JP3783357B2 - 印字装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも1つのヘッド部を有する印字ヘッドを搭載したキャリッジを複数個備えた印字装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、カラーインクジェットプリンタは、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色の各ヘッド部を並列に有する印字ヘッドを単一のキャリッジに搭載し、キャリッジを、印字媒体の幅方向において走査させて印字を行うようになっている。
【0003】
かかるインクジェットプリンタにおいては、黒印字中に他の色のヘッド部が大気にさらされ、インクの乾燥による目詰まりや固着等の問題が発生することから、黒印字中でも定期的にホームポジションに戻って回復動作としての空吐出を行ったり、印字開始時や人為的な吸引回復動作時でも他の色のヘッド部からのインクの吸引を行うことが一般的であり、そのため、印字時間が長くなるし、また、このような回復動作によって、印字しないにもかかわらず、インクを消費しなければならず、著しく不経済である。それに加えて、常に、4個のヘッド部を搭載し重量があるキャリッジを駆動しなければならず、そのため、キャリッジ駆動モータの負荷が大きくなっていた。
【0004】
そこで、例えば特開平1−221251号公報に記載されるように、少なくとも1つのヘッドを搭載したキャリッジを複数個設け、ヘッドを含む個々のキャリッジをそれぞれ別々に駆動制御するようにし、1つのキャリッジに搭載されているヘッドを使用している際には他のキャリッジは待機状態にしておき、無駄な空吐出等を不要とすると共に、キャリッジ駆動モータの負荷を低減したインクジェットプリンタが提案されている。
【0005】
ところで、かかる印字装置においては、いわゆるカラー印字の際には、黒インクを吐出する印字ヘッドを搭載するキャリッジと、他の色インクを吐出する印字ヘッドを搭載するキャリッジとを同時に駆動しなければならない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したカラー印字の際の位置制御は、例えばエンコーダ等にて、各印字ヘッド(キャリッジ)の位置を検出し、それに基づいて行われるが、その制御系統が1つしかないため、両ヘッドを完全に同期して同時に移動させなければならず、制御が複雑になり、かつ高価な制御回路を用いなければ高速に印字できないという課題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、印字ヘッドを、キャリッジごとに簡単に制御することができる印字装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、少なくとも1つのインクジェット式ヘッド部を有する印字ヘッドを搭載した複数のキャリッジと、該キャリッジを駆動するキャリッジ駆動手段と、前記印字ヘッドの不吐出あるいは吐出不良を回復するためのパージ機構と、前記キャリッジ駆動手段に関連づけられ前記印字ヘッドによる印字媒体に対する印字、及び前記パージ機構による前記印字ヘッドに対する回復動作を制御する制御手段とを備える印字装置において、前記制御手段は、前記キャリッジごとに各キャリッジの位置に基づいて前記印字ヘッドを制御するとともに、一方の前記キャリッジ上の前記印字ヘッドによる印字中に、前記パージ機構による他方の前記キャリッジ上の前記印字ヘッドに対する回復動作を制御する複数の制御系統を有することを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、複数の制御系統によって、キャリッジごとに、各キャリッジの位置に基づいて、印字ヘッドが制御される。よって、各制御系統は比較的簡単なものでも、それぞれ対応する印字ヘッドを制御するので、全体として制御が簡単でありながら、高速で印字することができる。また、一方の前記キャリッジ上の前記印字ヘッドによる印字中に、前記パージ機構による他方の前記キャリッジ上の前記印字ヘッドに対する回復動作を制御できるので、一方の印字ヘッドの印字データが入力されたときに、他方の印字ヘッドのパージ完了を待つことなく、一方の印字ヘッドによる印字を開始し、一方の印字ヘッドの印字データのみの場合に早く完了することとができ、また、一方の印字ヘッドで印字中に、他方の印字ヘッドのパージを行っておくことで、両印字ヘッドによる印字に移行した際に、パージ処理の待ち時間をなくすことができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の印字装置において、前記複数の制御系統が、それぞれ、前記キャリッジごとに設けられ各キャリッジの位置を独立して検出する位置検出手段を備え、その位置検出手段よりの信号に基づいて、前記キャリッジごとに印字ヘッドを制御するものである。
【0011】
請求項2の発明によれば、位置検出手段によって、各キャリッジの位置が独立して検出され、その位置検出手段よりの信号に基づいて、前記キャリッジごとに印字ヘッドが精度よく制御され、インクジェット印字等の高解像度の印字が容易に実現される。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2の印字装置において、前記複数の制御系統が、それぞれ媒体送り等を制御する制御系統とは独立したハードウェア回路で構成されている。
【0013】
請求項3の発明によれば、媒体送り、媒体検出、インク検出、パネル設定等の比較的複雑な制御を必要とする制御系統の負荷が軽くされ、前記制御系統が能力の低い安価なものとされる。また、印字ヘッドのための単純な繰り返し制御がハードウェア回路で処理されることで、前記制御系統の能力が低くても高速印字が可能とされる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの印字装置において、前記制御手段が、印字処理が開始されるとき、前記一方のキャリッジ上の印字ヘッド及び他方のキャリッジ上の印字ヘッドに対してそれぞれ不使用期間に基づいて前記パージ機構による回復動作の実行、非実行を制御するものである。
【0015】
請求項4の発明によれば、前記制御手段によって、印字処理が開始されるとき、前記一方のキャリッジ上の印字ヘッド及び他方のキャリッジ上の印字ヘッドに対してそれぞれ不使用期間に基づいて前記パージ機構による回復動作の実行、非実行が制御される。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの印字装置において、前記制御手段が、前記一方のキャリッジ上の印字ヘッド及び前記両キャリッジ上の印字ヘッドに対する印字要求に基づき、前記各印字ヘッドが回復動作中であるかどうかを判定し、前記一方のキャリッジ上の印字ヘッドに対する印字要求は、前記他方のキャリッジ上の印字ヘッドが回復動作中であっても実行するものである。
【0017】
請求項5の発明によれば、前記制御手段によって、前記一方のキャリッジ上の印字ヘッド及び前記両キャリッジ上の印字ヘッドに対する印字要求に基づき、前記各印字ヘッドが回復動作中であるかどうかが判定され、前記一方のキャリッジ上の印字ヘッドに対する印字要求は、前記他方のキャリッジ上の印字ヘッドが回復動作中であっても実行される。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかの印字装置において、前記他方のキャリッジ上の印字ヘッドが、複数のヘッド部を有し、前記制御系統は、回復動作を行う各ヘッド部を前記パージ機構に順次対向させる位置に移動させ、それぞれのヘッド部に対して回復動作を繰り返すものである。
【0019】
請求項6の発明によれば、前記他方のキャリッジ上の印字ヘッドが複数のヘッド部を有する場合、前記制御系統は、回復動作を行う各ヘッド部を前記パージ機構に順次対向させる位置に移動させ、それぞれのヘッド部に対して回復動作が繰り返えされる。
【0020】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれかの印字装置において、前記一方のキャリッジ上の印字ヘッドが、黒インクを吐出するものである一方、他方のキャリッジ上の印字ヘッドが、色インクを吐出する複数のヘッド部を有するものであり、ファクシミリからの印字データは、前記黒インクにより印字されるように構成されている。
【0021】
請求項7の発明によれば、ファクシミリからの印字データに基づき、一方のキャリッジ上のヘッド部が制御され、他方のキャリッジが駆動されることなく、印字媒体に対しファクシミリからの印字データが黒インクにより印字される。また、使用頻度が最も高い黒インクを吐出する印字ヘッドが前記一方のキャリッジに搭載され、色インクを吐出する複数のヘッド部を有する印字ヘッドが他方のキャリッジに搭載されていることから、前記一方のキャリッジ上のヘッド部による印字中に、その印字とは関係なく、例えば他方のキャリッジ上のヘッド部に対し回復動作を行うことができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0023】
図1は本発明に係る印字装置であるインクジェットプリンタの全体構成を示す概略斜視図である。同図において、インクジェットプリンタ1は、左右方向に延びる回転軸(図示せず)によってプリンタフレーム2に回転可能に支承される円筒形状のプラテンローラ3を有する。プラテンローラ3は、給紙カセット又は手差し給紙部から供給された印字用紙4(印字媒体)を、第1及び第2の印字ヘッド5,6に対面させながら搬送するものであり、いわゆる紙送り機構LMの一部を構成している。尚、前記第1及び第2の印字ヘッド5,6は、印字用紙4にインク液滴を吐出するノズルを有し印字用紙4に対し印字動作を行うインクジェット式であり、紙送り機構LMは、該紙送り機構LMを駆動し印字用紙4を搬送する紙送りモータとしてのLFモータ124(図4参照)を備えている。
【0024】
前記印字用紙4は、プリンタフレーム2の後方の用紙供給口(図示せず)から矢印A方向に供給され、プラテンローラ3の回転により矢印B方向に送給され、用紙排出口(図示せず)から矢印C方向に排出されるように構成されている。前記プラテンローラ3の前方には、第1及び第2の印字ヘッド5,6が搭載される第1及び第2のキャリッジ7,8がプラテンローラ3の軸線に沿って移動可能に設けられている。
【0025】
前記キャリッジ7,8は、印字ヘッド5,6及び該印字ヘッド5,6に供給されるインクを収容したインクカートリッジ9A,9B,9C,9Dをそれぞれ着脱可能に搭載している。尚、本例では、第1のキャリッジ7には、ブラックの1色についてのヘッド部を有する印字ヘッド5及びインクカートリッジ9Aが、第2のキャリッジ8には、イエロー、シアン、マゼンタの3色についてのヘッド部6A,6B,6Cを有する印字ヘッド6及びインクカートリッジ9B,9C,9Dがそれぞれ搭載されている。
【0026】
前記第1及び第2のキャリッジ7,8は、フレーム部材10に両端部が支承されるキャリッジ軸11(ガイドロッド)にスライド可能に嵌挿され、フレーム部材10に支持された状態で、前記プリンタフレーム2に、キャリッジ軸11がプラテンローラ3の軸線と平行になるように装着される。また、キャリッジ7,8の係合部7a,8aが、キャリッジ軸11と平行に延びるガイドレール部12によって案内されるようになっている。これによって、キャリッジ7,8に搭載された印字ヘッド5,6は、プラテンローラ3の軸線に沿ってスライド移動により往復移動可能となっている。
【0027】
前記キャリッジ7,8はタイミングベルト13,14の一部に固着され、該タイミングベルト13,14がタイミングプーリ(図示せず)間に巻き掛けられてキャリッジ機構CMが構成され、前記一方のタイミングプーリに第1及び第2のCRモータ15,16(キャリッジ駆動モータ)が連結されている。よって、CRモータ15,16が回転駆動されることで、キャリッジ機構CMを介して、第1及び第2のキャリッジ7,8が、印字用紙4に印字を行う印字エリアにおいて往復移動するようになっている。また、キャリッジ機構CMとCRモータ15,16とによって、前記印字エリアと、後述する吸引キャップ21、吸引ポンプ22及びワイパ部材24による回復動作を行う回復エリアとの間を移動させるように構成されている。
【0028】
前記CRモータ15,16としては、回転方向と回転量を制御可能なものであって、一般的なDC/ACモータが採用されている。そして、図2に示すように、キャリッジ7,8の走行方向に沿って設けられ透明なPETフィルムに黒色の縦ストライプが印字されたリニアエンコーダ51と、キャリッジ7,8ごとに設けられ前記リニアエンコーダ51に基づいてキャリッジ7,8の位置を検出するフォトセンサ52,53(例えば透過型フォトインタラプタ)により、後述の黒エンコーダ信号及び色エンコーダ信号を出力する第1及び第2の位置検出手段54,55が構成され、キャリッジ7,8の走査量がフォトセンサ52,53によりリニアエンコーダ51の縦ストライプを計数することによって決定される。そして、第1及び第2の位置検出手段54,55よりの信号に基づいて、後述する第1及び第2のゲートアレイ111,112において、キャリッジ7,8ごとに印字ヘッド5,6のための印字タイミング信号が生成される。尚、DC/ACモータのほかにもオープンループ制御のパルスモータを採用することができ、この場合は、位置検出手段54,55を省略することができる。
【0029】
また、前記プラテンローラ3に対応する印字エリアの右側には、印字ヘッド5,6の不吐出あるいは吐出不良を回復するためのパージ機構RMが配設された回復エリアが形成されている。このようなパージ機構RMを設けているのは、インクジェット式の印字ヘッド5,6は、使用中に内部に気泡が発生したり、インクが乾燥したりする等の原因により吐出不良を起こすので、これを良好な吐出状態に回復させるためである。
【0030】
前記パージ機構RMは、印字ヘッド5,6の移動経路内に突出した突出位置と印字ヘッド5,6の移動経路より後退した待機位置との間を移動可能で、突出位置において印字ヘッド5,6のノズル面に密着する吸引キャップ21と、前記突出位置において、印字ヘッド5,6が吸引キャップ21に覆われているときに、負圧を発生させ、前記吸引キャップ21を通じて、印字ヘッド5,6内のインクを吸引する吸引ポンプ22と有する吸引手段23を備えている。
【0031】
前記吸引手段23に隣接して、印字エリア側に印字ヘッド5,6のノズル面を払拭するように印字ヘッド5,6に対し相対移動可能なワイパ部材24が、その反対側に印字を行わない際に印字ヘッド5,6のノズル面を覆いインク蒸発を防止してノズル面が乾燥するのを回避する保護キャップ装置25,26がそれぞれ配設されている。
【0032】
そして、前記ワイパ部材24、吸引キャップ21及び吸引ポンプ22が、回転駆動されるカム部材27を有する駆動手段に関連づけられ、前記ワイパ部材24の進退、吸引キャップ21の進退及び吸引ポンプ22の作動は、共通のカム部材27の回転によって制御されるように構成されている。
【0033】
従って、前記カム部材27が一定のタイミングで回転駆動されることで、吸引キャップ21のキャッピング、吸引ポンプ22によるインクの吸引、及びワイパ部材24による印字ヘッド5,6のノズル面の払拭が順に行われ、吸引ポンプ22によって吸引されたインクは、吸引ポンプ22を介して、廃インクタンク31に吐出され、そして廃インクタンク31内の吸着材32に吸着される。
【0034】
前記保護キャップ装置25,26は、第1及び第2の保護キャップ41,42を有し、該保護キャップ41,42を支持するケーシング43,44が、キャリッジ7,8の移動方向と平行に延びるガイドロッド45にスライド移動及び回動が可能なるように支承されている。
【0035】
前記保護キャップ41,42によるキャッピングは同様に行われるので、保護キャップ41によるキャッピングについて、図3に基づいて説明する。図3に示すように、前記保護キャップ41のケーシング43には、キャリッジ7の、印字エリア外方への移動時に該キャリッジ7の係合部7bに係合して、キャリッジ7と一体的にスライド移動するための被係合部43aが前方に突設されている。そして、キャリッジ7が印字エリアから回復エリア側に移動すると、キャリッジ7の係合部7bがケーシング43の被係合部43aに係合するので、保護キャップ41はキャリッジ7の移動に追従してスライド移動する。このスライド移動の際、ケーシング43の係合凸部43bが、傾斜カム面47の作用によりガイドロッド45の回りに回動し、その結果、保護キャップ41は印字ヘッド5に接近する方向へ回転し、保護キャップ41は印字ヘッド5のノズル面に接触して、キャッピングを行うことになる。その後、再びキャリッジ7が印字エリア方向に移動する場合には、スプリング部材46の付勢力により保護キャップ41が印字エリア側に移動しながら印字ヘッド5から離れ、キャリッジ7が回復エリアから脱すると、初期状態に戻る。
【0036】
次に、前記実施の形態に係るインクジェットプリンタ1の制御部を、図4のブロック図を参照しつつ説明する。
【0037】
この制御部は、周知の演算処理装置であるCPU101を中心に構成される。CPU101は、セントロインターフェース102を介して、パソコン等のホストコンピュータ103の接続され、ホストコンピュータ103からの印字指令を受け、その指令に従って種々の印字を実行するようになっている。また、CPU101は、モデム104を介して、電話回線105に接続され、ファクシミリ信号を受け、その信号に従って印字を実行するようになっている。
【0038】
前記CPU101には、印字ヘッド5,6及びCRモータ15,16に関連づけられ印字用紙4に対する印字を制御する印字制御手段として機能するもので、操作パネル106が接続されると共に,アドレスバス及びデータバスを通じて、ROM107,RAM108が接続されている。操作パネル106は、用紙サイズその他の種々のパラメータを設定し、それらを表示するものである。ROM107は、インクジェットプリンタ1の制御上必要な種々のプログラム類を格納するものである。RAM108は、ホストコンピュータ103から転送された印字データや、インクジェットプリンタ1の制御上必要な種々の数値の一時記憶を行うものである。
【0039】
また、CPU101には、アドレスバス及びデータバスを通じて、2つの制御系統をハードウエア回路で構成する第1及び第2のゲートアレイ111,112が並列に接続され、該ゲートアレイ111,112が、ヘッド駆動回路113,114を通じて、印字ヘッド5及び6(6A,6B,6C)を、キャリッジ7,8ごとに各キャリッジ7,8の位置に基づいて制御するようになっている。よって、第1のキャリッジ7上の印字ヘッド5と、第2のキャリッジ8上の印字ヘッド6とを独立して印字制御したり、異なる動作を行わせることが可能となり、例えば、第1のキャリッジ7上の印字ヘッド5のヘッド部による印字中に、第2のキャリッジ8上の印字ヘッド6のヘッド部6A〜6Cに対し回復動作を行うようにすることができる。
【0040】
従って、媒体送り、媒体検出、インク検出、パネル設定等の比較的複雑な制御を必要とするCPU101の負荷を軽くし、CPU101を能力の低い安価なものにすることが可能となる。それに加えて、印字ヘッド5,6のための単純な繰り返し制御をハードウェア回路である第1及び第2のゲートアレイ111,112が処理するようにしているので、CPU101の能力が低くても高速印字が可能となる。
【0041】
なお、各ゲートアレイ111,112には、それぞれ、位置検出手段54,55よりの黒エンコーダ信号及び色エンコーダ信号が入力されるようになっており、イメージメモリ115,116を備える。
【0042】
また、前記CPU101は、LF駆動回路121及びCR駆動回路122,123を介してLFモータ124及びCRモータ15,16を駆動制御するようになっている。
【0043】
さらに、CPU101には、吸引ポンプが原点位置にあることを検出する原点センサ125、及び新たに供給される印字用紙4の先端を検出するペーパ・センサ126よりの信号が入力される。
【0044】
以上のように構成されたインクジェットプリンタ1の動作について説明する。
【0045】
まず、インクジェットプリンタ1においては、通常、印字ヘッド5,6は回復エリアのうちの保護キャップ41,42で覆われた状態で待機位置にある。そして、印字データが入力されると、印字が行われる。
【0046】
そして、カラー印字信号がCPU101に入力された場合は、印字用紙4は、プラテンローラ3と印字ヘッド5,6との間に供給され、CRモータ15,16の作動により印字ヘッド5,6が待機位置から印字開始位置に移動させられる。このとき、保護キャップ41,42は後退される。その結果、印字ヘッド5,6が、印字データに基づいてインクを噴射しつつ印字エリアにおいて往復移動せしめられることによって、印字用紙4上にカラー印字が行われる。
【0047】
そして、RAM108の印字データメモリに印字すべき印字データがなくなり、印字が終了すると、印字ヘッド5,6が印字終了位置から待機位置に移動させられ、前進した保護キャップ41,42にて覆われ、使用しない間の印字ヘッド5,6のノズル面の乾燥が防止される。
【0048】
また、ファクシミリ信号や黒印字信号がCPU101に入力された場合は、印字ヘッド5のみが印字エリアに移動し、印字ヘッド6は回復エリアで保護キャップ42で覆われた状態で待機状態を維持し、印字ヘッド6のノズル面の乾燥が防止される。
【0049】
前記印字用紙4は、プラテンローラ3と印字ヘッド5との間に供給され、CRモータ15の作動により印字ヘッド5が待機位置から印字開始位置に移動させられる。このとき、保護キャップ41は後退される。その結果、印字ヘッド5が、印字データに基づいてインクを噴射しつつ印字エリアにおいて往復移動せしめられることによって、印字用紙4上に、黒印字が行われる。
【0050】
そして、印字が終了すると、印字ヘッド5が印字終了位置から待機位置に移動させられ、前進した保護キャップ41にて覆われ、使用しない間の印字ヘッド5のノズル面の乾燥が防止される。
【0051】
また、使用者の判断によって、操作パネルにおけるパージスイッチが操作され、パージ指令が入力されると、パージ機構RMを作動させるパージモードに入り、吸引作動プログラムが実行される。即ち、CRモータ15,16によるキャリッジ機構CMの駆動によって、印字ヘッド5,6が上記待機位置から吸引キャップ21と対向するパージ可能な位置に移動せしめられる。カム部材27が一回転し、所定のパージ位置にある印字ヘッド5,6の1つのヘッド部に対し吸引キャップ21及びワイパ部材24を接離する動作、吸引ポンプ22により吸引・排出動作が行われる。そして、パージ指令が入力された各ヘッド部を順次パージ位置に移動させ、同様の動作が繰り返される。ここで、吸引動作には、吸引キャップ21をノズル面に密着させて吸引ポンプ22により印字ヘッド5,6からインクを吸引する動作、吸引キャップ21の少なくとも一部をノズル面から離して吸引ポンプ22により吸引キャップ21内からインクを吸引する、いわゆる空吸引動作が含まれる。
【0052】
続いて、前記インクジェットプリンタ1の印字開始時における処理の流れについて、図5に沿って説明する。なお、本プリンタ1は、ファクシミリの出力装置としても機能し、黒インクが他のインクよりも使用頻度が多くなることから、第1のキャリッジ7に搭載されている印字ヘッド5(黒ヘッド)の回復動作を、第2のキャリッジ8に搭載されている印字ヘッド6(色ヘッド)の回復動作よりも優先するようになっている。
【0053】
印字データが入力され印字処理が開始されると、第1のキャリッジ7に搭載されている印字ヘッド5(黒ヘッド)の回復動作を、第2のキャリッジ8に搭載されている印字ヘッド6(色ヘッド)の回復動作よりも優先するために、まず、黒ヘッドである第1の印字ヘッド5が例えば3日不使用であったか否かが判定される(ステップS1)。そして、3日不使用であれば、第1の印字ヘッド5のパージ処理が上記と同様に開始され(ステップS2)、3日不使用でなければ、第1の印字ヘッド5についてはパージ処理の必要がないと考えられるので、直ちにステップS3へ移行し、第2の印字ヘッド6が3日不使用であったか否かの判定がなされる。
【0054】
そして、第2の印字ヘッド6が3日不使用であれば、第2の印字ヘッド6のパージ処理が開始され(ステップS4)、第2の印字ヘッド6が3日不使用でなければ、第2の印字ヘッド6についてはパージ処理の必要がないと考えられるので、直ちにステップS5に移行し、入力されたデータ中に第1の印字ヘッド5に対する印字の要求があるか否の判定がなされる。
【0055】
第1の印字ヘッド5に対する印字の要求(以下黒印字要求という)がある場合には、第1の印字ヘッド5がパージ処理中であるか否かが判定され(ステップS6)、第1の印字ヘッド5がパージ処理中であれば、黒印字できないので、第2の印字ヘッド6に対する印字の要求(以下色印字要求という)があるか否かが判定される(ステップS7)。その一方、第1の印字ヘッド5がパージ処理中でなければ、第1の印字ヘッド5による黒印字が開始され(ステップS8)、黒印字要求がリセットされ(ステップS7)、ステップS9に移行する。
【0056】
ステップS9の判定において、色印字要求がある場合には、第2の印字ヘッド6または第1の印字ヘッド5がパージ処理中であるか否かが判定され(ステップS10)、第2の印字ヘッド6及び第1の印字ヘッド5がパージ処理中でなければ、第2の印字ヘッド6による色印字が開始され(ステップS11)、色印字要求がリセットされ(ステップS12)、第1又は第2の印字ヘッド5,6による印字の要求があるか否かが再度判定される(ステップS13)。そして、印字要求があれば、ステップS5に移行し、ステップS5〜S13の処理を繰り返す一方、印字要求がなければそのまま終了する。
【0057】
一方、第2の印字ヘッド6または第1の印字ヘッド5がパージ処理中であれば、色印字できないので、ステップS13に移行する。
【0058】
上記ステップS2,S4,S8,S10のパージ開始または印字開始は、それらの動作を開始させるもので、それらの動作の実行中に、次の処理に進むことができる。つまり、第2の印字ヘッド6に対してパージを開始させておいて(ステップS4)、第1の印字ヘッド5のパージが完了または不要ならば、黒印字を開始する(ステップS8)ことができる。そして、第2の印字ヘッド6のパージが完了すれば、黒印字に並行して色印字を開始する(ステップS11)ことができる。また、印字データが黒印字のみであっても、第2の印字ヘッド6のパージ要否を判断して必要ならば、黒印字中に、その第2の印字ヘッド6のパージを実行しておくので、その後、3日以内にカラーデータが入力されたときには、パージ処理を全く省略して印字を開始することができる。
【0059】
一般に黒インクは色インクよりも使用頻度が高く、特に、ファクシミリからの印字データは黒インクで印字されるので、上記のように、第1の印字ヘッド5のパージ処理が第2の印字ヘッド6よりも優先され、第2の印字ヘッド6のパージ完了を待つことなく、第1の印字ヘッド5による印字が開始される。このため、黒印字のみの場合、早く完了することができる。また、このように黒印字中に、第2の印字ヘッド6のパージを行っておくので、カラー印字に移行した際に、パージ処理のための待ち時間をなくすることが可能になる(不使用期間が3日以内のとき)。
【0060】
前記実施の形態においては、印字用紙4の搬送経路の一側に、第1の及び第2のキャリッジ7,8の印字ヘッド5,6に対する第1及び第2の保護キャップ41,42が独立して設けられているが、本発明はそれに限定されるものではなく、例えば図6に示すように、第1及び第2のキャリッジ7,8を単一のガイドロッド(図示せず)に移動可能に挿通し、印字用紙4の搬送経路の一側に、第1のキャリッジ7の印字ヘッド5に対する第1の保護キャップ41を設ける一方、他側に第2のキャリッジ8の印字ヘッド6に対する第2の保護キャップ42を、回復装置であるワイパ部材24及び吸引キャップ21と共に設けるようにすることも可能である。このようにすれば、第1のキャリッジ7の印字ヘッド5により印字が行われている際には、第2のキャリッジ8の印字ヘッド6が第2の保護キャップ42にてキャッピングされて印字ヘッド6のノズル面の乾燥を防止し、第2のキャリッジ8の印字ヘッド6により印字が行われている際には、第1のキャリッジ7の印字ヘッド5が第1の保護キャップ41にてキャッピングされて印字ヘッド5のノズル面の乾燥を防止することができる。よって、一方のキャリッジの印字ヘッドにより印字が行われている際には、他方のキャリッジの印字ヘッドを保護キャップにてキャッピングして印字ヘッドのノズル面の乾燥を防止することができる。
【0061】
さらに、図7に示すように、第1及び第2のキャリッジ7,8を、それぞれ、平行に設けられた第1及び第2のキャリッジ軸11A,11Bに移動可能に挿通したものにも適用することができる。このようにすれば、第1及び第2のキャリッジ7,8を、それぞれ、平行に設けられたキャリッジ軸11A,11Bに移動可能に挿通していることから、第1及び第2のキャリッジ7,8が全く干渉することがなく、各印字ヘッド5,6による印字の制御の自由度を著しく高めることができる。この図7において、保護キャップ41,42は、吸引キャップを兼ねる。
【0062】
また、前記実施の形態においては、黒インクを吐出する第1の印字ヘッド5と、他の色インクを吐出する複数のヘッド部を有する第2の印字ヘッド6とに分けており、ファクシミリ情報の出力装置としても用いる場合に特に有利となるようにしているが、本発明はそれに限定されるものではなく、いずれの印字ヘッドも複数のヘッド部を有するような場合にも適用することは可能である。
【0063】
【発明の効果】
本発明は、以上に説明したような形態で実施され、以下に述べるような効果を奏する。
【0064】
請求項1の発明は、上記のように、キャリッジごとに各キャリッジの位置に基づいて前記印字ヘッドを制御する複数の制御系統を有するので、複数の制御系統それぞれによって、キャリッジごとに、各キャリッジの位置に基づいて、印字ヘッドを制御することができ、各制御系統は比較的簡単なものでも、それぞれ対応する印字ヘッドを制御するので、全体として制御が簡単でありながら、高速で印字することができる。
また、一方の前記キャリッジ上の前記印字ヘッドによる印字中に、前記パージ機構による他方の前記キャリッジ上の前記印字ヘッドに対する回復動作を制御できるようにしているので、一方の印字ヘッドの印字データが入力されたときに、他方の印字ヘッドのパージ 完了を待つことなく、一方の印字ヘッドによる印字を開始して、一方の印字ヘッドの印字データのみの場合に早く完了することができ、また、一方の印字ヘッドで印字中に、他方の印字ヘッドのパージを行っておくことで、両印字ヘッドによる印字に移行した際に、パージ処理の待ち時間をなくすことができる。
【0065】
請求項2の発明は、前記複数の制御系統が、それぞれ、各キャリッジの位置を独立して検出する位置検出手段を備え、その位置検出手段よりの信号に基づいて、前記キャリッジごとに印字ヘッドを制御するようにしているので、各キャリッジの位置を独立して検出する位置検出手段よりの信号に基づいて、前記キャリッジごとに印字ヘッドを制御して、インクジェット印字等の高解像度の印字を容易に実現することが可能となる。
【0066】
請求項3の発明は、前記複数の制御系統を、それぞれ媒体送り等を制御する制御系統とは独立したハードウェア回路で構成するようにしているので、媒体送り、媒体検出、インク検出、パネル設定等の比較的複雑な制御を必要とする制御系統の負荷を軽くし、その制御系統を能力の低い安価なものにすることができる。また、印字ヘッドのための単純な繰り返し制御をハードウェア回路が処理するようにしているので、前記制御系統の能力が低くても高速印字が可能となる。
【0067】
請求項4の発明は、前記制御手段によって、印字処理が開始されるとき、前記一方のキャリッジ上の印字ヘッド及び他方のキャリッジ上の印字ヘッドに対してそれぞれ不使用期間に基づいて前記パージ機構による回復動作の実行、非実行を制御することができる。
【0068】
請求項5の発明は、前記制御手段によって、前記一方のキャリッジ上の印字ヘッド及び前記両キャリッジ上の印字ヘッドに対する印字要求に基づき、前記各印字ヘッドが回復動作中であるかどうかを判定し、前記一方のキャリッジ上の印字ヘッドに対する印字要求を、前記他方のキャリッジ上の印字ヘッドが回復動作中であっても実行することができる。
【0069】
請求項6の発明は、前記他方のキャリッジ上の印字ヘッドが複数のヘッド部を有する場合、前記制御系統は、回復動作を行う各ヘッド部を前記パージ機構に順次対向させる位置に移動させ、それぞれのヘッド部に対して回復動作を繰り返えすことができる。
【0070】
請求項7の発明は、使用頻度が最も高い黒インクを吐出する印字ヘッドを一方のキャリッジに搭載し、色インクを吐出する複数のヘッド部を有する印字ヘッドを他方のキャリッジに搭載しているので、ファクシミリからの印字データに基づき、前記一方のキャリッジ上のヘッド部を制御して、他方のキャリッジを駆動することなく、印字媒体に対しファクシミリからの印字データを黒印字により印字することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る印字装置であるインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】 本発明に係る位置検出手段の説明図である。
【図3】 本発明に係る保護キャップ装置の動作の説明図である。
【図4】 本発明に係る制御系のブロック図である。
【図5】 本発明に係る制御の流れを示すフローチャート図である。
【図6】 他の実施の形態の説明図である。
【図7】 さらに別の実施の形態の説明図である。
【符号の説明】
1 インクジェットプリンタ
3 プラテンローラ
4 印字用紙
5 第1の印字ヘッド
6 第2の印字ヘッド
6A ヘッド部
6B ヘッド部
6C ヘッド部
7 第1のキャリッジ
8 第2のキャリッジ
11 キャリッジ軸
11A 第1のキャリッジ軸
11B 第2のキャリッジ軸
15 第1のCRモータ
16 第2のCRモータ
23 吸引手段
41 第1の保護キャップ
42 第2の保護キャップ
54 第1の位置検出手段
55 第2の位置検出手段
101 CPU
111 第1のゲートアレイ
112 第2のゲートアレイ
Claims (7)
- 少なくとも1つのインクジェット式ヘッド部を有する印字ヘッドを搭載した複数のキャリッジと、該キャリッジを駆動するキャリッジ駆動手段と、前記印字ヘッドの不吐出あるいは吐出不良を回復するためのパージ機構と、前記キャリッジ駆動手段に関連づけられ前記印字ヘッドによる印字媒体に対する印字、及び前記パージ機構による前記印字ヘッドに対する回復動作を制御する制御手段とを備える印字装置において、
前記制御手段は、前記キャリッジごとに各キャリッジの位置に基づいて前記印字ヘッドを制御するとともに、一方の前記キャリッジ上の前記印字ヘッドによる印字中に、前記パージ機構による他方の前記キャリッジ上の前記印字ヘッドに対する回復動作を制御する複数の制御系統を有することを特徴とする印字装置。 - 前記複数の制御系統は、それぞれ、前記各キャリッジごとに設けられ各キャリッジの位置を独立して検出する位置検出手段を備え、その位置検出手段よりの信号に基づいて、前記キャリッジごとに印字ヘッドを制御するものである請求項1記載の印字装置。
- 前記複数の制御系統は、それぞれ媒体送り等を制御する制御系統とは独立したハードウェア回路で構成されている請求項1又は2記載の印字装置。
- 前記制御手段は、印字処理が開始されるとき、前記一方のキャリッジ上の印字ヘッド及び他方のキャリッジ上の印字ヘッドに対してそれぞれ不使用期間に基づいて前記パージ機構による回復動作の実行、非実行を制御する請求項1〜3のいずれかに記載の印字装置。
- 前記制御手段は、前記一方のキャリッジ上の印字ヘッド及び前記両キャリッジ上の印字ヘッドに対する印字要求に基づき、前記各印字ヘッドが回復動作中であるかどうかを判定し、前記一方のキャリッジ上の印字ヘッドに対する印字要求は、前記他方のキャリッジ上の印字ヘッドが回復動作中であっても実行する請求項1〜4のいずれかに記載の印字装置。
- 前記他方のキャリッジ上の印字ヘッドは、複数のヘッド部を有し、前記制御系統は、回復動作を行う各ヘッド部を前記パージ機構に順次対向させる位置に移動させ、それぞれのヘッド部に対して回復動作を繰り返す請求項1〜5のいずれかに記載の印字装置。
- 前記一方のキャリッジ上の印字ヘッドは、黒インクを吐出するものである一方、他方のキャリッジ上の印字ヘッドは、色インクを吐出する複数のヘッド部を有するものであり、ファクシミリからの印字データは、前記黒インクにより印字されるように構成されているところの請求項1〜6のいずれかに記載の印字装置。
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