JP3789182B2 - スナップフィット係合構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スナップフィットを用いたリサイクル対応係合構造に関し、詳細には2つの部材を組み付ける手段としてスナップフィットによる係合機構を用いた場合に従来不便であるとされていたリサイクルのための分解作業を効率化するようにしたスナップフィット係合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題に対する意識が年々高まっている結果として、各種製造業界においても各種の製品が廃棄される場合に発生するゴミによる環境の悪化を防止する必要性が認識され、製品を予めリサイクル対応可能な構成に設計しておくことが急務とされている。リサイクルの方法としては、部品、ユニットをそのまま使用する再使用、元の材料に戻して使用するマテリアルリサイクル、或は油脂、ガス等の原料に戻して使用するケミカルリサイクル、そして再生ではないが、燃料として使用することのできるサーマルリサイクルがある。この中でも最も環境保護に適しているのは、ゴミの発生量、加工の手間が共に最も少ない方法である部品・ユニットの再使用であるが、それらの材料がプラスチック等の樹脂から成る場合には使用環境・条件等により材料の劣化・摩耗が既に進行していると、なかなか再使用できないのが現状である。そこで、少なくともマテリアルリサイクル等、他のリサイクル方法のもとに再利用する必要が生じ、そのための課題を如何に解決するかが、今後のリサイクル対応を促進させる上での鍵となってくる。
【0003】
ところで、従来から2つのユニット、部品等をスナップフィット構造(一方に設けた穴等に他方に設けたフックを係合させる構造)により係合させて組み付ける方法が多用されているが、スナップフィット構造を採用した製品をリサイクルする場合にはスナップフィット部を破壊してマテリアルリサイクル等に供するのが一般である。
プラスチック材料から成るユニット、部品(係合部材)をスナップフィット構造により他の部材(被係合部材)に結合する場合には、係合部材が金属インサートを使用しない単一材料で構成されているためリサイクルに適してはいるが、被係合部材が必ずしもプラスチック材料とは限らない。従って、このような場合には、スナップフィット構造を使用した異種材料間の分離・分解作業を簡単に、しかも短時間でできるようにし、解体業者の作業時間や負担を軽減させることがリサイクルを推進する一つの課題となってくる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記分離・分解方法としては、種々の方法が提案されているが、いずれも不具合を有する。
即ち、公知文献であるDesign for Recycling(日本ジーイープラスチックス株式会社)には、予めデザインの段階で解体時を考慮した破断点を設定し、製品使用時に問題とならない程度のノッチを入れておくようにした予定破断点の設置方法が開示されている。しかし、予定破断点を設定する方法の場合、被係合部材が軽量で大きい負荷がかからない場合には上記破断点が有効に機能するが、係合部材及び被係合部材に対して共に大きな負荷がかかる場合にノッチを入れると使用中の破断の虞れを高めるので、その適用範囲が使用する部材が軽量・軽負荷である場合に限られるという制約がある。
次に、図6に示したように係合部の分解箇所を明示し、分解時間を短縮するようにした方法があるが、この方法にあっては係合部を捜す時間が短縮されるものの、係合部を分解する手間については改善されていない。図6においてドライバーを矢印方向に回すことを指示する図が入っているが、ドライバーを回すことにより分解できる樹脂はポリプロピレンやポリアミド等の柔らかい樹脂に限られており、ポリカーボネートやガラス繊維入り等の固い樹脂から成る部材をドライバーを回転させることにより分解することは困難であり、完全な解決策には至っていない。
また、図7は従来のスナップフィット構造の断面図であり、係合部材1から延びるフック状の爪2を被係合部材3の穴4内に嵌着することにより両部材の固定が行われているが、両部材1、3は密着状態にありドライバー6等の分解工具を差し入れるスペースがないため、分解時には図示の各位置から工具を無理に差し入れて分解を行うしかなく作業性が極めて悪かった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、スナップフィット構造により組み付けた2つの部材をリサイクルのために分離・分解する際の作業性の問題を解消し、短時間で容易に分離・分解できるリサイクル対応のスナップフィット係合構造を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する為、請求項1の発明は、爪を備えた係合部材と、該爪を係合可能な穴を有した被係合部材と、をスナップフィット係合により係合させたスナップフィット係合構造において、該係合部材又は該被係合部材のいずれか一方に、突状に屈曲させた屈曲部を備え、該係合部材と該被係合部材とを係合させたときに、該屈曲部内に差込み口が形成されるように構成され、前記差込み口の手前に突起を備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1において、前記係合部材は、板部を備えていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2において、前記屈曲部は、前記板部に設けられていることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項2又は3において、前記板部は、底板であることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示した形態例により詳細に説明する。図1は本発明のスナップフィットによる係合構造を利用した部材の分解斜視図、図2は図1の部分拡大断面図であり、スナップフィットを用いてプラスチック係合部材1と被係合部材3を係合させる場合を示している。プラスチック係合部材1は、その底面から複数個の係合用の爪2(2’、2”)を突設させた大物構造体であり、該係合用の爪2(2’、2”)が、金属のプレス部品で造られた被係合部材3の係合穴4(4’、4”)に挿入されることにより両者が係合される。尚、係合部材1は少なくともその爪2がプラスチック、その他の樹脂であればよく、また被係合部材3の構成材料は金属に限らず、プラスチックであっても一向に構わない。
図2において、プラスチック係合部材1の爪2の手前側には剥離具の先端が入る程度の差込み口5、5’、5”が設けられている。即ち、底面に爪2を有した底板(板部)10の端縁であって各爪2、2’、2”に対応する位置には夫々底板の一部を上方に突状に屈曲させた屈曲部(突部)11、11’、11”が形成され、各屈曲部11、11’、11”の下方には差込み口5、5’、5”が形成されている。この差込み口5、5’、5”を設けることにより、両部材1、3を組み付けた時に図3(a)の如く被係合部材3の上面との間に差込み口5、5’、5”が形成され、この差込み口をドライバー等の分解工具6を差し入れて分解を行うためのスペースとして利用することが可能となる。
【0007】
次に、プラスチック係合部材1と被係合部材3が係合されている状態から、分解工具(剥離具)を用いて分離・分解する状態を断面図を用いて説明する。
図3(a) はプラスチック係合部材1が被係合部材3に係合されている状態であり、この状態から分離・分解を行う過程を(b) に示す。分解工具6をプラスチック係合部材1の差込み口5に差込み、→方向に分解工具6を持ち上げていくと、爪2の根元部2aにストレスがかかり、図3(b) のような形で爪2が破損し、プラスチック係合部材1と被係合部材3とが分離される。図示していないが、同様の方法で他の係合爪(2′、2″)も分離して行けば、完全にプラスチック係合部材1と被係合部材3とを分離・分解することができる。尚、分解工具6としては、通常汎用性のあるマイナスドライバーを使用するのが一般的である。
【0008】
次に、比較の為に従来のスナップフィットを使用した状態の断面図を図7に示すが、従来は分解工具6を入れる差込み口がないため、プラスチック係合部材1と被係合部材3との間のわずかな隙間7を分解工具6で無理にこじ開けて分解したり、又、爪2の傾斜部2bを分解工具6′で矢印方向に押して穴4から離脱させることにより分解するような方法をとっており、かなりの時間及び労力を要していた。又、傾斜部2bを押して爪2を被係合部材3から外した場合でも、複数個の爪がついているときに、他の爪を外そうとしたとき被係合部材3から外れていた爪2が、又、弾性によって再びセットされてしまうことも多々あり煩わしい作業でもあった。
これに対して、本発明によれば、従来のように受け部に予備破断点を設定する必要もなく、又、差込み口5があることから、スナップフィットを使用した大重量の大物構造体部品でも簡単に分離・分解することが可能となる。
【0009】
尚、図4は他の形態例であり、この形態例は、プラスチック係合部材1の表面12に差込み口形成用の屈曲部11を設けられない場合の例であり、この場合には被係合部材3側の、爪2に対応する位置に段差(屈曲部)13を形成することにより差込み口5′を設けるのが好ましい。
更に、図5に示した他の形態例のように差込み口5の手前側の被係合部材3の上面に、分解工具6を差込んだときの回転支点となる突起14を設けることにより、分解工具6を上方向ばかりでなく、下方向にも力をかけることが可能となり、よりプラスチック係合部材1と被係合部材3との分離・分解のし易さが広がる。
【0010】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、プラスチック等から成る爪を備えた係合部材と、被係合部材とを、該爪を被係合部材側の穴に嵌着させることにより組み付けるスナップフィット構造に於て、該爪に対応する係合部材の位置にリサイクル対応用の差込み口を形成したので、両部材が組み付けられた状態に於て、汎用性のある分解工具を用いて、容易にプラスチック係合部材と被係合部材とを分離・分解することができる。又、予備破断点(ノッチ)を設けていないことから、大物構造体部品のスナップフィット係合にも使用可能となり、広範囲の分野において利用することができる。また、上記差込み口の手前側に分解工具を差込んだときの回転支点となる突起を設けてあることから、一方向(上方向)のみへの動作による分解作業ではなく、二方向(上下方向)どちらへの動作によっても解体することが可能となり、更に分離・分解のし易さが広がる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一形態例のスナップフィット構造を利用した部材の分解斜視図。
【図2】図1の要部拡大断面図。
【図3】 (a) 及び(b) は本発明の一形態例のスナップフィット構造を採用した部材を分解する手順を示す図。
【図4】本発明の他のスナップフィット構造を示す断面図。
【図5】本発明の他のスナップフィット構造を示す断面図。
【図6】従来例の説明図。
【図7】従来のスナップフィット構造の欠点を示す断面図。
【符号の説明】
1 プラスチック係合部材、2、2′、2″ 爪、3 係合部材、4、4′、4″ 係合穴、5、5’、5” 差込み口、6 分解工具、10 底板、11、11’、11” 屈曲部(突部)、12 表面、13 段差。
Claims (4)
- 爪を備えた係合部材と、該爪を係合可能な穴を有した被係合部材と、をスナップフィット係合により係合させたスナップフィット係合構造において、
該係合部材又は該被係合部材のいずれか一方に、突状に屈曲させた屈曲部を備え、
該係合部材と該被係合部材とを係合させたときに、該屈曲部内に差込み口が形成されるように構成され、
前記差込み口の手前に突起を備えたことを特徴とするスナップフィット係合構造。 - 前記係合部材は、板部を備えていることを特徴とする請求項1記載のスナップフィット係合構造。
- 前記屈曲部は、前記板部に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のスナップフィット係合構造。
- 前記板部は、底板であることを特徴とする請求項2又は3に記載のスナップフィット係合構造。
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