JP3781216B2 - 嫌気性消化汚泥中の難分解有機物の再消化を可能とする嫌気性汚泥消化法及び装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、下水汚泥、産業廃水汚泥、し尿等の固形物を含む有機性水溶液等(以下これらを総称して汚泥という。)のメタン菌を用いた嫌気性汚泥消化法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
汚泥を密閉槽(以下嫌気性消化リアクターという。)中で適正温度範囲内に保持、攪拌すると、汚泥中の有機物が嫌気性分解作用を受けて液化及びガス化する。同時に汚泥中の病原性細菌、寄生虫の卵、ウイルス等が死滅もしくは減少する。この作用を汚泥の嫌気性消化といい、汚泥の生化学的、衛生学的安定化と固形物の減量化を直接の目的とし、副次的には脱水時の汚泥性状調質の効用もある汚泥の有力な処理方法である。
しかしながら、汚泥の嫌気性消化法は反応速度が遅いので、大容量の嫌気性消化リアクターとその関連設備を必要とし、さらにそれらを設置するための広い用地を必要とするので建設コストが高く、維持管理費も高価につくが、一方、汚泥処理系におけるトラブル発生時の緩衝施設としての機能があり、近年の地球環境保全を踏まえた省エネルギーの必要性から、嫌気性汚泥消化にともなって発生する消化ガスに代表されるやうな汚泥のもつエネルギーの積極的利用や汚泥の資源化の動向も絡んで、嫌気性消化法は、重要な汚泥処理法として位置づけられている。
【0003】
汚泥中の有機物の生物学的分解方法には好気性消化法と嫌気性消化法があり、好気性消化法は連続的に多量の酸素を必要とするので、エネルギー多量消費型の処理方法といわれており、嫌気性消化法は前記の如く反応速度が遅いので、大容量の嫌気性消化リアクターと広い用地を必要とするが、前記のように省エネルギーの必要性から重要な汚泥処理法として位置づけられている。
嫌気性消化法は設備的には、嫌気性消化リアクターとその攪拌装置及び関連設備すなわち加熱設備、消化ガスの捕集、消化ガス貯留設備及びそれらを連結する配管等で構成される。従来の嫌気性消化法の設備は、通常二段の嫌気性消化リアクターで構成するが、消化リアクターを二段にするのは、汚泥中の有機物の分解過程と消化汚泥の分離・濃縮過程を別々の嫌気性消化リアクター内で行わせることを目的としていることによる。
嫌気性消化リアクター内を完全混合状態に保持でき、さらに消化汚泥と脱離液との固液分離が確実にできれば、嫌気性消化リアクターは、一段のみで十分な機能を発揮できるので、嫌気性消化リアクターの容量の削減に寄与するところが大である。
【0004】
嫌気性消化法は、嫌気性微生物を用いた生物反応なので、当然のことながら液温の影響を受け、汚泥の消化に必要な日数は、消化温度によって異なってくるが、消化完了の指標が明確ではないので、消化完了を厳密に決定するのが困難である。嫌気性消化作用は、第1段階の酸性発酵と、第2段階のアルカリ性発酵に区分できる。第1段階の酸性発酵では、汚泥中の有機物を構成する炭水化物、脂肪、タンパク質等の高分子物質が通性嫌気性菌(嫌気性でも好気性でも活動する菌;加水分解菌、酸生成菌)の働きで低分子化、液化、ガス化し、種々の有機酸、アルコール、二酸化炭素、水素等を生成する。第2段階のアルカリ性発酵では、酸性発酵で生成した中間生成物が絶対嫌気性菌(嫌気性のみで活動する菌;メタン菌)の働きでメタン、二酸化炭素、アンモニア、硫化水素等の最終生成物に分解される。
第1段階の酸性発酵に関与する通性嫌気性菌は種類が多く、多少の液温変化に対しては、その温度条件に対応する種類の酸性発酵菌が優先種となるので、液温の違いが酸性発酵性能に与える影響はさほど大きくない。これに反して、アルカリ性発酵では絶対嫌気性菌の最適液温範囲が小さく、嫌気性消化における最適液温範囲として30〜35℃、50〜55℃の二つの液温範囲があり、前者を中温消化、後者を高温消化という。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来の嫌気性消化法には、以下に示すような問題点があることが明らかになっている。
すなわち、
(a)反応速度が遅いので嫌気性消化リアクターが大容量となる。従って消化リアクター及び関連設備が大規模化し、それらを設置するのに広い用地と多大な建設費を必要とする。
(b)汚泥中の有機物分解率が低く、一般的には50〜60%が限度である。
【0006】
発明者らは、前記問題点を追求し、それらの発生原因を次のように明らかにした。
(1)汚泥中の有機物の構成が多様性に富んでおり、それらの中に嫌気性消化の第1段階の酸性発酵を受け難い存在形態及び物性のものが混在している。
(2)汚泥中には嫌気性消化の障害となる砂・金属片等の無機性固形物及びプラスチック・木片等の難分解性粗大有機物を含み、これらが無為に嫌気性消化リアクターの有効容量を塞いでいる。
(3)嫌気性消化の第1段階の酸性発酵過程で生成された中間生成物が効率よく第2段階のアルカリ性発酵過程に供給されていない。
(4)汚泥中の有機物中には、余剰汚泥等活性汚泥の残滓が含まれており、前記残滓中の微生物の細胞膜の存在が細胞内有機物を通性嫌気性菌から隔離し、嫌気性消化の第1段階である酸性発酵の障害になっていると考えられる。また、余剰汚泥以外の有機物中にも存在形態及び物性からいって第1段階の酸性発酵を受け難いものが混在している。
(5)嫌気性消化リアクターの有効容積は、リアクター上部におけるスカム堆積及びリアクター底部における消化汚泥の堆積により減殺されている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の嫌気性汚泥消化法では、消化汚泥を主体とする混合液をリアクターから引き抜いて加熱処理し、再び当該リアクターに循環返送することにより、そのまま放置しておけば、分解速度が極めて緩慢な難分解性有機物を、嫌気性消化が容易な存在形態及び物性に変質させて容易に分解することを可能とした。従って、本発明の嫌気性汚泥消化法は、全体として有機物分解効率が従来法よりはるかに向上した効率的嫌気性汚泥消化法となるものである。
【0008】
本発明の嫌気性汚泥消化法によって、前記問題点は克服される。
すなわち、第1の発明は、嫌気性消化リアクターを一段に配備している嫌気性消化プロセスにおいて、前記嫌気性消化リアクターの底部から前記嫌気性消化リアクター内で生成する消化汚泥を主体とする混合液の一部を引き抜き、その引き抜いた混合液を60〜150℃の温度範囲で3分間以上加熱処理して混合液中の難分解性有機物を変性させ、スクリーン及び液体サイクロンにより、嫌気性消化の障害となる粗大有機物及び無機物を除去して、該混合液を前記嫌気性消化リアクターの頂部に循環・返送させ、熱処理後の混合液を再び、前記嫌気性消化リアクターに循環・返送して再消化を行い、さらに有機固形物の分解を促進することを特徴とする汚泥の嫌気性消化法を提供することにある。ここで、前記嫌気性消化リアクター内で、生成する消化汚泥から引き抜いた混合液の加熱処理は、80〜120℃の温度範囲で5〜20分間の加熱処理であることが望ましい。
以下の説明において、「混合液を引き抜き、循環・返送する系統」と略記することがあるが、これは前記嫌気性消化リアクターの底部から前記嫌気性消化リアクター内で生成する消化汚泥を主体とする混合液の一部を引き抜いて、熱処理をし、必要により諸種の手段により混合液の濃縮や固液分離を行う手段を介して、再び嫌気性消化リアクターの頂部に循環・返送して再消化を行う系統を簡単化した記載である。
【0009】
さらに、第1の発明では、消化汚泥を主体とする前記混合液中のプラスチック・木片等の難分解性粗大有機物及び砂・金属片等の無機物を除去して、嫌気性消化リアクターの有効容量を相対的に大きくして有機固形物の分解を促進する。具体化する例としては、前記嫌気性消化リアクターからの「混合液を引き抜き、循環・返送する系統」に固液分離用スクリーン及び液体サイクロンを設置する方法がある。
第2の発明は、第1の発明の「混合液を引き抜き、循環・返送する系統」に前記加熱処理の後に固液分離を目的とした膜分離システムを挿入し、固液分離後の清澄な分離液を系外に取り出して別途処理し、膜分離システムからの濃縮液を嫌気性消化リアクターに循環・返送して嫌気性消化効率を一段と高める方法である。
【0010】
第3の発明では、嫌気性消化リアクターを一段に配備している嫌気性消化装置において、前記嫌気性消化リアクターの底部から前記嫌気性消化リアクター内で生成する消化汚泥を主体とする混合液の一部を引き抜く引抜管、前記引抜管からの引き抜いた混合液を60〜150℃の温度範囲で3分間以上加熱処理して混合液中の難分解性有機物を変性させる加熱設備、前記加熱設備からの該混合液を導入して固液分離するスクリーン設備及び液体サイクロン設備、前記液体サイクロン設備からの液を前記嫌気性消化リアクターの頂部に循環・返送させる返送管とからなることを特徴とする嫌気性汚泥消化装置の提供である。この第3の発明の手段によって、第1の発明を実施することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の嫌気性消化法を以下に図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明を実施するための一実施例を示すフローシートである。先ず、処理すべき投入汚泥は、汚泥供給管1から加熱設備である熱交換器2を介して嫌気性消化リアクター4に流入する。嫌気性消化リアクター4中で汚泥を一定液温範囲内に保持しながら攪拌すると、汚泥中の有機物は、第1段階の酸性発酵により高分子物質が通性嫌気性菌の働きで段階的に低分子化して、液化、ガス化し、種々の有機酸、アルコール、二酸化炭素、水素等を生成する。次いで、これらの低分子化された中間生成物が絶体嫌気性菌の働きにより第2段階のアルカリ性発酵に移行する。アルカリ性発酵過程では、第1段階の酸性発酵過程で生成された中間生成物がメタン、二酸化炭素、アンモニア、硫化水素等の最終生成物に分解される。
【0013】
嫌気性消化による有機物の分解率は、従来法では50〜60%が限度であったが、本発明では、嫌気性消化リアクター4内から消化汚泥を主体とする混合液5を引き抜いて熱交換器2で熱処理し、熱処理後の混合液5を再び嫌気性消化リアクター4に循環・返送して再消化を行い、さらに有機性固形物の分解を促進する。
本発明では、熱交換器2による熱処理により、混合液5中の消化汚泥を主体とする生物学的に難分解性の有機物の物性を通性嫌気性菌による分解が可能な存在形態及び物性に変質させ、有機物分解効率を向上させる。
【0014】
嫌気性消化リアクター4に投入される汚泥中には、嫌気性消化の障害となる砂・金属片等の無機固形物及びプラスチック・木片等の難分解性粗大有機物を含むケースが多く、これらが嫌気性消化リアクター4の有効容積を無駄に塞ぐことになる。この障害を防止するため、図1の装置における嫌気性消化リアクター4からの混合液5を循環・返送する系統6に、さらに液体サイクロン9を設置して砂・金属片等の無機固形物を分離して系外に除去し、スクリーン7を設置して、プラスチック・木片等の粗大有機固形物を系外に除去することにより、嫌気性消化リアクター4の有効容積を有効利用することができる。図2に液体サイクロン9及びスクリーン7を混合液5を循環・返送する系統6に組み込んだフローシートを示す。
【0015】
また、図2の混合液を循環・返送する系統6の液体サイクロン9及びスクリーン7の下流に、図3に示すように固液分離を目的とした膜分離システム10を設置して、固液分離後の清澄な分離液11を系外に取り出して別途処理し、濃縮液12を嫌気性消化リアクター4に返送するこにより嫌気性消化リアクター4を効率的に利用することができる。
さらに図3に示すフローシートの膜分離システム10の前処理として、図4に示すように、遠心濃縮機13を設置し、遠心濃縮機13から濃縮液14を嫌気性消化リアクター4に循環・返送し、遠心濃縮機13の分離液15を膜分離システム10に送水して、膜に対する固形物負荷を低減する。図4に本方法によるフローシートを示す。
【0016】
嫌気性消化リアクター4からの混合液5を引き抜いて、再びその全量もしくは一部を嫌気性消化リアクター4に循環・返送するライン6に加熱設備である熱交換器3を設け、嫌気性消化リアクター4中の消化温度を中温消化もしくは高温消化の最適温度範囲内に容易にコントロールできる構造とする。
さらに、嫌気性消化リアクター4からの混合液5の循環・返送ライン6から、一部の混合液を分岐し、加熱設備(熱交換器)3により混合液5の一部を120℃程度の高温に加熱して殺菌し、不活性化すると同時に、該混合液5中の難分解性有機物を熱処理することによって、通性嫌気性菌が生物学的に分解可能な物性に変換し、全体の有機物の分解効率を従来法よりはるかに向上させる。図5に本方法によるフローシートを示す。
【0017】
さらに、嫌気性消化リアクター4から混合液を引き抜き循環・返送する系統6において、嫌気性消化リアクター4からの混合液の引き抜きと循環・返送は、嫌気性消化リアクター4の頂部16から引き抜いて、底部17に返送する方式と底部17から抜いて、頂部16に返送する方式を交互に転換して運転することにより嫌気性消化リアクター4の有効容量を最大限に活用し、嫌気性消化リアクター4内の攪拌を効率良く実施する。
【0018】
また、図6に示すように、嫌気性消化リアクターの頂部16の自由水面を極力なくして、定常運転時、嫌気性消化リアクター4内を満水状態とし、リアクターの頂部16より脱離液18及びガス19を移送する手段として、該リアクター頂部16に脱離液18及びガス19の共通取り出し口としてスクリーン設備8を設置し、該スクリーン設備8を通して脱離液18及びガス19を引き抜き、その直ぐ下流側で脱離液18とガス19を分離してそれぞれを別系統とできる構造の嫌気性消化リアクター4を使用する。スクリーン設備8は、脱離液18とガス19を分離する気液分離設備ならびにスカム除去設備としての機能を発揮する。
図1〜図5中の20、21はそれぞれ混合液循環ポンプ、22はガスコンプレッサ、23は脱硫装置、24はガスホールダ、25はブースタブロワ、26は重油タンク、27は燃料ポンプ、28はボイラ、29は温水循環ポンプ、30は消化汚泥を示す。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0020】
実施例1
全有効容積25リットルの嫌気性消化リアクターを用いて、図1に示した実験装置を製作して、第1の発明に示した処理法により、250日間の連続実験を実施した。
実験に供した汚泥は、A市下水処理場の余剰汚泥(平均VSS/SS78.5%;平均固形物濃度1.2%)で12時間毎に0.75リットルずつ嫌気性消化リアクタに投入した(余剰汚泥投入量1.5リットル/日)。嫌気性消化リアクター底部からリアクター内混合液を混合液循環ポンプを用いて0.5リットル/分の割りで引き抜いて加熱設備により5分間、95℃の熱処理を加えて再び嫌気性消化リアクターに循環・返送した。なお、混合液循環ポンプは、毎20分間毎に5分間の間欠運転とし、嫌気性消化リアクター内液温を35℃に保持すると同時にガスコンプレッサを用いて嫌気性消化リアクター内を適正に攪拌した。また、コントロール(対照)として、前記と同一の実験期間中に同一の余剰汚泥を用いて引き抜き混合液の熱処理を除いて他の実験条件は同一とし、嫌気性消化リアクター内液温を35℃に保持するために嫌気性消化リアクター内にヒーターを設置した従来法による実験を併せて実施した。両実験方式とも運転開始後50日間経過して処理性能が安定した後の実験期間中のデータの平均値を第1表に示した。
【0021】
【表1】
【0022】
第1表の処理性能の比較に見られるように、本実験における本発明の方法のVSS分解率は、従来法のVSS分解率に比較して18.4%の分解率の向上が見られ、また、ガス発生両も従来法の1.48倍となり、明らかに有機物分解効率が向上した。
【0023】
実施例2
全有効容積25リットルの嫌気性消化リアクターを用いて、図2に示した実験装置を製作して、本発明の第2の発明に示した処理法により、220日間の連続実験を実施した。
実験に供した汚泥は、B市下水処理場の生汚泥(平均VSS/SS68.2%;平均固形物濃度2.1%)で12時間毎に0.75リットルずつ嫌気性消化リアクタに投入した(生汚泥投入量1.5リットル/日)。嫌気性消化リアクター底部からリアクター内混合液を混合液循環ポンプを用いて0.5リットル/分の割りで引き抜いて加熱設備により5分間、115℃の熱処理を加えた後、スクリーン、液体サイクロンによりプラスチック、木片等の難分解性粗大有機物及び砂・金属片等の無機物を除去し、再び嫌気性消化リアクターに循環・返送した。なお、混合液循環ポンプは、毎20分間毎に5分間の間欠運転とし、嫌気性消化リアクター内液温を52℃に保持すると同時にガスコンプレッサを用いて嫌気性消化リアクター内を適正に攪拌した。また、コントロールとして、前記と同一の実験期間中に同一の生汚泥を用いて引き抜き混合液の熱処理を除いて他の実験条件は同一とし、嫌気性消化リアクター内液温を52℃に保持するために嫌気性消化リアクター内にヒーターを設置した従来法による実験を併せて実施した。両実験方式とも運転開始後40日間経過して処理性能が安定した後の実験期間中のデータの平均値を第2表に示した。
【0024】
【表2】
【0025】
第2表の処理性能の比較に見られるように、本実験における本発明の方法のVSS分解率は、従来法のVSS分解率に比較して20.8%の分解率の向上が見られ、ガス発生量は、従来法の1.45倍になり、有機物分解効率が向上したことが明らかである。
【0026】
実施例3
全有効容積25リットルの嫌気性消化リアクターを用いて、実施例1の従来法による実験装置を複数系列製作し、処理する汚泥の種類を変えて120日間の連続実験を実施した。
実験に供した汚泥は、C市下水処理場の生汚泥(平均VSS/SS56.3%;平均固形物濃度2.9%)を前記実験装置の嫌気性消化リアクターに1.5リットル/日投入し、消化温度35℃の運転条件により得られた消化汚泥を高温殺菌(120℃、10分間)、低温殺菌(60℃、10分間)したものを用いた。
なお、コントロールとして、前記C市下水処理場の生汚泥を用いた実験も実施した。これらの実験では、処理対象汚泥を12時間毎に0.75リットルずつ嫌気性消化リアクタに投入し(汚泥投入量1.5リットル/日)、ガスコンプレッサを用いて嫌気性消化リアクター内を適正に攪拌すると同時に、嫌気性消化リアクター内に設置したヒーターにより嫌気性消化リアクター内液温を35℃に保持した。前記実験では、運転開始後50日間経過して処理性能が安定した後の実験期間中の平均ガス発生量を第3表に示した。
【0027】
【表3】
【0028】
第3表の処理対象汚泥ごとのガス発生量に見られるように、低温殺菌消化汚泥の再消化によるガス発生量は、コントロールとした生汚泥の消化によるガス発生量の34.3%と低率であるが、高温殺菌消化汚泥の再消化によるガス発生量は、生汚泥の消化によるガス発生量の49.3%に達し、消化汚泥を適正に熱処理すれば再度嫌気性消化が可能となることが実験的に確認できた。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、汚泥の嫌気性消化法において、嫌気性消化リアクターの底部から消化汚泥を主体とする嫌気性消化リアクター内混合液を引き抜き、循環・返送する過程で熱処理することにより、そのまま放置した場合、分解速度が極めて緩慢な難分解性有機固形物の存在形態及び物性を、再度嫌気性消化が容易な存在形態及び物性に変質し、スクリーン及び液体サイクロンにより、嫌気性消化の障害となる粗大有機物及び無機物を除去して、該混合液を嫌気性消化リアクターの頂部に返送することにより、嫌気性消化リアクターの有効容積を有効に利用する手段を駆使して、従来法では50〜60%に過ぎない汚泥中の有機物分解率を70〜80%に引き上げる大きな効果があり、今後ますます重大問題化することが予測される汚泥処理問題の解決に貢献するところが大きいものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の処理の一実施態様例を示すフローシートである。
【図2】混合液循環・返送ラインに無機固形物用固液分離装置としての液体サイクロン、プラスチック・木片等の難分解性粗大有機固形物の除去設備としてスクリーンを組み込んだフローシートの例である。
【図3】混合液循環・返送ラインに、有機固形物を対象とした固液分離装置として膜分離システムを組み込んだフローシートの例である。
【図4】図3の膜分離システムの前処理として、遠心濃縮機を組み込んだフローシートの例である。
【図5】混合液循環・返送ラインの混合液の一部をさらに分岐して加熱することにより、嫌気性消化リアクター内の液温の制御を容易にするとともに、高温加熱により殺菌可能としたフローシートの例である。
【図6】嫌気性消化リアクター上部構造の例を示す図である。
【符号の説明】
1 汚泥供給管
2 熱交換器
3 熱交換器
4 嫌気性消化リアクター
5 混合液
6 混合液を循環・返送する系統
7 スクリーン
8 スクリーン設備
9 液体サイクロン
10 膜分離システム
11 分離液(膜分離システム)
12 濃縮液(膜分離システム)
13 遠心濃縮機
14 濃縮液(遠心濃縮機)
15 分離液(遠心濃縮機)
16 嫌気性消化リアクター頂部
17 嫌気性消化リアクター底部
18 脱離液
19 ガス
20 混合液循環ポンプ
21 混合液循環ポンプ
22 ガスコンプレッサ
23 脱硫装置
24 ガスホルダ
25 ブースタブロワ
26 重油タンク
27 燃料ポンプ
28 ボイラ
29 温水循環ポンプ
30 消化汚泥
Claims (4)
- 嫌気性消化リアクターを一段に配備している嫌気性消化プロセスにおいて、前記嫌気性消化リアクターの底部から前記嫌気性消化リアクター内で生成する消化汚泥を主体とする混合液の一部を引き抜き、その引き抜いた混合液を60〜150℃の温度範囲で3分間以上加熱処理して混合液中の難分解性有機物を変性させ、スクリーン及び液体サイクロンにより、嫌気性消化の障害となる粗大有機物及び無機物を除去して、該混合液を前記嫌気性消化リアクターの頂部に循環・返送させることを特徴とする嫌気性汚泥消化法。
- 前記スクリーン及び液体サイクロンにより、嫌気性消化の障害となる粗大有機物及び無機物を除去した後、膜分離システムで、清澄な分離液と濃縮液とに固液分離した後、前記清澄な分離液は系外に取り出して別途処理し、前記濃縮液は嫌気性消化リアクターに循環・返送することを特徴とする請求項1に記載の嫌気性汚泥消化法。
- 嫌気性消化リアクターを一段に配備している嫌気性消化装置において、前記嫌気性消化リアクターの底部から前記嫌気性消化リアクター内で生成する消化汚泥を主体とする混合液の一部を引き抜く引抜管、前記引抜管からの引き抜いた混合液を60〜150℃の温度範囲で3分間以上加熱処理して混合液中の難分解性有機物を変性させる加熱設備、前記加熱設備からの該混合液を導入して固液分離するスクリーン設備及び液体サイクロン設備、前記液体サイクロン設備からの液を前記嫌気性消化リアクターの頂部に循環・返送させる返送管とからなることを特徴とする嫌気性汚泥消化装置。
- 前記液体サイクロン設備からの液を導入して、清澄な分離液と濃縮液とに固液分離する膜分離システム設備、前記膜分離システムからの前記清澄な分離液は系外に取り出す排出管、前記濃縮液を前記嫌気性消化リアクターの頂部に循環・返送させる返送管とを有することを特徴とする請求項3記載の嫌気性汚泥消化装置。
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