以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1,図2に示す画像形成装置は、ノズルからインクの液滴を吐出する記録ヘッドが記録媒体102のほぼ全幅にわたりライン状に配置された第1および第2のインク吐出手段となるヘッド部106,107を備えたインクジェット方式の画像形成装置である。
画像形成装置は、装置本体101、記録媒体102を積載し給紙する給紙トレイ103、印刷された記録媒体102を排紙積載する排紙トレイ104、記録媒体102を給紙トレイ103から排紙トレイ104まで搬送する搬送部105、搬送部105による搬送中に記録媒体102にインクの液滴を吐出して印字する記録ヘッドを備えたヘッド部106,107、ヘッド部106,107のノズルを閉塞するキャップ手段108,109をそれぞれ有するヘッドメンテナンス装置110A,110Bおよび制御手段500を備えている。
装置本体101は、図示しない前後側板とステーで構成されている。給紙トレイ103上に積載されている記録媒体102は、分離ローラ111、給紙ローラ112によって1枚ずつ搬送部105へ送られる。
搬送部105は、搬送駆動ローラ113と、搬送従動ローラ114と、搬送駆動ローラ113と搬送従動ローラ114の間に掛け渡された無端状の搬送ベルト115と、吸引ファン116を備えている。搬送ベルト115の表面には図示しない複数の吸引孔が形成されている。記録媒体102は、搬送ベルト115の下方に配置された吸引ファン116が作動すると、搬送ベルト115上に吸着されて搬送される。搬送ベルト115としては、複数の穴の形成がなく、静電吸着によって記録媒体102を吸着させて搬送する構成であってもよい。
搬送駆動ローラ113、搬送従動ローラ114の上部には、それぞれ搬送ガイドローラ117,118が図示しないガイド板に支持されて配置されている。搬送ガイドローラ117は、給紙トレイ103から給紙された記録媒体102を搬送部105へ搬送するもので、搬送ガイドローラ118は、ヘッド部106,107で印刷された記録媒体102を排紙トレイ104に排紙する機能をそれぞれ備えている。搬送従動ローラ114及び搬送ガイドローラ117,118は、搬送駆動ローラ113が図4に示す搬送ベルト駆動モータ512により回転されることで従動回転して記録媒体102を搬送する。
搬送ガイドローラ118で搬送された記録媒体102は、排紙トレイ104に排紙される。排紙トレイ104は、記録媒体102の幅方向に規制する一対のサイドフェンス119と記録媒体102の先端を規制するエンドフェンス120で構成されている。
搬送部105の上方には、ヘッド部106,107が配置されている。ヘッド部106,107には、インクの液滴を吐出する複数の記録ヘッドが記録媒体102のほぼ全幅にわたり配置されている。
ヘッド部106は、黒インクを吐出する黒ヘッドであって、ヘッド部107はカラーインクを吐出するカラーヘッドである。ヘッド部106は、図3に示すように複数の記録ヘッドa1〜a10(この形態では10個)を備えている。ヘッド部106は、複数の記録ヘッドa1〜a10を矢印Wで示す記録媒体102の幅方向に複数配列したものを複数列備えている。本形態では、記録ヘッドa1,a3,a5,a7,a9で構成されたラインと、記録ヘッドa2,a4,a6,a8,a10で構成されたラインが、矢印Xで示す記録媒体搬送方向に隣接して配置され、かつ記録ヘッドa1,a3,a5,a7,a9と記録ヘッドa2,a4,a6,a8,a10とが記録媒体幅方向Wに千鳥に配列されている。
各記録ヘッドには図中○で示すインクの液滴を吐出する複数のノズル125が並べられている。これら複数のノズル125は、搬送ベルト115に向かってノズル開口部が形成されている。各記録ヘッド内にはインクが充填されていて、印字要求信号に応じてインクを記録媒体幅方向Wの領域に対してライン状に吐出可能とされている。
ヘッド部107は、ヘッド部106と同様な記録ヘッドb(1〜10)、c(1〜10)、d(1〜10)が、イエロー、マゼンタ、シアンに対応して、各色2列で合計6列がライン状に記録媒体搬送方向Xに隣接配置されている。本形態において、記録ヘッドb(1〜10)にはマゼンタ(M)、記録ヘッドc(1〜10)にはシアン(C)、記録ヘッドd(1〜10)にはイエロー(Y)のインクが充填されていて、印字要求信号に応じてインクを記録媒体幅方向Wの領域に対してライン状に吐出可能とされている。本形態において、記録ヘッドb(1〜10)、c(1〜10)、d(1〜10)は、図中○で示すインクの液滴を吐出する複数のノズル126が並べられている。これら複数のノズル126は、搬送ベルト115に向かってノズル開口部が形成されている。
各色の記録ヘッドの構成は、上記のものに限るものではなく、各色の配置についても特に限定はない。ここでは、ブラックのインクが充填されている記録ヘッドを備えたヘッド部106が記録媒体搬送方向Xの上流側に配置されている。黒インクの吐出を行う記録ヘッドを備えたヘッド部106と、カラーインクの吐出を行う記録ヘッドを備えたヘッド部107とは分割されていて、それぞれが独立なヘッド群として構成されている。ヘッド部106とヘッド部107は、それぞれ搬送ベルト115上の記録媒体102にインクを吐出する印刷位置と、印刷位置から離脱した待機位置へと図示しないヘッド部移動手段によりそれぞれ独立して図中上下方向に移動するように構成されている。ヘッド部移動手段としては、カム機構でヘッド部106,107をそれぞれ上下方向に移動可能にしてもよいし、ベルトとプーリで構成された移動手段を用いてヘッド部106,107を上下方向にそれぞれ移動可能とすることで実現することができる。
ヘッド106,107には、各記録ヘッドにインクをそれぞれ供給する図示しない分岐管が色毎に配列されている。各分岐管上流側には図示しないサブタンクが配置され、サブタンクと各ヘッド部の記録ヘッドとの水頭差によって、記録ヘッドのノズル開口部のメニスカスを保持するのに適切な負圧が形成される。さらに、サブタンク上流側にはインクを貯蔵する図示しないメインタンクが配置されている。
黒インクの吐出を行うヘッド部106の各記録ヘッドをメンテナンスするヘッドメンテナンス装置110Aは、記録ヘッドa1〜a10に対応するキャップ手段108を備えていて、搬送部105の上流側に配置されている。カラーインクの吐出を行うヘッド部107の各記録ヘッドをメンテナンスするヘッドメンテナンス装置110Bは、記録ヘッドb1〜b10、記録ヘッドc1〜c10および記録ヘッドd1〜d10に対応するキャップ手段109を備えていて、搬送部105の下流側に配置されている。各ヘッドメンテナンス装置は、各記録ヘッドのノズル開口部が位置するノズル面を払拭し、インクを除去する図示しない周知のワイパーブレード手段も備えている。
キャップ手段108とキャップ手段109は、各記録ヘッドとの対向位置を占めたときに各記録ヘッドのノズル面を覆い、ノズル開口部を閉塞するものである。各キャップ手段には、各キャップ手段に連結された周知の流路、吸引手段、圧力室等が、各キャップ手段よりも連結下流側に配置されている。図2に示すように、ヘッドメンテナンス装置110Aが備えるキャップ手段108は、ヘッド部106の各記録ヘッドa1〜a10に対応する位置に配置されている。ヘッドメンテナンス装置110Bが備えるキャップ手段109は、ヘッド部107の各記録ヘッドb1〜b10、c1〜c10、d1〜d10に対応する位置に配置された3つのキャップ手段109a,109b,109cで構成されている。これらヘッドメンテナンス装置110Aとヘッドメンテナンス装置110Bは、記録媒体搬送方向Xにスライド移動する図示しないヘッド部メンテナンス装置移動手段となるスライド移動手段をそれぞれ有し、各スライド移動手段によってそれぞれ独立に移動可能とされている。スライド移動手段としては、例えば特開2009−166338号公報に記載のように、ベルトとプーリでそれぞれ構成されていて、各ベルトの一部をそれぞれヘッドメンテナンス装置110A、110Bに装着することでキャップ手段108,109を移動することを実現できる。
本形態における記録ヘッドのメンテナンスは、各キャップ手段にて、各ヘッド部の記録ヘッドのノズル面を閉塞した状態で図示しない吸引手段を作動してインクの液滴を吸引することで、各記録ヘッドの吐出性能を回復させている。記録ヘッドのメンテナンス手段として、ここでは吸引手段を記載しているが、これに限らず、記録ヘッド上流側から加圧手段によってメンテナンスをする形態であってもよい。本形態において、キャップ手段108,109によるキャッピング動作とは、各キャップ手段を移動させてヘッド部のノズルを閉塞する動作とする。本形態では各キャップ手段がヘッドメンテナンス装置110A,110Bに一体的に設けられている関係で、各キャップ手段の移動はヘッドメンテナンス装置110A,110Bの移動となるが、各キャップ手段をヘッドメンテナンス装置110A,110Bと別体で構成する場合には、各キャップ手段をそれぞれヘッドメンテナンス装置110A,110Bと個別に移動させればよい。
図4を用いて本形態にかかる画像形成装置の制御手段500の構成について説明する。制御手段500は、装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(以下「NVRAM」と略す)504と、その他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505と、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのホストI/F506とを備えている。
制御手段500は、ヘッド部106,107の記録ヘッドのインク吐出動作を制御するためのヘッド駆動制御部508及びヘッドドライバ509と、ヘッド部106,107を上下方向に移動するヘッド部移動手段の駆動源となる移動モータ512を駆動するためのヘッド部移動モータ駆動部511と、ヘッド部メンテナンス装置110A,110Bをスライド移動するスライド移動手段の駆動源となるメンテナンス移動モータ517を駆動するためのヘッド部メンテナンス装置移動モータ駆動部516と、搬送ベルト115の駆動源となる搬送ベルト駆動モータ512を駆動するための搬送ベルト駆動部513と、吸引ファン116を回転する吸引モータ515を駆動する吸引モータ駆動部514と、環境温度及び又は環境湿度を検出する環境検知手段となる環境センサ521と記録媒体102の搬送位置を検知する用紙センサ522、図示しない各種センサからの検知信号を入力するためのI/Oポート516等を備えている。
制御手段500には、この画像形成装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル520が接続されている。制御手段500は、パーソナルコンピュータ(以下PCと称す)等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの画像データや印刷モードを含む印刷データ等をケーブル或いはネットワークを介してホストI/F506で受信する。本形態において、印刷モードには、モノクロモードとカラーモードの2つがあり、カラーモードが第1の印刷モード、モノクロモードが第2の印刷モードとなる。本形態において、カラー印刷とはヘッド部106とヘッド部107の双方を用いた印刷を指し、モノクロ印刷とは、印刷モードに係らず黒インクを吐出するヘッド部106単独による印刷を指す。
CPU501は、ホストI/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析する。ここでの解析においてモノクロモードで印字要求がなされている場合には黒インクのみで構成される画像データに変換処理を行い、カラーモードで印字要求されている場合には黒、シアン、マゼンタ、イエローで構成される画像データに変換処理を行う。実際はカラーモードでの印刷要求された場合でも、常にカラーインクを使用して印刷を行うわけではなく、黒インクのみを使用して印刷(モノクロ印刷)をすることもある。CPU501は、カラーモードにおいてこの黒インク(ヘッド部106)のみを使用して行う印刷時間Tを予め画像データや紙間距離、印刷速度、紙サイズデータ等から算出する機能を備えている。本形態に係る画像形成装置では、印刷モードとしてモノクロモードとカラーモードが操作パネル520から選択可能とされている。無論印刷データに含まれている印刷モード信号からモノクロモードあるいはカラーモードをCPU501で判断する形態であってもよい。
CPU501は、カラーモードにおける印刷割合の少ない黒インクのみを使用して印刷を行う印刷時間Tの情報を基にヘッド部106,107の移動やヘッド部メンテナンス装置110A,110B(キャップ手段108,109)の移動を制御する。このような印刷データの解析は、印刷動作中に新たなジョブが投入された場合にも、まだ印字が行われていない解析済みの画像データを含めた状態で行われる。これによって印刷要求と印刷要求の間となる所謂ジョブ間であってもヘッド部106,107の移動、ヘッド部メンテナンス装置110A,110Bの移動を円滑に行うことができるようになるため、生産性の低下を防ぐことができる。
ヘッド駆動制御部508は、画像データを受け取ると、このドットパターンデータを、クロック信号に同期して、ヘッドドライバ509にシリアルデータで送出し、また所定のタイミングでラッチ信号をヘッドドライバ509に送出する。このヘッド駆動制御部508は、駆動波形(駆動信号)のパターンデータを格納したROM(ROM502で構成することもできる)と、このROMから読出される駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器を含む波形生成回路及びアンプ等で構成される駆動波形発生回路を含んでいる。
ヘッドドライバ509は、ヘッド駆動制御部508からのクロック信号及び画像データであるシリアルデータを入力するシフトレジスタと、シフトレジスタのレジスト値をヘッド駆動制御部508からのラッチ信号でラッチするラッチ回路と、ラッチ回路の出力値をレベル変化するレベル変換回路(レベルシフタ)と、このレベルシフタでオン/オフが制御されるアナログスイッチアレイ(スイッチ手段)等を有し、アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで駆動波形に含まれる所要の駆動波形を選択的に各記録ヘッドのアクチュエータ手段に印加して各記録ヘッドを駆動し、画像データを印刷してドットパターンラインを形成する。
図5は、ヘッド部106,107とヘッド部メンテナンス装置110A,110B(キャップ手段108,109)の各状態を示すものである。図5(a)は、ヘッド部106,107から搬送部105上の記録媒体102にインクの液滴を吐出可能となる印刷状態を示している。つまりカラーモードにおけるカラー印刷可能な状態である。このとき、各ヘッド部の記録ヘッドのノズル面と搬送ベルト115の搬送面115aとの隙間はおよそ1mm程度であり、その間を記録媒体102が搬送ベルト115に吸着された状態で搬送される。
図5(b)は、ヘッド部106のみが搬送部105上の記録媒体102に黒インクの液滴を吐出可能となるモノクロ印刷可能な状態を示している。テキストなどモノクロモードによる印字要求の場合にこのような状態となり、ヘッド部107からはカラーインクを吐出する必要がない。このため、カラー印刷用のヘッド部107はヘッド部106よりも上方に移動し、ヘッド部メンテナンス装置110Bのキャップ手段109で各ノズルがキャッピングされて閉塞された状態となる。
図5(c)は、ヘッド部106,107の両方ともが、ヘッド部メンテナンス装置110A,110Bのキャップ手段108,109でキャッピングされて閉塞された状態を示している。ヘッド部106,107はキャッピング状態とされているので、ノズル開口部のインクの乾燥を防止することができる。またこの状態でヘッド部106,107に対して吸引や加圧によるメンテナンス動作や空吐出をすることでヘッドメンテナンスが行える。
図6を用いて、各モードによる印字要求とキャップ手段108,109によるキャッピング動作について説明する。図6は、カラーデータとモノクロデータの混在時のキャッピング動作を示す。この画像形成装置では、カラーのみ、モノクロのみといった画像データが入力されるばかりではなく、実際にはカラーとモノクロのデータが混在してデータが入力される場合もある。例えば、図6(a)に示すように、1つのカラーモードでの印字要求内においてもカラーインクを使用しないモノクロ印刷があったり、図6(b)に示すように、ユーザーAがカラーモードでの印字要求による印刷をしており、そこへユーザーBがモノクロモードでの印字要求(ジョブ)を投入し、その後ユーザーCがモノクロモードでの印字要求(ジョブ)を投入するといった場合などがあったりする。
カラーモードとモノクロモードの混在した画像データがCPU501に入力された場合、従来のように黒インクによる印刷割合(モノクロ印刷時間)に係らず、必ずモノクロ印刷時に印刷に使用しないヘッド部107(カラーヘッド)をキャッピング状態へ移行するようにすると、その後にカラーモードでの印字要求があるとき、モノクロモードによる印刷時間Tが極端に短いと、ヘッド部107の上昇動作やキャッピング動作、キャッピング解除動作、ヘッド部107の印刷位置への下降動作が間に合わなくなりカラーモードによるカラー印刷がスムーズに行えず、印刷が滞って印刷物の生産性が低下する事態となることが想定される。
このため、本形態では、制御手段500で、モノクロ印刷による印刷時間Tを予め算出し、少なくともヘッド部107の吐出可能状態からキャッピングをし、再びヘッド部107の吐出可能状態に戻るまでに要する時間を設定時間T1としてROM502に記憶しておき、印刷時間Tが設定時間T1を超えるまではヘッド部107(カラーヘッド)を図6(a)に示すように、キャップ手段109でキャッピングしない状態となるようにし、印刷時間Tが設定時間T1を超えるとヘッド部107(カラーヘッド)を図6(b)に示すように、キャップ手段109でキャッピングするようにした。
このような構成とすると、キャッピング状態にしてもヘッド部107(カラーヘッド)による印刷開始時期に遅れが生じない場合には、ヘッド部107の動作遅れが発生しないため、ヘッド部107を確実にキャップ手段109でキャッピング状態とすることができ、ノズル開口部の乾燥等の不具合の発生を防止できる。
逆に黒インク単独での印刷時間Tが設定時間T1に満たない場合には、図6(a)に示すように、キャップ手段109でヘッド部107をキャッピングしない状態として黒インクのみを用いたモノクロ印刷を行うようにした。つまり、キャッピング状態にするとヘッド部107(カラーヘッド)による遅れが生じる黒インクの印刷時間Tの場合には、動作遅れが発生することが予想されるヘッド部107がキャッピング状態とされないため、カラー印刷の遅れがなくなり、印刷物の生産性の低下を防ぐことができる。
黒インク(モノクロ印刷)による印刷時間Tは、制御手段500に入力された画像データ、搬送速度、紙間距離、用紙サイズからCPU501で算出する。この場合、ヘッド部107のキャッピング状態への移行は、カラー印刷が終わった後すぐに実施される。またヘッド部107がキャッピング状態であるモノクロ印刷からカラー印刷状態への移行、すなわち、ヘッド107に対するキャッピング状態の解除は、モノクロモードでの印刷中から実施することで、カラーモードに切り替わってカラー印刷が始まるまでに終わるようにしている。
図6(c)に示すように、モノクロモードによるモノクロ印刷が終わって、待機状態中にカラーモードのカラーデータの印字要求が制御手段500に入った場合は、カラー印刷に用いるヘッド部107のキャッピング解除動作により、カラー印刷できない時間が発生するため、カラー印刷動作の開始をキャッピング解除動作時間分だけ遅らせて行う。
図7は、上述の制御手段500による制御の具体的な形態を示すフローチャートである。制御手段500は、ステップST1において、環境センサ521でここでは画像形成装置内あるいは画像形成装置周辺の湿度を検出する。ステップST2では、例えば湿度情報を基にヘッド部107の吐出可能状態からキャップ手段109によるキャッピング動作をし、再びヘッド部107の吐出可能状態に戻るまでに要する設定時間T1を設定(読み出し)する。ステップST3では画像形成終了後にヘッド部106,107の双方がキャッピング状態へ移行するのに要する設定時間T2を、湿度情報を基に設定(読み出し)する。無論設定時間T1と設定時間T2は固定値であってもよいが、例えば湿度が低い場合には設定時間T1,T2を短くすることでノズルのインクの増粘を防ぐことができる、また、湿度が高い場合には設定時間T1,T2を長くすることでキャップ手段108,109の移動を少なくすることができる。このため、ROM502には湿度情報に応じて変更された複数の設定時間T1と設定時間T2のデータを記憶しておき、湿度情報に応じて該当する設定時間T1、T2を読み出して設定するとよい。
ステップST4では、入力された印刷データからモノクロ、カラー混在データで在るか否かを解析して判断する。ここで、混在データである場合にはステップST5において画像データ、搬送速度、紙間距離、用紙センサ522から得られる用紙サイズ情報に基づいてモノクロの印刷時間Tを算出する。そしてステップST6では算出したモノクロ印刷時間Tが設定時間T1を超えたか否かを判断し、超えていない場合にはステップST7に進む。ステップST7では、カラーモードであるがヘッド部7をキャッピング状態とすると、モノクロ印刷の後のカラー印刷が遅れるものとして、ヘッド部107に対するキャッピング動作は行わず、キャッピング状態を解除状態としたまま、カラーモードでの画像形成を実行する。ステップST8で追加ジョブ(印字要求)の有無が判断され、追加ジョブがある場合にはステップST4に戻り、追加ジョブ(印字要求)がない場合にはステップST9に進んで画像形成終了か否かを、例えば印刷した枚数と印刷前に設定した設定枚数を比較することで判断する。ここで画像形成終了となるとステップST10に進む。
ステップST6で、算出したモノクロ印刷時間Tが設定時間T1を超える場合には、ヘッド部7をキャッピングしてもヘッド部7による印刷遅れが発生しないものとして、モノクロモードでの画像形成を行うモノクロモード移行タイミングを保存する。そしてステップST15において、このモノクロモード移行タイミングとなると、ステップST16に進んでヘッド部107に対するキャッピング動作を実行してキャッピング状態としたモノクロモードでの画像形成を行い、モノクロモード移行タイミングでなければステップST17に進む。ステップST17では、ヘッド部107をキャッピングしない状態でのカラーモードでの画像形成を行う。
ステップST16、17の終了後は、ステップST18で追加ジョブ(印字要求)の有無が判断され、追加ジョブがある場合にはステップST4に戻り、追加ジョブがない場合にはステップST19に進んで画像形成終了か否かを判断する。そして画像形成終了でなければ、画像形成終了となるまでステップST15からステップST19のルーチンを繰り返し、画像形成が終了すると、ステップST10に進む。
ステップST4において、入力された印刷データがモノクロ、カラー混在データでない場合、ステップST20に進む。ステップST20ではモノクロデータのみであるか否かを判断し、モノクロデータのみである場合にはステップST21においてモノクロモードでの画像形成を行う。すなわち、ヘッド部107をキャッピング状態としてヘッド部106により黒インクによる画像形成を行う。そして、ステップST22で追加ジョブ(印字要求)の有無が判断され、追加ジョブがある場合にはステップST4に戻り、追加ジョブがない場合にはステップST23に進んで画像形成終了か否かを判断し、終了するとステップST10へと進む。
ステップST20でモノクロデータのみでなければステップST24に進んでカラーモードでの画像形成を行う。この場合、ヘッド部106,107に対するキャッピングはなく、2つのヘッド部による画像形成が行われる。ステップST25で追加ジョブ(印字要求)の有無が判断され、追加ジョブがある場合にはステップST4に戻り、追加ジョブがない場合にはステップST26に進んで画像形成終了か否かを判断し、終了すると、ステップST10へと進む。
ステップST10では、画像形成後の経過時間の計測を図示しないタイマーで行う。ステップST11では追加ジョブの有無を判断し、ジョブがない場合はステップST12において経過時間が設定時間2を超えたか否かを判断し、経過時間が設定時間2を超えると、ステップST13でヘッド部106とヘッド部107の双方をキャッピング状態にして終了となる。
本形態では設定時間T1と設定時間T2は、予めROM502に環境条件と関連付けて記憶させているが、ユーザーが例えば操作パネル520を用いて任意に変更できるようにしてもよい。このように設定時間T1と設定時間T2をユーザーが変更可能にしておくと、想定した環境条件意外となった場合や、ユーザーの好みに応じてキャッピング動作の時期を設定変更することができるので、印刷物の生産性を低下することなく、良好な印刷が行える。
上記形態では、ヘッド部106とヘッド部107に対してヘッド部メンテナンス装置110A,110B(キャップ手段108,109)をそれぞれ個別に設けていたが、例えば図8に示すように、ヘッド部106とヘッド部107に対して1つのヘッド部メンテナンス装置110C(1つのキャップ手段109A)としてもよい。この場合においても、ヘッド部メンテナンス装置110C(1つのキャップ手段109A)は記録媒体搬送方向Xにスライド可能とし、メンテナンス移動モータ517の作動を制御手段500でヘッド部メンテナンス装置110A,110Bと同様に、モノクロ印刷時間Tが設定時間T1に満たない場合にはヘッド部107に対するキャッピングは行わず、モノクロ印刷時間Tが設定時間T1を超えた場合にヘッド部107に対するキャッピング動作を行うように制御すればよい。
また、ヘッド部106とヘッド部107に対するキャップ手段108,109によるキャッピング動作は、ヘッド部メンテナンス装置110A,110Bを記録媒体搬送方向Xに図示しないスライド移動手段でそれぞれ独立に移動させて行っているが、図9に示すように、ヘッド部メンテナンス装置110A,110Bの位置は固定状態とし、ヘッド部106とヘッド部107を上下方向と記録媒体搬送方向Xにそれぞれ移動させて、モノクロ印刷時間Tが設定時間T1に満たない場合にはヘッド部107に対するキャッピングは行わず、モノクロ印刷時間Tが設定時間T1を超えた場合にヘッド部107に対するキャッピング動作を行うように制御しても、印刷物の生産性を低下することなく、良好な印刷が行える。