JP2014083575A - 連続鋳造鋳型内へのモールドフラックスの添加方法 - Google Patents

連続鋳造鋳型内へのモールドフラックスの添加方法 Download PDF

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Abstract

【課題】モールドフラックスによる欠陥の発生を防止する。
【解決手段】嵩比重が1.2g/cm以下のモールドフラックスを鋳型2内へ添加する。ここで、鋳型2内の未溶融層22厚みが20mm以上となり、溶融層23厚みが10mm以上となった状態でモールドフラックスを添加する際に、モールドフラックスを自由落下させる落下開始位置から未溶融層までの落下距離(添加高さ)Hを250mm以下とする。また、モールドフラックス添加時のフラックス落下領域面積Aを0.0025m以上とし、落下領域におけるモールドフラックスの供給速度Qを1760kg/(m・min.)以下とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、連続鋳造時に、鋳型内にモールドフラックスを添加する方法に関する。
連続鋳造では、一般的に、鋳型内にフラックスが添加され、鋳型内の溶鋼上にフラックスの層(溶融層と未溶融層)が形成された状態で鋳造が行われる。上記フラックスの層により、溶鋼浴面の再酸化及び溶鋼浴面からの放熱を防止できるとともに、溶鋼中を浮上する介在物を捕捉することができる。また、溶融したフラックスが鋳片と鋳型の間に流入することで、鋳片の引き抜きを良好に行うことができるとともに、鋳造初期における鋳片の急冷を防止できる。しかし、フラックスが鋳片に混入し、これが鋳片に残存すると、表面欠陥として製品に残る。そこで、従来から、フラックスの添加方法やフラックスの物性を改善した方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、フラックスの添加方法を改善した方法として、鋳型内全面にフラックスが散布されるように、フラックスの投入軌跡を複数回変更させる方法が開示されている。また、特許文献2では、フラックスを添加する時に供給ノズルを振動させることにより、溶鋼上のフラックスの厚みを均一な厚みにしている。
また、特許文献3では、フラックスの物性を改善した方法として、一度溶融させたモールドパウダーを粉砕し、得られた粉砕物に超微粒炭素材料を混合したパウダー(フラックス)を用いている。
さらに、特許文献4では、鋳型内の溶融モールドフラックス層の厚みや未溶融モールドフラックス層の厚みを、鋳片又は製品の欠陥発生率が所定の値以下となるように調整している。
特開平11−239856号公報 特開昭63−123555号公報 特開平10−113754号公報 特開2010−99697号公報
上記特許文献1〜4に開示された方法でフラックスを添加すると、フラックスに起因する欠陥を概ね解決することができる。しかし、完全に解決することはできず、鋳片表面に欠陥が発生する場合がある。そのため、特許文献1〜4に開示された方法では、製品に欠陥が生じ、品質低下を招く。
そこで、本発明の目的は、製品の品質を向上させることができるフラックスの添加方法を提供する。
上記問題を解決するため、本発明者は、従来の方法(特許文献1〜4等)で欠陥が生じる原因を鋭意研究したところ、フラックスが適正な方法で添加されてないことが原因であることがわかった。
具体的には、溶鋼上にフラックスの層(溶融層と未溶融層)が形成された状態で、適正な方法でフラックスが添加されると、フラックスは鋳型内で温度上昇することにより、一部が脱炭することで焼結し、その後、溶融する。ここで、上記脱炭及び焼結は未溶融層で起こり、その後、溶融することによりフラックスは滴下して溶融層となる。このように、フラックスが適正な方法で添加されると、「脱炭、焼結、溶融及び滴下のプロセス」を経る。
しかし、多量のフラックスが鋳型内へ突然添加される等、フラックスが不適正な方法で添加されると、添加時に溶融層の浴面が乱れたり、添加された未溶融フラックスの動力により、鋳型内の未溶融フラックス(未溶融層の一部)が溶融層へ潜りこむ等してフラックスの適切な溶融が妨げられたりする。ここで、フラックスの適切な溶融が妨げられるとは、鋳型内の未溶融フラックスが、上記「脱炭、焼結、溶融及び滴下のプロセス」を経ることなく、溶融層へ潜り込むことにより、表面部分だけが溶融して焼結する(過焼結)状態を指す。これにより、内部が未溶融状態となった焼結物(塊)が生成する。
このような焼結物は、凝固途中の溶融フラックス(スラグリム)に付着することにより、内部が未溶融状態の巨大なスラグベアとなる。スラグベアは、溶融フラックスが鋳片と鋳型との間に流入するのを阻害する結果、縦割れを引き起こす。また、大きな湯面変動が発生した場合や溶鋼の表面流速が大きい場合には、スラグベアが鋳片に取り込まれ、表面欠陥を生じさせる(ノロカミ)。そして、ノロカミの程度によっては、ノロカミ部の鋳片発達不全に起因するブレイクアウトを引き起こす。
このように、従来の方法(特許文献1〜4等)では、フラックスが不適正な方法で添加されることが原因で過焼結が起こる結果、フラックスに起因する欠陥が生じていた。そこで、本発明者は、添加時におけるフラックスの過焼結を防止するため、モールドフラックスの諸物性に応じた、フラックスの適正な添加方法を考案した。
ここで、フラックスを適正に添加するためには、添加高さ、落下領域面積、及び落下領域における供給速度の3つの要件が大きく影響することがわかった。本発明では、上記3つの要件を考慮した適切な添加方法を見出し、この方法でフラックスを添加することにより過焼結を防止できる知見を得た。
具体的には、モールドフラックスを鋳型内へ添加しながら、鋼を連続鋳造するにあたり、添加前のモールドフラックスの嵩比重を1.2[g/cm]以下とし、鋳型内溶鋼浴面の溶融モールドフラックス厚みを10[mm]以上とし、前記溶融モールドフラックス上の未溶融層(未溶融モールドフラックスの層)の厚みを20[mm]以上とする。そして、モールドフラックスを自由落下させる落下開始位置と未溶融層(上面)までの落下距離(添加高さ)を250[mm]以下とする。また、モールドフラックス添加時のフラックス落下領域面積を0.0025[m]以上とし、落下領域におけるモールドフラックスの供給速度を1760[kg/(m・min.)]以下としながら鋳型内へモールドフラックスを添加する。ここで、「落下領域面積」とは、未溶融層(上面)におけるフラックスが落下した領域の面積であり、「供給速度」とは、未溶融層(上面)のフラックス落下領域における供給速度である。
このように、本発明では、所定値以下の嵩比重のモールドフラックスを用いるとともに、鋳型内に所定の厚みのモールドフラックス層(溶融層及び未溶融層)が形成された状態で、添加高さ、落下領域面積、及び落下領域における供給速度の3つの要件を考慮した適正な方法でモールドフラックスを添加する。これにより、添加時における溶融層浴面の乱れや添加フラックスの動力による影響を抑止できるため、未溶融モールドフラックス(未溶融層の一部)が溶融層に潜り込んで過焼結することを防止できる。よって、モールドフラックスに起因する欠陥の発生を防止できるので、製品の品質を向上させることができる。
なお、特許文献1〜4では、本発明者が解明した原因について解明されておらず、それ故に、これを防止できる適正な添加方法、つまり、モールドフラックスの添加高さ、落下領域面積、及び落下領域における供給速度の3つ要件を全て考慮した添加方法が見出されていない。そのため、特許文献1〜4では、フラックス添加時に過焼結が起こった結果、フラックスに起因する欠陥が生じた。
本発明によると、モールドフラックスの添加高さ、落下領域面積、及び落下領域における供給速度の3つの要件を考慮した適正な方法で、所定の嵩比重のモールドフラックスを添加することにより、添加時における未溶融フラックスの過焼結を防止できる。これにより、フラックスに起因する欠陥の発生を防止できるので、製品の品質を向上させることができる。
連続鋳造機の鋳型上部周辺を示す概略断面図である。 鋳型内部を示す概略斜視図である。 フィーダーの動作例を示す平面図であり、図1のIII-III線に沿った図である。 モールドフラックスの供給速度Qと時間tとの関係を示す図である。 実施例の実験条件を示す図であり、溶融層厚み及び未溶融層厚みの測定位置を示す鋳型の平面図である。 実施例の実験条件を示す図であり、溶融層厚み及び未溶融層厚みの測定方法の例を示す図である。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
ここでは、本発明の一実施形態であるモールドフラックスの添加方法(フィーダーを用いて添加した場合)について、図1〜図4を参照しつつ以下に説明する。
〔連続鋳造機〕
連続鋳造機100は、図1,2に示すように、タンディッシュの底部に取り付けられた浸漬ノズル1と、浸漬ノズル1の下部が配置された鋳型2とを備えている。鋳型2内には浸漬ノズル1から溶鋼21が供給される。また、溶鋼21上には、モールドフラックの未溶融層22及び溶融層23が上から順に形成されている。そして、本実施形態では、鋳型2の上方に、モールドフラックスを添加するフィーダー3が配置されている。
浸漬ノズル1は、2孔式のノズルであり、下部に一対の対向する吐出孔11,12が形成されている。そして、吐出孔11,12が鋳型2の短辺壁に対向するように、鋳型2内に浸漬ノズル1の下部が配置されている(図2,3参照)。
また、鋳型2の外側には鋳型内電磁撹拌装置が配置されている。これを作動させることにより、鋳型2内の溶鋼21を流動させることができる。鋳型内電磁撹拌装置は、鋼種や鋳造条件に応じて、作動させたり、停止させたりする。
鋳型2の上方に配置されたフィーダー3は、モールドフラックスが貯留されたホッパー等に接続されている。ホッパー内のモールドフラックスは、圧送乃至スクリュー等による機械的な方法でフィーダー3へ押し出され、鋳型2内に添加される。
ここで、図3には、本実施形態でのフィーダー3による、フラックス供給の形態を示している。本図では、鋳型2の左上隅部の上方から鋳型内壁に沿って時計回りにモールドフラックを連続的に散布する場合の形態を示している(図3に示す矢印参照)。なお、フィーダー3の軌道については、フラックスの散布状況を鑑みながら随時変更しても良いし、予め設定した軌道に沿うようにプログラミングしても良く、当事者が任意に選択可能である。また、フィーダー3の移動速度や速度変化も当事者が任意に選択可能である。更に、フィーダーからのモールドフラックスの切り出し速度(吹出速度)についても、連続切り出し、完結切り出しを含めて任意に選択可能である。
モールドフラックスの添加は鋳造開始と略同時に開始され、その後は連続的にモールドフラックスを添加する。添加されたモールドフラックスは、鋳型2内に全面的に広がって未溶融層22となり、その後、溶融して溶融層23となる。
そして、鋳造開始後、鋳造速度を増加させ、定常状態に達すると、図1,2に示すように、鋳型2内の未溶融層22の厚みTが20[mm]以上となり、溶融層23の厚みTが10[mm]以上となった状態で、モールドフラックスの添加高さH、落下領域面積A及び落下領域における供給速度Qが下記範囲となるように添加する。ここで、「定常状態」とは、鋳造速度が所定の目標速度にまで達した状態、又は、鋳造速度が所定の目標速度にまで達していなくても一定の速度となった状態である。
なお、未溶融層22の厚みT及び溶融層23の厚みTは、以下の理由から、T≧20[mm]、T≧10[mm]としている。
(未溶融層厚み)
20[mm]以上の厚みの未溶融層22は、モールドフラックスを添加したときの緩衝材となる。そのため、添加時にモールドフラックスが溶融層23に潜りこむことを抑止できる。一方、未溶融層22の厚みTが20[mm]未満の場合は、添加時に溶融層23の浴面が大きく乱れたり、添加されたモールドフラックスの動力により未溶融フラックス(未溶融層22の一部)が溶融層23に潜りこんだりしやすい。これにより、内部が未溶融の状態となった焼結物が生成する結果、鋳片表面に欠陥が生じる。そこで、未溶融層22の厚みTを20[mm]以上とする。なお、未溶融層22の厚みTとは、図1に示すように、未溶融層22の上端から溶融層23の上端までの鉛直方向距離を示す。
(溶融層厚み)
溶融層23の厚みTが10[mm]未満と薄い場合は、溶鋼21の熱により溶融層23が高温となる。このような溶融層23に、未溶融のモールドフラックスが巻き込まれると、内部が未溶融状態となった焼結物が生成することにより、鋳片に表面欠陥が生じる。そこで、溶融層23の厚みTを10[mm]以上とする。なお、溶融層23の厚みTとは、図1に示すように、溶融層23の上端 (未溶融層22の下端)から溶鋼21浴面までの鉛直方向距離を示す。
(添加高さH)
モールドフラックスの「添加高さH」とは、モールドフラックスを自由落下させる落下開始位置から未溶融層22までのモールドフラックスの落下距離である。本実施形態のように、フィーダー3を用いてモールドフラックスを添加する場合、「添加高さH」は、図1,2に示すように、フィーダー3の先端から未溶融層22の上面までの鉛直方向距離を示す。
モールドフラックスの添加高さHが250[mm]を超える場合は、高位置からフラックスが添加されるため、添加時に溶融層23の浴面が大きく乱れたり、添加されたモールドフラックスの動力により未溶融層フラックス(未溶融層22の一部)が溶融層23に潜りこんだりしやすい。これにより、内部が未溶融状態の焼結物が生成するため、鋳片表面に欠陥が生じる。そこで、添加高さHを250[mm]以下とする。なお、添加高さHが低すぎると、添加位置と未溶融層22との距離が非常に短くなるため、モールドフラックスが鋳型2内の全面に広がりにくい。そこで、添加高さHを40[mm]以上とすることが好ましいが、添加高さHの下限値はこれに限定されない。
(落下領域面積A)
モールドフラックスの「落下領域面積A」とは、図2に示すように、未溶融層22浴面(上面)における、モールドフラックスの落下領域面積である(図2,3の「落下領域面積A」参照)。落下領域面積Aが0.0025[m]未満と小さい場合は、モールドフラックスが鋳型2内に全面的に広がりにくいため、フィーダー3からのモールドフラックスの吐出速度を上昇させる必要がある。しかし、吐出速度が速すぎると、添加時に溶融層23の浴面が大きく乱れたり、添加されたモールドフラックスの動力により未溶融フラックス(未溶融層22の一部)が溶融層23に潜りこんだりしやすい。これにより、内部が未溶融状態の焼結物が生成する。そこで、落下領域面積を0.0025[m]以上とする。ここで、鋳型2内の各位置で落下領域面積が異なる場合は、それらの落下領域面積のうち最小の落下領域面積が0.0025[m]以上となるようにする。
本実施形態のように、フィーダー3を用いてモールドフラックスを添加する場合、1)フィーダー3から吐出されるモールドフラックスの吐出速度を一定にし、且つ、2)添加高さHを一定にした場合、図3,4に示すように、落下領域面積A(最大落下領域面積A,A,A,A,A・・・)が全て同じ面積となる。そして、本実施形態では、鋳造区間(定常状態)における最小の落下領域面積A(A,A,A,A,A・・・)が0.0025[m]以上となっている。
なお、図3には、モールドパウダーの落下領域面積として、A,A,Aだけを模式的に図示し、図4には、モールドパウダーの落下領域面積として、A,A,A・・・A10だけを模式的に図示しているが、本実施形態では、フィーダー3の移動中、モールドフラックスを連続的に添加しているので(連続移動式散布)、図3,4に示す落下領域面積A,A,A,A,A,A・・・,A10だけに限られない。ここで、上記落下領域面積A,A,A・・・は下記面積を示している(図4参照)。
・落下領域面積A:t=t [s]に添加したモールドフラックスの落下領域面積
・落下領域面積A:t=t[s]に添加したモールドフラックスの落下領域面積
・落下領域面積A:t=t[s]に添加したモールドフラックスの落下領域面積
・落下領域面積A,A・・・:t=t,t・・・[s]に添加したモールドフラックスの落下領域面積
(供給速度Q)
モールドフラックスの「供給速度Q」とは、未溶融層22上(未溶融層22上面)の落下領域に供給されるモールドフラックスの供給速度であり、例えば、下記式によって求めることができる。
モールドフラックスを、所定時間、連続して添加した場合、
供給速度Q[kg/(m・min.)]=Qaverage[kg/min.]/Atotal[m]
・・・(1)
ここで、「Qaverage」は、所定時間における、単位時間当たりのモールドフラックスの平均供給量であり、「Atotal」は、所定時間における総落下領域面積である。そして、「所定時間」とは、例えば5秒であり、モールドフラックスの添加を意図的に停止しているときを含まない。
供給速度Qが1760[kg/(m・min.)]を超える場合、供給速度Qが速すぎるため、添加時に溶融層23の浴面が大きく乱れたり、添加されたモールドフラックスの動力により未溶融フラックス(未溶融層22の一部)が溶融層23に潜りこんだりしやすい。これにより、内部が未溶融状態の焼結物が生成する。そこで、供給速度Qを1760[kg/(m・min.)]以下とする。なお、添加されたモールドフラックスは、鋳型2内で未溶融層22となり、その後、溶融して溶融層23となる。そのため、モールドフラックスの供給速度Qが小さいと、未溶融層22を十分な厚みに維持できない。未溶融層22の厚みが薄くなると、未溶融層22が添加時の緩衝材として機能しないため、供給速度Qを1.0[kg/(m・min.)]以上とすることが好ましいが、供給速度Qの下限値はこれに限定されない。
ここで、図4を参照しつつ、本実施形態の供給速度Qの一例を説明する。
図4には、供給速度Qと時間との関係(一例)を示している。本例は、1)フィーダー3から吐出されるモールドフラックスの吐出速度を一定とし、2)添加高さHを一定とし、3)フィーダー3の移動速度を一定とし、且つ4)落下領域面積Aを一定とした例である。図4(a)には、落下領域面積A及び落下領域面積Aの供給速度Qを示している。また、図4(b)には、落下領域面積A,A,A・・・A10の供給速度Qを示している。
<落下領域面積A>
図4(a)に示すように、落下領域面積Aには、t=t[s]〜t[s]間の添加により、モールドフラックスが供給される(t<t<t)。供給速度Qは、t=t[s]からt[s]まで漸増し、t=t[s]で最大となった後、漸減し、t=t[s]でQ=0となる。ここで、t=t[s]での落下領域面積はAであり、t=t[s]の供給速度Qは1760[kg/(m・min.)]である(図4(b)のQmax=1760[kg/(m・min.)]参照)。なお、t=0[s]〜t[s]間,t[s]〜t[s]間には、落下領域面積Aにモールドフラックスが添加されないため(供給速度=0)、この間の供給速度は上記供給速度Qを算出するために用いられない。
<落下領域面積A>
落下領域面積Aには、t=t[s]〜t[s]間の添加により、モールドフラックスが供給される(t<t<t)。供給速度Qは、t=t[s]からt[s]まで漸増し、t=t[s]で最大となった後、漸減し、t=t[s]でQ=0となる。ここで、t=t[s]での落下領域面積はAであり、t=t[s]の供給速度Qは1760[kg/(m・min.)]である(図4(b)のQmax=1760[kg/(m・min.)]参照)。なお、t=0[s]〜t[s]間には、落下領域面積Aにモールドフラックスが添加されないため(供給速度=0)、この間の供給速度は上記供給速度Qを算出するために用いられない。
このように、本例の条件(吐出速度が一定、添加高さHが一定、フィーダー3の移動速度が一定、且つ落下領域面積Aが一定の条件)では、図3及び図4に示すように、フィーダー3の移動に伴って落下領域面積A(A,A,A,A,A・・・)の位置が移動するが、各落下領域面積Aに供給される供給量は同じ量であり、落下領域面積がA(A,A,A・・・)となるとき(t=t,t,t・・・)の供給速度Qは全て同じ速度(図4(b)の「Qmax」)である。そして、本例では、Qmax=1760[kg/(m・min.)]であり、全ての落下領域でQ≦1760[kg/(m・min.)])となっている。
このように、鋳造が定常状態に達し、鋳型2内の未溶融層22の厚みTが20[mm]以上となり、溶融層23の厚みTが10[mm]以上となると、モールドフラックスの添加高さHを250[mm]以内とし、落下領域面積Aを0.0025[m]以上とし、且つ、落下領域における供給速度Qを1760[kg/(m・min.)]以下として添加する。そして、このような添加高さH、落下領域面積A及び供給速度Qでモールドフラックス添加すると、鋳型2内の未溶融層22の厚みTは20[mm]以上となり、溶融層23の厚みTは10[mm]以上となる。
また、本実施形態では、嵩比重が1.2[g/cm]以下であるモールドフラックス(添加前の未溶融のもの)を用いている。嵩比重が1.2[g/cm]を超えるモールドフラックスでは、添加単位体積あたりの落下エネルギーが大きいため、添加時に溶融層23の浴面が大きく乱れたり、添加されたモールドフラックスの動力により未溶融フラックス(未溶融層22の一部)が溶融層23に潜りこんだりしやすい。これにより、内部が未溶融状態の焼結物が生成する。焼結物内部では、未溶融フラックス中のCが酸化することによりCOが発生するため、焼結物が大きくなる。そして、大きくなった焼結物が溶融フラックス(スラグリム)に付着することにより、鋳片の縦割れ、ノロカミ及び鋳造中のブレイクアウトを引き起こす結果、製品に表面欠陥が生じる。そこで、モールドフラックス(添加前の未溶融のもの)の嵩比重を1.2[g/cm]以下とする。
なお、モールドフラックスの嵩比重は、使用原料、原料の配合率及び造粒形態によって調整することができる。例えば、使用原料や原料の配合率を調整する場合、二酸化ケイ素(SiO)原料を変更する、炭酸カルシウム(CaCO)原料を変更する、膨張性黒鉛を使用する等によって調整することができる。また、造粒形態によって調整する場合、粒形状を変更する、バインダー種類を変更する、造粒時のスラリー中の水分濃度の調整する等によって調整可能である。
以上のように、本実施形態では、嵩比重が1.2[g/cm]以下であるモールドフラックスを用いるとともに、鋳型2内に所定の厚みのモールドフラックス層(未溶融層22及び溶融層23)が形成された状態で、添加高さH、落下領域面積A、及び供給速度Qの3つの要件を考慮した適正な方法でモールドフラックスを添加する。これにより、添加時における溶融層23浴面の乱れや添加フラックスの動力による影響を抑止できるので、未溶融モールドフラックス(未溶融層22の一部)が溶融層23に潜り込むこと、さらには、これによって生じるフラックスの過焼結を防止できる。よって、過焼結が原因で起こっていた、モールドフラックスに起因する欠陥の発生(鋳片縦割れ、ノロカミ及びブレイクアウト)を防止できるので、製品の品質を向上させることができる。
また、鋳片縦割れ及びノロカミの発生を抑止できることで、鋳造後のスカーフィングやグラインダによる研削処理を省略できるため、作業費の軽減及び歩留まり向上を図ることができる。また、HCR操業が可能になるため、納期短縮・加熱炉原単位の減少が図れる。さらに、鋳片縦割れやノロカミに起因するブレイクアウトが発生すると、操業を停止することによって、復旧に伴う長時間休止が発生し、設備復旧費も発生するが、ブレイクアウトの発生を防止できるため、製造機械の損失と設備復旧費の発生を防止できる。
ここで、鋳造条件及び連続鋳造機の構成の一例を下記に示す。なお、鋳造条件及び連続鋳造機の構成は下記に示す条件及び構成に限られず、変更可能である。また、本実施形態ではフィーダー3を鋳型2の上方に配置しているが、モールドフラックスの添加はフィーダー3を用いることなく、他の方法で添加してもよい。そのため、フィーダー3が鋳型2の上方に配置されていなくてもよい。
・鋼成分
炭素含有量[C]:0.0015[mass%]以上1.00[mass%]以下
・比水量
0.15[l/kg−steel]以上2.0[l/kg−steel]以下
・鋳造速度(定常状態)
<スラブ> 0.7[m/min.]以上2.4[m/min.]以下
<ブルーム>0.5[m/min.]以上0.9[m/min.]以下
・鋳型の上端の開口(内寸)
<スラブ>
(短辺)240[mm]×(長辺)800[mm]〜1800[mm]
(短辺)280[mm]×(長辺)2100[mm]
<ブルーム>
(短辺)380[mm]×(長辺)600[mm]
・浸漬ノズル
内径r:60[mm]以上90[mm](図1参照)
(但し、内径rは、吐出孔11,12が形成されていない部分の内径である。)
吐出孔11,12の傾斜角度θ:10°≦θ≦45°(図1参照)
(水平方向に対し10°以上45°以下、下方向に傾いて形成)
なお、鋳造速度が遅すぎると、1)鋳型2内の溶鋼21浴面が凝固する、2)前記1)によりモールドフラックスの健全な溶融が妨げられ、鋳片と鋳型との間に流入する溶融モールドフラックスが不足することにより、焼き付きや鋳片縦割れが生じやすくなる等の問題が生じる。一方、鋳造速度が速すぎると、鋳型2内の溶鋼21の浴面が乱れることで(モールドフラックスの添加方法に依存しない乱れ)、溶融層23の厚みが局所的に薄くなる。その結果、1)モールドフラックスを添加した時に過焼結が生じやすく、2)溶融モールドフラックスの鋳片−鋳型間への流入不足が局所的に起こることにより、焼き付きや鋳片縦割れが生じやすい等の問題が生じる。そこで、鋳造速度を上記のような通常の速度とすることが好ましい。
また、上述した実施形態では、図3,4に示すように、落下領域面積A,A,A,A,A・・・が全て同じ面積であるが、各落下領域面積が異なっていてもよい。例えば、フィーダー3の移動中に、1)フィーダー3から吐出される吐出速度を変える、2)添加高さHを変える等によって、各落下領域面積Aを異なる面積にすることができる。
さらに、上述した実施形態では、図4に示すように、全ての落下領域での最大供給速度Qmaxが1760[kg/(m・min.)]である場合を例示したが、最大供給速度Qmaxは1760[kg/(m・min.)]未満でもよく、各落下領域の最大供給速度Qmaxが異なっていてもよい。例えば、1)フィーダー3の移動速度を変える、2)落下領域面積Aを変化させる、3)落下領域面積Aを一定とし且つフィーダー3からの吐出速度を変化させる等によって、各落下領域の最大供給速度Qmaxを異なる速度にすることができる。
また、上述した実施形態では、フィーダー3を用いてモールドフラックスを連続的に添加したが(連続移動式散布)、フィーダー3を用いずにモールドフラックスを添加してもよい。以下に、他の添加方法について説明する。
〔手動による添加(バッチ式による散布)〕
スコップや勺等の道具を用いて一定量のモールドフラックスを掬い、これを鋳型2内に散布する。この場合、「添加高さH」は、添加時のスコップや勺等の位置から未溶融層22(浴面)までの鉛直方向距離を示す。また、「落下領域面積A」は、一回の添加で未溶融層22浴面にモールドフラックスが散布された領域の面積を示す。さらに、供給速度Qは、下記式によって求めることができる。
供給速度Q=(1回当たりの添加量[kg])÷(添加時の落下領域面積A[m])÷(落下領域での1回の添加における落下開始(添加開始)から落下終了までの時間[min.])
〔その他の添加方法〕
鋳型2上端や鋳型2上方にモールドフラックスを貯留し、プッシャー等により押し出して添加したり、シャッター等を用いて所定量を切り出したりする。この場合、「添加高さH」は、モールドフラックスの貯留位置から未溶融層22(浴面)までの鉛直方向距離を示す。例えば、モールドフラックスが鋳型2上端に貯留されている場合、「添加高さH」は、鋳型2上端から未溶融層22(浴面)までの鉛直方向距離を示す。また、「供給速度Q」は、本実施形態で例示した供給速度Q(=Qaverage/Atotal)と同様な方法で求めることができる。
次に、本発明の実施例及び比較例を説明する。
モールドフラックスの嵩比重及びモールドフラックスの添加条件を変えたときの欠陥の発生の有無を調べた。
表1〜3には、実施条件(鋳造条件)、実験条件(モールドフラックスの嵩比重及び添加条件)、及び実験結果(欠陥の発生の有無)を示している。また、表4には表1〜3の鋼成分a〜dを示し、表5には鋳片サイズ1〜4を示し、表6にはモールドフラックス銘柄α〜εの代表成分を示している。
下記に、表1〜3に示す実施条件、実験条件及び実験結果を説明する。
[実施条件]
<鋳造中 湯面レベル変更>
浸漬ノズルとメニスカスの相対位置を一定時間毎に意図的に変更させた場合、表1〜3に「実施」と示し、変更させなかった場合を「未実施」と示している。「実施」した実験では、浸漬ノズルを上下移動させたり、メニスカス位置(溶鋼浴面)を上下させたりすることにより、浸漬ノズルとメニスカスの相対位置を変更させた。このとき、溶鋼浴面の変更速度は0.013[mm/s]以上0.25[mm/s]とした。また、変更前と変更後で浴面レベルを15[mm]以上変えた。
<鋳型内電磁撹拌>
鋳型内電磁撹拌装置を作動させた時の「磁場周波数」及び「磁場強度」を示している。本例では、鋳型内が空のときに「磁場周波数」及び「磁場強度」を複数回測定し、これらの平均値を求め、これを表1〜3に示している。また、「磁場周波数」及び「磁場強度」の測定(測定地点)は、1)水平方向位置を、鋳型内壁面の長辺壁部から15[mm]且つ短辺壁部から15[mm]の位置とし、2)鉛直方向位置を、鋳型外部に設置された電磁コイルの鉄芯中心と同じ高さの位置で行った。さらに、測定には、ガウスメーター(テスラメーター、磁束密度計)を用いた。ここで、「磁場周波数」は1〜4[Hz]が好ましいとされ、一般的に2〜3[Hz]が採用されている。そこで、本例では、一律の3[Hz]とした。
[実験条件]
<モールドフラックスの嵩比重>
添加前の未溶融モールドフラックスの嵩比重をJIS−K5101に準拠して測定した。
<溶融層厚みH、未溶融層厚みH>
(1)図5に示すように、内寸が短辺t×長辺wである鋳型内において、短辺壁部から1/4w離れ且つ長辺壁部から1/2t離れた位置を代表点とし(例えば、図5に示すP点)、この地点の「溶融層厚み」及び「未溶融層厚み」を測定した。なお、表1〜3の実施条件では、測定地(代表点)の厚みを基に、測定地以外の厚み(溶融層厚み及び未溶融層厚み)を測定地と同等な厚みに制御できることがわかっている。そこで、代表点の厚みを鋳型内全体での厚みとして評価した。
(2)また、本例では、鋳造速度が定常速度となってから鋳造初期、鋳造中期及び鋳造末期に厚みを測定し、これらの平均値を「溶融層厚みH」及び「未溶融層厚みH」とした。
(3)さらに、厚みの測定は、1)Al線と、鉄線あるいはSUS線を浸漬させる、又は2)赤外線センサー、マイクロ波計及び渦流式のメニスカスレベルセンサーを用いることにより行った。
具体的には、1)では、Al線と、鉄線あるいはSUS線にテープ50を巻き付け、図6(a)に示すように、巻き付けた位置よりも下方の部分を溶鋼内に、所定時間、浸漬した(図6(a)にはAl線とSUS線を例示)。ここで、鋳型内の溶鋼、溶融層及び未溶融層は、これらの順に温度が高く、Al線は、溶鋼及び溶融層の温度下で溶融するが、未溶融層の温度下では溶融しない。一方、鉄線あるいはSUS線は、溶鋼の温度下で溶融するが、溶融層及び未溶融層の温度下では溶融しない。または、太めの鉄線あるいはSUS線を浸漬すると、溶鋼が凝固してこれらの線に付着する。そこで、図6(a)に示すように、浸漬後のAl線において、テープ50より下方の未溶融部分の長さlを「未溶融層厚み」とした。また、浸漬後の鉄線あるいはSUS線において、テープ50より下方の未溶融部分の長さlu+mを「未溶融層厚みと溶融層厚みの合計」とした。そして、「lu+m−l」(=未溶融層厚みと溶融層厚みの合計−未溶融層厚み)から「溶融層厚み」を求めた。
また、2)では、図6(b)に示すように、同一の高さ位置に固定した赤外線センサー、マイクロ波計及び渦流式のメニスカスレベルセンサーにより、それぞれ未溶融層上端までの距離L、溶融層上端までの距離L及び溶鋼上端までの距離Lを測定し、「L−L」から未溶融層厚みを求め、「L−L」から溶融層厚みを求めた。
<モールドフラックス添加方法>
連続移動式散布法(本実施形態参照)によりモールドフラックスを添加した場合を「連続」とし、スコップや勺等の道具を用いて手動により添加した場合を「バッチ」としている。
<落下領域面積A>
連続移動式散布の場合(表1〜3の「連続」)、フィーダーの移動を停止しながら添加したときは、停止中の添加時の最大落下領域面積を「落下領域面積A」とした。一方、フィーダーを移動させながら添加したときは、5秒間連続して添加したときのフィーダーの軌道下における総落下領域面積を「落下領域面積A」とした。
また、手動により添加した場合(表1〜3の「バッチ」)、1回の添加で鋳型内に散布された領域の面積を「落下領域面積A」とした。
ここで、本例では、モールドフラックスの投下状況を動画撮影し、画像解析から落下領域面積Aを算出した。また、一部の条件(バッチ等)については、鋳型内添加と同様の条件を鋳型外で再現し、その領域の測定値を落下領域面積Aとした。
<供給速度Q>
下記式から供給速度Qを求めた。
Q=(落下領域面積Aへの供給量[kg/min.])÷(落下領域面積A[m])
ここで、「落下領域面積Aへの供給量」とは、表1〜3に示す「モールドフラックスの連続添加時 落下速度」であり、連続移動式散布のようにフィーダーからモールドフラックスを吐出した場合はフィーダーからのモールドフラックスの吐出速度を用いて求めた。また、手動により添加した場合は(表1〜3の「バッチ」)、「落下領域面積Aへの供給量」を「1回あたりの投入質量[kg]÷落下時間[min.]」から求めた。
[実験結果]
<鋳片縦割れ、ノロカミ>
鋳片を室温まで冷却した後、鋳片表面(広面及び狭面)をスカーフィング或いはグラインダにより1.5[mm/面]研削した。そして、研削後の鋳片表面を目視で確認し、割れが存在しなかった場合、表1〜3に「無し」(評価:○)と示し、割れが存在した場合を「有り」(評価:×)と示している。また、目視確認で、ノロカミが存在しなかった場合を「無し」(評価:○)と示し、割れが存在した場合を「有り」(評価:×)と示している。
ここで、鋳片表面から1.5[mm]の厚みの範囲は鋳造後の加熱−圧延工程で生じるスケールロス量となるので、これより深い位置に割れが存在していないときは、製品欠陥が生じない。そこで、本例では、鋳片表面から1.5[mm]の厚みを基準に評価した。
<ブレイクアウト>
ブレイクアウトが発生した場合、表1〜3に「有り」(評価:×)と示し、ブレイクアウトが発生しなかった場合は「無し」(評価:○)と示している。本例(比較例)で生じたブレイクアウトは、大きくなった縦割れやノロカミが原因で生じたものであり、鋳型下で未凝固溶鋼が欠陥部位から流出した。評価に際しては、ブレイクアウトが発生する前に鋳片に縦割れやノロカミが発生しているかを調査することにより、いずれに起因したブレイクアウトであるかを判断した。
次に、実施例及び比較例の結果について説明する。
表1,2から、実施例1〜42では、鋳片に縦割れ及びノロカミが確認されなかった。また、鋳造中にブレイクアウトが発生しなかった。なお、実施例11,33では、鋳片表層にノロカミが存在したが、スカーフを実施することによりノロカミが除去された。
一方、比較例1〜4では、嵩比重が1.2[g/cm]を超えるモールドフラックスを用いた(1.3[g/cm],1.4[g/cm])。そのため、添加時に未溶融モールドフラックス(未溶融層の一部)が溶融層に潜り込んで焼結物が生成したことにより、鋳片に縦割れが生じたと考えられる。
また、比較例5〜7では、溶融層厚みHが10[mm]未満であったため(5[mm],9[mm])、溶融層が非常に高温となった。このような溶融層に未溶融モールドフラックスが巻き込まれたことにより、焼結物が生成し、鋳片に縦割れやノロカミが生じたと考えられる。
さらに、比較例8〜10では、未溶融層厚みHが20[mm]未満と薄かったため(15[mm],19[mm])、未溶融層が添加時の緩衝材として十分に機能しなかった。そのため、添加時に未溶融モールドフラックスが溶融層へ潜り込んで焼結物が生成したことにより、縦割れやこれに起因するブレイクアウトが発生したと考えられる。
また、比較例11〜14では、モールドフラックスの添加高さHが250[mm]を超え、高位置からモールドフラックスを添加した(255[mm],300[mm])。このため、添加時に未溶融モールドフラックスが溶融層へ潜り込んで焼結物が生成したことにより、縦割れやノロカミが生じたと考えられる。
さらに、比較例15,17では、落下領域面積Aが0.0025[m]未満と小さかった(0.0020[m])。また、比較例16,18では、供給速度Qが1760[kg/(m・min.)]を超え、供給速度Qが速かった(1764[kg/(m・min.)],2000[kg/(m・min.)])。このため、添加時に未溶融モールドフラックスが溶融層23に潜り込み、焼結物が生成したしたことにより、縦割れやノロカミが生じたと考えられる。
また、比較例19は、モールドフラックスの嵩比重、溶融層厚みH、未溶融層厚みH、添加高さH、落下領域面積A及び供給速度Qの全ての条件が本発明の範囲から外れた例である。このような条件で添加すると、未溶融モールドフラックスが溶融層23に潜り込んで焼結物が生成し、これが原因で縦割れ、ノロカミ及びブレイクアウトが発生した。
上記結果から、本発明の添加方法でモールドフラックスを添加した実施例では、縦割れ、ノロカミ及びブレイクアウトなどのモールドフラックスに起因する欠陥(製品への欠陥)を防止できることがわかった。一方、本発明の添加方法の要件を1つでも満たさない方法で添加すると(比較例)、モールドフラックスに起因する欠陥を防止できなかった。つまり、本発明の添加方法のうちいずれかの要件だけを考慮しても、フラックスの過焼結を防止できないことがわかった。このように、モールドパウダーを添加する際、本発明の要件のいずれかだけを適切な範囲としても(本発明の範囲を満たしても)、欠陥の要因が残ることから欠陥の発生を防止できないが、全ての要件を適切に考慮すると(本発明の範囲とすると)欠陥を防止できることがわかった。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。そして、本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上述した鋳造条件や連続鋳造機の構成は一例であり、各条件や構成は変更可能である。また、本発明の添加方法は、様々な鋼種や形状(スラブ、ブルーム、ビレット等)の鋼の鋳造に適用することができ、薄板製品向け鋼種、厚板向け鋼種、及び線条向け鋼種等に好適に適用することができる。
また、モールドフラックスを連続的に添加する場合(連続移動式散布)、フィーダーの動作(軌跡)やフィーダーの位置及び本数等は、本実施形態や図1〜4に示す例に限定されず、変更可能である。
本発明は、モールドフラックスに起因する欠陥の発生を防止することにより、製品の品質を向上させることができることから、鋼の連続鋳造に利用することができる。
1 浸漬ノズル
2 鋳型
3 フィーダー
11,12 吐出孔
21 溶鋼
22 未溶融層
23 溶融層(溶融モールドフラックス)
50 テープ
100 連続鋳造機

Claims (1)

  1. モールドフラックスを鋳型内へ添加しながら、鋼を連続鋳造するにあたり、
    添加前のモールドフラックスの嵩比重を1.2g/cm以下とし、
    鋳型内溶鋼浴面上の溶融モールドフラックス厚みを10mm以上とし、
    前記溶融モールドフラックス上の未溶融層厚みを20mm以上とし、
    モールドフラックスを自由落下させる落下開始位置から未溶融層までの落下距離を250mm以下とし、
    モールドフラックス添加時のフラックス落下領域面積を0.0025m以上とし、落下領域におけるモールドフラックスの供給速度を1760kg/(m・min.)以下としながら鋳型内へモールドフラックスを添加することを特徴とする連続鋳造鋳型へのモールドフラックスの添加方法。
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