JP3788717B2 - 電池パック、電池電圧モニタ回路、電池システム、機器装置、電池電圧モニタ方法、および電池電圧モニタプログラム記憶媒体 - Google Patents
電池パック、電池電圧モニタ回路、電池システム、機器装置、電池電圧モニタ方法、および電池電圧モニタプログラム記憶媒体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池の電圧をモニタするためのモニタ信号を出力するモニタ信号出力機能を備えた電池パック、モニタ信号を受け取って電池の電圧をモニタする電池電圧モニタ回路、電池を備えるとともにその電池電圧のモニタ機能を備えた電池システムおよび機器装置、電池電圧をモニタする電池電圧モニタ方法、および、電池電圧モニタ用プログラムが記憶された電池電圧モニタプログラム記憶媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ノート型パーソナルコンピュータ(以下、「ノートパソコン」と称する)等の携帯型電子機器装置においては、機器装置用の電源として電池が搭載されていることが多い。
【0003】
机上で動作させる機器装置の場合、あるいはノートパソコン等の携帯型の機器装置においても机上で動作させる場合は、ACアダプタ等を介して商用電源より電力の供給を受けて動作するため電力の供給が途切れることについてはあまり考慮する必要はないが、電池からの電力の供給を受けて動作する場合、ユーザは常に電池の残量を意識する必要がある。特にノートパソコン等の情報処理機器においては、電池残量がなくなる(電池が空になる)と処理中のデータがすべて消滅してしまう恐れがあるため、電池の消耗状態を認識して、未だ動作可能なうちに処理中のデータをハードディスク等の不揮発性記憶媒体に退避させる必要がある。
【0004】
このような、電池残量が無くなることに伴うトラブルの防止を目的として、ノートパソコン等には、従来より、電池の残量をモニタするシステムが組み込まれている。
【0005】
図11は、電池残量モニタ機能を有する電池システムを示す図である。
【0006】
この電池システム10は、電池パック20と電池電圧モニタ部30とからなる。ここではこの電池システム10はノートパソコン40に内蔵されている。ここで、電池パック20と電池電圧モニタ部30は、電池パック20の選択信号入力端子20aと電池電圧モニタ部30の選択信号出力端子30aが接続され、電池パック20の電池電圧出力端子20bと電池電圧モニタ部30の電池電圧入力端子30bが接続され、さらに電池パック20と電池電圧モニタ部30の電源端子20c,30cどうし、グランド端子20d,30dどうしが接続されている。
【0007】
図11に示す電池電圧モニタ部30には、DC−DC変換回路31と、そのDC−DC変換回路31から5.0Vの電力の供給を受けて動作するマイクロコンピュータ(以下、マイコンと略記する)32が備えられている。
【0008】
このマイコン32からは、電池電圧モニタ部30の選択信号出力端子30aおよび電池パック20の選択信号入力端子20aを経由して、電池パック20内の電池保護回路21に、電池パック20内において順次に直列に接続された3つの電池S1,S2,S3のいずれかを選択する選択信号が送られる。電池保護回路21では、その選択信号に応じて、その選択信号により選択された電池の電圧を表わすモニタ信号を、電池パック20の電池電圧出力端子20bおよび電池電圧モニタ部30の電池電圧入力端子30bを経由して、マイコン32に伝達する。マイコン32は、その送られてきた電池電圧をディジタル信号に変換して取り込んでその電池電圧を認識し、その電池電圧からその電池の残量が認識される。
【0009】
ここで、図11に示す電池パック20には、2つのFET(FET1とFET2)が配備されている。ここでは、電池S1,S2,S3は、例えばリチウム・イオン電池等、充電可能な電池であり、2つのFETのうちの一方のFET1は電池S1,S2,S3の電圧が下限まで下がったときにオフ状態となることにより、電池S1,S2,S3の過放電を防止するためのFET、もう一方のFET2は、電池S1,S2,S3が完全充電されさらに充電されようとしたときにオフ状態となることにより、電池S1,S2,S3の過充電を防止するためのFETである。
【0010】
図12は、図11に示す電池パック20内の電池保護回路の内部構成を示す図である。ただし、図11を参照して説明した過放電、過充電の防止はここでの主眼ではなく、この図12、および以下に説明する各図において過放電、過充電防止のための回路構成は図示および説明を省略する。
【0011】
この図12に示す電池保護回路21には選択信号を入力する選択信号入力端子21a、電池の電圧を表わすモニタ信号を出力する電圧信号出力端子21b、直列に接続された複数(ここでは3個)の電池S1,S2,S3の一端(電池S1のプラス電極)に接続されるノード接続端子21c、2つの電池S1,S2の接続点に接続されるノード接続端子21d、2つの電池S2,S3の接続点に接続されるノード接続端子21e、直列接続された電池S1,S2,S3のもう一方の端(電池S3のマイナス電極)に接続されるノード端子21fを有する。尚、ここでは、直列接続された複数(ここでは3個)の電池の両端および電池どうしの接続点それぞれを‘ノード’と称する。
【0012】
また、この電池保護回路21の内部には、3つの差動増幅器AMP1,AMP2,AMP3と1つのマルチプレクサMPXが配備されている。3つの差動増幅器AMP1,AMP2,AMP3は、それぞれ、2つのノード21c,21d、2つのノード21d,21e、および2つのノード21e,21fを入力とするものであり、それら3つの差動増幅器AMP1,AMP2,AMP3の出力は、いずれもマルチプレクサMPXに入力される。マルチプレクサMPXは、選択信号入力端子21aから入力された選択信号に応じて3つの入力のうちの1つを選択して、モニタ信号出力端子21bから出力するものである。
【0013】
図11に示すマイコン32は、3つの電池S1,S2,S3を選択する選択信号を順次に出力しそれに応じて送られてくる3つの電池S1,S2,S3それぞれの電圧を表わすモニタ信号をAD変換して取り込むことにより、それら3つの電池S1,S2,S3それぞれの電圧を知ることができる。
【0014】
図13は、リチウム、イオン電池の放電時間(横軸)と電池電圧(縦軸)との関係を示す図、図14は、電池電圧(縦軸)と電池残量(横軸)との関係を示す図である。
【0015】
図13に示すように電池を使うとその電池の電圧が徐々に低下する。この電池電圧をモニタすると、図14に示すように、その電池電圧から電池残量を知ることができる。
【0016】
図11に示すマイコン32では、3つの電池S1,S2,S3の各電圧を取り込み、その電池電圧から電池残量を知り、そのノートパソコン40のユーザに残量を知らせたり、電池残量が使用限界に近づいたときにはユーザに警報を発したりデータを自動的に退避したりなど、電池が使用不能になることを想定した対策を採ることができる。
【0017】
ここで図12に示す差動増幅器AMP1,AMP2,AMP3のオフセット電圧およびそのオフセット電圧に起因して生じる測定誤差について説明する。
【0018】
図15は、図12に示す3つの差動増幅器AMP1,AMP2,AMP3の1つ(ここでは差動増幅器AMP1とする)を示した回路図である。
【0019】
ここには、核となる差動増幅器AMP11と、その差動増幅器AMP11の回りに接続された抵抗が示されている。ここで、各抵抗の近くに記されたR1,R2は、その抵抗を意味するとともにその抵抗の抵抗値をも意味している。また、この図15には、差動増幅器AMP11のオフセット電圧αを明示的に示してある。
【0020】
この差動増幅器AMP1の非反転入力に加えられる電圧をV+とし、反転入力に加えられる電圧をV-としたとき、この差動増幅器AMP1の出力電圧V0は、
V0=(R2/R1)(V+−V-)+((R1+R2)/R1)×α ……(1)
で与えられる。
【0021】
図16は、図15に示す差動増幅器において、反転入力を接地した場合を示す図であり、この場合、この差動増幅器の出力電圧V0は、
V0=(R2/R1)×V++((R1+R2)/R1)×α ……(2)
となる。
【0022】
図17は、図15に示す構成の前段に、バッファ用の差動増幅器AMP12,AMP13を配置した構成を示す図である。
【0023】
差動増幅器AMP12,AMP13は、差動増幅器AMP11の、それぞれ非反転入力用および反転入力用のバッファ回路であり、差動増幅器AMP11の増幅率を決めるための抵抗R1,R2により、電池S1〜S3から電流が漏洩するのを防止するためのものである。ここで、バッファ回路を構成する差動増幅器AMP12,AMP13によるオフセット電圧αは、差動増幅器AMP11のコモンモード入力であって差動増幅器AMP11によりキャンセルされるため、図17に示す構成においても、差動増幅器AMP11のオフセット電圧のみを考慮すればよく、この図17に示す全体としての差動増幅器AMP1の出力電圧V0は、図15の場合と同様、
V0=(R2/R1)(V+−V-)+((R1+R2)/R1)×α ……(1)
で与えられる。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
上記(1),(2)式に示すように、差動増幅器AMP1の増幅度は抵抗R1,R2の抵抗値で決まり、増幅精度もそれらの抵抗値の精度に依存する。ただし上記(1),(2)式から判るように、各抵抗R1,R2の抵抗値の絶対的な値ではなく、2つの抵抗R1,R2の抵抗値の比R2/R1で増幅精度が決まる。したがって、増幅度を決める抵抗R1,R2をLSI内部に作り込むことで高精度の増幅度を実現することができる。すなわち、LSI内部に抵抗を作り込む場合、抵抗の絶対値は不純物の拡散ばらつきなどで±20〜30%の誤差があるが、2つの抵抗の抵抗値の比は高い精度で制御することができ、比のばらつきは0.05%以下に抑えることができる。
【0025】
これに対し、差動増幅器のオフセット電圧αは、LSIの製造プロセスにおけるばらつきがそのまま反映されるため、同一のLSIチップ内に複数の差動増幅器を作り込んだときのそれら同一チップ内に作り込まれた複数の差動増幅器どうしではオフセット電圧αはほとんど同一の値であるが、チップ間での差は大きい。
【0026】
ここで、例えばノートパソコン等では、電池残量を1%あるいはそれ以上の精度で検出する必要があるが、差動増幅器のオフセット電圧αは電池残量に換算すると2〜3%あるいはそれ以上にばらつく結果となる。
【0027】
差動増幅器で高精度な出力を得るために、微調整回路を付加しておいて、オフセット電圧αがゼロとなるように調整することが考えられるが、その調整に要する作業量、およびその調整のための回路をチップ上に用意しておくことによるコストの上昇が問題となる。さらには、オフセット電圧αには温度変化や経年変化も存在し、上記のようにして微調整したとしても温度変化や経年変化によるオフセット電圧αの変化には対処することができないという問題がある。
【0028】
このような問題に対処するため、特開平6−260851号公報には、オフセット測定時に差動増幅器の非反転入力と反転入力との双方を接地し、そのときの差動増幅器の出力電圧を測定することにより、温度や経年変化をも含めた、その時点におけるオフセット電圧を検出することが提案されている。
【0029】
しかしながら、オフセット電圧αはプラスの場合もマイナスの場合も存在するにもかかわらず、この方式の場合、オフセット電圧αがプラスの場合のみしか測定することができないという問題がある。このため、この公報では、温度変化や経年変化があってもオフセット電圧が常にプラスとなるようにあらかじめ調整しておくことが提案されている。
【0030】
しかし、この公報に提案された方法の場合、やはりオフセット電圧調整のための回路を作り込んでおいて、オフセット電圧を調整するという作業が必要となり、コストの上昇を免れることはできない。
【0031】
本発明は、上記事情に鑑み、事前の調整を不要とし、かつ電池電圧を高精度に測定するための、電池パック、電池電圧モニタ回路、電池システム、機器装置、電池電圧モニタ方法、および電池電圧モニタプログラム記憶媒体を提供することを目的とする。
【0034】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の電池パックは、直列接続された複数の電池と、それら複数の電池の各々の電圧及び所定の2つ以上の電池を合わせた電圧を表わす各信号を含む複数の信号のうちの選択信号に応じて選択された信号を出力する差動増幅器を有するモニタ信号出力回路とが内蔵されてなることを特徴とする。
【0035】
ここで、上記電池パックは、上記複数の電池および上記モニタ信号出力回路に加え、さらに
モニタ信号出力回路から得た複数の信号に基づいて差動増幅器のオフセット電圧を算出するオフセット算出部と、
オフセット算出部で算出されたオフセット電圧を用いて、複数の電池各々の電圧の測定誤差を補正するオフセット補正部とを有する電池電圧モニタ回路が内蔵されてなることが好ましい。
【0036】
また、その場合に、上記オフセット算出部は、上記複数の電池のうちの1つ以上の一部の電池による第1の電圧と、上記複数の電池のうちの1つ以上の他の一部の電池による第2の電圧と、上記複数の電池のうちの、上記一部の電池と上記他の一部の電池とを合わせた複数の電池による第3の電圧とを表わす3つの信号に基づいて、上記差動増幅器のオフセット電圧を算出するものであってもよい。
【0037】
また、上記目的を達成する本発明の電池電圧モニタ回路は、直列接続された複数の電池の各々の電圧及び所定の2つ以上の電池を合わせた電圧を表わす各信号を含む複数の信号のうちの選択信号に応じて選択された信号を出力する差動増幅器を有するモニタ信号出力回路から得た複数の信号に基づいて上記差動増幅器のオフセット電圧を算出するオフセット算出部と、
オフセット算出部で算出されたオフセット電圧を用いて、複数の電池各々の電圧の測定誤差を補正するオフセット補正部とを備えたことを特徴とする。
【0038】
この場合に、上記オフセット算出部は、上記複数の電池のうちの1つ以上の一部の電池による第1の電圧と、上記複数の電池のうちの1つ以上の他の一部の電池による第2の電圧と、上記複数の電池のうちの、上記一部の電池と上記他の一部の電池とを合わせた複数の電池による第3の電圧とを表わす3つの信号に基づいて、上記差動増幅器のオフセット電圧を算出するものであってもよい。
【0039】
さらに、上記目的を達成する本発明の電池システムは、
直列接続された複数の電池、
それら複数の電池の各々の電圧及び所定の2つ以上の電池を合わせた電圧を表わす各信号を含む複数の信号のうちの選択信号に応じて選択された信号を出力する差動増幅器を有するモニタ信号出力回路、および
モニタ信号出力回路から得た複数の信号に基づいて差動増幅器のオフセット電圧を算出するオフセット算出部と、そのオフセット算出部で算出されたオフセット電圧を用いて、複数の電池各々の電圧の測定誤差を補正するオフセット補正部とを有する電池電圧モニタ回路を備えたことを特徴とする。
【0040】
さらに、上記目的を達成する本発明の機器装置は、電力の供給を受けて動作する機器装置において、
直列接続された複数の電池、
それら複数の電池の各々の電圧及び所定の2つ以上の電池を合わせた電圧を表わす各信号を含む複数の信号のうちの選択信号に応じて選択された信号を出力する差動増幅器を有するモニタ信号出力回路、および
モニタ信号出力回路から得た、少なくとも一方のノードが異なるノード間の電圧を表わす複数の信号に基づいて差動増幅器のオフセット電圧を算出するオフセット算出部と、そのオフセット算出部で算出されたオフセット電圧を用いて、複数の電池各々の電圧の測定誤差を補正するオフセット補正部とを有する電池電圧モニタ回路を備えたことを特徴とする。
【0041】
また、上記目的を達成する本発明の電池電圧モニタ方法は、直列接続された複数の電池の各々の電圧及び所定の2つ以上の電池を合わせた電圧を表わす各信号を含む複数の信号のうちの選択信号に応じて選択された信号を出力する差動増幅器を有するモニタ信号出力回路から得た複数の信号に基づいて前記差動増幅器のオフセット電圧を算出し、
算出したオフセット電圧を用いて、上記複数の電池各々の電圧の測定誤差を補正することを特徴とする。
【0042】
さらに、上記目的を達成する本発明の電池電圧モニタプログラム記憶媒体は、コンピュータ内で実行されることにより、該コンピュータを、電池の電圧をモニタする装置として動作させる電池電圧モニタプログラムが記憶された電池電圧モニタプログラム記憶媒体において、
直列接続された複数の電池の各々の電圧及び所定の2つ以上の電池を合わせた電圧を表わす各信号を含む複数の信号のうちの選択信号に応じて選択された信号を出力する差動増幅器を備えたモニタ信号出力回路から得た複数の信号に基づいて前記差動増幅器のオフセット電圧を算出するオフセット算出部と、
上記オフセット算出部で算出されたオフセット電圧を用いて、上記複数の電池それぞれの各電圧の測定誤差を補正するオフセット補正部とを有する電池電圧モニタプログラムが記憶されてなることを特徴とする。
【0043】
以上の本発明によれば、直列に接続された電池のうちのいずれの1つの電池の電圧を測定した場合であってもあるいは直列に接続された2つ以上の電池の電圧を測定した場合であっても差動増幅器のオフセット電圧は一定であることを利用してオフセット電圧を測定し、測定された電池電圧からその測定誤差を補正するようにしたため、事前の調整なしに、かつ温度や経年変化等の一切を含んだ、測定時のオフセット電圧を測定して補正することができ、電池電圧の高精度の測定が可能となる。
【0057】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0058】
図1は、本発明の1実施形態の概略構成図である。
【0059】
この図1において、電池パック20は、本発明の電池パックの一例に相当し、その電池パック20に内蔵された電池保護回路21は、本発明のモニタ信号出力回路の一例に相当し、電池パック20と電池電圧モニタ部30との組合せが本発明にいう電池システムの一例に相当し、電池電圧モニタ部30が本発明の電池電圧モニタ回路の一例に相当し、ノートパソコン40が本発明の機器装置の一例に相当し、電池電圧モニタ部30に備えられたマイコン32において実行される電池電圧モニタプログラムを方法として捉えたものが本発明の電池電圧モニタ方法の一例に相当し、マイコン32に内蔵されたプログラムROM(図4参照)が、本発明の電池電圧モニタプログラム記憶媒体に相当する。
【0060】
この図1自体は、前述した図11と同様な図であり、図11の要素に対応する要素には、図11に付した符号と同一の符号を付して示し、この図1に関する詳細説明は省略する。この図1における、本発明の実施形態としての特徴は、電池保護回路21の構成およびマイコン32で実行される電池電圧モニタプログラムにある。以下、本実施形態の詳細について説明する。
【0061】
図2は、図1に示す第1実施形態における電池保護回路の構成を示すブロック図である。ただし、図11,図12の場合と同様、図1に示す過放電、過充電防止用のFET(FET1およびFET2)のオン、オフを制御する制御回路の図示および説明は省略する。
【0062】
図2に示す電池保護回路21は、図1に示す電池パック20の選択信号入力端子20aに接続された選択信号入力端子21a、電池パック20の電池電圧出力端子20bに接続された電池電圧出力端子21b、直列接続された複数(ここでは3個)の電池S1,S2,S3の両端および電池どうしの接続点からなる複数のノードそれぞれに接続された4つのノード接続端子21c,21d,21e,21fを有し、その内部には、2つのマルチプレクサMPX1,MPX2と、1つの差動増幅器AMP1と、選択制御回路SELとを備えている。
【0063】
2つのマルチプレクサMPX1,MPX2のうちの第1のマルチプレクサMPX1には3つのノード接続端子21c,21d,21eの電圧が入力され、その第1のマルチプレクサMPX1では、選択制御回路SELからの切替信号に応じてそれら3つの電圧のうちの1つが選択されて出力され、その出力電圧は差動増幅器AMP1に入力される。
【0064】
また、2つのマルチプレクサMPX1,MPX2のうちの第2のマルチプレクサMPX2には3つのノード接続端子21d,21e,21fの電圧が入力され、その第2のマルチプレクサMPX2では、選択制御回路SELからの切替信号に応じてそれら3つの電圧のうちの1つが選択されて出力され、この第2のマルチプレクサMPX2の出力も、差動増幅器AMP1に入力される。
【0065】
差動増幅器AMP1は、2つのマルチプレクサMPX1,MPX2のそれぞれから出力された電圧どうしの差分電圧を演算し、その差分電圧を出力する。この差分電圧は、電池電圧出力端子21bを経由し、電池パック20の電池電圧出力端子20bを経由し、さらに電池電圧モニタ部30の電池電圧入力端子30bを経由してマイコン32に伝えられ、その差分電圧を表わすディジタルデータが生成されてそのマイコン32に取り込まれる。
【0066】
また、選択制御回路SELは、電池電圧モニタ部30(図1参照)のマイコン32から出力され、選択信号出力端子30a、選択信号入力端子20a、および電池保護回路21の選択信号入力端子21aを経由して入力された選択信号に応じて、2つのマルチプレクサMPX1,MPX2を切り替える。
【0067】
ここでは、後述するように、マルチプレクサMPX1がノード接続端子21cの電圧を出力するときにマルチプレクサMPX2がノード接続端子21dの電圧を出力する切替モード(このときには、差動増幅器AMP1からは電池S1の電圧が出力される(ただし差動増幅器AMP1のオフセット値αによる誤差は含まれている。以下同様。))と、マルチプレクサMPX1がノード接続端子21dの電圧を出力するときにマルチプレクサMPX2がノード接続端子21eの電圧を出力する切替モード(このとき、差動増幅器AMP1からは,電池S2の電圧が出力される)と、マルチプレクサMPX1がノード接続端子21eの電圧を出力するときにマルチプレクサMPX2がノード接続端子21fの電圧(接地電圧=0.0V)を出力する切替モード(このとき、差動増幅器AMP1からは,電池S3の電圧が出力される)とのほか、さらに、マルチプレクサMPX1がノード接続端子21cの電圧を出力するときにマルチプレクサMPX2がノード接続端子21eの電圧を出力する切替モード(このとき、差動増幅器AMP1からは直列接続された2つの電池S1,S2の両端の電圧が出力される)を有する。
【0068】
図3は、図2に示す差動増幅器AMP1と2つのマルチプレクサMPX1,MPX2のオン抵抗Rnを示した図である。
【0069】
この図3に示す構成の場合、差動増幅器AMP1からの出力電圧V0は、
となる。
【0070】
ここで、マルチプレクサMPX1,MPX2のオン抵抗Rnは、100Ω〜200Ω程度であるのに対し、差動増幅器AMP1の抵抗R1,R2はいずれも例えば200kΩ程度であるため、オン抵抗Rnによる影響は0.1%以下となり殆んど無視することができる。
【0071】
図4は、図1に示すマイコン32の概要を示す構成図である。
【0072】
このマイコン32は、プログラムを記憶しておくプログラムROM321と、例えば図14に示すような、電池電圧と電池残量との対応関係を示すデータや、その他各種のデータを記憶しておくデータROM322と、プログラムROM321に記憶されたプログラムを読み出して実行するCPU323と、CPU323がプログラムを実行する際の作業領域となるRAM324と、入力アナログ電圧をディジタルデータに変換して内部に取り込むA/D変換器325とディジタルの信号を入出力する入出力インタフェース326とを備えている。この入出力インタフェース326からは、図2に示す2つのマルチプレクサMPX1,MPX2を切り替える基になる選択信号が出力され、A/D変換器325には、図2に示す差動増幅器AMP1の出力が入力されてディジタルデータに変換される。
【0073】
図5は、図4に示すマイコン32を構成するプログラムROM321中に格納されたプログラムの概念図である。
【0074】
このプログラムROM321には、電池電圧モニタプログラム3211が記憶されている。この電池電圧モニタプログラム3211は、オフセット算出部3211a、オフセット補正部3211b、および電池残量算出部3211cから構成されている。各部の処理内容については、以下において、図6を参照して説明する。
【0075】
図6は、マイコン32のプログラムROM321に記憶された電池電圧モニタプログラムの処理内容を示すフローチャートである。
【0076】
図1および図4に示すマイコン32において、この図6に示す電池電圧モニタプログラムの実行が開始されると、先ず、ステップ(a1)において、マイコン32から電池セルS1を選択する選択信号が出力され、図2に示す電池保護回路21の選択制御回路SELから、2つのマルチプレクサMPX1,MPX2のそれぞれに、差動増幅器AMP1から電池セルS1の電圧を出力するための各切替信号が出力され、各マルチプレクサMPX1,MPX2はその切替信号に応じて入力を切り替えて差動増幅器AMP1に出力する。具体的には、電池セルS1を選択する選択信号に応じて、第1のマルチプレクサMPX1はノード接続端子21cの電圧を差動増幅器AMP1に伝えるように切り替えられ、第2のマルチプレクサMPX2は、ノード接続端子21dの電圧を差動増幅器AMP2に伝えるように切り替えられる。
【0077】
2つのマルチプレクサMPX1,MPX2が上記のように切り替えられると、差動増幅器AMP1から電池セルS1の電圧が出力され、その電池セルS1の電圧はマイコン32に伝達され、図6のステップ(a2)においてそのその電池セルS1の電圧がディジタルデータに変換されてそのマイコンで読み取られる。ここでは、その読み取られた電池セルS1の電圧(読取値)をSE1とする。
【0078】
ステップ(a3),(a4)では、上記と同様にして、マイコン32から、電池セルS2を選択する選択信号が出力され、送られてきた電池セルS2の電圧が読み取られる。この電池セルS2の読取値をSE2とする。
【0079】
さらに、ステップ(a4),(a5)では、やはり上記と同様にして、マイコン32から、電池セルS3が選択されその電池セルS3の電圧値が読み取られる。この電池セルS3の読取値をSE3とする。
【0080】
さらに、ステップ(a6),(a7)では、やはり上記と同様にして、マイコン32から、直列接続された2つの電池セルS1,S2が選択され、それに応じて送られてきた、直列接続された2つの電池セルS1,S2の両端の電圧値が読み取られる。ここでは、その読取値をSE12とする。
【0081】
ステップ(a9)では、上記の読取値を用いて、式
SE1+SE2=SE12−2α ……(5)
に基づいて差動増幅器AMP1のオフセット電圧αが求められる。
【0082】
ここで、上記(5)式に基づいてオフセット電圧αを求めることができる理由について説明する。
【0083】
ここでは、図3に示す差動増幅器AMP1において、前述した理由によりマルチプレクサMPX1,MPX2のオン抵抗Rnは無視し、かつ、2つの抵抗R1,R2は同一の抵抗値をもつものとする。
【0084】
このとき、前述の(4)式は、
V0=V+−V-+2α ……(6)
となる。
【0085】
各電池セルS1,S2,S3の真の電圧値をそれぞれS1,S2,S3で表わすと、ステップ(a2),(a4),(a7)で読み取られた読取値SE1,SE2,SE12には、それぞれ
SE1=S1+2α ……(7)
SE2=S2+2α ……(8)
SE12=S1+S2+2α ……(9)
となる。したがって、
となり、前述の(5)式が成立する。
【0086】
したがって差動増幅器AMP1のオフセット電圧αは、
α=(SE1+SE2−SE12)/2 ……(10)
として求められる。
【0087】
本実施形態では、差動増幅器AMP1のオフセット電圧αを求めるまでのステップ、すなわちステップ(a1)〜(a9)の集合を、図5に示す電池電圧モニタプログラム3211のオフセット算出部3211aと称している。
【0088】
次に、図6のステップ(a10)〜(a12)において、各電池セルS1,S2,S3の真の電圧値S1,S2,S3が
S1=SE1−2α ……(11)
S2=SE2−2α ……(12)
S3=SE3−2α ……(13)
により求められる。本実施形態では、これらのステップ(a10)〜(a12)の集合を、図5に示す電池電圧モニタプログラム3211のオフセット補正部3211bと称している。
【0089】
さらに、図6のステップ(a13)において、各電池セルS1,S2,S3の残量が算出される。この電池残量の算出にあたっては、図4に示すマイコン32のデータROM322に記憶されている、図14に一例を示すような電池電圧と電池残量との対応データが参照され、ステップ(a10)〜(a12)で求められた各電池セルの真の電圧値S1,S2,S3が電池残量に変換される。この算出された電池残量は、マイコン32からノートパソコン40(図1参照)の本体に送られ、ノートパソコン40では、図示しなり表示画面上に電池残量を表示し、あるいは電池残量が少なくなったときはその旨表示する。尚、図6のステップ(a13)において、通常は、3つの電池セルS1,S2,S3についてほぼ同じ電池残量が求められるが、それらの3つ電池セルS1,S2,S3のうちの1つだけ極端に電池残量が少なくなったときは、早めに警告表示がなされるとともに、電池パックの変換が促される。図6のステップ(a13)は、図5の電池電圧モニタプログラム3211の電池残量算出部3211cに相当する。
【0090】
以上のように、本実施形態では、電池残量を求めようとするときに、そのときの差動増幅器AMP1のオフセット電圧αが求められ、そのオフセット電圧αを補正した真の電池電圧が求められるため、電池残量が正確に求められ、高精度な電池残量表示を行なうことができる。
【0091】
図7は、本発明の第2の実施形態における電池保護回路の構成を示すブロック図である。この第2実施形態の、電池システム全体の構成は、図1に示す第1実施形態のそれと同じであり、ここでは第2実施形態としての新たな図示は省略し、図1をそのまま参照することにする。ただし、この第2実施形態においては、図1に示すDC−DC変換回路31は、電池電圧を3.0Vに変換するものであり、マイコン32は3.0Vで動作するマイコンである点が異なる。また、図7において、図2の場合と同様、図1に示す過放電、過充電防止用のFET(FET1およびFET2)の動作を制御するための構成の図示および説明は省略する。
【0092】
この図7に示す電池保護回路21は、図2に示す電池保護回路と同じ端子21a〜21fを備えているが、その内部構成は異なっており、4つの差動増幅器AMP1,AMP2,AMP3,AMP4と、直列接続された2つの基準電圧源e1,e2と、2つのマルチプレクサMPX1,MPX2と、選択制御回路SELとから構成されている。この電池保護回路21はその全体が1つのLSI内に作り込まれており、したがって4つの差動増幅器AMP1,AMP2,AMP3,AMP4は、オフセット電圧の電圧値(オフセット値)を含め、十分な高精度をもって相互に同一の特性を有している。
【0093】
4つの差動増幅器AMP1,AMP2,AMP3,AMP4のうちの1つの差動増幅器AMP4を除く、残りの3つの差動増幅器AMP1,AMP2,AMP3には、その入力に、それぞれ、2つのノード接続端子21c,21d、2つのノード接続端子21d,21e、および2つのノード接続端子21e,21fが接続され、それら3つの差動増幅器の出力はいずれも第1のマルチプレクサMPX1に入力されている。
【0094】
また、第1のマルチプレクサMPX1にはさらに、直列接続された2つの基準電圧源e1,e2のe1側の端のノード211と、2つの基準電圧源e1,e2どうしが接続された接続点のノード212との2つのノードの電圧が入力されている。
【0095】
また、第2のマルチプレクサMPX2には、直列接続された2つの基準電圧源e1,e2の両端の各ノード211,213と、それら2つの基準電圧源e1,e2どうしが接続された接続点のノード212との合計3つのノードの電圧が入力されている。ただし、基準電圧源e2側の端のノード213は、ノード接続端子21fに接続された状態で、第2のマルチプレクサMPX2にが入力されている。
【0096】
残りの1つの差動増幅器AMP4には、2つのマルチプレクサMPX1,MPX2それぞれの出力が入力され、それらの出力どうしの差分が求められて、モニタ信号出力端子21bから、マイコン32(図1参照)に向けて出力される。
【0097】
選択制御回路SELは、図2に示す電池保護回路の選択制御回路と同様、マイコン32から送られてきた選択信号に基づいて2つのマルチプレクサMPX1,MPX2の切替えを制御するものであるが、切替えのモードは図2の場合とは異なっている。
【0098】
すなわち、ここでは、第1のマルチプレクサMPX1から、直列接続された2つの基準電圧源e1,e2の3つのノード211,212,213のうちの、基準電圧源e2側のノード211の電圧が出力されるタイミングで、第2のマルチプレクサMPX2から2つの基準電圧源e1,e2どうしの接続点のノード212の電圧が出力されるように切り替える切替モード(この場合、差動増幅器AMP4からは基準電圧源e1の電圧が出力される)と、第1のマルチプレクサMPX1から基準電圧源e1,e2どうしの接続点のノード212の電圧が出力されるタイミングで第2のマルチプレクサMPX2から基準電圧源e2側の端のノード213の電圧が出力されるように切り替える切替モード(この場合、差動増幅器AMP1からは基準電圧源e2の電圧が出力される)と、第1のマルチプレクサMPX1から基準電圧源e1側の端のノード211の電圧が出力されるタイミングで第2のマルチプレクサMPX2から基準電圧源e2側の端のノード213の電圧が出力されるように切り替える切替モード(この場合、差動増幅器AMP1からは直列接続された2つの基準電圧源e1,e2の両端の電圧が出力される)と、第2のマルチプレクサMPX2から基準電圧源e1側の端のノード211の電圧が出力されるタイミングで、第1のマルチプレクサMPX1からは、差動増幅器AMP1の出力(電池セルS1の電圧)を出力する切替モード(このときは、差動増幅器AMP1からは電池セルS1の電圧から、直列接続された2つの基準電圧源e1,e2による電圧(ここではこれをスライス電圧と称する)を差し引いた差分電圧が出力される)と、第2のマルチプレクサMPX2からはスライス電圧を出力し、第1のマルチプレクサMPX1からは差動増幅器AMP2の出力(電池セルS2の電圧)を出力する切替モード(このときは、差動増幅器AMP1からは電池セルS2の電圧から、スライス電圧を差し引いた差分電圧が出力される)と、やはり第2のマルチプレクサMPX2からはスライス電圧を出力し、第1のマルチプレクサMPX1からは差動増幅器AMP3の出力(電池セルS3の電圧)を出力する切替モード(このときは、差動増幅器AMP4からは、電池セルS3の電圧から、スライス電圧を差し引いた差分電圧が出力される)とが存在する。
【0099】
この第2実施形態におけるマイコン32(図1参照)は3.0Vで動作するマイコンであり、一方各電池セルS1,S2,S3の電圧は、図13に示すように完全充電状態では4Vを越える程度の電圧であるため、ここでは各電池セルS1,S2,S3の電圧からスライス電圧を差し引いた差分電圧をマイコン32に送ることにより、マイコン32で各電池セルS1,S2,S3の電圧を認識できるようにしている。このとき、第1実施形態の場合と同じく差動増幅器AMP1〜AMP4のオフセット電圧αに加え、2つの基準電圧源e1,e2により作られるスライス電圧の精度が問題となるが、ここでは、以下のようにして差動増幅器AMP1〜AMP4のオフセット電圧αとスライス電圧とを正しく測定し、それを各電池セルS1,S2,S3の電圧からスライス電圧を差し引いた各差分電圧の測定値に反映させることにより、各電池セルS1,S2,S3の真の電圧値が求められる。
【0100】
図8は、ここで説明している第2実施形態における、マイコン32で実行される電池電圧モニタプログラムのフローチャートである。
【0101】
先ずステップ(b1)において基準電圧e1を選択する選択信号が、マイコン32から、図1に示す電池パック20の、図7に示す電池保護回路21に向けて出力され、電池保護回路21では、その選択制御回路SELにより、2つのマルチプレクサMPX1,MPX2からノード211とノード212の各電圧がそれぞれ出力されるように、それら2つのマルチプレクサMPX1,MPX2が切り替えられ、差動増幅器AMP4からは基準電圧e1の電圧が出力される。差動増幅器AMP4から出力された基準電圧源e1の電圧は、マイコン32に伝達され、ステップe2においてその電圧e1がAD変換されてディジタルデータとしての電圧値がマイコン32に読み取られる。ここでは、基準電圧源e1の読取値をE1と表記する。
【0102】
次に、これと同様にして、ステップ(b3),(b4)で基準電圧源c2が選択されその読取値E2が読み取られる。
【0103】
さらに、上記と同様にして、ステップ(b5),(b6)では、直列接続された2つの基準電圧源e1,e2の両端の電圧が選択され、その両端の電圧の読取値E3が読み取られる。
【0104】
その後、ステップ(b7)において、式
E1+E2=E3−2×α ……(14)
に基づいて差動増幅器AMP4のオフセット値αが求められる。
【0105】
ここで、基準電圧源e1,e2の各読取値E1,E2、および直接接続されたそれら2つの基準電圧源e1,e2の両端の電圧E3は、それら2つの基準電圧源e1,e2の真の電圧値をそれぞれe1,e2としたとき、(6)式より、
E1=e1+2α ……(15)
E2=e2+2α ……(16)
E3=e1+e2+2α ……(17)
となる。したがって、
となり、(14)式が成立する。
【0106】
したがって(14)式より、差動増幅器AMP4のオフセット値αは、
α=(E1+E2−E3)/2 ……(18)
として求められる。
【0107】
また、オフセット値αが求められると、真のスライス電圧e1+e2は、(17)式より、
e1+e2=E3−2α ……(19)
として求められる(ステップb8))。
【0108】
ここで説明している第2実施形態では、上記の処理を行なう、図8のステップ(b1)〜(b8)が、図5に示す電池電圧モニタプログラム3211のオフセット算出部3211aに相当する。
【0109】
次に図8に示すフローチャートのステップ(b9)において、電池セルS1の電圧(差動増幅器AMP1の出力)をマルチプレクサMPX1から出力するとともに、スライス電圧(ノード211の電圧)がマルチプレクサMPX2から出力されるように選択信号を送り、電池セルS1とスライス電圧との差分電圧の読取値SE1がマイコン32に取り込まれ(ステップb10)、その結果から、以下の式に基づいて、電池セルS1の真の電圧値S1が算出される(ステップ(b11))。
【0110】
S1=SE1+(e1+e2)−4α ……(20)
ここで、(20)式は以下のように導かれる。すなわち差動増幅器AMP1のオフセット値をα1,差動増幅器AMP4のオフセット値をα4としたとき、
ここで、図7に示す電池保護回路21を構成する各要素は、前述のように、1つのLSIチップ内に搭載されたものであり、したがって差動増幅器AMP1〜AMP4のオフセット値は相互に同一であり、これをαであらわすと、(21)式は、
SE1=S1−(e1+e2)+4α ……(22)
となり、上記(20)式が成立する。
【0111】
以下、同様にして、ステップ(b12),(b13),(b14)において、電池セルS2の電圧からスライス電圧を差し引いた差分電圧の読取値SE2を読み取って、
S2=SE2+(e1+e2)−4α …(23)
により、電池セルS2の真の電圧値S3が求められ、さらに、同様にして、ステップ(b15),(b16),(b17)において、電池セルS3の電圧からスライス電圧を差し引いた差分電圧の読取値SE3を読み取って、
S3=SE3+(e1+e2)−4α…(24)
により電池セルS3の真の電圧値S3が求められる。
【0112】
以上の、ステップ(S9)〜(S17)における電池セルS1,S2,S3の真の電圧値S1,S2,S3を求める処理が、図5の電池電圧モニタプログラム3211のオフセット補正部3211bに相当する。
【0113】
ステップ(b18)では、電池セルS1,S2,S3の真の電圧値が電池残量に換算される。この換算方法は、前述した第1実施形態の場合(図6のステップ(a13))と同様であり、重複説明は省略する。このステップ(b18)が、図5の電池電圧モニタプログラム3211の電池残量算出部3211cに相当する。
【0114】
図9は、本発明の第3実施形態の構成を示すブロック図である。
【0115】
この図9に示す第3実施形態は、以下に説明する相違点を除き、図1,図7及び図8に示す第2実施形態と同一であり、以下、その相違点についてのみ説明する。
【0116】
前述の第2実施形態では、基準電圧源e1,e2は、電池パック20内(電池パック20内の、図7に示す電池保護回路21内)に備えられているが、図9に示す第3実施形態では、基準電圧源e1,e2は、電池パック20の外部(ここに示す例では電池電圧モニタ部30内)に備えられている。そのため電池パック20には、それら直列接続された2つの基準電圧源e1,e2の各ノードと接続される端子20e,20f,20dが備えられており、それら各ノードの電圧は電池電圧モニタ部30の各端子30e,30f,30dと電池パック20の各端子20e,20f,20dを経由して電池パック20内の電池保護回路21に伝えられる。
【0117】
このように基準電圧源e1,e2は電池パック20の外部に備えられ、ノードが接続される端子を備えたものであってもよい。この第3の実施形態は、基準電圧源e1,e2が電池パック20の外部に備えられたものであることを除き、前述した第2の実施形態と同一であり、重複説明は省略する。
【0118】
図10は、本発明の第4実施形態の構成を示すブロック図である。
【0119】
この図10には、電池パック50が示されており、この電池パック50には図1に示す、電池パック20と電池電圧モニタ部30との双方の構成要素が内蔵されている。このことから、この電池パック50には、直列接続された3つの電池S1,S2,S3の両端の電圧をこの電池パック50から出力するための端子50a,50bと、マイコン32で求められた電池残量に関するデータを電池パックの外部に伝えたり、その他マイコン32と外部との間のデータの送受信を行うための端子50cが備えられている。
【0120】
この電池パック50の電池保護回路21,DC−DC変換回路31、およびマイコン32は、前述した第1実施形態における対応する要素と同一の機能を有するものであってもよく、あるいは前述した第2実施形態における対応する要素と同一機能を有するものであってもよい。
【0121】
このように、本発明の電池パックは、電池電圧をモニタして電池残量を求めるというインテリジェントな機能をその内部に備えたものであってもよい。
【0122】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電池電圧を高精度にモニタすることができる。また、本発明のうち、第2のグループに属する発明は、直接的には電池電圧とスライス電圧との差分電圧をモニタするものであるため、そのモニタ用の回路がモニタされる電池の電圧より低い電源電圧で動作する回路であっても、電池電圧を高精度にモニタすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態の概略構成図である。
【図2】図1に示す第1実施形態における電池保護回路の構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示す差動増幅器AMP1と2つのマルチプレクサMPX1,MPX2のオン抵抗Rnを示した図である。
【図4】図1に示すマイコンの概要を示す構成図である。
【図5】図4に示すマイコンを構成するプログラムROM中に格納されたプログラムの概念図である。
【図6】マイコンのプログラムROMに記憶された電池電圧モニタプログラムの処理内容を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態における電池保護回路の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第2実施形態における、マイコンで実行される電池電圧モニタプログラムのフローチャートである。
【図9】本発明の第3実施形態の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第4実施形態の構成を示すブロック図である。
【図11】電池残量モニタ機能を有する電池システムを示す図である。
【図12】図11に示す電池パック内の電池保護回路の内部構成を示す図である。
【図13】リチウム、イオン電池その他の放電時間(横軸)と電池電圧(縦軸)との関係を示す図である。
【図14】電池電圧(縦軸)と電池残量(横軸)との関係を示す図である。
【図15】図12に示す3つの差動増幅器AMP1,AMP2,AMP3の1つ(ここでは差動増幅器AMP1とする)を示した回路図である。
【図16】図15に示す差動増幅器において、反転入力を接地した場合を示す図である。
【図17】図15に示す構成の前段に、バッファ用の差動増幅器AMP12,AMP13を配置した構成を示す図である。
【符号の説明】
10 電池システム
20 電池パック
20a 選択信号入力端子
20b モニタ信号出力端子
20c,20d,20e,20f ノード接続端子
21 電池保護回路
21a 選択信号入力端子
21b モニタ信号出力端子
211,212,213 ノード
30 電池電圧モニタ部
31 DC−DC変換回路
32 マイコン
321 プログラムROM
322 データROM
323 CPU
324 RAM
325 A/D変換器
326 入出力インタフェース
3211 電池電圧モニタプログラム
3211a オフセット算出部
3211b オフセット補正部
3211c 電池残量算出部
40 ノートパソコン
50 電池パック
50a,50,50c 端子
AMP1,AMP2,AMP3,AMP4 差動増幅器
MPX1,MPX2, マルチプレクサ
SEL 選択制御回路
Claims (8)
- 直列接続された複数の電池と、
前記複数の電池の各々の電圧及び所定の2つ以上の電池を合わせた電圧を表わす各信号を含む複数の信号のうちの選択信号に応じて選択された信号を出力する差動増幅器を有するモニタ信号出力回路と、
前記モニタ信号出力回路から得た複数の信号に基づいて前記差動増幅器のオフセット電圧を算出するオフセット算出部と、
前記オフセット算出部で算出されたオフセット電圧を用いて、前記複数の電池各々の電圧の測定誤差を補正するオフセット補正部とを有する電池電圧モニタ回路が内蔵されてなることを特徴とする電池パック。 - 前記オフセット算出部が、前記複数の電池のうちの1つ以上の一部の電池による第1の電圧と、前記複数の電池のうちの1つ以上の他の一部の電池による第2の電圧と、前記複数の電池のうちの、前記一部の電池と前記他の一部の電池とを合わせた2つ以上の電池による第3の電圧とを表わす3つの信号に基づいて、前記差動増幅器のオフセット電圧を算出するものであることを特徴とする請求項1記載の電池パック。
- 直列接続された複数の電池の各々の電圧及び所定の2つ以上の電池を合わせた電圧を表わす各信号を含む複数の信号のうちの選択信号に応じて選択された信号を出力する差動増幅器を有するモニタ信号出力回路から得た複数の信号に基づいて前記差動増幅器のオフセット電圧を算出するオフセット算出部と、
前記オフセット算出部で算出されたオフセット電圧を用いて、前記複数の電池各々の電圧の測定誤差を補正するオフセット補正部とを備えたことを特徴とする電池電圧モニタ回路。 - 前記オフセット算出部が、前記複数の電池のうちの1つ以上の一部の電池による第1の電圧と、前記複数の電池のうちの1つ以上の他の一部の電池による第2の電圧と、前記複数の電池のうちの、前記一部の電池と前記他の一部の電池とを合わせた2つ以上の電池による第3の電圧とを表わす3つの信号に基づいて、前記差動増幅器のオフセット電圧を算出するものであることを特徴とする請求項3記載の電池電圧モニタ回路。
- 直列接続された複数の電池、
前記複数の電池の各々の電圧及び所定の2つ以上の電池を合わせた電圧を表わす各信号を含む複数の信号のうちの選択信号に応じて選択された信号を出力する差動増幅器を有するモニタ信号出力回路、および
前記モニタ信号出力回路から得た複数の信号に基づいて前記差動増幅器のオフセット電圧を算出するオフセット算出部と、前記オフセット算出部で算出されたオフセット電圧を用いて、前記複数の電池各々の電圧の測定誤差を補正するオフセット補正部とを有する電池電圧モニタ回路を備えたことを特徴とする電池システム。 - 電力の供給を受けて動作する機器装置において、
直列接続された複数の電池、
前記複数の電池の各々の電圧及び所定の2つ以上の電池を合わせた電圧を表わす各信号を含む複数の信号のうちの選択信号に応じて選択された信号を出力する差動増幅器を有するモニタ信号出力回路、および
前記モニタ信号出力回路から得た複数の信号に基づいて前記差動増幅器のオフセット電圧を算出するオフセット算出部と、前記オフセット算出部で算出されたオフセット電圧を用いて、前記複数の電池各々の各電圧の測定誤差を補正するオフセット補正部とを有する電池電圧モニタ回路を備えたことを特徴とする機器装置。 - 直列接続された複数の電池の各々の電圧及び所定の2つ以上の電池を合わせた電圧を表わす各信号を含む複数の信号のうちの選択信号に応じて選択された信号を出力する差動増幅器を有するモニタ信号出力回路から得た複数の信号に基づいて前記差動増幅器のオフセット電圧を算出し、
算出したオフセット電圧を用いて、前記複数の電池各々の電圧の測定誤差を補正することを特徴とする電池電圧モニタ方法。 - コンピュータ内で実行されることにより、該コンピュータを、電池の電圧をモニタする装置として動作させる電池電圧モニタプログラムが記憶された電池電圧モニタプログラム記憶媒体において、
直列接続された複数の電池の各々の電圧及び所定の2つ以上の電池を合わせた電圧を表わす各信号を含む複数の信号のうちの選択信号に応じて選択された信号を出力する差動増幅器を備えたモニタ信号出力回路から得た複数の信号に基づいて前記差動増幅器のオフセット電圧を算出するオフセット算出部と、
前記オフセット算出部で算出されたオフセット電圧を用いて、前記複数の電池それぞれの各電圧の測定誤差を補正するオフセット補正部とを有する電池電圧モニタプログラムが記憶されてなることを特徴とする電池電圧モニタプログラム記憶媒体。
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