JP3781544B2 - 感熱記録材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発色開始温度や感度などの発色特性が調整された感熱記録成分を含有する感熱記録材料および色分離性に優れた多色感熱記録材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
感熱記録材料は、一般に、支持体上に、感熱記録成分として電子供与性の通常無色ないし淡色の染料前駆体と電子受容性の顕色剤とを主として含有する感熱記録層を設けたもので、サーマルヘッド(熱ヘッド)、熱ペン、レーザー光などで加熱することにより、染料前駆体と顕色剤とが瞬時に反応して発色画像が得られるもので、特公昭43−4160号公報および特公昭45−14039号公報などに開示されている。
【0003】
このような感熱記録材料は、比較的簡単な装置で記録が得られ、保守が容易なこと、騒音の発生がないことなどの利点があり、計測記録計、ファクシミリ、プリンター、コンピューターの端末機、ラベル、乗車券の自動販売機など広範囲の分野に利用されている。
【0004】
一方、感熱記録材料の用途の多くで、加熱温度の違いにより2種以上の色調に発色させることができる多色感熱記録材料が望まれている。このような多色感熱記録材料を実現する方法として、感熱記録成分を構成する化合物の融点などを変えて発色開始温度を調節し、低温加熱では発色開始温度の低い感熱記録成分のみが発色し、高温では、発色開始温度の低い感熱記録成分と、より発色開始温度が高い感熱記録成分が同時に発色して低温加熱時とは異なる色調に発色させる方法、感熱記録成分の種類ごとに積層された別々の層に含有させ、より加熱源に近い表面の層に含有される感熱記録成分ほどより低い加熱温度で発色させ、より表面から隔てられた層に下層に含有される感熱記録成分ほど発色により高い加熱温度が発色させる方法などが知られている。感熱記録成分を構成する化合物の融点などを変えて発色開始温度を調節する方法においては、使用できる素材が限定され、他の特性とのバランスが十分得られない問題があるほか、色調の異なる感熱発色成分を同一の層に含有させるには、種類の異なる感熱記録成分が互いに相互作用して発色させない様にする工夫が必要となる。また、感熱記録成分の種類ごとに積層された別々の層に含有させる方法においては、多色感熱記録材料の層構成が複雑になり生産性が悪いなどの問題がある。
【0005】
これらの問題に対して、感熱記録成分を構成する化合物をマイクロカプセルに内包し、マイクロカプセル壁に発色調節層としての役割を持たせることにより、発色開始温度などの発色特性を調節する方法が提案されている。特開平8−282115号公報では、発色色調の異なる複数の電子供与性染料前駆体および電子受容性化合物を同一の層に含有させ、該電子供与性染料前駆体の少なくとも一種類をマイクロカプセルに内包させる方法が提案されている。この方法によればマイクロカプセルに内包させた電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物とが反応して発色する温度を高くすることができ、また、マイクロカプセルに内包された電子供与性染料前駆体と内包されていない電子供与性染料前駆体とはお互いに相互作用しないため、1層の感熱記録層で2種以上の発色色調を得ることができる。
【0006】
感熱記録成分を構成する化合物の表面に発色調節層を形成する方法として、各種のマイクロカプセル化の方法が適用できるが、発色開始温度などの発色特性を調節するにはマイクロカプセルのカプセル壁は熱可塑性である必要がある。発色成分を熱可塑性のマイクロカプセル壁で被覆する方法としては、界面重合法、コアセルベーション法、スプレードライ法、液中硬化被覆法、融解分散冷却法などが知られている。感熱記録成分を構成する化合物をマイクロカプセルに内包する場合、通常これらの化合物は固体であるので、界面重合法を用いる場合には、感熱記録成分を構成する化合物を溶剤に溶解し、カプセル壁の原料を添加し、これを水などの媒体に乳化した後、発色成分を溶解した溶剤を蒸発させると共にカプセル膜を重合する方法があるが、工程が複雑になり生産性が低下する欠点がある。また、コアセルベーション法を用いた場合、マイクロカプセルの作製条件が非常に限定され、生成したカプセル壁の特性も限定されてしまう欠点がある。スプレードライ法を用いた場合には、カプセル膜の均一性が悪いほか、カプセルの粒径が大きくなりやすい欠点もある。液中硬化被覆法を用いた場合カプセルの粒径が大きくなりやすい欠点などがある。融解分散冷却法を用いた場合にはカプセル膜の融点が比較的低融点に制限されるため、生成したカプセル壁の特性も限定されてしまう欠点がある。この様に、従来から公知のマイクロカプセル化法を用いたのでは、生産性よく発色成分をマイクロカプセルに内包させ、かつ、マイクロカプセルのカプセル壁の特性を自在に調節することはできない。
【0007】
また、特開平9−142025号公報では、感熱記録成分を構成する化合物として電子供与性染料前駆体を用い、電子供与性染料前駆体をポリウレアまたはポリウレタンとの複合粒子として発色特性を調節し、該複合粒子を感熱記録材料中に含有させて、多色感熱記録材料を得る方法が提案されている。この方法によれば、マイクロカプセルを利用する方法に比べて、感度の低下が少なく、圧力または摩擦などによる発色が起こり難いことが述べられている。しかし、この方法では、電子供与性染料前駆体を完全に被覆するには、多量のポリウレアまたはポリウレタンを含有させることとなり、十分な感度を得ることはできない。また、発色特性の調節性もある程度制限されてしまう欠点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の解決しようとする課題は、生産性よく感熱記録成分を構成する化合物の表面に発色調節層を設け、かつ、発色調節層の特性を自在に調節することにより、必要に応じて感熱記録成分の発色開始温度や感度などの発色特性を調節することができる感熱記録材料を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
これらの課題は、支持体上に、熱により反応して発色する感熱記録成分を主として含有する感熱記録層を設けた感熱記録材料において、該感熱記録成分が2種以上の化合物から構成され、該感熱記録成分を構成する2種以上の化合物の少なくとも1種が分散粒子であり、かつ、その粒子表面にマイナス荷電を有するイオン性高分子化合物もしくはプラス荷電を有するイオン性高分子化合物を吸着させ、さらにその表面に、反対符号を有するイオン性高分子化合物を吸着させ、符号の異なるイオン性高分子化合物の層を少なくとも2層積層させ、最外層もイオン性高分子化合物を吸着させた層である発色調節層を有することを特徴とする感熱記録材料により解決することができた。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の感熱記録材料に用いられる感熱記録成分は、熱により反応して発色する2種以上の化合物により構成される。そして、これらの化合物の少なくとも1種が、その化合物粒子表面にマイナス荷電を有するイオン性高分子化合物もしくはプラス荷電を有するイオン性高分子化合物を吸着させ、符号の異なるイオン性高分子化合物の層を少なくとも2層積層させ、最外層もイオン性高分子化合物を吸着させた層である発色調節層を有する粒子の形態で感熱記録層中に含有される。当然のことながら、2種以上の化合物が、それらの表面に発色調節層を設けた粒子の形態で感熱記録層中に含有されても良い。感熱記録成分を構成する化合物の表面に発色調節層を設けることにより、特に発色開始温度を高くしたり、感度が低くなる様に発色特性を調節できる。感熱記録材料の発色開始温度を高くすることにより、高温条件に保存しても未印字部が発色し難い、つまり、地肌かぶりが少なく地肌の保存性に優れた感熱記録材料が得られる。また、感度を低く調節した感熱発色成分と高感度で異なる発色色調の感熱記録成分を併用することにより、多色に発色する感熱記録材料を得ることができる。従来より、発色特性を調節する目的で、増感剤などを添加し、発色開始温度を低下させて感度を向上させることは行われてきた。しかしながら、発色開始温度を高くしたり、感度が低くなる様に発色特性を調節することはあまり検討されておらず、特に簡単な操作で生産性良く、発色特性を調節する手法は見つかっていなかった。
【0011】
感熱記録成分を構成する化合物の表面に設けられる発色調節層は、反対符号の電荷を有する2種以上のイオン性高分子化合物を静電的に吸着させることにより形成することができる。発色調節層が2種以上の高分子化合物を静電的に吸着させ積層することだけで形成できるので、従来のマイクロカプセルの作製方法を用いて発色調節層を形成する場合に比べて、生産性が良く、また、発色調節層の特性を自在に制御することができるので、希望の発色特性を発現できる。
【0012】
このような発色調節層は、例えば以下の様な方法で、積層させ形成することができる。感熱記録成分を構成する化合物の少なくとも1種を、第一の電荷を有する第一のイオン性高分子化合物を使用して、水または有機溶媒中に分散することにより、その表面に第一の高分子化合物を吸着させる。次いで、第一の電荷とは反対符号の電荷を有する第二のイオン性高分子化合物の溶液またはエマルジョンと混合することにより、更に第二のイオン性高分子化合物を静電的に吸着させて、感熱記録成分を構成する少なくとも1種の化合物の表面に、反対電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を形成することができる。また、第二の電荷と反対符号の電荷を有する第三のイオン性高分子化合物を更に添加することにより、3種のイオン性高分子化合物からなる発色調節層も形成可能である。
【0013】
また、他の発色調節層の形成方法としては、第二の高分子化合物として、pHにより電荷が反対符号に変化する(つまり、等電点を有する)ような両性高分子化合物を使用する方法がある。上記の方法と同様にして、感熱記録成分を構成する少なくとも1種の化合物の表面に第一のイオン性高分子化合物を吸着させた後、両性高分子化合物の溶液またはエマルジョンを第一のイオン性高分子と同符号の電荷を示すpH域で混合した後、pHを調節して両性高分子化合物の電荷を反転にすることにより、更に両性高分子化合物を静電的に吸着させて、反対電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を形成させることもできる。これも、等電点を有する第三の両性高分子化合物を使用し、同様の手法にて、3種のイオン性高分子化合物からなる発色調節層を形成させることもできる。
【0014】
ここで、発色調節層を形成するイオン性高分子化合物とは、分子量としては1000以上、好ましくは5000以上の重合体または共重合体、天然高分子化合物またはその誘導体等を意味している。一方、発色調節層を形成する化合物として低分子化合物を使用すると、静電的に吸着して層を形成することはできるが、発色特性に影響を及ぼすほど十分な厚みのある層とはならないため、本発明の感熱記録材料に使用するには不適である。
【0015】
以上において、第一のイオン性高分子化合物の電荷は、プラス電荷(カチオン性)でもマイナス電荷(アニオン性)でもかまわない。しかし、一般に、感熱記録成分を構成する他の化合物は、マイナス電荷を有するアニオン性高分子化合物を使用して、水または有機溶媒中に分散されて使用される場合が多い。従って、第一の高分子化合物はプラス電荷を有するカチオン性高分子化合物が好ましい。これにより、第二のイオン性高分子化合物はマイナス電荷を有するアニオン性高分子化合物となり、一般にマイナス電荷を有するアニオン性高分子化合物を使用して分散された感熱記録成分を構成する他の化合物の分散液と自由に混合することができる。
【0016】
このようなプラス電荷を有するカチオン性高分子化合物としては、界面活性を有する従来公知のものを使用することができる。例えば、ポリエチレンイミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムのハロゲン化物、ジアリルジメチルアンモニウムのハロゲン化物/二酸化イオウ共重合体、ポリビニルピリジンの塩酸塩やアルキル塩化物、ポリビニルイミダゾリン、スチレン/無水マレイン酸共重合体とジアミンの反応物のアルキル塩化物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートのアルキル塩化物/スチレン共重合体、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートのアルキル塩化物/アクリル酸エステル共重合体、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートのアルキル塩化物/アクリルアミド共重合体、ジアルキルアミノエチルアクリルアミドのアルキル塩化物/スチレン共重合体、ジアルキルアミノエチルアクリルアミドのアルキル塩化物/アクリル酸エステル共重合体、ジアルキルアミノエチルアクリルアミドのアルキル塩化物/アクリルアミド共重合体、ポリアクリルアミドマンニッヒ変性物、アクリルアミド/N−ビニル−2−ピロリドン共重合体のマンニッヒ変性物、ポリアクリルアミドホフマン分解物、キトサンなどを挙げることができる。
【0017】
発色調節層が形成される感熱記録成分を構成する化合物は、まず、これらのカチオン性高分子化合物を使用して、水または有機溶媒中に分散されて、分散液に調製される。この分散液と、アニオン性高分子化合物の水溶液またはエマルジョンを混合することにより、感熱記録成分を構成する化合物の表面に、反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を形成することができる。これらの吸着層が形成されたことは、分散された化合物粒子のゼータ電位を測定することにより判断できる。カチオン性高分子化合物が吸着していればゼータ電位はプラス電荷であるが、アニオン性高分子化合物を添加するとともにゼータ電位はゼロを経由してマイナス電荷となり、マイナス電荷の一定電位に収束する。第二のアニオン性高分子化合物の添加量は、このゼータ電位を基に決定することができる。
【0018】
このようなアニオン性の高分子化合物としては、水または有機溶媒に溶解する高分子化合物や微粒子状で分散しているエマルジョン(ラテックス)を挙げることができる。特に、エマルジョンの場合は発色調節層が厚くなるため、発色特性を調節する効果が大きい。このようなエマルジョンとしては、通常のアニオン性乳化剤を使用して調製されたスチレン/ブタジエン共重合体系ラテックス、アクリロニトリル/スチレン共重合体系ラテックス、アクリル重合体系ラテックス、塩化ビニル重合体系ラテックスや酢酸ビニル重合体系ラテックスなどを挙げることができる。また、可溶性の高分子化合物としては、カルボン酸またはスルホン酸変性ポリビニルアルコール、スチレン/無水マレイン酸共重合体の加水分解物やハーフエステル、オレフィン/無水マレイン酸共重合体の加水分解物やハーフエステル、ナフタレンスルホン酸塩/ホルマリン縮合物、ポリアクリル酸、アクリルアミド/アクリル酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸、アクリルアミド/スチレンスルホン酸共重合体、アクリルアミド/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダなどを挙げることができる。
【0019】
第一のイオン性高分子化合物を吸着させた感熱記録成分を構成する化合物と、第二のイオン性高分子化合物の溶液またはエマルジョンを混合する時は、ホモジナイザー、ホモディスパーやディスパーザーのような高速撹拌機を使用して、高速撹拌しながらゆっくりと添加するのが好ましい。
【0020】
また、第二の方法のpHを調節して発色調節層を形成させる場合は、発色調節層が形成される感熱記録成分を構成する化合物に上記したカチオン性高分子化合物を吸着させた後、これに第二の高分子化合物として等電点を有する両性高分子化合物の溶液を、その等電点より低pH域のカチオン性の状態で混合後、pHを等電点より高くすることで、両性高分子化合物の電荷を反転させ静電的に吸着させて発色調節層を形成することができる。
【0021】
このような等電点を有する両性高分子化合物としては、ゼラチンやカゼインなどのポリアミノ酸などを挙げることができる。
【0022】
発色調節層の厚みは、発色調節層を形成させる第一および第二の高分子化合物の電位、分子量や添加量に依存し、希望する発色特性となるように容易に調節することができる。
【0023】
本発明に用いられる感熱記録成分を構成する他の化合物の分散液は、乾式粉砕して分散媒中に分散する方法や分散媒に混入して湿式粉砕する方法などにより得られる。粉砕する方法としては任意の方法を用いることができる。
【0024】
分散液中の感熱記録成分を構成する各化合物の粒径は20μm以下が好ましく、粒径がこれより大きいと均一な印字ができないので好ましくない。粒径は10μm以下が特に好ましく、より均一な印字が得られる。
【0025】
本発明における熱により反応して発色する感熱記録成分は、2種以上の化合物から構成されるが、特に限定されるものではない。2種以上の化合物から構成される感熱記録成分として、例えば、通常無色あるいは淡色の電子供与性染料前駆体(化合物)と電子受容性化合物の組み合わせ、イソシアナート化合物とイミノ化合物の組み合わせ、通常無色あるいは淡色の電子供与性染料前駆体とイソシアナート化合物の組み合わせ、金属化合物と配位化合物の組み合わせ、ジアゾニウム塩とカプラーの組み合わせなどが挙げられる。特に、発色濃度、発色のし易さ、発色の制御のし易さなどの点で、通常無色あるいは淡色の電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物の組み合わせ、イソシアナート化合物とイミノ化合物の組み合わせ、通常無色あるいは淡色の電子供与性染料前駆体とイソシアナート化合物の組み合わせが好ましく用いられる。また、イソシアナート化合物を用いると、特に画像安定性に優れた感熱記録材料を得ることができる。
【0026】
本発明に係わる熱により反応して発色する感熱記録層を構成する2種以上の化合物のうち、通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体としては、一般に感圧記録紙や感熱記録紙などに用いられる化合物を使用することができ、特に制限されるものではない。具体的な例としては、例えば下記に挙げるものなどがあるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリドなどのトリアリールメタン系化合物、
【0028】
4,4′−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミンなどのジフェニルメタン系化合物、
【0029】
ローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、
【0030】
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−フェネチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランなどのキサンテン系化合物、
【0031】
ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルーなどのチアジン系化合物、
【0032】
3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3′−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピルスピロベンゾピランなどのスピロ系化合物などが挙げられる。これらは、単独もしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
これら通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体と熱により反応して発色する電子受容性化合物の具体例としては、例えば下記に挙げるものなどがあるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
p−フェニルフェノール、p−ヒドロキシアセトフェノン、4−ヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンゼンスルホニルオキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジアリル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、4,4′−チオビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、没食子酸ベンジル、没食子酸ステアリル、サリチルアニリド、5−クロロサリチルアニリドなどが挙げることができる。これらは、単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0035】
また、通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体あるいはイミノ化合物と反応することにより発色するイソシアナート化合物の具体例としては、常温固体の無色または淡色のイソシアナート化合物または複素環イソシアナート化合物などが挙げられ、例えば、下記の1種以上が用いられる。
【0036】
1,1,4,6−テトラメチルインダン−5,7−ジイソシアナート、2,6−ジクロロフェニルイソシアナート、p−クロロフェニルイソシアナート、1,3−フェニレンジイソシアナート、1,4−フェニレンジイソシアナート、1,3−ジメチルベンゼン−4,6−ジイソシアナート、1,4−ジメチルベンゼン−2,5−ジイソシアナート、1−メトキシベンゼン−2,4−ジイソシアナート、1−メトキシベンゼン−2,5−ジイソシアナート、1−エトキシベンゼン−2,4−ジイソシアナート、2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイソシアナート、2,5−ジエトキシベンゼン−1,4−ジイソシアナート、2,5−ジブトキシベンゼン−1,4−ジイソシアナート、アゾベンゼン−4,4′−ジイソシアナート、ジフェニルエーテル−4,4′−ジイソシアナート、ナフタレン−1,4−ジイソシアナート、ナフタレン−1,5−ジイソシアナート、ナフタレン−2,6−ジイソシアナート、ナフタレン−2,7−ジイソシアナート、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアナート、3,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアナート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアナート、ジフェニルジメチルメタン−4,4′−ジイソシアナート、ベンゾフェノン−3,3′−ジイソシアナート、フルオレン−2,7−ジイソシアナート、アントラキノン−2,6−ジイソシアナート、9−エチルカルバゾール−3,6−ジイソシアナート、ピレン−3,8−ジイソシアナート、ナフタレン−1,3,7−トリイソシアナート、ビフェニル−2,4,4′−トリイソシアナート、4,4′,4″−トリイソシアナート−2,5−ジメトキシトリフェニルアミン、p−ジメチルアミノフェニルイソシアナート、トリス(4−フェニルイソシアナート)チオホスフェートなどがある。これらのイソシアナート化合物は、必要に応じて、フェノール類、ラクタム類、オキシム類などとの付加化合物である、いわゆるブロックイソシアナートのかたちで用いてもよく、ジイソシアナートの2量体、例えば1−メチルベンゼン−2,4−ジイソシアナートの2量体および3量体であるイソシアヌレートのかたちで用いてもよく、また、各種のポリオールなどでアダクト化したポリイソシアナートとして用いることも可能である。
【0037】
イミノ化合物の具体的な例としては、下記に挙げるものなどがあるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
3−イミノイソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,6,7−テトラブロモイソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,6,7−テトラフルオロイソインドリン−1−オン、3−イミノ−5,6−ジクロロイソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,7−トリクロロ−6−メトキシイソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,7−トリクロロ−6−メトキシイソインドリン−1−オン、3−イミノ−4,5,7−トリクロロ−6−メチルメルカプト−イソインドリン−1−オン、3−イミノ−6−ニトロイソインドリン−1−オン、3−イミノイソインドリン−1−スピロジオキソラン、1,1−ジメトキシ−3−イミノイソインドリン、1,1−ジエトキシ−3−イミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン、1−エトキシ−3−イミノイソインドリン、1,3−ジイミノイソインドリン、1,3−ジイミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン、1,3−ジイミノ−6−メトキシイソインドリン、1,3−ジイミノ−6−シアノイソインドリン、1,3−ジイミノ−4,7−ジチア−5,5,6,6−テトラヒドロイソインドリン。
【0039】
7−アミノ−2,3−ジメチル−5−オキソピロロ〔3,4b〕ピラジン、7−アミノ−2,3−ジフェニル−5−オキソピロロ〔3,4b〕ピラジン、1−イミノナフタル酸イミド、1−イミノジフェン酸イミド、1−フェニルイミノ−3−イミノイソインドリン、1−(3′−クロロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′,5′−ジクロロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′,4′,5′トリクロロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′−シアノ−4′−ニトロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′−クロロ−5′−シアノフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′,6′−ジクロロ−4′−ニトロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′,5′−ジメトキシフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′,5′−ジエトキシフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′−メチル−4′−ニトロフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(5′−クロロ−2′−フェノキシフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(4′−N,N−ジメチルアミノフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(3′−N,N−ジメチルアミノ−4′−メトキシフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′−メトキシ−5′−N−フェニルカルバモイルフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(2′−クロロ−5′−トリフルオロメチルフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(5′,6′−ジクロロベンゾチアゾリル−2′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(6′−メチルベンゾチアゾリル−2′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(4′−フェニルアミノフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(p−フェニルアゾフェニルイミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(ナフチル−1′−イミノ)−3−イミノイソインドリン。
【0040】
1−(アントラキノン−1′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(5′−クロロアントラキノン−1′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(N−エチルカルバゾリル−3′−イミノ)−3−イミノソインドリン、1−(ナフトキノン−1′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(ピリジル−4′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(ベンズイミダゾロン−6′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(1′−メチルベンズイミダゾロン−6′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(7′−クロロベンズイミダゾロン−5′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(ベンズイミダゾリル−2′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(ベンズイミダゾリル−2′−イミノ)−3−イミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン、1−(2′,4′−ジニトロフェニルヒドラゾン)−3−イミノイソインドリン、1−(インダゾリル−3′−イミノ)−3−イミノイソインドリン、1−(インダゾリル−3′−イミノ)−3−イミノ−4,5,6,7−テトラブロモイソインドリン、1−(インダゾリル−3′−イミノ)−3−イミノ−4,5,6,7−テトラフルオロイソインドリン、1−(ベンズイミダゾリル−2′−イミノ)−3−イミノ−4,7−ジチアテトラヒドロイソインドリン、1−(4′,5′−ジシアノイミダゾリル−2′−イミノ)−3−イミノ−5,6−ジメチル−4,7−ピラジイソインドリン、1−(シアノベンゾイルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノカルボンアミドメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノカルボメトキシメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノカルボエトキシメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノ−N−フェニルカルバモイルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノ−N−(3′−メチルフェニル)カルバモイルメチレン〕−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノ−N−(4′−クロロフェニル)カルバモイルメチレン〕−3−イミノイソインドリン、1−〔シアノ−N−(4′−メトキシフェニル)−カルバモイルメチレン〕−3−イミノイソインドリン。
【0041】
1−〔シアノ−N−(3′−クロロ−4′−メチルフェニル)−カルバモイルメチレン〕−3−イミノイソインドリン、1−(シアノ−p−ニトロフェニルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(ジシアノメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノ−1′,2′,4′−トリアゾリル−(3′)−カルバモイルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノチアゾイル−(2′)−カルバモイルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノベンズイミダゾリル−(2′)−カルバモイルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−(シアノベンゾチアゾリル−(2′)−カルバモイルメチレン)−3−イミノイソインドリン、1−〔(シアノベンズイミダゾリル−2′)−メチレン〕−3−イミノイソインドリン、1−〔(シアノベンズイミダゾリル−2′)−メチレン〕−3−イミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン、1−〔(シアノベンズイミダゾリル−2′)−メチレン〕−3−イミノ−5−メトキシイソインドリン、1−〔(シアノベンズイミダゾリル−2′)−メチレン〕−3−イミノ−6−クロロイソインドリン、1−〔(1′−フェニル−3′−メチル−5−オキソ)−ピラゾリデン−4′〕−3−イミノイソインドリン、1−〔(シアノベンズイミダゾリル−2′)−メチレン〕−3−イミノ−4,7−ジチアテトラヒドロイソインドリン、1−〔(シアノベンズイミダゾリル−2′)−メチレン〕−3−イミノ−5,6−ジメチル−4,7−ピラジイソインドリン、1−〔(1′−メチル−3′−n−ブチル)−バルビツル酸−5′〕−3−イミノイソインドリン。
【0042】
3−イミノ−1−スルホ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−6−クロロ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−5,6−ジクロロ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−4,5,6,7−テトラクロロ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−4,5,6,7−テトラブロモ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−4,5,6,7−テトラフルオロ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−6−ニトロ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−6−メトキシ安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−4,5,7−トリクロロ−6−メチルメルカプト安息香酸イミド、3−イミノ−1−スルホナフトエ酸イミド、3−イミノ−1−スルホ−5−ブロモナフトエ酸イミド、3−イミノ−2−メチル−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン−1−オンなどが挙げることができる。これらは、単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0043】
以上の感熱記録成分を構成する2種以上の化合物のうち、その表面に発色調節層を設ける化合物の種類は特に限定されず、少なくとも1種の化合物が選択されれば良い。感熱記録成分を構成する化合物である電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物、イソシアナート化合物、イミノ化合物、金属化合物、配位化合物、ジアゾニウム塩、カプラーなどのいずれかの表面に発色調節層を設けることができる。
【0044】
本発明の感熱記録材料を特に多色感熱記録材料として応用する場合、感熱記録成分を構成する化合物のうち、発色色調を決定する化合物に発色調節層を設けると、複数の感熱記録成分を同一の層に含有させることができて更に好ましい。例えば、2色発色の感熱記録成分として、電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物の組み合わせから構成される2種の感熱記録成分を用いる場合、発色色調は概ね電子供与性染料前駆体の種類に依存している。従って、電子受容性化合物を両感熱記録成分で共通とし、一方の電子供与性染料前駆体の粒子の表面に発色調節層を設け、他方の(発色調節層を設けていない)電子供与性染料前駆体および電子受容性化合物と共に同一の層に含有させることにより、加熱温度の違いにより2種の色調に発色する多色感熱記録材料を得ることができる。すなわち、より低い温度の加熱では、発色調節層が設けられていない電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物より構成される第一の感熱記録成分が発色して第一の色調に発色し、より高い温度の加熱では、第一の感熱記録成分および発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物より構成される第二の感熱記録成分の両方が発色し第二の色調を示す。3種の感熱記録成分を含有する多色感熱記録材料も同様に単一の層で構成でき、この場合、複数種の感熱記録成分を構成する電子供与性染料前駆体の表面に特性の異なる発色調節層を設け、感熱記録成分毎に発色開始温度が異なる様に調節すれば良い。
【0045】
本発明の感熱記録材料は、多色感熱記録材料の他、高温条件でも未印字部が発色し難い感熱記録材料、また、感熱記録材料を発色させる物質、例えば、有機溶剤などが未印字部に付着しても発色し難い感熱記録材料などに応用することもできる。
【0046】
本発明の感熱記録材料の感熱記録層は、感熱記録成分を支持体上に設けることにより形成される。感熱記録成分を支持体上に設ける方法は特に限定されないが、感熱記録成分の塗液を塗布する方法、感熱記録成分を含むインキを印刷する方法などを用いることができる。また、感熱記録層には、必要に応じてバインダーを含有させることもできる。感熱記録層に含有させるバインダーは特に限定されないが、感熱記録成分の発色特性に与える影響が少ないものが特に好ましく用いられる。
【0047】
バインダーとしては、ノニオン性またはイオン性の低い高分子化合物が好ましい。具体的には、デンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、オキシベンゾイルポリエステル、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリアリルスルホン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミンホルマリン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、その他各種ポリオレフィン系樹脂などが挙げられ、これらは、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0048】
本発明による感熱記録層を設ける支持体は、透明、半透明および不透明のいずれであってもよく、紙、各種不織布、織布、合成樹脂フィルム、合成樹脂ラミネート紙、合成紙、金属箔、セラミック紙、ガラス板など、あるいはこれらを組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
本発明の感熱記録材料においては、感熱記録層上に直接または他の層を介して1層以上の保護層を設けても良い。保護層の成分は特に限定されないが、感熱記録組成の発色特性に与える影響が少ないものが特に好ましく用いられる。
【0050】
保護層の形成に主として用いられる樹脂の具体例としては、デンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、オキシベンゾイルポリエステル、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリアリルスルホン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミンホルマリン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸3元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩またはアンモニウム塩、その他各種ポリオレフィン系樹脂などが挙げられ、これらは、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0051】
本発明の感熱記録材料においては、感熱記録層と支持体の間に、平滑性、断熱性などを向上させるために中間層を設けても良い。中間層には、各種樹脂、有機顔料、無機顔料、各種中空粒子などを含有させることができる。
【0052】
本発明の感熱記録材料においては、感熱記録層と支持体の間の層および/または感熱記録層が設けられている面または、反対側の面に、電気的、磁気的、または光学的に情報が記録可能な材料を含む層を設けても良い。また、感熱記録層が設けられている面と反対側の面にカール防止や帯電防止などを目的としてバックコート層を設けても良く、さらに粘着加工などを行ってもよい。また、感熱記録層または保護層の表面にUVインキなどによる印刷などを行ってもよい。
【0053】
本発明の感熱記録材料においては、レーザー光による印字を行なうために、感熱記録材料中の任意の層および支持体に光熱変換材料を含有させることができる。
【0054】
本発明の感熱記録材料の任意の層には、必要に応じて、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、尿素−ホルマリン樹脂などの無機および有機顔料、その他に、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩、パラフィン、酸化パラフィン、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、ステアリン酸アミド、カスターワックスなどのワックス類を、また、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどの分散剤、さらに界面活性剤および蛍光染料などを含有させることもできる。
【0055】
また、耐光性を向上する目的で、酸化防止剤、紫外線吸収剤を添加することができる。酸化防止剤の例としては、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤およびスルフィド系酸化防止剤などが挙げられるが特に限定されない。また、紫外線吸収剤の例としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などの有機系紫外線吸収剤および酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムなどの無機系紫外線吸収剤が挙げられるが特に限定されない。
【0056】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。なお、以下の実施例および比較例において、部は重量部を表し、%は重量%を表す。
【0057】
作製例1 反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
黒色発色の電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン5部を、カチオン性高分子化合物の水溶液である0.3%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド/スチレン共重合体水溶液95部と共に、ボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの電子供与性染料前駆体分散液を得た。この電子供与性染料前駆体粒子のゼータ電位は+35mVであり、電子供与性染料前駆体の表面にカチオン性高分子化合物が吸着していることを確認した。次いで、この分散液を、20%のソープフリーのスチレン/ブタジエン共重合体系ラテックス(ゼータ電位−47mV)100部中に、ホモディスパーで高速撹拌しながらゆっくりと添加した。混合液は添加の途中で一旦粘度が上昇したが、更に添加を続けると粘度が低下し、添加終了時には添加前と同程度の低粘度の混合液が得られた。混合液中の電子供与性染料前駆体粒子のゼータ電位は−40mVに変化しており、更にスチレン/ブタジエン共重合体が吸着したことを確認した。
【0058】
作製例2 反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
作製例1の20%のソープフリーのスチレン/ブタジエン共重合体系ラテックス100部の代わりに、20%のソープフリーのアクリル重合体系ラテックス100部を使用した以外は、全く同様にして混合液を調製した。混合液中の電子供与性染料前駆体粒子のゼータ電位は−35mVに変化しており、更にアクリル重合体が吸着したことを確認した。
【0059】
作製例3 反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
作製例1の20%のソープフリーのスチレン/ブタジエン共重合体系ラテックス100部の代わりに、10%のイソブチレン/マレイン酸共重合体の水溶液100部を使用した以外は、全く同様にして混合液を調製した。混合液中の電子供与性染料前駆体粒子のゼータ電位は−32mVに変化しており、更ににイソブチレン/マレイン酸共重合体が吸着したことを確認した。
【0060】
作製例4 反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
黒色発色の電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン5部を0.3%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド/スチレン共重合体水溶液95部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの電子供与性染料前駆体分散液を得た。この電子供与性染料前駆体粒子のゼータ電位は+35mVであった。次いで、50℃の10%酸性法ゼラチン水溶液(等電点8.0、pH6.0)100部と混合した。この混合液に、アンモニア水を添加して、pHを10.0に調整した。pH調整後の混合液中の電子供与性染料前駆体粒子のゼータ電位は−21mVに変化しており、更にゼラチンが吸着したことを確認した。
【0061】
作製例5 反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けたイソシアナート化合物の作製
作製例1の3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン5部の代わりに、イソシアナート化合物である4,4′,4″−トリイソシアナート−2,5−ジメトキシトリフェニルアミン5部を使用した以外は、全く同様にして混合液を調製した。混合前のイソシアナート化合物粒子のゼータ電位は+32mV、混合液中のイソシアナート化合物粒子のゼータ電位は−43mVであり、更にスチレン/ブタジエン共重合体が吸着したことを確認した。
【0062】
作製例6 1種の高分子化合物からなる吸着層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
黒色発色の電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン5部を0.3%スルホン酸変性ポリビニルアルコール水溶液95部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの電子供与性染料前駆体分散液を得た。この電子供与性染料前駆体粒子のゼータ電位は−42mVであり、電子供与性染料前駆体の表面にスルホン酸変性ポリビニルアルコールが吸着していることを確認した。
【0063】
作製例7 1種の低分子化合物と1種の高分子化合物からなる吸着層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
作製例1の0.3%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド/スチレン共重合体水溶液95部の代わりに、カチオン性低分子化合物の水溶液である0.3%オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液100部を使用した以外は、作製例1と同様に粉砕して、体積平均粒径1μmの電子供与性染料前駆体分散液を得た。この電子供与性染料前駆体粒子のゼータ電位は+38mVであり、電子供与性染料前駆体の表面にカチオン性低分子化合物のオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライドが吸着していることを確認した。次いで、作製例1と全く同様に20%のソープフリーのスチレン/ブタジエン共重合体系ラテックス100部を使用して、スチレン/ブタジエン共重合体系ラテックスとの混合液を調製した。混合液中の電子供与性染料前駆体粒子のゼータ電位は−30mVに変化しており、更にスチレン/ブタジエン共重合体が吸着したことを確認した。
【0064】
作製例8 1種の低分子化合物と1種の高分子化合物からなる吸着層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
作製例7の20%のソープフリーのスチレン/ブタジエン共重合体系ラテックス100部の代わりに、10%のイソブチレン/マレイン酸共重合体の水溶液100部を使用した以外は、作製例7と全く同様にして混合液を調製した。混合液中の電子供与性染料前駆体粒子のゼータ電位は−27mVに変化しており、更ににイソブチレン/マレイン酸共重合体が吸着したことを確認した。
【0065】
作製例9 マイクロカプセルに内包した電子供与性染料前駆体の作製
黒色発色の電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トリフルオロメチル)アニリノフルオラン16部を1−(3,4−ジメチルフェニル)−1−フェニルエタン64部に溶解した後、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートと1,2−ビス(p−(p−イソシアネートベンジル)フェニルアミノカルボニルオキシ)エタンの1:1混合物20部と補助溶剤として酢酸エチル20部を添加し均一に溶解した。この溶液を5%ポリビニルアルコール水溶液250部に混合し、ホモミキサーを用いて25℃で乳化分散し、平均粒径2μmの乳化液を得た。ジエチレントリアミン8部を蒸留水42部に溶解した水溶液を、得られた乳化液に添加し、撹拌しながら80℃加熱を3時間行い、マイクロカプセルに内包した電子供与性染料前駆体の分散液を得た。
【0066】
作製例10 ポリウレア、ポリウレタンより選ばれる高分子物質と電子供与性染料前駆体よりなる複合粒子の作製
黒色発色の電子供与性染料前駆体である3−ジ(n−アミルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン6部を、塩化メチレン30部に溶解し、次に、この溶液にトリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとのモル比1:3の付加物(武田薬品工業製 タケネートD−110N、希釈溶剤:酢酸エチル、濃度75%)12部を添加して均一に混合し、この混合液に、5%ポリビニルアルコール水溶液250部に添加し、ホモミキサーを用いて25℃で乳化分散した後45℃に昇温し、撹拌を5時間続けて塩化メチレンおよび酢酸エチルを蒸発除去した。その後80℃に昇温し、3時間の硬化反応を行なわせて、平均粒径1.8μmのポリウレア、ポリウレタンより選ばれる高分子物質と電子供与性染料前駆体よりなる複合粒子の分散液を得た。
【0067】
作製例11 1種の高分子化合物からなる吸着層を設けたイソシアナート化合物の作製
イソシアナート化合物である4,4′,4″−トリイソシアナート−2,5−ジメトキシトリフェニルアミン5部を0.3%スルホン酸変性ポリビニルアルコール水溶液95部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmのイソシアナート化合物分散液を得た。このイソシアナート化合物粒子のゼータ電位は−44mVであった。
【0068】
実施例1 多色感熱記録材料の作製
赤色発色の電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン3部を2%ポリビニルアルコール水溶液7部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの電子供与性染料前駆体分散液10部を得た。次いで電子受容性化合物である2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン6部を2%ポリビニルアルコール水溶液14部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの電子受容性化合物分散液20部を得た。また、2−ベンジルオキシナフタレン6部を2%ポリビニルアルコール水溶液14部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの2−ベンジルオキシナフタレン分散液20部を得た。上記3種の分散液および作製例1で調製した反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液60部を混合し、多色感熱記録材料の塗液を作製した。この塗液を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートに、固形分塗抹量4g/m2となる様に塗抹し、60℃のオーブンで乾燥し、多色感熱記録材料を作製した。
【0069】
実施例2 多色感熱記録材料の作製
実施例1で用いた作製例1で調製した反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液の代わりに、作製例2で調製した反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液を用いた以外は、実施例1と全く同様にして多色感熱記録材料を作製した。
【0070】
実施例3 多色感熱記録材料の作製
実施例1で用いた作製例1で調製した反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液の代わりに、作製例3で調製した反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液を用いた以外は、実施例1と全く同様にして多色感熱記録材料を作製した。
【0071】
実施例4 多色感熱記録材料の作製
実施例1で用いた作製例1で調製した反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液の代わりに、作製例4で調製した反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液を用いた以外は、実施例1と全く同様にして多色感熱記録材料を作製した。
【0072】
実施例5 高温条件でも未印字部が発色し難い感熱記録材料の作製
電子受容性化合物である3,3′−ジアリル−4,4′−ジヒドロキシフェニルスルホン6部を2%ポリビニルアルコール水溶液14部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの電子受容性化合物分散液20部を得た。また、2−ベンジルオキシナフタレン6部を2%ポリビニルアルコール水溶液14部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの2−ベンジルオキシナフタレン分散液20部を得た。上記2種の分散液および作製例1で調製した反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液60部を混合し、高温条件でも未印字部が発色し難い感熱記録材料の塗液を作製した。この塗液を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートに、固形分塗抹量3.3g/m2となる様に塗抹し、60℃のオーブンで乾燥し、高温条件でも未印字部が発色し難い感熱記録材料を作製した。
【0073】
実施例6 高温条件でも未印字部が発色し難い感熱記録材料の作製
イミノ化合物である1,3−ジイミノ−4,5,6,7−テトラクロロイソインドリン6部を2%ポリビニルアルコール水溶液14部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmのイミノ化合物分散液20部を得た。また、2−ベンジルオキシナフタレン6部を2%ポリビニルアルコール水溶液14部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの2−ベンジルオキシナフタレン分散液20部を得た。上記2種の分散液および作製例5で調製した反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けたイソシアナート化合物粒子の分散液60部を混合し、高温条件でも未印字部が発色し難い感熱記録材料の塗液を作製した。この塗液を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートに、固形分塗抹量4g/m2となる様に塗抹し、60℃のオーブンで乾燥し、高温条件でも未印字部が発色し難い感熱記録材料を作製した。
【0074】
比較例1 感熱記録材料の作製
実施例1で用いた作製例1で調製した反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液60部の代わりに、作製例6で調製した1種の高分子化合物からなる吸着層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液60部を用いた以外は、実施例1と全く同様にして感熱記録材料を作製した。
【0075】
比較例2 感熱記録材料の作製
実施例1で用いた作製例1で調製した反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液60部の代わりに、作製例7で調製した1種の低分子化合物と1種の高分子化合物からなる吸着層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液60部を用いた以外は、実施例1と全く同様にして感熱記録材料を作製した。
【0076】
比較例3 感熱記録材料の作製
実施例1で用いた作製例1で調製した反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液60部の代わりに、作製例8で調製した1種の低分子化合物と1種の高分子化合物からなる吸着層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液60部を用いた以外は、実施例1と全く同様にして感熱記録材料を作製した。
【0077】
比較例4 多色感熱記録材料の作製
実施例1で用いた作製例1で調製した反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液60部の代わりに、作製例9で調製したマイクロカプセルに内包した電子供与性染料前駆体の分散液65部を用いた以外は、実施例1と全く同様にして多色感熱記録材料を作製した。
【0078】
比較例5 多色感熱記録材料の作製
実施例1で用いた作製例1で調製した反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液60部の代わりに、作製例10で調製したポリウレア、ポリウレタンより選ばれる高分子物質と電子供与性染料前駆体よりなる複合粒子の分散液130部を用いた以外は、実施例1と全く同様にして多色感熱記録材料を作製した。
【0079】
比較例6 感熱記録材料の作製
実施例5で用いた作製例1で調製した反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液60部の代わりに、作製例6で調製した1種の高分子化合物からなる層を設けた電子供与性染料前駆体の分散液60部を用いた以外は、実施例5と全く同様にして感熱記録材料を作製した。
【0080】
比較例7 感熱記録材料の作製
実施例6で用いた作製例5で調製した反対符号の電荷を有する2種の高分子化合物からなる発色調節層を設けたイソシアナート化合物粒子の分散液60部の代わりに、作製例11で調製した1種の高分子化合物からなる層を設けたイソシアナート化合物粒子の分散液60部を用いた以外は、実施例6と全く同様にして感熱記録材料を作製した。
【0081】
試験1 サーマルヘッドによる低エネルギー条件での印字
実施例1〜4の多色感熱記録材料、比較例1〜5の多色感熱記録材料および感熱記録材料を、TDK製印字ヘッド(LH4409)付き大倉電気製感熱ファクシミリ印字試験機(TH−PMD)で、印加電圧20ボルト、印加パルス1.0ミリ秒で印字した。印字部の発色色調を目視により観察した。また印字部の濃度を濃度計(マクベスRD918)を用い、フィルターホールの位置をマゼンタで測定した。結果を表1に示した。
【0082】
【表1】
【0083】
試験2 サーマルヘッドによる高エネルギー条件での印字
実施例1〜4の多色感熱記録材料、比較例1、2の多色感熱記録材料および比較例4の感熱記録材料を、TDK製印字ヘッド(LH4409)付き大倉電気製感熱ファクシミリ印字試験機(TH−PMD)で、印加電圧20ボルト、印加パルス2.0ミリ秒で印字した。印字部の発色色調を目視により観察した。また印字部の濃度を濃度計(マクベスRD918)を用い、フィルターホールの位置を黒で測定した。また、黒発色部の周りに生じた赤色の縁取りを顕微鏡を使用し観察した。結果を表2に示した。
【0084】
【表2】
【0085】
試験3 高温条件での未印字部の発色試験
実施例5、6の高温条件でも未印字部が発色し難い感熱記録材料および比較例6、7の感熱記録材料に、熱した金属ブロックを5秒間押し当てて、発色する温度を測定した。発色する温度は、濃度0.5以上に発色する温度とし、濃度は濃度計(マクベスRD918)を用い、フィルターホールの位置を黒で測定した。また、TDK製印字ヘッド(LH4409)付き大倉電気製感熱ファクシミリ印字試験機(TH−PMD)を用い、印加電圧20ボルト、印加パルス2.0ミリ秒で印字した。印字部の濃度を濃度計(マクベスRD918)を用い、フィルターホールの位置を黒で測定した。結果を表3に示した。
【0086】
【表3】
【0087】
【発明の効果】
以上の実施例で示したように、感熱記録成分を構成する化合物に、反対符号の電荷を有する2種以上の高分子化合物をその表面に静電的に吸着させた発色調節層を形成する方法は、単なる混合操作やpH調整操作だけなので、極めて容易であり、かつ、生産性が高いことがわかる。また、高分子化合物として、その種類、電荷、電位、分子量や添加量等種々の条件を自由に選択できるため、発色調節層の特性を自在に調節することができた。
【0088】
実施例1〜4の試験1と2の結果で示した様に、本発明における発色層を設けた電子供与性染料前駆体と、それと異なる色調に発色する電子供与性染料前駆体、および、電子受容性化合物という3種の化合物の組み合わせからなる感熱記録成分を主として含有する感熱層を設けた感熱記録材料は、加熱温度の違いにより鮮やかな赤と黒の2発色を示した。一方、比較例1の1種の高分子化合物からなる吸着層を設けた電子供与性染料前駆体を用いた場合や、比較例2および3の低分子化合物を使用した場合は、低温での発色が赤味がかった黒であり、2発色を示さなかった。また、マイクロカプセルに内包した電子供与性染料前駆体を用いた比較例4や、ポリウレア、ポリウレタンより選ばれる高分子物質と電子供与性染料前駆体よりなる複合粒子を用いた比較例5では、鮮やかな2発色は示すものの、黒発色の濃度が低くまた黒発色部の周りに赤色の縁取りが大きいため、細線や細かい文字を印字すると赤味がかった黒となった。また、試験3の実施例5と6および比較例6と7を比較することにより、発色調節層が設られた感熱記録成分を構成する化合物を用いることにより、高温の条件でも未印字部が発色し難く地肌の保存性に優れた感熱記録材料が得られた。更に、感熱記録成分を構成する化合物のうちの1種がイソシアナート化合物であることにより、実質上十分な発色濃度があり、かつ、発色開始温度が更に高い発色特性を有する感熱記録材料を得ることができた。
【0089】
以上のとおり、支持体上に、感熱記録成分を構成する化合物が本発明における発色調節層をその表面に設けた粒子の形態で感熱記録層中に含有されていることを特徴とする感熱記録材料は、発色調節層の特性を自在に調節できるため、発色開始温度や感度などの発色特性を容易に調節できた。特に、感熱記録成分を構成する化合物として、本発明における発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体と通常の電子供与性染料前駆体および電子受容性化合物を用いることにより、2色に発色する多色感熱記録材料が得れれた。また、本発明における発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体やイソシアナート化合物を使用することにより、高温条件でも未印字部が発色し難い感熱記録材料を得ることができた。
Claims (4)
- 支持体上に、熱により反応して発色する感熱記録成分を主として含有する感熱記録層を設けた感熱記録材料において、該感熱記録成分が2種以上の化合物から構成され、該感熱記録成分を構成する2種以上の化合物の少なくとも1種が分散粒子であり、かつ、その粒子表面にマイナス荷電を有するイオン性高分子化合物もしくはプラス荷電を有するイオン性高分子化合物を吸着させ、さらにその表面に、反対符号を有するイオン性高分子化合物を吸着させ、符号の異なるイオン性高分子化合物の層を少なくとも2層積層させ、最外層もイオン性高分子化合物を吸着させた層である発色調節層を有することを特徴とする感熱記録材料。
- 該感熱記録成分を構成する2種以上の化合物が、無色ないしは淡色の電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物であることを特徴とする請求項1記載の感熱記録材料。
- 該感熱記録成分を構成する2種以上の化合物のうちの少なくとも1種が、イソシアナート化合物であることを特徴とする請求項1記載の感熱記録材料。
- 該感熱記録成分を構成する2種以上の化合物が、異なる色調に発色する3種以上の化合物の組み合わせからなることを特徴とする請求項1ないし3記載の多色感熱記録材料。
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