JP3787000B2 - 蛍光面形成用感光性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は蛍光面形成用感光性組成物に関し、更に詳しくは、高精細で蛍光体の充填密度の高い蛍光体パターンが形成可能な蛍光面形成用感光性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、蛍光体パターン形成方法としては、ポリ酢酸ビニルけん化物と重クロム酸塩と赤色、緑色および青色の発光蛍光体とからなる感光性組成物を順次、塗布、露光および現像処理して所定の蛍光体パターンを形成する方法が多く用いられている。しかしながら、この感光性組成物は重クロム酸塩を使用しているので、蛍光体の発光効率を低下させる作用がある上に、クロムによる公害問題も回避できないという問題点を有する。
【0003】
一方、これらの問題点を解決した感光性組成物として、特開昭6−147804号公報には、感光性ユニットとしてスチルバゾリウム基をペンダントさせ、透明性と接着性とを保持させるためアルデヒドを結合させたポリ酢酸ビニルけん化物が開示されている。この感光性組成物は非常に高感度であるが、スチルバゾリウム基の吸光度が大きいため、光が下層まで十分に届き難い。したがって、所定のパターンサイズを得るための露光量では硬化が十分でなくドットの欠落などを起こしやすく、一方、ドットの欠落が無くなるような露光量を与えると所定のパターンサイズより大きくなるという欠点を有する。また、現像時の膨潤が大きいため、高精細なパターンが得られないという問題点も有する。
【0004】
また、特開昭51−4956号公報、特開昭51−5013号公報には、下記「化2」の一般式のアジド基を有するポリ酢酸ビニルけん化物が、特開平5−113661号公報には下記「化3」の一般式のアジド基を有するポリマーが、さらに、特開平5−197141号公報には非感光性モノマーとアジド基および電解性官能基を持つモノマーの共重合体とポリ酢酸ビニルけん化物とからなる蛍光体パターン形成用組成物が開示されている。しかしながら、これらの感光性組成物を用いて蛍光体パターンを形成すると、得られた蛍光体パターンの蛍光体の充填密度が低いという問題がある。
【0005】
【化2】
【0006】
【化3】
【0007】
さらに、特開平4−116558号公報には、有機高分子化合物、光重合性単量体、光重合開始剤および蛍光体を含む感光性蛍光体組成物が開示されている。しかしながら、この場合、ラジカル重合により硬化させているため、重合時に酸素の影響を受けて一定のパターンを得るのが難しいという問題点を有する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の蛍光体パターン形成用感光性組成物は、例えば、蛍光体の発光効率を低下させる、公害問題が有る、ドットが欠落しやすい、高精細なパターンが得られない、蛍光体の充填密度が低い、酸素の影響を受けるなどの欠点を有している。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑み、クロム化合物を使用しないで、ドット欠落が無く、蛍光体の充填密度が高く、高精細な蛍光体パターンが得られる蛍光体パターン形成用感光性組成物を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明は、光酸発生剤、ポリ酢酸ビニルけん化物系高分子化合物、ジアルデヒド化合物および蛍光体を必須成分として、水性媒体に溶解乃至分散してなることを特徴とする蛍光面形性用感光性組成物にある。
【0013】
また、前記光酸発生剤は、例えば、光分解性有機ハロゲン化合物、キノンジアジド化合物から選択される化合物である。
【0014】
また、前記光酸発生剤は、好ましくは、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、R1が二価の有機基を表し、R2およびR3がそれぞれアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表すか、またはR1、R2およびR3が一緒になって含窒素芳香族複素環を表し、R4はアルキル基またはアラルキル基を表し、X-は陰イオンを表す)
【0017】
本発明者らは、上述した課題を達成する優れた特性を有する感光性組成物を開発するために鋭意研究を重ねた結果、光酸発生剤、ポリ酢酸ビニルけん化物系高分子化合物、架橋剤および蛍光体とを必須成分として、水性媒体に溶解乃至分散して感光性組成物とすることにより、上述した課題を解決できることを知見し、本発明に至った。
【0018】
本発明の組成物の成分である光酸発生剤は、光の照射により酸を発生し、水性媒体に溶解する化合物、例えば、光分解性有機ハロゲン化合物、キノンジアジド化合物等を挙げることができる。
【0019】
光分解性有機ハロゲン化合物としては、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩あるいはジアゾニウム塩などのオニウム塩、およびハロゲン化トリアジン類を挙げることができる。なお、これらは、例えば、米国特許第3,729,313号に開示されていように、種々の染料、例えば、ジフェニルメタン類、キサンテン類、アミノケトン類等により増感することができる。水溶性ハロゲン化トリアジン化合物としては、例えば、特公平7−43536号公報に開示されている化合物などを挙げることができる。水溶性のキノンジアジド化合物としては、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ナトリウム、第4級アンモニウム基を有するキノンジアジド化合物等を挙げることができる。また、第4級アンモニウム基を有するキノンジアジド化合物の好ましい一例として、下記一般式(1)で表される新規な光酸発生剤を挙げることができる。
【0020】
【化5】
【0021】
(式中、R1が二価の有機基を表し、R2およびR3がそれぞれアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表すか、またはR1、R2およびR3が一緒になって含窒素芳香族複素環を表し、R4はアルキル基またはアラルキル基を表し、X-は陰イオンを表す)
【0022】
かかる一般式(1)で表される感光剤は、例えば、下記一般式(2)のアルコールあるいはアミノ化合物を有機溶媒中で塩基の存在下、1,2−ナフトキノン−(2)−ジアジド−4−スルホニルハライドと反応させた後、アルキルハライドあるいはアルキル硫酸などで4級化させることにより合成することができる。
【0023】
【化6】
【0024】
本発明で用いられるポリ酢酸ビニルけん化物系高分子化合物としては、けん化度60から100%、平均重合度200〜5,000のポリ酢酸ビニルけん化物、あるいは、これらの変成物、例えば、親水性基変成、親油性基変成、アニオン変成、カチオン変成、アルデヒド基変成あるいはアセトアセチル基のような反応性基による変成のポリ酢酸ビニルけん化物、または酢酸ビニルと他のビニル化合物、例えば、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド等との共重合物のけん化物等を挙げることができる。
【0025】
本発明の組成物で用いられる架橋剤としては、ポリ酢酸ビニルけん化物系高分子化合物を酸の存在化で架橋させることができる化合物であれば何れでもよく、例えば、ジアルデヒド化合物、N−ヒドロキシメチル基あるいはN−アルコキシメチル基を2個以上有する化合物、エポキシ化合物等が好適に用いられる。ここで、ジアルデヒド化合物としては、例えば、グリオキザール、グルタルアルデヒド、o−フタルアルデヒド等を挙げることができる。N−ヒドロキシメチル基あるいはN−アルコキシメチル基を2個以上有する化合物としては、例えば、メチロール化メラミン、アルキルメチロール化メラミン、メチロール化ベンゾグアナミン、アルキルメチロール化ベンゾグアナミン、メチロール化尿素、アルキルメチロール化尿素あるいはウロン同族体、メチレン尿素同族体等を挙げることができる。また、エポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。これらのうち特に、ジアルデヒド化合物、N-ヒドロキシメチル化合物が感度の点で好ましい。
【0026】
本発明の組成物で用いられる蛍光体としては、蛍光体を用いる表示装置に用いられる蛍光体であれば何れも用いることができる。
【0027】
本発明の組成物において、上記成分の配合割合は、ポリ酢酸ビニルけん化物系高分子化合物:光酸発生剤:架橋剤:蛍光体=100:1〜10:3〜30:300〜3000の範囲が好適である。
【0028】
本発明の組成物は上記の光酸発生剤、ポリ酢酸ビニルけん化物系高分子化合物、架橋剤および蛍光体を水性媒体に溶解乃至分散させて得ることができる。
【0029】
水性媒体としては、一般に水が用いられるが、これに水に溶解する有機溶媒、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどを50%を越えない範囲で加えることができる。
【0030】
本発明の組成物には、塗膜の強度、耐水性などの性質を改良するために高分子エマルジョンを混合することができる。このような高分子エマルジョンとしては、例えば、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、酢酸ビニルーエチレン共重合体エマルジョン、酢酸ビニルーアクリル酸エステル共重合体、ポリスチレンエマルジョン、エチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン、スチレン−アクリル酸エステルエマルジョン、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体エマルジョン、クロロプレン重合体エマルジョン、ポリ塩化ビニルエマルジョン、シリコーン樹脂エマルジョン、ポリウレタンエマルジョン等を挙げることができる。
【0031】
更に、本発明の組成物には、上記の成分以外に通常含まれる添加剤、例えば、乳化安定剤、可塑剤、界面活性剤、接着助剤等を含有させることができる。
【0032】
蛍光面の形成方法としては、蛍光体を含む本発明の組成物を、蛍光面を形成する対象物、例えば、ガラス基板上に均一に塗布して乾燥する。所定のパターンのマスクを通してこれに紫外線を露光した後、本発明の組成物を用いた場合は、好ましくは加熱し、水現像によって露光した部分のみを残す。赤色(R),緑色(G),青色(B)の3種類の蛍光体を用いる場合は、前記工程を3回繰り返す。その後、例えば、400℃以上で焼成することにより、蛍光面を完成させることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
7.0重量%PVA(ポリビニルアルコール:EG−40;日本合成(株)製)水溶液に、架橋剤としてグルタルアルデヒドをPVAに対して5%、下記一般式(3)の光酸発生剤を10%添加し、pHを4に調整して感光性樹脂溶液とした。
【0035】
この感光液をガラス基板上に膜厚1.0mmにスピンコートし、50℃で5分間プレベークをした後に、超高圧水銀灯によって所定量露光した。その後、60℃で5分間P.E.B.(ポスト・エクスプロージャー・ベーク)した後に1分間40℃の温水中でパドル現像し、得られた露光部の残膜率を測定し、露光量と残膜率との関係を示する感度曲線を作成し、感光性樹脂溶液の感度を測定した。
【0036】
次に、同一配合で2重量%の濃度とした感光性樹脂溶液25gに、蛍光体9.5gを分散し、pHを4に調整して蛍光体スラリー溶液とした。この蛍光体スラリーをガラス基板上に塗布し、シャドウマスクを介してガラス面に0.15mwで所定時間露光し、60℃で5分間P.E.B.した後に、現像処理をして蛍光体のドットを形成した。ここで得られた蛍光体のドットは、パターン形状が良好で且つ緻密なものであった。
【0037】
【化7】
【0038】
(光酸発生剤(一般式(3)の化合物)の合成例)
1,2−ナフトキノン−(2)−ジアジド−4−スルホニルクロリド25.0gと3−ヒドロキシピリジン9.7gとをジオキサン150g中に溶解し、トリエチルアミン9.4gとアセトン10.6gとの混合溶液を、温度15℃下でゆっくり滴下し、同温度で1時間反応させた。析出したトリエチル塩酸塩をろ過後、ジメチル硫酸17.6gを添加し、30℃で3時間反応を行った。反応混合物を冷却し、析出した結晶をろ過後、アセトン洗浄を行い、乾燥することにより28.5gの結晶を得た。赤外吸収スペクトルおよび図2に示すNMRにより一般式(3)の化合物であることを確認した。なお、図2中、*のピークは、測定用溶媒DMSOのピークである。またHPLCによって測定した結果、純度は99.89%であった。
【0039】
(参考例1)
7.0重量%PVA(EG−40;日本合成(株)製)水溶液に、架橋剤としてメチル化メラミン樹脂のニカラックMX−41((株)三和ケミカル製)をPVAに対して10%、上記一般式(3)の光酸発生剤を10%添加し、pHを4に調整して感光性樹脂溶液とした。
【0040】
以下、実施例1と同様に、感度曲線を作成して感光性樹脂溶液の感度を測定した。さらに、蛍光体スラリー溶液も実施例1と同様に調製し、同様な操作で蛍光体のドットを形成した。
【0041】
(参考例2)
7.0重量%PVA(EG−40;日本合成(株)製)水溶液に、架橋剤としてグリコールウリル樹脂のサイメル1172(三井サイテック(株)製)をPVAに対して10%、上記一般式(3)の光酸発生剤を10%添加し、pHを4に調整して感光性樹脂溶液とした。
【0042】
以下、実施例1と同様に、感度曲線を作成して感光性樹脂溶液の感度を測定した。さらに、蛍光体スラリー溶液も実施例1と同様に調製し、同様な操作で蛍光体のドットを形成した。
【0043】
(参考例3)
7.0重量%PVA(EG−40;日本合成(株)製)水溶液に、架橋剤としてエポキシ樹脂のデナコールEX−313(ナガセ化成工業(株)製)をPVAに対して10%、上記一般式(3)の光酸発生剤を10%添加し、pHを4に調製して感光性樹脂溶液とした。以下、実施例1と同様に、感度曲線を作成して感光性樹脂溶液の感度を測定した。
【0044】
(実施例2)
7.0重量%PVA(EG−40;日本合成(株)製)水溶液に、架橋剤としてグルタルアルデヒドをPVAに対して5%、下記一般式(4)の光酸発生剤を5%、下記一般式(5)の増感剤を3%、それぞれ添加して感光性樹脂溶液とした。この感光性樹脂溶液を2重量%の濃度とし、この感光性樹脂溶液25gに、蛍光体9.5gを分散し、pHを4に調整して蛍光体スラリー溶液とした。この蛍光体スラリーを実施例1と同様な操作で蛍光体のドットを形成した。
【0045】
【化8】
【0046】
【化9】
【0047】
(比較例1)
7.0重量%PVA(EG−40;日本合成(株)製)水溶液に、重クロム酸アンモニウム(ADC)をPVAに対して7%添加して感光性樹脂溶液とした。
【0048】
以下、実施例1と同様に、感度曲線を作成して感光性樹脂溶液の感度を測定した。さらに、蛍光体スラリー溶液も実施例1と同様に調製し、同様な操作で蛍光体のドットを形成した。
【0049】
(比較例2)
PVA−SBQ(N−メチル−4−ホルミルスチリルピリジニウムメトサルフェート:SPP H−13;東洋合成工業(株)製)水溶液を7重量%に希釈して感光性樹脂溶液とした。
【0050】
以下、実施例1と同様に、感度曲線を作成して感光性樹脂溶液の感度を測定した。さらに、蛍光体スラリー溶液も実施例1と同様に調製し、同様な操作で蛍光体のドットを形成した。
【0051】
(実施例1〜2、参考例1〜3、および比較例1〜2)
各実施例1、参考例1〜3、および比較例1〜2の感光性樹脂溶液の感度については図1に示す。また、実施例1〜2、参考例1〜2、および比較例1〜2についての150mmの蛍光体のドット形成結果については表1に示す。
【0052】
図1および表1から明らかなように、PVA−SBQを用いると感度は高いが、蛍光体パターンの欠落が発生した。一方、本発明の組成物では、PVA−ADCとほぼ同じ感度で、緻密で良好な蛍光体パターンが得られた。
【0053】
【表1】
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、クロム化合物を使用しないで、ドット欠落が無く、蛍光体の充填密度が高く、高精細な蛍光体パターンが得られる蛍光体パターン形成用感光性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1、参考例1〜3、および比較例1〜2における露光量と残膜率との関係を示す感度曲線を表す図である。
【図2】一般式(3)に示される光酸発生剤のNMRを示す図である。
Claims (3)
- 光酸発生剤、ポリ酢酸ビニルけん化物系高分子化合物、ジアルデヒド化合物および蛍光体とを必須成分として、水性媒体に溶解乃至分散してなることを特徴とする蛍光面形性用感光性組成物。
- 請求項1において、前記光酸発生剤が光分解性有機ハロゲン化合物、キノンジアジド化合物から選択される化合物であることを特徴とする蛍光面形成用感光性組成物。
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