JP3785331B2 - 硬質水砕スラグの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、緻密な硬質水砕スラグを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、高炉から排出される溶融スラグを吹製装置で水砕した後、急冷して製造する水砕スラグがあり、この水砕スラグは、その硬質性からセメント原料に利用されている。しかし、最近では天然砂が枯渇していること、また自然破壊につながる海砂採取抑制の動きもあって、土木建築用に用いられるコンクリート用の細骨材としての上記砂の代替品として水砕スラグの使用の検討が開始されている。
しかし、単に溶融スラグを吹製装置で水砕するだけでは単位容積比重(以下単に比重と称す)1.0〜1.2程度の水砕スラグしか得られず、細骨材として使用する事が出来ないものであった。この為、水砕スラグをさらに比重を向上して硬質化する必要があり、この方法として、例えば、特開昭53−59723号公報、特開平10−273346号公報で提案の方法がある。この特開昭53−59723号公報の方法は、出滓開始から終了まで、一定の割合で含鉄微粉を溶融スラグに添加し、その後、水砕スラグ化するものである。また、特開平10−273346号公報ではスラグ樋を流れる溶融スラグの上に、石灰石又はドロマイトのいずれか一方あるいは両方を添加するもので、その添加量を溶融スラグ流量の1〜5wt%とすることで硬質な高炉水砕スラグを製造するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、高炉から出る溶融スラグの温度、量は出滓開始と終了では大きく異なることから、前記特開昭53−59723号公報のように、溶融スラグに所定割合で含鉄微粉を添加すると、品質(硬質化状態、色)が変化したり、また、余分な酸化鉄を添加する場合も発生して不経済となると共にその添加量が極端に多くなるとフラッティングを生じて、添加した含鉄微粉を溶融スラグに混合出来なくなり、操業が困難となる課題を有するものであった。また、特開平10−273346号公報のように石灰石を添加すると、溶融スラグの表面が冷えて固まってしまい、溶融スラグと石灰石の混合が出来なくなり、何らかの方法でこの固まりを除去しながら添加しなければならず実用的な方法ではない。
本発明は、溶融スラグの温度、量の変化に対応して含鉄微粉の添加量を調整する事により、溶融スラグの出滓の開始から終了までばらつきの少ない砂代替用の硬質水砕スラグを安定して製造することを課題とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その手段1は、高炉から排出した溶融スラグを溶滓樋を介して粒銑鉢に供給し、更に、該粒銑鉢の溶融スラグを吹製装置で水砕した後、冷却して水砕スラグを製造する方法において、前記吹製装置の上流側で含鉄微粉を添加して硬質水砕スラグを製造する際に、予め製造しようとする水砕スラグの比重になるための溶融スラグの温度と含鉄微粉の添加率の関係式又はテーブルを求めておき、前記高炉から排出した溶融スラグの温度とその量を測定し、この測定した溶融スラグの温度と前記関係式又はテーブルから含鉄微粉の添加率を求め、この添加率と前記測定した溶融スラグ量から含鉄微粉の添加量を求め、この添加量となるように前記吹製装置の上流側における含鉄微粉の添加量を調整する硬質水砕スラグの製造方法である。
更に、手段2は、手段1において、高炉スラグに含鉄微粉を添加して高炉硬質スラグ製造するに際して、含鉄微粉の添加量を溶融スラグの温度(溶滓温度)と出滓速度の関係から指定する硬質水砕スラグの製造方法である。
手段3は、手段1又は手段2において、前記含鉄微粉を前記粒銑鉢の上流側で添加する硬質水砕スラグの製造方法である。
また、手段4は、手段1〜手段3のいずれかにおいて、前記測定した溶融スラグの温度が1400℃以上の場合に前記含鉄微粉を添加する硬質水砕スラグの製造方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、例えば、コンクリート用の細骨材として使用可能なように、比重の重い、即ち、硬質な水砕スラグをばらつきなく安定して製造するため、種々実験検討を行った。
硬質な水砕スラグにするには、該水砕スラグの比重、即ち、単位容積当たりの重量を重くすれば良いが、この比重は水砕スラグ中に発生した気孔量によって左右される。この気孔は、高炉炉内又は出滓時に空気中の窒素が溶融スラグ中に溶解したり、あるいは化合物として取り込まれた窒素が溶融スラグを冷却水で吹砕して水砕スラグ化する瞬間に気体となり、その気体がスラグ中に閉じこめられる事により発生するものと考えられる。
この気孔量を少なくして比重の重い水砕スラグを製造するには、溶融スラグ中に含酸化鉄粉を添加して脱窒素を行って、溶融スラグ中に含まれる窒化物の量を少なくすればよい。この脱窒素は、以下のような反応によるものと推定される。
Si3 N4 +6FeO→3SiO2 +6Fe+2N2 ↑
2TiN+4FeO→2TiO2 +4Fe+N2 ↑
また、高炉から出た溶融スラグを含酸化鉄粉等を添加せずにそのままの状態で冷却水により吹砕した水砕スラグについて調査した結果、出滓初期は比重が重く、末期になるにつれて軽くなる事が判明した。
出滓末期は、出滓初期に比べて温度が高くなり、窒素の溶融スラグ中への溶解量も図2に示すように増加するため、この窒素又は窒素化合物と水砕時の冷却水との反応で発泡がより促進されて、水砕スラグは軽くなると考えられる。
【0006】
そこで、本発明者等は、出滓初期から末期まで含鉄微粉の添加比率を調整して比重への影響度合いについて検討した。その結果、出滓初期から末期までの溶融スラグの温度を経時的に求め、この求めた温度に応じて含鉄微粉の添加比率を調整することで、硬質な水砕スラグを得ることが可能であることが判明した。
つまり、出滓末期になる程、溶融スラグの温度が図3に示すように上昇するので、それに応じて含鉄微粉の添加比率を図4に示すように上げることにより、脱窒量を多くして比重の重い硬質のスラグを製造するものである。
また、溶融スラグの温度が1400℃未満では含鉄微粉を添加しても比重の向上代は少なく、含鉄微粉を添加せずに製造した水砕スラグと大きな差はなく、砂の代替品としては実用上問題のないものであった。これは溶融スラグの温度が低いと溶融スラグ中に含まれる窒素が少なくなっており、含鉄微粉を添加しても脱窒効果が少なく比重の向上代が少ない為である。
そこで、溶融スラグの温度が1400℃以上になった段階で含鉄微粉を添加するようにすることが好ましい。
【0007】
また、溶融スラグの温度と出滓速度とは、図5に示すような関係が有ることが判った。このことから、溶融スラグの出滓速度を実測してその温度を推定する事が好ましい。
つまり、溶融スラグの温度を連続的に測定するために、温度計を溶融スラグ中に挿入すると、該温度計の表面に溶融スラグが付着固化して、精度良く温度を測定することが困難になる場合が多い。一方、溶融スラグの出滓速度は溶滓樋、流銑鉢、又は、水砕スラグ搬送用のコンベアにロードセル等の質量測定器を設ければ溶融スラグ量に影響を受けずに精度良く測定する事が可能となる。
また、含鉄微粉を添加する位置としては、吸製装置の上流側であればよいが、流銑鉢の上流側とすることが好ましい。これは、溶融スラグと一緒に含鉄微粉が流銑鉢内に落下して溜まった溶融スラグ内に巻き込まれて該含鉄微粉が溶融して混合されるため、脱窒が均等に行われて均質な水砕スラグが得られるからである。
【0008】
【実施例】
本発明の一実施例に係る硬質水砕スラグの製造方法について図1を参照して説明する。
先ず、本実施例の硬質水砕スラグの製造方法によって硬質なスラグを製造するための設備構成について説明する。図1に示すように、上流側から下流側に向けて大桶2、溶滓樋3、流銑鉢4、吹製装置5、コンベア7、脱水装置(図示せず)が順次配置され、高炉から排出した溶融スラグを溶滓樋3を介して流銑鉢4に供給し、更に、流銑鉢4の溶融スラグを吹製装置5で水砕した後、冷却して水砕スラグを製造している。また、このコンベア7にはコンベアスケール9が設置されており、これで溶融スラグの質量を連続的に測定する。更に、測定した溶融スラグの質量値を基に、出滓速度の算出、溶融スラグの温度の推定、ダスト(含鉄微粉)の添加率の算定、ダストの添加量の算定等を行う制御装置10、及び制御装置10からの出力により、ダスト添加装置8の切出フィーダ12を調整してダストを吹製装置5の上流側に切り出す切出フィーダ駆動装置11が設けられている。
【0009】
次に、本実施例の硬質水砕スラグの製造方法について説明する。
溶融スラグは高炉出銑口1から流出し、大樋2を介して溶滓樋3に流入する。この溶滓樋3の後端部に達した溶融スラグの上面に、ダスト添加装置8から切り出した含鉄微粉としての酸化鉄を多く含有している集塵ダストを添加する。この集塵ダストは焼結機から発生する換気集塵ダストであり、その成分を表1に示す。
【0010】
【表1】
【0011】
そして、この集塵ダストを添加した溶融スラグは流銑鉢4に落下し、集塵ダストは溶融して溶融スラグと混合される。そして、流銑鉢4をオーバーフローして吹製装置5内に流入し、ここで冷却水により吹砕された後、冷却されて水砕スラグとなる。そして、この吹製装置5から排出された水砕スラグはコンベア7で脱水装置に送られて脱水し、粒度調整されて出荷される。
また、このコンベア7にはコンベアスケール9が設置されており、これで溶融スラグの質量を連続的に測定する。
【0012】
次に、含鉄微粉としての集塵ダストの添加について説明する。
前記コンベアスケール9で測定した質量値は制御装置10に入力される。そして、この制御装置10は、入力した経時的測定質量値から出滓速度を算出し、この算出した出滓速度と予め設定した出滓速度と溶融スラグの温度の関係を示すテーブル(図5)を基にして溶融スラグの温度を推定する。更に、この推定した溶融スラグ温度と予め設定したダスト添加率と溶融スラグ温度の関係を示すテーブル(図3、図4)を基にしてダストの添加率を算定する。そして、このダストの添加率と前記測定した溶融スラグの連続的質量からダストの添加量を算定し、その添加量を切出フィーダ駆動装置11に出力する。そして、この切出フィーダ駆動装置11は入力したダストの添加量を基にしてダスト添加装置8に設けた切出フィーダ12を調整してダストを切り出す。
なお、本例の場合において、ダストを添加してから水砕スラグがコンベアスケール9に到達するまでに10分程度要し、時間遅れがあるが、出滓速度の変化がそれほど大きくないために、製造した水砕スラグの比重は実用上問題がないものである。しかし、時間遅れが問題になる場合には前述したように溶滓樋3又は流銑鉢4の底部にロードセルを設けて溶融スラグ量を測定する事が好ましい。
このようにして製造した場合の水砕スラグの例を表2に示す。
【0013】
【表2】
【0014】
この表からわかるように、従来(比重1.0〜1.2)より比重の大きい(比重1.35以上)の硬質の水砕スラグを安定して製造する事が出来た。そして、この水砕スラグを磨砕機で処理することにより、コンクリート用細骨材として使用が可能な比重1.45以上の水砕スラグとする事が出来た。
【0015】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明により、設備の大幅な改造をせず、さらに高炉の操業等に支障を与えることなく、コンクリート用細骨材等に使用可能な比重の重い(硬質)高炉水砕スラグを安定して製造する事を可能とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る硬質水砕スラグの製造方法に用いられるスラグ製造設備の説明図である。
【図2】溶融スラグ温度と含有窒素量との関係を示すグラフである。
【図3】出滓時間と出滓温度との関係を示すグラフである。
【図4】出滓時間と添加量との関係を示すグラフである。
【図5】出滓速度と出滓温度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1:高炉出銑口、2:大樋、3:溶滓樋、4:流銑鉢、5:吹製装置、7:コンベア、8:スラグ添加装置、9:コンベアスケール、10:制御装置、11:切出フィーダ駆動装置、12:切出フィーダ
Claims (4)
- 高炉から排出した溶融スラグを溶滓樋を介して流銑鉢に供給し、更に、該流銑鉢の溶融スラグを吹製装置で水砕した後、冷却して水砕スラグを製造する方法において、
前記吹製装置の上流側で含鉄微粉を添加して硬質水砕スラグを製造する際に、予め製造しようとする水砕スラグの比重になるための溶融スラグの温度と含鉄微粉の添加率の関係を求めておき、前記高炉から排出した溶融スラグの温度とその量を測定し、この測定した溶融スラグの温度と予め求めておいた前記溶融スラグ温度と含鉄微粉添加率の関係から含鉄微粉の添加率を求め、この添加率と前記測定した溶融スラグ量から含鉄微粉の添加量を求め、この添加量となるように前記吹製装置の上流側における含鉄微粉の添加量を調整することを特徴とする硬質水砕スラグの製造方法。 - 前記溶融スラグの温度を出滓速度から推定することを特徴とする請求項1記載の硬質水砕スラグの製造方法。
- 前記含鉄微粉を前記流銑鉢の上流側で添加することを特徴とする請求項1又は2記載の硬質水砕スラグの製造方法。
- 前記測定した溶融スラグの温度が1400℃以上である場合に前記含鉄微粉を添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬質水砕スラグの製造方法。
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