JP2014083575A - 連続鋳造鋳型内へのモールドフラックスの添加方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】嵩比重が1.2g/cm3以下のモールドフラックスを鋳型2内へ添加する。ここで、鋳型2内の未溶融層22厚みが20mm以上となり、溶融層23厚みが10mm以上となった状態でモールドフラックスを添加する際に、モールドフラックスを自由落下させる落下開始位置から未溶融層までの落下距離(添加高さ)Hを250mm以下とする。また、モールドフラックス添加時のフラックス落下領域面積Aを0.0025m2以上とし、落下領域におけるモールドフラックスの供給速度Qを1760kg/(m2・min.)以下とする。
【選択図】図2
Description
連続鋳造機100は、図1,2に示すように、タンディッシュの底部に取り付けられた浸漬ノズル1と、浸漬ノズル1の下部が配置された鋳型2とを備えている。鋳型2内には浸漬ノズル1から溶鋼21が供給される。また、溶鋼21上には、モールドフラックの未溶融層22及び溶融層23が上から順に形成されている。そして、本実施形態では、鋳型2の上方に、モールドフラックスを添加するフィーダー3が配置されている。
(未溶融層厚み)
20[mm]以上の厚みの未溶融層22は、モールドフラックスを添加したときの緩衝材となる。そのため、添加時にモールドフラックスが溶融層23に潜りこむことを抑止できる。一方、未溶融層22の厚みTuが20[mm]未満の場合は、添加時に溶融層23の浴面が大きく乱れたり、添加されたモールドフラックスの動力により未溶融フラックス(未溶融層22の一部)が溶融層23に潜りこんだりしやすい。これにより、内部が未溶融の状態となった焼結物が生成する結果、鋳片表面に欠陥が生じる。そこで、未溶融層22の厚みTuを20[mm]以上とする。なお、未溶融層22の厚みTuとは、図1に示すように、未溶融層22の上端から溶融層23の上端までの鉛直方向距離を示す。
溶融層23の厚みTmが10[mm]未満と薄い場合は、溶鋼21の熱により溶融層23が高温となる。このような溶融層23に、未溶融のモールドフラックスが巻き込まれると、内部が未溶融状態となった焼結物が生成することにより、鋳片に表面欠陥が生じる。そこで、溶融層23の厚みTmを10[mm]以上とする。なお、溶融層23の厚みTmとは、図1に示すように、溶融層23の上端 (未溶融層22の下端)から溶鋼21浴面までの鉛直方向距離を示す。
モールドフラックスの「添加高さH」とは、モールドフラックスを自由落下させる落下開始位置から未溶融層22までのモールドフラックスの落下距離である。本実施形態のように、フィーダー3を用いてモールドフラックスを添加する場合、「添加高さH」は、図1,2に示すように、フィーダー3の先端から未溶融層22の上面までの鉛直方向距離を示す。
モールドフラックスの「落下領域面積A」とは、図2に示すように、未溶融層22浴面(上面)における、モールドフラックスの落下領域面積である(図2,3の「落下領域面積A」参照)。落下領域面積Aが0.0025[m2]未満と小さい場合は、モールドフラックスが鋳型2内に全面的に広がりにくいため、フィーダー3からのモールドフラックスの吐出速度を上昇させる必要がある。しかし、吐出速度が速すぎると、添加時に溶融層23の浴面が大きく乱れたり、添加されたモールドフラックスの動力により未溶融フラックス(未溶融層22の一部)が溶融層23に潜りこんだりしやすい。これにより、内部が未溶融状態の焼結物が生成する。そこで、落下領域面積を0.0025[m2]以上とする。ここで、鋳型2内の各位置で落下領域面積が異なる場合は、それらの落下領域面積のうち最小の落下領域面積が0.0025[m2]以上となるようにする。
・落下領域面積A1:t=t1 [s]に添加したモールドフラックスの落下領域面積
・落下領域面積A2:t=t2[s]に添加したモールドフラックスの落下領域面積
・落下領域面積A3:t=t3[s]に添加したモールドフラックスの落下領域面積
・落下領域面積A4,A5・・・:t=t4,t5・・・[s]に添加したモールドフラックスの落下領域面積
モールドフラックスの「供給速度Q」とは、未溶融層22上(未溶融層22上面)の落下領域に供給されるモールドフラックスの供給速度であり、例えば、下記式によって求めることができる。
モールドフラックスを、所定時間、連続して添加した場合、
供給速度Q[kg/(m2・min.)]=Qaverage[kg/min.]/Atotal[m2]
・・・(1)
ここで、「Qaverage」は、所定時間における、単位時間当たりのモールドフラックスの平均供給量であり、「Atotal」は、所定時間における総落下領域面積である。そして、「所定時間」とは、例えば5秒であり、モールドフラックスの添加を意図的に停止しているときを含まない。
図4(a)に示すように、落下領域面積A4には、t=ta[s]〜tb[s]間の添加により、モールドフラックスが供給される(ta<t4<tb)。供給速度Qは、t=ta[s]からt4[s]まで漸増し、t=t4[s]で最大となった後、漸減し、t=tb[s]でQ=0となる。ここで、t=t4[s]での落下領域面積はA4であり、t=t4[s]の供給速度Qは1760[kg/(m2・min.)]である(図4(b)のQmax=1760[kg/(m2・min.)]参照)。なお、t=0[s]〜ta[s]間,tb[s]〜td[s]間には、落下領域面積A4にモールドフラックスが添加されないため(供給速度=0)、この間の供給速度は上記供給速度Qを算出するために用いられない。
落下領域面積A9には、t=tc[s]〜td[s]間の添加により、モールドフラックスが供給される(tc<t9<td)。供給速度Qは、t=tc[s]からt9[s]まで漸増し、t=t9[s]で最大となった後、漸減し、t=td[s]でQ=0となる。ここで、t=t9[s]での落下領域面積はA9であり、t=t9[s]の供給速度Qは1760[kg/(m2・min.)]である(図4(b)のQmax=1760[kg/(m2・min.)]参照)。なお、t=0[s]〜tc[s]間には、落下領域面積A4にモールドフラックスが添加されないため(供給速度=0)、この間の供給速度は上記供給速度Qを算出するために用いられない。
・鋼成分
炭素含有量[C]:0.0015[mass%]以上1.00[mass%]以下
・比水量
0.15[l/kg−steel]以上2.0[l/kg−steel]以下
・鋳造速度(定常状態)
<スラブ> 0.7[m/min.]以上2.4[m/min.]以下
<ブルーム>0.5[m/min.]以上0.9[m/min.]以下
・鋳型の上端の開口(内寸)
<スラブ>
(短辺)240[mm]×(長辺)800[mm]〜1800[mm]
(短辺)280[mm]×(長辺)2100[mm]
<ブルーム>
(短辺)380[mm]×(長辺)600[mm]
・浸漬ノズル
内径r:60[mm]以上90[mm](図1参照)
(但し、内径rは、吐出孔11,12が形成されていない部分の内径である。)
吐出孔11,12の傾斜角度θ:10°≦θ≦45°(図1参照)
(水平方向に対し10°以上45°以下、下方向に傾いて形成)
スコップや勺等の道具を用いて一定量のモールドフラックスを掬い、これを鋳型2内に散布する。この場合、「添加高さH」は、添加時のスコップや勺等の位置から未溶融層22(浴面)までの鉛直方向距離を示す。また、「落下領域面積A」は、一回の添加で未溶融層22浴面にモールドフラックスが散布された領域の面積を示す。さらに、供給速度Qは、下記式によって求めることができる。
供給速度Q=(1回当たりの添加量[kg])÷(添加時の落下領域面積A[m2])÷(落下領域での1回の添加における落下開始(添加開始)から落下終了までの時間[min.])
鋳型2上端や鋳型2上方にモールドフラックスを貯留し、プッシャー等により押し出して添加したり、シャッター等を用いて所定量を切り出したりする。この場合、「添加高さH」は、モールドフラックスの貯留位置から未溶融層22(浴面)までの鉛直方向距離を示す。例えば、モールドフラックスが鋳型2上端に貯留されている場合、「添加高さH」は、鋳型2上端から未溶融層22(浴面)までの鉛直方向距離を示す。また、「供給速度Q」は、本実施形態で例示した供給速度Q(=Qaverage/Atotal)と同様な方法で求めることができる。
<鋳造中 湯面レベル変更>
浸漬ノズルとメニスカスの相対位置を一定時間毎に意図的に変更させた場合、表1〜3に「実施」と示し、変更させなかった場合を「未実施」と示している。「実施」した実験では、浸漬ノズルを上下移動させたり、メニスカス位置(溶鋼浴面)を上下させたりすることにより、浸漬ノズルとメニスカスの相対位置を変更させた。このとき、溶鋼浴面の変更速度は0.013[mm/s]以上0.25[mm/s]とした。また、変更前と変更後で浴面レベルを15[mm]以上変えた。
<鋳型内電磁撹拌>
鋳型内電磁撹拌装置を作動させた時の「磁場周波数」及び「磁場強度」を示している。本例では、鋳型内が空のときに「磁場周波数」及び「磁場強度」を複数回測定し、これらの平均値を求め、これを表1〜3に示している。また、「磁場周波数」及び「磁場強度」の測定(測定地点)は、1)水平方向位置を、鋳型内壁面の長辺壁部から15[mm]且つ短辺壁部から15[mm]の位置とし、2)鉛直方向位置を、鋳型外部に設置された電磁コイルの鉄芯中心と同じ高さの位置で行った。さらに、測定には、ガウスメーター(テスラメーター、磁束密度計)を用いた。ここで、「磁場周波数」は1〜4[Hz]が好ましいとされ、一般的に2〜3[Hz]が採用されている。そこで、本例では、一律の3[Hz]とした。
<モールドフラックスの嵩比重>
添加前の未溶融モールドフラックスの嵩比重をJIS−K5101に準拠して測定した。
<溶融層厚みHm、未溶融層厚みHu>
(1)図5に示すように、内寸が短辺t×長辺wである鋳型内において、短辺壁部から1/4w離れ且つ長辺壁部から1/2t離れた位置を代表点とし(例えば、図5に示すP点)、この地点の「溶融層厚み」及び「未溶融層厚み」を測定した。なお、表1〜3の実施条件では、測定地(代表点)の厚みを基に、測定地以外の厚み(溶融層厚み及び未溶融層厚み)を測定地と同等な厚みに制御できることがわかっている。そこで、代表点の厚みを鋳型内全体での厚みとして評価した。
(2)また、本例では、鋳造速度が定常速度となってから鋳造初期、鋳造中期及び鋳造末期に厚みを測定し、これらの平均値を「溶融層厚みHm」及び「未溶融層厚みHu」とした。
(3)さらに、厚みの測定は、1)Al線と、鉄線あるいはSUS線を浸漬させる、又は2)赤外線センサー、マイクロ波計及び渦流式のメニスカスレベルセンサーを用いることにより行った。
具体的には、1)では、Al線と、鉄線あるいはSUS線にテープ50を巻き付け、図6(a)に示すように、巻き付けた位置よりも下方の部分を溶鋼内に、所定時間、浸漬した(図6(a)にはAl線とSUS線を例示)。ここで、鋳型内の溶鋼、溶融層及び未溶融層は、これらの順に温度が高く、Al線は、溶鋼及び溶融層の温度下で溶融するが、未溶融層の温度下では溶融しない。一方、鉄線あるいはSUS線は、溶鋼の温度下で溶融するが、溶融層及び未溶融層の温度下では溶融しない。または、太めの鉄線あるいはSUS線を浸漬すると、溶鋼が凝固してこれらの線に付着する。そこで、図6(a)に示すように、浸漬後のAl線において、テープ50より下方の未溶融部分の長さluを「未溶融層厚み」とした。また、浸漬後の鉄線あるいはSUS線において、テープ50より下方の未溶融部分の長さlu+mを「未溶融層厚みと溶融層厚みの合計」とした。そして、「lu+m−lu」(=未溶融層厚みと溶融層厚みの合計−未溶融層厚み)から「溶融層厚み」を求めた。
また、2)では、図6(b)に示すように、同一の高さ位置に固定した赤外線センサー、マイクロ波計及び渦流式のメニスカスレベルセンサーにより、それぞれ未溶融層上端までの距離L1、溶融層上端までの距離L2及び溶鋼上端までの距離L3を測定し、「L2−L1」から未溶融層厚みを求め、「L3−L2」から溶融層厚みを求めた。
<モールドフラックス添加方法>
連続移動式散布法(本実施形態参照)によりモールドフラックスを添加した場合を「連続」とし、スコップや勺等の道具を用いて手動により添加した場合を「バッチ」としている。
<落下領域面積A>
連続移動式散布の場合(表1〜3の「連続」)、フィーダーの移動を停止しながら添加したときは、停止中の添加時の最大落下領域面積を「落下領域面積A」とした。一方、フィーダーを移動させながら添加したときは、5秒間連続して添加したときのフィーダーの軌道下における総落下領域面積を「落下領域面積A」とした。
また、手動により添加した場合(表1〜3の「バッチ」)、1回の添加で鋳型内に散布された領域の面積を「落下領域面積A」とした。
ここで、本例では、モールドフラックスの投下状況を動画撮影し、画像解析から落下領域面積Aを算出した。また、一部の条件(バッチ等)については、鋳型内添加と同様の条件を鋳型外で再現し、その領域の測定値を落下領域面積Aとした。
<供給速度Q>
下記式から供給速度Qを求めた。
Q=(落下領域面積Aへの供給量[kg/min.])÷(落下領域面積A[m2])
ここで、「落下領域面積Aへの供給量」とは、表1〜3に示す「モールドフラックスの連続添加時 落下速度」であり、連続移動式散布のようにフィーダーからモールドフラックスを吐出した場合はフィーダーからのモールドフラックスの吐出速度を用いて求めた。また、手動により添加した場合は(表1〜3の「バッチ」)、「落下領域面積Aへの供給量」を「1回あたりの投入質量[kg]÷落下時間[min.]」から求めた。
<鋳片縦割れ、ノロカミ>
鋳片を室温まで冷却した後、鋳片表面(広面及び狭面)をスカーフィング或いはグラインダにより1.5[mm/面]研削した。そして、研削後の鋳片表面を目視で確認し、割れが存在しなかった場合、表1〜3に「無し」(評価:○)と示し、割れが存在した場合を「有り」(評価:×)と示している。また、目視確認で、ノロカミが存在しなかった場合を「無し」(評価:○)と示し、割れが存在した場合を「有り」(評価:×)と示している。
ここで、鋳片表面から1.5[mm]の厚みの範囲は鋳造後の加熱−圧延工程で生じるスケールロス量となるので、これより深い位置に割れが存在していないときは、製品欠陥が生じない。そこで、本例では、鋳片表面から1.5[mm]の厚みを基準に評価した。
<ブレイクアウト>
ブレイクアウトが発生した場合、表1〜3に「有り」(評価:×)と示し、ブレイクアウトが発生しなかった場合は「無し」(評価:○)と示している。本例(比較例)で生じたブレイクアウトは、大きくなった縦割れやノロカミが原因で生じたものであり、鋳型下で未凝固溶鋼が欠陥部位から流出した。評価に際しては、ブレイクアウトが発生する前に鋳片に縦割れやノロカミが発生しているかを調査することにより、いずれに起因したブレイクアウトであるかを判断した。
2 鋳型
3 フィーダー
11,12 吐出孔
21 溶鋼
22 未溶融層
23 溶融層(溶融モールドフラックス)
50 テープ
100 連続鋳造機
Claims (1)
- モールドフラックスを鋳型内へ添加しながら、鋼を連続鋳造するにあたり、
添加前のモールドフラックスの嵩比重を1.2g/cm3以下とし、
鋳型内溶鋼浴面上の溶融モールドフラックス厚みを10mm以上とし、
前記溶融モールドフラックス上の未溶融層厚みを20mm以上とし、
モールドフラックスを自由落下させる落下開始位置から未溶融層までの落下距離を250mm以下とし、
モールドフラックス添加時のフラックス落下領域面積を0.0025m2以上とし、落下領域におけるモールドフラックスの供給速度を1760kg/(m2・min.)以下としながら鋳型内へモールドフラックスを添加することを特徴とする連続鋳造鋳型へのモールドフラックスの添加方法。
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