JP3780674B2 - 側突用エアバッグ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は車両の側面衝突から乗員を保護する側突用エアバッグ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来この種の側突用エアバッグ装置としては、例えば特開平9−220994号公報に記載されたものが公知である。
【0003】
上記公報の側突用エアバッグ装置は、シートバックフレームの側部に、エアバッグ袋体を収容したエアバッグケースを設けたもので、側突時エアバッグ装置が作動すると、膨張するエアバッグ袋体に押圧されて、エアバッグケースの蓋が展開すると共に、その際に蓋の前方に位置するシートパッドが蓋により内側へ圧縮されてエアバッグの展開軌道が拡大されるため、エアバッグの展開完了時間を短縮できる上、展開形状を安定させることができるという効果を有する。
【0004】
また別の側突用エアバッグ装置としては、例えば特開平6−72267号公報や、特開平9−39710号公報に記載されたものが公知である。
【0005】
上記特開平6−72267号公報に記載のものは、エアバッグ本体のフロント側の基布とリア側の基布の間に、フロント側の基布が乗員側へ向って大きく膨張するのを規制する吊りベルトを設けると共に、吊りベルトの長さをエアバッグ本体の膨出時の幅より大きく形成し、かつ長く形成されたベルト部の中間部に摘み縫を施したもので、縫着作業が容易に行えるため、作業性が向上する効果を有する。
【0006】
一方上記特開平9−39710号公報に記載のものは、一つの袋体にメインバッグ部とサブバッグ部を設けて、側突時まずメインバッグ部が膨張展開して乗員の胸部を保護し、胸部によりメインバッグが押し潰される動作を利用してサブバッグ部を膨張展開させて、乗員の頭部を保護するようにしたもので、メインバッグ部を膨張展開させるだけのガス量で乗員の頭部も保護することができるため、小型のインフレータが採用できる効果を有する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の側突用エアバッグ装置では、何れも側面衝突による衝撃を感知すると、インフレータが瞬時に大量のガスを発生して、エアバッグ本体を膨張させ、乗員を側突による衝撃から保護するように構成されている。
【0008】
しかし近年では、長期間が経過してもガスの発生能力が低下することの少ない燃焼型のインフレータが採用されるようになってきている。
【0009】
この燃焼型のインフレータは、ガス発生時、熱も発生するため、上記従来の側突用エアバッグのように、インフレータより発生したガスを直接エアバッグ本体内へ送り込んでエアバッグ本体を膨張展開させるようにしたものでは、インフレータ近傍のエアバッグ基布が熱害を受ける不具合がある。
【0010】
特にインフレータの前方に、エアバッグ本体の幅方向の膨張を規制するテザー(吊りベルト)を設けた側突用エアバッグ装置では、エアバッグ本体とテザーの縫着部分に直接高温高圧のガスが当るため、縫着部分が熱害を受けて破損し、エアバッグ本体の幅方向の膨張を規制できなくなる。
【0011】
これを防止するため、従来ではエアバッグ本体とテザーの縫着部分に別布を当ててこの部分を補強したり、耐熱性の高い高級な糸を使用して縫製するなどの対策を行っているが、この方法では、部品点数が多くなる上、縫製に手間がかかるため、コストアップを招くなどの不具合がある。
【0012】
また過大な引張力が作用しても破損しないような丈夫な基布を使用する方法もあるが、丈夫な基布は価格が高い上、肉厚が厚いため、エアバッグとともに折畳むと、エアバッグが大きくなって、装置全体が大型化する不具合がある。
【0013】
この発明はかかる従来の不具合を改善するためになされたもので、インフレータの前方に設けられたテザーの両端を、エアバッグ本体の内側に縫製された耐熱性を有する防炎布に縫着することにより、別布等を用いなくてもテザーに高温高圧のガスによる縫着部が破損することのない側突用エアバッグ装置を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記目的を達成するため、インフレータの前方に設けられたテザーの両端を、エアバッグ本体の膨張展開時に当該エアバッグ本体によって直接引っ張られないように、エアバッグ本体の内側に縫製された耐熱性を有する防炎布に縫着したもので、インフレータからテザーに高温高圧のガスが防炎布に直接当たるようにして、テザーが熱害を受けることを少なくすると共に、たとえテザーの縫着部が破損しても、エアバッグ本体が破損することがないため、エアバッグを瞬時に膨張展開することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
この発明の請求項1記載の発明は、袋状に形成されたエアバッグ本体を、シートバック側面に埋設されたエアバッグケース内にインフレータとともに収納した側突用エアバッグ装置において、前記エアバッグ本体内の内側に防炎布を縫着すると共に、前記エアバッグ本体が幅方向へ膨張するのを規制するテザーの両端を、前記エアバッグ本体の膨張展開時に当該エアバッグ本体によって直接引っ張られないように、前記防炎布に縫着して、前記テザーを前記インフレータの前方に位置させたものである。
【0016】
上記構成により、側突による衝撃によりインフレータより発生された高温ガスがテザーに向けて噴出されても、テザーの両端が縫着された防炎布がテザーに作用する引張力を吸収するため、テザーの縫着部が過大な引張力により破損することがない。
【0017】
この発明の請求項2記載の発明は、防炎布の上下辺をエアバッグ本体の表皮布と裏皮布の間に縫い込み、前後辺は上記表皮布と裏皮布の内面に縫着したものである。
【0018】
上記構成により、インフレータより噴出される高温ガスが直接エアバッグ本体や、エアバッグ本体と防炎布の縫着部に直接当ることがないので、エアバッグ本体や、エアバッグ本体と防炎布の縫着部が熱害により破損されることがない。
【0019】
この発明の請求項3記載の発明は、エアバッグ本体を乗員の胸部を保護するメインバッグ部と、乗員の頭部を保護するサブバッグ部より形成し、これら間を連通孔で互に連通し、且つ、前記メインバッグ部側に前記テザーを設けたものである。
【0020】
上記構成により、インフレータから発生したガスによりまずメインバッグ部が膨張展開して乗員の胸部を保護し、続いて連通孔よりサブバッグ部に流入したガスによりサブバッグ部が膨張展開して、乗員の頭部を保護するため、側突時の衝撃から乗員を確実に保護することができる。
【0021】
以下この発明の実施の形態を図面を参照して詳述する。
【0022】
図1は側突用エアバッグ装置が設けられたシートの斜視図、図2は図1のA−A線に沿う断面図、図3はエアバッグ本体の展開図、図4は防炎布の縫製位置を示す説明図、図5は図3のB−B線に沿う断面図、図6は図3のC−C線に沿う断面図、図7及び図8は作用説明図である。
【0023】
図1において1は車両のシートで、シートバッグ2のドア側の上部側面に、側突用エアバッグ装置を構成するエアバッグ本体4が樹脂製のエアバッグケース5に収容された状態で埋設されている。
【0024】
上記エアバッグケース5は、平時は閉塞され、エアバッグ本体4の膨張展開時に、エアバッグ本体4により押圧されて開放する蓋体5aを有しており、このエアバッグケース5内に、側突を感知すると、瞬時に大量のガスを発生する燃焼型のインフレータ6と、折り畳まれた上記エアバッグ本体4が収容されている。
【0025】
上記エアバッグ本体4は図3に示すように、側突時乗員の胸部を保護するメインバッグ部41と、乗員の頭部を保護するサブバッグ部42を一体化した構造で、インフレータ6より発生されたガスにより所定の形状に膨張展開するよう表皮布4aと裏皮布4bの周囲を縫製することにより袋状に形成されている。
【0026】
そしてメインバッグ部41内にインフレータ6が位置するようにエアバッグケース4内に取付けられていると共に、メインバッグ部41と、サブバッグ部42の境界には、隔壁4cが形成されていて、この隔壁4cに、メインバッグ部41とサブバッグ部42に間を連通する連通孔4dが形成されている。
【0027】
上記連通孔4dは、インフレータ6より発生されたガスがサブバッグ部42内に流入するのを規制することにより、まずメインバッグ部41が膨張展開され、次にサブバッグ部42が膨張展開されるようにするもので、オリフィスにより形成されている。
【0028】
一方上記エアバッグ本体4内には、膨張展開時メインバッグ部41及びサブバッグ部42がドア(図示せず)とアームレスト3の間の隙間に沿って瞬時に膨張展開されるよう、エアバッグ本体4の幅方向の膨張を規制するテザー7がインフレータ6の前方側に複数個所設けられている。
【0029】
上記テザー7は図5に示すように、エアバッグ本体4と同材質の基布により帯状に形成されていて、両端がエアバッグ本体4の内側に縫製された防炎布8に縫製糸9により縫着されている。
【0030】
上記防炎布8は、耐熱性を有するナイロンや、シリコンをコーティングした布などにより形成されていて、メインバッグ部41の内側に図4の斜線で示す範囲に亘って設けられており、各防炎布8の上下辺はメインバッグ部41の表皮布4aと、裏皮布4bの内側に縫製糸10によりそれぞれ縫着されている。そしてこれら防炎布8の後辺側の近傍に、上記テザー7の両端が垂直方向に縫着されている。
【0031】
次に上記構成された側突用エアバッグ装置の作用を説明する。
【0032】
平時はバッグシート2の側面上部に埋設されたエアバッグケース5内に折り畳まれた状態でエアバッグ本体4が収納されており、エアバッグケース5の蓋体5aも図2に示すように閉鎖された状態にある。
【0033】
次にこの状態で図示しないセンサが側突時の衝撃を感知すると、インフレータ6より大量のガスが発生されて、テザー7に向けて図6に示すように噴出され、エアバッグ本体4のメインバッグ部41が膨張を開始するが、インフレータ6より噴出された高温高圧のガスによってメインバッグ部41と共に防炎布8がメインバッグ部41との縫着部が引張られることになる。
【0034】
そしてこの時、テザー7は、その両端縫着部が防炎布8によって引張られても、直接メインバッグ部41によって引張られることがないため、テザー両端の縫着部には過大な引張力が作用することがないと共に、たとえテザー7の縫着部が熱害を受けて破損しても、メインバッグ部41が破損することがないため、エアバッグ本体4は図7及び図8に示すように膨脹展開して、まずメインバッグ部41が乗員の胸部を側突時の衝撃から保護し、続いてサブバッグ部42により乗員の頭部を保護するため、側突時の衝撃から乗員を確実に保護することができるようになる。
【0035】
また防炎布8によってメインバッグ部41の内面にインフレータ6からの高温ガスが直接当ることがないため、メインバッグ部41が熱害により破損することがないと共に、メインバッグ部41と防炎布8の縫製部にも直接高温ガスが当ることがないため、縫着部が熱害を受けることがなく、これによって防炎布8に過大な引張力が作用しても、メインバッグ部41と防炎布8の縫着部が破損するなどの心配もない。
【0036】
【発明の効果】
この発明は以上詳述したように、インフレータの前方に設けられたテザーの両端をエアバッグ本体の内側に縫製した耐熱性を有する防炎布に縫着したことから、インフレータから噴出される高温、高圧のガスがテザーに直接当っても、テザー両端の縫着部が過大な引張力により破損することがない。
【0037】
これによってエアバッグ本体を瞬時に所定形状に膨張展開させることができるため、側突時の衝撃から乗員を確実に保護することができる。
【0038】
またたとえテザー両端の縫着部が熱害により破損しても、エアバッグ本体側が破損することがないので、エアバッグ本体の膨張展開が確実に行えると共に、インフレータからの高温ガスがエアバッグ本体の内面に直接当るのを防炎布が防止するため、エアバッグ本体が熱害を受けたり、エアバッグ本体と防炎布の縫着部が熱害を受けて破損するのを未然に防止することもできる。
【0039】
さらにテザーの縫着部に別布を縫製するなどの作業を必要としないので、部品点数の低減や、縫製作業に要する工数が低減できるため、側突用エアバッグ装置のコストダウンも図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態になる側突用エアバッグ装置が設けられたシートの斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】この発明の実施の形態になる側突用エアバッグ装置に使用したエアバッグ本体の展開図である。
【図4】この発明の実施の形態になる側突用エアバッグ装置のエアバッグ本体に設けられた防炎布の取付け位置を示す説明図である。
【図5】図3のB−B線に沿う断面図である。
【図6】図3のC−C線に沿う断面図である。
【図7】この発明の実施の形態になる側突用エアバッグ装置の作用説明図である。
【図8】この発明の実施の形態になる側突用エアバッグ装置の作用説明図である。
【符号の説明】
1 シート
2 シートバック
3 アームレスト
4 エアバッグ本体
41 メインバッグ部
42 サブバッグ部
4a 表皮布
4b 裏皮布
4c 隔壁
4d 連通孔
5 エアバッグケース
6 インフレータ
7 テザー
8 防炎布
9 縫製糸
10 縫製糸
Claims (3)
- 袋状に形成されたエアバッグ本体を、シートバック側面に埋設されたエアバッグケース内にインフレータとともに収納した側突用エアバッグ装置において、前記エアバッグ本体の内側に防炎布を縫着すると共に、前記エアバッグ本体が幅方向へ膨張するのを規制するテザーの両端を、前記エアバッグ本体の膨張展開時に当該エアバッグ本体によって直接引っ張られないように、前記防炎布に縫着して、前記テザーを前記インフレータの前方に位置させたことを特徴とする側突用エアバッグ装置。
- 防炎布の上下辺をエアバッグ本体の表皮部と裏皮布の間に縫い込み、前後辺は上記表皮布と裏皮布の内面に縫着してなる請求項1記載の側突用エアバッグ装置。
- エアバッグ本体を乗員の胸部を保護するメインバッグ部と、乗員の頭部を保護するサブバッグ部より形成し、これらの間を連通孔で互いに連通し、且つ、前記メインバッグ部側に前記テザーを設けた請求項1または2記載の側突用エアバッグ装置。
Priority Applications (1)
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JP34194297A JP3780674B2 (ja) | 1997-11-28 | 1997-11-28 | 側突用エアバッグ装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP34194297A JP3780674B2 (ja) | 1997-11-28 | 1997-11-28 | 側突用エアバッグ装置 |
Publications (2)
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JPH11157408A JPH11157408A (ja) | 1999-06-15 |
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ID=18349963
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP34194297A Expired - Lifetime JP3780674B2 (ja) | 1997-11-28 | 1997-11-28 | 側突用エアバッグ装置 |
Country Status (1)
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Families Citing this family (1)
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JP4030684B2 (ja) * | 1999-06-22 | 2008-01-09 | 芦森工業株式会社 | エアバッグ |
-
1997
- 1997-11-28 JP JP34194297A patent/JP3780674B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JPH11157408A (ja) | 1999-06-15 |
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