりシードポリマーと相溶性が低いとともにシードポリマーに比べて媒体との親和性が低いか又は同等である表面ポリマーを与えるものであり、
    補助溶媒は、シードポリマーの貧溶媒又は非溶媒であるが、表面ポリマーの良溶媒であり、かつ、媒体に部分溶解する有機溶媒であり、
    媒体は、表面モノマーを溶解するとともに補助溶媒を部分溶解するものであり、かつ、i)補助溶媒の貧溶媒(PS)、ii)補助溶媒の貧溶媒(PS)80重量%以上と補助溶媒の非溶媒(NS)20重量%以下との混合液、又はiii)補助溶媒の良溶媒(GS)20〜60重量%と補助溶媒の非溶媒(NS) 80〜40重量%との混合液であり、
    補助溶媒をシードポリマーの50〜500重量%添加することを特徴とする異形高分子微粒子の製造方法。
  2. 媒体が、表面モノマーを溶解するとともに補助溶媒を部分溶解するものであり、かつ、i)補助溶媒の貧溶媒(PS)、ii)補助溶媒の貧溶媒(PS)90重量%以上と補助溶媒の非溶媒(NS)10重量%以下との混合液、又はiii)補助溶媒の良溶媒(GS)30〜50重量%と補助溶媒の非溶媒(NS) 70〜50重量%との混合液である請求項1に記載の方法。
  3. 補助溶媒をシードポリマーの100〜300重量%添加する請求項1又は2に記載の方法。
  4. シード分散重合工程において、シードポリマー粒子を単分散状態とする請求項1、2又は3に記載の方法。
  5. シードポリマーが、アクリル酸のC1−C8アルキルエステル、メタクリル酸のC1−C8アルキルエステル及び芳香族ビニルから選ばれる少なくとも1種のラジカル重合性モノマーから得られるポリマー又はコポリマーであり、
    媒体を構成する補助溶媒の良溶媒成分(GS)がアセトン、エタノール、1−プロパノール及び2−プロパノールから選ばれる少なくとも1種の水溶性有機溶媒であり、媒体を構成する補助溶媒の貧溶媒成分(PS)がメタノールであり、媒体を構成する補助溶媒の非溶媒成分(NS)が水であり、
    表面モノマーが、アクリル酸のC1−C8アルキルエステル、メタクリル酸のC1−C8アルキルエステル、芳香族ビニル、シアン化ビニル、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和カルボン酸エステル、ハロゲン化ビニル、共役ジエン、カルボン酸ビニルエステル及びエチレン性不飽和カルボン酸アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーである請求項14のいずれかに記載の方法。
  6. くぼみを有する異形高分子微粒子であって、1微粒子当たり1〜20個のくぼみを有し、くぼみを除いた部分の表面積がくぼみがないとした場合の微粒子の表面積の50%以下であり、シードポリマー粒子の少なくとも一部の表面に、ラジカル重合性モノマーの重合又は共重合により得られるポリマーを含む表面ポリマー層を備える異形高分子微粒子
  7. くぼみの形状が、平面又は粒子の中心に向かって椀状にへこんだ曲面である請求項6に記載の異形高分子微粒子
  8. 各微粒子が円盤状である請求項6又は7に記載の異形高分子微粒子
  9. 数平均粒子径(Dn)が0.05〜100μmである請求項6〜8のいずれかに記載の異形高分子微粒子
  10. 粒子径分布の広がりを示す変動係数(Cv)が2〜10%である請求項6〜9のいずれかに記載の異形高分子微粒子
  11. 粒子径分布((重量平均粒子径(Dw)/数平均粒子径(Dn))が1〜1.1である請求項6〜10のいずれかに記載の異形高分子微粒子
  12. 表面ポリマー層の量がシードポリマー粒子100重量部に対して10〜200重量部である請求項6〜11のいずれかに記載の異形高分子微粒子
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