JP3783069B2 - 煮物の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、煮物の製造法、更に詳しくは素材を煮上げた後に節類だし汁で風味付けする煮物の製造法、およびそのような用途に使用する風味付け用節類だし汁、ならびに風味付け用節類だし汁の個別充填包装物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、女性の社会進出、高齢化社会の到来、核家族時代などの社会構造の変化、また消費者のライフスタイル・パターンの変化、等により消費者がより簡便な食品を求めていることの現れとして、家庭の台所でつくられていた惣菜は、街の惣菜屋、更にはいまや惣菜産業によって作られるようになり、必要に応じてチルド流通に置かれるようになった。
【0003】
さて、惣菜は、例えば厚生省衛生規範(市場で流通する惣菜の衛生を確保する目的の昭和54年6月29日環食第161号「弁当及びそうざいの衛生規範」によれば、次のように定義され、分類されている。すなわち、通常、副食物として供される食品であって、次に掲げるものをいう。(1)煮物、(2)焼き物、(3)揚げ物、(4)蒸し物、(5)あえ物および(6)酢の物。惣菜の分類は、もちろん、これに限られるわけではない。
【0004】
和惣菜中の煮物についても、その分類は様々であるが、例えば、調理法の相違に従って下記第1表に示すように分類することができる。
【0005】
【表1】
【0006】
これらの煮物は、素材の味、風味、食感とともに、いわゆるだしの風味、特に鰹節等由来の芳香に富むことが望まれるが、現在流通に置かれているものは、必ずしも満足できる製品ではない。
【0007】
だし風味の良好な煮物は、使用するだし汁が高品質である必要がある。即ち、高品質の原料節類を用いて、風味を損なわない方法でだしを抽出し、だし汁として、保存流通が必要な場合も風味の損失を可及的に少なくした方法で行われたものを用いることとなる。
【0008】
このような高品質のだし汁は、料亭などではその都度調製され、使用されているが、量産を前提とし、高生産性が求められる市販の惣菜ではコストと手間がかかりすぎて採算に合わない場合が多い。予め調製され、保存加工されただし汁を使用する場合も採算性で問題があることには変わりがない。
【0009】
また、仮に、採算性を犠牲にして、高品質の節類だし汁を用いたとしても、調理方法によっては、満足のいくだし風味を保持した最終製品を流通に置くことが必ずしも可能ではない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前項記載の従来技術の背景下に、本発明は、だし風味が良好な煮物を、簡便な調理加工方法でかつ経済的に提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前項記載の目的を達成すべく鋭意研究の結果、煮物の製造に当たり、従来、節類だし汁の中で素材を煮上げていた方法に変えて、水或いは必要に応じて調味料を添加した調味液で煮上げた後、だし汁を添加する方法により、予めだし汁の中で煮上げたものに比べて味、食感等は遜色なく、かつ、だし風味が顕著に優れた煮物が調製できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明は、節類だし汁及び調味料とともに素材を加熱処理してなる煮物の製造法において、節類だし汁の全部若しくは一部を除いた液汁中又は節類だし汁中で素材を煮上げた後、節類だし汁を添加して風味付けすることを特徴とする煮物の製造法、及び、そのような煮物その他の製造法において使用される風味付け用節類だし汁に関する。
【0013】
本発明の風味付け用節類だし汁は、惣菜製造メーカーで使用される他、飲食店、更には家庭での使用に供され、煮物の製造の最終工程で使用される他、1食分の個別包装として弁当に添えられたり、或いは、卓上において、煮物に振りかけてだし風味を強化するような態様での使用も可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の煮物の製造法の対象となる煮物は、野菜類の煮物その他前記第1表に挙げられたような節類だし汁風味が好まれるすべての煮物であり、更には、具材をだし汁中で煮上げる必要のある汁物も広義の煮物として本発明の製造法の対象に含まれる。
【0016】
野菜類その他の素材は、(1)水或いは調味液中で予め煮上げた後、節類だし汁を加えて仕上げる。この場合、(2)水或いは調味液中に、節類だし汁の一部を加えて煮上げ、最終段階で再度節類だし汁を加えて仕上げることも可能である。更には、(3)節類だし汁そのものの中で素材を煮上げた後、風味強化の目的で節類だし汁を加えてもよい。いずれの場合も、節類だしの有する芳香が顕著な煮物を得ることができるが、経済性では、(1)の方法が優る。また、素材として、缶詰、チルド、冷凍等の予め水煮処理済みの素材を用いることも勿論可能であり、この場合、例えば、必要な調味料等を加えて加熱し、最後に、節類だし汁を加えて仕上げるようにすればよい。煮上げた素材に節類だし汁を加えた後は、加熱を行わないか、或いは、節類だし風味が減損しない程度の短時間の緩やかな加熱に止める。
【0017】
本発明による節類風味付けに使用される節類のだし汁は、0.1〜5.0%程度の低濃度のもの(ストレートタイプ)でもよいが、この場合、最終段階での節類だし汁添加により、煮物の塩味、甘みその他の味の濃度が薄まり、濃度調整のために、再度の調味が必要になる場合があるので、好ましくは、高濃度のもの、或いは濃縮されたものを用いる。濃縮は、節類香気成分の損失を可及的に減少可能な方法で行うことが望ましいことはもちろんで、また、後述の保存・流通に置かれる節類だし汁の場合、無酸素・無菌充填包装(アセプティック包装)等を行うことが好ましい。また、凍結して冷凍品の形で流通に置くことができる。
【0018】
実用に便利な高濃度の節類だし汁は、例えば、削りかつお節25g当たり100gの水で抽出して得たかつお節のだし汁である。しかし、これに限られるものでなく、より少量の削りかつお節を抽出しただし汁を適当な濃度に濃縮したもの等でもよい。また、鰹エキス、鰹節エキス等で補強したものでもよい。
【0019】
なお、本発明で対象となる節類は、鰹節に限られるものではなく、鯖、鮪、鯵、イワシ、サンマ等の雑節或いは煮干しも対象に含まれる。これらの原料節類からのだしの抽出方法も、特に限定されない。
【0020】
また、このような風味付け用節類だし汁は、既に完成済みの煮物に対しても、節類風味の補足或いは強化の目的で滴下して使用することもできる。
【0021】
このような使用態様、或いは、飲食店、家庭での煮物調製時の便宜のためには、節類だし汁を1回乃至は数回の使用量に適する蓋つきのプラスチック容器、充填後熱シールする個別包装パウチ容器等に充填した小分け包装物の形態で流通に置くことができる。
【0022】
【実施例】
実施例1(里芋の含め煮の試作・評価):
(a)高濃度タイプの一番だしの調製:
鰹節の粗砕物10kgを85℃のイオン交換水40Lに浸漬して85±5℃にて60分間保持し、次いで濾過機により固液分離して、ブリックス濃度5.0%、液温60℃の抽出液30Lを得た。これを高濃度タイプの一番だしとした。なお、得られた抽出液は、例えば360ml容器に無酸素・無菌充填して流通に置くことができた。
【0023】
(b)ストレートタイプの一番だしの調製:
鰹節の粗砕物2kgを85℃のイオン交換水40Lに浸漬して85±5℃にて60分間保持し、次いで濾過機により固液分離して、ブリックス濃度1.0%、液温60℃の抽出液38Lを得た。得られた抽出液をストレートタイプの一番だしとした。
【0024】
上記で得られただしを用いて里芋の含め煮の試作・評価を行った。サンプルは、対照区として素材を、ストレートタイプの一番だしを最初から使用した調味液中で煮込み、煮上げた製品、試験区として素材を、だしを含まない調味液中で煮込み、煮上げた後、高濃度タイプの一番だしを加えた製品とした。下記第2表に里芋の含め煮の調味液のレシピを示した。
【0025】
【表2】
【0026】
このようにして調製された里芋の含め煮を熟練した検査員20名からなるパネルの官能評価(2点提示選択法)に付した。
【0027】
下記第3表に評価結果を示した。試験区は対照区に比べだしの香り・風味、だし感が強く、味全体も好ましいと評価された。
【0028】
【表3】
【0029】
実施例2(筑前煮の試作・評価):
実施例1で得ただしを用いて筑前煮の試作・評価を行った。サンプルは、対照区として素材を、ストレートタイプの一番だしを最初から使用した調味液中で煮込み、煮上げた製品、試験区として素材を、だしを含まない調味液中で煮込み、煮上げた後、高濃度タイプの一番だしを加えた製品とした。
【0030】
下記第4表に筑前煮の調味液のレシピを示した。
【0031】
【表4】
【0032】
このようにして調製された筑前煮を熟練した検査員20名からなるパネルの官能評価(2点提示選択法)に付した。
【0033】
下記第5表に評価結果を示した。試験区は対照区に比べだしの香り・風味が強く、味全体も好ましいと評価された。
【0034】
【表5】
【0035】
実施例3(揚げだし豆腐の試作・評価):
実施例1で得ただしを用いて揚げだし豆腐の試作・評価を行った。サンプルは、対照区として素材を、ストレートタイプの一番だしを最初から使用した調味液中で煮上げた製品、試験区として素材を、だしを含まない調味液中で煮上げた後、高濃度タイプの一番だしを加えた製品とした。
【0036】
下記第6表に揚げだし豆腐の調味液のレシピを示した。
【0037】
【表6】
【0038】
このようにして調製された筑前煮を熟練した検査員20名からなるパネルの官能評価(2点提示選択法)に付した。
【0039】
下記第7表に評価結果を示した。試験区は対照区に比べだしの香り・風味、だし感が強く、味全体も好ましいと評価された。
【0040】
【表7】
【0041】
実施例4
実施例1と同一の調製法で得た高濃度タイプの一番だし30mlを、スティックタイプのレトルト用包材に封入し、レトルト殺菌を行って、スティック包装の高濃度タイプの一番だしを得た。
【0042】
実施例2と同一の配合の調味液(試験区のもの。ただし、だしを含まない)で煮上げた筑前煮に、上記で得られたスティック包装の高濃度タイプの一番だしを添加して得られた製品を官能評価した結果、だしの香り・風味がよく、また、味全体でも良好との評価を得た。
【0043】
実施例5
実施例1と同一の調製法で得た高濃度タイプの一番だしを凍結し、冷凍タイプの一番だしを得た。これを、予め、実施例1の配合の調味液(試験区のもの。ただし、だしを含まない)で煮上げた里芋の冷凍品と組合せ、冷凍里芋の含め煮を得た。
【0044】
得られた冷凍里芋の含め煮を電子レンジで解凍、加熱したものを試験区とし、実施例1における対照区の調味液(だしを含む)中で煮上げた里芋の含め煮を冷凍したものを電子レンジで解凍、加熱したものを対照区として、実施例1と同様の官能評価に供したところ、だしの香り・風味の強さ、だし感の強さおよび味全体の好ましさにおいて、試験区が対照区に比べて有意に好まれた。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、調理方法の如何を問わず、だし風味の引き立つ煮物が得られ、また、より少量の節類だし汁で高いだし風味を付与できるので、極めて簡便かつ経済的に、良好なだし風味を有する煮物を提供することができる。
Claims (4)
- 節類だし汁及び調味料とともに素材を加熱処理してなる煮物の製造法において、節類だし汁の全部若しくは一部を除いた液汁中又は節類だし汁中で素材を煮上げた後、節類だし汁を添加して風味付けすることを特徴とする煮物の製造法。
- 風味付け用の節類だし汁が、1乃至数回の使用量に適する小容器に個別充填包装された節類だし汁であることを特徴とする請求項1記載の煮物の製造法。
- 風味付け用の節類だし汁が、濃縮された節類だし汁であることを特徴とする請求項1又は2記載の煮物の製造法。
- 風味付け用の節類だし汁が、無菌充填包装された節類だし汁であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の煮物の製造法。
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JP12090897A JP3783069B2 (ja) | 1997-05-12 | 1997-05-12 | 煮物の製造法 |
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JPH10309175A JPH10309175A (ja) | 1998-11-24 |
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- 1997-05-12 JP JP12090897A patent/JP3783069B2/ja not_active Expired - Fee Related
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