JP3786731B2 - 管縫合装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、概して外科用縫合器具、詳しくは、外科用縫合装置、及び管（血管，導管，脈管等）の組織の切断部（あるいは切開部）の縫合方法に関する技術分野に属する。
【０００２】
【従来の技術】
外科的処置にあっては、しばしば、管組織または管の部分を接続または再結合して吻合 (anastomosis) を形成する必要が生ずる。吻合を形成するためには、例えば縫合、あるいは管端部どうしのステープリング (stapling) 又はクリッピング (clipping) 等の種々の管組織接合方法が用いられている。加えて、管を互いに結合して吻合を形成すべく様々なステント (stent) を用いることもできる。管が、開口端と開口端とで結合される場合は、「端々」吻合 ("end to end" anastomosis) と称される。しかし、外科的処置によっては、一方の開口自由端を他方の管の側方の切開部に接続して「端側」吻合 ("end to side" anastomosis) を形成すること、あるいは他方の管の側方の切開部に接続して「側側」吻合 ("sede-to-side" anastomosis) を形成しなければならないことも間々ある。
【０００３】
管の縫合では、管どうしをステープリングあるいはクリッピングするのが好ましい場合もある。管のサイズが小さいため非常に小さい縫合針が用いられており、この縫合針には、管どうしを縫合すべくある長さの縫合材料が取り付けられている。この縫合針は通常、針保持具によって保持され、一方の管を貫通し次いで対向側の管を貫通する。この操作を繰り返すことで管どうしに一連の縫合部 (stitches) を形成し、両者を縫い合わせる。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
使用する縫合針のサイズは、その径が通常一万分の一インチオーダーといったように極めて小さいため、管組織を介して前記縫合針を操作する際に取扱上の問題が生じやすい。例えば、前記針は、管に孔を開ける際には前記針保持具よりその一端が開放されて管を介して押し込まれ、次いでその他端が保持され引き抜かれて管を縫うというように、作業中、開放と縫い合わせとが必要とされる。このように針を開放することはときとして好ましくなく、針を元の状態に回復させる上で問題が生じる恐れがある。かかる不具合を回避するためには、二つの針保持具を用い、その一方を管の何れかの側に置いて前記針を常時保持しておく必要が生じることになるが、それにより、操作に二つの手が必要となる。また、通常一般の針保持具を使用した場合、針による穿孔作業はしばしば困難となる。針が非常に小さいがため、外科的処理の際に万一針を落とした場合、回復作業は難しく、また時間がかかる。
【０００５】
既に述べたように小管の縫合箇所は通常極めて小さいため、かかる管組織の縫合を行うにあたり、外科医が特別な拡大鏡を使って縫合部を拡大しながら行うこともある。そのような拡大鏡を使用することは、管組織および針が拡大される一方で、外科医の作業すべき視野が狭くなる。従って、針および縫合材料を管に貫通させ、その縫合材料を引き通すべく引っ張る時には、それら針保持具及び針を作業視野から動かす必要が生じるものとなる。このため、外科医は管の縫合箇所を含む視野から視線を逸らさなければならず、したがって管組織に次の縫い目を形成する際に、拡大された視野内で針の位置決めを再度行わなければならないし、縫合に要する時間もかかるものとなる。例え拡大鏡を用いない場合でも、外科医は、前記所定長の縫合糸を管に引き通すべく針を手術部位から動かしたときあるいは他方の手でその針を再度つかむときには、針を見る必要がある。小管は極めて微細であるため、前記外科医が、小管に針をもう一度通して縫合すべく手術部位に再度眼の焦点を定めるには時間がかかる。このように絶えず焦点を変化させなければならないために時間がかかり、外科医の眼を疲れさせることとなる。
【０００６】
従って、特に管組織を吻合手法で縫合するのに適した外科用縫合装置及び小管縫合方法を用いることが有利である。また、片方の手で操作可能で、しかも前記針が装置の一方の保持アームから他方の保持アームに渡される際に針を精密かつ定常的に制御でき、縫合処置の際に針が開放されるのを防止できる、外科的縫合装置を得ることがさらに都合がよい。また、全ての縫合作業を制限された視野内で行えるよう、限られた手、装置、針の動きによって管組織の切断部の縫合ができる外科用縫合装置を実現することがさらに都合がよい。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る管組織の切断部縫合のための外科用装置は、第一の針受け凹所を有した第一のアームと、該第一のアームに対して可動となるように取り付けられた第一の針係止部材すなわちブレードと、を備えている。また、前記第一のアームに対して可動となるように取り付けられた第二のアームが設けられている。この第二のアームは、第二の針受け凹所、及び、前記第二のアームに対して可動に取り付けられた第二の針係止部すなわちブレードを有している。さらに、前記第一および第二の針係止部材に接続され、これら第一および第二の針係止部材を前記第一および第二の針受け凹所内に、あるいはそれら凹所から交互に動かして外科用針をそれらそれら凹所内に固定する往復動機構が設けられている。この往復動機構は、前記第一の針係止部材を前進させて前記外科用針と係合させる第一の位置と、前記第二の針係止部材を前進させて前記外科用針と係合させる第二の位置との間で移動可能となっている。前記第一のアームが前記第二のアームに対して閉じられた状態において前記往復動機構を前記第一及び第二の位置間で自動的にカム運動させるためのカム部材が、前記アームの一方と作動的に関連している。
【０００８】
好ましくは、前記往復動機構は、前記両アームに回転自在に取り付けられかつ第一及び第二のカム面を有したトグルホイール (toggle wheel) を備えており、前記両アームの初期の閉じ操作により前記カム部材が前記第一カム面との係合位置に付勢させ、該トグルホイールを前記第一の位置に移動させるようになっている。引き続き両アームを閉じると前記カム部材が前記第二のカム面との係合位置に付勢され、前記トグルホイールが前記第二の位置に動かされる。
【０００９】
本明細書ではさらに、縫合糸により管組織の切断部を縫うための方法も開示している。該方法は装置、すなわち第一の針受け凹所を有した第一のアームと、第二の針受け凹所を有した第二のアームとを有し、かつこれら第一及び第二のアームが互いに近接・離間方向に移動可能とされた装置、を準備する段階を含んでいる。該方法はまた、外科用針を前記第二の針受け凹所内に保持し、前記第一および第二のアームを縫合すべき第一の管組織の切断部の近傍に位置決めし、前記第二のアームを前記第一のアームに向けて移動させ、該外科用針が前記第一の管組織の切断部に穴を開けて前記第一の針受け凹所に入り、該外科用針を前記第二の針受け凹所から開放し、前記第一の針受け凹所内に保持する段階を含んでいる。該方法はさらに、前記第一のアームを前記第二のアームから離間させ、前記外科用針に取り付けられた縫合糸を前記第一の管組織の切断部の少なくとも一部を介して引っ張る段階を含んでいる。
【００１０】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照して本発明いくつかの実施の形態について説明する。
図１は双方のアームが開位置にあって、一方のアーム内に外科用縫合針を保持した状態にある外科用小管縫合装置を示す斜視図；
図２は図１に示した縫合装置を側面から見たもので、（Ａ）は図１の２Ａ−２Ａ線に沿った断面図、（Ｂ）は部分拡大図；
図３は図２（Ｂ）の３−３線に沿った断面図；
図４はトグルホイールの斜視図；
図５はトグルホイールを動かすためのカムレバーの斜視図；
図６は図１に示した縫合装置を双方のアームを閉じた状態で側面から見たもので、（Ａ）は側断面図、（Ｂ）は部分拡大図、（Ｃ）は部分拡大図；
図７は往復動機構が時計回り方向の初期作動状態にある縫合装置を示すもので、（Ａ）は一部断面側面図、（Ｂ）は一部断面部分拡大側面図；
図８は往復動機構がさらに作動した状態を示す縫合装置の一部断面部分拡大側面図；
図９は往復動機構がまたさらに作動した状態にある縫合装置を示すもので、（Ａ）は一部断面部分拡大側面図、（Ｂ）は部分拡大側断面図；
図１０は往復動機構が最終位置にある縫合装置を示すもので、（Ａ）は一部断面部分拡大側面図、（Ｂ）は部分拡大側断面図；
図１１はアームの先端を示すもので、（Ａ）は図９（Ｂ）における１１Ａ−１１Ａ線に沿う矢視図、（Ｂ）は図９（Ｂ）における１１Ｂ−１１Ｂ線に沿う矢視図；
図１２はアームの先端を示すもので、（Ａ）は図１０（Ｂ）における１２Ａ−１２Ａ線に沿う矢視図、（Ｂ）は図１０（Ｂ）における１２Ｂ−１２Ｂ線に沿う矢視図；
図１３は外科用針が対向側のアームにある場合の外科用小管縫合装置を示す一部断面側面図；
図１４は反対方向（反時計回り方向）の初期作動状態にある往復動機構を一部断面で示す部分拡大側面図；
図１５は図１４に続く作動状態にある往復動機構の一部断面部分拡大側面図;
図１６は端々縫合される一対の管組織の切断部を、拡大されて制限された視野内で見た斜視図；
図１７は縫合の準備段階として外転された双方の管の端部を、拡大されて制限された視野内で見た斜視図；
図１８は図１に示した外科用縫合装置の先端部、及び縫合の直前段階にあって外転された一対の管を示す側面図；
図１９は外科用針により管組織の切断部の外転縁に孔を開けるところを外科用縫合装置の先端部とともに示す側面図；
図２０は、外科用針が対向側のアームに渡されて、縫合糸が小管の外転縁に引き通された状態を外科用縫合装置の先端部とともに示す側面図；
図２１は外科用針が第一のアームに戻された状態にある外科用縫合装置の先端部を縫合部の一部とともに示す側面図；
図２２は、両アームが小管の外転縁近傍で再度閉じられて外転端に穴を開け次の縫い目を形成する状態を示す側面図；
図２３は双方の小管が縫合されて端々吻合が形成された状態を示す側面図；
図２４は図２３のＩ−Ｉ線に沿う矢視図；
図２５は他の実施形態による縫合装置の先端部及びそこに取り付けられた針係止部材の形状を示したもので、（Ａ）は針未係止状態を示す拡大図、（Ｂ）は針係止状態を示す拡大図；
図２６は他の実施形態による先端部及びそこに取り付けられた針係止部材の形状を示したもので、（Ａ）は針未係止状態を示す拡大図、（Ｂ）は針係止状態を拡大図；
図２７は別の実施形態による先端部、及び、少なくとも部分的に貫通した孔を有した縫合針を取り扱えるようにそこに取り付けられた針係止部材の形状を示したもので、（Ａ）は針未係止状態を示す拡大図、（Ｂ）は針係止状態を示す拡大図、（Ｃ）は少なくとも部分貫通孔を有した双頭縫合針の側面図；
図２８はさらに別の実施形態による先端部及び係止部材の配置を示したもので、（Ａ）は針未係止状態の拡大図、（Ｂ）は針係止状態の拡大図；
図２９は外科用針に取り付けられた縫合糸の取扱を容易にするため溝が形成された別の縫合装置の端部を示す拡大斜視図；
図３０は別の実施形態による先端部、及び外科用針の装着を容易にするよう構成された針係止部材の形状を示すもので、（Ａ）は針未係止状態の拡大図、（Ｂ）は針係止状態の拡大図；
図３１は別の実施形態による簡易装着型の端部及び針係止部材の形状を示すもので、（Ａ）は針未係止状の拡大図、（Ｂ）は針係止状態の拡大図；
図３２はさらに別の実施形態による簡易装着型の端部及び針係止部材の形状を示すもので、（Ａ）は針未係止状の拡大図、（Ｂ）は針係止状態の拡大図；である。
【００１１】
図１は、特に管組織の切断部（あるいは切開部）又は管の縫い合わせを容易にするのに適した管縫合装置１０を示している。該装置１０は、特に、例えば縫合糸１４の如き所定の長さの縫合糸が取り付けられた例えば外科用針１２の如き小さい外科用針を、縫合操作のあらゆる段階にわたって正確な制御を維持しつつ管組織の切断部に繰り返し刺し通すように設計されている。
【００１２】
該装置１０は、概略すれば、下方の第二のアーム１８に可動状態に接続された上方の第一のアーム１６を有して成る。これらアーム１６，１８は、互いに近接及び離間する方向に可動であり、これにより、下記に詳細に説明する如く、針１２を両者間において繰り返し受け渡すことができるようになっている。該装置１０は例えばおよそ７インチ程度の長さであるのが好ましい。該装置１０は、特に小管手術に適するように約０.１〜０.５インチの長さで、一万分の１インチから０.０２５インチの径を有した外科用針１２を扱うのに好適となるよう構成されている。針によって管に開けられた穿孔と縫合糸との間から流体が漏れないようにするため、前記外科用針の径と前記縫合糸の径とは略等しいことが好ましい。
【００１３】
ここでの「上方」及び「下方」の用語は、図１における装置の向きについて言っているに過ぎない。従って、その向きが変われば、これらの部材の呼び方も変わることに留意されたい。
【００１４】
通常では、外科用縫合装置は初めに開位置（開状態）にしておくことが、人間工学的にも作業をする上でも有利である。従って、本実施の形態では、第一および第二（すなちわ、図１では上方および下方）のアーム１６，１８の基端部２２，２４にそれぞれ取り付けられたバネ２０が設けられている。バネ２０が第一および第二のアーム１６，１８のそれぞれの先端部２６，２８が離れるように付勢しており、アーム１６及び１８の管組織の切断部周りへの位置決めが容易となっている。また、このバネ２０は、アーム１６，１８が開く際、前記組織の切断部に通された縫合糸１４を引く操作を助けるものでもある。
【００１５】
該装置１０はさらに、前記アーム１６，１８の各先端部２６，２８の何れかに針１２を固定するための保持構造を備えている。該保持構造により、両アームが閉じられているときに、初めに一方のアーム内に保持されていた外科用針１２が、続いて、対向した他方のアームに渡されるものとなる。該装置１０を一方の手で容易に使用できるようにカム作動レバー３０が設けられ、両アームが閉じた状態で、前記保持構造を自動的に作動させる。カム作動レバー３０は、アーム１６の上に形成された延長アーム３２に取り付けられている。延長アーム３２は、アーム１６，１８がバネ２０の付勢力に抗して閉じられるより前に前記カム作動レバー３０が押し下げられることのないように十分な剛性を有している。従って、アーム１６，１８が閉じた後に、アーム１６，１８に押圧力を連続してかけることによりカム作動レバー３０が押し下げられて前記保持機構が自動的に作動し、以下にさらに詳しく説明する如く、針１２が一方のアームから開放され、他方のアームに移し替えられる。
【００１６】
図２を参照すれば、針１２をアーム１６，１８内に保持又は固定するために、アーム１６，１８内で長手方向に可動とされた一対の針係止部材すなわちクランプブレード３４，３６が設けられている。第一の針係止ブレード３４は第一のアーム１６内に摺動可能に設けられており、第二の針係止部材すなわち第二のブレード３６は第二のアーム１８内に摺動可能に設けられている。これら第一および第二のブレード３４，３６の各先端部３８，４０はそれぞれ、針１２の一端を係止し、かつ該針１２を第一および第二のアーム１６，１８に形成された凹所８８，９０内にしっかりと保持するように、その寸法及び形状が設定されている。外科用針１２の先端へのダメージを避けるため、かつ縫合糸保持端がアーム１８から滑り落ちないようにするため、アームの各先端部２６，２８内には一対のプレート９２，９４が設けられている。各プレートはそれぞれ、外科用針１２がアーム１６，１８内の凹所８８，９０から完全に滑り落ちることのないよう縮径凹所９６，９８を備えている。両アーム１６，１８には、それらの先端部３８，４０から往復動機構４２まで長手方向に延びたチャンネル１００，１０２が形成されている。これらチャンネル１００，１０２は凹所８８，９０を横切っており、前記第一および第二のブレード３４，３６が、各凹所に配された外科用針１２の端部と係合できるようになっている。
【００１７】
図２（Ａ）に示すように、針係止部材４４，４６にはそれぞれ、僅かに弓なり状となった湾曲部４４ａ，４４ｂが形成されており、これにより異なる針径に対して自動的に調整されるようになってる。すなわち、針が把持されると、前記針係止部材が、所定位置において、該針に付与されているバネ力が針径に係わらず一定となるように締まる。針係止部材は、針を把持しているときには必ず同じ部分が強めに締められように、針が把持されていないときでも僅かに締まるようになっている。
【００１８】
ブレード係止構造としてはＶ字切欠き１０６，１０８を有していれば好ましいが、当業者であれば、針１２をアーム１６，１８内にしっかりと保持するのに、先端部３８，４０の形状をその他色々な形状とすることが可能であることを理解されるであろう。従って、何れのアーム１６，１８にしても、あるいは針１２自体にしても、ブレード３４，３６に形成された対応する係合構造を受け入れることのできるものであれば、別の構造とすること（例えば針１２の端部に切欠きまたは貫通孔を形成する等）が可能である。従って、例えば両端間に縫合糸取付け構造を持った双頭外科用針 (double-pointed surgical needle) 、すなわち外科用切開部材を用いることも可能である。外科用切開部材の典型例は、１９９４年６月１６日付出願の米国特許出願 No. 08/260,579 及び、SURGICAL INCISION MEMBER と題されたものがあり、本明細書にはこれらの開示内容を含むものとする。
【００１９】
針１２を双方のアーム１６，１８間で繰り返し渡すために、第一および第二の係止部材３４，３６の基端部４４，４６の近傍に往復動機構４２が取り付けられている。この往復動機構４２は、係止部材３４，３６をそれぞれアーム１６，１８内で交互に進退させ、それによりそれら係止部材３４，３６を針１２に交互に係合させる。この往復動機構４２は、第一及び第二の係止部材３４，３６と共に、アーム１６，１８内に形成された針受け凹所内に針１２を交互に確実に保持するための上記保持構造を提供するものである。
【００２０】
アーム１６，１８が完全に閉じられている場合には、カム作動レバー３０が往復動機構４２を自動的に駆動する。アーム１６，１８が閉じる前にアーム１６，１８から外科用針が不用意に開放されるのを防ぐため、下方のアーム１８の凹部５０内には可撓的に取り付けられたロック部材４８が設けられている。このロック部材４８は往復動機構４２と係止して、アーム１６，１８が開位置にあるとき、すなわちカム作動レバー３０が押し込まれていないときに該往復動機構が動くこと、すなわち針１２が外れるのを防止することができる。
【００２１】
上記より解かるように、該装置１０は、特に拡大または制限された視野状況において小さい管または管組織の切断部を縫合するのに適している。さらに、管の縫合には、通常１インチの一万分の一オーダーの径の極めて小さい針１２及び縫合糸１４が必要である。よって、位置決め、及び、閉状態での針１２のアーム１６，１８間の移動を正確に行うために、第一のアーム１６には一対の位置決めピン５２が設けられている。アーム１６がアーム１８に向けて閉じられると、ピン５２は下方のアーム１８に形成されたガイド孔５４内に入り込む。この、位置決めピン５２とガイド孔５４と係合は精密なものであり、これにより針１２が、アーム１６，１８の先端部２６，２８に形成された前記凹所８８，９０内に正確に入り込めるようになっている。また、管組織の切断部が圧迫されたり圧壊されたりすることがないように、スペーサブロック５６が設けられており、該スペーサブロックが、アーム１６，１８が閉じられた際にその先端部２６，２８が接触しないようにしている。ただし、該スペーサプロック５６は、針１２の両アーム１６，１８間での受け渡しは可能とすべく、両アーム１６，１８を十分に近接させるものである。
【００２２】
図２（Ｂ）を参照して説明すれば、前記往復動機構は、アーム１６に形成された孔５８を介して延びたカム作動レバー３０によって駆動される。往復動機構４２は好ましくは回転可能とされたトグルホイール６０を備えている。このトグルホイールは、アーム１６，１８が完全に閉じられた状態においてカム作動レバー３０の押し込み操作に対応して、すなわち前記延長アーム３２のアーム１６に対する動きに応じて、前記針係止部材３４，３６を交互に進退させるためのものである。トグルホイール６０はまた、前記ロック部材と係止する凹部（後述）を形成している。
【００２３】
以上より説明したとおり、第一及び第二のアーム１６，１８は互いに可動状態に接続される。両者は、必要あらばピンセットの如く作動するように構成することもできる。図３に示すように、アーム１６，１８には、アーム１６，１８を互いに回動可能に接続するための交差回動ピン６２が設けられている。この回動ピン６２は、アーム１６，１８の基端部２２，２４と先端部２６，２８の間の位置においてアーム１６，１８に接続されている。従って、アーム１６，１８の、回動ピン６２から離れた先端部２６，２８に近い部分を押し付ければバネ２０が伸び、アーム１６，１８を開放するばバネ２０によって先端部２６，２８が離間して開くことになる。
【００２４】
回動ピン６２の位置、すなわちアーム１６，１８の回動位置は、該装置１０の両端部の間が好ましいが、回動ピン６２を基端部２２，２４に設けることも可能である。また、アーム１６，１８の動きは回動によることが好ましいが、両者の平行移動によることも考えられる。アーム１６，１８の平行移動は、直線的な外科用針を使用する場合に特に望ましく、種々の手法で実現可能である。例えば、アーム１６，１８どうしを、両アームの長手軸と直交する方向に動くように取り付けることが可能である。あるいは、アーム１６，１８を、それらの長手軸と平行に移動又は摺動して双方の先端部が進退するように取り付けることも可能である。アーム１６，１８を互いに摺動させる場合には、外科用針あるいは外科用切開部材の両アーム間での受け渡しを容易にするために、両アームの先端面を針保持用凹所に対して開くのが好ましい。
【００２５】
また、ピン６２は、該ピン６２周りを時計回り又は反時計回りに回動可能とされたトグルホイール６０の回動点としても機能している。好ましくは、針係止部材３４，３６の基端部４４，４６がそれぞれピン６４，６６によってトグルホイール６０に取り付けられている（図３参照）。これにより、回動ピン６２上のトグルホイール６０が回動ピン６２周りを回転すると、針係止部材３４，３６がそれぞれアーム１６，１８内で交互に進退するようになっている。
【００２６】
図２（Ａ）及び図４に示すように、トグルホイール６０には、第一の棚部７０を有した第一の傾斜カム面６８が形成されており、これにより、このカム面がカム作動レバー３０と係合した際にトグルホイール６０を時計回りに回動させて、針係止部材３４を先端部方向に前進させかつ針係止部材３６を基端部方向に後退させる。同様に、第二の傾斜カム面７２および第二の棚部７４が形成されており、これらがカム作動レバー３０と係合した際に、トグルホイール６０が反時計回りに回転して針係止部材３６を前進させる一方で針係止部材３４を後退させる。
【００２７】
トグルホイール６０には、第一及び第二の針係止部材３４，３６がそれぞれ最も先端側に前進した位置に対応してロック用ノッチ（切欠き）７６，７８が形成されている。従って、前記ロック部材４８が該ロック用ノッチ７８と係合する位置までトグルホイール６０が反時計回りに回転すると、係止部材３６が前進位置又は後退位置でロックされ、針１２をアーム１８内にしっかりと保持する。同様に、ロック部材４８がロック用ノッチ７６と係合する位置までトグルホイール６０が時計回りに回転すると、針係止部材３４が前進位置又は後退位置でロックされ、針１２をアーム１６内に保持する。このように、ロック部材４８は、ロック用ノッチ７６，７８と協働して、アーム１６，１８が完全に閉じられていないときに針１２が開放されて移動するのを防止する。さらに、トグルホイール６０には、ロック部材４８がロック用ノッチ７６，７８内に入り込むのを助けるためのノックオフピン８０が設けられている。このノックオフピンの作用については後に詳述する。
【００２８】
図２（Ｂ）及び図５に示すように、カム作動レバー３０は、トグルホイル６０をロック部材４８との係止状態から解除しかつトグルホイル６０を回転させる、といった二つの連続した機能を実行すべく設けられているものである。カム作動レバー３０は概して、好ましくは前記延長アーム３２に取り付けられた基部８２を有している。あるいは、非自動式のものでは、この基部８２が延長アーム３２と独立して動くものであってもよい。カム作動レバー３０は基部８２に取り付けられた可撓性開放脚部８４を備えている。該脚部は、ロック部材４８をロック用ノッチ７６，７８から離脱させトグルホイール６０が回転できるようにするものである。また、トグルホイール６０を回転させるために、トグル脚８６が前記傾斜カム面６８，７２および前記棚部７０，７４と係合可能となっている。
【００２９】
次に、初めの図１及び図２（Ａ）を参照して該管縫合装置１０の作用について説明する。上記説明より解かるように、該装置１０は特に、アームが完全に閉じられた状態、すなわち両アームが互いに閉じられ、かつそれに続いて延長アーム３２がアーム１６に対して閉じられた状態において、外科用針１２を両アーム１６，１８間に繰り返し自動的に受け渡すように構成されたものである。初期状態においては、アーム１６，１８の各先端部２６，２８はバネ２０により開位置となるよう付勢されている。針１２には一定の長さの縫合糸１４が取り付けられており、該針１２は、前記針係止部材３６により第二の（下方の）アーム１８の先端部２８内に位置しかつ保持されている。前記位置決めピン５２は前記ガイド孔５４から離れており、延長アーム３２は付勢されておらず、前記カム作動レバー３０を前記トグルホイール６０から離れた初期位置に保持している。針１２の両アーム１６，１８間の移動を容易にするため、好ましくは、針１２は実質上、後述する針受け凹所の何れかと、回動点すなわち該装置１０のピン６２との間の距離に等しい曲率半径を有している。このように、外科用針１２の曲率半径は、両アーム１６，１８の閉じ動作によって規定される弧と一致する。
【００３０】
図２（Ｂ）では該装置はまだ初期状態にあり、トグルホイール６０が最も反時計回り方向に位置しており、トグルホイールが回転しないようにロック部材４８がトグルホイール６０のロック用ノッチ７８と係合している。従って外科用針１２は第二の（下方の）アーム１８にロックされている。トグル６０の前記傾斜カム面６８がカム作動レバー３０の中心線ｃよりも僅かに基端側に寄っており、また図３に最も良く示されるように、前記トグル脚８６がトグルホイール６０に対して上方に離間している一方で、前記可撓性開放脚部８４がロック部材４８に対して上方に離間していることが理解されるであろう。両アーム１６，１８が開位置にある場合には、前記中心線ｃすなわち前記開放脚部８４はロック部材４８と係合する位置にはそろわない。従って、アーム１６，１８が閉じられる前にカム作動レバー３０に何等かの不用意な押し込み力が加えられても、ロック部材４８がロック用ノッチ７８から外れることはない。
【００３１】
図６（Ａ）に示すように、管縫合装置１０を作動させるため、第一及び第二のアーム１６，１８における、前記回動ピン６２の先端側部分に矢印Ｘ方向の力を与え、アーム１６，１８の顎（あご）部を近接させと、両アーム先端部２６，２８が近接して協働する位置関係に置かれる。両アーム１６，１８はバネ２０の付勢力に抗して近接するので、バネ２０は伸ばされることになる。図６（Ｂ）に最も良く示されるように、アーム１６，１８が閉じられた状態では、前記カム作動レバー３０の中心線ｃ（従って開放脚部８４の中心線）が回転してロック部材４８とそろうことになる。この位置では、延長アーム３２の相対的な剛性により、該アーム３２がアーム１６に対してまだ動かないことに留意されたい。
【００３２】
図６（Ｂ）及び図６（Ｃ）に示すように、トグルホイール６０が最も反時計回り方向に位置してロック部材４８がロック用ノッチ７８と係合（図６Ｃに示す状態のように上方のアーム１６に保持された針１２に対応して）しているときには、前記針係止ブレード３６は先端側に前進した位置にあって、該部材３６の先端４０が外科用針１２の端部と係合する。下方のアーム１４の係止部材３４は最も基端側の位置にあり、その先端３８は外科用針１２から外れている。
【００３３】
図７（Ａ）に示すように、引き続いて、上方のアーム１６の前記延長アーム３２を押し下げると、両アーム１６，１８が既に当接しているため該延長アーム３２が動く。該アーム延長部３２が動くと、前記孔５８を介してこのアーム延長部に取り付けられたカム作動レバー３０が動く。カム作動レバー３０が孔５８を介して下方に移動すると、前記開放脚部８４がロック部材４８に接触して該ロック部材を下方に移動させ、ロック用ノッチ７８との係合を解除する（図７（Ｂ）参照）。これにより、トグルホイール６０が回転可能となるよう解除される。ロック部材４８がロック用ノッチ７８との係合から外れると、カム作動レバー３０は第二の機能を実行すべく、該レバー３０の前記トグルレバー８６がトグルホイール６０の前記カム面６８及び前記棚部７０と接触して、トグルホイールを時計回り方向に回転させる。ここで解かるように、トグルレバー８６が傾斜カム面６８との係合できるのは、傾斜カム面６８の一部がカム作動レバー３０の中心線ｃよりも僅かに基端部寄りに位置されているからである。
【００３４】
図８において矢印Ｙで示すように延長部材３２をさらに押し下げると、トグルレバー８６がトグルホイール６０を時計回り方向にさらに回転させる。トグルホイール６０が時計回りの回転することにより上方の針係止部材３４は先端方向に前進し、かつ下方の針係止部材３６は基端方向に退去する。
【００３５】
ここで、カム作動レバー３０が押し込まれると、前記開放脚部８４がロック部材４８を下方に動かして該ロック部材をロック用ノッチ７８から外し、トグルホイール６０の下方に保持することに留意されたい。トグルホイール６０が完全に回転した状態ではロック部材４８が弾性力により戻ってロック用ノッチ７６内に係合できるように、前記可撓性開放脚部８４をロック部材４８から遠ざけるように動かすノックオフピン８０が設けられている。これにより、図示するように、トグルホイール６０が時計回りに回転した際に、該ノックオフピン８０が動いて開放脚部８４の下端に当接する。
【００３６】
図９（Ａ）に示すようにカム作動レバー３０が延長アーム３２によって引き続いて押されると、トグル脚８６によってトグルホイール６０が時計回り方向に回転し、これにより、ノックオフピン８０が開放脚部８４をロック部材４８から離して遠ざける。このように、トグルホイール６０が回転すると、ロック部材４８はトグルホイール６０の下方外周面１０４上に載って下方に保持される。針係止部材３４，３６はそれぞれ前進動作及び退去動作を継続する。上述しかつ図９（Ｂ）に示したように、アーム１６，１８の顎部が閉じられているときには、外科用針１２は先端部２６，２９におけるそれぞれの凹所８８，９０内に保持される。外科用針１２は、凹所縮径部９６，９８を有したプレート９２，９４によって凹所８８，９０から滑り落ちるのを防止されている。従って、一方の針係止部材３４を前進させ他方の針係止部材３６を退去させるトグルホイール６０の回転状態では、針１２が何れの針係止部材とも係合していなくとも針１２はアーム１６，１８の顎部内でしっかりと挟まれる。この針係止部材３４，３６の非係止状態は、Ｖ字状カム端１０６，１０８がそれぞれ針１２に接触していない状態として図１１（Ａ）及び図１１（Ｂ）に図示してある。
【００３７】
図１０（Ａ）に示すように、延長アーム３２及びそれに取り付けられたカム作動レバー３０をさらに押し込むと、トグルホイール６０が時計回りに回って最終位置まで回りきることが理解されるであろう。上記したように、開放脚部８４は、ノックオフピン８０によってロック部材４８からは外れた位置に保持される。従って、トグルホイール６０が最終位置に回転すると、ロック用ノッチ７６はロック部材４８の真上に位置し、弾性付勢されたこのロック部材４８が孔５０内で上方に移動して該ロック用ノッチ７６に係止する。よって、トグルホイール６０はさらに回転することのないようにロックされる。この時点でカム作動レバー３０をさらにいくら押し込んでもトグルホイール６０がさらに回転することはない。
【００３８】
図１０（Ｂ）に示すように、トグルホイール６０が時計回り方向にあるときには、上方の針係止部材３４は最も先端寄りの位置に、また下方の針係止部材３６は最も基端寄りの位置となる。従って、針係止部材３４の先端３８が外科用針１２の端部と係合する一方、針係止部材３６の先端４０は針１２から離れたままとなる。その模様は図１２（Ａ）及び図１２（Ｂ）に示してあり、針係止部材３４のＶ字形カム端１０６が外科用針１２をそれぞれの凹所８８内にカム作用により移動、すなわちくさび留めし、針係止部材３６のＶ字形カム端１０８は針１２から離れた最も基端よりの位置に移動する。
【００３９】
従って、このように、外科用針１２は凹所８８，９０内に収納されたままでアーム１８からアーム１６に移動され、これにより、外れたり抜け落ちたりすることなくアーム１８からアーム１６への針１２の移動がなされる。
【００４０】
図１３に示すように、続いて両アーム１６，１８への凹圧力が解除されると、バネ２０の付勢力により両アーム１６，１８が開く。また、カム作動レバー３０の二つのアーム８４，８６もそれぞれ開始位置に弾性復帰する。針係止部材３６は針１２から離れ、針係止部材３４が針１２と係合して該針をアーム１６の凹所８８内に確実に保持する。ロック部材４８がロック用ノッチ７６と係合して、トグルホイール６０を回転しないように固定し、針１２をアーム１６内に固定する。ここでカム作動レバー３０を押しても、開放レバー８４がロック部材４８と対応しておらず、ロック部材を外してトグルホイール６０が回転できるようにすることはできないため、針１２が外れることはないことに留意すべきである。
【００４１】
図１３ないし図１５に示すように、上記手順の逆を行うため、すなわち外科用針をアーム１６からアーム１８に渡し戻すため、アーム１６，１８が再度閉じられ、そこでさらにアーム１６を押し続けると延長アーム３２が移動し、カム作動レバー３０を孔５８を介して移動させる。この段階で、トグルホイール６０のカム面７２の少なくとも一部は、カム作動レバー３０の中心線ｃよりも（すなわちトグル脚８６よりも）先端側に位置している。従って、押し込まれることにより、カム作動レバー３０が孔５８を介して動いて再度二つの連続した機能を果たす。すなわち、開放脚部８４をロック部材４８に接触させて該ロック部材をロック用ノッチ７６から外し、かつ、トグル脚８６を傾斜カム面７２及び棚部７４に接触させてトグルホイール６０を反統計回り方向に回転させる。
【００４２】
トグル６０が反時計回り方向に回転することにより、上記同様に、針係止部材３４が退去して針１２から離れる一方、針係止部材３６が針と係合する。ノックオフピン８０が再度開放脚部８４をロック部材４８より遠ざける（図１５参照）。よって、トグルホイール６０が反統計方向に完全に回り切った状態では、ロック部材４８が再度ロック用ノッチ７８に係合し、これによりトグルホイール６０を固定して、戻された針１２をアーム１８内の凹所９０内に再度固定する。その後アーム１６，１８は開放されて開くことになる。よって、該装置、往復動機構、及び針１２は、図２（Ａ）及び図２（Ｂ）に示した初期状態に復帰する。このように、外科用針１２は、アーム１６，１８が閉じられたときに両アーム１６，１８間を繰り返し行き来することができる。従って、外科用針１２は、縫合作業の全体にわたって総合的かつ正確に制御され、針１２が外れる恐れがない。上記のことから、アーム１８，１６を押し付けてアームを閉じることにより針係止部材３４，３６を自動的に往復させて針１２を各アーム１６，１８に移動制御することが理解されるであろう。従って使用者は単に両アーム１６，１８を同時に握るだけで、それ以外の何等の操作を施すことなく、針１２はアーム１８からアーム１６に自動的に移動する。
【００４３】
図１６ないし図２４は、該管縫合装置１０の、一対の管組織の切断部を着ける場合の使用状態を示したものである。該装置１０の作用は、端々吻合 (end-to-end anastomosis) 処置される小管の縫合開口すなわち自由端部を例にして最も良く説明される。ただし、当業者であれば、装置１０は、同様な処置及び操作を応用して、管組織の切断部の開口端を第二の管組織の側方に形成された切開部に縫合して端側吻合 (end to side anastomosis) を形成すること、あるいは、複数の管組織の切断部の側部どうしを縫合して側側吻合 (side to side anastomosis) を形成することも容易に可能であることが理解されるであろう。
【００４４】
吻合処置に関する説明を簡潔にするため、以下、該管縫合装置１０の操作を、アーム１６，１８、及びその各端部２６，２８、及び針１２及び取り付けられた縫合糸１４のみに関して説明するものとする。ただし、例えば両アーム１６，１８間に外科用針１２を受け渡す等の該管縫合装置１０の作動は上記同様になされるものである。
【００４５】
図１６は、一対の管組織部すなわち管Ａ及び管Ｂの切断部を示している。既に述べたように、管組織の切断部の縫合は通常、拡大された状態すなわち視野の制限された状態にて実施される。よって、下記の操作は、制限されたスペース、すなわち円Ｄで示す視野内で行われるものとして説明する。管組織の切断部Ａ，Ｂの端部Ａ１，Ｂ１は、周知方法により清浄かつ完全な組織が互いに縫合されるよう準備される。
【００４６】
外科用針１２を容易に差し込むことのできる表面を形成するために、好ましくは前記端部Ａ１，Ｂ１を周知方法により外転、つまり拡開し、双方の管Ａ，Ｂにそれぞれ外転縁Ａ２，Ｂ２を形成する（図１７）。
【００４７】
管Ａ，Ｂを近付けて、外転縁Ａ２，Ｂ２を図１８に示すように当接状態にする。この点でアーム１６，１８の先端部２６，２８をそれぞれ前記外転縁Ａ２，Ｂ２近傍で操作することによって該管縫合装置１０が上記視野内に入る。図示されるように、好ましくは、アーム１８内に収納された針１２及びそれに取り付けられた所定長の縫合材料１４を前記外転縁Ａ２，Ｂ２の一方側に近接させ、また、アーム１６の先端部２６をその他方側に近接させて位置させる。
【００４８】
アーム１６，１８を互いに閉じて針１２を外転縁Ａ２，Ｂ２に突き通し、先端部２６を対向したアーム１６内に進入させる（図１９）。この点で、該管縫合装置１０を連続的に操作すると、針１２は上述した如くアーム１８からアーム１６に自動的に移るように制御される。さらに、アーム１６，１８が外転縁Ａ２，Ｂ２の近くで閉じられると、前記スペーサブロック５６（図１及び図２Ａに関連して既述）によりアーム１６，１８間の作動間隙Ｅが維持され、従って管組織の切断部Ａ，Ｂの外転縁Ａ２，Ｂ２が圧縮され、圧壊するおそれがない。
【００４９】
アーム１６，１８が開いた状態（図２０）では、針１２はアーム１６内に保持され、管Ａ，Ｂの前記外転縁Ａ２，Ｂ２を通して縫合糸１４の一部と共に引かれる。このように管Ａ，Ｂは穿孔されつつ縫い目が形成される。
【００５０】
図２１に示すように、所定長の縫合糸１４が双方の外転縁Ａ２，Ｂ２に少なくとも部分的に引き通されたなら、縫合糸１４を外転縁Ａ２，Ｂ２に縛り付けて一つの縫い目を形成することができる。
【００５１】
あるいはまた、アーム１６，１８を上記したように近付けて外科用針１２をアーム１６からアーム１８に渡し返して該針１２を元の位置に戻し、管組織に再度刺し通して次の縫い目を形成することもできる。その後、針１２がアーム１８の顎部内にしっかりと固定された状態でアーム１６，１８の顎部を開け、針を再び外転縁Ａ２，Ｂ２の反対側に位置させて次の縫い目を形成することも可能である（図２２）。従って、上記操作を連続的に繰り返すことにより、図２３及び図２４に最も良く示すように、外転縁Ａ２，Ｂ２を貫通した一連の重畳した縫い目が形成される。
【００５２】
従って、上記操作法により、第一のアーム内に保持された外科用針を縫合すべき管組織の切断部に近接位置させ、第一のアームを第二のアームに近接するように閉じることにより、管組織の切開部に所定長の縫合材料を通すこと、すなわち縫合することができる。それに続いて針は第二のアームに移され、両アームが開かれて、針および縫合材料が組織の切断部に縫い通される。この操作が繰り返されて、例えば側々吻合又は端々吻合において、単一の管組織の切断部に一連の縫い目が形成され、あるいは二つ又はそれ以上の管組織の切断部が接合される。上述の操作は両アームの閉塞動作により自動的に生じ、針を一方のアームから他方のアームに移動させるのに操作者の方でさらなる操作をする必要はない。
【００５３】
上記説明では、該装置の１０の一回の閉塞動作でもって二つの管組織の切断部に孔を開ける場合を説明したが、針１２により一回で一つの管組織の切断部に孔を開けて縫合材料１４を通すことも当業者にとっては良く知られていることである。従って、極めてデリケートな処置においては、所定長の縫合材料１４の一部を一回につき一つの管組織切断部のみに挿入し、一対の管組織の切断部を縫い合わせることも可能である。
【００５４】
外科用縫合装置１０、その操作方法、および管組織の縫合のための種々の方法についての上記記載は、管縫合装置１０に係る好ましい実施の形態及び方法も最も良く説明している。ただし、上述したように、双頭外科用針、すなわち１９９４年６月１６日付け出願の米国特許出願 No. 08/260,579 に記載されている如き外科用切開部材も利用可能である。この切開部材は、次の縫い目を形成するのに単一頭の外科用針 (single pointed surgical needle) を再通過させ対向するアームに縫い戻すことなく両方向の縫合を可能とするものである。さらに、当業者には理解されるであろうが、管組織の切断部の縫合を容易ならしめるために、アーム先端形状、さらにブレードすなわち針係止部材の形状をその他の形状とすることも可能である。下記に説明するその他のアーム及び針係止部材の形状及び実施の形態も管組織縫合装置１０に用いて好適なものであり、よって、以下では単にそれらアーム、及び外科用針１２と接触するブレードについてのみ説明する。
【００５５】
図２５（Ａ）及び図２５（Ｂ）は、アーム先端部１１０及び針係止部材１１２のその他の実施の形態を示している。アーム先端部１１０は外科用針１２を受け入れるための広い開口１１４を有している。この開口１１４は、針１２をたわませる可能性のある強く弾力性のある組織の切断部に針１２を押し通す場合に、針１２の両アーム間における移動および位置決めを助けるものとなる。開口１１４は先端にＶ字形ノッチ１１６を備えており、該ノッチは針係止部材１１２のＶ字形カム端１１８と協働する。従って、図２５（Ｂ）に示すよう、係止部材１１２が最も先端寄りに位置した状態では、Ｖ字形カム端１１８が開口１１４内で外科用針１２をノッチ１１６に対してカム移動させ、開口中に該針１２を保持する。上述したように、外科用針１２は、側面を平滑にされているか、あるいは針係止部材１１２のＶ字形カム端１１８の少なくとも一部を受け入れるように端部近傍に切欠きが形成されている。
【００５６】
図２６（Ａ）及び図２６（Ｂ）は、アーム１２０及びブレードすなわち針係止部材１２２の形状の別の実施の形態を示したもので、この実施形態では、外科用針１２をアーム１２０に対して確実に保持するのに、係止部材１２２を先端側へ前進させるのではなく基端側へ退去するものとなっている。アーム１２０の先端にはＶ字形係合ノッチ１２４が形成されており、一方、針係止部材１２２は外科用針１２を受け取るための長溝１２６を備えている。図２６（Ｂ）に示すように、ブレード１２２が退去すると長溝１２６内に配された針１２がアーム１２０のノッチ１２４に対してカム移動され、しっかりと保持される。
【００５７】
図２７（Ａ）及び図２７（Ｂ）は、アーム先端１２８と針係止部材１３０の形状に係る別の実施の形態を示したもので、この実施の形態によるものは、Ｕ字形，半円，あるいは略中空の外科用針１３２を固定するのに最適であり、好ましくは、該針を貫通する係合孔１３４状に形成された係合構造を有している。前記外科用針１３２（図２７（Ｃ））は、前記孔１３４に形成された適当な係合構造を有していれば、種々の断面形状を有するものであってよい。アーム１２８には開口１３４が形成されており、前記針係止部材１３０は、好ましくは前記針１３２の内部形状に対応した突出端１３８を有している。また、針係止部材１３０の突出端１３８にはさらに尖端すなわちフィンガ１４０が形成されており、該尖端すなわちフィンガは特に前記針１３２の前記係合構造すなわち孔１３４と係合するように構成されている。従って、針１３２が凹所１３６内にある状態では、針係止部材１３０が先端側へ前進すると、前記フィンガ１４０が前記係合孔１３４と係合して針１３２をアーム１２８内にしっかりと保持する。
【００５８】
図２８（Ａ）及び図２８（Ｂ）は、また別の実施の形態によるアーム１４２及び針係止部材１４４を示したものでこの実施の形態は、より容易な装着を可能とする丸い、あるいは好ましくは断面の中実な外科用針１２を保持するためのものである。アーム１４２は好ましくは、前方傾斜端１４６、及び、該前方傾斜端１４６の基端側位置した溝すなわち溝孔１４８を有している。針係止部材１４４もまた、前方傾斜端１５０、及び該傾斜端１５０の最も先端側の部分に形成されたカム部材１５２を備えている。従って、図２８（Ｂ）に示すように針係止部材１４４が退去した状態では、カム部材１５２が前記傾斜端１４６を通過して針１２を前記凹溝１４８内に押し付け、それにより該針１２をアーム１４２内にしっかりと固定する。
【００５９】
上記説明では、アーム及び針係止部材の形状を、針１２が垂直に挿入できる閉じた凹所または孔を有しているものとして説明したが、端部の開口されたもの、すなわち装着容易な構造のものであってもよく、その場合には針１２をアーム構造体に対して垂直ではなく平行に挿入することができる。すなわち、まず図３０（Ａ），３０（Ｂ）に示す実施の形態から説明すれば、アーム１６６には好ましくはＶ字形針ガイド用凹所１６８が形成されており、該針ガイド用凹所のＶ字の頂部には比較的丸いすなわち円形の針受け部１７０が設けられている。従って、アーム１６６が針１２に向かって先端方向に前進することにより、針１２を凹所１６０内にアーム１６６の先端から（すなわち該針１２を閉塞された凹所に装着する場合のようにアーム１６６と垂直にではなく、該針の長軸と平行に）装着することができる。針係止部材１７２は傾斜面１７４を有しており、該形斜面が、図３０（Ｂ）に示す如く前進したときに針１２に対してカム移動し、該針１２をアーム１６６の環状凹所１７０内にしっかりと保持する。上記した簡易装填型のアームの端部形状及び針形合部材の形状は、針の長軸に対して垂直に（すなわち互いに平行に）スライドするもの、あるいは針の長軸と平行に（すなわち互いに垂直に）移動するものの何れにせよ、特にアームの顎部が平行移動する構造のものに適しているということが特に理解されるべきである。
【００６０】
図３１（Ａ），３１（Ｂ）は、簡易装填型によるアーム先端形状及び針係止部材形状のさらに別の実施の形態を示している。アーム１７６は好ましくは単一の、先端方向に延出したフック１８０を備え、該フックは、針ガイド用前方傾斜面１８２、及び、該針ガイド用前方傾斜面１８２の先端側に形成された小半円形凹所１８４を備えている。さらに、針係止部材１７８を受け入れるためのチャンネル１８６が一対の傾斜カム面１８８，１９０を備えている。針係止部材１７８は先端側に延出したカムフィンガ１９２を備えている。このカムフィンガは犬足状接続部１９４を有し、この接続部が前記フィンが１９２を針係止部材１７８の残りの部分に接続している。前記犬足状接続部１９４は、アーム１７６における前記カム端１８８，１９０と協働するカム端１９６，１９８を有している。図３１（Ｂ）に最も良く示されるように、針係止部材１７８が退去すると、カム端１９６がカム端１８８に当接してフィンガ１９２を側方に移動させ、針１２をアーム１７６の凹所１８４内にしっかりと保持する。同様に、針係止部材１７８が先端部方向に前進すると、アーム１７６のカム端１９０がカム端１９８に当接してフィンガ１９２を前記凹所１８４から離れるように再度側方に移動させ、それにより針１２をアーム１７６から開放する。
【００６１】
図３２（Ａ），３２（Ｂ）は、簡易装填型アーム先端形状及び針係止部材形状のさらに別の実施の形態を示している。アーム２００は好ましくは外科用針１２を受け入れるための長溝孔すなわち凹所２０４で終端したＶ字形の針ガイド用先端部２０２を有している。好ましくは、アーム２００は、傾斜端２０８，２１０を有した細長い針係止部材用チャンネル２０６を備えている。針係止部材２１２は図３１（Ａ），３１（Ｂ）による実施の形態において説明したものに類似した犬足状端部２１４を備え、かつ最先端にはフックまたは凹所端２１６を含んでいる。従って、図３２（Ｂ）に示す如く針係止部材２１２が基端側に退去すると、針係止部材２１２のカム端２１８がアーム２００の前記傾斜端２０８と係合して針係止部材２１２を側方に移動させ、これにより針１２が、曲がったフィンガすなわちフック２１５により凹所２０４内に捕捉される。同様に、針係止部材２１２が前記チャンネル２０６内で先端側に前進すると、針係止部材２１２のカム端２２０がアーム２００の傾斜端２１０と係合して前記フック２１６が凹所２０４から離れ、これにより針１２がアーム２００から開放される。
【００６２】
図２９は、特に単一尖端を有し、該尖端の反対側から延びた所定長の縫合材料１４を備えた外科用針１２を用いる場合に好適なアーム１５４を示している。アーム１５４は、前記アーム１６に類似した対向アームから針１２を受ける際に縫合材料１４がその針の移動と干渉しないように縫合材料１４を操作するよう構成されている。好ましくは、アーム１５４は内方傾斜突出部１５６を備え、この内方傾斜突出部にはそれを貫通する凹所１５８が形成されている。この凹所１５８の一端面には溝孔１６０が形成されており、該溝孔を縫合材料１４が通過できるようになっている。この突出部１５６にはさらに、縫合材料１４が前記溝孔１６０を介して凹所１５８に入り込む際のガイドとなる面取り面すなわち偏向面１６２が形成されている。従って、外科用針１２がアーム１５４に通される際に前記縫合材料がからむことが防止さる。さらに、前記偏向面１６２は、前記縫合材料を溝孔１６０を介してガイドすることにより、溝孔１６４を介して延出する針係止部材から縫合材料を離しておくことができる。前記溝孔をアーム１５４に形成することにより、針係止部材の先端が外科用針１２に当接して針を凹所１５８内に保持するか、あるいは、針係止部材の側端が針１２の端縁に対してカム移動して針を凹所１５８内に保持する。
【００６３】
上述した実施の形態については種々の改良が可能であることが理解されるであろう。例えば、上記したように、アーム軸に沿ったあるいはアーム軸と垂直となる平行移動も考えられるし、直線状及び／又は外科用切開部材の如き双頭外科用針も考えられる。また、外科用針を単一のアーム内で把持するその他の方法も考えられる。さらに、当業者であれば、外科用針の一方のアームから他方のアームへの自動的な移動を容易にすべく、カム機構すなわち往復動機構に対して変更を施すことも可能であろう。従って、上記説明はそれらに限定されたものとして解釈されるべきものではなく、好ましい実施の形態としての単なる例示に過ぎないものである。当業者であれば、クレーム記載の技術範囲及び精神の範囲内でその他の変更を施すことが可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【図１】双方のアームが開位置にあって、一方のアーム内に外科用縫合針を保持した状態にある外科用小管縫合装置を示す斜視図である。
【図２】図１に示した縫合装置を側面から見たもので、（Ａ）は図１の２Ａ−２Ａ線に沿った断面図、（Ｂ）は部分拡大図である。
【図３】図２（Ｂ）の３−３線に沿った断面図である。
【図４】トグルホイールの斜視図である。
【図５】トグルホイールを動かすためのカムレバーの斜視図である。
【図６】図１に示した縫合装置を双方のアームを閉じた状態で側面から見たもので、（Ａ）は側断面図、（Ｂ）は部分拡大図、（Ｃ）は部分拡大図である。
【図７】往復動機構が時計回り方向の初期作動状態にある縫合装置を示すもので、（Ａ）は一部断面側面図、（Ｂ）は一部断面部分拡大側面図である。
【図８】往復動機構がさらに作動した状態を示す縫合装置の一部断面部分拡大側面図である。
【図９】往復動機構がまたさらに作動した状態にある縫合装置を示すもので、（Ａ）は一部断面部分拡大側面図、（Ｂ）は部分拡大側断面図である。
【図１０】往復動機構が最終位置にある縫合装置を示すもので、（Ａ）は一部断面部分拡大側面図、（Ｂ）は部分拡大側断面図である。
【図１１】アームの先端を示すもので、（Ａ）は図９（Ｂ）における１１Ａ−１１Ａ線に沿う矢視図、（Ｂ）は図９（Ｂ）における１１Ｂ−１１Ｂ線に沿う矢視図である。
【図１２】アームの先端を示すもので、（Ａ）は図１０（Ｂ）における１２Ａ−１２Ａ線に沿う矢視図、（Ｂ）は図１０（Ｂ）における１２Ｂ−１２Ｂ線に沿う矢視図である。
【図１３】外科用針が対向側のアームにある場合の外科用小管縫合装置を示す一部断面側面図である。
【図１４】反対方向（反時計回り方向）の初期作動状態にある往復動機構を一部断面で示す部分拡大側面図である。
【図１５】図１４に続く作動状態にある往復動機構の一部断面部分拡大側面図である。
【図１６】端々縫合される一対の管組織の切断部を、拡大されて制限された視野内で見た斜視図である。
【図１７】縫合の準備段階として外転された双方の管の端部を、拡大されて制限された視野内で見た斜視図である。
【図１８】図１に示した外科用縫合装置の先端部、及び縫合の直前段階にあって外転された一対の管を示す側面図である。
【図１９】外科用針により管組織の切断部の外転縁に孔を開けるところを外科用縫合装置の先端部とともに示す側面図である。
【図２０】外科用針が対向側のアームに渡されて、縫合糸が小管の外転縁に引き通された状態を外科用縫合装置の先端部とともに示す側面図である。
【図２１】外科用針が第一のアームに戻された状態にある外科用縫合装置の先端部を縫合部の一部とともに示す側面図である。
【図２２】両アームが小管の外転縁近傍で再度閉じられて外転端に穴を開け次の縫い目を形成する状態を示す側面図である。
【図２３】双方の小管が縫合されて端々吻合が形成された状態を示す側面図である。
【図２４】図２３のＩ−Ｉ線に沿う矢視図である。
【図２５】他の実施形態による縫合装置の先端部及びそこに取り付けられた針係止部材の形状を示したもので、（Ａ）は針未係止状態を示す拡大図、（Ｂ）は針係止状態を示す拡大図である。
【図２６】他の実施形態による先端部及びそこに取り付けられた針係止部材の形状を示したもので、（Ａ）は針未係止状態を示す拡大図、（Ｂ）は針係止状態を拡大図である。
【図２７】別の実施形態による先端部、及び、少なくとも部分的に貫通した孔を有した縫合針を取り扱えるようにそこに取り付けられた針係止部材の形状を示したもので、（Ａ）は針未係止状態を示す拡大図、（Ｂ）は針係止状態を示す拡大図、（Ｃ）は少なくとも部分貫通孔を有した双頭縫合針の側面図である。
【図２８】さらに別の実施形態による先端部及び係止部材の配置を示したもので、（Ａ）は針未係止状態の拡大図、（Ｂ）は針係止状態の拡大図である。
【図２９】外科用針に取り付けられた縫合糸の取扱を容易にするため溝が形成された別の縫合装置の端部を示す拡大斜視図である。
【図３０】別の実施形態による先端部、及び外科用針の装着を容易にするよう構成された針係止部材の形状を示すもので、（Ａ）は針未係止状態の拡大図、（Ｂ）は針係止状態の拡大図である。
【図３１】別の実施形態による簡易装着型の端部及び針係止部材の形状を示すもので、（Ａ）は針未係止状の拡大図、（Ｂ）は針係止状態の拡大図である。
【図３２】さらに別の実施形態による簡易装着型の端部及び針係止部材の形状を示すもので、（Ａ）は針未係止状の拡大図、（Ｂ）は針係止状態の拡大図である。
【符号の説明】
１０ 関縫合装置
１２ 縫合針（外科用針）
１６ 第一のアーム
１８ 第二のアーム
３０ カム作動レバー
３２ 延長アーム
３４ 第一の針係止部材
３６ 第二の針係止部材
４２ 往復動機構
４８ ロック部材
６０ トグルホイール
８８ 第一の凹所
９０ 第二の凹所
１００，１０２，２０６ チャンネル
１１０，１２０，１２８，１４２，１５４，１６６，１７６，２００ アーム
１１２，１２２，１３０，１４４，１７２，１７８，２１２ 針係止部材

Claims (12)

1. 組織縫合装置であって、
   ａ）第一の針係止部材が移動可能に取り付けられた第一のアームと；
   ｂ）前記第一のアームに対して移動可能に取り付けられ、第二の針係止部材を有し、かつ、前記第一のアームから離間した開位置と、前記第一のアームに近接してこの第一のアームと協働する位置関係となる閉位置との間で移動可能とされた第二のアームと；
   ｃ）前記第一の針係止部材及び前記第二の針係止部材に接続されかつ前記両アームの少なくとも一方に対して移動可能に取り付けられた往復動機構であって、前記第一の針係止部材を外科用針に係合させる第一の位置と、前記第一の針係止部材を前記外科用針から外す第二の位置との間で移動可能とされ、前記第一の針係止部材及び前記第二の針掛止部材をそれぞれ前記第一のアーム及び前記第二のアーム内で交互に進退させる往復動機構と；
   ｄ）前記両アームが前記閉位置に移動されたときに前記往復動機構を前記第一の位置と前記第二の位置との間で自動的にカム作動させるカム作動レバーと；
   を備えて成る組織縫合装置。
2. 請求項１記載の装置において、前記両アームが前記閉位置に移動されたときに前記カム作動レバーが前記往復動機構を前記第一の位置と第二の位置との間で自動的にカム作動させ、前記往復動機構が、前記第一および第二のアームの少なくとも一方に回転可能に取り付けられたトグルホイールを備えていることを特徴とする装置。
3. 請求項２記載の装置において、前記第一及び第二の針係止部材の各基端部が、前記トグルホイールの回転によってこれら針係止部材の一方が退去されかつそれと同時に他方が前進するように、前記トグルホイールの対向した両面に接続されていることを特徴とする装置。
4. 請求項２記載の装置において、前記両アームが前記閉位置に移動したときに前記カム作動レバーが前記トグルホイールのカム面に当接して該トグルホイールを回転させるよう、前記カム作動レバーが前記第一及び第二のアームの一方に取り付けられていることを特徴とする装置。
5. 請求項１記載の装置において、前記第一及び第二のアームの少なくとも一方に設けられ、かつ、前記往復動機構の移動をブロックするロック位置と前記往復動機構から外れた非ロック位置との間を動くように取り付けられたロック部材を備えていることを特徴とする装置。
6. 請求項５記載の装置において、前記カム作動レバーが、前記両アームが閉じられた状態において前記ロック部材を前記ロック位置から前記非ロック位置に移動させる開放脚を備えていることを特徴とする装置。
7. 請求項１記載の装置において、前記第一及び第二のアームには、これら第一及び第二のアームの両基端部を両アームが開くように付勢するバネ部材が設けられていることを特徴とする装置。
8. 請求項１記載の装置において、前記第一のアームが第一の凹所、及び長手方向に延びたチャンネルを有し、前記第一の凹所は外科用針の一部を該凹所内に収納し、前記第一の針係止部材は、前記第一の凹所内に配された前記外科用針を係止すべく前記第一の凹所近傍で移動可能とされており、
   かつ、前記長手方向に延びたチャンネルが前記第一の針係止部材を収納しており、該チャンネルが前記第一のアームの前記第一の凹所の少なくとも一部と交差していることを特徴とする装置。
9. 請求項１記載の装置において、前記第二のアームが第二の針係止部材を有し、かつ前記往復動機構が、前記第一の針係止部材を前記第一のアームに対して前進させる第一の位置と、前記第二の針係止部材を前記第二のアームに対して前進させる第二の位置との間で移動可能であることを特徴とする装置。
10. 請求項１記載の装置において、前記往復動機構が、前記両アームの少なくとも一方に回転可能に取り付けられかつ第一及び第二のカム面を有したトグルホイールを備えており、前記両アームの閉動作が開始されることにより前記カム作動レバーが前記第一のカム面に当接して前記トグルホイールを前記第一の位置に自動的に動かし、かつ前記両アームをさらに閉じることにより前記カム作動レバーが前記第二のカム面に当接して前記トグルホイールを自動的に前記第二の位置に動かすことを特徴とする装置。
11. 管組織の切断部を縫合するための装置であって、
    ａ）開位置と閉位置との間の移動が可能となるように相互に連結された一対のピンセット状の針保持用アームと；
    ｂ）前記一対のアームに作動的に関連して外科用針と係合可能とされ、前記一対のアームの閉動作に対応して前記外科用針を各アーム内で交互に固定する固定機構と；
    を備えてなり、
    前記固定機構が、前記対を成すアームのそれぞれに摺動可能に配されかつ前記外科用針と交互に係合可能とされた針係止部材と、前記両アームの閉動作に対応して前記各針係止部材を交互に前進及び退去させるべく動く往復動機構と、前記両アームの一方から延出した延長アームに設けられ、前記両アームが前記閉位置に移動したときに前記往復動機構を自動的にカム作動させるカム作動レバーと、を備えていることを特徴とする管組織の切断部の縫合装置。
12. 請求項１１記載の装置において、前記カム作動レバーが延長アームに取り付けられており、前記第一及び第二のアームへ押圧力を加えた初期段階において両アームが実質的に当接する位置とされ、前記押圧力をさらに加えることにより前記延長アームが前記両アームに対して動かされて前記作動カムレバーが動くことを特徴とする装置。

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