JP3628531B2 - 感熱記録材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発色温度などの発色特性が調整された感熱記録成分を含有する感熱記録材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
感熱記録材料は、一般に支持体上に電子供与性の通常無色ないし淡色の染料前駆体と電子受容性の顕色剤とを主成分とする感熱記録層を設けたもので、サーマルヘッド(熱ヘッド)、熱ペン、レーザー光などで加熱することにより、染料前駆体と顕色剤とが瞬時反応して発色画像が得られるもので、特公昭43−4160号公報及び特公昭45−14039号公報などに開示されている。
【0003】
このような感熱記録材料は、比較的簡単な装置で記録でき、保守が容易なこと、騒音の発生がないことなどの利点があり、計測記録計、ファクシミリ、プリンター、コンピューターの端末機、ラベル、乗車券の自動販売機など広範囲の分野に利用されている。
【0004】
一方、感熱記録材料の用途の多くで、加熱温度の違いにより2種以上の色調に発色させることができる多色感熱記録材料が望まれている。このような多色感熱記録材料を実現する方法として、感熱記録成分を構成する化合物の融点などを変えて発色温度を調節し、低温加熱では発色温度の低い感熱記録成分のみが発色し、高温では発色温度の低い感熱記録成分と発色温度が高い感熱記録成分とが同時に発色して低温加熱時とは異なる色調に発色させる方法、感熱記録成分を種類ごとに積層された別々の層に含有させ、より加熱源に近い表面の層に含有される感熱記録成分ほどより低い加熱温度で発色させ、より表面から隔てられた層に含有される感熱記録成分ほどより高い加熱温度で発色させる方法などが知られている。
【0005】
前者の感熱記録成分を構成する化合物の融点などを変えて発色温度を調節する方法においては、使用できる素材が限定され、他の特性とのバランスが十分得られない問題があるほか、色調の異なる感熱発色成分を同一の層に含有させるには、種類の異なる感熱記録成分が互いに相互作用して発色させないようにする工夫が必要となる。また、後者の感熱記録成分を種類ごとに積層された別々の層に含有させる方法においては、多色感熱記録材料の層構成が複雑になって生産性が悪くなるなどの問題がある。
【0006】
さらに、多色感熱記録材料においては、狭い温度範囲(印字エネルギー範囲)で2種以上の色調が発色する、つまり発色色調が明確に分離されることが重要である。これを実現するには、高温発色成分の発色挙動において、発色しない加熱温度(印加エネルギー)の最高温度(最大エネルギー)と発色が飽和に達する最低温度(最小エネルギー)との差が小さいこと、すなわち発色の温度(エネルギー)に対する立ち上がりが急である必要がある。高温発色成分の発色の立ち上がりを急にすることで、狭い温度範囲(印字エネルギー範囲)で、低温加熱時には高温発色成分は発色せず、ある温度以上でのみ急に発色することになるから、低温発色の色調が鮮やかで、色分離が明確になる。
【0007】
しかし、上述したような従来多色感熱記録材料は、一般に高温発色成分の発色の立ち上がりはなだらかであり、色分離は不明確である。また、任意の方法により、高温発色成分の発色温度をより高温側へ移動させたとしても、低温発色は鮮やかになって色分離はある程度明確になるが、高温発色成分を発色させるのに高いエネルギーが必要となり、実用は困難である。
【0008】
これらの問題に対して、感熱記録成分を構成する化合物をマイクロカプセルに内包し、マイクロカプセル壁に発色調節層としての役割を持たせることにより、発色温度などの発色特性を調節する方法が提案されている。例えば、特開平8−282115号公報では、発色色調の異なる複数の電子供与性染料前駆体及び電子受容性化合物を同一の層に含有させ、該電子供与性染料前駆体の少なくとも一種類をマイクロカプセルに内包させる方法が提案されている。この方法によれば、マイクロカプセルに内包させた電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物とが反応して発色する温度を高くすることができ、また、マイクロカプセルに内包した電子供与性染料前駆体と内包されていない電子供与性染料前駆体とは相互作用しないため、1層の感熱記録層で2種以上の発色色調を得ることができる。
【0009】
また、感熱記録成分を構成する化合物、例えば電子供与性染料前駆体をマイクロカプセルに内包することで、このマイクロカプセルを含有する感熱記録層を有する感熱記録材料において、発色温度などの発色特性の調節が可能となるばかりでなく、隔離しない場合には両者の接触により発色が誘発して地肌かぶりが生じるような電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物の組み合わせであっても、電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物とを隔離することで、地肌かぶりが生じず、発色の良好な感熱記録材料を得ることが可能である。
【0010】
さらに、有機溶剤などのような感熱記録材料を発色させる物質が感熱記録材料付着しても、発色調節層に有機溶剤などにより溶出しない特性を付与しておくことで、誤発色を防止する特性を付加させることが可能である。
【0011】
感熱記録成分を構成する化合物の表面に発色調節層を形成する方法としては、各種マイクロカプセル化法が適用できる。その方法としては、界面重合法、コアセルベーション法、スプレードライ法、液中硬化被覆法、融解分散冷却法などが知られている。しかし、感熱記録成分を構成する化合物は通常固体であるので、界面重合法を用いる場合には、感熱記録成分を構成する化合物を溶剤に溶解し、カプセル壁の原料を添加し、これを水などの媒体に分散した後、発色成分を溶解した溶剤を蒸発させると共にカプセル膜を重合する方法があるものの、工程が複雑になり、生産性が低下する欠点がある。また、コアセルベーション法を用いた場合、マイクロカプセルの作製条件が非常に限定され、生成したカプセル壁の特性も限定されてしまう欠点がある。スプレードライ法を用いた場合には、カプセル膜の均一性が悪いほか、カプセルの粒径が大きくなりやすく、感熱記録材料に応用した際印字性が悪くなる欠点もある。液中硬化被覆法を用いた場合には、カプセルの粒径が大きくなりやすい欠点などがある。融解分散冷却法用いた場合には、カプセル膜の融点が比較的低融点に制限されるため、生成したカプセル壁の特性も限定されてしまう欠点がある。
【0012】
一方、特開平9−142025号公報では、感熱記録成分を構成する化合物として電子供与性染料前駆体を用い、電子供与性染料前駆体をポリウレアまたはポリウレタンとの複合粒子として発色特性を調節し、該複合粒子を感熱記録材料中に含有させて、多色感熱記録材料を得る方法が提案されている。この方法によれば、通常のマイクロカプセルを利用する方法に比べて、感度の低下が少なく、圧力または摩擦などによる発色が起こりにくいことが述べられている。しかし、この方法では、電子供与性染料前駆体を完全に被覆するには、多量のポリウレアまたはポリウレタンを含有させることとなり、十分な感度を得ることはできない。また、発色特性の調節可能範囲もある程度制限され、さらに発色の立ち上がりがおだやかになりやすい欠点がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、生産性よく感熱記録成分を構成する化合物の表面に発色調節層を設け、且つ発色調節層の特性を自在に調節し、必要に応じて感熱記録成分の発色温度などの発色特性を調節することのできる感熱記録材料を得ることである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、加熱により反応し発色する通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体化合物、及び該染料前駆体を発色せしめる電子受容性化合物により構成された感熱記録成分を主として含有する感熱記録層を支持体上に設けてなる感熱記録材料において、該感熱記録成分を構成する化合物の少なくとも1種以上が粉砕された固体粒子であり、その粉砕された化合物固体粒子表面に不飽和炭素結合を有する化合物を付加重合して得られる発色調節層が設けられた固体粒子の形態で感熱記録層中に含有されることを特徴とする感熱記録材料により解決した。
【0015】
本発明に係わる発色調節層を形成するのに用いる不飽和炭素結合を有する化合物は、その化合物中に不飽和炭素結合として炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合の少なくともいずれかを有し、不飽和炭素結合が開いて付加重合可能な化合物であり、ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物、環状オレフィン及びアセチレン化合物などが挙げられる。
【0016】
本発明の感熱記録材料に用いる感熱記録成分は2種以上の化合物により構成される。これらの化合物のうちの少なくとも1種は、表面に発色調節層が設けられた粒子の形態で感熱記録層中に含有される。また、2種以上の化合物が、表面に発色調節層が設けられた粒子の形態で感熱記録層中に含有されても良い。従来、発色特性を調節する目的で、増感剤などを添加し、発色温度を低下させたり、発色感度を向上させることが行われるが、逆に、発色温度を高くしたり、発色感度が低くなるように発色特性を調節するのは困難であった。しかし、感熱記録成分を構成する化合物の粒子の表面に発色調節層を設けることにより、発色温度を高くしたり、発色感度を低くしたりする方向へも発色特性を調節できる。
【0017】
本発明に係わる感熱記録成分を構成する化合物の表面に設けられる発色調節層は、不飽和炭素結合を有する化合物を重合して得られる。発色調節層を不飽和炭素結合を有する化合物を重合して形成することにより、従来のマイクロカプセルの作製方法を用いて発色調節層を作製した場合に比べて生産性が良く、また、発色調節層の特性を自在に制御することができる。
【0018】
本発明に係る発色調節層は、感熱記録成分を構成する化合物粒子の分散液に不飽和炭素結合を有する化合物を加え、重合開始剤を添加した後、必要に応じ加熱することにより、不飽和炭素結合を有する化合物における不飽和炭素結合が活性点となって付加重合し、感熱記録成分を構成する化合物の粒子の表面を被覆して形成される。
【0019】
発色調節層を設ける感熱記録成分を構成する化合物の分散液は、感熱記録成分を構成する化合物を乾式粉砕して分散媒中に分散する方法、感熱記録成分を構成する化合物を分散媒に混入し湿式粉砕する方法などにより得られる。粉砕する方法としては、任意の方法を用いることができる。感熱記録成分を構成する化合物の分散液中の感熱記録成分を構成する化合物粒子の粒径は、0.1μm以上20μm以下が好ましい。本発明において粒径がこの範囲である場合、効率よく発色調節層を設けることができ、また、該分散液の製造のしやすさ、感熱記録材料の印字性の面からも有利である。
【0020】
不飽和炭素結合を有する化合物を感熱記録成分を構成する化合物の分散液に加えた時の混合状態には、種々の状態が考えられる。すなわち、感熱記録成分を構成する化合物の分散液と不飽和炭素結合を有する化合物の大部分は相分離して別々の相を形成しているが、不飽和炭素結合を有する化合物の極微量が感熱記録成分を構成する化合物の分散液中に溶解している状態、感熱記録成分を構成する化合物の分散液と不飽和炭素結合を有する化合物が全く溶け合わずに完全に相分離している状態、不飽和炭素結合を有する化合物が分散液の大部分もしくは全部が完全に溶解した状態などが挙げられる。
【0021】
これらの状態のうち、感熱記録成分を構成する化合物の分散液と不飽和炭素結合を有する化合物の大部分は相分離して別々の相を形成しているが、不飽和炭素結合を有する化合物の極微量が感熱記録成分を構成する化合物の分散液中に溶解している状態が、感熱記録成分を構成する化合物の粒子の表面に発色調節層を形成する上で、特に好ましく用いることができる。なお不飽和炭素結合を有する化合物が分散液中で分散し、極微量が溶解した状態もこの状態に含まれる。このような、感熱記録成分を構成する化合物の分散液と不飽和炭素結合を有する化合物の大部分が相分離して別々の相を形成し、不飽和炭素結合を有する化合物の極微量が感熱記録成分を構成する化合物の分散液中に溶解している状態で不飽和炭素結合を有する化合物を重合させると、他の状態で重合させた場合に比べ、感熱記録成分を構成する化合物の粒子の表面により均一で緻密で諸特性に優れた発色調節層を形成することができる。
【0022】
一方、感熱記録成分を構成する化合物の分散液と不飽和炭素結合を有する化合物が全く溶け合わず完全に相分離している状態では、感熱記録成分を構成する化合物の粒子の表面に発色調節層を形成することが困難なので好ましくない。また、感熱記録成分を構成する化合物の分散液と不飽和炭素結合を有する化合物の大部分もしくは全部が完全に溶解している状態では、感熱記録成分を構成する化合物の粒子の表面に発色調節層を形成することは可能であるが、重合条件の設定が困難なので好ましくない。
【0023】
また、不飽和炭素結合を有する化合物を付加重合して得られる重合体が、分散液中で溶解及び/または膨潤するような場合も、感熱記録成分を構成する化合物の粒子の表面に発色調節層を形成することが困難なので好ましくない。
【0024】
感熱記録成分を構成する化合物の分散液と不飽和炭素結合を有する化合物の大部分は相分離して別々の層を形成しているが、不飽和炭素結合を有する化合物の極微量が感熱記録成分を構成する化合物の分散液中に溶解している状態で、且つ、不飽和炭素結合を有する化合物を付加重合して得られる重合体が分散液中で溶解・膨潤しない状態は、不飽和炭素結合を有する化合物を分散する分散媒及び感熱記録成分を構成する化合物の粒子を分散する分散媒の種類、及び不飽和炭素結合を有する化合物の種類を適宜選択することにより実現することができる。
【0025】
本発明において、感熱記録成分を構成する化合物の粒子を分散する分散媒としては、水、または、水に相溶性のある有機溶媒と水との混合溶液が好ましく用いられる。水に相溶性のある有機溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコール等が挙げられるが、水に相溶性のある有機溶媒であれば特に限定はされない。さらに、本発明においては、感熱記録成分を構成する化合物粒子を分散する分散媒の全重量の50重量%以上は水により構成されていることが好ましい。分散媒の全重量の50重量%以上は水により構成されている場合は、不飽和炭素結合を有する化合物を付加重合して感熱記録成分を構成する化合物粒子の表面に発色調節層を形成する際、感熱記録成分を構成する化合物粒子の分散安定性が良好であり、感熱記録成分を構成する化合物粒子間の凝集が発生しにくく、凝集による発色調節層の形成の妨害が起きにくい。
【0026】
通常、感熱記録材料は、感熱記録層を構成する感熱記録成分を塗液の状態で支持体に塗布し、乾燥させることにより作製されるが、生産性、安全性の面から、塗液の溶媒/分散媒の主成分は水であることが多い。本発明における発色調節層を設けた感熱記録成分を構成する化合物粒子が、全重量の50重量%以上が水である分散媒に分散していることは、該粒子を含有する感熱記録材料を作製する際、従来の感熱記録材料の塗液を作製する技術がそのまま適用でき、工業的に生産性の面からみても有利である。発色調節層を設けた感熱記録成分を構成する化合物粒子が、水が全重量の50重量%未満である分散媒に分散している場合、従来の水が溶媒/分散媒である感熱記録材料の塗液に添加すると、分散安定性が悪くなり、凝集が生じやすくなる、また、一度該化合物粒子を乾燥させ、再度水に分散させると、工程が複雑になり、生産性が悪くなるため好ましくない。
【0027】
また、本発明において、表面に発色調節層を設けられる感熱記録成分を構成する化合物粒子の分散液に、不飽和炭素結合を有する化合物を加える際、該化合物を分散液の状態で加えることが好ましい。不飽和炭素結合を有する化合物を感熱記録成分を構成する化合物粒子の分散液に加える際、不飽和炭素結合を有する化合物を分散媒に分散させて加えることで、少量の不飽和炭素結合を有する化合物で効率良く感熱記録成分を構成する化合物粒子の表面に発色調節層を設けることができ、感熱記録成分の発色温度などの発色特性が調節できる。
【0028】
不飽和炭素結合を有する化合物の分散液の分散媒と発色調節層を設ける感熱記録成分を構成する化合物粒子の分散液の分散媒とは同じであるか、または相溶性があることが好ましい。つまり、発色調節層を設ける感熱記録成分を構成する化合物粒子の分散液の分散媒が水系(全重量の50重量%以上が水であることが好ましいことは既に述べた)である場合は、不飽和炭素結合を有する化合物の分散液の分散媒も水系であることが好ましい。不飽和炭素結合を有する化合物の分散液の分散媒と発色調節層を設ける感熱記録成分を構成する化合物粒子の分散液の分散媒とが異なり、互いに相溶しない場合、両者を混合した際、凝集が発生し感熱記録成分を構成する化合物粒子の表面に発色調節層を設けることができないので好ましくない。
【0029】
不飽和炭素結合を有する化合物の分散液の分散滴は、体積平均粒径が1μm以上100μm以下が好ましい。不飽和炭素結合を有する化合物の分散粒径がが1μm未満の場合は、不飽和炭素結合を有する化合物の付加重合が感熱記録成分を構成する化合物粒子の表面で進行せずに、分散滴中で起こりやすくなり、逆に、該粒径が100μmを大きく越える場合は、分散滴中で重合が進行しても、粗大粒子の生成及び凝集を誘発しやすい。これらに対し、該分散滴の体積平均粒径が1μm以上100μm以下であれば、少量の不飽和炭素結合を有する化合物で効率良く感熱記録成分を構成する化合物粒子の表面に発色調節層を設けることができる。なお、不飽和炭素結合を有する化合物を分散する際、適宜分散安定剤を添加することが好ましい。
【0030】
さらに、本発明において、表面に発色調節層を設けられる感熱記録成分を構成する化合物粒子の分散液に、不飽和炭素結合を有する化合物を加える際、不飽和炭素結合を有する化合物を2回以上に分割して加え、これにより該粒子表面に発色調節層を2回以上に分けて設けると、発色調節層は緻密でより均一な膜となり、発色調節層を設けた感熱記録成分を構成する化合物粒子間での発色温度などの特性の差異が小さくなり、多色感熱記録材料を作製する際、色分離がより明瞭となって好ましい。
【0031】
本発明において、発色調節層の特性を変化させることにより、発色調節層を設けた感熱記録成分を含有する感熱記録材料の発色温度、耐溶剤性、保存性などの特性も大きく変化させることができる。発色調節層の特性を変化させる方法としては、不飽和炭素結合を有する化合物の種類、量を変化させることで容易に実現できる。
【0032】
本発明に係わる不飽和炭素結合を有する化合物は、本発明で言う不飽和炭素結合を1つ以上有する化合物であるが、不飽和炭素結合を2つ以上有する化合物を含有させ、その含有量を変化させることにより、発色調節層の特性を自由に変化させることができる。不飽和炭素結合を1つ有する化合物と不飽和炭素結合を2つ以上有する化合物とを混合して重合して形成した発色調節層は、発色調節層を形成する重合体の架橋構造により、不飽和炭素結合を2つ以上有する化合物を含有させずに重合して形成した発色調節層に比べ、熱や有機溶剤といった外部からの刺激に対する耐性が向上する。
【0033】
さらに、発色調節層は、不飽和炭素結合を2つ以上の有する化合物の含有量の増加に伴い、より高密度な架橋構造になり、耐熱特性、耐溶剤性が向上する。不飽和炭素結合を2つ以上有する化合物の含有量は、不飽和炭素結合を有する化合物の全重量に対して1重量%以上70重量%以下が好ましく、この範囲内では、感熱記録材料中の感熱記録成分の発色温度などの発色特性を広い範囲にわたって自由に調節することができる。さらにまた、不飽和炭素結合を2つ以上有する化合物の含有量が、不飽和炭素結合を有する化合物の全重量に対して10重量%以上50重量%以下がさらに好ましく、感熱記録材料を発色させる物質、例えば、有機溶剤などが未印字部に付着しても発色しにくく、印字部の発色濃度が高く均一な印字が可能な感熱記録材料を得ることが可能である。
【0034】
不飽和炭素結合を有する化合物の全量は、発色調節層を設ける感熱記録成分を構成する化合物粒子に対して、0.5重量%以上1000重量%以下であることが好ましい。発色調節層を設ける感熱記録成分を構成する化合物粒子に対して0.5重量%以上1000重量%以下である場合は、発色調節層としての機能が十分な被覆が可能であり、また重合が進行しやすく、重合時に凝集が生じにくく、感熱記録材料の発色濃度も十分なものが得られる。
【0035】
本発明に係わる不飽和炭素結合を1つのみ有する化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−メトキシスチレン、m−ブロモスチレン、m−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、o−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、p−クロロスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、2−ビニルピリジン、イソブテン、3−メチル−1−ブテン、ブチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、ニトロエチレン、ビニリデンシアニド、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクロレイン、メチルアクロレイン、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド、α−アセトキシアクリル酸エチル、α−クロロアクリル酸エチル、α−クロロアクリル酸メチル、α−シアノアクリル酸メチル、α−フェニルアクリル酸メチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−2−ブトキシエチル、アクリル酸エトキシエトキシエチル、アクリル酸メチルトリグリコール、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸シアノエチル、アクリル酸フェロセニルメチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ヘプタフルオロブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸オクチル、トリフルオロアクリル酸メチル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸−2−ニトロブチル、アクリル酸、α−ブロモアクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、アクリロニトリル、アリルグリシジルエーテル、アリル酢酸、アリルアルコール、アリルベンゼン、N−アリルステアリルアミド、1−ブテン、2−ブテン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバミン酸エチル、N−ビニルカルバゾール、クロトンアルデヒド、クロトン酸、1,1−ジフェニルエチレン、テトラフルオロエチレン、フマル酸ジエチル、1−ヘキセン、1−ビニルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾール、インデン、マレイン酸ジエチル、無水マレイン酸、マレイミド、メタクリルアミド、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸フェロセニルメチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−sec−ブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−エトキシエチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸、メタアクリロキシエチルホスフェート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、N−メチロールメタクリルアミド、メタクリロニトリル、メタクリロイルアセトン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニルキノリン、安息香酸ビニル、ビニルドデシルエーテル、ビニルエチルスルホキシド、ギ酸ビニル、ビニルイソブチルエーテル、ラウリン酸ビニル、ビニルフェニルエーテル、アセチレン、フェニルアセチレンなどが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
また、不飽和炭素結合を2つ以上有する化合物とは、一分子内に不飽和炭素結合が開いて付加重合し得る炭素−炭素二重結合及び/または炭素−炭素三重結合を2つ以上有するものであるが、重合性が良好で重合が進行しやすい、重合時に凝集が起きにくい、などの面から下記一般式[I]、[II]または[III]で示される化合物またはこれらの重合物(オリゴマー)が好ましく使用される。
【0037】
【化4】
【0038】
上記一般式[I]において、nは0または1で、R1、R2、R3及びR4は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基またはアルコキシカルボニルメチル基を表し、R5は、R5中に含まれる水素原子を除く原子数が50以下の2価の基を表す。
【0039】
一般式[I]に示される化合物の具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、オクタエチレングリコールジアクリレートなどのポリエチレングリコールジアクリレート類、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートなどのポリエチレングリコールジメタクリレート類、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパンなどの2,2−ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン類、2,2−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシトリエトキシフェニル)プロパンなどの2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン類、アリルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、N,N′−メチレンビスアクリルアミド、アリルメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルクロレンデート、ブタジエン、ブタジエン−1−カルボン酸エチル、ブタジエン−1,4−ジカルボン酸ジエチル、ジアリルメラミン、フタル酸ジアリル、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、イソプレンなどが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
【化5】
【0041】
上記一般式[II]において、Q1、Q2、Q3、Q4、Q5及びQ6は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基またはアルコキシカルボニルメチル基を表し、Q7は、Q7中に含まれる水素原子を除く原子数が50以下の3価の基を表す。
【0042】
一般式[II]に示される化合物の具体例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテートなどが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
【化6】
【0044】
上記一般式[III]において、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5、Z6、Z7及びZ8は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基またはアルコキシカルボニルメチル基を表し、Z9は、Z9中に含まれる水素原子を除く原子数が50以下の4価の基を表す。
【0045】
一般式[III]に示される化合物の具体例としては、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレートなどが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0046】
以上の本発明に係わる不飽和炭素結合を1つ以上有する化合物は、それぞれ単独もしくは2種以上混合して用いることができる。2種以上混合して用いる場合は、上述したように、不飽和炭素結合を1つ有する化合物と不飽和炭素結合を2つ以上有する化合物との(特定比率での)組み合わせが好ましいが、不飽和炭素結合を1つ有する化合物同士、不飽和炭素結合を2つ以上有する化合物同士の組み合わせで用いることもできる。不飽和炭素結合を有する化合物として、少なくとも不飽和炭素結合を2つ以上有する化合物を用いる場合には、上記一般式[I]〜[III]のそれぞれの群あるいはこれらの群には属さないが不飽和炭素結合を2つ以上有する化合物の1つから選ばれた1種以上の化合物を用いてもよいし、これらの群またはこれらの群には属さないが不飽和炭素結合を2つ以上有する化合物の群の任意の2つ以上の群から選ばれたそれぞれ1種以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
さらに、表面に発色調節層を設けられる感熱記録成分を構成する化合物粒子の分散液に、不飽和炭素結合を有する化合物を加える際、不飽和炭素結合を有する化合物を2回以上に分割して加え、粒子表面に発色調節層を2回以上に分けて設けるのであれば、2回以上不飽和炭素結合を有する化合物を加える際の化合物は、任意の少なくとも2回が同1種または同じ組み合わせであっても、添加ごとに異なった1種または組み合わせであってもよい。
【0048】
また、感熱記録成分を構成する化合物粒子を分散する分散媒の全重量の50重量%以上が水により構成されている場合、不飽和炭素結合を有する化合物は、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸フェロセニルメチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−sec−ブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−エトキシエチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリロキシエチルホスフェート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレートなどのメタクリル酸エステルを不飽和炭素結合を有する化合物の一部または全部に用いるのが特に好ましい。
【0049】
不飽和炭素結合を有する化合物の一部または全部がメタクリル酸エステルである場合、メタクリル酸エステルとその重合体は、発色調節層を設ける感熱記録成分を構成する化合物粒子との接着性が良く、また水系分散媒への溶解性も適当であり重合性も良好であることから、付加重合により感熱記録成分を構成する化合物粒子表面を効率よく被覆することが可能であり、さらに発色温度などの発色特性を調節する機能に優れており、特に色分離の優れた多色感熱記録材料を得ることができる。
【0050】
不飽和炭素結合を有する化合物を付加重合させるのに加える重合開始剤は、公知のものを用いることができ、重合反応の様式もラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合など特に限定されないが、ラジカル重合が特に好ましく用いられる。またその重合の際、必要に応じ系を加熱しても良い。ラジカル重合の重合開始剤の具体例を以下に示す。過酸化水素、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペロオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などのアゾ化合物、過酸化水素と第一鉄塩の組み合わせ、過硫酸塩と酸性亜硫酸ナトリウムの組み合わせ、クメンヒドロキシペルオキシドと第一鉄塩の組み合わせ、過酸化ベンゾイルとジエチルアニリンの組み合わせ、過酸化物と金属アルキルの組み合わせ、酸素と有機金属アルキルの組み合わせなどのレドックス開始剤などが挙げられる。
【0051】
これらは単独での使用に限らず、混合して使用しても良い。また、感熱記録成分を構成する化合物粒子表面に発色調節層を2回以上に分けて設けるのであれば、2回以上不飽和炭素結合を有する化合物を付加重合させるのに加える重合開始剤は、1回もしくは2回以上に分けて添加する。また、重合開始剤を2回以上に分けて添加する場合、それぞれの添加に同一または混合した重合開始剤を使用しても良いし、添加ごとに異なった単独または混合した重合開始剤を使用しても良い。
【0052】
ラジカル重合の重合開始剤は、上記に示す以外でも熱や光のエネルギーにより活性ラジカルを発生させるものであれば、特に限定はされないが、感熱記録成分を構成する化合物粒子を分散する分散媒の全重量の50重量%以上が水で構成されている場合、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリドなどの水溶性重合開始剤を用いるのが特に好ましい。水溶性重合開始剤を用いた場合、不飽和炭素結合を有する化合物を重合させて得られる重合体の重合開始末端が親水化されることにより、重合体自身が分散安定能を有し、感熱記録成分を構成する化合物粒子の重合時における粒子間凝集が抑制され、より安定な発色調節層を設けた感熱記録成分を構成する化合物粒子分散液を得ることができる。発色調節層を形成する重合体の分子内に親水基を導入する方法は他に、不飽和炭素結合を有する化合物の一部に水溶性の化合物を含有させることでも可能であり、この方法でもより安定な発色調節層を設けた感熱記録成分を構成する化合物粒子分散液を得ることが可能である。
【0053】
重合開始剤の添加量については、不飽和炭素結合を有する化合物が付加重合を開始する量であれば、特に限定はされないが、付加重合を効率よく開始させるためには、不飽和炭素結合を有する化合物に対して0.001以上10重量%以下が好ましい。また、2回以上不飽和炭素結合を有する化合物を付加重合させる場合は、重合開始剤の不飽和炭素結合を有する化合物に対する添加量の比は同一であっても、異なっていても良い。
【0054】
本発明に用いる感熱記録成分を構成する化合物の分散液は、感熱記録成分を構成する化合物を乾式粉砕して分散媒中に分散する方法、感熱記録成分を構成する化合物を分散媒に混入し湿式粉砕する方法などにより得られる。粉砕する方法としては任意の方法を用いることができる。感熱記録成分を構成する化合物の分散液中の感熱記録成分を構成する化合物粒子の粒径は、20μm以下が好ましく、粒径がこれより大きいと均一な印字ができないので好ましくない。粒径は10μm以下が特に好ましく、より均一な印字が得られる。また、該化合物粒子の粒径の下限は特に限定されないが、製造の容易さの点で0.1μm以上が好ましい。また、感熱記録成分を構成する化合物を分散させる際、必要に応じて該分散液の分散媒に合った分散剤を適宜用いても良い。
【0055】
本発明に用いる感熱記録成分は、発色濃度、発色しやすさ、発色の制御のしやすさなどの点で、通常無色あるいは淡色の電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物の組み合わせが好ましく用いられる。
【0056】
通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体としては一般に感圧記録紙や感熱記録紙などに用いられる化合物を使用することができ、特に制限されるものではない。具体的な例としては、例えば下記に挙げるものなどがあるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリドなどのトリアリールメタン系化合物、
【0058】
4,4′−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミンなどのジフェニルメタン系化合物、
【0059】
ローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、
【0060】
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−フェネチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランなどのキサンテン系化合物、
【0061】
ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルーなどのチアジン系化合物、
【0062】
3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3′−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピルスピロベンゾピランなどのスピロ系化合物などが挙げられる。これらは、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0063】
これら通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体と反応して発色する電子受容性化合物の具体例としては、例えば下記に挙げるものなどがあるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0064】
p−フェニルフェノール、p−ヒドロキシアセトフェノン、4−ヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンゼンスルホニルオキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジアリル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、4,4′−チオビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、没食子酸ベンジル、没食子酸ステアリル、サリチルアニリド、5−クロロサリチルアニリドなどが挙げることができる。これらは、単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0065】
感熱記録成分を構成する2種以上の化合物の内、表面に発色調節層を設ける化合物の種類は特に限定されない。感熱記録成分を構成する化合物である電子供与性染料前駆体及び、電子受容性化合物のいずれの表面に発色調節層を設けても良い。
【0066】
本発明の感熱記録材料を多色感熱記録材料として応用する場合、感熱記録成分を構成する化合物の内、発色色調を決定する化合物に発色調節層を設けると、複数の感熱記録成分を同一の層に含有させることができて特に好ましい。例えば、感熱記録成分として、電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物を組み合わせた2種の感熱記録成分を用いる場合、発色色調は概ね電子供与性染料前駆体の種類に左右される。従って、電子受容性化合物を両感熱記録成分で共通とし、一方の電子供与性染料前駆体の粒子の表面に発色調節層を設け、他方の電子供与性染料前駆体及び電子受容性化合物と共に同一の層に含有させることにより、加熱温度の違いにより2種の色調に発色する多色感熱記録材料を得ることができる。すなわち、より低い温度の加熱では、表面に発色調節層が設けられていない電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物より構成される第1の感熱記録成分が発色して第1の色調に発色し、より高い温度の加熱では、第1の感熱記録成分及び表面に発色調節層が設けらた電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物より構成される第2の感熱記録成分の両方が発色し第2の色調に発色する。第1の感熱記録成分の発色色調としては、赤、青、黄、紫、緑、橙色などが好ましいが特に限定はされない。混色で発色する第2の色調としては、黒、茶、紺色などの濃色が好ましいが特に限定はされない。また、3種の感熱記録成分を含有する多色感熱記録材料も同様に単一の層で構成でき、この場合、複数種の感熱記録成分を構成する電子供与性染料前駆体の表面に特性の異なる発色調節層を設け、感熱記録成分毎に発色温度が異なる様に調節すれば良い。
【0067】
本発明の感熱記録材料は、多色感熱記録材料の他、高温条件でも未印字部が発色しにくい感熱記録材料、また、感熱記録材料を発色させる物質、例えば、有機溶剤などが未印字部に付着しても発色しにくい感熱記録材料などに応用することもできる。
【0068】
本発明の感熱記録材料の感熱記録層は、感熱記録成分を支持体上に設けることにより形成される。感熱記録成分を支持体上に設ける方法は特に限定されないが、感熱記録成分の塗液を塗布する方法、感熱記録成分を含むインキを印刷する方法などを用いることができる。また、感熱記録層には、必要に応じてバインダー併用してもよい。感熱記録層に含有させるバインダーは特に限定されないが、感熱記録成分の発色特性に与える影響がより少ないものが特に好ましく用いられる。
【0069】
バインダーの具体例としては、デンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、オキシベンゾイルポリエステル、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリアリルスルホン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミンホルマリン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸3元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩またはアンモニウム塩、その他各種ポリオレフィン系樹脂などが挙げられ、これらは、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0070】
本発明による感熱記録層を設ける支持体は透明、半透明、及び不透明のいずれであってもよく、紙、各種不織布、織布、合成樹脂フィルム、合成樹脂ラミネート紙、合成紙、金属箔、セラミック紙、ガラス板など、あるいはこれらを組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることができる。
【0071】
本発明の感熱記録材料においては、感熱記録層上に直接または他の層を介して1層以上の保護層を設けても良い。保護層の成分は特に限定されないが、感熱記録組成の発色特性に与える影響が少ないものが特に好ましく用いられる。
【0072】
保護層の形成に用いられる樹脂の具体例としては、デンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、オキシベンゾイルポリエステル、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリアリルスルホン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミンホルマリン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸3元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩またはアンモニウム塩、その他各種ポリオレフィン系樹脂などが挙げられ、これらは、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0073】
本発明の感熱記録材料においては、感熱記録層と支持体の間に、平滑性、断熱性などを向上させるために中間層を設けても良い。中間層には、各種樹脂、有機顔料、無機顔料、各種中空粒子などを含有させることができる。
【0074】
本発明の感熱記録材料においては、感熱記録層と支持体の間の層及び/または感熱記録層が設けられている面または、反対側の面に、電気的、磁気的、または光学的に情報が記録可能な材料を含む層を設けても良い。また、感熱記録層が設けられている面と反対側の面にカール防止や帯電防止などを目的としてバックコート層を設けても良く、さらに粘着加工などを行ってもよい。また、感熱記録層または保護層の表面にUVインキなどによる印刷などを行ってもよい。
【0075】
本発明の感熱記録材料においては、レーザー光による印字を行うために、感熱記録材料中の任意の層及び支持体に光熱変換材料を含有させることもできる。
【0076】
本発明の感熱記録材料の任意の層には、必要に応じて、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、尿素−ホルマリン樹脂などの無機および有機顔料、その他に、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩、パラフィン、酸化パラフィン、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、ステアリン酸アミド、カスターワックスなどのワックス類を、また、ジオクチルスルホこはく酸ナトリウムなどの分散剤、さらに界面活性剤、及び蛍光染料などを含有させることもできる。
【0077】
また、耐光性を向上する目的で、酸化防止剤、紫外線吸収剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及びスルフィド系酸化防止剤などが挙げられる。また、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などの有機系紫外線吸収剤、及び酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムなどの無機系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0078】
【実施例】
以下実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。なお、以下の部は重量部であり、%は重量%を表す。
【0079】
参考作製例1
発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
黒色発色の電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン5部を不飽和炭素結合を有する化合物であるメタクリル酸メチル20部に溶解したものを、5%ポリビニルアルコール水溶液75部と共にホモミキサーで分散し、染料前駆体分散液を得た。この分散液の分散物の粒径をMICROTRAC粒度分析計(Series9200 FRA;Leeds & Northrup Instruments製)により測定したところ、体積平均粒径2.5μmであった。以下、体積平均粒径はすべて同手法により測定した。次いで、この分散液を重合容器に移し、これに、重合開始剤である2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を加え、撹拌しながら70℃に昇温させ、6時間重合させた。次いで、これを室温まで冷却し、表面に発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液を得た。この分散液を目開き100μmの金属製のふるいにかけたところ、分散液中全固形分の約5%の凝集物が確認された。
【0080】
作製例1
発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
黒色発色の電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン5部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液90部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの染料前駆体分散液を得た。次いで、この分散液を重合容器に移し、不飽和炭素結合を有する化合物であるメタクリル酸メチル5部を加え、撹拌しながら70℃に昇温させた。これに、重合開始剤である過硫酸カリウム0.05部を加え、撹拌を続けながら6時間重合させた。次いで、これを室温まで冷却し、表面に発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液を得た。この分散液を目開き100μmの金属製のふるいにかけたところ、分散液中全固形分の約5%の凝集物が確認された。
【0081】
作製例2
発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
作製例1で用いたメタクリル酸メチル5部の代わりに、スチレン5部を用いた以外は、作製例1と同様にして、発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液を得た。この分散液を目開き100μmの金属製のふるいにかけたところ、分散液中全固形分の約10%の凝集物が確認された。
【0082】
作製例3
発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
作製例1で用いた過硫酸カリウム0.05部の代わりに、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.05部を用いた以外は、作製例1と同様にして、発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液を得た。この分散液を目開き100μmの金属製のふるいにかけたところ、分散液中全固形分の約15%の凝集物が確認された。
【0083】
作製例4
発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
作製例1で用いたメタクリル酸メチル5部の代わりに、メタクリル酸メチル4.95部及びエチレングリコールジメタクリレート0.05部を用いた以外は、作製例1と同様にして、発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液を得た。この分散液を目開き100μmの金属製のふるいにかけたところ、分散液中全固形分の約5%の凝集物が確認された。
【0084】
作製例5
発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
作製例1で用いたメタクリル酸メチル5部の代わりに、メタクリル酸メチル4部及びエチレングリコールジメタクリレート1部を用いた以外は、作製例1と同様にして、発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液を得た。この分散液を目開き100μmの金属製のふるいにかけたところ、分散液中全固形分の約5%の凝集物が確認された。
【0085】
作製例6
発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
作製例1で用いたメタクリル酸メチル5部の代わりに、メタクリル酸メチル2.5部及びエチレングリコールジメタクリレート2.5部を用いた以外は、作製例1と同様にして、発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液を得た。この分散液を目開き100μmの金属製のふるいにかけたところ、分散液中全固形分の約5%の凝集物が確認された。
【0086】
作製例7
発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
黒色発色の電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン5部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液92部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの染料前駆体分散液を得た。また、不飽和炭素結合を有する化合物であるメタクリル酸メチル1部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液2部に加えホモミキサーにて分散させ、体積平均粒径15μmのモノマー分散液を得た。次いで、上記2種の分散液を重合容器に移し、撹拌しながら70℃に昇温させた。これに、重合開始剤である過硫酸カリウム0.01部を加え、撹拌を続けながら6時間重合させた。次いで、これを室温まで冷却し、表面に発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液を得た。この分散液を目開き100μmの金属製のふるいにかけたところ、分散液中全固形分の1%以下の凝集物が確認された。
【0087】
作製例8
発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
黒色発色の電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン5部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液80部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの染料前駆体分散液を得た。また、不飽和炭素結合を有する化合物であるメタクリル酸メチル5部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液10部に加えホモミキサーにて分散させ、体積平均粒径15μmのモノマー分散液を得た。次いで、上記2種の分散液を重合容器に移し、撹拌しながら70℃に昇温させた。これに、重合開始剤である過硫酸カリウム0.05部を加え、撹拌を続けながら6時間重合させた。次いで、これを室温まで冷却し、表面に発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液を得た。この分散液を目開き100μmの金属製のふるいにかけたところ、分散液中全固形分の1%以下の凝集物が確認された。
【0088】
作製例9
発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
黒色発色の電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン5部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液35部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの染料前駆体分散液を得た。また、不飽和炭素結合を有する化合物であるメタクリル酸メチル20部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液40部に加えホモミキサーにて分散させ、体積平均粒径15μmのモノマー分散液を得た。次いで、上記2種の分散液を重合容器に移し、撹拌しながら70℃に昇温させた。これに、重合開始剤である過硫酸カリウム0.1部を加え、撹拌を続けながら6時間重合させた。次いで、これを室温まで冷却し、表面に発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液を得た。この分散液を目開き100μmの金属製のふるいにかけたところ、分散液中全固形分の1%以下の凝集物が確認された。
【0089】
作製例10
発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
黒色発色の電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン5部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液90部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの染料前駆体分散液を得た。次いで、この分散液を重合容器に移し、撹拌しながら70℃に昇温した。これに、不飽和炭素結合を有する化合物であるメタクリル酸メチル1.25部と過硫酸カリウム0.0125部を1時間毎に計4回加え、6時間重合させた。次いで、これを室温まで冷却し、表面に発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液を得た。この分散液を目開き100μmの金属製のふるいにかけたところ、分散液中全固形分の約5%の凝集物が確認された。
【0090】
作製例11
発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の作製
黒色発色の電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン5部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液80部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの染料前駆体分散液を得た。また、不飽和炭素結合を有する化合物であるメタクリル酸メチル4部及びエチレングリコールジメタクリレート1部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液10部に加えホモミキサーにて分散させ、体積平均粒径15μmのモノマー分散液15部を得た。次いで、上記染料前駆体分散液を重合容器に移し、撹拌しながら70℃に昇温させた。これに、上記モノマー分散液3.75部と過硫酸カリウム0.0125部を1時間毎に計4回加え、6時間重合させた。次いでこれを室温まで冷却し、表面に発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液を得た。この分散液を目開き100μmの金属製のふるいにかけたところ、分散液中全固形分の1%以下の凝集物が確認された。
【0091】
作製例12
ポリウレア、ポリウレタンより選ばれる高分子物質と電子供与性染料前駆体よりなる複合粒子の作製
黒色発色の電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン6部を、塩化メチレン30部に溶解し、次に、この溶液にトリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアナートとのモル比1:3の付加物(Takeda Chemical Industries,Ltd.製 Takenate D−110N、希釈溶剤:酢酸エチル、濃度75%)12部を添加して均一に混合した。この混合液を、5%ポリビニルアルコール水溶液250部に添加し、ホモミキサーを用いて25℃で分散した後、45℃に昇温させ、撹拌を5時間続けて塩化メチレン及び酢酸エチルを蒸発除去した。その後、80℃に昇温させ、3時間の硬化反応を行なわせて、体積平均粒径1.8μmのポリウレア、ポリウレタンより選ばれる高分子物質と電子供与性染料前駆体よりなる複合粒子の分散液を得た。この分散液を目開き100μmの金属製のふるいにかけたところ、分散液中全固形分の約10%の凝集物が確認された。
【0092】
作製例13
マイクロカプセルに内包した電子供与性染料前駆体の作製
黒色発色の電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン5部を1−(3,4−ジメチルフェニル)−1−フェニルエタン20部に溶解した後、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアナートと1,2−ビス(p−(p−イソシアナートベンジル)フェニルアミノカルボニルオキシ)エタンの1:1混合物6.5部と補助溶剤として酢酸エチル6.5部を添加し均一に溶解した。この溶液を5%ポリビニルアルコール水溶液80部に混合し、ホモミキサーを用いて25℃で分散し、体積平均粒径2μmの分散液を得た。ジエチレントリアミン3部を蒸留水14部に溶解した水溶液を、得られた分散液に添加し、撹拌しながら80℃加熱を3時間行い、マイクロカプセルに内包した電子供与性染料前駆体の分散液を得た。この分散液を目開き100μmの金属製のふるいにかけたところ、分散液中全固形分の約10%の凝集物が確認された。
【0093】
参考例1
感熱記録材料の作製
電子受容性化合物である3,3′−ジアリル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン4部を2%ポリビニルアルコール水溶液12部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの電子受容性化合物分散液16部を得た。また、2−ベンジルオキシナフタレン4部を2%ポリビニルアルコール水溶液12部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの2−ベンジルオキシナフタレン分散液16部を得た。さらに、炭酸カルシウム(Shiraishi KogyoKaisha,Ltd.製 Unibur−70)5部を2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液10部と共にホモジナイザーで粉砕し、体積平均粒径1μmの炭酸カルシウム分散液15部を得た。上記3種の分散液及び参考作製例1で得た発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液70部を混合し、感熱記録材料の塗液を作製した。この塗液を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートに、固形分塗抹量3g/m2となる様に塗抹し、60℃のオーブンで乾燥し、感熱記録材料を作製した。
【0094】
実施例1〜11
感熱記録材料の作製
参考例1で用いた参考作製例1で得た発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液の代わりに、作製例1〜11で得た発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液をそれぞれ用いた以外は、参考例1と同様にして、感熱記録材料を作製した。
【0095】
実施例12
多色感熱記録材料の作製
赤色発色の染料前駆体である3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン3部を2%ポリビニルアルコール水溶液7部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの染料前駆体分散液10部を得た。次いで 電子受容性化合物である3,3′−ジアリル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン8部を2%ポリビニルアルコール水溶液20部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの電子受容性化合物分散液28部を得た。また、2−ベンジルオキシナフタレン6部を2%ポリビニルアルコール水溶液14部と共にボールミルで粉砕し、体積平均粒径1μmの2−ベンジルオキシナフタレン分散液20部を得た。さらに、炭酸カルシウム(Shiraishi Kogyo Kaisha,Ltd.製Unibur−70)8部を2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液16部と共にホモジナイザーで粉砕し、体積平均粒径1μmの炭酸カルシウム分散液24部を得た。上記4種の分散液及び作製例5で得た発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液60部を混合し、多色感熱記録材料の塗液を作製した。この塗液を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートに、固形分塗抹量4g/m2となる様に塗抹し、60℃のオーブンで乾燥し、多色感熱記録材料を作製した。
【0096】
実施例13
多色感熱記録材料の作製
実施例12で用いた作製例5で得た発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液の代わりに、作製例11で得た発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液を用いた以外は、実施例12と同様にして、感熱記録材料を作製した。
【0097】
比較例1
感熱記録材料の作製
参考例1で用いた参考作製例1で得た発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液70部の代わりに、黒色発色の電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン3.5部を2%ポリビニルアルコール水溶液8.5部と共にボールミルで粉砕して作製した体積平均粒径1μmの電子供与性染料前駆体分散液12部を用いた以外は参考例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0098】
比較例2
感熱記録材料の作製
参考例1で用いた参考作製例1で得た発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液70部の代わりに、作製例12で得たポリウレア、ポリウレタンより選ばれる高分子物質と電子供与性染料前駆体よりなる複合粒子の分散液154.6部を用いた以外は参考例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0099】
比較例3
感熱記録材料の作製
参考例1で用いた参考作製例1で得た発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液70部の代わりに、作製例13で得たマイクロカプセルに内包した電子供与性染料前駆体の分散液94.5部を用いた以外は、参考例1と同様にして、感熱記録材料を作製した。
【0100】
比較例4
多色感熱記録材料の作製
実施例12で用いた参考作製例1で得た発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液60部の代わりに、黒色発色の電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン3部を2%ポリビニルアルコール水溶液9部と共にボールミルで粉砕して作製した、体積平均粒径1μmの電子供与性染料前駆体分散液12部を用いた以外、は実施例12と同様にして、多色感熱記録材料を作製した。
【0101】
比較例5
多色感熱記録材料の作製
実施例12で用いた参考作製例1で得た発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液60部の代わりに、作製例12で得たポリウレア、ポリウレタンより選ばれる高分子物質と電子供与性染料前駆体よりなる複合粒子の分散液132.5部を用いた以外は、実施例12と同様にして、多色感熱記録材料を作製した。
【0102】
比較例6
多色感熱記録材料の作製
実施例12で用いた参考作製例1で得た発色調節層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液60部の代わりに、作製例13で得たマイクロカプセルに内包した電子供与性染料前駆体の分散液81部を用いた以外は、実施例12と同様にして、多色感熱記録材料を作製した。
【0103】
試験1 発色感度試験
参考例1及び実施例1〜11の感熱記録材料及び比較例1〜3の感熱記録材料に、熱した金属ブロックを3秒間押し当てて、発色する温度を測定した。発色する温度は、濃度1.0以上に発色する温度とし、濃度は濃度計(MacbethRD918;GRETAG MACBETH社製)を用い、フィルターホールの位置を黒で測定した。結果を表1の発色温度の項目に示した。
【0104】
試験2 地肌かぶり測定試験
参考例1及び実施例1〜11の感熱記録材料及び比較例1〜3の感熱記録材料について、地肌かぶりの状態を地肌未印字部の濃度により測定した。濃度は濃度計(MacbethRD918;GRETAG MACBETH社製)を用い、フィルターホールの位置を黒で測定した。結果を表1の地肌かぶりの項目に示した。
【0105】
試験3 未印字部の有機溶剤による発色試験
参考例1及び実施例1〜11の感熱記録材料及び比較例1〜3の感熱記録材料の未印字部にエタノールをスポイトにて5mg滴下し、発色の濃度を濃度計(MacbethRD918;GRETAG MACBETH社製)を用い、フィルターホールの位置を黒で測定した。結果を表1の耐溶剤性の項目に示した。
【0106】
試験4 発色の立ち上がり感度試験
参考例1及び実施例1〜11の感熱記録材料及び比較例2の感熱記録材料に、熱した金属ブロックを3秒間押し当てて、発色濃度が0.2以下に発色する最高温度及び濃度1.0以上に発色する最低温度の温度差を測定した。発色する温度は、濃度1.0以上に発色する温度とし、濃度は濃度計(MacbethRD918;GRETAG MACBETH社製)を用い、フィルターホールの位置を黒で測定した。結果を表1の発色の立ち上がりの項目に示した。なおこの発色の立ち上がり感度試験は、発色感度を遅らせることができた参考例、実施例、比較例についてのみ有効であるため、感度の遅れなかった比較例1及び3については、試験を行なわなかった。
【0107】
【表1】
【0108】
表1の地肌かぶりの項目の◎は、濃度が0.05以下で地肌かぶりが全くない状態で、○は濃度が0.06または0.07で地肌かぶりがほとんどない状態で、△は濃度が0.08以上0.10以下で地肌かぶりはあるが目立たない程度である状態、×は濃度が0.11以上で地肌かぶりが目立つ状態を示す。
【0109】
また、表1の耐溶剤性の項目の◎は、濃度が0.1未満で全く発色していない状態、○は濃度が0.1以上0.3未満でほとんど発色していない状態、△は濃度が0.3以上0.5未満で若干発色している状態、×は濃度が0.5以上で発色している状態を示す。
【0110】
さらに、表1の発色の立ち上がりの項目の◎は、温度差が5℃未満で発色の立ち上がりが非常に急な状態で、○は温度差が5℃以上10℃未満で発色の立ち上がりが急な状態で、△は温度差が10℃以上15℃未満で発色の立ち上がりが若干なだらかな状態で、×は温度差が15℃以上で発色の立ち上がりがなだらかな状態を示す。
【0111】
表1から明らかなように、参考例1及び実施例1〜11の感熱記録材料は、発色温度を遅らせることが可能であり、さらに発色調節層の存在により感熱記録材料の地肌かぶり及び溶剤に対する耐性が改良されていることが分かる。これらに対し、比較例2の感熱記録材料は、発色温度を遅らせることができたが、発色の立ち上がりがなだらかであった。
【0112】
試験5 多色感熱記録材料の印字試験
実施例12及び13の多色感熱記録材料、及び比較例4〜6の多色感熱記録材料に、TDK Corporation製印字ヘッド(LH4409)付きOhkura Denki Co.,Ltd製感熱ファクシミリ印字試験機(TH−PMD)を用いて、印加電圧20ボルトで、印加パルス1.0ミリ秒(低エネルギー印字)及び印加パルス2.0ミリ秒(高エネルギー印字)で印字した。印字部の発色色調を目視により観察した。結果を表2に示した。
【0113】
【表2】
【0114】
表2中、◎は低エネルギー印字の発色と高エネルギーの発色の発色色調の区別が非常にはっきりとしている状態で、○は発色色調の区別がはっきりしている状態で、△は発色色調の区別が曖昧な状態で、×は発色色調の区別が確認できない状態を示し、◎及び○は多色感熱記録材料の実用上問題のないレベルである。
【0115】
表2から明らかなように、実施例12及び13の多色感熱記録材料は、鮮やかな赤及び黒の発色が得られ、色分離の明確な多色感熱記録材料が得られた。これらに対し、比較例5の多色感熱記録材料では、黒色の発色部が赤味がかっており、色分離は曖昧であった。また、比較例4及び6の多色感熱記録材料では、赤および黒の多色記録は不可能であった。
【0116】
【発明の効果】
表1及び2に示した様に、加熱により反応し発色する感熱記録成分を主として含有する感熱記録層を支持体上に設けてなる感熱記録材料において、該感熱記録成分が2種以上の化合物により構成され、且つ、該感熱記録成分を構成する化合物の少なくとも1種以上が、表面に不飽和炭素結合を有する化合物を重合して得られる発色調節層が設けられた粒子の形態で感熱記録層中に含有された感熱記録材料により、生産性よく感熱記録成分を構成する化合物の表面に発色調節層を設け、且つ発色調節層の特性を自在に調節し、感熱記録成分の発色温度などの発色特性が調節された感熱記録材料を得ることができた。また、発色調節層が、発色調節層を設ける粒子の分散液に不飽和炭素結合を有する化合物を添加し、該不飽和炭素結合を有する化合物を付加重合させて発色調節層を設ける粒子の表面を被覆して得られた感熱記録材料においては、特に生産性よく感熱記録成分を構成する化合物の表面に発色調節層を設けることができた。さらに、本発明の感熱記録材料により、加熱温度の違いにより2種以上の色調に発色する感熱記録材料を得ることができた。
Claims (14)
- 加熱により反応し発色する通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体化合物、及び該染料前駆体を発色せしめる電子受容性化合物により構成された感熱記録成分を主として含有する感熱記録層を支持体上に設けてなる感熱記録材料において、該感熱記録成分を構成する化合物の少なくとも1種以上が粉砕された固体粒子であり、その粉砕された化合物固体粒子表面に不飽和炭素結合を有する化合物を付加重合して得られる発色調節層が設けられた固体粒子の形態で感熱記録層中に含有されることを特徴とする感熱記録材料。
- 上記発色調節層が、発色調節層を設ける感熱記録成分を構成する化合物粒子の分散液に不飽和炭素結合を有する化合物を加え、該不飽和炭素結合を有する化合物を付加重合させたものであることを特徴とする請求項1記載の感熱記録材料。
- 発色調節層を設ける感熱記録成分を構成する化合物粒子の体積平均粒径が0.1μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項2記載の感熱記録材料。
- 発色調節層を設ける感熱記録成分を構成する化合物粒子を分散媒に分散させた分散液において、該分散媒の全重量の50重量%以上が水により構成されていることを特徴とする請求項2記載の感熱記録材料。
- 不飽和炭素結合を有する化合物を付加重合する時に、水溶性重合開始剤を添加することを特徴とする請求項4記載の感熱記録材料。
- 水溶性重合開始剤の添加量が、不飽和炭素結合を有する化合物に対して0.001重量%以上10重量%以下であることを特徴とする請求項5記載の感熱記録材料。
- 不飽和炭素結合を有する化合物の一部または全部が、メタクリル酸エステルであることを特徴とする請求項4記載の感熱記録材料。
- 発色調節層を設ける感熱記録成分を構成する化合物粒子の分散液に、不飽和炭素結合を有する化合物を分散媒に分散させた分散液の状態で加えることを特徴とする請求項2記載の感熱記録材料。
- 分散液中の不飽和炭素結合を有する化合物の分散滴の体積平均粒径が1μm以上100μm以下である請求項8記載のことを特徴とする感熱記録材料。
- 発色調節層を設ける感熱記録成分を構成する化合物粒子の分散液に、不飽和炭素結合を有する化合物を2回以上に分割して加え、該粒子表面に発色調節層を2回以上に分けて設けることを特徴とする請求項2記載の感熱記録材料。
- 不飽和炭素結合を有する化合物の全量が、発色調節層を設ける感熱記録成分を構成する化合物粒子に対して、0.5重量%以上1000重量%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の感熱記録材料。
- 不飽和炭素結合を有する化合物の全重量の1重量%以上70重量%以下が不飽和炭素結合を2つ以上有する化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の感熱記録材料。
- 不飽和炭素結合を2つ以上有する化合物が下記一般式[I]、[II]または[III]で示される化合物、これらの混合物またはこれらの重合物であることを特徴とする請求項12記載の感熱記録材料。
- 発色色調の異なる2種以上の感熱記録成分を含有し、且つ、該感熱記録成分を構成する化合物の少なくとも1種以上が、表面に不飽和炭素結合を有する化合物を重合して得られる発色調節層が設けられて発色温度が調節され、加熱温度の違いにより2種以上の色調に発色することを特徴とする請求項1又は2記載の感熱記録材料。
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